説明

保護フィルム付き光学フィルム、およびその製造方法

【課題】例えば2m幅以上の保護フィルムつき広幅光学フィルムの提供であって、しかも偏光板を作製後に該保護フィルムを層間剥離するときに剥離電圧が発生しにくく、液晶素子に悪い影響を与えることが少なく、しかも剥離時に糊残りの実質的にない優れた保護フィルム付き光学フィルムの提供、およびその製造方法の提供。
【解決手段】光学フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが積層されてなる保護フィルム付き光学フィルムにおいて、該光学フィルムと保護フィルムとの界面に粘着材層が実質的に存在しない構成とし、かつ、前記光学フィルムの幅方向に渡って測定した厚みむらが5%以下である、光学フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広幅、例えば2m幅以上の広幅の保護フィルム付き光学フィルムであって、厚みむらが小さく、偏光板の作成後等に該保護フィルムを層間剥離するときに剥離電圧の発生が抑制され、液晶素子等の周辺の素子に悪い影響を与えることなく、しかも剥離時の糊残りの発生が抑制された、優れた保護フィルム付き光学フィルムおよびその製造方法に関するものであり、特に液晶表示部材などの光学用途に相応しいフィルムを提供するものである。なお、ここでいう保護フィルムとは、最終的に液晶ディスプレイなどを構成する光学部材としては使用されることはないが、その製造工程で光学フィルムをゴミや傷などから保護をするフィルムである。
【背景技術】
【0002】
従来の光学フィルムの場合、光学フィルムの表面に発生する傷やゴミの付着から保護するために、該光学フィルムの上に粘着性を有したオレフィン系共押出フィルムや、ポリエステルフィルムの上にアクリル系の粘着剤を塗工したコーティングフィルム等からなる保護フィルムが用いられることが多い。
【0003】
ところが、上述の光学フィルムに保護フィルムを貼り合せる工程で、光学フィルムと保護フィルムの間に空気層を噛み込んだり、保護フィルムが皺になって貼り合されたりすることがしばしば発生していた。特に光学フィルムの幅が例えば2m幅以上と広くなればなるほど、これらの空気の噛み込みや皺の発生の頻度は高くなり、大幅な生産性低下の原因となっていた。これは、保護フィルムが柔らかく腰が無いためか、厚み均質性(特に幅方向の厚み均質性)が悪くフィルムの平面性が悪いためか、あるいは滑り性が全く無いためかと推定される。
【0004】
さらに、保護フィルムには、粘着材を使用しているために、光学フィルムから層間剥離するときに粘着材の一部が残る糊残り現象が発生することがあり、これが大きな光学欠点となることが多かった。
【0005】
さらに、光学フィルムを液晶素子に組んだ後に該保護フィルムを層間剥離するときに大きな剥離電圧が発生して、液晶素子を破壊したり、光学的な欠点を発生させたりすると言う大きな問題点もあった。
【0006】
本発明の第一の目的は、かかる従来の保護フィルムが貼り合わせられた光学フィルムの欠点を解消して、しかも例えば2m以上の広幅の光学フィルムを提供し、さらには層間剥離時に糊残りや、剥離電圧の発生しにくい光学フィルムを提供するものである。
【0007】
なお、このように粘着材層を用いなくて光学フィルムと保護フィルムを層間接着する方法としては、すでに共押出しを用いたものが提案されている(例えば、特許文献1、特許
文献2参照。)。すなわち、これらはいずれも光学フィルム樹脂と保護フィルム樹脂とを
共に融点以上に加熱して溶融状態でお互いの層を積層し、その後幅方向に拡大するなどして層間の接着力を得る方法である。しかし、このような方法では、積層フィルムの総厚さの全体的な均質性は得られても、各層を構成するそれぞれ個別の層厚みを調整することができず、したがって幅方向の厚さの均質性を得ることができないために、保護フィルムを剥離して光学フィルムを取り出した場合、光学フィルムの厚さ均質性が悪く、したがって光学特性として最も重要なリターデーションムラなどの光学欠点が発生して、実用上の大きな問題となる場合があった。特に幅が例えば2mを越すような幅広の光学フィルムの場合には、この厚みムラは非常に顕著となり、このような共押出方法では、例えば幅2m以
上の広幅光学フィルムの製法には適していない場合があった。さらにこれら異種の樹脂層を含んだ積層体自体の回収が困難であり、したがって製造コストが高くなり、生産性の劣る方法であった。
【特許文献1】特開2002−338705号公報
【特許文献2】特開2003−240953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように本発明の第一の目的は、従来の保護フィルムが接着剤層を介して貼り合わせられた光学フィルムの欠点を解消して、しかも例えば2m以上の広幅の光学フィルムを提供し、さらには層間剥離時に糊残りや、剥離電圧の発生しにくい保護フィルム付き光学フィルムを提供することである。本発明の第二の目的は、従来の共押出し法により得られた保護フィルム付き光学フィルムの欠点を解消して、幅が例えば2mを越すような幅広の光学フィルムであっても、光学フィルムの厚さ均質性に優れ、光学特性として最も重要なリターデーションムラなどの光学欠点の発生が抑制され、実用上高い価値を有する保護フィルム付き光学フィルムを提供することである。
【0009】
本発明の課題は、上記第一の目的と第二の目的とを同時に達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは鋭意検討の結果、光学フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが積層されてなる光学フィルムにおいて、該光学フィルムと保護フィルムとの界面に一般に言われている粘着材層が実質的に存在しない構成の光学フィルムであって、前記光学フィルムの幅方向に渡って測定した厚みむらが(ピーク対ピークで)5%以下である保護フィルム付き光学フィルムが、上記の課題を解決することを見出し、本発明に至った。
【0011】
粘着材層は実質的に存在しないが、該光学フィルムと該保護フィルムとの層間剥離力は10g/25mm幅〜300g/25mm幅程度の強い接着力を示すことが好ましい。
このような構成にすることにより、さらに容易に2m幅以上の幅の広い光学フィルムを提供できるのである。
すなわち本発明は、
(1)光学フィルム(A)の少なくとも片面に保護フィルム(B)が積層されてなる保護フィルム付き光学フィルムにおいて、該光学フィルムと保護フィルムとの界面に粘着材層が実質的に存在せず、かつ前記光学フィルム(A)の幅方向に渡って測定した厚みむらが(ピーク対ピークで)5%以下である、保護フィルム付き光学フィルムに関する。なお、本発明において、粘着材層が実質的に存在しないとは、共押出または塗工により粘着性を有する材料の独立した表面層を形成していない状態であることをいう。
【0012】
以下(2)から(14)は、それぞれ本発明の好ましい実施形態の1つである。
(2)前記光学フィルム(A)と前記保護フィルム(B)との層間剥離力が10g/25mm幅〜300g/25mm幅である、上記(1)に記載の保護フィルム付き光学フィルム。
(3)前記保護フィルム付き光学フィルムの幅が2m以上である、上記(1)または(2)に記載の保護フィルム付き光学フィルム。
(4)前記光学フィルム(A)が、アクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂、メチルペンテン系樹脂、透明性に優れたポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリマレイミド系樹脂、およびシンジオタクティックポリプロピレン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含んでなる、上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィルム。
(5)前記光学フィルム(A)のガラス転移温度(Tg)が120℃以上である、上記(
4)に記載の保護フィルム付き光学フィルム。
(6)前記光学フィルム(A)と接する側の前記保護フィルム(B)の表面の摩擦係数が1以下である、上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィ
ルム。
(7)前記保護フィルム(B)の表面固有抵抗値が1011Ω/□以下である、上記(1)から(6)のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィルム。
(8)前記保護フィルム(B)の水蒸気透過率が20(g/m2・日/0.1mm)以上
である、上記(1)から(7)のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィルム。(9)前記保護フィルム(B)の2m以上の幅方向に渡って測定した厚みむらが、5%以下である、上記(1)から(3)、および(5)から(7)のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィルム。
(10)前記保護フィルム(B)が、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン、およびそれらの変性体である変性ポリオレフィン、ポリエステル、ならびにポリカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含んでなる、上記(1)から(8)のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィルム。
(11)前記光学フィルム(A)の少なくとも片面に、原料となる樹脂の溶融体を押出積層(EL:Extrusion Laminate)して前記保護フィルム(B)を形成する工程を有する製造方法により、上記(1)から(10)のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィルムを製造する保護フィルム付き光学フィルムの製造方法。
(12)前記保護フィルム(B)を加熱して該保護フィルム(B)の歪を取り除いた後に、該保護フィルム(B)の上に、原料となる溶融樹脂層を積層密着して冷却することにより前記光学フィルム(A)を形成する工程を有する製造方法により、上記(1)から(10)のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィルムを製造する保護フィルム付き光学フィルムの製造方法。
【0013】
本発明は、また、
(13)上記(1)から(10)のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィルムに対して、加熱処理、延伸処理、およびリラックス処理のうち少なくとも1つの処理を行い、前記光学フィルム(A)の電気特性、機械特性、および/または光学特性の改良を行う工程を有する、改良された保護フィルム付き光学フィルムの製造方法。
(14)該処理が延伸処理であり、該延伸処理が同時2軸延伸である、上記(13)に記載の保護フィルム付き光学フィルムの処理方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成の光学フィルムにすることにより、例えば2m幅以上の広幅光学フィルムでも保護フィルムとの間に空気の噛み込みなどの欠点が無くて均一に貼り合わせが可能となり、大型ディスプレイ用途に有効であるばかりか、広幅光学フィルムへの対応が可能であり、光学フィルム部材のコスト削減につながることが期待される。
【0015】
さらに保護フィルムの層間剥離時も糊残りが実質的になく、ハイグレードな光学用フィルム部材として使用することが期待される。
また、保護フィルムの層間剥離時の剥離帯電圧も非常に低いものとなり、低電圧でも駆動する次世代の液晶にも有効に使用可能となることが期待される。
【0016】
さらに、従来はシリコンコートされた離形PETフィルムを粘着加工されたPETフィルムから剥離して、その粘着PETフィルムを光学フィルムに重ね合わせていたが、本発明の光学フィルムを用いることにより、これらの2枚のPETフィルムが不要となり、製造工程が大幅に簡略化され、生産コストの大幅低下が可能となることが期待される。
【0017】
さらに、該保護フィルムを貼り合せた光学フィルムを、必要によって、そのままテンタ
ーなどの加熱炉に供給して延伸やリラックス処理などを保護フィルムが付いたまま行うことが出来、高品位な位相差フィルムの製造も可能となることが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、光学フィルム(A)の少なくとも片面に保護フィルム(B)が積層されてなる光学フィルムにおいて、該光学フィルム(A)の幅が好ましくは2m以上、さらに好ましくは2.5m以上、特に好ましくは3m以上の生産性に優れた光学フィルムであって、該光学フィルム(A)と該保護フィルム(B)との界面に粘着材層が実質的に存在しない保護フィルム付き光学フィルムであって、かつ前記光学フィルム(A)の幅方向に渡って測定した厚みむらが5%以下である保護フィルム付き光学フィルムであるが、該光学フィルム(A)と該保護フィルム(B)との層間剥離力は、10〜300g/25mm幅、好ましくは、15〜150g/25mm幅であることが望ましい。層間剥離力が10g/25mm未満だと、光学フィルム走行中や、搬送中、さらにはカッティング時などの外力がかかるときに保護フィルムが光学フィルムから剥離する恐れがあるためであり、逆に層間剥離力が300g/25mmを越す強い接着力の場合には、保護フィルムを剥離するときに光学フィルムに皺やダメージを与えたりする恐れがあるためである。
【0019】
本発明を構成する光学フィルム(A)は、アクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂、透明性に優れたポリスチレン(PSt)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリマレイミド系樹脂、およびシンジオタクティックポリプロピレン(SPP)系樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含んでなることが好ましい。
【0020】
本発明を構成する光学フィルム(A)は、光学フィルム厚さ100μmに換算したとき、波長550nmにおける光線透過率が88%以上、ヘイズ値は、1.5%以下であるフィルムである。光学フィルム(A)には、それ以外に特に限定はなく、上記条件を満たす限り各種の透明フィルムを適宜使用することができる。
【0021】
光学フィルム(A)の光学フィルム厚さ100μmに換算したときの波長550nmにおける光線透過率は、好ましくは90%以上であり、ヘイズ値は、好ましくは1.0%以下である。光学フィルム(A)を、光学等方性フィルムとして利用する場合は、波長589nmにおける面内の光学リターデーション値Reは、好ましくは10nm以下、さらに好ましくは5nm以下であり、厚さ方向のリターデーション値Rthは、好ましくは15nm以下、さらに好ましくは10nm以下、特に好ましくは5nm以下である。もちろん光学フィルム(A)を位相差フィルムとして使用する場合は、用途によって異なるが、保護フィルムを貼り合わせたままで延伸する条件を変えることにより、例えばRe値として30−60nm、Rth値として100−250nmの値の光学フィルムが好んで用いられる。これ以上の値となると液晶表示部材として用いた場合、着色や虹模様などの表示欠点となる場合があるためである。
【0022】
このような光学均質性を得るためには、光学フィルム(A)の幅方向に渡って測定した厚みむらが(ピーク対ピークで)5%以下であることが、有効である。より望ましくは、該光学フィルムの長さ方向、および(例えば2m幅以上に渡った)幅方向の厚みムラが、いずれも3%以下、好ましくは2%以下である事が好ましい。このような厳しい厚み均質性を得るには、公知例である特許文献1、特許文献2のような共押出方法は必ずしも適切ではない。なぜなら、共押出フィルムの厚み制御は各層個別ではなく全層合計の厚みを均一にするものであり、一部の層を剥離すると厚み精度は著しく低下するからである。なお、本法では光学フィルム(A)、(B)の少なくとも一方は個別に製膜することから、公知の手法により厚みむらを低く抑えることが可能である。たとえば、各基材に対し厚みむら上限の一桁程度細かい精度を持つインライン厚み計を幅方向に渡って測定可能な状態とし、幅方向の基材位置の厚みに応じて対応する口金位置からの溶融樹脂吐出量をヒートボ
ルト等の流量自動調整機構により増減させるといった方法があげられる。なお、光学フィルム(A)の厚みむらとは、押出積層して保護フィルム(B)層を形成する前の光学フィルム(A)の厚みむらである。
【0023】
さらに、光学フィルム(A)のガラス転移温度Tgは120℃以上、好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上であることが好ましい。これは60℃程度の高温にさらされる可能性の高い自動車用途などの厳しい使用環境下でも安定した寸法安定性を有するばかりか、部材の負荷テスト(85℃、65RH%、500時間、および105℃、0RH%、500時間)においても、安定した寸法安定性を有することが望ましいためである。
【0024】
さらに光学フィルム(A)の中心線平均表面粗さRaは、100nm以下、好ましくは
50nm以下、さらに好ましくは20nm以下であることが好ましい。これは液晶表示部材として用いた場合、表面荒れは、画像の歪みになったり、さらには斜め方向から観察した時には画像がぼけたりするおそれがあるためである。光学フィルム(A)の中心線平均表面粗さRaを100nm以下とするには、口金より吐出した溶融樹脂を、表面粗度をRy=0.1以下とした冷却ドラム表面に接触させて固化させるようにすればよい。
【0025】
さらに光学フィルム(A)の少なくとも片面の表面濡れ張力は40mN/m以上、好ましくは45mN/m以上が好ましい。これは、本発明を構成する光学フィルム(A)と偏光子などの他の光学部材との界面の強い接着性を得るために好適な条件である。光学フィルム(A)の表面濡れ張力を40mN/m以上とするには、基材表面に対しプラズマやコロナ放電といった処理を施せばよく、処理雰囲気、放電電圧、電流値、処理時間等により調整可能である。
【0026】
さらに光学フィルム(A)の表面比抵抗値は1012Ω/□以下、好ましくは1010Ω/□以下、108Ω/□以下の範囲であるのが好ましい。これは、本発明を構成する光学フ
ィルム(A)を搬送、剥離などの工程での剥離帯電を避けたり、ゴミやほこりの吸着を防止するのに有効なためである。光学フィルム(A)の表面比抵抗値を1012Ω/□以下とするには、帯電防止剤を基材原料中に練り込む、または基材表面に塗工するようにすればよい。
【0027】
本発明の光学フィルム(A)の少なくとも一部を構成する材料として好ましく用いられる樹脂としては、アクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂、メチルペンテン系樹脂、透明性に優れたポリスチレン(PSt)樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリマレイミド系樹脂、シンジオタクティックポリプロピレン(SPP)系樹脂などから選ばれた光学用の樹脂を挙げることができる。
【0028】
環状オレフィン系樹脂としては、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物をはじめとする各種COP、ジシクロペンタジエンまたはテトラシクロドデセンとエチレンとの共重合体をはじめとする各種COCおよびその水素化物、およびノルボルネン系重合体などから選ばれた1種以上で、ガラス転移点が100℃以上、好ましくは130℃以上ものが好ましい。ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物は、特公昭58−43412号公報、特開昭63−218727号公報などでよく知られている。またジシクロペンタジエンとエチレンとの共重合体は、特開昭63−314220号公報などでも知られており、ノルボルネン系重合体は米国特許第2883372号明細書、特公昭46−14910号公報、特開平1−149738号公報などに示されているようにジシクロペンタジエン類とジエノフイルとの混合物から4環体以上の多環ノルボルネン系化合物を得たのち重合体にしたものなどが知られている。もちろんジシクロペンタジエン類は、そのメチルやエチル置換体などのアルキル置換体や、エンド異性体、キキソ異性体またはこれらの混合
物なども含んでも良い。該環状ポリオレフィンの分子量は数平均分子量で30000以上、70000未満、好ましくは35000以上、60000未満であるのが、フィルムの機械強度、特に衝撃性、押出成形などの点で好ましい。
【0029】
メチルペンテン系樹脂とは、4−メチルペンテン−1ホモポリマー単独重合体や、それに炭素数5、8、10、12、20などの任意の長さのコモノマーを2〜20モル%程度共重合させた共重合メチルペンテンポリマーなども含み、これらの主たるものは三井化学株式会社からTPX(登録商標)として市販されている。
【0030】
ポリマレイミド系樹脂とは、特開2000−294042号公報、特開2006−70134公報などに記載のもの代表される樹脂で、東ソー株式会社が開発したN−置換マレイミド・オレフィン共重合体、およびそれにブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子、スチレン・アクリロニトリル共重合体をグラフト化してなるグラフト変性1,3−ブタジエ
ン・スチレン共重合体ゴムなどを添加した樹脂を例示することができる。
【0031】
ポリスチレン(PSt)系樹脂とは、基本骨格にスチレンから導かれる基を有した高分子化合物で、タクティシティとしては、アタクチックポリマーを主としたポリマーが透明性に優れていて好ましい。透明性を害さない範囲で、すなわち、厚さ80μmのフィルムにしたときに、光線透過率が88%以上の値が保たれる範囲でアイソタクチックポリスチレンやシンジオタクティックポリスチレンを含有したポリスチレンでも、さらに、これにエチレン基のような他のモノマーを20モル%程度以下共重合したものでも良い。PSジャパン株式会社などから市販されている。なお、本発明において透明性に優れたポリスチレン樹脂とは、厚さ80μmのフィルムにしたときに、波長550nmにおける光線透過率が88%以上のポリスチレン樹脂をいう。
【0032】
アクリル系ポリマー(樹脂)としては、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリメタクリレートなどで代表されるポリマーで、これらの共重合体などを含む光線透過率の高い光学的に透明なポリマーである。また、特開2006−265543号公報に示されているように、カルボキシル基含有アクリル共重合体に環化反応を行うことにより得られるグルタル酸無水物単位含有共重合体は、高いガラス転移温度Tgを有するのみならず、高度な耐熱性、無色透明性、熱安定性に優れた成形加工特性を有し、さらに異物も減少し、光学材料に要求されている高度な無色透明性、低異物アクリルポリマーとなるので本発明を構成するフィルムにも有効に用いることができる。もちろん、これにアクリルゴムを分散させて強靱性を付与したポリマー、例えば特開2006−283013号公報に示されているように、グルタル酸無水物単位を有するアクリル樹脂に、該アクリル樹脂との屈折率差が0.05以下で、該粒子径が1μm以下のアクリル弾性体粒子を配合したポリマーなども有効である。
さらに、特開2007−63541号公報などに示されているようなラクトン環を有するガラス転移温度Tgが120℃以上のアクリル樹脂や、特開2006−27090号公報などに開示されているようなポリ乳酸をブレンドしたアクリル樹脂などが好ましく用いられる。
【0033】
ポリカーボネート系樹脂とは、炭酸とグリコールあるいは2価フェノールとのポリエステルで、−O−CO−O−のカーボネート結合を有する高分子で、ビスフェノールと炭酸エステルの高分子が最も実用的に用いられており、帝人株式会社(パンライト(登録商標)、ピュアエース(登録商標))、株式会社カネカ(エルメック(登録商標))、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社(ユーピロン(登録商標))などから市販されている。もちろんこれにフルオレン基を有したモノマーを共重合したポリマー(例えば、特開2005−189632号公報など参照。)は位相差の逆波長分散を示すので、このようなポリカーボネートも用途によっては好んで用いることができる。
【0034】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
シンジオタクティックポリプロピレン(SPP)系樹脂は、プロピレンの単独重合体であってもよく、またプロピレンと少量の他のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。共重合体である場合にあっては、プロピレン含量が95モル%以上、特に97モル%以上のものが好ましい。プロピレンのtriad連鎖でみたシンジオタクティシティーが0.6
以上であることが好ましく、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)は0.1〜50g/10分であることが好ましい。
【0035】
本発明を構成する光学フイルム(A)中には公知の任意の添加剤、例えば着色防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、結晶核剤、接着向上剤、すべり剤、ブロッキング防止剤、耐侯剤、消泡剤、透明化剤、粘度調整剤などを含有させてもよい。帯電防止としては、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ビス(オクチルポリオキシエチレン)ホスフェートソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホン酸ホスホニウム、スチレンスルホン酸、ポリエチレングリコールなどの公知の帯電防止剤などがあるが、これらには限定されない。透湿性のある帯電防止剤を添加剤として用いると、乾燥時、および経時での耐電防止安定性に優れるので好ましい。ここで透湿性のある帯電防止剤としては、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Ce)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、などのアルカリ金属から選ばれたイオン基を有するアイオノマーポリマーを挙げることができ、本発明の場合には特にカリウム(K)イオンを含有したポリマーの含有が、フィルムの透湿性、相溶性、透明性の点で好ましい。透湿性アイオノマーの代表例としては、ポリスチレンスルホン酸塩(PSS)アイオノマー、エチレン系スルホン酸塩アイオノマー、エチレン・不飽和カルボン酸アイオノマーなどがあり、代表的なポリマーとしては三井デュポンポリケミカル株式会社から市販されているエンティラ(商品名)が特に優れている。もちろんこれと同時に相溶化剤を併用しても良い。これらの帯電防止剤の添加量としては、透明性およびブリードアウト性などの点から重量換算で20%以下、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下が良い。
【0036】
次に、本発明のもう1つの構成要素である、保護フィルム(B)について説明する。
ここで、保護フィルム(B)とは、最終的に液晶ディスプレイなどを構成する光学部材としては使用されることはないが、その製造工程で光学フィルムをゴミや傷などから保護をするフィルムをいう。保護フィルム(B)は、その水蒸気透過率が20(g/m2・日/
0.1mm)以上であることが好ましい。他の好ましい特性としては、光学フィルム(A
)と接する側の該保護フィルム(B)の表面の摩擦係数が1以下、好ましくは0.6以下であることが望ましい。摩擦係数が全く測定できないような場合(摩擦係数無限大)や、摩擦係数が2を越すような場合には、該保護フィルムが例えば2m以上の広幅の場合には、光学フィルムに接した瞬間、保護フィルムが滑らないので貼り合わせ時に保護フィルムと光学フィルム間に介在する空気層が除去できずに、空気を噛み込むなどの現象を生ずる場合があり、均質な貼り合わせが出来ないおそれがある。なお、保護フィルム(B)の表面の摩擦係数とは、押出積層して光学フィルム(A)層を形成する前の保護フィルム(B)の表面の摩擦係数である。
【0037】
次に本発明を構成する保護フィルム(B)の特性としては、23℃、50RH%での表面固有抵抗値が1011Ω/□以下、好ましくは1010Ω/□以下、さらに好ましくは109Ω/□以下の光学フィルムであることが望ましい。これはゴミを吸着しないようにする
ばかりか、光学フィルムとの剥離帯電を極力発生させないようにするためでもある。保護フィルム(B)の表面固有抵抗値は、例えば透湿性ポリマーを後述する量で配合することにより上記範囲とすることができる。
【0038】
保護フィルム(B)の光学フィルムと接しない側の表面濡れ張力は35mN/m以下、好ましくは32mN/m以下が好ましい。これは粘着材や指紋などの密着を防止するためである。一方、光学フィルムと接する側の面の表面濡れ張力は、製造条件によっても、欲しい層間剥離力によっても異なり、必要によってはより大きな層間剥離力が欲しいときには、貼り合わせ前に該保護フィルム(B)表面などに表面活性化処理などをして接着力を調整することができる。
【0039】
さらに、本発明を構成する保護フィルム(B)の水蒸気透過率は、20(g/m2・日
/0.1mm)以上、好ましくは30−120(g/m2・日/0.1mm)と水蒸気透
過性に優れたフィルムであることが望ましい。これよりも小さな水蒸気透過率しか有さない保護フィルムだと、光学フィルム(A)とPVA偏光子との接着に水系接着材を用いた場合の貼り合わせ時に、水がフィルム断面から乾燥できず、保護フィルム(B)と光学フィルム(A)との界面に水ぶくれが生じたり、PVA偏光子の偏光度が低下したり、偏光子に黒点が出たりするなどの欠点が生じるおそれがある。保護フィルム(B)の水蒸気透過率は、例えば透湿性ポリマーを後述する量で配合することにより上記範囲とすることができる。
【0040】
さらに、本発明を構成する保護フィルム(B)の例えば2m以上の幅方向に渡って測定した厚みむらが、5%以下、好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下であることが好ましい。フィルムの厚さムラは光学的なリターデーションのムラにつながるばかりか、貼り合わせ時の積層ムラをもたらす場合があるので、これらを防止するため上記の条件を満たすことが好ましい。保護フィルム(B)の幅方向に渡って測定した厚みむらを5%以下とするには、厚みむら上限の一桁程度細かい精度を持つインライン厚み計を幅方向に渡って測定可能な状態とし、幅方向の基材位置の厚みに応じて対応する口金位置からの溶融樹脂吐出量をヒートボルト等の流量自動調整機構により増減させるといった方法が挙げられる。なお、保護フィルム(B)の厚みむらとは、押出積層して光学フィルム(A)層を形成する前の保護フィルム(B)の厚みむらである。
【0041】
さらに、本発明を構成する保護フィルム(B)の破断強度は、20MPa以上、好まし
くは40MPa以上、さらに好ましくは100MPa以上であることが望ましい。通常の
プロテクトフィルムといわれるオレフィン系のフィルムの破断強度は18MPa以下のものが多いため、2m以上の広幅プロテクトフィルムを光学フィルムに貼り合わせる時に、プロテクトフィルムの腰がないために弛んだり、皺が入ったりして、空気の噛み込みや、皺のない均一な貼り合わせが困難であるが、破断強度が例えば20MPa以上と大きな強度を持った保護フィルム(B)であれば、皺や空気を噛み込ませずに均一に張り合わせが可能となるので好ましい。
【0042】
さらに、本発明を構成する保護フィルム(B)の長手方向、幅方向の面内リターデーション値のバラツキとしては、5nm以下が好ましく、さらに好ましくは3nm以下である。また、リターデーションの絶対値としては5nm以下、好ましくは2nm以下のものが光学的均質性に優れて好ましい。これは、液晶表示部材として使用したときの検査段階で、プロテクトフィルムの光学ムラが検出されると、検査に悪影響を与えるおそれがあるためである。
【0043】
さらに、本発明を構成する保護フィルム(B)に存在する光学異物欠点は偏光板検査工程などで検出されないことが好ましい。具体的には、100μm以上の異物欠点としては、1個/1m2以下、40μm以上100μm未満の異物は、10個/m2以下であることが好ましい。さらに、直交ニコル下に該保護フィルムをおいた場合には、欠点が検出されないことも好ましい。
【0044】
さらに本発明を構成する保護フィルム(B)の少なくとも一部を構成する材料として好ましいポリマーとしては、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、およびそれらの変性体である変性ポリオレフィン、ポリエステル、ならびにポリカーボネートからなる群から選ばれたポリマー単独、あるいはそれらのブレンド、を挙げることができる。これら各種ポリマーを含んでなるフィルムは、単層でも、積層でも使用することができる。これらの保護フィルムは無延伸でも、必要に応じて一軸や二軸に延伸・熱処理しても良い。延伸することにより保護フィルムとしての剛性や強度が大きくなり、厚み均質性も向上したり、経時での安定性が増加したり、さらに経時で寸法変化してもフィルムの平面性などの形状を修正し易いので好ましいこともある。
【0045】
本発明を構成するフィルム(B)の場合、保護フィルムの機能としては、接着剤の糊が保護フィルムに転写しないような防汚性が必須であるが、LLDPEやPPなどのポリオレフィン系のフィルムではこの防汚性はポリマー自体に最初から備わった機能であるので、特別に表面処理などは必要ないが、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルムなどのフィルムには防汚性が必ずしも十分でないため、表面処理をして防汚性機能を付与する必要が生ずる場合があり、したがって保護フィルムとしての価格が高くなるという欠点があるので、この観点からは、本発明を構成する保護フィルム(B)としては、ポリオレフィン系のフィルムが好ましい。さらに本発明を構成する保護フィルム(B)には、ゴミの吸着防止や、剥離帯電の防止のために、帯電防止機能が求められる場合が多い。この機能を付与には、保護フィルムにコーティングなどの変性をする方法もあるが、生産性を考えた場合、高分子系の帯電防止剤を練り込んでからシーティングする方法が良い。特に、帯電防止機能のみならず透湿性をも一挙に付与する方法として特定のアイオノマーを用いる方法が特に有効である。
【0046】
このようなフィルムは、例えば、マトリックスポリマーに、特定の金属イオンを含有する透湿性ポリマーを、特定量を含有させて、これら金属イオンを含有する透湿性ポリマーと相溶化剤とを混練することによって得ることができる。マトリックスポリマーに使用される透湿性ポリマーとは、水蒸気透過率が1000(g/m2・日/0.1mm)以上、
好ましくは2000(g/m2・日/0.1mm)以上と大きな透湿性を有するポリマー
である。上記条件を満たす限り、透湿性ポリマーの種類には特に制限はなく、各種の透湿性ポリマーを適宜使用することができるが、金属イオン含有透湿性ポリマーを使用することが特に好ましい。透湿性ポリマーとして特に好ましい金属イオンを含有する透湿性ポリマーとしては、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Ce)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、などのアルカリ金属から選ばれた金属イオン基を有するアイオノマーポリマーを用いることが好ましい。本発明の場合には特にカリウム(K)イオンを含有したポリマーの含有が、フィルムの透湿性、相溶性、透明性の点で好ましい。金属イオン基を有するアイオノマーポリマーの代表例としては、ポリスチレンスルホン酸塩(PSS)アイオノマー、エチレン系スルホン酸塩アイオノマー等のスルホン酸塩アイオノマー、エチレン・不飽和カルボン酸アイオノマーなどを挙げることができる。
【0047】
もちろん、透湿性ポリマーとして、透湿性の比較的大きな樹脂である水酸基(OH)を有するセルローストリアセテート(TAC)、ポリビニルアルコール(PVA)、セロファン、さらには、エーテル基を有するポリエステルエーテルエラストマー、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどをマトリックスポリマーに添加することもできるが、大きな透湿性と湿度に対する寸法安定性とを両立したフィルムやシートは得る観点からは、上記の金属イオン含有透湿性ポリマーを使用することが好ましい。したがって透湿性ポリマーは、金属イオンを含有するポリマーが本発明の組成としては非常に好ましいが、必ずしもこれには限定されることはなく、例えばポリエチレングリコールのようなエーテル化合物なども有効である。
【0048】
この透湿性ポリマーの含有量は要求する性能に依存するために、特に限定はしないが、通常は全ポリマーの重量を100重量%としたとき、これに対して1〜99重量%程度であり、好ましくは5〜98重量%である。
(エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー)
金属イオンを含有する透湿性ポリマーとして好ましく用いられるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーとは、エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体のカルボキシル基の一部もしくは全部がアルカリ金属などで中和された構造のものである。
ここに不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどを挙げることができ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また共重合成分となりうる他の単量体としては、酢酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチルのような不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素などを例示することができる。
【0049】
上記エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体としてはエチレン成分が60〜90重量%、特に70〜88重量%、不飽和カルボン酸成分が10〜40重量%、特に12〜30重量%、その他不飽和単量体成分が0〜30重量%、特に0〜20重量%の割合で共重合されているものが好ましい。かかる共重合体は、例えば高温高圧下で各重合成分をランダム共重合することによって得る事ができる。また、総和が上記要件を満たす限り、不飽和カルボン酸成分単位の異なるものを2種以上用いてもよい。なお、アイオノマーのイオン源としては、アルカリ金属、すなわちリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、またはセシウムが好ましく用いられるが、特にカリウムが好適である。また、アイオノマーの中の不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸などを例示することができる。アイオノマー中のアルカリ金属カチオン含有量は、アイオノマー1kg当たり0.4〜4モル、好ましくは0.6〜2モルの範囲にあることが望ましい。
【0050】
本発明で好ましく用いられるアイオノマーとしては、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.01〜1000g/10分、特に0.1〜100g/10分のものを使用するのが好ましく、具体的には、三井デュポンポリケミカル株式会社製のエンティラ(商標)SD100、MK400、MK153などが特に好ましい例として挙げられる。
【0051】
(スルホン酸塩アイオノマー)
金属イオンを含有する透湿性ポリマーとして好ましく使用されるスルホン酸塩アイオノマーとは、スルホン酸塩を含む高分子アイオノマーであり、代表例としては、ポリスチレンスルホン酸(PSS)アイオノマーやエチレン系スルホン酸アイオノマーなどがある。スルホン酸のH置換基としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属などの金属カチオン、等を好ましく用いることができる。これらの透湿性アイオノマーに、多価アルコールや、ポリオキシエチレングリコール、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のエーテル化合物等の親水性化合物を含有させることにより、さらなる透湿性の向上等の効果が期待できる。多価アルコールとしては、分子内に水酸基を3個以上持つ炭化水素化合物を挙げることができるが、炭素、水素および酸素のみから構成される化合物であってもよく、炭素、水素、酸素の外にさらに窒素のようなヘテロ原子を含有するものであってもよい。これらは、通常分子量が400以下、好ましくは80〜300であって、室温で液体状であっても固体状であってもよい。分子量が400を越えるものでも良いが透湿性の改良効果は小さい。
【0052】
このような多価アルコール化合物の具体例としては、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,1,1−トリス(ヒドロキシルメチ
ル)エタン、2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ソルビトール、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシ安息香酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノプロパン、N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシエチル
)エチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン
ジアミンなどが例示できる。これらの中では、グリセロールまたはトリメチロールプロパンの如き脂肪族多価アルコールを用いるのが最も好ましい。
【0053】
マトリックスポリマーとしては、ポリオレフィン、ポリスチレン(PSt)、ポリエステル、ポリカーネート(PC)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などに代表されるポリマーが好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレンホモポリマー(LLDPE)、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、環状オレフィン(COP、COC)、メチルペンテンポリマー(PMP)等の通常光学用途に用いられるポリオレフィンを挙げることができる。
【0054】
本発明を構成する保護フィルム(B)は、マトリックスポリマー、および透湿性ポリマーのみで構成されていても良いし、さらにそれ以外の1種またはそれ以上の成分を含有していても良い。したがって、保護フィルム(B)は、上記マトリックスポリマー、および透湿性ポリマーのいずれにも該当しないポリマーを含有していても良いし、含有していなくとも良い。
【0055】
また、本発明の保護フィルム中(B)には公知の任意の添加剤、例えば着色防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、結晶核剤、接着向上剤、すべり剤、ブロッキング防止剤、耐侯剤、消泡剤、透明化剤、粘度調整剤などを含有させても良い。
帯電防止剤の好ましい例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ビス(オクチルポリオキシエチレン)ホスフェートソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホン酸ホスホニウム、スチレンスルホン酸などの公知の帯電防止剤などがあるが、これらに限定はされない。これらの帯電防止剤の添加量としては、透明性およびブリードアウト性などの点から対ポリマー重量で5%以下が好ましい。
【0056】
次に本発明の保護フィルム付き光学フィルムの製造方法の好ましい1例について述べるが、本発明の保護フィルム付き光学フィルムの製造方法はこれに限定されるものではない。
【0057】
従来から採用されている保護フィルムは、感圧接着剤が積層された複合フィルム、あるいは粘着剤がコーティングされた粘着剤層を有していた保護フィルムであったために、2m以上の広幅の保護フィルムを光学フィルムに貼り合わせるときにはどうしても粘着面が滑らないために空気層を噛み込むことが多く、このような表面欠点のある保護フィルムの貼り合わせられた光学フィルムは光学用の検査工程を通過できない場合が多いので、光学用には使用することが困難であるという欠点があった。
【0058】
本発明の光学フィルムは、光学フィルム(A)と保護フィルム(B)との界面に粘着材層が実質的に存在しないため、上記の欠点を有効に解消することができる。以下、粘着材層を実質的に用いずに、層間剥離力が10〜300g/25mm幅の範囲内にある保護フィルム付き光学フィルムを提供する方法を述べる。
【0059】
1.別途製膜された光学フィルム(A)の少なくとも片面に、原料となる樹脂の溶融体を押出積層(EL:Extrusion Laminate)して保護フィルム(B)形成する方法。
なお、この方法では、従来行われていた光学フィルムの上に保護フィルムをラミネート
する従来の製造装置をそのまま利用できる点で実用化し易いメリットがある。
【0060】
2.別途製膜された透湿性のある保護フィルム(B)をそのまま、あるいは該保護フィルム(B)の歪みを加熱などで取り除いた後に、該保護フィルム(B)の上に原料となる樹脂の溶融体を押出積層(EL)して光学フィルム(A)層を形成する方法。この方法では、光学フィルムの厚みムラなど均一にした後に既に製造された保護フィルムをキャストドラムに差し入れれば良いので、双方のフィルムのロスが小さくなるというメリットがある。
【0061】
3.かくして得られた光学フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが積層されてなる光学フィルム(保護フィルム付き光学フィルム)を、オーブン式等の加熱炉に入れる等の手法を用いて、該保護フィルム付き光学フィルムを加熱処理、(同時二軸延伸などの)延伸処理、リラックス処理などの各種処理を行い、該保護フィルム付き光学フィルムの機械特性の改良、除電等の電気特性の改良、および/または光学的な位相差の調整等の光学特性の改良を行う方法。
【0062】
(フィルムの製膜)
保護フィルム(B)あるいは光学フィルム(A)となるマトリックスポリマーから水分、気体、溶融、揮発物、分解物などの分子量100未満の超低分子揮発物を除去し、その含有量を0.05重量%以下にした不純物の少ない原料を準備することが好ましい。保護フィルム(B)として水蒸気透過率が20(g/m2・日/0.1mm)以上の透湿性を
付与したい場合には、透湿性化合物、例えば、カリウムイオンを含有するエチレンメタクリル酸ポリマー〔例えば、三井デュポンポリケミカル株式会社製のエンティラ(登録商標)〕と相溶化剤とを添加混合した原料を用いることができる。該原料をシート押出機等で溶融させ、必要に応じて微細なフィルターを通過させたのちに口金より溶融シートを吐出させ冷却ドラムに密着固化させてキャストシートを得ることができる。なお、この際に積層シートとして、他のポリマーの層と積層することも可能である。なお、キャスト密着の方式は、静電印可密着方式が、高速製膜、無欠点製膜、取扱性などの観点で特に好ましい。このようなポリマーに静電密着方式を適用するためには、該樹脂の溶融温度での比抵抗が108〜1010Ω・cm程度の値であることが求められるので、マトリックスポリマー
の溶融時の比抵抗が1013Ω・cm以上と高いときには、金属イオンを含有するポリマー、特に好ましくは上記したカリウムアイオノマーを添加することにより比抵抗を調整することができる。この場合、静電密着性のみならず、得られたフィルムにも透湿性を付与できると言うメリットもある。
【0063】
本発明の保護フィルム付き光学フィルムの製造は、上記の方法に限定されることはなく、ニップロール(ソフト&ハード)方式、ベルト方式、カレンダー方式、エアーナイフ方式、エアーチャンバー方式などを適宜用いることもできる。また、ドラム材質はクロムメッキ、ステンレスまたはセラミックからなる最大表面粗さRy0.1μm以下の表面ドラ
ムを用いることが好ましい。またドラム表面温度は、ポリマーの種類にもよるが、そのポリマーのガラス転移温度近傍がよい。また、ドラフト比は10以下と小さい方が光学的に等方なフィルムとなるので好ましい。なお、フィルムの用途との関係や、その他の必要に応じて、熱処理や延伸を付加させても良く、他のポリマーとの共押出しやラミネートにより積層体を作製しても良い。さらに、コーティングなどによって、表面を変性したり、表面に種々の特性を適宜付加、付与してもよい。
(実施例/比較例)
以下、実施例および比較例を参照しながら、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はいかなる意味においても、以下に示す実施例に限定されるものではない。
(物性の評価方法)
以下の実施例、比較例においては、フィルムの各種物性は、以下の測定方法にしたがっ
て評価した。
(1)水蒸気透過率
mocon社製のPERMTRAN−W1Aを用いて、JIS K7129 B法にしたがって40℃、90RH%で測定した。単位はg/m2・日/0.1mmで表す。
(2)光線透過率
日立製作所製の分光光度計U−3410を用いて測定し、波長300nmから700nmまでの可視光線の全光線透過率を測定し、550nmにおける値を採用した。単位は%で表す。
(3)リターデーションR
フィルムの複屈折△nにフィルムの厚さd(nm)を掛けたものである。
面内のリターデーションReの測定には、(i)ナトリウムD線(589nm)を光源として直交ニコル下の偏光顕微鏡に試料フィルム面が光軸と垂直となるように置き、該試料によって生じた位相ずれRがリターデーションであり、これをコンペンセーターの補償値から求めるか、あるいは(ii)ナトリウムD線を光源に用いて、アッベの屈折計から主軸方向の屈折率nxからそれと直角方向の屈折率nyをひいた複屈折△n(=nx−ny)に厚さdを掛けて求めても良い。
【0064】
厚さ方向のリターデーションRthの測定には、上記アッベ屈折計を用いてフィルム面内の屈折率nx、nyと厚さ方向の屈折率nzを求めて次式に従い求める。
th=〔(nx+ny)/2〕−nz
単位はnm。
(4)表面抵抗
主電極(50mmφ)、主電極と同心円のガード電極(内径70mmφ、外径80mmφ)と対電極(80mmφ)との間にフィルムを挿み、1kVの電圧を印加したときの主電極からガード電極に流れる電流値から抵抗を求め、これに60πを乗じて表面抵抗とした。測定は23℃で湿度は60%で行った。単位はΩ/□で表す。
(5)表面粗さRa
JIS B0601に従い、小坂研究所製の高精度薄膜段差計ET−10を用いて測定した。測定条件は、触針先端半径0.5μm、針圧5mg、測定長1mm、カットオフ0.08mm。中心線平均粗さRaは、粗さ曲線の中心線から上下にずれた成分の面積を引き算して出た差額の面積を測定長で割り、その値を中心線に加えたもの。単位はnmで表す。
(6)ヘイズ
JIS K6782の方法に従いトータルヘイズを求めた。単位は%で表す。
(7)フィルム厚さ
JIS K7130 A法によりマイクロメータ法で測定する。単位はμmで表す。
(8)厚みムラ
アンリツ株式会社製フィルムシックネステスタ「KG601A」を用い、フィルムの縦方向には20m長にサンプリングしたフィルムを、幅方向には2m以上の連続的に厚みを測定する。フィルムの搬送速度は3m/分とした。測定長での厚み最大値Tmax(μm)
、最小値Tmin(μm)から、
R=Tmax−Tmin
を求め、Rと測定長の平均厚みTave(μm)から
厚みむら(%)=R/Tave×100
として求めた。
(9)表面張力
JIS C2151(2006)の濡れ張力測定法により測定する。単位はmN/mで表す。
(10)ガラス転移温度Tg
走査熱量計DSCとして、セイコー電子工業株式会社製のロボットDSC「RDC22
0」を用い、データ解析装置として、同社製ディスクステーション「SSC/5200」を用いて、サンプル約5mgをアルミニウム製の受皿に入れ、室温から20℃/分で昇温した。このときに観測されるガラス状態からゴム状態への移転に基づくベースラインからのずれ開始温度と終了温度との算術平均値をガラス転移点(Tg)とした。
(11)層間剥離力
ミネベア株式会社製万能引張試験機『TCM−1kNB』を用い、180度ピール、剥離速度300mm/分、23℃、60%RH雰囲気中で行った。
(12)破断強度
JIS K7127に規定された方法にて測定する
(13)異物
直交状態(クロスニコル)に二枚の偏光板を配置して透過光を遮断し、二枚の偏光板の間に試料を置く。片側から光を照射し、反対側から光学顕微鏡で1cm2当たりの直径1
00μ以上の異物、40μm以上100μm未満の異物数をカウントした。
(14)剥離耐電圧
貼り合せられたフィルムを、幅70mm、長さ100mmの大きさにカットし、いずれかのフィルムの片端部を把持し、簡易巻取り機にセットし、剥離角度150°、剥離速度3m/minとなるようにして剥離した。このときに発生するフィルム表面の電位を、電位測定機(春日電機社製、KSD−0103)にて測定した。測定は、23℃×50%RHの環境下で行った。
(15)摩擦係数
ASTM−D1894−63に準じて製作したスリップテスターを用いて、荷重200g、接触面積63.5×63.5mm、移動速度150mm/分の条件で、フィルム同士の摩擦係数(μs)を測定する。
【0065】
(実施例1)
保護フィルム用のポリマーとして、ポリプロピレンポリマーPP(株式会社プライムポリマー製プライムポリプロF300SP)を用い、透湿性ポリマーとして、エチレンアクリル酸系のカリウムアイオノマー(エンティラ(商標)MK400:三井デュポンポリケミカル株式会社製)と相溶化剤として分子量4000のポリエチレングリコールを用いた。このPPポリマー20重量%に対して、透湿性ポリマー80重量%の組成の均一混合体を撹拌式加熱槽中で、105℃で4時間乾燥した。その後、これを押出機ホッパーに供給し、押出機内で280℃で溶融させ、異物を濾過後、口金より吐出させた。該溶融体にエアーチャンバーで内で静圧で25℃のクロムメッキ冷却ドラムに押し付け冷却後に、該保護フィルム(B1)を巻き取った。保護フィルム(B1)の厚さは25μm、フィルム幅は2.4m幅であった。かくして得られた保護フィルムの物性は、下記の通り。
【0066】
水蒸気透過率 70(g/m2・日・/0.1mm)
光線透過率 89(%)
ヘイズ 4.6(%)
幅方向2.4mの厚みムラ 1.8(%)
リターデーションR 1(nm)
中心線平均粗さRa 60(nm)
表面張力 37(mN/m)
表面比抵抗 1010(Ω/□)
摩擦係数(光学フィルムと接する面) 0.4
破断強度 45(MPa)
異物 100μm以上 0(個/m2
40μm以上100μm未満 5(個/m2
次に光学フィルム(A1)用のポリマーとして、アクリルポリマー(ダイセルデグサ株式会社製、PLEXIGLAS(登録商標)hw55 高耐熱グレード、Tg:122℃)を用い
た。該ポリマーを95℃で4時間乾燥後、ベント式押出機に供給して280℃で溶融後、ベントポートから水分やモノマーを吸引させた後、異物を濾過後、口金より吐出させた。該アクリル溶融体を、既に製膜してある25μmの保護フィルム(冷却ドラム面に接している)のドラム面とは逆面上に押出溶融ラミネート(EL)する公知の手法を用いたが、密着手段としてはロールで押し付けるのではなく、溶融している光学フィルム面に静電荷ピニング方式で印可させて密着積層した。ピニングは負の直流電圧を1.2万V、電流値は3mAで印加して、25℃の鏡面クロムメッキロールに密着させた後、直ちに光学アクリルフィルム面を該フィルムのガラス転移温度Tg近傍の120℃の熱風で加熱して光学フィルム(A)の機械特性を改良し、除電処理後冷却して、該フィルムを巻き取り、厚さ40μm、幅2.3m幅の光学アクリルフィルム(A1)と、厚さ25μmの保護フィルム(B1)とが密着した厚さ65μm、幅2.3m幅の保護フィルム付き光学フィルム(1)を得た。
かくして得られた保護フィルム付き光学フィルム(1)から保護フィルム(B1)を剥離して得られた光学フィルム(A1)自身のフィルム特性は以下の通りであった。
【0067】
層間剥離力 35(g/25mm)
剥離帯電圧 発生せず
ガラス転移温度Tg 122(℃)
光線透過率 92(%)
ヘイズ 0.8(%)
幅方向の2.3mの厚みムラ 2.0(%)
面内リターデーションRe 1(nm)
面外リターデーションRth 3(nm)
中心線平均粗さRa 15(nm)
表面張力 46(mN/m)
表面比抵抗 1012(Ω/□)
異物 100μm以上 0(個/m2
40μm以上100μm未満 1(個/m2
水蒸気透過率 25(g/m2・日・/0.1mm)
本発明の保護フィルム(B1)と光学アクリルフィルム(A1)とからなる保護フィルム付き光学フィルム(1)の実用的価値、例えば、偏光子の保護フィルムとしての価値を確認するため、以下の通り積層偏光板を作成し、その評価を行った。
【0068】
コーターでポリビニルアルコールPVA系の水系の粘着剤を本発明の保護フィルムつき光学フィルム(1)の光学フィルム面(A1)に塗工加工を行い、これをポリビニルアルコールPVA偏光子の両面に貼り合わせ、保護フィルム(B1)/光学アクリルフィルム(A1)/粘着剤/PVA偏光子/粘着剤/光学アクリルフィルム(A1)/保護フィルム(B1)からなる5層のフィルムをそのまま85℃の熱風で乾燥させた。
【0069】
得られた本発明の保護フィルム(B1)/光学アクリルフィルム(A1)/PVA偏光子/光学アクリルフィルム(A1)/保護フィルム(B1)からなる5層積層フィルムの貼り合わせ時の外観状態をとして以下の基準に従い評価したところ、カール、皺および斑点などの一切の表面欠点は見られなかった。
【0070】
また、得られた5層積層フィルムを23℃、85RH%の高湿下で500時間放置した後の外観状態を観察したところ、全く外観にはカール、皺、着色などの変化は全く見られなかった。
【0071】
さらに該5層積層フィルムから保護フィルム(B1)を剥離したところ剥離耐電は殆ど発生しなかった。
このように本発明の保護フィルム付き光学フィルムは、例えば偏光板の保護フィルムとしても優れた特性を示すことがわかる。また、本発明の保護フィルムつき光学フィルムは、帯電防止性にも優れているので、ゴミの付着が抑制され、クリーンな、表面欠点のない光学フィルム(A)を比較的容易に得ることができる。したがって、本発明の一部を構成する光学フィルム(A)は、液晶用の部材、例えば偏光フィルムなどの保護フィルムや位相差フィルム、さらにはコンパクトデイスク、ビデオデイスク、光カードなどとして好適に用いられる。
【0072】
(比較例1)
実施例1で用いた保護フィルム(B1)の代わりに、通常市販されている水蒸気透過率が1(g/m2・日・/0.1mm)の無延伸キャストポリプロピレンフィルムCPP(
C1)を使用した他は、実施例1と同様にして5層フィルムを作成したところ、水系接着剤を塗工して乾燥過程で偏光子の黒色変色、水蒸気の透過不足によると思われる水ぶくれ、気泡の噛み込みなどの外観上の欠点が見られ、偏光子用の保護フィルムとしては用いる事はできなかった。
【0073】
さらに、光学フィルムの厚みムラも8%と大きなものしか得られなかった。
なお、この市販のCPPフィルム(C1)の特性は以下のようであった。水蒸気透過率0.5(g/m2・日・/0.1mm)、光線透過率70(%)、ヘイズ8(%)、幅方
向の厚みムラ12%、100μm以上の異物は多数存在していた。
【0074】
(比較例2)
実施例1で用いた光学フィルム(A1)用のアクリルポリマーと、保護フィルム(B1)用のオレフィン樹脂とを公知の共押出法によって保護フィルム(B1')/光学アクリ
ルフィルム(A1')となる2層積層フィルムを製膜した。保護フィルム(B1')25μm、光学アクリルフィルム(A1')40μmからなる厚さ65μmのフィルム(1')を得た。層間剥離力は50g/25mmと強い接着力を有していたが、これを剥離した後に光学アクリルフィルム(A1')の幅方向の厚みムラを測定したところ、15%もの大き
な厚みの分布が存在しており、到底このような厚みムラの大きなフィルム、すなわちリターデーションRのムラの大きなフィルムを光学フィルムとしては用いることは困難である。
【0075】
(実施例2)
光学フィルム(A2)を構成するポリマーとして、環状オレフィンポリマーCOC(アペル6015T、Tg145℃、三井化学株式会社製)74重量%に透湿性ポリマーとしてエチレンアクリル酸系のカリウムアイオノマー("エンティラ"MK400:三井デュポン社
製)を25重量%、相溶化剤として分子量6000のポリテトラメチレングリコールを1重量%添加したポリマー混合体を用いた。該混合体を撹拌式加熱槽中で、105℃で4時間乾燥し原料として用いた。
【0076】
一方、保護フィルムとしては、実施例1で用いた保護フィルム(B1)を用いて、実施例1と同様にして光学フィルム(A2)に保護フィルム(B1)が積層された2層フィルムを得た。なお、保護フィルム(B1)の摩擦係数(光学フィルム(A2)と接する面)は、0.45だった。
【0077】
これにより、厚さ30μm、幅2.6m幅の光学COCフィルム(A2)と、厚さ25μmの保護PPフィルム(B1)とが密着した厚さ55μm、幅2.6m幅の複合フィルム(保護フィルムつき光学フィルム(2))を得た。その後、該積層フィルムを光学フィルムのTg近傍の135℃で加熱処理して光学フィルム(A)の機械特性を改良し、徐電処理をした。
【0078】
かくして得られた複合フィルム(2)から保護フィルム(B1)を剥離して得られた光学フィルム(A2)自身のフィルム特性は以下の通りであった。
層間剥離力 25(g/25mm)
剥離耐電圧 発生無し
ガラス転移温度Tg 145(℃)
光線透過率 91(%)
ヘイズ 0.8(%)
面内リターデーションRe 1(nm)
面外リターデーションRth 2(nm)
中心線平均粗さRa 10(nm)
表面張力 40(mN/m)
表面比抵抗 109(Ω/□)
異物 100μm以上 0(個/m2
40μm以上100μm未満 1(個/m2
水蒸気透過率 25(g/m2・日・/0.1mm)
幅方向2.6mの厚みムラ 1.0(%)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルム(A)の少なくとも片面に保護フィルム(B)が積層されてなる保護フィルム付き光学フィルムにおいて、該光学フィルム(A)と該保護フィルム(B)との界面に粘着材層が実質的に存在せず、かつ前記光学フィルム(A)の幅方向に渡って測定した厚みむらが5%以下である、保護フィルム付き光学フィルム。
【請求項2】
前記光学フィルム(A)と前記保護フィルム(B)との層間剥離力が10g/25mm幅〜300g/25mm幅である、請求項1に記載の保護フィルム付き光学フィルム。
【請求項3】
前記保護フィルム付き光学フィルムの幅が2m以上である、請求項1または2に記載の保護フィルム付き光学フィルム。
【請求項4】
前記光学フィルム(A)が、アクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂、メチルペンテン系樹脂、透明性に優れたポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリマレイミド系樹脂、およびシンジオタクティックポリプロピレン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含んでなる、請求項1から3のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィルム。
【請求項5】
前記光学フィルム(A)のガラス転移温度(Tg)が120℃以上である、請求項4に記載の保護フィルム付き光学フィルム。
【請求項6】
前記光学フィルム(A)と接する側の前記保護フィルム(B)の表面の摩擦係数が1以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィルム。
【請求項7】
前記保護フィルム(B)の表面固有抵抗値が1011Ω/□以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィルム。
【請求項8】
前記保護フィルム(B)の水蒸気透過率が20(g/m2・日/0.1mm)以上であ
る、請求項1から7のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィルム。
【請求項9】
前記保護フィルム(B)の2m以上の幅方向に渡って測定した厚みむらが、5%以下である、請求項1から3、および5から7のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィルム。
【請求項10】
前記保護フィルム(B)が、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン、およびそれらの変性体である変性ポリオレフィン、ポリエステル、ならびにポリカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含んでなる、請求項1から8のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィルム。
【請求項11】
前記光学フィルム(A)の少なくとも片面に、原料となる樹脂の溶融体を押出積層して前記保護フィルム(B)を形成する工程を有する製造方法により、請求項1から10のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィルムを製造する保護フィルム付き光学フィルムの製造方法。
【請求項12】
保護フィルム(B)を加熱して保護フィルム(B)の歪を取り除いた後に、該保護フィルム(B)の上に、原料となる溶融樹脂層を積層密着して冷却することにより該光学フィルム(A)を形成する工程を有する製造方法により、請求項1から10のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィルムを製造する保護フィルム付き光学フィルムの製造方法。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか1項に記載の保護フィルム付き光学フィルムに対して、加熱処理、延伸処理、およびリラックス処理のうち少なくとも1つの処理を行い、前記光学フィルム(A)の電気特性、機械特性、および/または光学特性の改良を行う工程を有する、改良された保護フィルム付き光学フィルムの製造方法。
【請求項14】
該処理が延伸処理であり、該延伸処理が同時2軸延伸である、請求項13に記載の保護フィルム付き光学フィルムの処理方法。

【公開番号】特開2010−38924(P2010−38924A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197853(P2008−197853)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】