説明

保護されたイソシアネート基を有する粒子

本発明の対象は、金属原子、珪素原子および酸素原子から選択された原子からなるかまたはシリコーン樹脂からなる核および表面上の少なくとも1個の保護されたイソシアネート基を有する粒子(P)であり、この場合この粒子(P)は、金属原子、珪素原子および酸素原子から選択された原子からなるかまたはシリコーン樹脂からなり、遊離ヒドロキシ官能基を有する粒子(P1)を、a)少なくとも1個の保護されたイソシアネート基を含有するオルガノシラン(A)またはb)少なくとも1個のNH−、OH−またはSH−官能基を有するオルガノシラン(A1)と反応させることによって得ることができ、この場合には、中間生成物として、もう1つの反応工程で少なくとも1つの保護されたイソシアネート官能基ならびに保護されていないイソシアネート官能基を有する化合物(A2)と反応させ、粒子(P)に変えるNH官能性、OH官能性またはSH官能性粒子(P2)を得ることができ、この場合オルガノシラン(A)および(A1)は、粒子(P1)との反応前にシリル単位に対してα位の酸素原子、硫黄原子または窒素原子を有するか、または環状構造要素の一部分であるSi−O単位またはSi−N単位を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
保護されたイソシアネート基を有する粒子本発明は、表面上に保護されたイソシアネート基を有する粒子、その製造法および該粒子を含有する塗料調製物に関する。
【0002】
粒子、殊にナノ粒子を含有する塗料系は、公知技術水準である。相応する塗料は、例えば欧州特許出願公開第1249470号明細書A2またはWO 03/16370中に記載されている。この場合、この粒子は、殊に耐引掻強さおよび耐化学薬品性に関連して相応する塗膜の性質を改善する。
【0003】
有機塗料系中で一般に無機の粒子を使用する際にしばしば起こる問題は、粒子と塗料マトリックスの認容性が多くの場合に不十分であることにある。この結果、粒子は、塗料マトリックス中で十分良好に分散することができないことをまねきうる。その上、良好に分散された粒子であっても、長い可使時間または貯蔵時間の場合に沈殿する可能性があり、この場合には、場合によっては大きな凝集体または凝塊が形成され、これらの凝集体または凝塊は、再分散の場合でももはや分離することができないかまたは劣悪にのみ元来の粒子に分離することができる。このような不均一系の加工は、それぞれの場合に極めて困難であり、むしろしばしば不可能である。
【0004】
従って、塗料マトリックスとのよりいっそう良好な認容性を生じる有機基を表面上で有する粒子を使用することは、好ましい。こうして、無機粒子は、有機外被によってマスキングされる。この場合、特に好ましい塗料特性は、その上粒子表面上の有機官能基がなお塗料マトリックスに対して反応性の基を有し、したがって相応する塗料のそれぞれの硬化条件下でマトリックスと反応しうる場合に達成することができる。即ち、粒子を塗料硬化中に化学的にマトリックス中に組み込むことに成功し、このことは、しばしば特に良好な機械的性質を結果として生じ、しかも、改善された耐化学薬品性を結果として生じる。この種の系は、例えば欧州特許出願公開第832947号明細書A中に記載されている。
【0005】
また、さらに、ナノ粒子で変性された結合剤を含有する塗膜を使用することも公知である。この塗膜は、反応性の官能基を備えた粒子を、相補的機能を有する結合剤と反応させることにより形成させることができる。即ち、この場合、有機官能性粒子は、塗料硬化の場合に初めて組み込まれるのではなく、既に結合剤の製造の際に化学的に塗料マトリックス中に組み込まれている。この種の系は、例えば欧州特許出願公開第1187885号明細書AまたはWO 01/05897中に記載されている。
【0006】
特に重要な塗料型の場合には、塗料硬化の際にイソシアネート官能性硬化剤と反応されるヒドロキシ官能性ポリマーからの塗料樹脂が使用される。このポリウレタン塗料は、特に良好な性質、例えば卓越した耐化学薬品性を示すが、しかし、これに対して殊にこの系の耐引掻強さについては、なお改善することが必要である。典型的には、このポリウレタン塗料は、特に価値が高く、高価な使用分野において、例えば自動車産業および乗物産業においてOEM塗装のためのクリヤー塗料または上塗り塗料として使用される。同様に、自動車修復のための多くの場合の塗換塗料は、この種のイソシアネート硬化性系からなる。
【0007】
典型的には、2つの異なるポリウレタン塗料系、所謂2K系と1K系とは、区別される。第1の系は、2つの成分からなり、これらの成分の中、1つは、本質的にイソシアネート硬化剤からなり、他方、イソシアネート反応性基を有する塗料樹脂は、第2の成分中に含まれている。この場合、2つの成分は、別個に貯蔵および運搬されてなければならず、加工直前に初めて混合される。それというのも、完成混合物は、著しく制限された可使時間のみを有しているからである。この場合には、1つの成分のみからなる所謂1K系がしばしば好ましく、この1つの成分中には、塗料樹脂と共に保護されたイソシアネート基を有する硬化剤が存在する。1Kは、熱的に硬化され、この場合イソシアネート単位の保護基は、分解され、引続き脱保護されたイソシアネートは、塗料樹脂と反応しうる。この種の1K塗料の典型的な焼付き温度は、130〜150℃である。
【0008】
特に、この価値の高い塗料の場合には、さらなる性質の改善が望まれていた。これは、殊にOEM塗料範囲ならびに修復塗料範囲での乗物用塗料に当てはまる。即ち、なかんずく従来の自動車用塗料の達成可能な耐引掻強さは、なお十分ではなく、したがって例えば洗浄路で洗浄水中の粒子によって塗料の目立った引掻き傷を生じる。それによって、長い間には、塗料の光沢は、持続的に損なわれる。この場合には、高い耐引掻強さを達成することができる調製物が望まれた。
【0009】
前記課題を解決するための特に好ましい方法は、表面上で保護されたイソシアネート官能基を有する粒子を使用することである。この種の粒子を1Kポリウレタン塗料を使用する場合には、塗料硬化の際にイソシアネート官能基も粒子表面上で遊離され、この粒子は、化学的に塗料中に組み込まれる。その上、一般に塗料硬化剤の保護されたイソシアネート官能基と同一である、保護されたイソシアネート官能基は、粒子と塗料マトリックスの認容性を改善する。
【0010】
保護されたイソシアネート官能基を含有するこの種の粒子は、原理的に既に公知である。典型的には、この粒子は、遊離珪素官能基または遊離金属水酸化物官能基を有する粒子を、有機基が保護されたイソシアネート官能基を含有するアルコキシシリル官能性有機珪素化合物と縮合することにより製造される。この種のマスキングされたイソシアネート基を有する有機珪素化合物は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第3424534号明細書A1、欧州特許第0212058号明細書、欧州特許出願公開第872500号明細書A、特開平08−291186号公報または特開平10−067787号公報中に既に記載されている。勿論、前記の全ての化合物には、マスキングされたイソシアネート基とシリル基との間にプロピレン基が存在し、それによってこのシラン化合物の加水分解反応性および縮合反応性が僅かにすぎないことが共通している。それによって、前記化合物は、粒子の珪素官能基または金属水酸化物官能基に対して僅かな反応性のみを有し、したがってこの化合物は、反応しないかまたは極めて緩徐にのみ反応するか、または官能価に適した条件下、例えば高められた温度で、NCO保護基の一部分は、既に分解され、それによってIKポリウレタン塗料中の粒子は、もはや使用不可能である。
【0011】
これは、殊に反応性が粒子の官能性に多くの場合に全く不適当であるように僅かである保護されたイソシアネート官能基を有するモノアルコキシシリル基官能性シランに当てはまる。しかし、まさに一官能価アルコキシシランの使用は、若干の場合に特に望ましかった。それというのも、相応する粒子は、極めて簡単に(立体的に良好に入手できる)保護されたイソシアネート官能基を有する前記シランを備えることができたからである。即ち、一官能価アルコキシシランは、このアルコキシシランがよりいっそう高い反応性に予め晒されて水の添加なしでも完全に反応され、この場合には互いにではなく、粒子の周囲に、多くの場合には軟質の外被が架橋されるという利点を有していた。
【0012】
従って、本発明の課題は、問題なしに明らかに高い反応性を有する前駆体から製造することができる、マスキングされたイソシアネート官能基を有する粒子を提供することである。
【0013】
本発明の対象は、金属原子、珪素原子および酸素原子から選択された原子からなるかまたはシリコーン樹脂からなる核および表面上の少なくとも1個の保護されたイソシアネート基を有する粒子(P)であり、
この場合粒子(P)は、金属原子、珪素原子および酸素原子から選択された原子からなるかまたはシリコーン樹脂からなり、遊離ヒドロキシ官能基を有する粒子(P1)を、a)少なくとも1個の保護されたイソシアネート基を含有するオルガノシラン(A)またはb)少なくとも1個のNH−、OH−またはSH−官能基を有するオルガノシラン(A1)と反応させることによって得ることができ、
この場合には、中間生成物として、もう1つの反応工程で少なくとも1つの保護されたイソシアネート官能基ならびに保護されていないイソシアネート官能基を有する化合物(A2)と反応させ、粒子(P)に変えるNH官能性、OH官能性またはSH官能性粒子(P2)を得ることができ、
この場合オルガノシラン(A)および(A1)は、粒子(P1)との反応前にシリル単位に対してα位の酸素原子、硫黄原子または窒素原子を有するか、または環状構造要素の一部分であるSi−O単位またはSi−N単位を有する。
【0014】
また、本発明の対象は、粒子(P)の製造法である。
【0015】
本発明の好ましい実施態様において、オルガノシラン(A)または(A1)は、一般式(I)
(R1O)3-n(R2nSi−CH2−A− (I)
[式中、
1は、水素、それぞれ1〜6個のC原子を有するアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表わし、この場合炭素鎖は、隣接していない酸素原子、硫黄原子またはNR3基によって中断されていてよく、
2は、それぞれ1〜12個のC原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基を表わし、この場合炭素鎖は、隣接していない酸素原子、硫黄原子またはNR3基によって中断されていてよく、
3は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アミノアルキル基またはアスパラギン酸エステル基を表わし、
Aは、酸素、硫黄、式NR3の基または複素環の一部分である窒素原子を表わし、
nは、0、1または2の値を取ることができる〕で示される反応性シリル官能基を有する。
【0016】
本発明のもう1つの好ましい実施態様において、一般式(II)または(IIa)
【化1】

〔式中、
Bは、水素または任意の炭素含有基であり、
mは、0、1または2の値であり、
xは、0〜10の値を取ることができ、
A、R1、R2およびR3は、一般式(I)で記載された意味を有する〕で示される反応性シリル官能基を有するオルガノシラン(A1)が使用される。
【0017】
本発明のもう1つの好ましい実施態様において、オルガノシラン(A1)として一般式(III)または(IIIa)
【化2】

〔式中、m、x、A、R1、R2、R3は、一般式(I)および(II)で記載された意味を有する〕で示される化合物が使用される。
【0018】
基R1は、一般式(I)、(II)、(IIa)、(III)および(IIIa)で有利なメチル基またはエチル基である。基R2は、遊離にメチル基、イソプロピル基またはフェニル基である。mの好ましい値は、2であり、他方、xは、1〜4の値が好ましく、2の値は、特に好ましい。R3は、特に最大で10個の炭素原子、殊に最大で4個の炭素原子を有する。Bは、特に最大で18個の炭素原子を有する。Bは、有利にアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、シリルアルキル基またはシリル基であり、これらの基は、置換されていないかまたはハロゲン原子、ヒドロキシル官能基および/またはアミン官能基によって置換されている。この場合、Bの主鎖は、酸素、硫黄またはNR3基によって中断されていてよい。
【0019】
本発明は、シラン(A)または(A1)が粒子(P1)の遊離ヒドロキシド官能基に対して極めて高い反応性を有する。遊離ヒドロキシド官能基は、金属官能基または水酸化珪素官能基である。
【0020】
即ち、シラン(A)または(A1)は、アルコキシシリル基が有機官能基のプロピルスペーサーによって分離されている従来のオルガノシランよりも数倍高い反応性である。これは、シリル単位に対する説明でヘテロ原子を有する、一般式(I)のアルコキシシリル基を有するシランならびに一般式(II)、(IIa)、(III)および(IIIa)の環状シランにも当てはまる。この高い反応性のために、オルガノシラン(A)または(A1)は、粒子(P1)と明らかに急速に反応し、この反応は、問題なしに完全に進行する。この場合、この反応は、しばしばシランの高い反応性によって初めて可能になる。また、一官能化シラン、即ちnが2であるかまたはmが2である、一般式(I)、(II)、(IIa)、(III)および(IIIa)のシリル基を有するシランは、粒子(P1)に対して十分に反応性を有し、したがって保護されたイソシアネート官能基を有する本発明による粒子(P)の製造に適している。一官能化シランを使用する場合には、アルコキシシリル基の加水分解のための水の添加を完全に省略することができる。
【0021】
粒子(P1)とオルガノシラン(A)または(A1)との反応は、直接に反応成分の混合で起こる。この場合、粒子(P1)は、水性溶剤中の分散液として、または水不含の溶剤中においても分散液として、また固体の状態でも存在してよい。最後の場合には、混合は、例えば渦動床反応器中で行なうこともできるし、別の公知の混合装置、例えばプラウ板混合機(Pflugscharmischern)等中で行なうことができる。
【0022】
粒子(P1)から粒子(P)を製造する場合には、表面変性のために、シラン(A)および(A1)と共に、付加的になお別のシラン(S1)、シラザン(S2)またはシロキサン(S3)が使用されてもよい。この場合、シラン(S1)は、ヒドロキシシリル基を有するかまたは加水分解可能なシリル官能基を有し、この場合には、このシリル官能基が好ましい。それと共に、このシランは、他の有機官能基を使用することができるが、しかし、シラン(S1)は、他の有機官能基なしに使用することもできる。この場合、シラン(A)または(A1)は、シラン(S1)、シラザン(S2)またはシロキサン(S3)との混合物として使用されてよい。それと共に、粒子は、逐次的に異なるシラン型で官能化されてもよい。
【0023】
この場合、特に有利には、シラン(A)または(A1)と一般式(IV)
(R1O)4-a-b-c(R2a(Z)cSi(R4b (IV)
〔式中、
1、R2およびR3は、一般式(I)で記載された意味を有し、
4は、場合によってはハロゲン原子、アミノ基、エーテル基、エステル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、イソシアネート基、ホスホネート基、メタクリル基または(ポリ)グリコール基で置換されている、1〜18個の炭素原子を有するSiC結合した炭化水素基を表わし、この場合この(ポリ)グリコール基は、オキシエチレン単位および/またはオキシプロピレン単位から構成されており、Zは、ハロゲン原子、擬似ハロゲン基、Si−N結合アミノ基、アミド基、オキシム基、アミノキシ基およびアシルオキシ基を表わし、aは、0、1、2または3の値を表わし、bは、0、1、2または3の値を表わし、cは、0、1、2または3の値を表わし、a+b+cは、0、1、2、3または4の値を表わす〕で示されるシラン(S1)との混合物が使用される。
【0024】
この場合、aは、有利に0、1または2を表わし、他方、bおよびcは、有利に0または1を表わす。
【0025】
シラザン(S2)またはシロキサン(S3)としては、特に有利にヘキサメチルジシラザンまたはヘキサメチルジシロキサン、または有機官能基を有するかまたは有しない鎖末端を有する線状シロキサンが使用される。
【0026】
粒子(P1)として、全ての金属酸化物粒子及び金属混合酸化物粒子(例えば、酸化アルミニウム、例えばコランダム、他の金属および/または珪素を有するアルミニウム混合酸化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄等)、酸化珪素粒子(例えば熱分解法珪酸、沈降珪酸、コロイド珪酸)、または珪素の若干の原子価が有機基を備えた酸化珪素化合物、例えば、シリコーン樹脂を使用することができる。この粒子(P1)は、表面上で金属官能基および/または水酸化珪素官能基を使用することができ、これらの官能基によりオルガノシラン(A)または(A1)との反応を行なうことができることを示す。粒子(P1)は、有利に1nm〜100μm、特に10nm〜200nmの平均直径を有する。
【0027】
本発明の好ましい実施態様において、粒子(P1)は、炎内反応で珪素化合物から製造される熱分解法珪酸、例えば四塩化珪素またはメチルジクロロシラン、またはハイドロジェントリクロロシランまたはハイドロジェンメチルジクロロシラン、または別のメチルクロロシランまたはアルキルクロロシランからなり、また、前記の熱分解法珪酸と炭化水素との混合物からなるか、または有機珪素化合物からの任意の揮発性かまたは噴霧可能な混合物からなる。この場合、珪酸は、選択的に水の添加下にかまたは添加なしに、例えば清浄化工程で製造することができ、好ましくは、水の添加なしに製造することができる。
【0028】
特に、熱分解法珪酸は、化学反応に利用できる表面シラノール基(Si−OH)の密度をSiOH2.5未満/nm2、特にSiOH2.1未満/nm2、有利にSiOH2未満/nm2、特に有利にSiOH1.7〜1.9/nm2有する。
【0029】
また、湿式化学的に得られるかまたは高い温度(1000℃を上廻る)で得られる珪酸が使用されてもよい。特に好ましいのは、熱分解法珪酸である。直接にバーナーから新しく製造されたか、中間貯蔵されたか、または既に市販品として包装されている親水性珪酸を使用することができる。疎水化された珪酸、例えば市販の疎水化された珪酸が使用されてもよい。
【0030】
特に60g/l未満の嵩密度を有する圧縮されていない珪酸を使用することができるが、しかし、特に60g/lを上廻る嵩密度を有する圧縮された珪酸が使用されてもよい。
【0031】
種々の金属酸化物または珪酸からの混合物、即ち例えば異なるBET表面積の金属酸化物または珪酸からの混合物、または異なる疎水化度またはシリル化度を有する金属酸化物からの混合物が使用されてもよい。
【0032】
珪酸は、連続的方法または非連続的方法で製造されてよく、シリル化のための方法は、1つ以上の工程で構成されていてよい。好ましくは、シリル化された珪酸は、製造工程が次のように別々の工程:(A)最初に親水性珪酸を製造する工程、次に(B)珪酸を
a)親水性珪酸をシラン(A)または(A1)で負荷し、
b)親水性珪酸をシラン(A)または(A1)と反応させ、および
c)珪酸を過剰のシラン(A)または(A1)から精製することによってシリル化する工程で行なわれるような方法により製造される。
【0033】
表面処理は、有利にシリル化珪酸の酸化を生じない、即ち有利に酸素10体積%未満、特に有利に2.5体積%未満の雰囲気中で実施され、この場合最高の結果は、酸素1体積%未満で達成される。
【0034】
被覆(Belegung)、反応および清浄化は、非連続的方法または連続的方法として実施されてよい。工業的理由から、好ましくは、連続的反応の実施である。
【0035】
被覆は、好ましくは(−30℃)〜250℃、有利に20〜150℃、特に有利に20〜80℃の温度で行なわれ、有利には、被覆工程で30〜50℃の冷却される。
【0036】
滞留時間は、1分間〜24時間、有利に15〜240分間であり、空時収量の理由から、特に有利には、15〜90分間である。被覆の場合の圧力は、有利に0.2バールの弱い低圧から100バールの過圧までに達し、この場合には、工業的理由から、常圧、即ち外圧/大気圧に対して無圧の作業が好ましい。
【0037】
シラン(A)または(A1)は、有利に液体として添加され、殊に粉末状珪酸に混入される。これは、特にノズル技術または比較可能な技術、例えば効果的な噴射技術、例えば圧力下で(特に、5〜20バールで)の1物質流ノズルでの噴射、圧力下(特に、ガスおよび液体2〜20バール)での2物質流ノズルでの噴霧、シランの均一な分布を粉末状珪酸と一緒に可能にする、可動型、回転型または静的な取付け物を備えた噴霧器またはガス−固体交換装置を用いての微細分布によって行なわれる。好ましくは、シラン(A)または(A1)は、微粒状のエアロゾルとして添加され、このエアロゾルは、0.1〜20cm/秒の沈降速度および5〜25μmの空気力学的粒径を有する液滴寸法を有する。好ましくは、珪酸の負荷およびシランAまたはA1との反応は、機械的流動化またはガスで支持された流動化の下で行なわれる。特に好ましいのは、機械的流動化である。
【0038】
ガスで支持された流動化は、シラン(A)または(A1)、珪酸およびシリル化珪酸と反応しない、即ち副反応、分解反応、酸化過程ならびに火炎現象および爆発現象を生じない全ての不活性ガス、例えば特にN3、Ar、別の希ガス、CO2等によって行なうことができる。流動化へのガスの供給は、有利に0.05〜5cm/秒、特に有利に0.5〜2.5cm/秒の空管ガス速度の範囲内で行なわれる。
【0039】
特に好ましいのは、付加的に不活性化を超えるガス使用なしに羽根型攪拌機、馬蹄形攪拌機および他の適当な攪拌機によって行なわれる機械的流動化である。
【0040】
1つの特に好ましい実施態様において、反応しなかったシラン(A)または(A1)および排ガスは、清浄化工程から再び珪酸の被覆および負荷の工程に返送され;これは、部分的または完全に、有利に脱塵部から出るガス体積の全体積流の10〜90%行なうことができる。
【0041】
これは、適当に温度調節される装置中で行なわれる。この返送は、有利に凝縮されていない相中で、即ちガスまたは蒸気として行なわれる。この返送は、物質輸送として圧力平衡に沿って行なうことができるかまたは制御された物質輸送としてガス輸送の工業的に通常の系、例えばベンチレーター、ポンプ、圧縮空気膜ポンプを用いて行なうことができる。凝縮されていない相の返送は好ましいので、場合によっては返送管を加熱することが推奨される。この場合、反応しなかったシラン(A)または(A1)および排ガスの返送量は、全質量に対して5〜100質量%、有利に30〜80質量%の間にあることができる。この場合、返送量は、新しく使用されるシラン100部に対して1〜200部、有利に10〜30部であることができる。
【0042】
被覆部へのシリル化反応の脱塵生成物の返送は、有利に連続的に行なわれる。
【0043】
反応は、有利に40〜200℃の温度、好ましくは40〜160℃の温度、特に有利に80〜120℃で行なわれる。
【0044】
反応時間は、5分間〜48時間、特に10分間〜5時間である。
【0045】
選択的にプロトン性溶剤、例えば液状または蒸発可能なアルコールまたは水が添加されてよく、典型的なアルコールは、イソプロパノール、エタノールおよびメタノールである。上記のプロトン性溶剤の混合物が添加されてもよい。特に、プロトン性溶剤は、珪酸に対して1〜50質量%、特に有利に5〜25質量%添加される。特に好ましいのは、水である。選択的に酸性触媒(ルイス酸またはブレンステッド酸)、例えば塩化水素、または塩基性触媒(ルイス塩基またはブレンステッド塩基)、例えばアンモニアが添加されてよい。好ましくは、前記触媒は、痕跡で、即ち1000ppm未満で添加される。特に有利には、触媒は添加されない。
【0046】
脱塵は、20〜200℃の清浄化温度、有利に50〜150℃、特に有利に50〜100℃で行なわれる。清浄化工程は、特に可動によって特徴を示し、この場合緩徐な可動および僅かな混合は、特に有利である。この場合、攪拌機は、好ましくは有利に混合および流動化は起こるが、しかし、渦動は全く起こらないように調節され、可動される。
【0047】
更に、清浄化工程は、特に0.001〜10cm/秒、有利に0.01〜1cm/秒の空管ガス速度に相応して高められたガス搬入量を示すことができる。これは、シラン(A)または(A1)、珪酸およびシリル化珪酸と反応しない、即ち副反応、分解反応、酸化過程ならびに火炎現象および爆発現象をまねかない全ての不活性ガス、例えば特にN2、Ar、別の希ガス、CO2等によって行なうことができる。
【0048】
付加的に、シリル化中、または清浄化に続いて、特に珪酸を機械的に圧縮する方法、例えばプレスロール、微粉砕装置、例えばパグミルおよびボールミルによって連続的または非連続的に圧縮する方法、スクリューまたはスクリューミキサー、スクリュー型コンプレッサー、ブリケットプレスによる圧縮、または適当な真空法による空気内容物またはガス内容物の吸い込みによる圧縮を使用することができる。
【0049】
特に好ましいのは、プレスロール、上記の微粉砕装置、例えばボールミルによるシリル化中の機械的圧縮またはスクリュー、スクリューミキサー、スクリュー型コンプレッサー、ブリケットプレスによる圧縮である。
【0050】
更に、特に好ましい処理形式において、清浄化に続いて、珪酸を機械的に圧縮する方法、例えば適当な真空法による空気内容物またはガス内容物の吸い込みによって圧縮する方法またはプレスロールによって圧縮する方法、またはこれら双方の方法の組合せが使用される。
【0051】
付加的に特に好ましい処理形式において、清浄化に続いて、例えばピンで留められたディスクミルまたは微粉砕分級化のための装置、例えばピンで留められたディスクミル、ハンマーミル、対向流型ミル、インパクトミルまたは微粉砕分級化のための装置により、珪酸を脱凝集させる方法が使用されてよい。
【0052】
シラン(A)または(A1)は、特に0.5質量%を上廻る(珪酸に対して)、有利に3質量%を上廻る(珪酸に対して)、特に有利に5質量%を上廻る(珪酸に対して)の量で使用される。
【0053】
表面変性のために、シラン(A)または(A1)は、単独で使用されてもよいし、別のシラン(A)または(A1)との任意の混合物で使用されてもよい。特に有利なのは、熱分解法珪酸、シラン(A)または(A1)ならびに有利に式(IV)に相当する他のシラン(S1)、シラザン(S2)および/またはシロキサン(S3)からの粒子(P)が使用されるような発明の実施である。この場合、種々のシランは、有利に混合物として使用される。
【0054】
シリル化された熱分解法珪酸は、殊にこの珪酸が100nm未満の平均一次粒子粒径、有利に5〜50nmの平均一次粒子粒径を有することを示し、この場合この一次粒子は、多くの場合に単離されて珪酸中に存在するのではなく、100〜1000nmの直径を有する大きな凝集体(DIN 53206による定義)の成分で存在する。
【0055】
更に、シリル化された熱分解法珪酸は、殊にこの珪酸が10〜400m2/gの比表面積(DIN 66131および66132によるBET法により測定した)を有することを示し、この場合この珪酸は、2.8未満または2.8に等しい、有利に2.7に等しいかまたは2.7未満、特に有利に2.4〜2.6の質量Dmのフラクタル次元、ならびに1.5SiOH/nm2未満、有利に0.5SiOH/nm2未満、特に有利に0.25SiOH/nm2未満の表面シラノール基SiOHの密度を有する。
【0056】
本発明の更なる有利な実施態様において、粒子P1として、コロイドシリカ又は金属酸化物が使用され、これらは有利には、ミクロン未満の寸法の相応する酸化物粒子の分散液として、水性溶剤または別の溶剤中で存在する。この場合には、なかんずく金属、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、ハフニウム、鉛の酸化物が使用されてよい。特に有利には、コロイド状シリカゾルの有機溶液が使用される。
【0057】
コロイドシリカまたはコロイド状金属酸化物からの本発明による粒子(P)の製造は、種々の方法により行なうことができる。しかし、好ましくは、シラン(A)を、場合によっては別のシラン(S1)、シラザン(S2)またはシロキサン(S3)との組合せ物で、水性ゾルまたは有機ゾルに添加することによって行なわれる。前記ゾルは、場合によっては例えば塩酸によってイオン性、即ち酸性に安定化されているかまたは例えばアンモニアによって塩基性に安定化されているかまたは例えばアルコールによって立体的に安定化されている。反応は、一般に0〜200℃、有利に20〜80℃、特に有利に20〜60℃の温度で行なわれる。反応時間は、典型的に5分間〜48時間、有利に1〜24時間である。選択的に、なお酸性、塩基性または重金属含有の触媒が添加されてもよい。好ましくは、前記触媒は、1000ppm未満の痕跡で使用される。しかし、特に有利には、特殊な触媒の添加は省略される。
【0058】
その上、同様に好ましくは、一般式(V)
(R53SiO1/2e(R52SiO2/2f(R5SiO3/2g(SiO4/2h (V)
〔式中、R5は、OR1官能基、OH官能基、1〜18個の炭素原子を有する場合によってはハロゲン置換、ヒドロキシル置換、アミノ置換、エポキシ置換、ホスホネート置換、チオール置換、(メタ)アクリル置換またはNCO置換された炭化水素基を表わし、eは、0より大きいかまたは0に等しい値を表わし、fは、0より大きいかまたは0に等しい値を表わし、
gは、0より大きいかまたは0に等しい値を表わし、
bは、0より大きいかまたは0に等しい値を表わし、e+f+g+hからの総和は、少なくとも1、特に少なくとも5の少なくとも1つの値を表わす〕で示されるシリコーン樹脂からなる粒子(P1)が好ましい。
【0059】
特に、全ての基R5の少なくとも70モル%は、メチル基、エチル基、イソプロピル基またはフェニル基である。1つの好ましい実施態様において、一般式(V)のシリコーン樹脂の場合、e+hの総和は、e+f+g+hの総和の少なくとも90モル%を有する。
【0060】
式(V)に相応するシリコーン樹脂とシラン(A)とからなる本発明による粒子(P)は、上記の方法により製造することができる。
【0061】
本発明の好ましい実施態様の場合、粒子(P)は、OH官能性粒子(P1)と一般式(VI)
(R1O)3-n(R2nSi−CH2−NH−C(O)−X (VI)
[式中、
1およびR2は、一般式(I)で記載された意味を有し、
Xは、80〜300℃のオンのでHXの形で脱離される保護基であり、その際、イソシアネート官能基が遊離される〕で示されるオルガノシラン(A)との反応によって製造される。
【0062】
保護基HXとしては、第2アルコールまたは第3アルコール、例えばイソプロパノールまたは第三ブタノール、CH酸性化合物、例えばマロン酸ジエチルエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸エチルエステル、オキシム、例えばホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロオキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシムまたはジエチレングリオキシム、ラクタム、例えばカプロラクタム、バレロラクタム、ブチロラクタム、フェノール、例えばフェノール、o−メチルフェノール、N−アルキルアミド、例えばN−メチルアセトアミド、イミド、例えばフタルイミド、第2アミン、例えばジイソプロピルアミン、イミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾールおよび2,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾールが使用されてよい。この場合には、特に保護基、例えばブタノンオキシム、3,5−ジメチルピラゾール、カプロラクタム、マロン酸ジエチルエステル、マロン酸ジメチルエステル、アセト酢酸エステル、ジイソプロピルアミン、ピロリドン、1,2,4−トリアゾール、イミダゾールおよび特に好ましくは、低い焼付け温度を可能にする保護基、例えばマロン酸ジエチルエステル、マロン酸ジメチルエステル、ブタノンオキシム、ジイソピルアミン、3,5−ジメチルピラゾールおよび2−イソプロピルイミダゾールが使用される。
【0063】
更に、本発明の好ましい実施態様の場合、粒子(P)は、OH官能性粒子(P1)と一般式(VII)
(R1O)3-n(R2nSi−CH2−NR3−C(O)−NH−Y−(NH−C(O)−X)z (VII)
[式中、
1、R2、R3およびXは、式(I)〜(VI)で記載された意味を有し;
Yは、(z+1)官能性の脂肪族基または芳香族基を表わし、
zは、1〜4、有利に1または2の数を表わす〕で示されるオルガノシラン(A)との反応によって製造される。
【0064】
一般式(VII)のシラン(A)は、特に一般式(VIII)
Y(NCO)z+1 (VIII)
で示されるジイソシアネートまたはポリイソシアネートと式(I)の構造要素を有するアミノシラン(A1)および保護基HXとを反応させることによって製造される。
【0065】
特に好ましくは、一般式(VII)のシラン(A)は、一般式(VIII)のジイソシアネートまたはポリイソシアネートと一般式(IX)
(R1O)3-n(R2nSi−CH2−NHR3 (IX)
〔式中、全ての残りの変数は、一般式(I)で記載されて意味を有する〕で示されるアミノシラン(A1)とを反応させることによって製造される。
【0066】
この場合、一連の反応工程は、任意であり、即ちジイソシアネートまたはポリイソシアネートは、第1の反応工程で保護基HXならびにシラン(A1)と反応させることができ、この場合量比は、それぞれイソシアネート基の一部分だけが反応するように選択される。更に、第2の反応工程において、残りのイソシアネート基は、それぞれなお不足する反応成分と反応される。この場合に得られた、一般式(VII)のシランを含有する混合物は、有利にイソシアネートを含有していない。勿論、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートは、直接に保護基HXとシラン(A1)とからなる混合物と反応されてもよい。任意の溶剤または溶剤混合物を共用することができ、この場合には、特に全反応成分は、前記の溶剤(溶剤混合物)中で可溶性である。
【0067】
一般式(VIII)のジイソシアネートまたはポリイソシアネートとして、原理的に、刊行物中にしばしば記載されているような全ての常用のイソシアネートが使用されてよい。常用のイソシアネートは、例えば粗製または工業用MDIの形ならびに4,4′′−異性体または2,4′′−異性体またはその混合物の形のジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、種々の領域異性体(Regioisomere)の形のトリレンジイソシアネート(TDI)、ジイソシアナトナフタリン(NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、過水素化MDI(H−MDI)、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナト−4−メチルシクロヘキサンまたはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)である。ポリイソシアネートの例は、ポリマーMDI(P−MDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートならびに上記のジイソシアネートの全部のイソシアヌレートトリマーまたはビウレットトリマーである。全部のジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートは、単独で使用されてもよいし、混合物で使用されてもよい。生成物の特殊なUV安定性が望ましい場合には、有利に脂肪族イソシアネートまたはそのトリマーまたはオリゴマー、特に有利にIPDIおよびHDIならびにこれらのトリマー使用される。
【0068】
前記方法の特に好ましい変法において、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートは、最初に不足量の保護基HXと反応され、この場合には、全てのイソシアネート基の50〜99%が保護されている混合物を得ることができる。引続き、全ての保護されていないイソシアネート基は、一般式(IX)のアミノシラン(A1)と反応される。その際、場合によっては溶剤が添加されてもよい。一般式(VII)のシラン(A)と共に、一般式(X)
Y−(NH−C(O)−X)z+1 (X)
で示されるなお完全に保護されたイソシアネートおよび場合によっては一般式(XI)
[(R1O)3-n(R2nSi−CH2−NR3−C(O)−NH]y−Y−(NH−C(O)−X)z+1 (XI)
〔式中、yは、2〜z+1の値を取ることができ、全ての残りの変数は、上記の意味を有する〕で示されるシランを含有する混合物を得ることができる。この場合、化学量論的割合ならびに反応の実施は、有利に一般式(XI)のシランの含量ができるだけ低くなるように選択される。
【0069】
一般式(VII)のシランを含有する前記混合物は、直接に遊離金属水酸化物官能基または遊離珪素水酸化物官能基を有する粒子(P1)と反応させることができ、この場合一般式(VII)のシランは、粒子(P1)と反応し、粒子(P)に変わる。この場合、遊離されるアルコールR1−OHは、場合によっては蒸留により分離されてよい。粒子(P)ならびに一般式(X)の完全に保護されたジイソシアネートまたはポリイソシアネートを含有する前記混合物は、溶剤含有形ならびに溶剤不含形でさらに後処理なしに単独の硬化剤としてかまたは塗料中の硬化剤成分の一部分として使用されてよい。それと共に、塗料がなお他の硬化剤を含有する場合には、有利にイソシアネート硬化剤またはメラミン硬化剤、特に有利に保護されたイソシアネート硬化剤が重要である。好ましくは、記載された混合物は、硬化剤として使用されるかまたは1K−PU塗料中の硬化剤成分の一部分として使用される。
【0070】
本発明の更に好ましい実施態様の場合、粒子(P)は、OH官能性粒子(P1)を一般式(II)、(IIa)、(III)、(IIIa)または(IX)のオルガノシラン(A1)と反応させることにより製造され、この場合には、中間生成物としてアミノアルキル官能性粒子(P2)またはヒドロキシアルキル官能性粒子(P2)を得ることができる。更に、前記粒子は、2つの反応工程で一般式(XII)
OCN−Y−(NH−C(O)−X)z (XII)
で示される部分的に保護されたイソシアネート(A2)と粒子(P)に反応され、この場合変数Y、Xおよびzは、一般式(VII)で記載された意味を有する。
【0071】
この場合、アミノアルキル官能性粒子(P2)またはヒドロキシアルキル官能性粒子(P2)と部分的に保護されたイソシアネート(A2)との量比は、有利に粒子(P)を含有する生じる混合物が保護されていないイソシアネート基を含有しないように選択される。
【0072】
第1の反応工程で場合によっては遊離されるアルコールは、有利に蒸留により、場合によっては減圧下で除去される。1つの好ましい方法において、粒子(P)の全合成は、粒子(P1)から出発して中間生成物として形成された粒子(P2)を経て一槽合成法として実施される。
【0073】
一般式(XII)の部分的に保護されたイソシアネート(A2)は、一般式(VIII)のジイソシアネートまたはポリイソシアネートと保護基HXとを反応させることによって製造される。
【0074】
前記方法の特に好ましい変法において、一般式(XII)の部分的に保護されたイソシアネートは、一般式(VIII)のジイソシアネートまたはポリイソシアネートを保護基HXと簡単に混合することによって製造され、この場合保護基HXは、不足量で使用され、したがって全てのイソシアネート基の50〜99%が保護されている混合物を得ることができる。この混合物は、一般式(XII)の部分的に保護されたイソシアネート(A2)と共に、一般式(X)のなお完全に保護されたイソシアネートならびに場合によっては一般式(XIII)
(OCN)y−Y−(NH−C(O)−X)z+1-y (XIII)
で示されるイソシアネートをも含有し、この場合、全ての変数は、上記の意味を有する。この場合、化学量論的割合ならびに反応の実施は、有利に一般式(XIII)のイソシアネートの含量ができるだけ低くなるように選択される。
【0075】
式(XII)に相当する部分的に保護されたイソシアネート(A2)を含有する前記混合物は、直接にアミノアルキル官能性粒子(P2)またはヒドロキシアルキル官能性粒子(P2)と反応させることができ、この場合部分的に保護されたイソシアネート(A2)は、粒子(P2)と反応し、粒子(P)に変わる。粒子(P)ならびに一般式(X)の完全に保護されたジイソシアネートまたはポリイソシアネートを含有する前記混合物は、溶剤含有形ならびに溶剤不含形でさらに後処理なしに硬化剤成分としてかまたは塗料中の硬化剤成分の一部分として使用されてよい。
【0076】
本発明の特に好ましい実施態様の場合、粒子(P)は、OH官能性粒子(P1)を式(XIV)
【化3】

で示されるオルガノシラン(A1)と反応させ、その際に、中間生成物として得られたアミノ官能性粒子(P2)を第2の反応工程で一般式(XII)の部分的に保護されたイソシアネート(A2)と最終製品(P)に反応させることにより、製造される。
【0077】
この場合、第1の反応工程で進行する、ヒドロキシド基を有する粒子(P1)と一般式(XIV)のシランとの反応は、次の反応式で表わされる(この反応式中で、Si/Me−OH基は、粒子(P1)の表面上の相応する官能基である):
【化4】

【0078】
この場合、一般式(XIV)のシランは、一般式(I)の高反応性のシリル官能基を含有するシランと同じ、珪素水酸化物または金属水酸化物官能基に対して極めて高い反応性を有する。
【0079】
しかし、一般式(XIV)のシランは、このシランと粒子(P1)との反応の際にアルコールを遊離しないという付加的な利点を有する。
【0080】
第2の反応工程の場合、アミノアルキル官能性粒子(P2)と部分的に保護されたイソシアネート(A2)との量比は、有利に粒子(P)を含有する生じる混合物が保護されていないイソシアネート基を含有しないように選択される。
【0081】
一般式(XII)の部分的に保護されたイソシアネート(A2)は、既に記載されたように、一般式(VIII)のジイソシアネートまたはポリイソシアネートと保護基HXとを反応させることによって製造される。
【0082】
この場合も、部分的に保護されたイソシアネート(A2)とアミノ官能性粒子(P2)との反応により得ることができる混合物は、溶剤含有形ならびに溶剤不含形で、他の後処理なしに硬化剤成分として使用されてもよいし、硬化剤成分の一部分として塗料中に使用されてもよい。
【0083】
本発明のもう1つの対象は、封鎖されたイソシアネート基を有する粒子(P)を含有する塗料調製物(B)である。この場合、好ましくは、耐引掻強さを有する塗膜が重要である。
【0084】
この場合、ポリウレタン塗料のための硬化剤成分を製造するための粒子(P)は、任意の他の保護されたイソシアネート硬化剤、保護されていないイソシアネート硬化剤またはメラミン硬化剤と混合されてよいが、しかし、この場合には、保護されたイソシアネート硬化剤が有利である。しかし、場合によっては、粒子(P)は、単独の硬化剤成分として機能してもよい。好ましくは、粒子(P)は、硬化剤として使用されるかまたは1K−PU塗料中の硬化剤成分の一部分として使用される。記載されたように、粒子(P)は、その製造の際に場合によっては直接に他の保護されたイソシアネートとの混合物として生じる。また、前記混合物は、単独の硬化剤成分として使用されてもよいし、塗料中の硬化剤成分の一部分として使用されてもよい。
【0085】
ポリウレタン塗料を製造するために、硬化剤成分は、イソシアネート基に対して反応性の任意の少なくとも二官能価の物質と組み合わされる。この場合には、有利にヒドロキシル基含有プレポリマー、特に有利にヒドロキシル基含有ポリアクリレートまたはポリエステルが重要である。封鎖されたイソシアネート基とイソシアネート反応性基との比は、通常、0.5〜1.5、有利に0.8〜1.2から選択される。
【0086】
特に、塗料調製物(B)は、保護されたNCO官能基または保護されていないNCO官能基を有する塗料硬化剤を固体含量に対して0〜90質量%、特にヒドロキシル基官能性塗料樹脂を固体含量に対して20〜90質量%および特に粒子(P)を固体含量に対して3〜40質量%含有する。
【0087】
更に、塗料調製物(B)は、なお通常の溶剤ならびに塗料調製物において通常の添加物および添加剤を含有することができる。この場合には、なかんずくレベリング助剤、界面活性剤、付着促進剤、光安定剤、例えばUV吸収剤および/またはラジカル捕捉剤、チキソトロピー剤ならびに他の固体を挙げることができる。塗料調製物(B)ならびに硬化された塗膜のそれぞれの望ましい特性プロフィールを形成させるために、この種の添加剤は、一般に省略することができない。同様に、塗料調製物(B)は、顔料を含有していてもよい。
【0088】
得られた塗料調製物(B)は、耐引掻強さ、耐摩耗性または耐化学薬品性を改善するために任意の支持体の被覆に使用されてよい。好ましい支持体は、プラスチック、例えばポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンまたはポリ塩化ビニルならびに導入された工程で塗布された別の被覆である。同様に、この被覆剤は、耐引掻強さを有するクリヤー塗料または上塗り塗料として、例えば自動車工業において使用されてもよい。前記組成物Zの塗布は、任意の方法、例えば浸漬法、スプレー法、及び注型法により行なわれてよい。「ウェットインウェット」法による塗布もまた可能である。硬化は、封鎖されたイソシアネートに必要とされる条件下で加熱によって行なわれるが、しかし、触媒の添加によって促進されてもよい。
【0089】
上記の式の全ての符号は、それぞれ互いに無関係な意味を有する。全ての式において珪素原子は四価である。
【0090】
別記しない限りは全ての量及びパーセントの記載は、質量に対するもので、全ての圧力は0.10MPa(絶対)であり、全ての温度は20℃である。
【0091】
実施例:
実施例1:部分的に保護されたイソシアネートの製造
Desmodur(登録商標)VP LS 2294 50g(5.46mmol NCO/gのイソシアネート含量を有するBayer社のHDIトリマー)を装入し、酢酸ブチル70mlを添加する。極めて良好に攪拌しながら、−12℃の温度で10分間でブタンオキシム17.85gを添加する。この場合、温度は、最大0℃まで上昇する。添加の終結後、冷却を取り除く。発熱反応によって、反応混合物は、直ぐ次の20分間で30〜40℃に昇温する。
【0092】
2時間さらに攪拌する。1H−NMR分光分析法により、ブタンオキシムが完全に反応したことを検出することができる。即ち、使用された化学量論的量に相応して、HDIトリマー中に含有されているイソシアネート官能基の75%は、ブタンオキシムで保護されていた。残りのイソシアネート単位は、保護されていないままである。
【0093】
実施例2:アミノ官能性MQ樹脂の製造:
無水トルエン25ml中のMQ樹脂25.00g(組成(Me3SiO1/20.4(SiO4/2)0.6(O1/2C2H5)0.2、1400g/molの平均分子量Mwおよび3.4質量%のOH基含量)の溶液に無水トルエン5ml中の化合物XIV5.76gの溶液を滴加し、室温で6時間攪拌する。1H−NMR分光分析法および29Si−NMR分光分析法は、MQ樹脂の全てのOH基がアミノプロピルジメチルシリル基で官能化されており、化合物XIVがもはや検出不可能であり、即ち完全に反応していることを示す。
【0094】
実施例3:保護されたイソシアネート基を有するMQ樹脂および該MQ樹脂を含有する塗料調製物の製造
実施例2からのアミノ官能性MQ樹脂溶液2.25gに無水トルエン2.25gを添加する。澄明な溶液を得ることができる。この溶液に良好に攪拌しながら酢酸ブチル中の実施例1で形成された、部分的に保護されたイソシアネートの溶液3.45gを添加する。この場合には、この混合物の弱い昇温を生じる。引続き、ラッカーポリオール5g(Bayer社のEGT 25-34/4、1.0mmol OH/gのOH含量を有するポリオール)を混入する。均一で澄明な溶液が形成されるまで数分間攪拌する。
【0095】
実施例4:保護されたイソシアネート基を有するMQ樹脂および該MQ樹脂を含有する塗料調製物の製造
実施例2からのアミノ官能性MQ樹脂3.0gにトルエン3.0gを添加する。澄明な溶液を得ることができる。この溶液に良好に攪拌しながら実施例1で形成された、部分的に保護されたイソシアネートの溶液3.75gを添加する。この場合には、この混合物の弱い昇温を生じる。引続き、ラッカーポリオール5g(Bayer社のEGT 25-34/4、1.0mmol OH/gのOH含量を有するポリオール)を混入する。均一で澄明な溶液が形成されるまで数分間攪拌する。
【0096】
比較例1および2:
実施例3の記載と同様に行なうが、しかし、実施例2からのアミノ官能性MQ樹脂の使用だけは省略する。この場合、比較例1の場合には、残りの塗料成分の使用された量は、実施例3に対して不変のままである。
【0097】
これとは異なり、比較例2の場合には、実施例1からの酢酸ブチル中の部分的に保護されたイソシアネートの溶液2.6gだけをラッカーポリオール5.0g(Bayer社のEGT 25-34/4)上に添加する。
【0098】
実施例5:塗膜の形成および評価
実施例3および4ならびに比較例1および2からの塗装材料をそれぞれ120μmの間隙高さのナイフを備えたErichsen社の塗膜延伸機Coatmaster(登録商標)509 MCを用いてガラス板上にナイフ塗布する。引続き、得られた塗膜を空気循環乾燥箱中で140℃で60分間乾燥させる。実施例3および4ならびに比較例1および2の塗料調製物から、目視的に美しく平滑な塗装を得ることができる。全部で4つの塗膜の光沢は、−光沢測定装置、Byk社のMicro gloss 20゜を用いて測定した−全部で4つの塗料で約155の光沢単位であった。
【0099】
こうして形成された塗膜の耐引掻強さを、Peter−Dahnによる摩耗試験装置を用いて算出する。このために、面積45×45mm、質量500gの摩耗用フリースScotch Brite(登録商標)2297に、40回のストロークで負荷をかける。この引掻試験の開始前に、また終了後にも、このそれぞれの塗膜の光沢を、光沢測定装置、Byk社のMicro gloss 20゜を用いて測定する。それぞれの塗膜の耐引掻強さのための尺度として、光沢損失を測定した:
第1表:Peter−Dahnによる引掻試験の際の光沢損失
【表1】

【0100】
実施例6:保護されたイソシアネートの製造
Desmodur(登録商標)VP LS 3300 50g(5.18mmol NCO/gのイソシアネート含量を有するBayer社のHDIトリマー)を装入し、酢酸ブチル80mlを添加する。極めて良好に攪拌しながら、−12℃の温度で10分間でブタンオキシム17.85gを添加する。この場合、温度は、最大0℃まで上昇する。添加の終結後、冷却を取り除く。発熱反応によって、反応混合物は、直ぐ次の20分間で30〜40℃に昇温する。2時間さらに攪拌する。55.3質量%の固体含量および1.97mmol 保護されたNCO基/gの含量を有する溶液を得ることができ、この場合IR分光分析法は、遊離NCOバンドをもはや検出することができない。
【0101】
実施例7:保護されたイソシアネート基を有するアルコキシシランの製造
2−ブタノンオキシム86.10gおよびBorch(登録商標)触媒0.12g(Borchers GmbH社の触媒VP 0244)を装入し、80℃に加熱する。1時間でイソシアナトメチル−トリメトキシシラン15000gを滴加し、この混合物を80℃で1時間攪拌する。1H−NMRおよびIR分光分析法は、イソシアナトシランが完全に反応されたことを示す。
【0102】
実施例8:保護されたイソシアネート基を有するSiO2ナノ粒子およびこの粒子を含有する塗料調製物の製造
実施例7で製造された保護されたイソシアナトシラン2.20gに30分間でSiO2オルガノゾル33.30g(Nissan Chemicals社のIPA-ST、SiO230質量%、12nm)を滴加する。高粘稠な混合物に水0.33gを添加し、分散液のpH値をトリフルオロ酢酸により3に調節する。引続き、この混合物を室温で24時間攪拌する。メトキシプロパノール22.00gの添加後、含有されているイソプロパノールを37%のSiO2含量になるまで留去する。混合物中の保護されたNCO基の含量は、0.34mmol/gである。この分散液26.0gを実施例6により製造された、酢酸ブチル中の保護されたイソシアネートを含有する溶液20.0gと混合し、室温で24時間攪拌する。分散液中の保護されたイソシアネート基の含量は、1.05mmol 保護されたNCO/gである。
【0103】
塗料の製造のために、保護されたイソシアネート官能基を有するSiO2ナノ粒子を含有する上記分散液4.82gをBayer社のDesmophen(登録商標)A 365 BA/X 2.93g(1.71mmol OH/gのヒドロキシル基含量を有する、アクリレートを基礎とするラッカーポリオール)と混合する。これは、1.1:1の保護されたイソシアネート官能基対ヒドロキシル基のモル比に相当する。生じる塗装材料は、弱いチンダル効果を示す。その他の点で、この塗装材料は澄明である。
【0104】
比較例3:
この比較例を実施例8と同様に行なうが、しかし、保護されたイソシアネート官能基を有するSiO2ナノ粒子を含有する分散液の代わりに、実施例6による純粋に保護されたイソシアネートを使用する。このイソシアネートの量は、相応して適合され、したがって1.1:1の保護されたイソシアネート官能基対ヒドロキシル基のモル比が生じる。即ち、ポリオール2.93g(Bayer社のDesmophen(登録商標)A 365 BA/X)に対して実施例6からの保護されたイソシアネート2.80gを使用する。
【0105】
実施例9:塗膜の形成および評価
実施例8および比較例3からの塗装材料をそれぞれ120μmの間隙高さのナイフを備えたErichsen社の塗膜延伸機Coatmaster(登録商標)509 MCを用いてガラス板上にナイフ塗布する。引続き、得られた塗膜を空気循環乾燥箱中で140℃で60分間乾燥させる。実施例8からの塗料調製物ならびに比較例3からの塗料調製物から、目視的に申し分のない平滑な塗膜を得ることができる。全部で4つの塗膜の光沢は、−光沢測定装置、Byk社のMicro gloss 20゜を用いて測定した−全部で4つの塗料で約145の光沢単位である。
【0106】
こうして形成され硬化された塗膜の耐引掻強さを、Peter−Dahnによる摩耗試験装置を用いて算出する。このために、面積45×45mm、質量500gの摩耗用フリースScotch Brite(登録商標)2297に、40回のストロークで負荷をかける。この引掻試験の開始前に、また終了後にも、このそれぞれの塗膜の光沢を、光沢測定装置、Byk社のMicro gloss 20゜を用いて測定する。それぞれの塗膜の耐引掻強さのための尺度して、光沢損失を測定した:
第2表:Peter−Dahnによる引掻試験の際の光沢損失
【表2】

【0107】
実施例10:封鎖されたイソシアネート基で変性された熱分解法珪酸の製造
不活性ガスN2の下で25℃の温度で、1%未満の湿分および100ppm未満のHCl含量、および300m2/gの比表面積(DIN 66131および66132によるBET法により測定した)を有する親水性の熱分解法珪酸100g(Wacker-Chemie GmbH, Munchen,DでWACKER HDK T30の名称で入手可能)、実施例7に記載され保護されたイソシアナトシラン66gおよび水10mlを微粒状の形で一物質流ノズル(圧力5バール)により噴射する。引続き、こうして付加された珪酸をN2の下で25℃の温度で2時間流動化し、引続き100 lの乾燥箱中でN2の下で100℃で2時間反応させる。均一なシリル化剤層を有する白色の珪酸粉末を得ることができる。分析データは、第3表中に記載されている。
【0108】
第3表:実施例10からの珪酸の分析データ:
【表3】

【0109】
分析方法の記載
1.炭素含量(C%)
炭素に対する元素分析;O2流中で1000℃を超えての試料の燃焼、IRでの生成するCO2の検出および定量化;装置LECO 244。
2.BET
DIN66131および66132によるBET法により測定した。
3.pH
飽和食塩水:メタノール=50:50中での珪酸の4%(質量%)懸濁液。
【0110】
実施例11:封鎖されたイソシアネート基によって変性された熱分解法珪酸を含有する塗料調製物の製造
塗料の製造のために、Bayer社のDesmophen(登録商標)A 365 BA,X 8.56g(1.71mmol OH/gのヒドロキシル基含量を有するアクリレートを基礎とするラッカーポリオール)を、Bayer社のDesmodur(登録商標)BL 3175 SN6.33g(メチルエチルケトンオキシムで封鎖されたポリイソシアネート、封鎖されたNCO含量約11%)と混合する。これは、1.1:1の保護されたイソシアネート官能基対ヒドロキシル基のモル比に相当する。更に、50%のジブチル錫ジラウレート溶液0.05g(メチルエチルケトン中)およびWacker-Chemie GmbH社のADDID(登録商標)100 0.01g(ポリジメチルシロキサンを基礎とする流展助剤)ならびにメチルエチルケトン3.15gを混入し、それによって固体含量約50%を有する塗料調製物を得ることができる。こうして得られた混合物中にディスソルバーを用いて実施例10から得られた、封鎖されたイソシアネート基で変性された熱分解法珪酸1.8gを混入し、この場合には、澄明な塗料調製物を得ることができる。
【0111】
比較例4
実施例11の記載と同様に実施するが、しかし、変性された熱分解法珪酸の混入を省略する。
【0112】
実施例12:塗膜の形成および評価
実施例11および比較例4からの塗装材料をそれぞれ100μmの間隙高さのナイフを備えたErichsen社の塗膜延伸機Coatmaster(登録商標)509 MCを用いてガラス板上にナイフ塗布する。引続き、得られた塗膜を空気循環乾燥箱中で160℃で30分間乾燥させる。実施例11の塗料調製物ならびに比較例4の塗料調製物から、目視的に申し分のない平滑な塗膜を得ることができる。光沢測定装置、Byk社のMicro gloss 20゜を用いて測定した塗膜の光沢は、実施例からの調製物の場合に約145の光沢単位であり、比較例4の場合に約170の光沢単位である。
【0113】
こうして形成され硬化された塗膜の耐引掻強さを、Peter−Dahnによる摩耗試験装置を用いて算出する。このために、面積45×45mm、質量500gの摩耗用フリースScotch Brite(登録商標)2297に、50回のストロークで負荷をかける。この引掻試験の開始前にも、完了後にも、このそれぞれの塗膜の光沢を、Fa.Byk社製の光沢度測定装置Micro gloss 20゜を用いて測定する。それぞれの塗膜の耐引掻強さのための尺度として、光沢損失を測定した:
第4表:Peter−Dahnによる引掻試験の際の光沢損失
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属原子、珪素原子および酸素原子から選択された原子からなるかまたはシリコーン樹脂からなる核および表面上の少なくとも1個の保護されたイソシアネート基を有する粒子(P)であって、
この場合この粒子(P)は、金属原子、珪素原子および酸素原子から選択された原子からなるかまたはシリコーン樹脂からなり、遊離ヒドロキシ官能基を有する粒子(P1)を、
a)少なくとも1個の保護されたイソシアネート基を含有するオルガノシラン(A)または
b)少なくとも1個のNH−、OH−またはSH−官能基を有するオルガノシラン(A1)と反応させることによって得ることができ、この場合、中間生成物として、もう1つの反応工程で少なくとも1つの保護されたイソシアネート官能基ならびに保護されていないイソシアネート官能基を有する化合物(A2)と反応させ、粒子(P)に変えるNH官能性、OH官能性またはSH官能性粒子(P2)を得ることができ、
この場合オルガノシラン(A)および(A1)は、粒子(P1)との反応前にシリル単位に対してα位の酸素原子、硫黄原子または窒素原子を有するか、または環状構造要素の一部分であるSi−O単位またはSi−N単位を有する、上記の粒子(P)。
【請求項2】
オルガノシラン(A)または(A1)が一般式(I)
(R1O)3-n(R2nSi−CH2−A− (I)
〔式中、
1は、水素、それぞれ1〜6個のC原子を有するアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、この場合炭素鎖は、隣接していない酸素原子、硫黄原子またはNR3基によって中断されていてよく、
2は、それぞれ1〜12個のC原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基であり、この場合炭素鎖は、隣接していない酸素原子、硫黄原子またはNR3基によって中断されていてよく、
3は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アミノアルキル基またはアスパラギン酸エステル基であり、
Aは、酸素、硫黄、式NR3の基または複素環の一部分である窒素原子を表わし、
nは、0、1または2の値を取ることができる〕で示される反応性シリル官能基を有する、請求項1記載の粒子(P)。
【請求項3】
一般式(II)または(IIa)
【化1】

〔式中、
Bは、水素または任意の炭素含有基であり、
mは、0、1または2の値であり、
xは、0〜10の値を取ってもよく、
A、R1、R2およびR3は、請求項2記載の一般式(I)で記載された意味を有する〕で示される反応性シリル官能基を有するオルガノシラン(A1)が使用されている、請求項1記載の粒子(P)。
【請求項4】
オルガノシラン(A1)として一般式(III)または(IIIa)
【化2】

〔式中、m、x、A、R1、R2は、請求項2または3記載の一般式(I)または(II)で記載された意味を有する〕で示される化合物を使用する、請求項1記載の粒子(P)。
【請求項5】
粒子(P1)と一般式(VI)
(R1O)3-n(R2nSi−CH2−NH−C(O)−X (VI)
〔式中、R1およびR2は、請求項2または3記載の一般式(I)または(II)で記載された意味を有し、Xは、80〜300℃の温度でHXの形で脱離される保護基を表わし、この場合には、イソシアネート官能基を遊離する〕で示されるオルガノシラン(A)との反応によって製造されている、請求項1または2記載の粒子(P)。
【請求項6】
粒子(P1)と一般式(VII)
(R1O)3-n(R2nSi−CH2−NR3−C(O)−NH−Y−(NH−C(O)−X)z (VII)
[式中、
1、R2、R3、nおよびXは、請求項2または5記載の一般式(I)または(VI)で記載された意味を有し、
Yは、(z+1)官能性の脂肪族基または芳香族基を表わし、
zは、1〜4、有利に1または2の数を表わす〕で示されるオルガノシラン(A)との反応によって製造される、請求項1または2記載の粒子(P)。
【請求項7】
粒子(P1)と一般式(II)、(IIa)、(III)、(IIIa)または(IX)
(R1O)3-n(R2nSi−CH2−NHR3 (IX)
で示されるオルガノシラン(A1)との反応によって得ることができ、
この場合中間生成物として得ることができるアミノアルキル官能性またはヒドロキシルアルキル官能性粒子(P2)は、第2の反応工程で一般式(XII)
OCN−Y−(NH−C(O)−X)z (XII)
で示される部分的に保護されたイソシアネート(A2)と反応され、粒子(P)に変わり、この場合変数R1、R2、R3、Y、X、nおよびzは、請求項6記載の一般式(VII)で記載された意味を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の粒子(P1)。
【請求項8】
粒子(P1)と一般式(XIV)
【化3】

で示されるオルガノシラン(A1)との反応によって製造され、
この場合、中間生成物として得られたアミノアルキル官能性粒子(P2)は、第2の反応工程で一般式(XII)の部分的に保護されたイソシアネート(A2)と反応され、最終製品(P)に変わる、請求項7記載の粒子(P)。
【請求項9】
粒子(P1)としてコロイドシリカまたはコロイド状金属酸化物が使用されている、請求項1から8までのいずれか1項に記載の粒子(P)。
【請求項10】
粒子(P1)として熱分解法珪酸が使用されている、請求項1から8までのいずれか1項に記載の粒子(P)。
【請求項11】
粒子(P1)として一般式(V)
53SiO1/2e(R52SiO2/2f(R5SiO3/2g(SiO4/2h (V)
〔式中、
5は、OR1官能基、OH官能基、場合によってはハロゲン置換、ヒドロキシル置換、アミノ置換、エポキシ置換、チオール置換、(メタ)アクリル置換されたかまたはNCO置換された、1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基を表わし、
eは、0より大きいかまたは0に等しい値を表わし、
fは、0より大きいかまたは0に等しい値を表わし、
gは、0より大きいかまたは0に等しい値を表わし、
hは、0より大きいかまたは0に等しい値を表わし、e+f+g+hからの総和は、少なくとも1の値を表わす〕で示されるシリコーン樹脂が使用されている、請求項1から8までのいずれか1項に記載の粒子(P)。
【請求項12】
金属原子、珪素原子および酸素原子から選択された原子からなるかまたはシリコーン樹脂からなる核および表面上の少なくとも1個の保護されたイソシアネート基を有する粒子(P)の製造法において、
粒子(P)は、金属原子、珪素原子および酸素原子から選択された原子からなるかまたはシリコーン樹脂からなり、遊離ヒドロキシ官能基を有する粒子(P1)を、
a)少なくとも1個の保護されたイソシアネート基を含有するオルガノシラン(A)または
b)少なくとも1個のNH−、OH−またはSH−官能基を有するオルガノシラン(A1)と反応させることによって得ることができ、この場合、中間生成物として、もう1つの反応工程で少なくとも1つの保護されたイソシアネート官能基ならびに保護されていないイソシアネート官能基を有する化合物(A2)と反応させ、粒子(P)に変えるNH官能性、OH官能性またはSH官能性粒子(P2)を得ることができ、
この場合オルガノシラン(A)および(A1)は、粒子(P1)との反応前にシリル単位に対してα位の酸素原子、硫黄原子または窒素原子を有するか、または環状構造要素の一部分であるSi−O単位またはSi−N単位を有する、金属原子、珪素原子および酸素原子から選択された原子からなるかまたはシリコーン樹脂からなる核および表面上の少なくとも1個の保護されたイソシアネート基を有する粒子(P)の製造法。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の粒子(P)または請求項12の記載により製造された粒子(P)を含有する塗料調製物(B)。
【請求項14】
塗料調製物は、保護されたNCO官能基または保護されていないNCO官能基を有する塗料硬化剤を固体含量に対して0〜90質量%、ヒドロキシル基官能性塗料樹脂を固体含量に対して20〜90質量%および特に粒子(P)を固体含量に対して3〜40質量%含有する、請求項13記載の塗料調製物。

【公表番号】特表2008−510045(P2008−510045A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526338(P2007−526338)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008461
【国際公開番号】WO2006/018144
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】