説明

保管棚

【構成】 回転自在な載置台3,4を例えば2層に設けた保管棚2を設け、載置台3に切り欠きを設けて、下層の載置台4と天井走行車8との間で、カセット34を移載自在にする。載置台3,4の支柱16,17にIDリーダ6を設けて、カセットのID36を読み取り、保管棚ファイル13に記憶する。
【効果】 天井走行車システムに1つの停止位置を設定するだけで、保管棚の各位置との間で物品の移載ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、天井走行車などとの間で、直接に物品を受け渡しして保管する保管棚に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、天井走行車の走行レールから保管棚を吊持して、天井走行車の物品を一時保管することを開示した(特許文献1)。ところで天井走行車が保管棚との間で物品を移載するには、保管棚に対する停止位置を定めて天井走行車にティーチングする必要があり、停止位置が増えるとティーチングの負担が大変になる。また保管棚の設置位置はロードポートとロードポートとの間に限られ、設置位置に制限がある。
【特許文献1】特許3067,682号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の基本的課題は、天井走行車の1つの停止位置に対して、複数の物品を保管できる保管棚を提供することにある。
請求項2の発明での追加の課題は、互いの干渉を避けながら、上下に複数の載置台を設置できるようにすることにある。
請求項3の発明での追加の課題は、ロードポートの上部にも保管棚を設置でき、しかも天井走行車が、ロードポート用の停止位置で、保管棚に対しても物品を移載できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、天井走行車が搬送する物品を保管するための保管棚であって、物品の保管位置を複数備えた載置台を支柱に対して回動自在に取り付けると共に、該載置台上の各保管位置を天井走行車との間の移載位置に割り出すように載置台を回動させるための回動手段を設けたことを特徴とする。なお移載相手の天井走行車は、昇降台を備えて、昇降運動で物品を移載するものが好ましい。また載置台は360°回転できるものが好ましいが、例えば両極端の保管位置の間を揺動するようなものでも良い。なおこの明細書で、割り出しは所定の角度位置に載置台を回動させることをいい、移載位置は天井走行車との間で物品を移載自在な位置をいう。
【0005】
好ましくは、前記載置台を少なくとも上下2段に設けると共に、少なくとも上側の載置台に物品の通過用の切り欠きを設け、さらに該切り欠きを前記移載位置に割り出すように上側の載置台を前記回動手段で回動自在にして、下側の載置台と天井走行車との間で物品を移載自在にする。
【0006】
また好ましくは、前記載置台を他の設備のロードポートの上部に、上面視でロードポートと重なるように設けると共に、ロードポートと天井走行車との間で移載する物品を通過させるための切り欠きを設け、さらに該切り欠きを前記移載位置に割り出すように上側の載置台を前記回動手段で回動自在にして、ロードポートと天井走行車との間で物品を移載自在にする。
【発明の効果】
【0007】
この発明では、載置台を回動させると、どの物品の保管位置でも天井走行車との間で物品を移載できる。このため天井走行車システムに対しては1つの停止位置を設定(ティーチング)すれば良く、また保管棚では複数の物品を保管できて、物品の保管能力が増す。
【0008】
請求項2の発明では、上側の載置台に切り欠きを設けて、下側の載置台との間で移載中の物品が通過可能にする。このため上下に複数段の載置台を設けることができて、物品の保管能力がさらに増す。
【0009】
請求項3の発明では、載置台の切り欠きを通過して天井走行車はロードポートと物品を移載できるので、ロードポートの上部にも保管棚を設けることができる。さらに天井走行車は同じ停止位置で、ロードポートや保管棚との間で物品を移載でき、また保管棚とロードポートとの間でも物品を移載できる。このためロードポートに対するバッファとして、保管棚を効率的に運用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0011】
図1〜図6に、実施例を示す。これらの図において、2は保管棚で、上下例えば2段の載置台3,4から成り、載置台は1段のみでも、あるいは3段以上でも良い。6はIDリーダで、例えば各載置台3,4に1台ずつ設ける。8は天井走行車で、10は半導体や液晶などの処理装置である。12は、天井走行車システムや保管棚2などを管理する物流コントローラで、保管棚ファイル13を備えて、例えば複数個の保管棚2に対して、物品の保管位置(棚番地)と物品のIDとを記憶する。また14は、天井走行車8のシステムを管理する天井走行車コントローラである。なお保管棚2を天井走行車システムの一部であるものと見なす場合、保管棚ファイル13を天井走行車コントローラ14に設けても良い。そして保管棚2や天井走行車システム及び処理装置10などは、例えばクリーンルーム内に設ける。
【0012】
保管棚2では、上側の載置台3を例えば支柱16でクリーンルームの天井により支持し、下側の載置台4を支柱17により、支柱16の下部に取り付ける。なお支柱16は固定で、載置台3は支柱17と共に支柱16に対して360°回転でき、下側の載置台4は支柱17に対して360°回転できる。
【0013】
20は物品の落下防止用の柵で、設けなくても良く、22はモータで、載置台3を支柱16に対して回転させ、また載置台4を支柱17に対して回転させる。さらに前記のIDリーダ6は各載置台3,4毎に1台、例えば支柱16,17側に取り付ける。また載置台3,4は各々4〜8個程度の物品を載置できるものとし、各保管位置毎に載荷センサ23を設けて、物品の有無を確認できるようにしてある。24は制御盤で、IDリーダ6や載荷センサ23の出力を物流コントローラ12に報告し、物流コントローラ12からは、物品を入出庫する載置台3,4の位置を入力され、それに応じてモータ22で載置台3,4を回転させる。
【0014】
天井走行車システムは、走行レール25と天井走行車8並びに天井走行車コントローラ14とで構成され、走行レール25は支柱26によりクリーンルームの天井などに支持されている。28は走行台車で、30は昇降駆動部であり、昇降台32を昇降させる。昇降台32は、物品の例としてのカセット34をチャックして昇降し、例えばカセット34の背面側にID36が取り付けてある。IDの種類は任意で、バーコードやRFID(無線により読み取り/書き込み自在なID)などでもよい。
【0015】
処理装置10では、走行レール25の直下にロードポート38を設け、扉40を介して、カセット34の搬出入ができるようにしてある。なおロードポート38は1カセット分の幅のものでも、複数カセット分の幅のものでも良い。そしてロードポート38や処理装置10内の物品は、図示しない製造コントローラにより管理され、天井走行車8が搬送中のカセットは、天井走行車コントローラ14が管理し、保管棚2で一時保管中のカセットは保管棚ファイル13で管理する。
【0016】
図2に、載置台3と載置台4とを重ねた状態を示し、上側の載置台3に切り欠き41を設けて、カセット34が載置台3を通過して、下側の載置台4に移載可能にしてある。このため、天井走行車は、上下何れの載置台3,4との間でも、直接カセットを移載自在である。また下側の載置台4にも切り欠き41を設けると、切り欠き41を通過してロードポートとの間で、カセット34の移載が自在になり、ロードポートの直上などのロードポートと干渉する位置に、保管棚を設けることができる。実施例の場合、載置台3,4を72°ずつ回転させると、天井走行車との間で移載自在な位置に、各保管位置を割り出すことができ、また天井走行車に対して割り出した同じ位置で、IDリーダ6によりID36を読み取ることができる。
【0017】
ID36の読み取りでは、カセット34が昇降台にチャックされている際に読み取っても良く、載置台3,4に荷下ろしした後に読み取るようにしても良い。特に、カセット34が昇降台でチャックされた状態でID36を読み取るようにすると、下側の載置台4には、IDリーダ6を設けなくても良い。また載置台3,4にカセット34を荷下ろしする際にも、載置台3や載置台4からカセット34を荷積みする際にも、ID36を読み取り、カセット34を確実に管理する。
【0018】
図3に、支柱16に対する載置台3の回転機構を示す。42は下側の支柱17の軸で、軸受け44により支持されながら、支柱16に対して回転自在にしてある。モータ22の駆動力はベルトなどの伝動手段46を介して軸42を回転させる。下側の載置台のモータやIDリーダ、載荷センサとの電気的接続のために、例えば支柱16側にフランジ48を設けて、その下面に配線を施し、載置台3側に設けたブラシ50と接触させて、電気的接続を行う。52,54,56はそれぞれ配線用のケーブルである。
【0019】
図1に戻り、保管棚2に天井走行車8から物品を荷下ろしする場合、物流コントローラ12は保管棚ファイル13を検索して、載置台3,4での空きの保管位置を求め、この位置が天井走行車8の停止位置の直下に来るように、モータ22を利用して、載置台3,4を回転させる。好ましくは天井走行車8の到着前に、載置台3,4の回転を完了させる。昇降台32を下降させて、カセット34を荷下ろしする際に、IDリーダ6は、荷下ろし中にもしくは荷下ろし後に、カセット34のID36を読み取り、物流コントローラ12に通信する。物流コントローラ12は、保管棚2の番号と、載置台3,4の何れかと、載置台の中での保管位置とを棚番地として、物品のIDと共に保管棚ファイル13に記憶する。なお棚番地は、どの保管棚のどの保管位置に物品が所在するかを特定するデータである。
【0020】
保管棚2から天井走行車8へ物品を荷積みする場合、物流コントローラ12は保管棚ファイル13を利用して、荷積みする物品の保管位置を検索する。検索された保管位置を天井走行車8に対して割り出すように、保管棚2に指令して、モータ22により載置台3,4を、例えば天井走行車8の到着前に予め回転させる。そして物品が天井走行車8に荷積み可能な位置に割り出されると、同じ位置でIDリーダ6によりID36を読み取ることができる。このようにして入庫時と出庫時とに、カセット34のID36を読み取ることができる。またこれ以外に、載置台3,4を回転させて、各保管物品のIDを読み取り、一種の棚卸しを行うこともできる。
【0021】
図4に、天井走行車が、保管棚2の下部のロードポート38との間でカセットを移載するための、載置台3の回転位置を示す。なおこの例では、下側の載置台にも載置台3と同様の切り欠き41を設け、上下の載置台は、鉛直方向に見て重なるように、回転位置を同じにする。またロードポート38は3つの並列なポート38a,b,cから成り、天井走行車はポート38a,b,cに対応する3つの停止位置を持ち、保管棚2に対しては中央のポート38bに対する停止位置で移載を行うものとする。
【0022】
例えばポート38aに移載する場合、載置台3等の回転角は図のa)のようになり、ポート38bでは図のb)の回転角となり、ポート38cでは図のc)の回転角となる。このように、複数のポートを並列に配置したロードポートでも、載置台3,4をポートに応じた回転角で回転させることにより、任意のポートとの間で、天井走行車がカセットなどの物品を移載できる。
【0023】
さらに保管棚2からポート38a,b,cのいずれかにカセットを移載する場合、天井走行車は例えばポート38bへの停止位置で停止し、保管棚2では載置台を回転させて、所定の保管位置を天井走行車の停止位置に対して割り出し、天井走行車の昇降台でカセットをチャックする。ポート38bへ移載する場合、次いで図4b)のように載置台を回転させて移載する。他のポート38a,cへ移載する場合、カセットを上昇させると共に、天井走行車は目的のポートへ走行し、載置台を図4a)またはc)のように回転させて、移載する。ポート38a,b,cから保管棚2へ移載する場合は、上記の逆の手順を実行すればよい。
【0024】
図5に、実施例の保管棚を用いた搬送アルゴリズムの例を示す。ここでは保管棚はロードポートの直上にあり、天井走行車は同じ停止位置で上下の載置台とロードポートの何れに対しても物品を移載自在で、ロードポートは例えば物品1個分の幅のポートとする。ロードポートへ搬入するために物品Aを天井走行車8で搬送する。これと並行してロードポートには処理済みの物品Bを搬出する。天井走行車8が到着すると、上下いずれかの載置台に対して物品Aを荷下ろしし、この時IDリーダで物品のIDを読み取って、棚番地と共に保管棚ファイルに記憶する。次いで天井走行車はロードポートの物品Bを荷積みし、載置台に仮置きする。この時も同様に物品BのIDを読み取り、棚番地と共に保管棚ファイルに記憶する。
【0025】
載置台を回転させて、物品Aを天井走行車で荷積みできるように割り出し、天井走行車が物品Aをロードポートへ移載する。この時も物品AのIDを読み取り、保管棚ファイルから物品AのIDとその棚番地とを削除する。次いで載置台を再度回転させ、天井走行車で物品Bを搬出して目的地まで搬送する。この時も物品BのIDを読み取り、その棚番地と共に保管棚ファイルから削除する。
【0026】
このようにすると天井走行車の1回の搬送で、ロードポートへの物品の搬入とロードポートからの物品の搬出とを行うことができる。なお図5では、保管棚への物品A,Bの入出庫のため、合計4回IDを読み取っているが、これはごく短時間の保管なので、IDの読み取りを例えば入庫時のみに簡略化してもよい。
【0027】
図6は、物品を天井走行車で搬送している途中で、より優先度の高い搬送指令(緊急搬送指令)が発生した際の処理を示している。物品を搬送中の天井走行車は適宜の保管棚に対して停止し、物品を保管棚に一時保管する。この時物品のIDを読み取り、棚番地と共に保管棚ファイルに記憶する。次いで天井走行車は緊急物品が所在するロードポートに対して停止し、緊急物品を荷積みして搬送する。この場合、元々の物品の搬送過程では、在庫位置が天井走行車から保管棚に変更され、IDと棚番地とを記憶しているので、搬送中の物品の所在が不明となることはない。そして保管棚ファイルを利用し、後続の天井走行車により搬送途中の物品の搬送を再開できる。
【0028】
実施例では保管棚2を、天井走行車8の走行レール25から見て、人などの通路寄りに設けたが、例えば処理装置10,10間の隙間などの、通路以外の位置に設けても良い。また保管棚2の設置位置はロードポート38の上部には限らない。さらに天井走行車8に、昇降駆動部30を走行レール25の側方に横送りする装置などを設けると、走行レール25から離れた位置にも保管棚2を設置できる。
【0029】
なお、実施例では、下側の載置台のモータやIDリーダ、載荷センサと電源の電気的接続のために、ブラシ50を利用して給電しているが、クリーン搬送向けでクリーン度が要求される場合には、上側と同様にケーブルで給電しても良い。その際には、載置台の旋回角度を、例えば、正逆転それぞれ360°以内に制限することが好ましい。

【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例の保管棚と天井走行車とを示す正面図
【図2】保管棚の棚の平面図
【図3】保管棚の載置台の回転機構を示す、部分切欠部付き要部正面図
【図4】3つの並列なロードポートに対する載置台の回転位置を示す平面図で、a)は上部のポートへの位置を、b)は中央のポートへの位置を、c)は下部のポートへの位置を示す。
【図5】保管棚を用いた搬送アルゴリズムを示すフローチャート
【図6】保管棚を用いた他の搬送アルゴリズムを示すフローチャート
【符号の説明】
【0031】
2 保管棚
3,4 載置台
6 IDリーダ
8 天井走行車
10 処理装置
12 物流コントローラ
13 保管棚ファイル
14 天井走行車コントローラ
16,17 支柱
20 柵
22 モータ
23 載荷センサ
24 制御盤
25 走行レール
26 支柱
28 走行台車
30 昇降駆動部
32 昇降台
34 カセット
36 ID
38 ロードポート
40 扉
41 切り欠き
42 軸
44 軸受け
46 伝動手段
48 フランジ
50 ブラシ
52〜56 ケーブル
60,70 保管棚
62 横送り装置
64 支柱
66,72 保管位置
74 ガイドレール
76 走行体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井走行車が搬送する物品を保管するための保管棚であって、
物品の保管位置を複数備えた載置台を支柱に対して回動自在に取り付けると共に、該載置台上の各保管位置を天井走行車との間の移載位置に割り出すように載置台を回動させるための回動手段を設けたことを特徴とする、保管棚。
【請求項2】
前記載置台を少なくとも上下2段に設けると共に、少なくとも上側の載置台に物品の通過用の切り欠きを設け、さらに該切り欠きを前記移載位置に割り出すように上側の載置台を前記回動手段で回動自在にして、下側の載置台と天井走行車との間で物品を移載自在にしたことを特徴とする、請求項1の保管棚。
【請求項3】
前記載置台を他の設備のロードポートの上部に、上面視でロードポートと重なるように設けると共に、ロードポートと天井走行車との間で移載する物品を通過させるための切り欠きを設け、さらに該切り欠きを前記移載位置に割り出すように上側の載置台を前記回動手段で回動自在にして、ロードポートと天井走行車との間で物品を移載自在にしたことを特徴とする、請求項1または2の保管棚。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−89216(P2006−89216A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276714(P2004−276714)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】