説明

保温器

【課題】 手や飲食物等の容器を温めることができる、多用途に利用できる保温器の構造に関する。
【解決手段】 中空ドーナツ状に形成された枠体1と、枠体1内に備えたヒータ2と、ヒータ2と接続されて枠体1表面にヒータ2の熱を伝える伝熱部材3とを設け、内側に伝熱部材3を配置した枠体1の表面温度が上昇して放熱する放熱面4を構成する。ヒータ2は枠体1内の内側面1aに沿って円周状に配置し、伝熱部材3はヒータ2と接続しながら枠体1の内側面1aから上面1cと底面1dを経て外側面1bまで配置し、放熱面4は内側面1aが高温部を構成するものである。穴が開いた枠体1の中央部分に飲料用の容器を置いたり、枠体1の上に手や物品を置いたり、枠体1を手で握ったりして、容器に入った飲み物や手や物品を温めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手や飲食物等の容器を温めることができるヒータを内蔵した保温器の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
机上で作業をするときにおいて、作業の合間に飲み物を飲んだり、あるいは、飲み物を飲みながら作業を行なうことがある。飲み物を用意してもすぐに飲み終えるとは限らず、しばらく時間が経過した後に飲むことがある。缶飲料や使い捨て紙コップは温かい飲み物を入れてもすぐに冷めてしまい、しばらく時間が経過した後では飲み物が冷たくなってしまっていることが多いため、缶飲料や紙コップのままでも温かい飲み物を飲むことができるようにしたいという要望がある。
【0003】
そこで、飲料用の容器を保温するための保温器の提案があり、容器を置くためのベースと、ベースの上に配置されたヒータを内蔵する円周状のケーシングを備えたものであり、飲料用の容器をベースの上に置いたときに、飲料用の容器の側面全体をケーシングで包み込むことで、容器の側面をケーシングに内蔵したヒータによって温めて、容器に入った飲み物を保温するものであり、飲み物を温かいまま飲むことができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−52608号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の保温器は、形状が大きく置き場所をとるため、机の上に置いたときに保温器が邪魔になりやすく、置き場所が問題となる。また、飲料用の容器の保温以外の目的で使用したいときがあっても、他の用途に対応した構造になっていないため、使用できないことの方が多く、使用用途が飲料用の容器の保温に限定されてしまい、使い勝手が悪いといった課題もある。
本願発明は、置き場所をとらないコンパクトな枠体形状で、机の上に置いたときにも邪魔にならない構造を実現すると共に、飲料用の容器以外の他の物品や手を温めたいときにも使用でき、使用用途が飲料用の容器の保温に限定されない、多用途に使用できる構造の保温器を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記の課題を解決するもので、手または飲食物等の容器のための保温器であって、中空ドーナツ状に形成された枠体1と、該枠体1内に備えたヒータ2と、該ヒータ2と接続されて枠体1表面にヒータ2の熱を伝える伝熱部材3とを設け、内側に前記伝熱部材3を配置した前記枠体1の表面温度が上昇して放熱する放熱面4を構成し、前記ヒータ2は前記枠体1内の内側面1aに沿って円周状に配置し、前記伝熱部材3は前記ヒータ2と接続しながら前記内側面1aから上面1cと底面1dを経て外側面1bまで配置し、前記放熱面4は前記内側面1aが高温部を構成することを特徴とするものである。
【0007】
また、前記枠体1は前記上面1cと前記底面1dとを平面で構成することにより、枠体1を机の上に置いたときに安定感が得られ、枠体1の上面1cに置かれた物品と放熱面4との接触面積が増えるので、物品を安定して支持できると共に、物品に熱が伝わりやすくなる。
【0008】
また、前記枠体1は前記内側面1aと外側面1bの上部と下部を湾曲して、前記上面1c及び底面1dとの連続面を曲面で連続し、前記内側面1a側の曲面の曲率半径を前記外側面1b側の曲面の曲率半径より小さく設定したことにより、枠体1を手で握りやすい形状にすることができた。
【0009】
また、前記伝熱部材3が柔軟性のあるシート状素材で構成されていることにより、枠体1の内壁面が曲面で構成されていても伝熱部材3を枠体1の形状に合わせて配置でき、ヒータ2の熱が確実に枠体1の表面に伝わるものとなる。
【0010】
また、前記枠体1は上板1Aと底板1Bとによって構成し、前記上板1Aには前記ヒータ2と第1の伝熱部材3aを、前記底板1Bには第2の伝熱部材3bを配置し、前記上板1Aの下端部と前記底板1Bの上端部とが係合して前記枠体1を構成すると共に、前記枠体1内では、前記第1の伝熱部材3aの下端部と第2の伝熱部材3bの上端部とが接続部6によって接続して前記伝熱部材3を構成することにより、ヒータ2と伝熱部材3a・3bとが予め配置された状態で、上板1Aと底板1Bの組立作業を行なうことができる。
【0011】
また、前記上板1Aの下端部が前記底板1Bの上端部の内側に係合するように配置して、前記上板1Aと前記底板1Bとの係合部5を形成し、前記上板1Aの下端部と前記底板1Bの上端部との間で前記第1の伝熱部材3aと前記第2の伝熱部材3bとが接続する接続部6を形成することにより、枠体1の上板1Aと底板1Bを嵌合するときに、第1の伝熱部材3aと第2の伝熱部材3bとが接続することができる。
【0012】
また、前記接続部6は前記枠体1の少なくとも内側面1a側に設けることにより、ヒータ2の熱が底板1Bに配置された第2の伝熱部材3bにも伝わりやすくなる。
【0013】
また、前記枠体1の外側面1bには、電源からの電力供給を受けるための電源入力部7を設けると共に、前記枠体1内には前記電源入力部7から左右方向に伸びる配線コード7aを配置し、前記ヒータ2は両端が前記配線コード7aに接続すると共に、前記配線コード7aとの接続位置から前記電源入力部7とは反対側の前記内側面1aに沿って円周状に配置され、前記ヒータ2と前記電源入力部7との間に所定の距離Lが形成されていることにより、電源入力部7は低温度を維持でき、安定して動作するものとなる。
【0014】
また、前記枠体1内には前記ヒータ2と前記電源入力部7との間に仕切板8aを配置し、前記電源入力部7の収納室8を形成したことにより、枠体1内のヒータ2の熱で温められた空気は仕切板8aで遮られるので、電源入力部7を低温度に維持できる。
【0015】
また、前記電源入力部7は交流電源もしくはUSB電源を接続可能となっていることにより、使用目的や使用場所によって電源を選択して使用することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明の保温器は、枠体1を中空ドーナツ状に形成し、枠体1内の内側面1aに沿って円周状にヒータ2を配置し、ヒータ2と接続する伝熱部材3を枠体1内の内側面1aから上面1cと底面1dを経て外側面1bまで配置して、枠体1の表面に放熱面4を構成したものであり、ヒータ2の熱が伝熱部材3によって拡散し、枠体1の放熱面4の表面温度が上昇するものであり、ヒータ2を配置した枠体1の内側面1aが最も温度が高くなる。
【0017】
ドーナツ状に形成した枠体1の中央には穴が開いているから、穴が開いた枠体1の中央部分に飲料用の容器を置くことができ、枠体1が容器の側面を囲むように位置して、枠体1の内側面1aが容器の側面に接触することで、容器に入った飲み物を保温することができる。この発明の構成では、最も温度の高い内側面1aが容器の側面に接触し、容器の側面から熱が伝わるので、容器に入った飲み物を効率よく温めることができるものとなり、容器に入った飲み物が冷めにくくなり、飲み物を用意してしばらく時間が経過した後でも温かい飲み物を飲むことができるものとなった。
【0018】
また、枠体1の表面が放熱面4となるから、置き場所をとらないコンパクトな枠体形状にすることができ、机の上に置いても邪魔にならない形状と大きさを備えた保温器が実現できたものである。
【0019】
更に、この発明の枠体形状であれば、枠体1の上に手や物品を置いたり、枠体1を手で握ったりすることもでき、飲料用の容器を保温する目的の他に、手や物品を温めたいときにも使用することができるものとなり、使用用途が飲料用の容器の保温に限定されることなく、多用途に利用できる保温器が構成できたものである。
【0020】
また、枠体1の上面1cと底面1dを平面で構成することで、枠体1を机の上などに置いたときに安定感が得られると共に、枠体1の上面1cに物品を置いたときに、物品が安定するものとなった。更に、枠体1の上に物品を置いたときに、物品と枠体1の放熱面4との接触面積が多くなるので、放熱面4から物品に熱が伝わりやすくなり、枠体1の上に物品を置いたときにも、確実に物品の保温を行うことができる。
【0021】
また、枠体1の内側面1aと外側面1bの上部と下部を湾曲して、上面1c及び底面1dとの連続面を曲面で構成し、内側面1aの曲率半径を外側面1bの曲率半径より小さく設定したものであり、枠体1を手で握ったときに、手の平は外側面1bの曲面に沿って丸めやすく、一方、指先は内側面1aにかけやすい形状となっているから、手で握りやすい枠体構造が実現できると共に、手が枠体1の放熱面4と接触しやすくなって、手を温めやすくなったものである。
【0022】
また、伝熱部材3を柔軟性のあるシート状素材で構成しているから、枠体1の内壁が曲面で構成されていても、伝熱部材3を枠体1の形状にあわせて変形させながら取り付けることができ、伝熱部材3を枠体1内の所定の位置に正しく配置することができるので、枠体1と伝熱部材3との間に隙間ができにくく、放熱面4の全体に熱が伝わり均一な温度を維持できるものとなった。
【0023】
また、枠体1は上下に分割して上板1Aと底板1Bとで構成し、上板1Aにはヒータ2と第1の伝熱部材3aを配置し、底板1Bに第2の伝熱部材3bを配置しており、上板1Aの下端部と底板1Bの上端部との間に係合部5を設け、第1の伝熱部材3aの下端部と第2の伝熱部材3bの上端部との間に接続部6を設け、上板1Aの下端部と底板1Bの上端部とを嵌合して係合部5によって係合したときに、第1の伝熱部材3aと第2の伝熱部材3bとが接続する構成とした。このため、ヒータ2と伝熱部材3a・3bが取り付けられた状態で上板1Aと底板1Bの組立を行なうことができ、枠体1の組立作業を容易に行うことができるものとなった。
【0024】
また、上板1Aの下端部が底板1Bの上端部の内側に嵌合するように構成し、上板1Aの下端部の外側と底板1Bの上端部の内側との間に第1の伝熱部材3aと第2の伝熱部材3bとが接続する接続部6を配置したから、上板1Aの下端部と底板1Bの上端部を嵌合するときに枠体1の内部構造が見えなくても、第1の伝熱部材3aと第2の伝熱部材3bが確実に接続できるものとなり、容易に組立作業を行なうことができるものとなった。
【0025】
また、第1の伝熱部材3aと第2の伝熱部材3bとが枠体1の内側面1a側で接続するように接続部6を形成しているから、ヒータ2の熱が第2の伝熱部材3bに伝わりやすくなり、枠体1の放熱面4の全体の温度を均一に維持しやすくなった。
【0026】
また、枠体1の外側面1bに電源入力部7を設け、枠体1内には電源入力部7から左右方向に伸びる配線コード7aを配置し、ヒータ2は両端を配線コード7aに接続して、電源入力部7とは反対側の枠体1内の内側面1aに沿って配置して、ヒータ2を電源入力部7から距離Lをあけた位置に配置している。このため、電源入力部7にはヒータ2の熱が伝わりにくくなり、電源入力部7を低温度に維持できるので、電源入力部7は熱の影響を受けることなく安定して動作するものとなった。
【0027】
また、枠体1内のヒータ2と電源入力部7との間に仕切板8aを配置して電源入力部7の収納室8を形成し、ヒータ2の熱で温められた空気が仕切板8aで遮られて収納室8に向かわないようにできるから、収納室8の電源入力部7を低温度に維持でき、電源入力部7は熱の影響を受けることなく安定して動作するものとなった。
【0028】
また、電源入力部7は交流電源とUSB電源への接続が可能となるように設定している。パソコンにはUSB電源を備えているから、パソコン作業時にはパソコンのUSB電源に接続すれば、保温器を手元のすぐ近くに置くことができ、手を温めながらパソコンのキーボード操作を行なうことができるものとなる。この構成では、使用目的や使用場所に合わせて接続する電源を選択することができるから、使い勝手が向上できるものとなった。
【符号の説明】
【0029】
1 枠体
1a 内側面
1b 外側面
1c 上面
1d 底面
1A 上板
1B 底板
2 ヒータ
3 伝熱部材
3a 第1の伝熱部材
3b 第2の伝熱部材
4 放熱面
5 係合部
6 接続部
7 電源入力部
7a 配線コード
8 収納室
8a 仕切板
L 距離
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施例を示す保温器の横断面図である。
【図2】この発明の実施例を示す保温器の縦断面図である。
【図3】この発明の実施例を示す保温器の組立て前の状態を示す要部拡大断面図である。
【図4】この発明の保温器の使用例である容器を保温している状態を示す説明図である。
【図5】この発明の保温器の他の使用例である手を保温している状態を示す説明図である。
【図6】この発明の保温器の他の使用例であり、容器を保温している状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図に示す実施例によってこの発明を説明すると、1は中央に穴があいた中空ドーナツ状に形成した保温器の枠体、1aは穴が開いた枠体1の中央に形成される内側面、1bは枠体1の外周を構成する外側面、1cは内側面1aと外側面1bの上部に連続する枠体1の上面、1dは内側面1aと外側面1bの下部に連続する枠体1の底面である。
2は枠体1内に配置する可撓性のあるコード状の発熱体で構成したヒータであり、ヒータ2は枠体1内の内側面1aに沿って円周状に配置されている。3はヒータ2に接続するアルミ箔で構成したシート状の伝熱部材であり、シート状の伝熱部材3の片面は両面テープなどの接着面となっており、ヒータ2を覆うように枠体1内の内壁面に貼り付けられている。
【0032】
7は枠体1の外側面1bに設けた電源入力部、7aは電源入力部7から枠体1内に伸びる2本の配線コードであり、ヒータ2の両端部が配線コード7aに接続している。9は枠体1の外側面1bに設けた運転スイッチ、10は電源入力部7に接続する電源コードであり、電源コード10を介して電源入力部7に電力が供給され、運転スイッチ9によって運転の開始操作をすると電源入力部7からヒータ2への通電が行なわれてヒータ2が発熱し、運転スイッチ9によって運転の停止操作をすると電源入力部7からヒータ2への通電が遮断されてヒータ2の発熱が停止する。
【0033】
4は枠体1の表面に形成した放熱面であり、実施例では伝熱部材3が枠体1内の内側面1aでヒータ2と接続して、上面1cと底面1dから外側面1bまで配置されており、伝熱部材3を配置した内側面1aと外側面1bと上面1cと底面1dが放熱面4となる。ヒータ2が発熱すると、ヒータ2から伝熱部材3に熱が伝わって伝熱部材3の全体に広がり、伝熱部材3の熱が枠体1の放熱面4に伝わって枠体1の表面温度が上昇するので、枠体1の放熱面4に手や物品を触れることで、手や物品を温めることができる。なお、枠体1の内側面1aはヒータ2からの熱が直接伝わるので最も温度が高くなる。
【0034】
11は紙コップや缶飲料などの飲料用の容器であり、机の上などに枠体1を置き、穴の開いた枠体1の中央に飲料用の容器11を置いて使用することができるようになっている。飲料用の容器11の側面下部に枠体1の内側面1aが接触するので、枠体1の内側面1aから容器11に熱が伝わり、飲料用の容器11に入った飲み物を温めることができるものである。
紙コップや缶飲料などの容器11では、容器の底と床面の間に隙間があいていることがあるが、この発明の保温器を使用すれば、ヒータ2の熱が容器11の側面から伝わるので、容器11に入った飲み物を確実に温めることができる。
【0035】
このため、作業の合間に飲み物を飲んで休息をとったり、飲み物を飲みながら作業を行なったりするときにおいて、飲み物を用意してからしばらく時間が経過した後でも、飲み物が冷たくなっておらず、温かい飲み物を飲むことができるものとなった。
また、飲料用の容器11の下部の外径寸法と枠体1の穴の内径寸法が一致して、飲料用の容器11が枠体1にぴったりとはまっているときは、飲料用の容器11の下部に外径寸法の大きい枠体1が位置するので飲料用の容器11が安定するものとなり、容器11の転倒防止の効果を得ることもできるものとなった。
【0036】
従来は、枠体1の高さ寸法を、容器11の側面全体を覆う高さに設定しており、容器11との接触面が増えて保温性能を高くすることができるが、使用用途が容器11の保温に限定されてしまう。この発明の保温器は、飲料用の容器11以外の他の物品や手を枠体1の上面1cの上に置いたり、枠体1を手で握ったりすることができるようにするため、枠体1の上に物品や手を置いたときにちょうどよい高さとなり、また、手で握りやすい太さとなるように、枠体1の外径寸法を設定している。枠体1の上に載せる物品として、パンやドーナツのような袋に入った食料品があり、袋に入ったパンを枠体1の上面1cの上に置くことで温めることができる。また、枠体1の上面1cの上に手を置いたり、枠体1を手で握ったりすることで、手指を温めることができるものであり、従来のように飲料用の容器11だけでなく、多用途に利用できる枠体形状の保温器が実現できたものである。
【0037】
この発明の保温器は、飲料用の容器11の保温をするときには、最も温度が高くなる枠体1の内側面1aが容器11の側面に接触して、確実にヒータ2の熱を容器11に伝えることができるから、容器11の側面全体を覆う構成にしなくても保温性能を大きく低下させることはなく、飲み物を保温することができるものであり、保温器をコンパクトな枠体形状で構成することができるから、机の上に置いても邪魔にならず、取扱性が良いものとなった。
【0038】
また、この発明の実施例の枠体1は上面1cと底面1dを平面で構成しており、枠体1を机などの上に置いて使用するときには、枠体1の底面1cと机との接地面が増えるから、安定感のある枠体形状とすることができた。一方、枠体1の上面1cに物品を載せたときには、物品と上面1cとの接触面積が増えるので、上面1cの上に載せた物品が安定し、放熱面4から物品に効率よく熱を伝えることができるものとなり、物品を確実に温めることできるものとなった。
【0039】
容器11を保温するときにおいて、背の高い容器11に使用するときは枠体1の位置を高くした方が、飲み物が温まりやすくなる。この発明の保温器は上下に複数個重ねて使用することができ、枠体1の上面1cと底面1dを平面で構成しているから、枠体1を上下に重ねても安定しており、保温器を重ねた状態で容器11の保温に使用すれば、サイズの大きい背の高い容器11でも確実に保温することができる。また、図6のように枠体1の下部に、枠体1と同様に中央に穴を開けたドーナツ状の支持部材を配置してもよく、支持部材の上に保温器を載せて使用することで、枠体1の内側面1aを容器11の側面の高い位置で接触させることができ、背の高い容器11でも温めることができる。
【0040】
また、枠体1を握ることで手を温めるときは、図5のように手の平を丸めて枠体1の上面1cから外側面1bに添え、指を曲げて枠体1の内側面1aにかけた状態となり、手の平と指先とで曲げ角度が異なる。この発明の実施例では、枠体1の内側面1aと外側面1bの上部と下部は上面1c及び底面1dに向けて湾曲して、上面1c及び底面1dとの連続面を曲面で構成し、手の平があたる外側面1b側の曲面の曲率半径を大きく設定し、指がかかる内側面1a側の曲面の曲率半径を小さく設定したものである。このようにすると、枠体1を握るときに、外側面1bの曲面に沿って手の平を丸めやすく、一方、内側面1aの曲面の角度に合わせて指を曲げることで、指が内側面1aにかかりやすくなる。
このため、枠体1を握ったときに握りやすい形状となり、手の平と指先が枠体1の放熱面4と接触しやすくなり、枠体1の放熱面4との接触面積が増えることで、枠体1を握った手を温めることができるものとなった。
【0041】
また、この発明では伝熱部材3をアルミ箔のような柔軟性のあるシートで構成しているから、枠体1の内壁面が曲面で形成されていても、伝熱部材3は枠体1の曲面形状に沿って変形しながら貼り付けることができるものである。このため、ドーナツ形状の枠体1でも伝熱部材3の取り付け作業が簡単にできるものであり、枠体1と伝熱部材3との間に大きな隙間を作ることなく伝熱部材3を配置できるから、枠体1の表面温度の低い部分ができてしまうことはなく、枠体1の放熱面4の全体を均一な温度に維持できるものとなる。
【0042】
図3において、1Aは枠体1の上板、1Bは枠体1の底板であり、枠体1は上下2つに分割されて上板1Aと底板1Bを上下に重ねて組み立てる構成であり、実施例では上板1Aの下端部が底板1Bの上端部の内側に嵌合するように形成されている。5は上板1Aの下端部と底板1Bの上端部との間に設けた係合部であり、実施例の係合部5は上板1Aに設けたツメ5aと、底板1Bに設けた突起5bとで構成されており、上板1Aの下端部と底板1Bの上端部を嵌合したときに、係合部5であるツメ5aと突起5bとが係合して上板1Aと底板1Bが固定されるので、枠体1を構成することができる。
【0043】
一方、伝熱部材3も上下2つに分割されており、3aは上板1Aに取り付ける第1の伝熱部材、3bは底板1Bに取り付ける第2の伝熱部材であり、上板1Aにはヒータ2が取り付けられ、そのヒータ2を覆うように第1の伝熱部材3aが配置され、底板1Bには伝熱部材3bだけが配置されている。6は第1の伝熱部材3aの下端部と第2の伝熱部材3bの上端部との間に設けた接続部であり、上板1Aと底板1Bを嵌合して組み立てるときに、第1の伝熱部材3aと第2の伝熱部材3bとが接続部6を介して接続し、枠体1内に伝熱部材3を構成することができる。
【0044】
この構成では、上板1Aにヒータ2と第1の伝熱部材3aが配置され、底板1Bに第2の伝熱部材3bが配置された状態で、枠体1の組立作業を行なうことができるものであり、上板1Aと底板1Bを嵌合して係合部5によって係合するだけで、枠体1を構成することができ、枠体1の組立作業が容易に行なえるものとなった。
また、枠体1内の上板1A側にヒータ2が配置されるから、枠体1はヒータ2が配置された上板1A側の内側面1aと外側面1bと上面1cの表面温度が高くなり、第2の伝熱部材3bは第1の伝熱部材3aから接続部6を介して熱が伝わるので、底板1B側の内側面1aと外側面1bと底面1dの表面温度は上板1A側よりも低くなる。
【0045】
このため、枠体1の中央の穴に飲料用の容器11を置いたときは、容器11の側面に表面温度の高い内側面1aを接触させることができ、枠体1の上に手や物品を置いたときは、手や物品が表面温度の高い上板1A側の内側面1a・外側面1b・上面1cと接触しやすくなる。また、枠体1を手で握ったときは、手の平と指先が上板1A側と多く接触するので、手で枠体1を握ったときも手を温めやすくなり、容器11の保温や手を温めるのに最適な構造となった。一方、枠体1の底面1d側の表面温度を低くすることで、枠体1を直接机の上に置いても、熱による設置面の変形や変色の心配がないものとなった。
【0046】
上記構成において、接続部6は枠体1の内側面1a側に配置するとよく、ヒータ2から第2の伝熱部材3bまでの距離が短くなるので、ヒータ2の熱が第2の伝熱部材3bにも伝わりやすくなる。このため、第1の伝熱部材3aと第2の伝熱部材3bとの間で大きな温度差が生じにくくなり、枠体1の放熱面4の全体の温度を均一に維持できるから、枠体1を手で握ったときに大きな温度差を感じることはなく、快適な使用感が得られるものとなった。
【0047】
また、伝熱部材3を柔軟性のあるアルミ箔シートで構成しているから、伝熱部材3の形状を簡単に変形することができる。この発明の実施例では、上板1Aに配置された第1の伝熱部材3aの下端部を上板1Aの下端部で折り返して、上板1Aの下端部の外周面側に配置すると共に、底板1Bに配置された第2の伝熱部材3bの上端部を底板1Bの内側の上端部まで配置している。この構成では、上板1Aの下端部が底板1Bの上端部の内側に嵌合したときに、上板1Aの下端部の外周面に折り返された第1の伝熱部材3aの下端部と底板1Bの上端部に位置する第2の伝熱部材の上端部とが接触するので、第1の伝熱部材3aと第2の伝熱部材3bとが接続できるものとなる。
【0048】
枠体1の上板1Aと底板1Bとを係合するときに、枠体1の内部構造が見えにくいため、第1の伝熱部材3aと第2の伝熱部材3bとが接続されたかどうかの確認が難しいが、この発明の構造であれば、上板1Aの下端部と底板1Bの上端部を嵌合するだけで、第1の伝熱部材3aと第2の伝熱部材3bとを確実に接続させることができるので、枠体1を簡単に組立てることができるようになり、組立時の作業効率が向上できるものとなった。
【0049】
実施例では第1の伝熱部材3aと第2の伝熱部材3bをアルミ箔シートで構成しているから、第1の伝熱部材3aと第2の伝熱部材3bが直接接続する構造としているが、接続部6は第1の伝熱部材3aの下端部と第2の伝熱部材3bとの間に金属製のプレート等を取り付けて構成し、上板1Aと底板1Bとを嵌合したときに金属製プレート同士が接触することによって第1の伝熱部材3aと第2の伝熱部材3bとが接続できるようにしてもよい。
【0050】
また、この発明の実施例において、ヒータ2と電源入力部7との間隔が所定の距離Lとなるように、ヒータ2と電源入力部7とを接続する配線コード7aの長さを設定している。伝熱部材3の両端部もヒータ2の両端部と同じ位置になるよう配置し、伝熱部材3から電源入力部7までの間も所定の距離Lとなるように設定している。ヒータ2と伝熱部材3を電源入力部7との間に距離Lをあけて配置することにより、ヒータ2や伝熱部材3の温度が上昇しても電源入力部7には伝わらないようにすることができる。このため、電源入力部7を低温度に維持することができ、電源入力部7がヒータ2の熱の影響を受けにくくなり、電源入力部7の動作が安定すると共に、電源入力部7の故障が発生しにくくなる。
【0051】
また、8aは枠体1内のヒータ2と電源入力部7との間に配置した仕切板、8は仕切板8aによって枠体1内に形成された電源入力部7の収納室であり、収納室8はヒータ2とは区画された空間を形成している。この構成では、ヒータ2の熱によって温められた枠体1内の空気は仕切板8aで遮られて収納室8に向かわないようにできるから、収納室8の温度上昇が抑えられ、収納室8に配置された電源入力部7を低温度に維持することができるものとなる。このため、電源入力部7がヒータ2の熱の影響を受けにくくなり、電源入力部7の動作が安定すると共に、電源入力部7の故障が発生しにくくなる。
【0052】
また、実施例の電源入力部7は、交流電源の他にUSB電源も接続可能となっており、すぐ近くに交流電源のコンセントがないときでも、パソコンなどのUSB電源に接続することで使用することができる。パソコンのUSB電源に接続することで、保温器をキーボードのすぐ近くに置いてハンドウォーマーとして使用することができるものである。パソコンのキーボード操作を行なうときに、手がかじかんで指先が冷たくなっているとキーボード操作に支障がでる。このような場合に枠体1の上に手を置いて手指を内側面1aや上面1cに触れることで手指を温めることができ、手指をスムーズに動かせるようになってキーボード操作ができるようになる。
【0053】
USB電源を使用するときは交流電源よりも電力が低くなり、ヒータ2の最高温度は交流電源に接続するときよりも低くなるので、枠体1の表面温度も低くなる。飲料用の容器11に入った飲み物の保温を行なうときは、枠体1の表面温度ができるだけ高くするため交流電源を使用すると良いが、パソコン作業時にハンドウォーマーとして使用するときには枠体1の表面温度は低くてもよく、USB電源に接続することで快適な使用感が得られるものである。
このように、交流電源に接続するかUSB電源に接続するかは、使用する場所や使用目的に合わせて適宜選択すればよく、電源を使い分けることで、使い勝手が向上できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手または飲食物等の容器のための保温器であって、
中空ドーナツ状に形成された枠体(1)と、該枠体(1)内に備えたヒータ(2)と、
該ヒータ(2)と接続されて枠体(1)表面にヒータ(2)の熱を伝える伝熱部材(3)とを設け、内側に前記伝熱部材(3)を配置した前記枠体(1)の表面温度が上昇して放熱する放熱面(4)を構成し、
前記ヒータ(2)は前記枠体(1)内の内側面(1a)に沿って円周状に配置し、
前記伝熱部材(3)は前記ヒータ(2)と接続しながら前記内側面(1a)から上面(1c)と底面(1d)を経て外側面(1b)まで配置し、
前記放熱面(4)は前記内側面(1a)が高温部を構成することを特徴とする保温器。
【請求項2】
前記枠体(1)は前記上面(1c)と前記底面(1d)とを平面で構成することを特徴とする請求項1に記載の保温器。
【請求項3】
前記枠体(1)は前記内側面(1a)と外側面(1b)の上部と下部を湾曲して、前記上面(1c)及び底面(1d)との連続面を曲面で連続し、
前記内側面(1a)側の曲面の曲率半径を前記外側面(1b)側の曲面の曲率半径より小さく設定したことを特徴とする請求項1または2に記載の保温器。
【請求項4】
前記伝熱部材(3)が柔軟性のあるシート状素材で構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の保温器。
【請求項5】
前記枠体(1)は上板(1A)と底板(1B)とによって構成し、
前記上板(1A)には前記ヒータ(2)と第1の伝熱部材(3a)を、前記底板(1B)には第2の伝熱部材(3b)を配置し、
前記上板(1A)の下端部と前記底板(1B)の上端部とが係合して前記枠体(1)を構成すると共に、前記枠体(1)内では、前記第1の伝熱部材(3a)の下端部と第2の伝熱部材(3b)の上端部とが接続部(6)によって接続して前記伝熱部材(3)を構成することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の保温器。
【請求項6】
前記上板(1A)の下端部が前記底板(1B)の上端部の内側に係合するように配置して、前記上板(1A)と前記底板(1B)との係合部(5)を形成し、
前記上板(1A)の下端部と前記底板(1B)の上端部との間で前記第1の伝熱部材(3a)と前記第2の伝熱部材(3b)とが接続する接続部(6)を形成することを特徴とする請求項5に記載の保温器。
【請求項7】
前記接続部(6)は前記枠体(1)の少なくとも内側面(1a)側に設けることを特徴とする請求項5または6に記載の保温器。
【請求項8】
前記枠体(1)の外側面(1b)には、電源からの電力供給を受けるための電源入力部(7)を設けると共に、
前記枠体(1)内には前記電源入力部(7)から左右方向に伸びる配線コード(7a)を配置し、前記ヒータ(2)は両端が前記配線コード(7a)に接続すると共に、前記配線コード(7a)との接続位置から前記電源入力部(7)とは反対側の前記内側面(1a)に沿って円周状に配置され、
前記ヒータ(2)と前記電源入力部(7)との間に所定の距離(L)が形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の保温器。
【請求項9】
前記枠体(1)内には前記ヒータ(2)と前記電源入力部(7)との間に仕切板(8a)を配置し、前記電源入力部(7)の収納室(8)を形成したことを特徴とする請求項8に記載の保温器。
【請求項10】
前記電源入力部(7)は交流電源もしくはUSB電源を接続可能となっている請求項8に記載の保温器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−9903(P2013−9903A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145689(P2011−145689)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000003229)株式会社トヨトミ (124)
【Fターム(参考)】