説明

保温装置およびこの装置を有する炊飯器

【課題】保温中のご飯の水分不足および黄変をなくした保温装置およびこの装置を有する炊飯器を提供すること。
【解決手段】炊飯された被炊飯物を収容する容器と、前記容器内の被炊飯物を加熱する保温ヒータと、前記保温ヒータを制御して被炊飯物を通常保温温度で保温する制御装置を備え、この制御装置には、容器内の飯量を所定時間間隔で自動的に判定する飯量判定手段を設け、飯量判定手段の判定により前記保温ヒータを制御して、飯量が多いと判定されたときは通常保温温度で保温制御を行い、飯量が減少したと判定されたときはその減少量に対応して保温温度を通常保温温度から所定温度低下させて保温制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ご飯を保温する保温装置およびこの保温装置を有する炊飯器に係り、特に炊き上がったご飯をいわゆる通常保温温度で保温する保温装置およびこの装置を有する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般家庭において電気炊飯器は必需品となっており、種々のタイプのものが開発されている。この炊飯器は、通常、炊飯終了後もほぼ炊き立て状態でご飯を食することができるように保温機能が設けられている。
【0003】
この保温機能は、炊き上がったご飯を所定温度に保温制御するものであるが、保温温度を高くすると、ご飯が黄色ないし褐色に変色し風味が低下してしまい、また反対に、この保温温度を低くすると、細菌が増殖し不快臭が発生してしまうことから、これらの変色或いは不快臭が発生しない温度で保温制御されている。この保温温度は、炊き立て時の温度、例えば約110℃より低い約73℃前後、或いはこの温度よりさらに低い約65℃前後に設定されている。これらの保温温度による制御は、炊飯器業界において、前者(約73℃)は通常保温制御、後者(約65℃)は低温保温制御と呼ばれている。
【0004】
ところが、これらの保温制御は、適量の保温量(すなわち、ご飯の残量)および保温時間が比較的短い場合は、美味しい状態で保温しておくことができるが、保温量が少なくなり或いは保温時間が長くなると変色および細菌の増殖等が発生してしまうことがある。そこで、この課題を解決するために、種々の工夫がなされた保温機能を備えた電気炊飯器が開発されている(下記、特許文献1、2参照)。
【0005】
図7は下記特許文献1に記載された電気炊飯器の炊飯・保温時間と鍋内温度との関係を示したグラフである。
【0006】
この炊飯器は、蒸らし工程終了後に低温保温制御するものである。すなわち、蒸らし工程終了後に保温工程へ移行されると、炊飯器の加熱ヒータは、炊飯ヒータから保温ヒータへ切り換えられて、鍋内の温度が蒸らし工程時の温度Tsh(約110℃)から徐々に低下して、低温保温の設定温度Ts(例えば、65℃)に達し、この設定温度で保温されて、この低温保温は、所定時間t(例えば、6時間)を経過するまで継続される。そして、この時間tを経過した時点で、昇温ヒータへ通電されて鍋内が昇温される。
【0007】
この昇温開始と同時に、不図示の昇温タイマーが作動されて所定時間ts(例えば、4分)が計測され、この時間における昇温値により鍋内のご飯の保温量が判定される。この判定で保温量が多いときは、保温ヒータへの通電が再開されて、鍋内が中間保温の設定温度Ts(例えば、68℃)まで昇温され、この昇温は所定時間t(例えば、8時間)を経過するまで実行される(図の点線)。また、保温量が少のときは、所定時間t(例えば、13時間)を経過するまで継続(図の実線)されて、この時点において再度昇温されて、以後、通常保温温度Ts(例えば、72℃)で保温される。すなわち、この低温保温制御は、ご飯の保温量が多いときは比較的短い時間中間温度に昇温させ、その後通常保温温度へ上げ、また、保温量が少ないときは比較的長い時間中間温度に昇温させ、その後通常保温温度へ上げる保温制御をするものである。
【0008】
また、図8は下記特許文献2に記載された電気炊飯器の炊飯・保温時間と鍋内温度との関係を示したグラフである。
【0009】
この炊飯器は、保温中にご飯を再加熱するもので、保温制御装置に再加熱指示手段を設け、保温時にユーザーがこの再加熱指示手段を操作して、鍋内温度を通常保温温度からより高い温度(87℃)へ上昇させて、ご飯を加熱するものである。なお、この再加熱時には、鍋内の保温量を判定し、このご飯の保温量に応じた加熱量で制御するようになっている。
【特許文献1】特開2002−209736号公報(図5、段落〔0038〕〜〔0042〕)
【特許文献2】特開平6−277144号公報(図5、段落〔0012〕〜〔0014〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1の炊飯器によれば、保温量に応じて低温から中間温度さらに通常保温温度へ昇温されるので、特に、ご飯の保温量が多いときに顕著な腐敗防止効果が発揮される。
【0011】
しかしながら、この炊飯器は、保温量を判定する際に、低温から蒸らし終了時とほぼ同じ温度へ昇温して、この昇温により保温量を判定しているので、特に、保温量が少ないときに、ご飯が過度に加熱されご飯の水分が蒸発されて食感が悪くなり、またご飯の表面が黄色に変色し、さらに風味が低下する恐れがある。また、この保温制御では、保温量が少ないときであっても、低温から中間温度さらに通常保温温度へ昇温されるので、ご飯が過度に加熱されて水分不足或いは変色等を起こす恐れがある。
【0012】
また、上記特許文献2の炊飯器は、保温中にご飯を再加熱するものであるが、この再加熱は、ユーザーが再加熱操作をしなければならないので、その操作が面倒になり、また、再加熱時に通常保温温度からより高い温度へ昇温させるので、水分不足或いは変色等を起こす恐れがある。
【0013】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、保温中のご飯の水分不足および黄変をなくした保温装置およびこの装置を有する炊飯器を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、さらに省エネ化を実現した保温装置およびこの装置を有する炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の保温装置の発明は、炊飯された被炊飯物を収容する容器と、前記容器内の被炊飯物を加熱する保温ヒータと、前記保温ヒータを制御して被炊飯物を通常保温温度で保温する制御装置とを有する保温装置において、
前記制御装置には前記容器内の被炊飯物の飯量を所定時間間隔で自動的に判定する飯量判定手段が設けられ、前記飯量判定手段の判定により前記保温ヒータを制御して、飯量が多いと判定されたときは、通常保温温度で保温制御を行い、飯量が減少したと判定されたときはその減少量に対応して前記保温温度を前記通常保温温度から段階的に所定温度低下させて保温制御をすることを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載の保温装置において、前記飯量判定手段は、保温時に保温温度を一時的に所定時間昇温させ、該時間内における昇温温度により前記容器内の被炊飯物の飯量を判定することを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、請求項2に記載の炊飯器において、前記飯量判定手段の昇温時間は、外気温によって決められていることを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載の保温装置において、前記飯量判定手段の昇温温度は、5℃以下に設定されていることを特徴とする。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の保温装置において、前記飯量判定手段は、2時間毎に前記容器内の飯量を判定することを特徴とする。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1に記載の保温装置において、前記制御装置は、前記飯量判定手段により飯量が多いと判定されたときは、通常保温温度の72〜73℃で保温制御を行い、飯量が半分程度に減少したと判定されたときは前記通常保温温度から1℃低下させ、さらに飯量が半分以下に減少したと判定されたときは前記通常保温温度から2℃低下させて保温制御することを特徴とする。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の保温装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記構成を備えることにより、以下の優れた効果を奏することができる。すなわち、請求項1の発明によれば、所定時間間隔で容器内の被炊飯物の飯量を自動的に判定し、飯量が多いときは、通常保温温度で保温制御を行い、飯量の減少に応じて保温温度を通常保温温度から所定温度低下させて保温制御することにより、ご飯のうまみを保持したまま最適な保温制御が可能になる。特に、飯量が少なくなったときに保温温度を下げるので、過度の加熱がなくなりご飯の水分不足を招来することがなく、また黄色ないし褐色等の変色を防止でき、さらに省エネも実現できる。また、飯量判定の時間間隔を比較的短い時間、例えば2時間程度にすると、きめ細かな最適な保温制御が可能になり、しかも、保温時間が長くなっても雑菌等が増殖し不快臭を発生させることがない。
【0023】
請求項2の発明によれば、保温時に保温温度を一時的に所定時間昇温させ、この検出時間内における昇温温度、すなわち温度勾配により容器内の飯量を判定するので、特別な検出器を使用することなく、通常、容器に設ける温度センサを利用することにより簡単に飯量の判定ができる。また、この判定手段によると、例えば、飯量を検出する時点或いはその直前に、保温装置の蓋が開かれると容器内の保温温度が一時的に低下するが、このような場合、温度勾配も低くなり、この温度勾配の低下により飯量が多いと判定されて保温温度が高めに制御されるので蓋開けによる温度低下を是正できる。
【0024】
請求項3の発明によれば、飯量判定手段の昇温時間が外気温によって決められることにより、飯量の判定精度が高くなる。
【0025】
請求項4の発明によれば、飯量判定手段の昇温温度が5℃以下に設定されることにより、ご飯が過度に加熱されることがなく、ご飯の水分不足および変色をなくすることができる。
【0026】
請求項5の発明によれば、また、飯量判定の時間間隔を2時間毎にすることにより、きめ細かな最適な保温制御が可能になり、しかも、保温時間が長くなっても雑菌等が増殖し不快臭を発生させることがなくなる。
【0027】
請求項6の発明によれば、飯量が多いときは、通常保温温度で保温制御を行い、飯量の減少に応じて保温温度を通常保温温度から所定温度低下させて保温制御することにより、ご飯のうまみを保持したまま最適な保温制御が可能になる。特に、飯量が少なくなったときに保温温度を下げるので、過度の加熱がなくなりご飯の水分不足を招来することがなく、また黄色ないし褐色等の変色を防止でき、さらに省エネも実現できる。
【0028】
請求項7の発明によれば、請求項1〜6のいずれかに記載の効果を奏する炊飯器を作製できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の保温装置として電気炊飯器を例示するものであって、本発明をこの電気炊飯器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【0030】
図1を参照して本発明の一実施例に係る電気炊飯器を説明する。なお、図1は、本発明の一実施例に係る電気炊飯器とこれを制御する制御装置のブロック図である。
【0031】
電気炊飯器1は、図1に示すように、被炊飯物が投入される鍋2と、この鍋2を収容し鍋内の被炊飯物を加熱する加熱ヒータ4、5、7を有する炊飯器本体3と、鍋2および本体3の開口部を覆う蓋体3’と、加熱ヒータを制御して被炊飯物を炊飯および保温する制御装置10を有している。
【0032】
炊飯器本体3は、鍋2を収容する有底筒状の内ケース(図示省略)と、この内ケースを覆う外ケースとを有し、内ケース内に鍋2が着脱自在に収容されるようになっている。内ケースは、底部付近の外周囲に加熱ヒータ4、側面ヒータ5が設けられている。また、炊飯器本体3は、その底部の中央部に鍋2の底面に接触するようにして温度検出センサ6および前面に操作プレート(図示省略)が装着されている。操作プレートには、炊飯スタート釦12、メニュー選択釦12、保温釦12、タイマー設定手段12および表示パネルが設けられ、この表示パネルに、例えば炊飯工程、時間、選択されたメニュー等が表示されるようになっている。なお、炊飯スタート釦、メニュー選択釦、タイマー設定手段は、それぞれ押し釦型のスイッチで構成されている。また、蓋体3’には、上蓋ヒータ7および蒸気排出穴8等が設けられている。
【0033】
制御装置10は、制御部11、演算処理部11および記憶部11、11を有するマイクロコンピュータからなる制御手段11を有し、この制御手段11に炊飯スタート釦12、炊飯メニュー選択釦12、保温釦12、タイマー設定手段12および温度検出センサ6、外気温検出センサ12からの出力を入力し、記憶部11、11に記憶された各種プログラムに基づいて所定の演算処理を行い所定のタイミングで底ヒータ4、側面ヒータ5および上蓋ヒータ7並びに表示パネルに炊飯工程13、時間13および選択されたメニュー13等を表示する。
【0034】
各種プログラムのうち、例えば、炊飯メニューは、複数種、例えば炊飯コース、白米・ふつうコース、玄米・ふつうコースおよび白米・すしめしコース等を有し、これらの炊飯メニューはメニュー選定釦により選定される。この選定手段により、例えば、白米・ふつうコースが選定されると、鍋内の米に糊化温度以下で吸水させる吸水工程、炊飯物を全加熱(フルパワー)で加熱する立上加熱工程、沸騰状態を保つ沸騰維持工程、沸騰維持終了後に行う蒸らし工程、この蒸らし工程後に行う追炊き工程、および蒸らし仕上げを行う蒸らし仕上げ工程を経て炊飯される。そして、この炊飯終了後は、保温工程に入り保温状態となる。
【0035】
次に、図2を参照して、保温工程を説明する。なお、図2は、保温工程における保温時間―温度の関係を示すグラフである。
【0036】
この保温工程では、通常保温温度で保温制御が行なわれるが、この保温制御中に、所定時間Ti、例えば2時間毎に鍋内の保温量を判定し、この判定結果により、保温温度を変更制御するので、この温度変更制御について説明する。
【0037】
炊飯工程が終了すると、図2に示すように、保温工程に入り、ここで通常保温制御が行われる。この保温工程では、加熱ヒータを保温ヒータへ切り換えて、鍋内の温度を炊飯工程終了時点の温度、約110℃から通常保温温度ts1の約74℃以下へ低下させる。この保温工程において、2時間毎に鍋内の保温量を判定し、保温量に応じて、保温温度を変更する。炊飯終了後2時間経過した第1回目の判定Jで、保温量が多いと判定されたときは、そのままの温度ts1の74℃で保温を継続し、また2時間経過した第2回目の判定Jで保温量が中量と判定されると、1℃下げて中間温度ts2の73℃で保温し、さらに2時間経過した第3回目の判定で保温量が少量と判定されると、さらに温度を下げts3の72℃で保温する。
【0038】
この保温制御によると、2時間間隔で容器内の被炊飯物の飯量を判定し、保温量が多いときは、通常保温温度で保温制御を行い、保温量の減少に応じて保温温度を通常保温温度から所定温度低下させるので、ご飯のうまみを保持したまま最適な保温制御が可能になる。特に、飯量が少なくなったときに保温温度を下げるので、過度の加熱がなくなりご飯の水分不足を招来することがなく、また黄色ないし褐色等の変色を防止できる、さらに省エネも実現できる。また、飯量判定の時間間隔を比較的短い時間、例えば2時間程度にすると、きめ細かな最適な保温制御が可能になり、しかも、保温時間が長くなっても雑菌等が増殖し不快臭を発生させることがなくなる。
【0039】
以下、この保温制御の具体例を図3〜図6を参照して説明する。なお、図3は保温量の判定を行う昇温制御のフローチャート、図4は外気温と判定量との関係を示したグラフ、図5は通常保温制御のフローチャート、図6は保温制御のフローチャートである。
(i)昇温制御
保温量は、2時間毎に保温温度を一時的に所定温度まで昇温し、このときの温度上昇値を検出することにより判定される。
【0040】
この昇温制御は、図3に示すように、昇温タイマーをスタートさせて、炊飯器の上蓋、側面および底部に付設したヒータ7、5、4を所定時間オンする(ステップS11)。このヒータオン制御は、例えば、上蓋ヒータ7を16秒間隔(スパン)で5.2秒間、側面ヒータ5を16秒スパンで12.5秒間、底ヒータ4を16秒スパンで0.9秒間オンする(ステップS12)。次のステップS13において、昇温タイマーで計時した計時時間と外気温とを考慮して設定した設定値の1230秒とを比較し、設定値を超えるときは、直ちに昇温タイマーを停止して、昇温時間Tsを検出し、この設定内のときは、ステップS14で温度検出センサ6の検出値がステップ数にして10step(この10stepは約5℃上昇)を超えるか否かを判定する。
【0041】
この設定時間内に、10stepを超えないときは、再びステップS13へ戻って昇温タイマーで計時される。そして、温度検出センサでの検出温度がステップ数にして10stepを超えるときは、昇温タイマーを停止し昇温時間Tsを検出する。
【0042】
この計時された昇温時間Tsは、鍋内のご飯の残量(保温量)に関係している。すなわち、保温量が少ないときは、昇温のスピードが速くなって昇温時間Tsが短くなり、逆に保温量が多いときはそのスピードが遅くなって昇温時間Tsが長くなり、この昇温時間Ts、すなわち温度勾配により保温量が判定できる。この判定法によると、例えば、飯量判定のタイミング又はその直前に、蓋を開けてしまった場合は、鍋内の温度が低下し昇温時間Tsが長くなるので、保温温度が高めに変更されるので、蓋開けによる保温温度低下を防止できる。
【0043】
また、昇温タイマー停止後は、ステップ16においてヒータオフ制御を行う。このヒータオフ制御は、底ヒータ4をオフし、上蓋ヒータ7を所定間隔、例えば16秒間隔(スパン)で2.0秒間、側面ヒータ5を16秒スパンで5.1秒間オンして行う。このヒータオフ制御により、結露を防止できる。
【0044】
保温量は、昇温時間Tsを計時することにより判定されるが、この時間は外気温によっても異なる。すなわち、外気温が低いときは鍋内の温度も低く、高いときは鍋内の温度も高くなっているので、この外気温により昇温開始してから、所定の温度に上昇するまでの時間が異なる。表1は、外気温とts時間と保温温度制御との関係を示した実験値の一例である。
【0045】
【表1】

<IMG SRC=“表01.gif”>
この表1から、例えば、外気温がゼロ度で保温量が4カップ以上のとき、保温温度74.0℃において、10step上昇させるのには、1230秒以上掛る。また、保温量が少なく2.0〜4.0カップ或いは1.0〜2.0カップでは、10stepへの上昇に1230秒以下の950〜1230秒或いは950秒以下になる。同様に、外気温30℃であると、時間が短縮されて、740秒以上、570〜740秒および570秒以下となる。図4は表1の関係を示している。
【0046】
このように、外気温によって昇温時間が変化するので、保温量の判定は、この外気温を考慮して昇温時間を計測するのが好ましい。上記の設定値1230秒は、外気温がゼロ度で保温量が4カップ以上、保温温度74.0℃のときの値である。
(ii)通常保温制御
保温工程においては、温度検出センサ6で検出した保温量に応じて、通常保温制御が行われる。この通常保温制御では、鍋内の温度が74〜72℃の範囲に制御される。
【0047】
この通常保温制御は、図5に示すように、ステップS21において温度検出センサ6での検出値と通常保温温度thと比較し、検出値が大きいときは、ヒータオフ制御を行い(ステップS22)、一方、小さいときは、ヒータオン制御を行う。ヒータオフ制御は、底ヒータ4をオフし、上蓋ヒータ7を所定間隔、例えば16秒間隔(スパン)で2.0秒間、側面ヒータ5を16秒スパンで5.1秒間オンすることによって行う。また、ヒータオン制御は、例えば、上蓋ヒータ7を16秒間隔(スパン)で5.2秒間、側面ヒータを16秒スパンで12.5秒間、底部ヒータを16秒スパンで0.9秒間オンすることによって行う。
(iii)保温制御
図6を参照して、保温制御を説明する。ステップS31で保温温度thの初期値を容量毎に外気温との関係で設定する。ステップS32で間隔タイマーTiの初期値を2時間に設定する。通常保温制御が開始され、ステップS34で2時間を経過したか否かを判定し、2時間経過時に昇温制御が開始される。この昇温制御で昇温時間が計測される(ステップS35)。次いで、ステップS36で保温量が多いと判定されたときは、保温温度ts1(74℃)で保温する。また、ステップS28で保温量が少なく中容量と判定されたときは、ts2(73℃)で保温、さらにこの保温量が少ないときは、保温温度ts3(72℃)で保温する。そして、このサイクルは2時間毎に繰り返し行われる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は本発明の一実施例に係る電気炊飯器とこれを制御する制御装置のブロック図である。
【図2】図2は保温工程における保温時間―温度の関係を示すグラフである。
【図3】図3は保温量の判定を行う昇温制御のフローチャートである。
【図4】図4は外気温と判定量との関係を示したグラフである。
【図5】図5は通常保温制御のフローチャートである。
【図6】図6は保温制御のフローチャートである。
【図7】図7は従来技術の電気炊飯器における炊飯・保温時間と鍋内温度との関係を示したグラフである。
【図8】図8は他の従来技術の電気炊飯器における炊飯・保温時間と鍋内温度との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0049】
1 炊飯器
2 鍋
3 炊飯器本体
4 底ヒータ
5 側面ヒータ
6 温度検出センサ
7 蓋体ヒータ
8 蒸気排出穴
10 制御装置
11 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯された被炊飯物を収容する容器と、前記容器内の被炊飯物を加熱する保温ヒータと、前記保温ヒータを制御して被炊飯物を通常保温温度で保温する制御装置とを有する保温装置において、前記制御装置には前記容器内の被炊飯物の飯量を所定時間間隔で自動的に判定する飯量判定手段が設けられ、前記飯量判定手段の判定により前記保温ヒータを制御して、飯量が多いと判定されたときは、通常保温温度で保温制御を行い、飯量が減少したと判定されたときはその減少量に対応して前記保温温度を前記通常保温温度から段階的に所定温度低下させて保温制御をすることを特徴とする保温装置。
【請求項2】
前記飯量判定手段は、保温時に保温温度を一時的に所定時間昇温させ、該時間内における昇温温度により前記容器内の被炊飯物の飯量を判定することを特徴とする請求項1に記載の保温装置。
【請求項3】
前記飯量判定手段の昇温時間は、外気温によって決められていることを特徴とする請求項2に記載の保温装置。
【請求項4】
前記飯量判定手段の昇温温度は、5℃以下に設定されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の保温装置。
【請求項5】
前記飯量判定手段は、2時間毎に前記容器内の飯量を判定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の保温装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記飯量判定手段により飯量が多いと判定されたときは、通常保温温度の72〜73℃で保温制御を行い、飯量が半分程度に減少したと判定されたときは前記通常保温温度から1℃低下させ、さらに飯量が半分以下に減少したと判定されたときは前記通常保温温度から2℃低下させて保温制御することを特徴とする請求項1に記載の保温装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の保温装置を有することを特徴とする炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−312871(P2007−312871A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143529(P2006−143529)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】