説明

保護フィルム

【課題】電磁波シールド等に使用されている金属層および金属酸化層について、汚染などがなく良好な状態を維持できる保護フィルムを提供する。
【解決手段】基材上に粘着剤層を備え、その粘着剤層の表面のヨウ化メチレンに対する接触直後の接触角:θが70°以下であり、ヨウ化メチレンに対する接触角の30秒後の変化率:Δθが8%以下である保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド材料等に使用されている金属層又は金属酸化物層に対し、汚染などがなく良好な状態を維持できる保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP)やCRTなどにおいて、電磁波シールド技術は、電磁気的なノイズ妨害を防止する上で非常に重要である。これらの電磁波シールドの材料としては、金、銀などの金属やITOなどの金属酸化物を用いて、蒸着などにより薄膜導電層を形成したり、メッシュパターンを形成する方法などがある。これらの金属層または金属酸化物層については、使用されるまでの間、保護フィルムで保護されているのが一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一般的な保護フィルムを用いた場合、特にこれらの金属層または金属酸化物層の表面が活性であるためか、これらの表面に汚染が発生しやすく、その結果、電磁波シールドとしての機能を損なう場合があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、電磁波シールド等に使用されている金属層および金属酸化物層について、汚染などがなく良好な状態を維持できる保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意研究する中で、金属層または金属酸化物層の表面に発生する汚染について、粘着剤層の表面の影響が大きいことを見出した。具体的には、粘着剤層表面のヨウ化メチレンに対する接触直後の接触角:θ が70°以下、好ましくは50〜70°であり、さらにはヨウ化メチレンに対する接触角変化率:Δθが8%以下、好ましくは6%以下である粘着剤層を基材に設けた保護フィルムを用いることにより、金属層または金属酸化物層の表面への汚染を防止し良好な状態を維持できることを見出し、本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明の保護フィルムは、基材上に粘着剤層を備え、その粘着剤層の表面のヨウ化メチレンに対する接触直後の接触角:θ が70°以下であり、ヨウ化メチレンに対する接触角の30秒後の変化率:Δθが8%以下であることを特徴とする。
【0007】
ここで接触角変化率:Δθについては、以下の式で求められる。なお、接触角は市販の接触角測定装置を用いて、θ/2法に準拠して23℃で測定する値である。
【0008】
Δθ=|θ −θ |×100/θ
Δθ:接触角変化率(%)、θ :接触直後のヨウ化メチレン接触角(°)
θ :接触後30秒後のヨウ化メチレン接触角(°)
このθ が70°を超え、またはΔθが8%を超える場合には、金属層または金属酸化物層の表面と結びつきが強くなるためか、汚染が発生しやすくなる。
【0009】
上記において、前記粘着剤層の主ポリマーが(メタ)アクリル系ポリマーであることが好ましい。本発明の保護フィルムは、電磁波シールド材料の表面保護に使用されるのが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の保護フィルムは、基材上に粘着剤層を備えるものであるが、両層の間にはプライマー層などの中間層を有していてもよい。粘着剤層の材質は、上記の接触角と変化率とを満たすものであれば何れの材質でもよい。つまり、本発明の保護フィルムの粘着剤層の表面のヨウ化メチレンに対する接触直後の接触角:θ が70°以下、好ましくは50〜70°であり、さらにはヨウ化メチレンに対する接触角変化率:Δθが8%以下、好ましくは6%以下である。
【0011】
粘着剤層の主ポリマーとしては、接着性と剥離性のバランスを得るという点から、(メタ)アクリル系ポリマーが良好である。ここで用いられる(メタ)アクリル系ポリマーについては、炭素数が1〜18までのアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマーや共重合性改質モノマーを1種または2種以上を溶液重合、乳化重合など適宜の方式で単独重合または共重合したものである。
【0012】
なお前記した(メタ)アクリル酸エステルや共重合性改質モノマーの具体例としては、ブチル基や2−エチルヘキシル基、イソオクチル基やイソノニル基、エチル基やメチル基等のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のエステル、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニルやスチレン、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸やビニルピロリドン、グリシジル基やジメチルアミノエチル基やヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、ビニルアミンやアリルアミン、エチレンイミンなどの改質モノマーなどがあげられる。
【0013】
上記(メタ)アクリル系ポリマーについては、そのまま粘着剤のベースポリマーとして用いることもできるが、通常は粘着剤の凝集力を向上させる目的で架橋剤を配合して用いる。アクリル系ポリマーの架橋構造化は、アクリル系ポリマーを合成する際に内部架橋剤として多官能(メタ)アクリレートなどを添加するか、あるいはアクリル系ポリマーを合成した後に外部架橋剤として多官能のエポキシ系化合物やイソシアネート系化合物などを添加することにより実施できる。その他、放射線照射による架橋処理を施してもよい。これらの中でも、架橋構造を形成する好ましい方法は、外部架橋剤として多官能性エポキシ化合物や多官能性イソシアネート化合物を配合する方法である。
【0014】
ここでいう多官能性とは2官能性以上を意味する。多官能性エポキシ化合物には、分子中に2個以上のエポキシ基を有する種々の化合物が含まれ、その代表的な例として、例えば、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパングリシジルエーテル、テトラグリシジル−1 ,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、トリグリシジル−p−アミノフエノールなどがある。また、多官能イソシアネート化合物には、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する種々の化合物が含まれ、その代表的な例として、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0015】
これらの架橋剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、その使用量は、(メタ)アクリル系ポリマーの組成や分子量などに応じて適宜選択できる。その際、反応を保進させるために、粘着剤に通常用いられるジブチルスズラウレートなどの架橋触媒を加えるようにしてもよい。また、粘着剤には、必要に応じて慣用の添加剤を配合してもよい。
【0016】
粘着剤層の形成に際しては、極力添加剤を配合することは避ける方が好ましいが、粘着特性の制御等を目的に必要に応じて例えば軟化剤やシリコーン系ポリマー、アクリル系共重合体、粘着付与剤や老化防止剤やヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤その他例えば酸化カルシウムや酸化マグネシウム、シリカや酸化亜鉛、酸化チタンの如き充填剤や顔料などの適宜な添加剤を配合することができる。ただしこのような添加剤については、被着体へのダメージがないものが好ましい。
【0017】
本発明において、接触角とその変化率に関する前述の条件を満たすようにするには、接触角を低減するには、(メタ)アクリル系ポリマー中に側鎖が短いアクリルモノマーの配合部数を物性を損なわない程度に極力減らす方が好ましく、接触角の変化率を低減するには、低分子可塑剤などの添加剤を極力少なくするのが好ましい。
【0018】
基材としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどポリオレフィン系の単独または混合物、ナイロン、PET、ポリイミド、ポリカーボネート、PTFE等の熱可塑性フィルムが好適であり、さらには透明性やフィッシュアイ等の点よりPETフィルムが好ましい。その厚みは、5〜200μm、好ましくは20〜100μmが一般的であるが、これに限定されない。
【0019】
保護フィルムおよびシートの形成は例えば、粘着剤層形成材の溶剤による溶液や熱溶融液を基材に塗布する方法や、それに準じセパレータ上に塗布形成した粘着剤層を基材に移着する方法、粘着剤層形成材を基材上に押出成形塗布する方法、支持基村上に粘着剤層をラミネートする方法などの、公知の接着シートの形成方法に準じて行うことができる。形成する粘着剤の厚さは適宜に決定すればよく、一般には100μm以下、就中1〜50μm、特に1〜40μmが好ましい。粘着剤は必要に応じて、実用に供されるまでの間、セパレータなどを仮着して保護される。
【0020】
本発明の保護フィルムは、電磁波シールド材料、透明導電性フィルム、金属蒸着シートなどの金属層又は金属酸化物層に対して表面を保護する目的で使用される。特に、電磁波シールド材料の表面保護に使用されるのが好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0022】
実施例1
常用の方法を用いて、アクリル酸2−エチルヘキシル(70部(重量部、以下同じ))、N−アクリロイルモルホリン(30部)、アクリル酸(3部)からなるアクリル系ポリマーの20%トルエン溶液を準備した。そこにアクリル系ポリマー100部に対して、エポキシ系架橋剤(テトラッドC、三菱瓦斯化学製)を2 部、イソシアネート系架橋剤(コロネートL、日本ポリウレタン製)を2部配合し、38μmのPETフィルムに乾燥後の糊厚:5μmとなるように塗布して乾燥し、θ :56.5°、Δθ:1.7%の保護フィルムを得た。
【0023】
実施例2
常用の方法を用いて、アクリル酸2−エチルヘキシル(55部)、酢酸ビニル(45部)、アクリル酸(3部)からなるアクリル系ポリマーの20%トルエン溶液を準備した。そこにアクリル系ポリマー100部に対して、エポキシ系架橋剤(テトラッドC、三菱瓦斯化学製)を2部配合し、38μmのPETフィルムに乾燥後の糊厚:5μmとなるように塗布して乾燥し、θ :58.3°、Δθ:1.2%の保護フィルムを得た。
【0024】
実施例3
常用の方法を用いて、アクリル酸2−エチルヘキシル(100部)、アクリル酸ヒドロキシエチル(4部)からなるアクリル系ポリマーの20%トルエン溶液を準備した。そこにアクリル系ポリマー100部に対して、イソシアネート系架橋剤(コロネートL、日本ポリウレタン製)を3 .5 部、反応触媒(OL−1、東京ファインケミカル製)0.05部配合し、38μmのPETフィルムに乾燥後の糊厚:20μmとなるように塗布して乾燥し、θ :62.8°、Δθ:3.9%の保護フィルムを得た。
【0025】
実施例4
常用の方法を用いて、アクリル酸2−エチルヘキシル(50部)、メタクリル酸ブチル(50部)、アクリル酸(0.5部)、アクリル酸ヒドロキシエチル(2部)からなるアクリル系ポリマーの20%トルエン溶液を準備した。そこにアクリル系ポリマー100部に対して、イソシアネート系架橋剤(コロネートL、日本ポリウレタン製)を3部、反応触媒(OL−1、東京ファインケミカル製)0.1部配合し、38μmのPETフィルムに乾燥後の糊厚:5μmとなるように塗布して乾燥し、θ :59.1°、Δθ:5.1%の保護フィルムを得た。
【0026】
比較例1
常用の方法を用いて、アクリル酸2−エチルヘキシル(50部)、アクリル酸メチル(50部)、アクリル酸(2部)からなるアクリル系ポリマーの20%トルエン溶液を準備した。そこにアクリル系ポリマー100部に対して、イソシアネート系架橋剤(コロネートL、日本ポリウレタン製)を3.5部、反応触媒(OL−1、東京ファインケミカル製)0.05部配合、可塑剤(アジピン酸ジブトキシエトキシエチル)15部配合し、38μmのPETフィルムに乾燥後の糊厚:20μmとなるように塗布して乾燥し、θ :72.9°、Δθ:10.0%の保護フィルムを得た。
【0027】
比較例2
比較例1において、可塑剤を使用しないこと以外は同様にして、θ :73.5°、Δθ:3.8%の保護フィルムを得た。
【0028】
比較例3
実施例3において、可塑剤(アジピン酸ジブトキシエトキシエチル)15部を配合したこと以外は、実施例3と同様にして、θ :61.5°、Δθ:8.8%の保護フィルムを得た。
【0029】
なお、これらの実施例と比較例で得られた保護フィルムは、40℃で3日間エージング処理を行った。
【0030】
評価方法
実施例、比較例で得られた保護フィルムを、ITOフィルムのITO面に線圧:78N/cmでラミネータ圧着することにより貼付し、80℃で72時間放置する。その後、保護フィルムを剥離し、グリーンランプにかざすことによって汚染の有無を目視にて確認した。その評価結果を下表に示す。
【0031】
【表1】


【表2】


表1〜表2の結果より、実施例については、汚染発生がなく非常に良好であるのに対し、比較例については、汚染が認められることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に粘着剤層を備え、その粘着剤層の表面のヨウ化メチレンに対する接触直後の接触角:θ が70°以下であり、ヨウ化メチレンに対する接触角の30秒後の変化率:Δθが8%以下である保護フィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層の主ポリマーが(メタ)アクリル系ポリマーである請求項1記載の保護フィルム。
【請求項3】
電磁波シールド材料の表面保護に使用される請求項1又は2に記載の保護フィルム。

【公開番号】特開2010−180405(P2010−180405A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30361(P2010−30361)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【分割の表示】特願2002−187077(P2002−187077)の分割
【原出願日】平成14年6月27日(2002.6.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】