説明

保護部材付電線

【課題】多品種生産及び設計変更への柔軟な対応が可能な保護部材付電線を提供すること。
【解決手段】保護部材付電線1は、保護部材3と電線2とを備える。保護部材3は、格子点を成す位置に設けられた複数の突起32などにより、電線2を敷設可能な複数の経路からなる経路網を一の面に沿って形成する。保護部材3には、経路網における経路内の位置にクランプが通される複数の貫通孔33が形成されている。電線2は、保護部材3における経路網内の一部の選択経路に沿って敷設されている。保護部材付電線1は、貫通孔33に通されたクランプにより支持体に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される保護部材付電線に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される電線は、保護部材が取り付けられることにより、枝分かれした経路に沿う予め定められた敷設形状に維持された状態で車両等に搭載されることが多い。保護部材付電線の組み立ては、例えば、電線を、組立図板上に敷設形状に沿って立設された治具に支持させつつ布線し、布線された電線を粘着テープにより結束し、さらに、電線における定められた部位に樹脂製の保護部材、又は電線を車体等の支持体に固定するための固定用部品であるクランプなどの装着部品を取り付けることによって行われる。
【0003】
従来の保護部材付電線の組み立て工程は、工程数及び治具などの必要器具が多く、作業負荷及び必要コストが大きい。そのため、より小さな作業負荷及びコストで組み立て可能な保護部材付電線が求められている。
【0004】
上記の要求に対し、例えば特許文献1には、成形用金型を用いて保護部材付電線を作製することが提案されている。特許文献1に示される保護部材付電線は、電線が、成形用金型における枝分かれした形状の溝内に布線され、さらに、樹脂がその成形用金型によってモールドされることにより作製される。これにより、電線と、枝分かれした形状で形成されるとともに電線の周囲を覆う樹脂製の保護部材と、を備えた保護部材付電線が作製される。
【0005】
特許文献1に示される保護部材付電線は、組立図板及び治具を用いることなく比較的簡易な工程によって作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−6129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示される保護部材付電線は、その作製のために電線の敷設形状ごとに異なる成形用金型を必要とする。また、成形用金型は、その設計及び製造のために大きな工数及びコストを要し、さらに、樹脂成形工程において、複数の成形用金型を取り替えつつ使用する手間は煩雑である。
【0008】
従って、特許文献1に示される保護部材付電線は、その設計及び製造に要する工数及びコストの面において、多品種生産及び設計変更への柔軟な対応が難しいという問題点を有している。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、多品種生産及び設計変更への柔軟な対応が可能な保護部材付電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る保護部材付電線は、以下に示す各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、電線を敷設可能な複数の経路からなる経路網が一の面に沿って形成され、さらに経路網における経路内の位置に固定用部品が通される複数の第一の貫通孔が形成された保護部材である。
(2)第2の構成要素は、保護部材における経路網内の一部の選択経路に沿って敷設された第一の電線である。
【0011】
第2発明に係る保護部材付電線は、第1発明に係る保護部材付電線の構成を備え、さらに、当該保護部材付電線において、保護部材が、一の面に、相互間に経路の分岐部を含む経路網を形成する複数の第一の突起を備える。
【0012】
第3発明に係る保護部材付電線は、第2発明に係る保護部材付電線の構成を備え、さらに、当該保護部材付電線において、複数の第一の突起が、保護部材の一の面において格子点を成す位置に配列されている。
【0013】
第4発明に係る保護部材付電線は、第1発明から第3発明のいずれかに係る保護部材付電線の構成を備え、さらに、第一の貫通孔に通された固定用部品が一部に取り付けられた第二の電線をさらに備える。
【0014】
第5発明に係る保護部材付電線は、第1発明から第4発明のいずれかに係る保護部材付電線の構成を備え、さらに、当該保護部材付電線において、複数の第一の突起各々が筒形状の突起である。
【0015】
第6発明に係る保護部材付電線は、第1発明から第3発明のいずれかに係る保護部材付電線の構成を備え、さらに、カバー部材を備える。このカバー部材は、保護部材との間に第一の電線を挟みつつ保護部材の経路網を覆うとともに、保護部材の第一の貫通孔各々と対向する位置に固定用部品が通される複数の第二の貫通孔が形成された部材である。
【0016】
第7発明に係る保護部材付電線は、第6発明に係る保護部材付電線の構成を備え、さらに、連通する第一の貫通孔及び第二の貫通孔に通された固定用部品が一部に取り付けられた第二の電線を備える。
【0017】
第8発明に係る保護部材付電線は、第6発明又は第7発明に係る保護部材付電線の構成を備え、さらに、当該保護部材付電線において、複数の第一の突起各々が筒形状の突起である。
【0018】
第9発明に係る保護部材付電線は、第8発明に係る保護部材付電線の構成を備え、さらに、以下の構成を備える。即ち、カバー部材が、保護部材における筒形状の第一の突起各々に対向する位置に形成された複数の筒形状の第二の突起を備える。さらに、保護部材における複数の第一の突起とカバー部材における複数の第二の突起とが、それらの一方が他方の内側に差し込まれた状態で保持されている。
【0019】
第10発明に係る保護部材付電線は、第6発明から第8発明のいずれかに係る保護部材付電線の構成を備え、さらに、当該保護部材付電線において、カバー部材には、保護部材における複数の第一の突起が通された複数の第三の貫通孔が形成されている。
【発明の効果】
【0020】
第1発明によれば、第一の電線が、保護部材の経路網に含まれる複数の経路の中から選択された経路に沿う状態で敷設されるだけで、第一の電線は、選択経路に沿う形状に維持される。また、保護部材の経路網における選択経路が変更されるだけで、1種類の保護部材を、多種類の保護部材付電線において共用すること、及び設計変更前後の保護部材付電線に適用することが可能となる。
【0021】
さらに、第1発明に係る保護部材付電線において、保護部材における経路網内の複数の位置に固定用部品が通される第一の貫通孔が形成されている。そのため、当該保護部材付電線は、選択経路と重ならない第一の貫通孔に通された固定用部品により、車両のパネルなどの支持体に対して簡単に固定される。しかも、複数の第一の貫通孔から固定用部品を通す孔として選択される選択孔が変更されるだけで、支持体に対する固定位置の変更も可能である。従って、第1発明に係る保護部材付電線は、電線の配線経路及び支持体への固定位置が異なる多品種の生産、及び電線の配線経路及び支持体への固定位置に関する設計変更への対応の面で高い柔軟性を有している。
【0022】
また、第2発明によれば、保護部材において、経路網が複数の突起により構成されるので、保護部材の経路網が簡単な構成により形成される。
【0023】
また、第3発明によれば、格子点を成す位置に配列された複数の突起が、格子状の経路網を形成するため、行方向及び列方向の部分経路の組合せにより、非常に多くの種類の経路を選択することができる。
【0024】
また、第4発明において、固定用部品が一部に取り付けられた第二の電線は、第一の電線が保護部材に敷設された後に、固定用部品を介して保護部材と連結される。そのため、第4発明に係る保護部材付電線は、例えば、予め第一の電線と保護部材とが組み合わされた標準品としての保護部材付電線に対し、オプション品である第二の電線が後付けされる場合に好適である。しかも、固定用部品を介して第二の電線と保護部材とを連結する作業が、保護部材を支持体に固定する作業を兼ねるため、作業効率が高い。
【0025】
また、第5発明によれば、複数の突起が、中空部を形成する筒形状であるため、保護部材を軽量化できる。
【0026】
また、第6発明によれば、保護部材とカバー部材とが、選択経路に敷設された第一の電線を両側から覆うため、電線の保護が確実となる。また、電線が、保護部材とカバー部材との間に挟まれた後においても、第一の貫通孔又は第二の貫通孔を通して第一の電線の配線状況を視認することができるため、配線の確認が容易となる。
【0027】
また、第7発明によれば、第一の電線を両側から覆う保護部材及びカバー部材を備えた保護部材付電線において、第4発明と同様の効果が得られる。
【0028】
また、第8発明によれば、第一の電線を両側から覆う保護部材及びカバー部材を備えた保護部材付電線において、第5発明と同様の効果が得られる。
【0029】
また、第9発明によれば、同じ部材を、カバー部材と保護部材とに兼用することができるので、保護部材付電線の製造にかかるコストをさらに低減できる。また、保護部材の突起及びカバー部材の突起のうちの一方が他方の内側に差し込まれた状態となるため、保護部材付電線の全体の厚みを薄く抑えることができる。
【0030】
また、第10発明によれば、カバー部材は、保護部材の経路網に嵌り込んだ状態となるため、保護部材付電線の全体の厚みを薄く抑えることができる。さらに、選択経路における第一の電線とカバー部材との隙間を小さく抑えることができ、第一の電線の振動により騒音が生じることが防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る保護部材付電線1の平面図である。
【図2】保護部材付電線1の側断面図である。
【図3】保護部材付電線1を製造する方法を説明するための図である。
【図4】保護部材付電線1を車両等の定位置に固定する際の様子を示す図である。
【図5】保護部材付電線1及び他の電線が車両等の定位置に固定された状態を示す図である。
【図6】電線支持用クランプの一例の斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る保護部材付電線1aの平面図である。
【図8】保護部材付電線1aの側断面図である。
【図9】保護部材付電線1aを製造する方法を説明するための図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る保護部材付電線1cの平面図である。
【図11】保護部材付電線1cの側断面図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る保護部材付電線1dの平面図である。
【図13】保護部材付電線1dの側断面図である。
【図14】保護部材付電線1dを製造する方法を説明するための図である。
【図15】保護部材付電線1の変形例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0033】
<第1の実施の形態>
<保護部材付電線1の全体構成>
本発明の第1の実施の形態に係る保護部材付電線の全体構成について、図1、図2を参照しながら説明する。図1には保護部材付電線1の平面図が、図2には図1に示される保護部材付電線1を矢印Aからみた側断面図が、それぞれ示されている。
【0034】
保護部材付電線1は、電線2と保護部材3とを備える。電線2は、例えば、車両等において各種電気機器間を相互接続する被覆電線などである。なお、保護部材付電線1が備える電線2は、1本の電線であってもよいし、複数本の電線からなる電線束であってもよい。
【0035】
保護部材3は、電線2を保護する部材として機能するとともに、電線2を定められた敷設形状に維持する形状規制部材として機能する。
【0036】
保護部材3は、平坦な矩形状のベース部31と、保護部材3の表裏の面のうちの一方の面(第一の面)のほぼ全域に亘る範囲内に立設された複数の突起32とを備える。各突起32は、筒形状の突起であり、保護部材3の第一の面において格子点を成す位置に配置されている。
【0037】
なお、各突起32は、平面視において、角が丸められた(アールがつけられた)多角形状(例えば、矩形状)とすることが好ましい。また、各突起32は、先端が僅かに細くなる形状(テーパー状)とすることが好ましい。また、各突起32の底部及び上部は閉じられていてもよいし、開口していてもよい。複数の突起32を筒形状とすることによって、保護部材3を軽量化できるという利点が得られる。
【0038】
複数の突起32の相互間に形成される隙間は、電線2の敷設が可能な複数の経路からなる経路網を形成し、その経路網は、経路の交差部を含む。ここで、経路の交差部は、経路の分岐部であるともいえる。本実施形態において、複数の突起32は、本体部材3の第一の面における格子点を成す位置に配列されている。これにより、本体部材3の第一の面には格子状の経路網が形成されている。
【0039】
電線2は、保護部材3の経路網内の経路から選択された一部の経路である選択経路に沿って敷設され、これにより、電線2は、選択経路に沿う形状に保持される。さらに、電線2は、選択経路に沿う状態で、その延在方向の定められた位置(固定位置)Pにおいて保護部材3に対して固定される。なお、複数の突起32のそれぞれが、角が丸められた多角形状であれば、突起32に沿って敷設された電線2が傷つきにくいという利点が得られる。
【0040】
また、保護部材3のベース部31には、経路網内における複数の箇所及びその他の外縁部における複数の箇所において貫通孔33が形成されている。この貫通孔33は、保護部材付電線1を車両の金属パネル又は樹脂製のパネルなどの支持体の定位置に固定するための固定用部品であるクランプ9が通される孔である。
【0041】
<保護部材付電線1の製造方法>
次に、保護部材付電線1を製造する方法について、図3を参照しながら説明する。図3は、保護部材付電線1を製造する方法を説明するための図である。
【0042】
上述したとおり、保護部材3の第一の面には、隣接する2つの突起32の間に形成された複数の部分経路の集合である格子状の経路網が形成されている。従って、行方向の部分経路及び列方向の部分経路の組合せにより、多数の経路の中から電線2の敷設経路を選択することができる。第1工程においては、保護部材3の第一の面に形成された経路網から電線2を敷設すべき経路が選択される(図3の上段。なお、図3の上段においては、選択された経路が一点鎖線で例示されている)。
【0043】
第2工程においては、電線2が、第1工程で選択された経路に沿って突起32の間を這わせるようにして保護部材3の第一の面上に敷設される(図3の中段)。これによって、電線2が、保護部材3の第一の面に形成された経路網内の一部の選択経路に沿う形状で保持された状態となる。
【0044】
第3工程においては、ベース部31の端辺と電線2との交差位置である固定位置Pにおいて、電線2が保護部材3に対して固定される(図3の下段)。電線2を保護部材3に固定する態様としては、例えば、電線2が、ベース部31に形成された固定用の一対の貫通孔に通されたバンドにより締結されることが考えられる。
【0045】
また、ベース部31の外縁にテープ巻き片が形成され、電線2とテープ巻き片とが、それらに巻き付けられた粘着テープ又は締結用のバンドによって束ねられることにより、電線2がベース部31に固定されることも考えられる。また、電線2が、接着剤によってベース部31に接着されることも考えられる。
【0046】
以上の工程により、保護部材付電線1を得ることができる。また、図4に示されるように、保護部材付電線1は、保護部材3の貫通孔33及び支持体90の取付孔に通されたクランプ9によって支持体90に固定される。クランプ9が通される貫通孔33は、電線2が配置される選択経路と重ならない位置に存在する貫通孔33の中から選択される。このように、保護部材付電線1は、クランプ9を貫通孔33に差し込むという簡単な作業により、車両の金属パネル又は樹脂パネルなどの支持体90の定位置に固定される。
【0047】
支持体90に固定された状態において、保護部材付電線1が備える電線2は、定められた敷設形状に規制された状態で、支持体90と保護部材3との間に挟まれ、他の部分との接触が妨げられて保護される。これによって、電線2が他の部分と接触して損傷する、また、騒音を発する、といった事態が回避される。
【0048】
図5は、保護部材付電線1及び他の電線2が車両等の定位置に固定された状態を示す図である。以下の説明において、第一の電線2は、保護部材付電線1の第一の面に形成された経路網内に敷設された電線2のことを指し、第二の電線21は、その他の電線2のことを指す。
【0049】
保護部材3の経路網内には、クランプ9用の貫通孔33が形成されている。そのため、保護部材3における第一の面に対し反対側の第二の面から、第一の電線2が通る選択経路と重ならない位置に存在する貫通孔33に対し、第二の電線21に取り付けられた電線支持用クランプ8を差し込むことにより、保護部材付電線1及び第二の電線21のセットが、支持体90に固定される。
【0050】
図5に示されるように、保護部材付電線1が、貫通孔33に通された電線支持用クランプ8が一部に取り付けられた第二の電線21をさらに備えることも考えられる。
【0051】
図6に電線支持用クランプ8の一例が示されている。図6に示される電線支持用クランプ8は、電線2を支持するベルト84を備えたいわゆるベルト付クランプである。図6に示される電線支持用クランプ8は、挿入部81と、フランジ部82と、ベルト支持部83と、ベルト84とを備えている。
【0052】
挿入部81は、保護部材3の貫通孔33及び支持体90の取付孔に挿入される部分である。挿入部81は、フランジ部82の一方の面に立設された柱部811と、その柱部811の両側に張り出して設けられた2つの張出部812とを備える。挿入部81が貫通孔33及び取付孔に挿入されると、2つの張出部812は、孔の幅まで収縮した後に元の幅へ戻り、取付孔の縁部の裏側において、張出部812各々の外側に形成された爪部813が、取付孔の縁部の裏側に引っ掛かる。これにより、フランジ部82と爪部813とが、貫通孔33及び取付孔の縁部を表裏両側から挟み、電線支持用クランプ8は、支持体に固定される。
【0053】
ベルト84は、その一端がベルト支持部83に固定され、電線2の周囲に巻かれることにより電線2を支持する部分である。ベルト84の一方の面には、その長手方向において配列された複数の溝841が形成されている。
【0054】
ベルト支持部83は、フランジ部82に固定された連結部831及び変位部832と、連結部831及び変位部832とともにベルト通し孔834を形成する架設部833とを有する。電線2に巻かれたベルト84は、自由端側からベルト通し孔834に通され、フランジ部82に対して片持ち梁状に固定された変位部202の一部に形成された不図示の突起部が、ベルト84の溝841に嵌り込む。これにより、ベルト通し孔834に通されたベルト84は、変位部202の一部によって動きが規制され、ベルト通し孔834から抜けなくなる。
【0055】
図6に示される電線支持用クランプ8は、あくまで一例である。例えば、電線支持用クランプ8が、挿入部81及びフランジ部82を備え、ベルト支持部83及びベルト84が、電線2とともに粘着テープが巻き付けられるテープ巻き付け片に置き換えられた構造を有する場合もある。
【0056】
なお、クランプ9は、電線支持用クランプ8における挿入部81及びフランジ部82を備え、ベルト支持部83及びベルト84が、指でつままれる取手部に置き換えられた構造を有している。
【0057】
<効果>
上記の実施の形態によれば、第一の電線2が、保護部材3の経路網に含まれる複数の経路の中から選択された経路に沿う状態で敷設されるだけで、第一の電線2は、選択経路に沿う形状に維持される。また、保護部材3の経路網における選択経路が変更されるだけで、1種類の保護部材3を、多種類の保護部材付電線1において共用すること、及び設計変更前後の保護部材付電線1に適用することが可能となる。
【0058】
さらに、保護部材付電線1において、保護部材3における経路網内の複数の位置にクランプ9又は電線支持用クランプ8が通される貫通孔33が形成されている。そのため、保護部材付電線1は、選択経路と重ならない貫通孔33に通されたクランプ8,9により、車両のパネルなどの支持体90に対して簡単に固定される。しかも、複数の貫通孔33からクランプ8,9を通す孔として選択される選択孔が変更されるだけで、支持体90に対する固定位置の変更も容易である。保護部材付電線1は、電線2の配線経路及び支持体90への固定位置が異なる多品種の生産、及び電線2の配線経路及び支持体90への固定位置に関する設計変更への対応の面で高い柔軟性を有している。
【0059】
保護部材3において、経路網が複数の突起32により構成されるので、保護部材3の経路網が簡単な構成により形成される。さらに、格子点を成す位置に配列された複数の突起32が、格子状の経路網を形成するため、行方向及び列方向の部分経路の組合せにより、非常に多くの種類の経路を選択することができる。さらに、複数の突起32が、中空部を形成する筒形状であるため、保護部材3を軽量化できる。
【0060】
また、電線支持用クランプ8が一部に取り付けられた第二の電線21は、第一の電線2が保護部材3に敷設された後に、電線支持用クランプ8を介して保護部材3と連結される。そのため、保護部材付電線1は、例えば、予め第一の電線2と保護部材3とが組み合わされた標準品としての保護部材付電線1に対し、オプション品である第二の電線21が後付けされる場合に好適である。しかも、電線支持用クランプ8を介して第二の電線21と保護部材3とを連結する作業が、保護部材3を支持体90に固定する作業を兼ねるため、作業効率が高い。
【0061】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態に係る保護部材付電線について説明する。この実施の形態に係る保護部材付電線は、カバー部材を備える点において、第1の実施の形態に係る保護部材付電線1と相違する。その他の点においては第1の実施の形態に係る保護部材付電線1と同じ構成を備えている。以下においては、保護部材付電線1と相違しない構成についてはその説明を省略するとともに、同じ符号を付して示す。
【0062】
<保護部材付電線1aの全体構成>
本発明の第2の実施の形態に係る保護部材付電線1aの全体構成について、図7、図8を参照しながら説明する。図7には保護部材付電線1aの平面図が、図8には図7に示される保護部材付電線1aを矢印Aからみた側断面図が、それぞれ示されている。なお、カバー部材4を外すと、保護部材付電線1aは、図1、図2に示される状態となる。
【0063】
保護部材付電線1aは、電線2と、保護部材3と、カバー部材4とを備える。なお、保護部材3の構成は、第1の実施の形態と同様であるが、この実施の形態においては、保護部材3が備える各突起32の上部は、開口しているものとする。
【0064】
カバー部材4は、保護部材3との間に電線2を挟みつつ保護部材3の経路網を覆う部材である。また、カバー部材4には、保護部材3の貫通孔33各々と対向する位置にクランプ9又は電線支持用クランプ8が通される複数の貫通孔43が形成されている。
【0065】
カバー部材4は、保護部材3と同様の構成を備える。即ち、カバー部材4は、平坦な矩形状のベース部41と、ベース部41の一方の面(第一の面)のほぼ全域に亘る範囲内に立設された複数の突起42とを備える。つまり、カバー部材4の第一の面には、保護部材3の第一の面に形成されているものと同じサイズ及び同じ形状の筒形状の突起42が、保護部材3の第一の面における複数の突起32とそれぞれ対応する位置に形成されている。以下の説明において、第一の貫通孔33は、保護部材3におけるクランプ用の孔を指し、第二の貫通孔43は、カバー部材におけるクランプ用の孔を指す。同様に、第一の突起32は、保護部材3において経路網を形成する突起を指し、第二の突起42は、カバー部材4における突起を指す。
【0066】
カバー部材4が保護部材3の経路網を覆う状態において、保護部材3における複数の第一の突起32とカバー部材4における複数の第二の突起42とは、それらの一方が他方の内側に差し込まれた状態で保持される。さらに、保護部材3の貫通孔33とカバー部材4の貫通孔43は重なり、それらの孔の中空部は連通する。
【0067】
なお、同じ形状の第一の突起32及び第二の突起42は、それらの柔軟性によって少なくともそれらの一方が拡張もしくは収縮することにより、それらの一方が他方の内側に差し込まれた状態となる。
【0068】
<保護部材付電線1aの製造方法>
次に、保護部材付電線1aを製造する方法について、図9を参照しながら説明する。図9は、保護部材付電線1aを製造する方法を説明するための図である。
【0069】
保護部材付電線1aの製造工程において、まず、保護部材付電線1の製造工程における第1工程から第3工程までの各工程が実施される(図3参照)。
【0070】
次に、第4工程において、カバー部材4が、保護部材3の第一の面に被せられ、保護部材3に対して固定される。これにより、カバー部材4が保護部材3の経路網を覆うとともに、経路網内の電線2が、保護部材3とカバー部材7との間に挟まれる。より具体的には、まず、カバー部材4が、その第二の突起42各々と保護部材3の第一の突起32各々とが対向するよう支持され、さらに、カバー部材4が、保護部材3に近づけられる(図9の上段)。
【0071】
さらに、第一の突起32の先端と第二の突起42の先端とが接する状態から、カバー部材4が、さらに保護部材3に対して押し付けられることにより、筒形状の第一の突起32及び第二の突起42のうちの一方が他方の内側に差し込まれ、その状態で、両突起32,42が保持される(図9の下段)。なお、カバー部材4が、保護部材3に対して押し付けられる際に、第一の突起32及び第二の突起42のうちの一方が、その内側に配置された吸引器によって収縮されれば、突起の差し込みが円滑に行われる。
【0072】
さらに、第一の突起32及び第二の突起42のうちの一方が他方の内側に差し込まれた状態において、保護部材3とカバー部材4とが、それらの外縁部などにおいて、超音波溶接又は接着剤による接着などによって接合される。これにより、保護部材3とカバー部材4とが、合体した状態で保持される。
【0073】
なお、カバー部材4と保護部材3とが、一方に形成された引っ掛かり部付きの突起部と他方に形成された孔の縁部とにより構成される抜け止め機構により合体した状態で保持されることも考えられる。
【0074】
以上の工程により、保護部材付電線1aを得ることができる。また、保護部材付電線1aも、保護部材付電線1と同様に、クランプ8,9を用いて支持体90に固定することができる。
【0075】
即ち、クランプ9が、第一の貫通孔33及びこれと重なる第二の貫通孔43に通され、さらに、支持体90の取付孔に挿入されることにより、保護部材付電線1aは、支持体90に固定される。クランプ9が通される第一の貫通孔33及び第二の貫通孔43は、電線2が配置される選択経路と重ならない位置に存在する貫通孔33,43の中から選択される。
【0076】
また、図5に示される保護部材付電線1と同様に、保護部材付電線1aが、第一の貫通孔33及び第二の貫通孔43に通された電線支持用クランプ8が一部に取り付けられた第二の電線21をさらに備えることも考えられる。この場合、保護部材付電線1aにおける保護部材3の第二の面から、第一の電線2が通る選択経路と重ならない位置に存在する第一の貫通孔33及びこれと重なる第二の貫通孔43に対し、第二の電線21に取り付けられた電線支持用クランプ8を差し込むことにより、保護部材付電線1a及び第二の電線21のセットが、支持体90に固定される。
【0077】
<効果>
保護部材付電線1aが採用されることにより、保護部材付電線1が採用される場合と同様の効果が得られる。特に、保護部材付電線1aによれば、同じ部材を、保護部材3とカバー部材4とに兼用できるため、保護部材付電線1aの製造にかかるコストをさらに低減できる。また、保護部材3における第一の突起32及びカバー部材4における第二の突起42のうちの一方が他方の内側に差し込まれた状態となるため、保護部材付電線1aの全体の厚みを薄く抑えることができる。
【0078】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態に係る保護部材付電線1cについて説明する。この実施の形態に係る保護部材付電線1cは、保護部材3が備える突起32の形状において、保護部材付電線1と相違する。その他の点においては保護部材付電線1と同じ構成を備えている。以下においては、保護部材付電線1と相違しない構成についてはその説明を省略するとともに、同じ符号を付して示す。
【0079】
<保護部材付電線1cの全体構成>
保護部材付電線1cの全体構成について、図10、図11を参照しながら説明する。図10には保護部材付電線1cの平面図が、図11には図10に示される保護部材付電線1cを矢印Aからみた側断面図が、それぞれ示されている。
【0080】
保護部材付電線1cは、電線2と、保護部材6とを備える。保護部材付電線1cの電線2は、保護部材付電線1の電線2と同じである。
【0081】
保護部材6は、電線2を保護する部材として機能するとともに、電線2を定められた敷設形状に維持する形状規制部材として機能する。
【0082】
保護部材6は、平坦な矩形状のベース部61と、ベース部61の一方の面(第一の面)のほぼ全域に亘る範囲内に立設された複数の突起62とを備える。各突起62は、断面円形の棒状の突起であり、保護部材6の第一の面において格子点を成す位置に配置されている。
【0083】
複数の突起62の相互間に形成される隙間は、電線2の敷設が可能な複数の経路からなる経路網を形成し、その経路網は、経路の交差部を含む。ここで、経路の交差部は、経路の分岐部であるともいえる。本実施形態において、複数の突起62は、保護部材6の第一の面における格子点を成す位置に配列されている。これにより、保護部材6の第一の面には格子状の経路網が形成されている。
【0084】
電線2は、保護部材6の経路網内の経路から選択された一部の経路である選択経路に沿って敷設され、これにより、電線2は、選択経路に沿う形状に保持される。さらに、電線2は、選択経路に沿う状態で、その延在方向の定められた位置(固定位置)Pにおいて保護部材6に対して固定される。
【0085】
また、複数の突起62のそれぞれが、棒形状であるので、経路幅を広く確保できる。また、複数の突起62のそれぞれが、平面視において円形状であるので、突起62に沿って敷設された電線2が傷つきにくいという利点が得られる。
【0086】
また、保護部材6のベース部61には、経路網内における複数の箇所及びその他の外縁部における複数の箇所において貫通孔63が形成されている。この貫通孔63は、保護部材付電線1cを支持体90の定位置に固定するためのクランプ9が通される孔である。
【0087】
<保護部材付電線1cの製造方法>
保護部材付電線1cは、第1の実施の形態に係る保護部材付電線1と同じ方法で製造することができる。即ち、第1工程において、保護部材6の第一の面に形成された経路網から電線2を敷設すべき経路が選択され(図3の上段)、続く第2工程において、電線2が、第1工程で選択された経路に沿って、保護部材6の第一の面上に敷設される(図3の中段)。続く第3工程において、電線2が、ベース部61の縁部における固定位置Pにおいて、保護部材6に対して固定される状態(図3の下段)。
【0088】
以上の工程により、保護部材付電線1cを得ることができる。また、保護部材付電線1cも、保護部材付電線1,1aと同様に、クランプ8,9を用いて支持体90に固定することができる。図11には、クランプ9及び第二の電線21に取り付けられた電線支持用クランプ8が、第一の電線2を含む保護部材付電線1cの貫通孔63に通される様子が示されている。なお、図11において、第二の電線21及びこれに取り付けられた電線支持用クランプ8は、仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0089】
<効果>
保護部材付電線1cが採用されることにより、保護部材付電線1が採用される場合と同様の効果が得られる。
【0090】
<第4の実施の形態>
本発明の第4の実施の形態に係る保護部材付電線について説明する。この実施の形態に係る保護部材付電線は、カバー部材を備える点において、第3の実施の形態に係る保護部材付電線1cと相違する。その他の点においては第3の実施の形態に係る保護部材付電線1cと同じ構成を備えている。以下においては、保護部材付電線1cと相違しない構成についてはその説明を省略するとともに、同じ符号を付して示す。
【0091】
<保護部材付電線1dの全体構成>
保護部材付電線1dの全体構成について、図12、図13を参照しながら説明する。図12には保護部材付電線1dの平面図が、図13には図12に示される保護部材付電線1dを矢印Aからみた側断面図が、それぞれ示されている。なお、カバー部材7を外すと、保護部材付電線1dは、図10、図11に示される状態となる。
【0092】
保護部材付電線1dは、電線2と、保護部材6と、カバー部材7とを備える。以下の説明において、第一の貫通孔63は、保護部材6に形成されたクランプ8,9用の貫通孔を意味する。
【0093】
カバー部材7は、電線2を間に挟むようにして保護部材6における第一の面の経路網を覆うことにより、保護部材6と対になって、電線2を保護する保護部材として機能する。
【0094】
カバー部材7は、平坦な矩形状のベース部71を有し、そのベース部71には、そのほぼ全域に亘る範囲内に形成された複数の第二の貫通孔73及び複数の第三の貫通孔72が形成されている。保護部材付電線1dにおける第一の貫通孔63及び第二の貫通孔73は、保護部材付電線1aにおける第一の貫通孔33及び第二の貫通孔43に相当し、いずれもクランプ用の孔である。
【0095】
また、カバー部材7における第三の貫通孔72各々は、平面視において保護部材6が備える突起62よりも僅かに大きなサイズで形成されており、突起62が第三の貫通孔72を貫通可能である。また、第三の貫通孔72各々は、保護部材6の第一の面における複数の突起62各々と対応する位置に形成されている。即ち、第三の貫通孔72各々は、カバー部材7の表面において格子点を構成する位置に形成されている。
【0096】
従って、カバー部材7が保護部材6の経路網を覆う状態において、保護部材6の突起62各々は、カバー部材7の第三の貫通孔72各々を貫通している。そして、カバー部材7は、保護部材6の経路網内に嵌り込み、保護部材6の厚みの範囲内に収まっている。これにより、電線2は、保護部材6とカバー部材7との間に挟み込まれている。
【0097】
<保護部材付電線1dの製造方法>
次に、保護部材付電線1dを製造する方法について、図14を参照しながら説明する。図14は、保護部材付電線1dを製造する方法を説明するための図である。
【0098】
保護部材付電線1dの製造工程において、まず、保護部材付電線1の製造工程における第1工程から第3工程までの各工程が実施される(図3参照)。
【0099】
次に、第4工程において、カバー部材7が、保護部材6の第一の面に被せられ、保護部材6に対して固定される。これにより、カバー部材7が保護部材6の経路網を覆うとともに、経路網内の電線2が、保護部材6とカバー部材7との間に挟まれる。より具体的には、まず、カバー部材7が、その第三の貫通孔72各々と保護部材6の突起62各々とが対向するよう支持され、さらに、カバー部材7が、保護部材6に近づけられる(図14の上段)。
【0100】
さらに、カバー部材4が、保護部材3に対して押し付けられることにより、保護部材6の突起62がカバー部材7の第三の貫通孔72を貫通し、電線2が、保護部材6のベース部61とカバー部材7との間に挟み込まれる。
【0101】
さらに、保護部材6とカバー部材7とが、超音波溶接又は接着剤による接着などによって接合されること、又は抜け止め機構によって、合体した状態で保持される。
【0102】
以上の工程により、保護部材付電線1dを得ることができる。また、保護部材付電線1dも、保護部材付電線1,1a,1cと同様に、クランプ8,9を用いて支持体90に固定することができる。図13には、クランプ9及び第二の電線21に取り付けられた電線支持用クランプ8が、第一の電線2を含む保護部材付電線1dの第一の貫通孔63及びカバー部材7の第二の貫通孔73に通される様子が示されている。なお、図13において、第二の電線21及びこれに取り付けられた電線支持用クランプ8は、仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0103】
<効果>
保護部材付電線1dが採用されることにより、保護部材付電線1aが採用される場合と同様の効果が得られる。特に、保護部材付電線1dによれば、保護部材6とカバー部材7との間隔が、第一の電線2の厚みに応じた間隔に調節される。そのため、第一の電線2が、保護部材6とカバー部材7との間で振動して騒音を発する事態が回避される。
【0104】
<変形例>
保護部材付電線1,1cを製造する工程において、保護部材3,6における選択経路以外の経路のみを含む領域、即ち、第一の電線2が敷設されていない一部の領域を切り取る工程が実施されてもよい。図15には、当該工程を経て製造された保護部材付電線1の平面図が例示されている。ここに示されるように、保護部材3における選択領域以外の経路のみを含む領域Tが切り取られることにより、保護部材付電線1の重量及び設置スペースをより低減することができる。
【0105】
また、保護部材付電線1a,1dを製造する工程においても、上記の変形例に示した工程が加えられてもよい。例えば、保護部材付電線1aを製造する工程において、保護部材3及びカバー部材4における選択経路以外の経路のみを含む領域、即ち、第一の電線2が敷設されていない一部の領域を切り取る工程が実施されてもよい。
【0106】
また、上記の実施の形態においては、複数の突起32,62が形成されることにより保護部材3,6の第一の面に経路網が形成されることとしたが、経路網を形成する態様は、必ずしも突起を形成する態様に限らない。例えば、ベース部31,61に形成された溝(例えば、格子状の溝)が、経路網を形成してもよい。
【0107】
また、上記の実施の形態においては、複数の突起32,62が格子点を成す位置に配置されているが、保護部材3,6の第一の面に形成される経路網は、少なくとも選択可能な2以上の経路を含む経路網であればよい。つまり、保護部材3,6の第一の面に形成される経路網は、必ずしも格子状でなくともよく、また、必ずしも規則的でなくともよい。例えば、複数の突起32,62が、ベース部31,61上の同心の円周上に間隔をおいて配置されることが考えられる。この場合、放射状の経路と円周上の経路とが交わる経路網が形成される。また例えば、複数の突起32,62が不規則に配置されることにより、不規則な経路網が形成されてもよい。
【0108】
また、上記の実施の形態においては、保護部材3,6の第一の面のほぼ全域に経路網が形成されているが、経路網は第一の面の一部領域に形成されてもよい。
【0109】
また、経路網を覆うカバー部材が、カバー部材4,7の形状で形成される場合の他、例えば、突起、あるいは貫通孔が形成されない平坦な板形状に形成される場合も考えられる。
【0110】
また、上記の実施の形態において、第1の実施の形態における保護部材3に、第4の実施の形態におけるカバー部材7が組み合わされてもよい。
【0111】
また、上記の各実施の形態においては、カバー部材4,7が、保護部材3,6に対して溶接、接着又は抜け止め機構により固定される例が示されている。しかしながら、カバー部材4,7が、保護部材3,6に対して溶接などにより固定されない場合も考えられる。この場合、第一の貫通孔33,63及び第二の貫通孔43,73に通されるクランプ8,9が、カバー部材4,7及び保護部材3,6を合体した状態で保持する。
【0112】
また、上記の第1の実施の形態において、保護部材3に形成される各突起32は、平面視において、角が丸められた多角形状であるとしたが、平面視において円形状であってもよい。また、上記の第3の実施の形態において、保護部材6に形成される各突起62は、平面視において、円形状であるとしたが、平面視において角が丸められた多角形状であってもよい。
【0113】
また、上記の各実施の形態において、保護部材3,6及びカバー部材4,7は、例えば、ポリプロピレン(PP)又はポリアミド(PA)などの樹脂の成形部材であることが考えられる。
【0114】
また、保護部材付電線1a,1dにおいて、クランプ9又は電線支持用クランプ8が、カバー部材4,7の側から第一の貫通孔33,63及び第二の貫通孔43,73に通され、支持体90に固定されることも考えられる。
【0115】
また、第4の実施の形態においては、カバー部材7が保護部材6の経路網を覆った状態において、保護部材6が備える各突起62が、カバー部材7が備える各貫通孔72を介してカバー部材7の第一の面から突出する。つまり、この状態において、当該カバー部材7の外側の面から突出した複数の突起62により、カバー部材7のベース部71上に格子状の経路網が形成され、そこから配線の経路を選択することができる。
【0116】
そこで、カバー部材7が保護部材6の経路網を覆った状態において、第三の電線が、カバー部材7を貫通した保護部材6の突起62によってカバー部材7の外側の面に形成された経路網内に敷設されてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1,1a,1c,1d 保護部材付電線
2 電線(第一の電線)
3,6 保護部材
4,7 カバー部材
8 電線支持用クランプ
9 クランプ
21 第二の電線
31,61 保護部材のベース部
32,62 突起(第一の突起)
33,63 貫通孔(第一の貫通孔)
41,71 カバー部材のベース部
42 突起(第二の突起)
43,73 貫通孔(第二の貫通孔)
72 第三の貫通孔
81 挿入部
82 フランジ部
83 ベルト支持部
84 ベルト
90 支持体
811 柱部
812 張出部
813 爪部
831 連結部
832 変位部
833 架設部
834 ベルト通し孔
841 ベルトの溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を敷設可能な複数の経路からなる経路網が一の面に沿って形成され、さらに前記経路網内の複数の位置に固定用部品が通される複数の第一の貫通孔が形成された保護部材と、
前記保護部材における前記経路網内の一部の選択経路に沿って敷設された第一の電線と、を備えることを特徴とする保護部材付電線。
【請求項2】
請求項1に記載の保護部材付電線であって、
前記保護部材が、前記一の面に、相互間に前記経路の分岐部を含む前記経路網を形成する複数の第一の突起を備える保護部材付電線。
【請求項3】
請求項2に記載の保護部材付電線であって、
複数の前記第一の突起が、前記保護部材の前記一の面において格子点を成す位置に配列されている保護部材付電線。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の保護部材付電線であって、
前記第一の貫通孔に通された前記固定用部品が一部に取り付けられた第二の電線をさらに備える保護部材付電線。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の保護部材付電線であって、
複数の前記第一の突起各々が筒形状の突起である保護部材付電線。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の保護部材付電線であって、
前記保護部材との間に前記第一の電線を挟みつつ前記保護部材の前記経路網を覆うとともに、前記保護部材の前記第一の貫通孔各々と対向する位置に前記固定用部品が通される複数の第二の貫通孔が形成されたカバー部材をさらに備える保護部材付電線。
【請求項7】
請求項6に記載の保護部材付電線であって、
連通する前記第一の貫通孔及び前記第二の貫通孔に通された前記固定用部品が一部に取り付けられた第二の電線をさらに備える保護部材付電線。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の保護部材付電線であって、
複数の前記第一の突起各々が筒形状の突起である保護部材付電線。
【請求項9】
請求項8に記載の保護部材付電線であって、
前記カバー部材が、前記保護部材における筒形状の前記第一の突起各々に対向する位置に形成された複数の筒形状の第二の突起を備え、
前記保護部材における複数の前記第一の突起と前記カバー部材における複数の前記第二の突起とが、それらの一方が他方の内側に差し込まれた状態で保持されている保護部材付電線。
【請求項10】
請求項6から請求項8のいずれかに記載の保護部材付電線であって、
前記カバー部材には、前記保護部材における複数の前記第一の突起が通された複数の第三の貫通孔が形成されている保護部材付電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−223071(P2012−223071A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90040(P2011−90040)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】