説明

保護層転写シート

【課題】 長期保管後や、高温保管後に、保護層転写の際に、基材シートと剥離層との剥離力の増加による保護層転写の剥離不良を防止した保護層転写シートを提供する。
【解決手段】 基材シート2の一方の面に、耐熱滑性層6を有し、該基材シート2の前記耐熱滑性層6の設けられた面と反対側の面の少なくとも一部に、熱転写可能な保護層7を設けた保護層転写シート1において、該保護層7が基材シート2側から剥離層3、プライマー層4、接着層5を順次積層し、該剥離層3は溶液酸価が2以下であるアクリル系共重合体樹脂からなることを特徴とする。また、前記のプライマー層がアルミナゾルのコロイド状超微粒子を含有する組成物から形成されていることが好ましく、剥離層と接着層との密着性を高かめ、保護層の熱転写時に、保護層の基材シートからの剥離性を良くする結果につながる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護層転写シートに関し、特に基材シートの一方の面に、耐熱滑性層を有し、該基材シートの前記耐熱滑性層の設けられた面と反対側の面の少なくとも一部に、熱転写可能な保護層を設けた保護層転写シートにおいて、該保護層が基材シート側から剥離層、プライマー層、接着層を順次積層した構成で、長期保管後や、高温保管後に、保護層転写の際に、基材シートと剥離層との剥離力の増加による保護層転写の剥離不良を防止した保護層転写シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱転写方式を用いて被転写体に文字や画像を形成することが行われている。熱転写方式としては、感熱昇華型転写方式と感熱溶融型転写方式が広く用いられている。このうち、感熱昇華型転写方式は、昇華性染料を色材とし、それを画像情報に応じて発熱制御されたサーマルヘッドやレーザー光等の加熱デバイスを用いて、熱転写シート上の昇華性染料層中の染料を熱転写受像シート等の被転写体に移行させて画像を形成させる方式である。この感熱昇華型転写方式は、極めて短時間の加熱によってドット単位で染料の移行量を制御できる。このように形成された画像は、使用する色材が染料であることから非常に鮮明であり、且つ透明性に優れているため、得られる画像は中間調の再現性や階調性に優れ、極めて高精細な画像を得ることができる。このため、フルカラー銀塩写真に匹敵する高品質の画像を得ることができる。このような利点から、感熱昇華型転写方式の熱転写技術は、営業写真、パーソナルコンピューター用プリンター、ビデオプリンターなどに広く用いられている。
【0003】
しかしながら、上記の感熱昇華転写方式は、印加するエネルギー量によってドット単位で染料の移行量を制御できるため、階調性画像の形成に優れているが、形成された画像は通常の印刷インキによるものとは異なり、色材が顔料でなく比較的低分子量の染料であり、且つビヒクルが存在しないため耐光性、耐候性、耐摩耗性等の耐久性に劣るという欠点がある。また、感熱溶融型記録法により形成した画像はビヒクルを有しているが、それでも通常の印刷インキで形成した画像と比べると耐久性に劣り、とりわけ耐摩擦性に劣る。
【0004】
熱転写法による印画物の耐久性を高める一手段として、昇華型熱転写法又は熱溶融型記録法によって得られた画像上に、熱転写性樹脂層(熱転写性保護層)を有する保護層転写シートを重ね合わせ、サーマルヘッドや加熱ロール等を用いて熱転写性樹脂層を転写させることによって、画像上に保護層を形成する方法が知られている。印画物の画像上に保護層を設けると、画像の耐摩擦性、耐薬品性、耐溶剤性等を向上させることができる。また、保護層中に紫外線吸収剤を添加して画像の耐光性を向上させることもできる。さらには、保護層中に蛍光増白剤等を添加して、偽造を防止したり或いは印画物の白色度を向上させるといった特殊な機能を保護層に付与することもできる。
【0005】
保護層転写シートとして、例えば特許文献1、2に示されているように、基材上に剥離層を形成し、その剥離層の上に、接着層を設けて、熱転写受像シートに剥離層を安定して転写させるために、接着層を設ける構成が知られている。また、剥離層を熱転写受像シート上に熱転写する際に、保護層転写シートの基材に熱による損傷等が生じないように、基材の他方の面に耐熱滑性層を設けている。
【0006】
また、特許文献3では、基材シート上に剥離層、プライマー層、ヒートシール層を積層した保護層転写シートにおいて、剥離層としてアクリル系樹脂であるダイヤナールBR−87を用いた実施例が示されているが、この条件の保護層転写シートでは、長期保管後、あるいは40℃程度の高温保存後に、保護層の熱転写を行なった場合、剥離力が高くなって、保護層転写の剥離不良が生じるという問題がある。
【特許文献1】特開平4−35988号公報
【特許文献2】特開平4−142988号公報
【特許文献3】特開2006−272872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、基材シートの一方の面に、耐熱滑性層を有し、該基材シートの前記耐熱滑性層の設けられた面と反対側の面の少なくとも一部に、熱転写可能な保護層を設けた保護層転写シートにおいて、該保護層が基材シート側から剥離層、プライマー層、接着層を順次積層した構成で、長期保管後や、高温保管後に、保護層転写の際に、基材シートと剥離層との剥離力の増加による保護層転写の剥離不良を防止した保護層転写シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の保護層転写シートは、請求項1として、基材シートの一方の面に、耐熱滑性層を有し、該基材シートの前記耐熱滑性層の設けられた面と反対側の面の少なくとも一部に、熱転写可能な保護層を設けた保護層転写シートにおいて、該保護層が基材シート側から剥離層、プライマー層、接着層を順次積層し、該剥離層は溶液酸価が2以下であるアクリル系共重合体樹脂からなることを特徴とするものである。剥離層に含有するアクリル系共重合体樹脂の溶液酸価が2以下であると、保護層転写シートが長期保管されたり、高温保管されても、基材シートと剥離層との剥離力が増大することなく、保護層転写の剥離不良を防止することができる。
【0009】
請求項2として、前記のプライマー層がアルミナゾルのコロイド状超微粒子を含有する組成物から形成されていることを特徴とするものである。これにより、剥離層と接着層との密着性を高かめ、保護層の熱転写時に、保護層の基材シートからの剥離性を良くする結果につながる。請求項3として、前記の耐熱滑性層が、イソシアネート化合物及び水酸基含有樹脂を含む組成物から形成されていることを特徴とするものである。また請求項4として、前記の耐熱滑性層が、ポリアミドイミド樹脂を含有することを特徴とするものである。耐熱滑性層が、上記のイソシアネート化合物及び水酸基含有樹脂を含む組成物から形成される場合、あるいはポリアミドイミド樹脂を含有する場合、前者はイソシアネート化合物を含み、後者はイソシアネート化合物を含まない条件で、いずれの場合でも耐熱滑性層に優れた耐熱性を付与させることができ、保護層転写の際などに、サーマルヘッドで耐熱滑性層側に高エネルギーを加えても、基材シートとの熱融着を防止し、走行を滑らかにできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の保護層転写シートによれば、長期保管後や、高温保管後に、保護層の転写の際に、基材シートと剥離層との剥離力の増加による保護層転写の剥離不良を防止した保護層転写シートを提供することができた。また、本発明の保護層転写シートを用いて、熱転写方式を用いて被転写体に画像形成した印画物に保護層を転写することにより、優れた耐久性を有する画像形成物が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の保護層転写シート1の一つの実施形態を示す概略断面図であり、基材シート2の一方の面に、剥離層3、プライマー層4、接着層5を順次積層し、また基材シート2の他方の面に耐熱滑性層6を形成した構成である。剥離層3、プライマー層4及び接着層5の合わせて3層が保護層7であり、例えば保護層転写シート1の耐熱滑性層6からサーマルヘッドによる加熱を行なって、その保護層7が被転写体へ転写される。
【0012】
図2は、本発明の保護層転写シート1の他の実施形態を示す概略断面図であり、基材シート2の一方の面に、耐熱滑性層6を形成し、また基材シート2の他方の面に、熱転写性色材層として、昇華性染料を含有する染料層を、イエロー染料層Y、マゼンタ染料層M、シアン染料層Cの3色と、さらに、シアン染料層Cの後に、剥離層3、プライマー層4、接着層5の3層積層された保護層7が、面順次に繰返し形成された構成である。この形態は、3色の染料層と、保護層が一体化した熱転写シートである。
【0013】
図3は、本発明の保護層転写シート1の他の実施形態を示す概略断面図であり、基材シート2の一方の面に、耐熱滑性層6を形成し、また基材シート2の他方の面に、熱転写性色材層として、昇華性染料を含有する染料層をプライマー層4を介して、イエロー染料層Y、マゼンタ染料層M、シアン染料層Cの3色と、さらに剥離層3、プライマー層4、接着層5の3層積層された保護層7が、面順次に繰返し形成された構成である。この形態は、3色の染料層が基材シートの上に、プライマー層を介して設けられ、さらに、シアン染料層Cの後に、剥離層3、プライマー層4、接着層5の3層積層された保護層7が、面順次に繰返し形成された構成である。この形態は、3色の染料層と、保護層が一体化した熱転写シートである。
【0014】
図4は、本発明の保護層転写シート1の他の実施形態を示す概略断面図であり、基材シート2の一方の面に、耐熱滑性層6を形成し、また基材シート2の他方の面に、熱転写性色材層として、昇華性染料を含有する染料層を、イエロー染料層Y、マゼンタ染料層M、シアン染料層Cの3色と、ブラック熱溶融性インキ層BK、さらに剥離層3、プライマー層4、接着層5の3層積層された保護層7が、面順次に繰返し形成された構成である。この形態は、3色の染料層と、ブラック1色の熱溶融性インキ層を合わせて4色の熱転写性色材層と保護層が一体化した熱転写シートである。図2、3に示した熱転写性色材層を一体化した形態に限らずに、Y、M、C、BKの他に別の色相の熱転写性色材層を追加したり、またBKの熱転写性色材層と保護層を一体化させたもの等、適宜変更することができる。
【0015】
以下、本発明の保護層転写シートを構成する各層について、詳細に説明する。
(基材シート)
本発明で用いる保護熱転写シートの基材シート2としては、従来公知のある程度の耐熱性と強度を有するものであればいずれのものでも良く、例えば、0.5〜50μm、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜6μmの厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等が挙げられる。上記の中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、又は、その混合物からなるポリエステルフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
【0016】
(耐熱滑性層)
耐熱滑性層6は、サーマルヘッド等の加熱デバイスと基材シートとの熱融着を防止し、走行を滑らかに行う目的で設けられる。この耐熱滑性層に用いる樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリルースチレン共重合体等のアクリル系樹脂;芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂;ポリビニルトルエン樹脂;クマロンインデン樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリウレタン樹脂;シリコーン変性又はフッ素変性ウレタン等の天然又は合成樹脂の単体又は混合物が用いられる。
【0017】
これらの樹脂からなる耐熱滑性層に添加あるいは上塗りする滑り性付与剤としては、リン酸エステル、金属石鹸、シリコーンオイル、グラファイトパウダー、シリコーン系グラフトポリマー、フッ素系グラフトポリマー、アクリルシリコーングラフトポリマー、アクリルシロキサン、アリールシロキサン等のシリコーン重合体が挙げられるが、好ましくは、ポリオール、例えば、ポリアルコール高分子化合物とポリイソシアネート化合物及びリン酸エステル系化合物からなる層であり、さらに充填剤を添加することがより好ましい。
【0018】
耐熱滑性層は、基材シートの上に、上記に記載した樹脂、滑り性付与剤、更に充填剤を、適当な溶剤により、溶解又は分散させて、耐熱滑性層塗工液を調整し、これを、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により塗工し、乾燥して形成することができる。耐熱滑性層の塗工量は、乾燥状態で、0.1g/m2〜2.0g/m2が好ましい。
【0019】
耐熱滑性層の耐熱性をより高めるために上記の樹脂のうち、水酸基の反応性基を有している樹脂、つまり水酸基含有樹脂(例えば、ブチラール樹脂、アセタール樹脂等)を使用し、架橋剤としてイソシアネート化合物等を併用して、架橋樹脂層とすることが好ましい。すなわち、水酸基含有の樹脂としては、イソシアネート化合物と反応できるものであれば特に限定されるものではない。このような水酸基含有樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ウレタンポリオール、ポリエステル等を挙げることができる。中でも本発明においては、ポリビニルブチラールが好適に用いられる。
【0020】
イソシアネート化合物としては、例えば、従来公知の塗料、接着剤、ポリウレタンの合成等に使用されているものであれば特に限定されるものではない。このようなイソシアネート化合物としては、ジイソシアネートおよびトリイソシアネート等のポリイソシアネートを挙げることができる。本発明に用いられるポリイソシアネートの具体例としては、パラフェニレンジイソシアネート、1−クロロ−2,4−フェニルジイソシアネート、2−クロロ−1,4−フェニルジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、4,4',4''−トリメチル−3,3’,2’−トリイソシアネート−2,4,6−トリフェニルシアヌレート等を挙げることができる。
【0021】
本発明の耐熱滑性層は、イソシアネート化合物及び水酸基含有樹脂を含む耐熱滑性層用塗工液である組成物から形成することが好ましい。耐熱滑性層に含有される上記イソシアネート化合物および上記水酸基含有樹脂は、通常、互いに重合された重合物として存在する。
【0022】
また、本発明では、耐熱滑性層に、ポリアミドイミド樹脂を含有させることにより、耐熱性を向上でき、好ましい。具体的には、特開2001−334760号公報に記載している通り、示差熱分析によるTgが200℃以上であるポリアミドイミド樹脂とポリアミドイミドシリコーン樹脂を特定量混合した物をバインダーとし、更にアルキルリン酸エステルの多価金属塩、及びフィラー(充填剤)を特定量混合させた耐熱滑性層とすることが好ましい。この場合の耐熱滑性層は、イソシアネート化合物を用いて、樹脂を架橋させるものとは異なり、架橋反応させることなく、上記材料を含有する塗工液を基材シートに塗布し、乾燥させるだけで、優れた耐熱性と滑り性を有するものとなる。
【0023】
(剥離層)
本発明の保護層転写シートにおける剥離層3は溶液酸価が2以下であるアクリル系共重合体樹脂からなるものである。この樹脂の例としては、例えば、メタクリル酸メチルやスチレン等と、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、2−カルボキシ−1−ブテン、2−カルボキシ−1−ペンテン、2−カルボキシ−1−ヘキセン、2−カルボキシ−1−ヘプテン等のモノマーとを、共重合させたポリマーが挙げられる。
【0024】
本発明では剥離層を構成するアクリル系共重合体樹脂が、溶液状態で酸価を測定すると、2mgKOH/g以下になる。この酸価が2mgKOH/gより大きいと、長期保管後や、高温保管後、保護層転写の際に、基材シートと剥離層との剥離力の増加が生じて、保護層転写の剥離不良が発生してしまう。酸価が2mgKOH/gのアクリル系共重合体樹脂を得るには、その共重合体樹脂のアクリル系単量体自体、あるいはアクリル系単量体とその他の単量体とを含むアクリル系単量体組成物を、その酸価が2mgKOH/g以下となるように調整した後に、該アクリル系単量体組成物を重合反応させればよい。
【0025】
剥離層には、保護層の透明性を損なわない範囲で、ワックス、無機系微粒子、あるいは有機系微粒子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤等の各種添加剤を含有させても良い。上記ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリエステルワックス、ポリスチレン系パウダー、オレフィン系パウダー、マイクロクリスタリンワックス、カルナパワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等を挙げることができ、剥離層の耐擦過性及び箔切れ性が向上する。
【0026】
上記の添加剤の無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、等使用可能である。また、有機系微粒子としては、スチレン微粒子、アクリル微粒子、メラミン樹脂微粒子等が挙げられ、これらの微粒子添加は、箔切れ性の向上や、虹ムラ防止に対して有効である。また、保護層により覆われた被転写体の画像等の耐光性、耐候性をより向上させるために、紫外線吸収剤を添加することができ、紫外線吸収剤としては、従来から公知の有機系紫外線吸収剤であるサリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダートアミン系等を広く使用できる。また、これらの紫外線吸収剤に例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の付加重合性二重結合、あるいはアルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等の官能基を導入した紫外線吸収性樹脂を剥離層中に含有させてもよい。
【0027】
剥離層は、基材シートの耐熱滑性層の設けられた側と反対面に、上記に記載した溶液酸価が2以下であるアクリル系共重合体樹脂を、適当な溶剤、水などの溶媒により、溶解又は分散させて、剥離層塗工液を調整し、これを、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により塗工し、乾燥して形成することができる。剥離層の塗工量は、乾燥状態で、0.1g/m2〜10g/m2、好ましくは0.5g/m2〜5g/m2である。
【0028】
(プライマー層)
本発明におけるプライマー層4は、基材上の剥離層と接着層との間に、設けるもので、剥離層と接着層との接着性を高めるものである。本発明で使用するプライマー層は、無機微粒子よりなるものである。その無機微粒子は、コロイド状の無機顔料の超微粒子であり、例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸金属塩;アルミナ又はアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物又はその水和物、疑ベーマイト等)、シリカ又はシリカゾル、酸化マグネシウム、酸化チタン等の金属酸化物類;炭酸マグネシウム等の炭酸塩;等、従来公知の化合物を使用することができる。本発明では、金属酸化物類、炭酸塩が好ましく、金属酸化物類がより好ましく、アルミナ又はアルミナ水和物が更に好ましく、特に、アルミナゾルが耐熱性、強靭性の付与する効果が高く、好ましい。上記プライマー層は、上記のコロイド状無機顔料超微粒子として1種のみからなるものであってもよいし、上記コロイド状無機顔料超微粒子として2種以上からなるものであってもよい。いずれにしても、使用するコロイド状無機顔料超微粒子としては、印画時のサーマルヘッドからの瞬間的な最高加熱温度まで、相転移温度を有しない物質であれば良い。
【0029】
上記コロイド状無機顔料超微粒子の平均粒径は、通常100nm以下、好ましくは50nm以下、特に好ましくは3〜30nmである。コロイド状無機顔料超微粒子は、水系溶媒にゾル状に分散しやすくする目的で、塩酸、酢酸等の分散安定剤を配合して酸性タイプに処理したものであってもよいし、微粒子電荷をカチオンにしたものであってもよいし、表面処理したものであってもよい。コロイド状無機顔料超微粒子は、例えば、アルミナゾル100(日産化学工業(株)製)、アルミナゾル200(日産化学工業(株)製)等、市販品であってもよい。
【0030】
上記プライマー層は、一般に、コロイド状無機顔料超微粒子からなる水性のプライマー層用塗工液を基材シートの剥離層上に塗布し、乾燥することにより形成することができる。上記プライマー層は、ゾルゲル法を用いて形成してなるものがより好ましい。上記プライマー層は、バインダー樹脂を使用せずに、被膜を形成するので、保護層の耐熱性、強靭性をもたせることができ、さらに隣接する層(剥離層、接着層)との接着性が良好である。尚、上記のゾルゲル法の形成方法は、塗工において、コロイド状無機顔料超微粒子のゾル状から乾燥ゲル状になるように、90〜130℃の熱風にさらす等して乾燥を行う。プライマー層用塗工液は、水性媒体にコロイド状無機顔料超微粒子を分散させることにより調製することができる。つまり、上記プライマー層用塗工液における水性媒体としては、水、イソプロピルアルコール等の水溶性アルコール、水と水溶性アルコールとの混合液等が挙げられる。上記プライマー層用塗工液は、コロイド状無機顔料超微粒子が水性媒体100質量部に対し1〜100質量部で含有することが好ましい。
【0031】
また、本発明におけるプライマー層は、上記の無機微粒子のみから構成するだけでなく、水溶性樹脂またはエマルジョン化可能な親水性樹脂を加えて構成することができる。水溶性樹脂としては、具体的には、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、親水性ウレタン樹脂、セルロースのヒドロキシルアルキル置換誘導体、ポリアクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸およびその金属塩等が挙げられる。親水性樹脂の添加量は、プライマー層の全固形分の0〜50質量%であることが好ましい。プライマー層の形成方法は、上記の塗工液を調整し、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の公知の手段にて塗布して、形成することができる。プライマー層は、乾燥後塗工量が0.01〜10g/m2となる量で塗布することができるが、優れた耐熱性、強靭性等を付与する点で、乾燥後塗工量が0.05g/m2以上1.0g/m2以下となる量で塗布することが好ましい。
【0032】
保護層には、剥離安定化の要求性能に加え、「虹ムラ」(虹色のスジムラが印刷の流れ方向に見られる現象)の改善が求められている。上述のようなコロイド状無機顔料超微粒子をプライマー層に用いることにより、さらに上記の虹ムラの印字不良を防止できる効果がある。
【0033】
(接着層)
本発明に用いられる接着層は、本発明の保護層転写シートが備えるプライマー層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するものである。また、接着層は、本発明の保護層転写シートを用いて、熱転写受像シート等の被転写体上に保護層を形成する際に、保護層と被転写体とを接着する機能を有するものである。
【0034】
本発明における接着層に用いられる熱可塑性樹脂としては、加熱により接着性を有するものであれば、特にその種類等は限定されるものではない。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニルおよびその共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、アクリル系・メタクリル系などの(メタ)アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリメチルメタクリレート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニル系樹脂、マレイン酸樹脂、アルキッド樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミン・アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等の熱可塑性樹脂を用いることができる。上記の中でも180℃以下の温度でヒートシールが可能な組成物が用いられることが好ましい。
【0035】
また、上記接着層には、上記熱可塑性樹脂以外に、上記剥離層で説明した添加剤を同様に使用することができる。接着層は、乾燥後塗工量が0.1〜10g/m2となる量で塗布することができるが、優れた接着性等を付与する点で、乾燥後塗工量が0.5g/m2以上5.0g/m2以下となる量で塗布することが好ましい。
【0036】
(熱転写性色材層)
本発明において、上記の剥離層、プライマー層及び接着層の合わせて3層からなる保護層と、同一基材シート上に、熱転写性色材層を面順次に形成することができる。これにより、熱転写プリンターの1ヘッドで、熱転写性色材層と保護層の転写を行い、また熱転写シートの供給部と巻取部のユニットを複数単位で設けることが必要でなくなり、熱転写プリンターの小型化ができ、またプリンターの搬送系が複雑化することがなく、好ましい。
【0037】
熱転写性色材層は熱溶融性インキからなる色材層(熱溶融性インキ層)、あるいは昇華性染料を含む色材層(染料層)のいずれであってもよい。本発明において用いられる熱溶融性インキは、着色剤とビヒクルからなり、更に必要に応じて種々の添加剤を加えたものである。着色剤としては、有機または無機の顔料あるいは染料のうち、記録材料として要求される着色濃度を有し、光、熱、温度等により変褪色しないものが好ましい。また、加熱により発色するような物質や、被転写体に塗布されている物質と接触することにより発色するような物質を用いることもできる。そして、着色剤は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等の他に、種々の色の着色剤を使用することができる。
【0038】
ビヒクルは、ワックスを主成分とし、その他にワックスと乾性油、樹脂、鉱油、セルロースおよびゴムの誘導体等との混合物が用いられる。また、熱溶融性インキからなる熱転写性色材層には、良好な熱伝導性および溶融転写性を与えるために、熱伝導性物質を含有させることができる。このような熱伝導性物質としては、カーボンブラック等の炭素質物質、アルミニウム、銅、酸化スズ、二硫化モリブデン等が挙げられる。上記の熱溶融性インキを用いて基材フィルム上へ熱転写性色材層を形成する方法としては、ホットメルトコート、ホットラッカーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の公知の方法が挙げられる。熱溶融性インキからなる熱転写性色材層の塗工量は、要求される印字濃度、熱感度等を考慮して適宜決定することができ、通常、乾燥時で0.1〜30g/m2である。
【0039】
昇華性染料を含む熱転写性色材層(染料層)は、バインダー樹脂中に熱移行性の染料を分散あるいは溶解したものである。バインダー樹脂としては、染料と適度の親和性があり、且つサーマルヘッドによる加熱により、バインダー樹脂中の染料が昇華(熱移行)して被転写体に転写するものがよく、また加熱されてもバインダー樹脂そのものは転写しないものを使用する。このようなバインダー樹脂として使用される樹脂としては、例えばエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸・酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。
【0040】
また、熱転写性色材層中に含まれる染料の割合は、染料の昇華(溶融)温度、染着性等によって変るが、上記バインダー樹脂100質量部に対して30質量部以上が好ましく、更に好ましくは、30から300質量部である。染料が30質量部未満であると印字濃度や熱感度が低く、また300質量部を越えると保存性や熱転写性色材層の基材フィルムへの密着性が低下する。
【0041】
熱転写性色材層で使用する染料は、熱により溶融、拡散もしくは昇華して、被転写体に移行する染料であって、特に分散染料が好ましく用いられる。染料は昇華(溶融)性、色相、耐光性、バインダー樹脂への溶解性等を考慮して選択する。これらの染料としては、例えばジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メロシアニン等のメチン系、インドアニリン、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチンに代表されるアゾメチン系、キサンテン系、オキサジン系、ジシアノスチレン、トリシアノスチレンに代表されるシアノメチレン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、ベンゼンアゾ系、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラゾールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジスアゾ等のアゾ系、スピロピラン系、インドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンラクタム系、ナフトキノン系、アントラキノン系、キノフタロン系等のものが挙げられる。
【0042】
染料層である熱転写性色材層を基材フィルム上に設けるには、公知の方法によって行える。例えば、染料及びバインダー樹脂を溶剤とともに溶解もしくは分散して熱転写性色材層用インキ組成物を調製し、これを公知の印刷方法または塗工方法から適宜選択した方法により基材フィルム上に設ければ良い。染料層の塗工量は、乾燥時で0.2〜5.0g/m2、好ましくは0.4〜2.0g/m2の厚さが適当である。
【0043】
上記に説明した熱転写性色材層は、少なくとも2つ以上の異なる色相の熱転写性色材層を基材シートに面順次に形成することが要件であるが、2つ以上の熱転写性色材層の条件は、昇華性染料を用いた染料層が2つ以上であったり、染料層と熱溶融性インキの熱転写性色材層の組み合わせや、また熱溶融性インキの熱転写性色材層が2つ以上であっても良い。本発明では特に、基材シートに昇華性染料を含む熱転写性色材層として、イエロー色材層、マゼンタ色材層、シアン色材層を面順次に形成して、フルカラー写真画像に匹敵する高品質の熱転写画像を形成し、かつフルカラーの熱転写画像における各色相間で印画長のズレを防止した、鮮明な画像を形成することが好ましい。尚、黒色の文字やパターンの熱転写画像の場合、上記の染料層のイエロー色材層、マゼンタ色材層、シアン色材層の3色を重ねて、黒色を得ることは可能であるが、カーボンブラックの着色剤を使用した黒色の熱溶融性インキからなる色材層を基材シートに追加して、設けることが好ましい。これにより、黒色濃度が高く、鮮明な画像を得ることが出来る。
【実施例】
【0044】
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部又は%は質量基準である。
(実施例1)
厚さ6μmのポリエチレンテレフタレート長尺フィルム(ルミラー、東レ(株)製)の基材シートの一方の面に、下記の耐熱滑性層用塗工液をグラビアコーターを用いて、固形分換算で1.0g/m2の割合で塗布、乾燥して耐熱滑性層を形成した。
<耐熱滑性層用塗工液>
ポリビニルブチラール樹脂 13.6部
(エスレックBX−1 積水化学工業(株)製)
ポリイソシアネート硬化剤 0.6部
(タケネートD218 武田薬品工業(株)製)
リン酸エステル 0.8部
(プライサーフA208S 第一工業製薬(株)製)
メチルエチルケトン 42.5部
トルエン 42.5部
【0045】
次に、上記基材シートの耐熱滑性層が形成された面とは反対面上に、以下の組成を有するインキをグラビアコーターで塗工することにより、各色が縦8cm、横4cmの大きさになるように3色を1セットとして染料層からなる熱転写性色材層を形成した。このとき、各セット間は10cmとした。尚、染料層の塗工量は、3色全て乾燥時で2.0g/m2である。
【0046】
<イエロー染料層用インキの組成>
染料 5.5部
(FORON BRILLIANT YELLOW S−6GL)
ポリビニルアセタール樹脂 4.5部
(商品名 KS−5 : 積水化学工業(株)製)
ポリエチレンワックス 0.1部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1 質量比) 89部
【0047】
<マゼンタ染料層インキの組成>
染料1 1.5部
(MS RED−G)
染料2 2.0部
(MACROLEX RED VIORET R)
ポリビニルアセタール樹脂 4.5部
(商品名 KS−5 : 積水化学工業(株)製)
ポリエチレンワックス 0.1部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1 質量比) 89部
【0048】
<シアン染料層インキの組成>
染料 1.5部
(カヤセットブルー714)
ポリビニルアセタール樹脂 4.5部
(商品名 KS−5 : 積水化学工業(株)製)
ポリエチレンワックス 0.1部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1 質量比) 89部
【0049】
次に、上記の染料層の各セット間に、下記の剥離層用塗工液をグラビアコーターで塗工することにより、乾燥後塗工量が1.0g/m2になるように、剥離層を形成した。
<剥離層用塗工液>
溶液酸価が0.2mgKOH/gとなるように、メタクリル酸メチルをメインモノマーとしてアクリル系共重合体樹脂を作成し、溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)に固形分が20質量%となるように、溶解することにより、剥離層用塗工液を作製した。
【0050】
次に、上記の剥離層の上に、下記のプライマー層用塗工液をグラビアコーターで塗工することにより、乾燥後塗工量が0.2g/m2になるように、プライマー層を形成した。
<プライマー層用塗工液>
アルミナゾル 8.0部
(アルミナゾル200、平均粒径10〜20nm、酢酸安定型、日産化学工業(株)製)
ポリビニルピロリドン樹脂 2.0部
(PVP−K90、アイエスピー・ジャパン(株)製)
水 45.0部
イソプロピルアルコール 45.0部
【0051】
次に、上記のプライマー層の上に、下記の接着層用塗工液をグラビアコーターで塗工することにより、乾燥後塗工量が1.0g/m2になるように、接着層を形成し、実施例1の保護層転写シートを作製した。(保護層、熱転写性色材層の配置は図2に示したものと同様である。)
<接着層用塗工液>
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 50部
(ソルバインCNL、日信化学工業(株)製)
トルエン 50部
メチルエチルケトン 50部
【0052】
(実施例2)
実施例1の保護層転写シートの剥離層用塗工液を、下記の塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の保護層転写シートを作製した。
<剥離層用塗工液>
溶液酸価が0.6mgKOH/gとなるように、メタクリル酸メチルをメインモノマーとしてアクリル系共重合体樹脂を作成し、溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)に固形分が20質量%となるように、溶解することにより、剥離層用塗工液を作製した。
【0053】
(実施例3)
実施例1の保護層転写シートの剥離層用塗工液を、下記の塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の保護層転写シートを作製した。
<剥離層用塗工液>
溶液酸価が1.1mgKOH/gとなるように、メタクリル酸メチルをメインモノマーとしてアクリル系共重合体樹脂を作成し、溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)に固形分が20質量%となるように、溶解することにより、剥離層用塗工液を作製した。
【0054】
(実施例4)
実施例2の保護層転写シートの耐熱滑性層を下記の塗工液に変更し、その塗工量を固形分換算で0.5g/m2にした以外は、実施例2と同様にして、実施例4の保護層転写シートを作製した。
【0055】
<耐熱滑性層用塗工液>
ポリアミドイミド樹脂 50部
(HR15ET 東洋紡績(株)製)
ポリアミドイミドシリコーン樹脂 50部
(HR14ET 東洋紡績(株)製)
ポリエステル樹脂 2部
(バイロン220 東洋紡績(株)製)
ジンクステアリルホスフェート 10部
(LBT1830 堺化学(株)製)
リン酸エステル 5部
(プライサーフA208S 第一工業製薬(株)製)
タルク(ミクロエースP−3 日本タルク(株)製) 10部
エタノール 570部
トルエン 570部
【0056】
(比較例1)
実施例1の保護層転写シートの剥離層を下記の塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の保護層転写シートを作製した。
<剥離層用塗工液>
ポリメチルメタクリレート樹脂(溶液酸価は3.1(mgKOH/g)) 20部
(ダイヤナールBR−87、三菱レイヨン(株)製)
トルエン 40部
メチルエチルケトン 40部
【0057】
上記実施例及び比較例において作製した保護層転写シートの剥離層、プライマー層、接着層からなる保護層を、熱転写受像シートの受像面に転写することによって保護層を形成し、その際の剥離性を評価した。
その評価方法は次の通りである。
【0058】
(剥離性)
<印画条件>
・発熱体平均抵抗値;5176Ω
・主走査方向印字密度;300dpi、副走査方向印字密度;300dpi
・印画電圧;17V
・1ライン周期;10msec/line
・印字開始温度;35℃
・階調値;255/255
・印加パルス(階調制御方法);1ライン周期中に、1ライン周期を256に等分割したパルス長をもつ分割パルスの数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンターを用い、各分割パルスのDuty比を85%に固定し、保護層をパルス数125個の条件と、230個の条件の2通りで、すなわち、転写エネルギーが小さい場合と、転写エネルギーが大きい場合で、熱転写受像シートに保護層を形成した。但し、熱転写受像シートと保護層転写シートは、重なって接着して一体化した状態を試料とし、つまり保護層転写シートを熱転写受像シートから剥がしていないものを試料とする。
【0059】
<剥離条件>
上記の熱転写受像シートと保護層転写シートとが接着した試料を用いて、保護層転写シートを熱転写受像シートから剥がす際の剥離力を、180°剥離する時の剥離力として下記装置にて測定した。
・剥離装置:表面性測定機 HEIDON−14 新東科学社製
・剥離速度:200mm/分
・測定する試料幅:83mm
但し、実施例及び比較例の各保護層転写シートにおいて、常温(20℃)放置の試料と、温度40℃で、湿度90%RHの雰囲気に30日保存後の試料の2種類を用意して、上記の剥離力を測定した。
【0060】
上記の剥離力の測定結果を表1に示す。
【表1】

【0061】
実施例1,2,3,4及び比較例1の保護層転写シートは、上記の剥離性の条件による剥離力は、保護層転写におけるエネルギーが小さい場合、常温保管の試料と、40℃、90%RHの保存後の試料で変化はなかった。しかし、比較例1の保護層転写シートでは、保護層転写におけるエネルギーが大きい場合、常温保管の試料に比べ、40℃、90%RHの保存後の試料では、上記剥離力が9倍に増大している。それに対し、実施例1,2,3,4の保護層転写シートでは、保護層転写におけるエネルギーが大きい場合、常温保管の試料に比べ、40℃、90%RHの保存後の試料では、剥離力は2倍にも達していなく、あまり変化していない。
この剥離力の測定結果は、実施例の保護層転写シートは、高温保管しても、保護層転写の際に、基材シートと剥離層との剥離力の増加による保護層転写の剥離不良を防止できることを意味するものである。それに対し、比較例の保護層転写シートは、高温保管すると、保護層転写の際に、基材シートと剥離層との剥離力の増加による保護層転写の剥離不良が発生することを意味するものである。
保護層転写シートを長期保管・高温保管することで、プライマー層中の成分が、基材シート/剥離層界面に移行し剥離力に影響を及ぼしている、すなわち溶液酸価が2以下のアクリル樹脂を用いた剥離層および基材シートとは反応せず剥離力は変わらないが、溶液酸価が2より大きいアクリル樹脂を用いた剥離層および基材シートとは反応し剥離力が増加する、と考えられる。
【0062】
尚、実施例及び比較例において、上記の剥離力が、保護層転写のパルス数125個の条件と、230個の条件の2通りにおける測定結果であるが、図5に常温(20℃)放置の試料における保護層転写のパルス数(転写階調)と剥離力の関係を、つまりパルス数の連続した変動に対する剥離力の関係を示し、また図6に温度40℃で、湿度90%RHの雰囲気に30日保存後の試料における保護層転写のパルス数(転写階調)と剥離力の関係を、つまりパルス数の連続した変動に対する剥離力の関係を示した。常温保存では、実施例の保護層転写シートでは、パルス数変動による剥離力の変化はほとんど見られないが、比較例の保護層転写シートではパルス数200個を越えると、剥離力が増大している。また、温度40℃、湿度90%RHの30日保存後で、実施例の保護層転写シートでは、パルス数が増大すると、剥離力が多少増えているが、あまり変化はなく、比較例の保護層転写シートではパルス数150個を越えると、剥離力が増え、特にパルス数が200を越えると、著しく大きくなっていく。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の保護層転写シートの一つの実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の保護層転写シートの他の実施形態を示す概略断面図である。
【図3】本発明の保護層転写シートの他の実施形態を示す概略断面図である。
【図4】本発明の保護層転写シートの他の実施形態を示す概略断面図である。
【図5】常温(20℃)放置の試料における保護層転写のパルス数(転写階調)と剥離力の関係を示したグラフである。
【図6】温度40℃で、湿度90%RHの雰囲気に30日保存後の試料における保護層転写のパルス数(転写階調)と剥離力の関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0064】
1 保護層転写シート
2 基材シート
3 剥離層
4 プライマー層
5 接着層
6 耐熱滑性層
7 保護層
Y イエロー染料層
M マゼンタ染料層
C シアン染料層
BK ブラック熱溶融性インキ層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一方の面に、耐熱滑性層を有し、該基材シートの前記耐熱滑性層の設けられた面と反対側の面の少なくとも一部に、熱転写可能な保護層を設けた保護層転写シートにおいて、該保護層が基材シート側から剥離層、プライマー層、接着層を順次積層し、該剥離層は溶液酸価が2以下であるアクリル系共重合体樹脂からなることを特徴とする保護層転写シート。
【請求項2】
前記のプライマー層がアルミナゾルのコロイド状超微粒子を含有する組成物から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の保護層転写シート。
【請求項3】
前記の耐熱滑性層が、イソシアネート化合物及び水酸基含有樹脂を含む組成物から形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱転写シート。
【請求項4】
前記の耐熱滑性層が、ポリアミドイミド樹脂を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱転写シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−61684(P2009−61684A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231676(P2007−231676)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】