説明

信号伝送回路及び電力変換装置

【課題】磁界変化に伴うノイズの影響を除去し伝送信号の伝送精度を向上させる。
【解決手段】セット用絶縁トランスTL11の1次巻線M11の両端間にPチャネル電界効果型トランジスタTr11を接続し、入力信号S100の立ち上がりに同期したエッジ信号S102の立ち上がりエッジで1次巻線M11に励磁電流を供給し、励磁用のエッジ信号S102の立ち下がりエッジで1次巻線M11に蓄積された励磁電流をトランジスタTr11により強制的に消滅させ、2次巻線M12側から、エッジ信号S102の立ち上がりエッジで負の振幅パルス、立ち下がりエッジで正の振幅パルスが生じるセット用電圧信号S104を得る。この負の振幅パルス及び正の振幅パルスのパルス時間間隔が許容時間範囲内でないときには、ノイズによる振幅パルスであると判断し、許容時間範囲内であるときにのみノイズによる振幅パルスではなく正規の振幅パルスであると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスを用いて信号伝送を行なう信号伝送回路及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両機器では、高効率化および省エネ対策を図るために、駆動力を生む電動機の駆動システムに、昇降圧コンバータ及びインバータが搭載されている。
図3は、昇降圧コンバータを用いた車両駆動システムの概略構成を示すブロック図である。
図3において、車両駆動システムには、昇降圧コンバータ1102に電力を供給する電源1101、電圧の昇降圧を行う昇降圧コンバータ1102、昇降圧コンバータ1102から出力された電圧を3相電圧に変換するインバータ1103及び車両を駆動する電動機1104が設けられている。
【0003】
なお、電源1101は、架線からの給電電圧、又は直列接続されたバッテリーから構成することができる。
そして、車両駆動時には、昇降圧コンバータ1102は、電源1101の電圧(例えば280V)を電動機1104の駆動に適した電圧(例えば750V)に昇圧し、インバータ1103に供給する。そして、インバータ1103のスイッチング素子をオン/オフ制御することにより、昇降圧コンバータ1102にて昇圧された電圧を3相電圧に変換して、電動機1104の各相に電流を流し、スイッチング周波数を制御することで車両の速度を変化させる。
【0004】
一方、車両の制動時には、インバータ1103は、電動機1104の各相に生じる電圧に同期してスイッチング素子をオン/オフ制御することにより整流動作を行い、直流電圧に変換してから、昇降圧コンバータ1102に供給する。そして、昇降圧コンバータ1102は、電動機1104から生じる電圧(例えば750V)を電源1101の電圧(例えば280V)に降圧して電力の回生動作を行う。
【0005】
図4は、図3の昇降圧コンバータの概略構成を示すブロック図である。
図4において、昇降圧コンバータ1102には、エネルギーの蓄積を行うリアクトルL、電荷の蓄積を行うコンデンサC、インバータ1103に流入する電流を通電及び遮断するスイッチング素子SW1、SW2、スイッチング素子SW1、SW2の導通及び非導通を指示する制御信号を生成する制御回路1111が設けられている。
【0006】
そして、スイッチング素子SW1、SW2は直列に接続されると共に、スイッチング素子SW1、SW2の接続点には、リアクトルLを介して電源1101が接続されている。
ここで、スイッチング素子SW1には、制御回路1111からの制御信号に従ってスイッチング動作を行うIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)1105が設けられ、IGBT1105に流れる電流と逆方向に電流を流すフライホイールダイオードD1がIGBT1105に並列に接続されている。
【0007】
また、スイッチング素子SW2には、制御回路1111からの制御信号に従ってスイッチング動作を行うIGBT1106が設けられ、IGBT1106に流れる電流と逆方向に電流を流すフライホイールダイオードD2がIGBT1106に並列に接続されている。そして、IGBT1106のコレクタは、コンデンサCおよびインバータ1103の双方に接続されている。
【0008】
図5は、昇圧動作時に図4のリアクトルLに流れる電流の波形を示す図である。
図5において、昇圧動作では、スイッチング素子SW1のIGBT1105がオン(導通)すると、IGBT1105を介してリアクトルLに電流Iが流れ、LI2/2のエネルギーがリアクトルLに蓄積される。
次に、スイッチング素子SW1のIGBT1105がオフ(非導通)すると、スイッチング素子SW2のフライホイールダイオードD2に電流が流れ、リアクトルLに蓄えられたエネルギーがコンデンサCに送られる。
【0009】
一方、降圧動作では、スイッチング素子SW2のIGBT1106がオン(導通)すると、IGBT1106を介してリアクトルLに電流Iが流れ、LI2/2のエネルギーがリアクトルLに蓄積される。
次に、スイッチング素子SW2のIGBT1106がオフ(非導通)すると、スイッチング素子SW1のフライホイールダイオードD1に電流が流れ、リアクトルLに蓄えられたエネルギーが電源1101へ回生される。
【0010】
ここで、フライホイールダイオードD2(昇圧動作の場合)又はスイッチング素子SW2のIGBT1106(降圧動作の場合)のオン時比率(ON Duty)を変更することで、昇降圧の電圧を調整することが可能であり、概略の電圧値は以下の(1)式にて求めることができる。
L/VH=ON Duty(%) ……(1)
ただし、VLは電源1101の電圧、VHはコンデンサCの電圧、ON DutyはフライホイールダイオードD2(昇圧動作の場合)又はスイッチング素子SW2(降圧動作の場合)のスイッチング周期に対する導通期間の割合である。
【0011】
ここで、実際には負荷の変動、電源電圧VLの変動などがあるので、電圧VH、VLを監視し、昇降圧された電圧が目標値となるように、オン時比率(ON Duty)の制御が行われている。
図3、4の昇降圧コンバータ1102に対し、絶縁トランスを用いて信号を伝送するパワーエレクトロニクス機器を適用することが提案されている(例えば特許文献1参照)。図6は、そのようなパワーエレクトロニクス機器の一つであるIPM(Inteligent Power Module)及びその周辺回路の概略構成を示すブロック図である。
【0012】
スイッチング素子SW1、SW2、スイッチング素子SW1、SW2の導通及び非導通を指示する制御信号を生成する後述のCPU1111a側は、車体筐体に接地される。このCPU1111a側は低圧系であり、スイッチング素子SW1、SW2に接続される後述の保護機能付きゲートドライバIC1115U及び1115D側は高圧系となる。このため、スイッチング素子SW1、SW2の破壊などの事故が発生しても、人体が危険に晒されることがないようにするために、絶縁トランスやフォトカプラ等、を用いて電気的に絶縁しながら、CPU1111a側と保護機能付きゲートドライバIC1115U及び1115D側との間で信号の授受が行われる。
【0013】
制御回路1111は、中央演算処理IC、或いは論理IC及び中央演算処理IC、等が搭載されたLSIなどで構成されるCPU1111aを備えている。このCPU1111aでは、スイッチング素子SW1、SW2の導通及び非導通を指示する制御信号としてPWM信号をそれぞれ生成する。
また、スイッチング素子SW1、SW2は、それぞれ下アーム用、上アーム用として動作する。
【0014】
そして、上アーム用のスイッチング素子SW2を構成するIGBT1106が形成されたチップには、チップの温度変化に起因するダイオードDU2のVF変化を測定原理として用いた温度センサ、及び抵抗RU1、RU2を介してIGBT1106の主回路電流を分流した電流を検出することにより主回路電流を検出する電流センサが設けられている。
同様に、下アーム用のスイッチング素子SW1を構成するIGBT1105が形成されたチップには、チップの温度変化に起因するダイオードDD2のVF変化を測定原理として用いた温度センサ、及びIGBT1105の主回路電流を分流した電流を抵抗RD1、RD2を介して検出することにより主回路電流を検出する電流センサが設けられている。
【0015】
そして、上アーム側には、温度センサからの過熱検知信号SU6及び電流センサからの過熱検知信号SU5を監視しながら、IGBT1106の制御端子を駆動するためのゲート信号SU4を生成する保護機能付きゲートドライバIC1115Uが設けられると共に、IGBT1106の温度に対応したPWM信号を生成するアナログ−PWM変換器CUが設けられている。なお、保護機能付きゲートドライバIC1115Uには、スイッチング素子SW2の状態信号を生成する自己診断回路を設けることができる。
【0016】
同様に、下アーム側には、温度センサからの過熱検知信号SD6及び電流センサからの過熱検知信号SD5を監視しながら、IGBT1105の制御端子を駆動するためのゲート信号SD4を生成する保護機能付きゲートドライバIC1115Dが設けられると共に、IGBT1105の温度に対応したPWM信号を生成するアナログ−PWM変換器CDが設けられている。なお、保護機能付きゲートドライバIC1115Dには、スイッチング素子SW1の状態信号を生成する自己診断回路を設けることができる。
【0017】
また、制御回路1111は、CPU1111aから出力されたPWM信号を、保護機能付きゲートドライバIC1115U及び1115Dに伝送すると共に、保護機能付きゲートドライバIC1115U、1115Dからのスイッチング素子SW1、SW2の過電流を検出したことを通知するためのアラーム信号SU2、SD2、或いは、アナログ−PWM変換器CU、CDからのチップが過熱状態であることを検出したことを通知するためのアラーム信号SU3、SD3を、CPU1111aに絶縁伝送するための絶縁トランスを用いた信号伝送部1117を備えている。
CPU1111aは、保護機能付きゲートドライバIC1115U、1115D或いは、アナログ−PWM変換器CU、CDからのアラーム信号SU2、SD2、SU3、SD3が通知されたときには、PWM信号の生成を停止する。
【0018】
また、保護機能付きゲートドライバIC1115U、1115D、或いは、アナログ−PWM変換器CU、CDでは、それぞれ電流センサ或いは温度センサの出力信号が、IGBT1105、1106が破壊されることのない閾値を下回り、且つこの状態が一定時間経過した後に、アラーム信号を解除する。また、さらに細かい監視を行なう場合には、温度センサの出力信号のアナログ値をPWM変換によりデジタル信号にし、これを、絶縁トランスを介して信号伝送を行なう信号伝送部1117を介してCPU1111aに絶縁伝送し、CPU1111aで、伝送されたPWM信号からIGBTのチップ温度を算出し、予め設けられた複数段階の閾値に応じて、スイッチング周波数の段階的な低下及びスイッチングの停止を行なう。
ここで、前記信号伝送部1117は、図6に示すように、絶縁トランスにより信号伝送を行なう信号伝送回路TUを複数備えており、この信号伝送回路TUは信号線毎に設けられている。
【0019】
図7(a)は、絶縁トランスの構成を示す断面図、図7(b)は、絶縁トランスの概略構成の一例を示す平面図である。
図7において、半導体基板2011には引き出し配線層2012が埋め込まれると共に、半導体基板2011上には1次巻線パターン2014が形成されている。そして、1次巻線パターン2014上には平坦化膜2015が形成され、平坦化膜2015上には、2次巻線パターン2017が形成され、2次巻線パターン2017は保護膜2018にて覆われている。そして、保護膜2018には、2次巻線パターン2017の中心を露出させる開口部2019が形成され、開口部2019を介して2次巻線パターン2017の中心にボンディングワイヤを接続することにより、2次巻線パターン2017からの引き出しを行なうことができる。
【0020】
なお、例えば、1次巻線パターン2014および2次巻線パターン2017の巻線幅は5〜10μm、厚みは4〜5μm、巻線の最外径は500μmとすることができる。
そして、1次巻線パターン2014に印加された電流により生成された磁束φ=L1*I1の大部分が2次巻線パターン2017の鎖交磁束となり、2次巻線パターン2017の両端には、dφ/dTに比例するM21*dI1/dTの電圧が得られる。ただし、L1は1次巻線パターン2014の自己インダクタンス、I1は1次巻線パターン2014に流れる電流、M21は1次巻線パターン2014と2次巻線パターン2017の相互インダクタンスである。
【0021】
このように、絶縁トランスによる信号伝送では、1次巻線に流れる電流の微分に相当する電圧が得られるので、ロジック信号を伝送する場合には、キャリア信号伝送方式または状態遷移信号伝送方式による信号処理が行われる。
ここで、キャリア信号伝送方式では、伝送されるロジック信号の論理に基づいて振幅変調された高周波キャリア信号にて1次巻線を励磁し、2次巻線の出力電圧をローパスフィルタにて平滑してロジック信号が取り出される。
【0022】
状態遷移信号伝送方式では、伝送されるロジック信号の状態遷移(ロジック信号の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジ)を検出し、ロジック信号の立ち上がりでパルスを伝送するセット用絶縁トランスから得られるパルス信号でフリップフロップをセットし、ロジック信号の立ち下がりでパルスを伝送するリセット用絶縁トランスから得られるパルス信号でフリップフロップをリセットすることで、ロジック信号の状態が取り出される。
【0023】
一方、微細加工技術を適用して形成された絶縁トランスは、銅線を用いた巻線型トランスに比べて、巻線の導体断面積が小さく、許容直流電流は遥かに少ない。この許容直流電流は、電流が流れることによって巻線の導体抵抗により発生する消費電力に起因して発生するジュール熱に応じて規定されている。このため、微細加工技術を適用して形成された絶縁トランスを用いる場合、絶縁トランスに電流を流す期間を短くして電流を流すことにより、平均電流を許容直流電流以下にする必要がある。
ここで、キャリア信号伝送方式では、ロジック信号がハイレベルの期間に常にキャリア信号にて絶縁トランスが励磁され、絶縁トランスの巻線抵抗による発熱を抑えることができない。このため、微細加工技術を適用して形成された絶縁トランスによる信号伝送では状態遷移信号伝送方式を用いることが提案されている。
【0024】
図8は、絶縁トランスを用いた信号伝送回路TUの概略構成を示す回路図、図9は信号伝送回路TUの各部の信号波形を示す図である。
信号伝送回路TUは、入力信号の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジを検出する変換回路KU0、入力信号の立ち上がりエッジに応じたパルス電流を伝送するセット用絶縁トランスTL1及びパルス信号の立ち下がりエッジに応じたパルス電流を伝送するリセット用絶縁トランスTL2を備えている。これらセット用絶縁トランスTL1及びリセット用絶縁トランスTL2は、例えば空芯型絶縁トランスで構成される。
【0025】
そして、変換回路KU0において、抵抗R1の一端はコンデンサC1を介して接地されるとともに、排他的論理和回路U1Aの一方の入力端子に接続され、抵抗R1の他端は信号源Gに接続されている。また、排他的論理和回路U1Aの他方の入力端子には信号源Gが接続される。また、否定論理積回路U3Aの一方の入力端子には、排他的論理和回路U1Aの出力端子が接続されるとともに、否定論理積回路U3Aの他方の入力端子には信号源Gが接続されている。さらに、否定論理積回路U3Bの一方の入力端子には、排他的論理和回路U1Aの出力端子が接続されるとともに、否定論理積回路U3Bの他方の入力端子には、インバータU2Bを介して信号源Gが接続されている。
【0026】
また、セット用絶縁トランスTL1には1次巻線M1及び2次巻線M2が設けられ、リセット用絶縁トランスTL2には1次巻線M3及び2次巻線M4が設けられている。
そして、セット用絶縁トランスTL1の1次巻線M1の両端はダイオードD1を介して接続されるとともに、セット用絶縁トランスTL1の1次巻線M1の一端は、Nチャネル電界効果型トランジスタTr1のドレインに接続され、セット用絶縁トランスTL1の1次巻線M1の他端は電源電位Vcc1に接続されている。
【0027】
また、リセット用絶縁トランスTL2の1次巻線M3の両端はダイオードD2を介して接続されるとともに、リセット用絶縁トランスTL2の1次巻線M3の一端は、Nチャネル電界効果型トランジスタTr2のドレインに接続され、セット用絶縁トランスTL2の1次巻線M3の他端は電源電位Vcc1に接続されている。
そして、否定論理積回路U3Aの出力端子はインバータU2Cを介してNチャネル電界効果型トランジスタTr1のゲートに接続され、否定論理積回路U3Bの出力端子はインバータU2Dを介してNチャネル電界効果型トランジスタTr2のゲートに接続されている。
【0028】
一方、セット用絶縁トランスTL1の2次巻線M2の一端は、抵抗R3を介して電源電位Vcc2に接続されると共に、コンパレータU4Aの反転入力端子に接続され、セット用絶縁トランスTL1の2次巻線M2の他端は、抵抗R2を介して接地されると共に、コンパレータU4Aの非反転入力端子に接続される。
また、リセット用絶縁トランスTL2の2次巻線M4の一端は、抵抗R5を介して電源電位Vcc2に接続されると共に、コンパレータU4Bの非反転入力端子に接続され、リセット用絶縁トランスTL2の2次巻線M4の他端は、抵抗R4を介して接地されると共に、コンパレータU4Bの反転入力端子に接続される。
【0029】
コンパレータU4Aの出力端子はフリップフロップU5Aのクロック端子CLKに接続され、コンパレータU4Bの出力端子はフリップフロップU5Aのリセット端子CLRに接続されている。また、フリップフロップU5Aの入力端子Dは電源電位Vcc2に接続されるとともに、フリップフロップU5Aの非反転出力端子Qは抵抗R6を介して接地されている。なお、抵抗R6は後段の負荷を表すもので、実際の回路では省略してよい。
【0030】
そして、信号源Gにて生成された入力信号S1(図9(a))が変換回路KU0に入力されると、抵抗R1およびコンデンサC1からなる遅延回路にて遅延させられ、入力信号S1と、この入力信号S1を遅延させた信号とが排他的論理和回路U1Aに入力される。そして、排他的論理和回路U1Aにてこれらの信号の排他論理和がとられることにより、入力信号S1の論理値“0”から論理値“1”への立ち上がりエッジまたは論理値“1”から論理値“0”への立ち下がりエッジに同期したエッジ信号S3が抽出される(図9(b))。そして、このエッジ信号S3は否定論理積回路U3A、U3Bに入力されるとともに、否定論理積回路U3Aには入力信号S1が入力され、否定論理積回路U3BにはインバータU2Bを介して入力信号S1が入力される。
【0031】
そして、時刻t01、t03において、否定論理積回路U3Aにてエッジ信号S3と入力信号S1との否定論理積がとられ、さらにインバータU2Cにより反転されることにより、立ち上がりエッジパルスS4が生成されるとともに(図9(c))、時刻t02、t04において、論理積回路U3Bにてエッジ信号S3と入力信号S1の反転信号との否定論理積がとられ、さらにインバータU2Dにより反転されることにより、立ち下がりエッジパルスS5が生成される(図9(d))。
【0032】
そして、否定論理積回路U3AおよびインバータU2Cにて生成された立ち上がりエッジパルスS4はNチャネル電界効果型トランジスタTr1のゲートに入力されるとともに、否定論理積回路U3BおよびインバータU2Dにて生成された立ち下がりエッジパルスS5はNチャネル電界効果型トランジスタTr2のゲートに入力され、入力信号S1の立ち上がりと立ち下がりとでは、セット用絶縁トランスTL1の1次巻線M1およびリセット用絶縁トランスTL2の1次巻線M3に流れるパルス電流のタイミングが互いに異なるような動作を行うことができる。
【0033】
そして、立ち上がりエッジパルスS4がNチャネル電界効果型トランジスタTr1のゲートに入力されると、Nチャネル電界効果型トランジスタTr1がオンし、セット用絶縁トランスTL1の1次巻線M1が励磁される。また、立ち下がりエッジパルスS5がNチャネル電界効果型トランジスタTr2のゲートに入力されると、Nチャネル電界効果型トランジスタTr2がオンし、リセット用絶縁トランスTL2の1次巻線M3が励磁される。
【0034】
そして、セット用絶縁トランスTL1の1次巻線M1が励磁されると、セット用絶縁トランスTL1の2次巻線M2に起電力が発生し、セット用絶縁トランスTL1の2次巻線M2に発生した起電力は、コンパレータU4Aに導かれる。また、リセット用絶縁トランスTL2の1次巻線M3が励磁されると、リセット用絶縁トランスTL2の2次巻線M4に起電力が発生し、リセット用絶縁トランスTL2の2次巻線M4に発生した起電力は、コンパレータU4Bに導かれる。
【0035】
そして、入力信号S1の立ち上がりエッジでは、セット用絶縁トランスTL1の2次巻線M2の端子電圧のレベルの変化に伴って、コンパレータU4AからパルスS14が送出され(図9(e))、入力信号S1の立ち下がりエッジでは、リセット用絶縁トランスTL2の2次巻線M4の端子電圧のレベルの変化に伴って、コンパレータU4BからパルスS15が送出される(図9(f))。そして、これらのパルスS14、S15がフリップフロップU5Aに入力されると、コンパレータU4AからのパルスS14にてフリップフロップU5Aがセットされるとともに、コンパレータU4BからのパルスS15にてフリップフロップU5Aがリセットされ、送信側の入力信号S1が復元された出力信号S16がフリップフロップU5Aの非反転出力端子Qから出力される(図9(g))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特開2008−17653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
ところで、上述の昇降圧コンバータに適用される、昇降圧コンバータ用インテリジェントモジュールは、例えば図10の実装状態を示す断面図のように構成されている。
図10において、放熱の役割を行う銅ベース71上には、絶縁用セラミックス基板72を介して、IGBTチップ73aおよびFWD(フライホイールダイオード)チップ73bが実装されている。そして、IGBTチップ73aおよびFWDチップ73bは、ボンディングワイヤ74a〜74cを介して互いに接続されるとともに、主回路電流の取り出しを行う主端子77、78に接続されている。また、IGBTチップ73aおよびFWDチップ73b上には、IGBTのゲート駆動および監視を行う回路基板75が配置され、IGBTチップ73a、FWDチップ73bおよび回路基板75はモールド樹脂76にて封止されている。ここで、IGBTチップ73aおよびFWDチップ73bは、負荷へ流入する電流を通電および遮断するスイッチング素子を構成することができ、上アーム用および下アーム用として動作するようにスイッチング素子を直列に接続することができる。また、回路基板75には、スイッチング素子の導通および非導通を指示する制御信号を生成する制御回路を設けることができる。
【0038】
そして、主回路電流は、主端子77、78のみならず、主端子77、78とIGBTチップ73aおよびFWDチップ73bを接続するボンディングワイヤ74a〜74cにも流れるが、ボンディングワイヤ74a〜74cは回路基板75の直近に配置されるので、ボンディングワイヤ74a〜74cを流れる主回路電流で生成される磁界による影響が問題となる。この主回路電流は、通常動作では最高でも250A程度であるが、例えば発進時あるいは、空転後の負荷等では、900A以上流れる場合が有る。
このような大電流を伴うスイッチングによる磁界変化に起因するノイズが図8に示す信号伝送回路TUの各部の信号に重畳されると、結果的に昇降圧コンバータの誤動作を引き起こすという問題がある。
【0039】
図11は、主回路電流の変化によって誘導されたノイズが、入力信号S1に重畳された伝送信号波形を示す図である。
図11において、下アーム側のIGBT1105が導通してIGBT1105に流れる電流Icが0Aから600Aに変化している間に、この電流Icの変化の時間微分に相当する電圧波形がノイズ(グリッチノイズ)として信号伝送回路TUの入力信号S1に重畳しているのが判る(領域AR1)。なお、図中のVceはIGBT1105のコレクタ・エミッタ間電圧である。
【0040】
図11は、入力信号S1にノイズが重畳された場合を表したものであるが、信号伝送回路の各部の信号にも同様にノイズが重畳される。信号伝送回路TUでは、特に、セット用絶縁トランスTL1及びリセット用絶縁トランスTL2の出力信号に基づいて入力信号S1を復元しているため、ノイズによる入力信号S1の復元精度の低下を抑制するためにも、セット用絶縁トランスTL1及びリセット用絶縁トランスTL2の出力信号からノイズ等による影響を除去することが望まれている。
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題点に着目してなされたものであり、外部からの磁界変化によるノイズの影響を低減しつつ絶縁状態で信号授受を行なうことの可能な、信号伝送回路及び電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0041】
上記目的を達成するために、請求項1記載の信号伝送回路は、トランス手段を有し、時間幅が規定された方形波の開始エッジにより前記トランス手段の1次巻線のコイル電流の通電を開始または停止させ、前記方形波の終了エッジにより前記トランス手段の1次巻線のコイル電流の通電を停止または開始させることにより、前記トランスの2次巻線側に、前記方形波の開始エッジにより誘起される第1のパルスと前記方形波の終了エッジにより誘起される第2のパルスを得て、前記第1のパルスと前記第2のパルスの時間間隔が所定の時間範囲にあるときに、前記第1のパルスと前記第2のパルスとから前記方形波相当の波形を復元することを特徴としている。
【0042】
また、請求項2記載の信号伝送回路は、第1および第2のトランス手段と、入力信号の開始及び終了のエッジに同期して時間幅が規定された第1および第2の方形波を生成するとともに、該第1および第2の方形波をそれぞれ前記第1および第2のトランス手段の1次巻線側に入力するエッジ検出信号生成手段を有し、前記第1および第2のトランス手段の2次巻線側に生成されたパルス信号に基づきそれぞれの1次巻線側に入力された前記第1および第2の方形波相当の波形を復元しこれらに基づき前記入力信号を復元するようにした信号伝送回路であって、前記第1および第2のトランス手段のそれぞれにおいて、前記方形波の開始エッジにより前記トランス手段の1次巻線のコイル電流の通電を開始または停止させ、前記方形波の終了エッジにより前記トランス手段の1次巻線のコイル電流の通電を停止または開始させることにより、前記トランスの2次巻線側に、前記方形波の開始エッジにより誘起される第1のパルスと前記方形波の終了エッジにより誘起される第2のパルスを得て、前記第1のパルスと前記第2のパルスの時間間隔が所定の時間範囲にあるときに、前記第1のパルスと前記第2のパルスとから前記方形波相当の波形を復元することを特徴としている。
【0043】
また、請求項3記載の信号伝送回路は、前記トランス手段の、前記1次巻線の両端間に接続された、前記1次巻線の蓄積エネルギー消費用の第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子に一端が接続された、1次巻線励磁用の第2のスイッチング素子と、を備え、前記第1のスイッチング素子は、前記方形波の開始エッジの検出タイミングで非導通状態または導通状態、前記方形波の終了エッジの検出タイミングで導通状態または非導通状態に制御され、前記第2のスイッチング素子は、前記方形波の開始エッジの検出タイミングで導通状態または非道通状態、前記方形波の終了エッジの検出タイミングで非導通状態または導通状態に制御されることを特徴としている。
【0044】
さらに、請求項4に係る信号伝送回路は、前記第1のスイッチング素子はPまたはNチャネル電界効果型トランジスタであり、前記第2のスイッチング素子はドレイン側が前記PまたはNチャネル電界効果型トランジスタに接続されたNまたはPチャネル電界効果型トランジスタであって、前記方形波が前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子のゲートに入力されることを特徴としている。
【0045】
さらにまた、請求項5に係る信号伝送回路は、前記2次巻線の出力電圧をそれぞれの基準電圧と比較して前記第1および第2のパルス信号を抽出する第1および第2のコンパレータと、前記第1のパルス信号をトリガーとして第1および第2の時間をそれぞれ計時する第1および第2のタイマーを備え、前記第1のタイマーが前記第1の時間の計時を完了してから前記第2のタイマーが前記第2の時間の計時を完了するまでの期間に前記第2のパルス信号が抽出されたときに、前記方形波相当の波形を復元することを特徴としている。
【0046】
また、本発明の請求項6に係る電力変換装置は、負荷へ流入する電流を通電及び遮断するスイッチング素子と、前記スイッチング素子の導通及び非導通を指示する制御信号を生成する制御回路と、前記制御信号に基づいて前記スイッチング素子の制御端子を駆動する駆動回路と、前記制御回路で生成した前記制御信号を前記駆動回路に伝送する信号伝送部と、を備え、前記請求項1から請求項5の何れかに記載の信号伝送回路を、前記信号伝送部として利用したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0047】
本発明に係る信号伝送回路によれば、2次巻線側に第1のパルスが生成された時点から第2のパルスが生成されるまでの時間間隔が所定の時間範囲にあるときに、前記第1のパルスと前記第2のパルスから前記方形波相当の波形を復元するため、2次巻線側にノイズ等によりパルスが生じた場合に、この誤ったパルスに基づき、前記方形波相当の波形が復元される不具合を低減することができ、ノイズ等により、方形波相当の波形の復元精度が低下することを抑制し、信号伝送の伝送精度を向上させることができる。
【0048】
特に、請求項2に係る信号伝送回路によれば、入力信号の開始及び終了のエッジに同期して時間幅が規定された第1および第2の方形波を生成し、当該第1および第2の方形波をトランス手段の1次巻線側に与え、これらの方形波に対応してそれぞれトランス手段の2次巻線側で生成される2つのパルスに基づき2次巻線側で前記方形波相当の波形を復元して入力信号の開始及び終了のエッジを復元し、最終的には入力信号を復元するものであって、トランス手段の2次巻線側で生成される2つのパルスの時間間隔により2次巻線側で方形波相当の波形を復元するか否かを決めるので、入力信号の開始及び終了のエッジの復元精度を高めることができ、これにより入力信号の復元精度を高めることができる。
また、本発明の電力変換装置によれば、制御回路で生成した制御信号を駆動回路に伝送する信号伝送部として、ノイズの影響を低減することのできる信号伝送回路を用いたため、ノイズによる電力変換装置の誤動作を低減し、信頼性のより高い電力変換装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る信号伝送回路の回路構成を示す図である。
【図2】図1の信号伝送回路の各部の信号波形を示すタイミングチャートである。
【図3】昇降圧コンバータを用いた車両駆動システムの概略構成を示すブロック図である。
【図4】図3の昇降圧コンバータの概略構成を示すブロック図である。
【図5】昇圧動作時に図4のリアクトルに流れる電流の波形を示す図である。
【図6】信号伝送回路が適用される昇降圧コンバータ用インテリジェントパワーモジュール及びその周辺回路を含めた概略構成を示すブロック図である。
【図7】図7(a)は、空芯型絶縁トランスの概略構成の一例を示す断面図、図7(b)は、空芯型絶縁トランスの概略構成の一例を示す平面図である。
【図8】従来の信号伝送回路の回路構成を示す図である。
【図9】図8の信号伝送回路の各部の信号波形を示す図である。
【図10】昇降圧コンバータ用インテリジェントパワーモジュールの実装状態を示す断面図である。
【図11】主回路電流の変化によって誘導されたノイズが重畳された信号伝送波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
この実施の形態は、本発明の一実施形態に係る信号伝送回路TUを、昇降圧コンバータ用のインテリジェントモジュール(IPM:Inteligent Power Module)に適用したものであって、図1は、その概略構成を示すブロック図である。また、図2は、信号伝送回路TUの各部の信号波形を示す図である。
【0051】
信号伝送回路TUは、信号伝送回路TUに入力される入力信号S100の立ち上がりエッジ(開始エッジ)及び立ち下がりエッジ(終了エッジ)を検出する信号変換部(エッジ検出信号生成手段)1、入力信号S100の立ち上がりエッジに応じたパルス電流を伝送するセット用絶縁トランスTL11、入力信号S100の立ち下がりエッジに応じたパルス電流を伝送するリセット用絶縁トランスTL12、セット用絶縁トランスTL11及びリセット用絶縁トランスTL12により伝送された信号を復元する信号復元部2と、を備えている。
【0052】
信号変換部1において、抵抗R11の一端はコンデンサC11を介して接地されるとともに、波形成型用のバッファ12を介して排他的論理和回路13の一方の入力端子に接続される。抵抗R11の他端は、例えばPWM信号等の入力信号S100が入力される信号伝送回路TUの入力端に接続されている。また、抵抗R11とコンデンサC11とで、入力信号S100を予め設定した規定時間だけ遅延させる積分回路を構成している。これにより、後述の信号S102およびS103は、時間幅が上記規定時間で規定された方形波の信号となるのである。
【0053】
排他的論理和回路13の他方の入力端子は、前記入力信号S100の入力端に直接接続され、排他的論理和回路13の出力端子は、論理積回路15Aの一方の入力端子に接続されると共に論理積回路15Bの一方の入力端子に接続される。論理積回路15Aの他方の入力端子は、入力信号S100の入力端に接続され、論理積回路15Bの他方の入力端子は、インバータ14を介して入力信号S100の入力端に接続される。
【0054】
前記セット用絶縁トランスTL11及びリセット用絶縁トランスTL12は、例えば空芯型絶縁トランスで構成され、セット用絶縁トランスTL11には1次巻線M11及び2次巻線M12が設けられ、リセット用絶縁トランスTL12には1次巻線M13及び2次巻線M14が設けられている。
そして、セット用絶縁トランスTL11の1次巻線M11の一端は、電源電位Vcc1に接続されると共に、1次巻線M11に蓄積されたエネルギーを強制的に消滅させるためのPチャネル電界効果型トランジスタTr11のソースに接続される。1次巻線M11の他端は、Pチャネル電界効果型トランジスタTr11のドレインに接続されると共に、1次巻線M11に励磁電流を供給するためのNチャネル電界効果型トランジスタTr12のドレインに接続される。このNチャネル電界効果型トランジスタTr12のソースは接地されている。
【0055】
同様に、リセット用絶縁トランスTL12の1次巻線M13の一端は、電源電位Vcc1に接続されると共に、1次巻線M13に蓄積されたエネルギーを強制的に消滅させるためのPチャネル電界効果型トランジスタTr13のソースに接続される。このセット用絶縁トランスTL12の1次巻線M13の他端は、Pチャネル電界効果型トランジスタTr13のドレインに接続されると共に、1次巻線M13に励磁電流を供給するためのNチャネル電界効果型トランジスタTr14のドレインに接続される。このNチャネル電界効果型トランジスタTr14のソースは接地されている。
そして、Pチャネル電界効果型トランジスタTr11及びNチャネル電界効果型トランジスタTr12のゲートには論理積回路15Aの出力端子が接続され、Pチャネル電界効果型トランジスタTr13及びNチャネル電界効果型トランジスタTr14のゲートには論理積回路15Bの出力端子が接続される。
【0056】
一方、セット用絶縁トランスTL11の2次巻線M12の一端は、信号復元部2に接続され、他端は、コンデンサC12を介して低電位側の基準電位(接地電位もしくは別に設けた電位)に接続されると共に、直列に接続された抵抗R12及びR13の接続点に接続される。また、リセット用絶縁トランスTL12の2次巻線M14の一端は、信号復元部2に接続され、他端は、前記コンデンサC12を介して低電位側の基準電位に接続されると共に、前記抵抗R12及びR13の接続点に接続される。この直列に接続された抵抗R12及びR13は、抵抗R12側の端部が電源電位Vcc2に接続され、抵抗R13側の端部が低電位側の基準電位に接続されている。
【0057】
このため、抵抗R12及びR13間の電圧を基準電圧Vth1としたとき、2次巻線M12の、信号復元部2と接続される側の端部は、基準電圧Vth1を基準として正値、負値をとるセット用電圧信号S104を発生することになる。同様に、2次巻線M14の、信号復元部2と接続される側の端部は、基準電圧Vth1を基準として正値及び負値をとるリセット用電圧信号S105を発生することになる。
【0058】
信号復元部2は、セット用絶縁トランスTL11からのセット用電圧信号S104に生じた負の振幅パルスを検出するための負パルス検出用コンパレータ21及び正の振幅パルスを検出するための正パルス検出用コンパレータ22と、リセット用絶縁トランスTL12からのリセット用電圧信号S105に生じた負の振幅パルスを検出するための負パルス検出用コンパレータ23及び正の振幅パルスを検出するための正パルス検出用コンパレータ24と、時間間隔計測ユニット25及び26と、D型のフリップフロップ27と、を備える。
そして、セット用絶縁トランスTL11の2次巻線M12の一端は、負パルス検出用コンパレータ21の反転入力端子に接続されると共に正パルス検出用コンパレータ22の非反転入力端子に接続される。
【0059】
また、負パルス検出用コンパレータ21の非反転入力端子は、コンデンサC13を介して低電位側の基準電位に接続されると共に、直列に接続された抵抗R15及びR16の接続点に接続され、当該接続点の電位である基準電圧Vth2が印加される。正パルス検出用コンパレータ22の反転入力端子は、コンデンサC14を介して低電位側の基準電位に接続されると共に、直列に接続された抵抗R14及びR15の接続点に接続され、当該接続点の電位である基準電圧Vth3が印加される。前記抵抗R14、R15、R16は直列に接続され、抵抗R14側の端部は電源電位Vcc2に接続され、抵抗R16側の端部は低電位側の基準電位に接続される。なお、抵抗R15及びR16間の電圧である基準電圧Vth2は、前記基準電圧Vth1よりも低い値に設定される。また、抵抗R14及びR15間の電圧である基準電圧Vth3は、前記基準電圧Vth1よりも高い値に設定される。つまり、負パルス検出用コンパレータ21は、セット用電圧信号S104が基準電圧Vth2よりも小さいときにHIGHレベルとなるパルス信号を出力する。一方、正パルス検出用コンパレータ22は、セット用電圧信号S104が基準電圧V3よりも大きいときにHIGHレベルとなるパルス信号を出力する。
【0060】
そして、負パルス検出用コンパレータ21及び正パルス検出用コンパレータ22の出力端子は、時間間隔計測ユニット25に接続される。
時間間隔計測ユニット25は、負パルス検出用コンパレータ21の出力S106が立ち上がった時点から正パルス検出用コンパレータ22の出力S107が立ち上がった時点までのパルス時間間隔を計測する。そして、計測したパルス時間間隔が、予め設定した許容時間範囲内の値をとるときには、セット用電圧信号S104に生じた振幅パルスは、ノイズではなく信号変換部1側から伝送された正規の振幅パルスであると判断し、パルス信号からなるセット信号S110を出力する。一方、計測したパルス時間間隔が、前記許容時間範囲内の値をとらないときには、セット用電圧信号S104に生じた振幅パルスは、ノイズであると判断し、セット信号S110を出力しない。
【0061】
時間間隔計測ユニット25は、具体的には、図示しない定電流を積分する積分回路で構成され、負パルス検出用コンパレータ21の出力S106が立ち上がった時点で積分回路における定電流の積分を開始し、正パルス検出用コンパレータ22の出力S107が立ち上がった時点で積分回路における定電流の積分を停止する。負パルス検出用コンパレータ21の出力S106が立ち上がったことに伴い積分回路での積分が開始された後、正パルス検出用コンパレータ22の出力S107が立ち上がらない場合であっても、積分回路の積分電圧が予め設定した上限値に達したときには積分を停止する。
【0062】
そして、正パルス検出用コンパレータ22の出力S107が立ち上がった時点における積分電圧が、予め設定した許容電圧範囲(Vth4以上Vth5以下)の値をとるとき、セット用電圧信号S104に生じた正又は負の振幅パルスは正規の振幅パルスであると判断し、セット信号S110を出力する。積分電圧が許容電圧範囲外の値をとるときには、セット用電圧信号S104に生じた正又は負の振幅パルスは正規の振幅パルスではないと判断し、セット信号S110を出力しない。
【0063】
前記許容電圧範囲は、抵抗R11及びコンデンサC11からなる積分回路で入力信号S100を規定時間だけ遅延させて入力信号S100の遅延信号を生成する際の前記規定時間、および前記規定時間とパルス時間間隔の差に関する許容時間に応じて設定される。すなわち“規定時間±許容時間”の許容時間範囲相当の電圧となるように、許容電圧範囲、すなわち上記Vth4とVth5の値が設定される。これにより、パルス時間間隔と規定時間との差が許容時間内であるときには、セット用電圧信号S104に生じた振幅パルスは正規の振幅パルスであると判断し、パルス時間間隔と規定時間との差が許容時間内ではないときには、セット用電圧信号S104に生じた振幅パルスは正規の振幅パルスではなく、ノイズ等によるものと判断する。
【0064】
前記許容時間は、例えば、ノイズがのらない状態において、負パルス検出用コンパレータ21の出力S106が立ち上がったタイミングと正パルス検出用コンパレータ22の出力S107が立ち上がったタイミングとの時間間隔と、前記入力信号S100を遅延させる際の規定時間との差のばらつき等に基づき設定される。つまり、許容電圧範囲は、ノイズがのらない状態において、パルス時間間隔がとり得る最大値及び最小値の範囲相当に設定され、すなわち、パルス時間間隔から、セット用電圧信号S104に生じた振幅パルスが、ノイズではなく正規の振幅パルスであるとみなすことの可能な値に設定される。
【0065】
一方、リセット用絶縁トランスTL12の2次巻線M14の一端は、負パルス検出用コンパレータ23の反転入力端子に接続されると共に正パルス検出用コンパレータ24の非反転入力端子に接続される。
また、負パルス検出用コンパレータ23の非反転入力端子は、コンデンサC13を介して低電位側の基準電位に接続されると共に、直列に接続された抵抗R15及びR16の接続点に接続され、当該接続点の電位である基準電圧Vth2が印加される。正パルス検出用コンパレータ24の反転入力端子は、コンデンサC14を介して低電位側の基準電位に接続されると共に、直列に接続された抵抗R14及びR15の接続点に接続され、当該接続点の電位である基準電圧Vth3が印加される。
【0066】
そして、負パルス検出用コンパレータ23及び正パルス検出用コンパレータ24の出力端子は、時間間隔計測ユニット26に接続される。
時間間隔計測ユニット26は、負パルス検出用コンパレータ23の出力S108が立ち上がった時点から正パルス検出用コンパレータ24の出力S109が立ち上がった時点までのパルス時間間隔を計測する。そして、計測したパルス時間間隔が、予め設定した許容時間範囲内の値をとるときには、リセット用電圧信号S105に生じた振幅パルスは、ノイズではなく信号変換部1側から伝送された正規の振幅パルスであると判断し、パルス信号からなるリセット信号S111を出力する。一方、計測したパルス時間間隔が、前記許容時間範囲内の値をとらないときには、リセット用電圧信号S105に生じた振幅パルスは、ノイズであると判断し、リセット信号S111を出力しない。
【0067】
時間間隔計測ユニット26は、具体的には、図示しない定電流を積分する積分回路で構成され、負パルス検出用コンパレータ23の出力S108が立ち上がった時点で積分回路における定電流の積分を開始し、正パルス検出用コンパレータ24の出力S109が立ち上がった時点で積分回路における定電流の積分を停止する。負パルス検出用コンパレータ23の出力S108が立ち上がったことに伴い積分回路での積分が開始された後、正パルス検出用コンパレータ24の出力S109が立ち上がらない場合であっても、積分回路の積分電圧が予め設定した上限値に達したときには積分を停止する。
【0068】
そして、正パルス検出用コンパレータ24の出力S109が立ち上がった時点における積分電圧が、予め設定した許容電圧範囲(Vth4以上Vth5以下)の値をとるとき、リセット用電圧信号S105に生じた正又は負の振幅パルスは正規の振幅パルスであると判断し、リセット信号S111を出力する。積分電圧が許容電圧範囲外の値をとるときには、リセット用電圧信号S105に生じた正又は負の振幅パルスは正規の振幅パルスではないと判断し、リセット信号S111を出力しない。
【0069】
前記許容電圧範囲は、抵抗R11及びコンデンサC11からなる積分回路で入力信号S100を規定時間だけ遅延させて入力信号S100の遅延信号を生成する際の前記規定時間、および前記規定時間とパルス時間間隔の差に関する許容時間とに応じて設定される。すなわち“規定時間±許容時間”の許容時間範囲相当の電圧となるように、許容電圧範囲、すなわち上記Vth4とVth5の値が設定される。これにより、パルス時間間隔と規定時間との差が許容時間内であるときには、リセット用電圧信号S105に生じた振幅パルスは正規の振幅パルスであると判断し、パルス時間間隔と規定時間との差が許容時間内ではないときには、リセット用電圧信号S105に生じた振幅パルスは正規の振幅パルスではなく、ノイズ等によるものと判断する。
【0070】
前記許容時間は、例えば、ノイズがのらない状態において、負パルス検出用コンパレータ23の出力S108が立ち上がったタイミングと正パルス検出用コンパレータ24の出力S109が立ち上がったタイミングとの時間間隔と、前記入力信号S100を遅延させる際の規定時間との差のばらつき等に基づき設定される。つまり、許容電圧範囲は、ノイズがのらない状態において、パルス時間間隔がとり得る最大値及び最小値の範囲相当に設定され、すなわち、パルス時間間隔から、リセット用電圧信号S105に生じた振幅パルスが、ノイズではなく正規の振幅パルスであるとみなすことの可能な値に設定される。
【0071】
そして、時間間隔計測ユニット25の出力端子は、フリップフロップ27のクロック端子CLKに接続され、前記時間間隔計測ユニット26の出力端子は、フリップフロップ27のリセット端子CLRに接続される。また、フリップフロップ27の入力端子Dは抵抗R17を介して電源電位Vcc2に接続される。そして、フリップフロップ27の非反転出力端子Qが信号復元部2の出力端に接続され、この非反転出力端子Qの出力が、信号復元部2で復元された復元信号S112として出力される。
【0072】
そして、入力信号S100(図2(a))が信号変換部1に入力されると、この入力信号S100は、抵抗R11及びコンデンサC11からなる遅延回路にて遅延させられ、バッファ12で波形成型された後、入力信号S100を遅延させ波形成型した信号と入力信号S100とが排他的論理和回路13に入力される。そして、排他的論理和回路13にてこれら信号の排他的論理和がとられ、排他的論理和回路13の出力信号S101と入力信号S100との論理積が論理積回路15Aでとられることにより、入力信号S100の論理値“0”から論理値“1”への立ち上がりエッジに同期したエッジ信号S102(図2(b))が抽出される。
【0073】
同様に、排他的論理和回路13の出力信号S101と入力信号S100の反転信号との論理積が論理積回路15Bでとられることにより、入力信号S100の論理値“1”から論理値“0”への立ち下がりエッジに同期したエッジ信号S103が抽出される(図2(c))。
前述のように、抵抗R11とコンデンサC11とで入力信号S100を予め設定した規定時間だけ遅延させる積分回路を構成していて、エッジ信号S102およびS103の時間幅は、当該遅延回路による遅延時間に等しい。すなわち、エッジ信号S102およびS103は、時間幅が上記規定時間で規定された方形波の信号となる。また、上記規定時間は、インテリジェントモジュール(IPM)に発生するノイズの時間幅とは異なるよう設定される。
【0074】
エッジ信号S102は、セット用絶縁トランスTL11側の、Pチャネル電界効果型トランジスタTr11及びNチャネル電界効果型トランジスタTr12のゲート端子にそれぞれ入力されるため、セット用絶縁トランスTL11の1次巻線M11を励磁するためのセット用絶縁トランス励磁パルスとして動作することになる。
このため、時刻t11において、入力信号S100の立ち上がりエッジに同期してエッジ信号S102が立ち上がると(図2(b))、Pチャネル電界効果型トランジスタTr11は非導通状態、Nチャネル電界効果型トランジスタTr12は導通状態となる。これにより、電源電位Vcc1、1次巻線M11、Nチャネル電界効果型トランジスタTr12、接地という経路で励磁電流が流れ(図2(f))、これに伴いNチャネル電界効果型トランジスタTr12のドレイン電流も増加し(図2(d))、1次巻線M11の励磁電流及びNチャネル電界効果型トランジスタTr12のドレイン電流は、1次巻線M11の直流抵抗値と電源電位Vcc1とにより定まる電流値(Vcc1/抵抗値)相当の一定電流に保持される。
【0075】
ここで、1次巻線M11のインダクタンスをL11とすると、1次巻線M11の励磁電流の増加率は、Vcc1(電源電位)/L11となる。電源電位Vcc1及び1次巻線M11のインダクタンスL11は、1次巻線M11に流れる励磁電流を急速に増加し得る値であって、この励磁電流の増加に伴い、2次巻線M12から得られる電圧信号に負のパルスを発生させることが可能な値に設定される。1次巻線M11のインダクタンスL11は比較的小さいため、Nチャネル電界効果型トランジスタTr12を導通させると、1次巻線M11に流れる励磁電流は急速に増大し、1次巻線M11の直流抵抗により定まる“Vcc1/直流抵抗値”相当の一定電流で飽和することになる(図2(f))。
【0076】
そして、時刻t12で、エッジ信号S102が立ち下がると、Pチャネル電界効果型トランジスタTr11は導通状態、Nチャネル電界効果型トランジスタTr12は非導通状態となるため、電源電位Vcc1、1次巻線M11、Pチャネル電界効果型トランジスタTr11、電源電位Vcc1の経路で電流が流れ、1次巻線M11に蓄積されていたエネルギーが、1次巻線M11の直流抵抗とPチャネル電界効果型トランジスタTr11のオン抵抗とで消費され、励磁電流が急速に減少する(図2(f))。
【0077】
ここで、この回路の時定数は、L11/総抵抗値となる。なお、L11は、1次巻線M11のインダクタンス、総抵抗値は、1次巻線M11の直流抵抗とPチャネル電界効果型トランジスタTr11のオン抵抗との和である。
前記1次巻線M11、1次巻線M11の直流抵抗及びPチャネル電界効果型トランジスタTr11のオン抵抗は、1次巻線M11に流れる励磁電流を急速に減少し得る値であって、この励磁電流の減少に伴い、2次巻線M12から得られる電圧信号に正のパルスを発生させることが可能な値に設定される。1次巻線M11のインダクタンスL11は比較的小さいため、回路の時定数も小さくなり、Pチャネル電界効果型トランジスタTr11を導通させると励磁電流は速やかに減衰し、これに伴って、Pチャネル電界効果型トランジスタTr11のドレイン電流は、急速に増加した後、1次巻線M11に蓄積されていたエネルギーの消費に伴い急速に減少する(図2(e))。
【0078】
また、Nチャネル電界効果型トランジスタTr12のドレイン電流は、Nチャネル電界効果型トランジスタTr12を非導通とさせることにより減少する(図2(d))。
このような構成とすることにより、図2(f)に示すように、セット用絶縁トランスTL11の1次巻線M11を励磁するためのパルス信号となるエッジ信号S102が、時刻t11でLOWレベルからHIGHレベルに立ち上がるときに、大きな“+di/dt”を発生すると共に、時刻t12でHIGHレベルからLOWレベルに切り替わるときに、大きな“−di/dt”となる励磁電流を1次巻線M11に発生させることが可能となる。
【0079】
このように、セット用絶縁トランスTL11の1次巻線M11に大きな“+di/dt”、“−di/dt”が発生することにより、2次巻線M12には、M21*di/dt(M21は1次巻線及び2次巻線の相互インダクタンス)なる電圧が発生され、これにより“+di/dt”が発生したときには負値、“−di/dt”が発生したときには正値となる振幅のパルスがセット用電圧信号S104に発生することになる。
【0080】
コンパレータ21の反転入力端子には、セット用電圧信号S104が入力され、非反転入力端子には基準電圧Vth1よりも低い基準電圧Vth2が入力されるため、コンパレータ21の出力S106は、セット用電圧信号S104が基準電圧Vth2を下回る間、HIGHレベルとなる(図2(h))。また、コンパレータ22の反転入力端子には、基準電圧Vth1よりも高い基準電圧Vth3が入力され、非反転入力端子にはセット用電圧信号S104が入力されることから、コンパレータ22の出力S107は、セット用電圧信号S104が基準電圧Vth3を上回る間、HIGHレベルとなる(図2(i))。つまり、コンパレータ21の出力S106に、入力信号S100の立ち上がりエッジ(つまりエッジ信号S102の立ち上がりエッジ)に同期した振幅パルスが発生し、コンパレータ22の出力S107に、入力信号S100の遅延信号の立ち上がりエッジ(つまりエッジ信号S102の立ち下がりエッジ)に同期した振幅パルスが発生することになる。
【0081】
時間間隔計測ユニット25では、コンパレータ21の出力S106の立ち上がりで、前述の積分回路での積分を開始してこれに基づき時間計測を開始し、コンパレータ22の出力S107の立ち上がりで積分回路での積分を終了する。積分回路では、定電流を積分しているため積分電圧は、時間の経過に比例して増加する(図2(j))。
積分終了時の積分電圧が、予め設定した許容時間相当の許容電圧範囲(Vth4以上Vth5以下)にあるとき、セット用電圧信号S104に生じた振幅パルスは、信号変換部1から伝送された入力信号S100に応じた正規のパルスであると判断し、セット信号S110が出力される(図2(k))。
【0082】
そして、フリップフロップ27では、時刻t13でセット信号S110が立ち上がると、この変化がフリップフロップ27のクロック端子CLKに伝えられることで、フリップフロップ27が入力端子Dに与えられている入力信号のレベル(電源電位Vcc2)を読み取ってその出力信号S112がLOWレベルからHIGHレベルに変化する(図2(t))。
【0083】
なお、時刻t11から時刻t13では、エッジ信号S103は、LOWレベルのままであるので、この間、リセット用絶縁トランスTL12は動作しない。
そして、時刻t14において、入力信号S100の立ち下がりエッジに同期してエッジ信号S103が立ち上がると(図2(c))、エッジ信号S103は、リセット用絶縁トランスTL12側の、Pチャネル電界効果型トランジスタTr13及びNチャネル電界効果型トランジスタTr14のゲート端子にそれぞれ入力されるため、リセット用絶縁トランスTL12の1次巻線M13を励磁するためのリセット用絶縁トランス励磁パルスとして動作することになる。
【0084】
このため、リセット用絶縁トランスTL12側のPチャネル電界効果型トランジスタTr13は非導通状態、Nチャネル電界効果型トランジスタTr14は導通状態となるため、電源電位Vcc1、1次巻線M13、Nチャネル電界効果型トランジスタTr14、接地という経路で急速に励磁電流が流れ(図2(n))、これに伴いNチャネル電界効果型トランジスタTr14のドレイン電流も増加し(図2(l))、1次巻線M13の励磁電流及びNチャネル電界効果型トランジスタTr14のドレイン電流は、1次巻線M13の直流抵抗値と電源電位Vcc1とにより定まる電流値(Vcc1/抵抗値)相当の一定電流に保持される。
【0085】
ここで、1次巻線M13のインダクタンスをL13とすると、1次巻線M13の励磁電流の増加率は、Vcc1/L13となる。電源電位Vcc1及び1次巻線M13のインダクタンスL13は、1次巻線M13に流れる励磁電流を急速に減少し得る値であって、この励磁電流の減少に伴い、2次巻線M14から得られる電圧信号に正の振幅パルスを発生させることが可能な値に設定されている。1次巻線M13のインダクタンスL13は比較的小さいため、Nチャネル電界効果型トランジスタTr14を導通させると、Nチャネル電界効果型トランジスタTr14のドレイン電流は急速に増大し、1次巻線M11の直流抵抗により定まる“Vcc1/直流抵抗値”相当の一定電流で飽和することになる。
【0086】
そして、時刻t15で、エッジ信号S103が立ち下がると、Pチャネル電界効果型トランジスタTr13は導通状態、Nチャネル電界効果型トランジスタTr14は非導通状態となるため、電源電位Vcc1、1次巻線M13、Pチャネル電界効果型トランジスタTr13、電源電位Vcc1の経路で電流が流れ、1次巻線M13に蓄積されていたエネルギーが、1次巻線M13の直流抵抗とPチャネル電界効果型トランジスタTr13のオン抵抗とで消費され、励磁電流が急速に減少する(図2(n))。
【0087】
ここで、この回路の時定数は、L13/総抵抗値となる。なお、L13は1次巻線M13のインダクタンス、総抵抗値は、1次巻線M13の直流抵抗とPチャネル電界効果型トランジスタTr13のオン抵抗との和である。
前記1次巻線M13、1次巻線M13の直流抵抗及びPチャネル電界効果型トランジスタTr13のオン抵抗は、1次巻線M13に流れる励磁電流を急速に減少し得る値であって、この励磁電流の減少に伴い、2次巻線M14から得られる電圧信号に正のパルスを発生させることが可能な値に設定されている。1次巻線M13のインダクタンスL13は比較的小さいため、回路の時定数も小さくなり、Pチャネル電界効果型トランジスタTr13を導通させると励磁電流は速やかに減衰し、これに伴って、Pチャネル電界効果型トランジスタTr13のドレイン電流は、急速に増加した後、1次巻線M13に蓄積されていたエネルギーの消費に伴い急速に減少する(図2(m))。
【0088】
また、Nチャネル電界効果型トランジスタTr14のドレイン電流は、Nチャネル電界効果型トランジスタTr14を非導通とさせることにより減少する(図2(l))。
このような構成とすることにより、図2(n)に示すように、リセット用絶縁トランスTL12の1次巻線M13を励磁するための励磁パルスとなるエッジ信号S103が、時刻t14でLOWレベルからHIGHレベルに立ち上がるときに、大きな“+di/dt”を発生すると共に、時刻t15でHIGHレベルからLOWレベルに切り替わるときに、大きな“−di/dt”となる励磁電流を発生させることが可能となる。
【0089】
このように、リセット用絶縁トランスTL12の1次巻線M13に大きな“+di/dt”、“−di/dt”が発生することにより、2次巻線M14には、M21′*di/dt(M21′は1次巻線及び2次巻線の相互インダクタンス)なる電圧が発生され、これにより“+di/dt”が発生したときには負値、“−di/dt”が発生したときには正値となる振幅のパルスがリセット用電圧信号S105に発生することになる。
【0090】
コンパレータ23の反転入力端子にはリセット用電圧信号S105が入力され、非反転入力端子には、基準電圧Vth1よりも低い基準電圧Vth2が入力されるため、コンパレータ23の出力S108は、リセット用電圧信号S105が基準電圧Vth2を下回る間、HIGHレベルとなる(図2(p))。また、コンパレータ24の反転入力端子には、基準電圧Vth1よりも高い基準電圧Vth3が入力され、非反転入力端子にはリセット用電圧信号S105が入力されることから、コンパレータ24の出力S109は、リセット用電圧信号S105が基準電圧Vth3を上回る間、HIGHレベルとなる(図2(q))。つまり、コンパレータ23からは入力信号S100の立ち下がりエッジに同期したパルス信号が出力され、コンパレータ24からは入力信号S100の遅延信号の立ち下がりエッジに同期したパルス信号が出力されることになる。
【0091】
時間間隔計測ユニット26では、コンパレータ23の出力S108の立ち上がりで、前述の積分回路での積分を開始してこれに基づき時間計測を開始し、コンパレータ24の出力S109の立ち上がりで積分回路での積分を終了する。積分回路では、定電流を積分しているため積分電圧は、時間の経過に比例して増加する(図2(r))。
積分終了時の積分電圧が、予め設定した許容時間相当の許容電圧範囲(Vth4以上Vth5以下)にあるとき、リセット用電圧信号S105に生じた振幅パルスは正規の振幅パルスであるとして、リセット信号S111が出力される(図2(s))。
【0092】
そして、フリップフロップ27では、時刻t16でリセット信号S111が立ち上がると、この変化がフリップフロップ27のリセット端子CLRに伝えられることから、フリップフロップ27がリセットされてその出力信号S112がHIGHレベルからLOWレベルに変化する(図2(t))。
なお、時刻t14からt16では、セット用電圧信号S104は、LOWレベルのままであるため、セット用絶縁トランスTL11側は動作しない。
以上の動作により、図2(a)に示す入力信号S100が、セット用絶縁トランスTL11、リセット用絶縁トランスTL12を介して伝達され、図2(t)に示すように、フリップフロップ27の出力信号S112として復元されることになる。
【0093】
ここで、図10に示すように実装された昇降圧コンバータ用インテリジェントモジュールにおいて、ワイヤボンディング線を流れる主回路電流により生成される磁界による影響を受け、磁界変化に起因するノイズがセット用絶縁トランスTL11のセット用電圧信号S104に混入し、実際には、入力信号S100が立ち上がっていないにも関わらず、セット用電圧信号S104に負の振幅パルス及び正の振幅パルスがこの順に生じた場合、コンパレータ21の出力S106は、セット用電圧信号S104が基準電圧Vth2を下回る間HIGHレベルとなるパルス信号となり、コンパレータ22の出力S107は、セット用電圧信号S104が基準電圧Vth3を上回る間HIGHレベルとなるパルス信号を出力する。
【0094】
このため、時間間隔計測ユニット25では、コンパレータ21の出力S106が立ち上がった時点で積分回路での積分を開始し、コンパレータ22の出力S107が立ち上がった時点で積分回路での積分を終了する。
ここで、時間間隔計測ユニット25では、パルス時間間隔の許容範囲として、ノイズがのらない状態において、パルス時間間隔がとり得る最大値及び最小値の範囲相当に設定されている。
【0095】
このため、コンパレータ21の出力S106及びコンパレータ22の出力S107に生じたパルスが、セット用電圧信号S104にノイズに起因した振幅パルスが発生したため生じたものであると、コンパレータ21及び22の出力S106及びS107に生じたパルスのパルス時間間隔が、入力信号S100の遅延信号を生成する際の規定時間よりも長い状態、或いは短い状態となり、時間間隔計測ユニット25における積分電圧が、許容電圧範囲内に収まらないことから、セット用電圧信号S104に生じた振幅パルスは、正規の振幅パルスであると判断されない。このため、時間間隔計測ユニット25ではセット信号S110を出力しない。したがって、ノイズに起因して誤った振幅パルスが発生したセット用電圧信号S104に基づいて、入力信号S100の復元が行なわれることを回避することができる。
【0096】
また、セット用電圧信号S104に、ノイズにより正の振幅パルスが生じた後に負の振幅パルスが発生した場合には、コンパレータ22の出力S107が立ち上がった後、コンパレータ21の出力S106が立ち上がることになり、コンパレータ21の出力S106が立ち上がった時点で積分回路が起動し積分が開始される。しかしながら、その後コンパレータ22の出力S107が立ち上がらないため、積分回路の積分値が上限値に達した時点で時間間隔計測ユニット25では積分を停止し、積分値が許容電圧範囲外となるため、正規のパルスではないとしてセット信号S110を出力しない。
【0097】
また、セット用電圧信号S104に、ノイズにより正の振幅パルスのみが生じた場合には、まず、コンパレータ22の出力S107が立ち上がるが、このとき積分回路が作動していなければ、積分値は零のままとなるため、セット信号S110は出力されない。
このように、コンパレータ21の出力S106及びコンパレータ22の出力S107に生じたパルスのパルス時間間隔を計測することにより、セット用電圧信号S104にノイズが混入したことに起因して、入力信号S100が立ち上がったとして誤判断されることを低減することができる。
【0098】
同様に、ワイヤボンディング線を流れる主回路電流により生成される磁界による影響を受け、磁界変化に起因するノイズがリセット用絶縁トランスTL12のリセット用電圧信号S105に混入し、実際には、入力信号S100が立ち下がっていないにも関わらず負の振幅パルス及び正の振幅パルスがこの順に生じた場合、コンパレータ23の出力S108は、リセット用電圧信号S105が基準電圧Vth2を下回る間HIGHレベルとなり、コンパレータ24の出力S109は、リセット用電圧信号S105が基準電圧Vth3を上回る間HIGHレベルとなる。
【0099】
このため、時間間隔計測ユニット26では、コンパレータ23の出力S108が立ち上がった時点で積分回路での積分を開始し、コンパレータ24の出力S109が立ち上がった時点で積分回路での積分を終了する。
ここで、時間間隔計測ユニット26では、パルス時間間隔の許容範囲として、ノイズがのらない状態において、パルス時間間隔がとり得る最大値及び最小値の範囲相当に設定される。
【0100】
このため、コンパレータ23の出力S108及びコンパレータ24の出力S109に生じたパルスが、リセット用電圧信号S105にノイズに起因した振幅パルスが発生したため生じたものであると、コンパレータ23及び24の出力S108及びS109に生じたパルスのパルス時間間隔が、入力信号S100の遅延信号を生成する際の規定時間よりも長い状態、或いは短い状態となり、時間間隔計測ユニット26における積分電圧が、許容電圧範囲内に収まらないことから、リセット用電圧信号S105に生じた振幅パルスは、正規の振幅パルスであると判断されない。このため、時間間隔計測ユニット26ではリセット信号S111を出力しない。したがって、ノイズに起因して誤った振幅パルスが発生したリセット用電圧信号S105に基づいて、入力信号S100の復元が行なわれることを回避することができる。
【0101】
このように、コンパレータ21、22の出力S106、S107の立ち上がりのパルス時間間隔が、規定時間相当であるかどうか、同様に、コンパレータ23、24の出力S108、S109の立ち上がりのパルス時間間隔が、規定時間相当であるかどうかを判断することにより、セット用電圧信号S104或いはS105に生じた振幅パルスが信号変換部1側から伝送された正規の振幅パルスであるか否かを判断し、パルス時間間隔が規定時間相当でないときには、ノイズにより生じた振幅パルスであると判断し、パルス時間間隔が規定時間相当であるときにのみ、セット用電圧信号S104或いはリセット用電圧信号S105に生じた振幅パルスは、ノイズではなく正規の振幅パルスであると判断するようにしたため、ノイズによる振幅パルスであるのか、正規の振幅パルスであるのかを的確に判別することができる。
【0102】
そして、このように、セット用絶縁トランスTL11からのセット用電圧信号S104及びリセット用絶縁トランスTL12からのリセット用電圧信号S105にノイズが生じた場合であっても正規の振幅パルスであるか否かを的確に判別することができるため、フリップフロップ27では、入力信号S100の立ち上がり、及び入力信号S100の立ち下がりに同期した信号を的確に復元することができ、信頼性の高い復元信号S112を得ることができる。
【0103】
したがって、昇降圧インバータ用インテリジェントパワーモジュールを、図10に示すように、主端子77、78とIGBTチップ73aおよびFWDチップ73bを接続するボンディングワイヤ74a〜74cと、IGBTのゲート駆動および監視を行う回路基板75とが接近した配置とした場合であっても、ボンディングワイヤ74a〜74cを流れる主回路電流で生成される磁界によるノイズの影響を低減することができ、より信頼性の高い昇降圧インバータ用インテリジェントパワーモジュールを実現することができる。
【0104】
特に、入力信号S100の復元に用いる2次巻線側の出力信号S104及びS105に重畳された振幅パルスをノイズによるものであるか正規のものであるかを的確に判別することができるため、効果的である。
また、セット用絶縁トランスTL11の2次巻線M12の電圧信号に、入力信号S100の立ち上がりに同期した振幅パルスとこれよりも規定時間だけ遅延した振幅パルスとを発生させる方法として、エッジ信号S102の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジとを利用したため、2次巻線M12側に入力信号S100よりも規定時間だけ遅延した振幅パルスを発生させるために、新たな制御信号を生成することなく、実現することができる。
【0105】
さらに、エッジ信号S102を、入力信号S100と、この入力信号S100を規定時間だけ遅延させた信号とから生成しており、エッジ信号S102のパルス幅は常に規定時間相当の一定幅であるため、このエッジ信号S102の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジに同期したパルス信号を2次巻線M12側に発生させることにより、2次巻線M12側に、入力信号S100に同期した振幅パルスと、これよりも規定時間だけ遅延した振幅パルスとを容易に発生させることができる。
【0106】
同様に、リセット用絶縁トランスTL12側の場合も、2次巻線M14の電圧信号に、入力信号S100の立ち下がりに同期した振幅パルスと、これよりも規定時間だけ遅延した振幅パルスとを発生させる方法として、エッジ信号S103の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジとを利用したため、2次巻線M14側に入力信号S100よりも規定時間だけ遅延した振幅パルスを発生させるための新たな制御信号を生成することなく実現することができる。
【0107】
また、入力信号S100と、この入力信号S100を規定時間だけ遅延させた信号とから生成したエッジ信号S103を用いて、このエッジ信号S103の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジに同期した振幅パルスを2次巻線M14側に発生させているため、2次巻線M14側に、入力信号S100に同期した振幅パルスと、これよりも規定時間だけ遅延した振幅パルスとを容易に発生させることができる。
【0108】
なお、上記実施の形態においては、本発明による信号伝送回路TUを、車両機器用の電力変換装置に適用した場合について説明したが、これに限るものではなく、絶縁トランスを用いて信号伝送を行なうようにした電力変換装置であれば適用することができる。
また、空芯型のトランスに適用した場合について説明したが、鉄心を有するトランスであっても適用することができる。
【0109】
また、上記実施の形態においては、2次巻線M12側に入力信号S100の立ち上がりエッジに同期した振幅パルス及びこれよりも規定時間だけ遅延した振幅パルスを発生させる際に、エッジ信号S102の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを用い、1つの制御信号から2つの振幅パルスを発生させる構成としているが、これに限るものではない。
例えば、入力信号S100の立ち上がりエッジに同期した第1のパルスと、入力信号S100の立ち上がりエッジよりも規定時間だけ遅延した第2のパルスとを生成し、これらのパルスを1次巻線M11側に入力し、2次巻線M12側に発生した、第1のパルスに相当する振幅パルスと、第2のパルスに相当する振幅パルスとの時間間隔が規定時間相当であるかを判定することにより、第1のパルスに相当する振幅パルスを正規の振幅パルスであるか否かを判定する構成としてもよい。
【0110】
また、上記実施の形態においては、2次巻線M12側に入力信号S100の立ち上がりエッジに同期した振幅パルス及びこれよりも規定時間だけ遅延した振幅パルスを発生させることでノイズによる振幅パルスであるか否かを判定する構成としたが、2次巻線M12側に入力信号S100の立ち上がりエッジに同期した振幅パルスとこの振幅パルスよりも規定時間だけ遅延した2以上の振幅パルスとを発生させる構成とし、2次巻線M12側に入力信号S100の立ち上がりエッジに同期した振幅パルスと、他の複数の振幅パルスとの時間間隔に基づいて、ノイズであるか否かを判定する構成としてもよい。
【0111】
また、上記実施の形態においては、ノイズによるものと判別されたときには、セット信号S110或いはリセット信号S111を出力しない構成としているが、これに限るものではない。
例えば、ノイズであるか否かに関わらず、セット信号S110及びリセット信号S111に基づいて入力信号S100の復元を行う構成とし、さらに、ノイズであると判別されたときのセット信号S110或いはリセット信号S111であるか否かに応じて、この復元信号を有効な信号として取り扱うかどうかを判断する等、ノイズと判断されたか否かに応じて復元信号の取り扱い内容を変更するようにしてもよい。
【0112】
また、上記の説明において、最初に入力信号S100の立ち上がりエッジを検出し、次に立ち下がりエッジを検出することにより、入力信号S100のHIGHレベル信号を検出する実施形態について説明したが、逆に、最初に入力信号S100の立ち下がりエッジを検出し、次に立ち上がりエッジを検出することにより、入力信号S100のLOWレベル信号を検出するようにしてもよい。
この場合においても、本発明が適用できることは明らかである。例えば、図1において、入力信号S100が入力される信号変換部1の入力端と抵抗R11の間にインバータを設け、復元信号S11をフリップフロップ27の反転出力端子Qバーから出力するようにすればよい。
【0113】
また、上記の説明において、最初にエッジ信号S102,103の立ち上がりエッジを検出し、次に立ち下がりエッジを検出することにより、エッジ信号S102,103のHIGHレベル信号を検出する実施形態について説明したが、逆に最初にエッジ信号S102,103立ち下がりエッジを検出し、次に立ち上がりエッジを検出することにより、エッジ信号S102,103のLOWレベル信号を検出するようにしてもよい。
この場合においても、本発明が適用できることは明らかである。例えば、図1において、論理積回路15A、15Bの後段にそれぞれインバータを設けるとともに、コンパレータ21,22と時間間隔計測ユニット25との接続関係を逆にし、かつ/もしくは、コンパレータ23,24と時間間隔計測ユニット26との接続関係を逆にすればよい。
【0114】
また、上記の説明において、絶縁トランスTL11,TL12の2次巻線M12,M14には、1次巻線M11,M13に“+di/dt”が発生したときには負値となる振幅のパルス(第1のパルス)、“−di/dt”が発生したときには正値となる振幅のパルス(第2のパルス)が発生する実施形態について説明したが、一次巻線と2次巻線のいずれか一方の巻き方向を変えるとこの関係を逆転させることができる。すなわち、1次巻線M11,M13に“+di/dt”が発生したときには正値となる振幅のパルス(第1のパルス)、“−di/dt”が発生したときには負値となる振幅のパルス(第2のパルス)が発生する。これらの場合においても、本発明が適用できることは明らかである。例えば、図1において、コンパレータ21,22と時間間隔計測ユニット25との接続関係を逆にし、かつ/もしくは、コンパレータ23,24と時間間隔計測ユニット26との接続関係を逆にすればよい。
【0115】
また、上記は、図1に示す電源電位Vcc1が正電位の場合の説明であるが、電源電位Vcc1は負電位であってもよい。この場合においても、本発明が適用できることは明らかである。例えば、セット用絶縁トランスTL11側のTr11をNチャネル電界効果型トランジスタ、Tr12をPチャネル電界効果型トランジスタとし、リセット用絶縁トランスTL12側のTr13をNチャネル電界効果型トランジスタ、Tr14をPチャネル電界効果型トランジスタとすればよい。
【0116】
ここで、上記実施の形態において、セット用絶縁トランスTL11及びリセット用絶縁トランスTL12が請求項1のトランス手段に対応し、信号変換部1がエッジ検出信号生成手段に対応している。
また、セット用絶縁トランスTL11が請求項2の第1のトランス手段に対応し、リセット用絶縁トランスTL12が請求項2の第2のトランス手段に対応している。
【0117】
また、Pチャネル電界効果型トランジスタTr11、Tr13が第1のスイッチング素子に対応し、Nチャネル電界効果型トランジスタTr12、Tr14が第2のスイッチング素子に対応している。
また、IGBT1105、1106が負荷へ流入する電流を通電及び遮断するスイッチング素子に対応し、CPU1111aが制御回路に対応し、保護機能付きゲートドライバIC1115U、1115Dが駆動回路に対応し、信号伝送部1117が信号伝送部に対応している。
【0118】
信号に関しては、エッジ信号S102、S103が方形波に対応する。
また、HIGHレベル信号を検出する場合の入力信号S100の立ち上がりエッジもしくはLOWレベル信号を検出する場合の入力信号S100の立ち下がりエッジが入力信号の開始エッジに対応し、HIGHレベル信号を検出する場合の入力信号S100の立ち下がりエッジもしくはLOWレベル信号を検出する場合の入力信号S100の立ち上がりエッジが入力信号の終了エッジに対応している。
【0119】
また、HIGHレベル信号を検出する場合のエッジ信号S102,103の立ち上がりエッジもしくはLOWレベル信号を検出する場合のエッジ信号S102,103の立ち下がりエッジが方形波の開始エッジに対応し、HIGHレベル信号を検出する場合のエッジ信号S102,103の立ち下がりエッジもしくはLOWレベル信号を検出する場合のエッジ信号S102,103の立ち上がりエッジが方形波の終了エッジに対応している。
【符号の説明】
【0120】
1 信号変換部
2 信号復元部
12 バッファ
13 排他的論理和回路
14 インバータ
15A、15B 論理積回路
21、23 負パルス検出用コンパレータ
22、24 正パルス検出用コンパレータ
25、26 時間間隔計測ユニット
27 フリップフロップ
1101 電源
1102 昇降圧コンバータ
1103 インバータ
1104 電動機
1105、1106 IGBT
1111 制御回路
1111a CPU
1115U、1115D 保護機能付きゲートドライバIC
1117 信号伝送部
CU、CD アナログ−PWM変換器
C、C11〜C14 コンデンサ
D1、D2 フライホイールダイオード
DD2、DU2 ダイオード
L リアクトル
M11、M12、M13、M14 巻線
R11〜R17 抵抗
RD1、RD2、RU1、RU2 抵抗
S100 入力信号
S102、S103 エッジ信号
S104 セット用電圧信号
S105 リセット用電圧信号
S106 コンパレータ21の出力
S107 コンパレータ22の出力
S108 コンパレータ23の出力
S109 コンパレータ24の出力
S110 セット信号
S111 リセット信号
S112 復元信号
SW1、SW2 スイッチング素子
TL11 セット用絶縁トランス
TL12 リセット用絶縁トランス
Tr11、Tr13 Pチャネル電界効果型トランジスタ
Tr12、Tr14 Nチャネル電界効果型トランジスタ
TU 信号伝送回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランス手段を有し、
時間幅が規定された方形波の開始エッジにより前記トランス手段の1次巻線のコイル電流の通電を開始または停止させ、前記方形波の終了エッジにより前記トランス手段の1次巻線のコイル電流の通電を停止または開始させることにより、前記トランスの2次巻線側に、前記方形波の開始エッジにより誘起される第1のパルスと前記方形波の終了エッジにより誘起される第2のパルスを得て、
前記第1のパルスと前記第2のパルスの時間間隔が所定の時間範囲にあるときに、前記第1のパルスと前記第2のパルスとから前記方形波相当の波形を復元することを特徴とする信号伝送回路。
【請求項2】
第1および第2のトランス手段と、
入力信号の開始及び終了のエッジに同期して時間幅が規定された第1および第2の方形波を生成するとともに、該第1および第2の方形波をそれぞれ前記第1および第2のトランス手段の1次巻線側に入力するエッジ検出信号生成手段を有し、
前記第1および第2のトランス手段の2次巻線側に生成されたパルス信号に基づきそれぞれの1次巻線側に入力された前記第1および第2の方形波相当の波形を復元しこれらに基づき前記入力信号を復元するようにした信号伝送回路であって、
前記第1および第2のトランス手段のそれぞれにおいて、
前記方形波の開始エッジにより前記トランス手段の1次巻線のコイル電流の通電を開始または停止させ、前記方形波の終了エッジにより前記トランス手段の1次巻線のコイル電流の通電を停止または開始させることにより、前記トランスの2次巻線側に、前記方形波の開始エッジにより誘起される第1のパルスと前記方形波の終了エッジにより誘起される第2のパルスを得て、
前記第1のパルスと前記第2のパルスの時間間隔が所定の時間範囲にあるときに、前記第1のパルスと前記第2のパルスとから前記方形波相当の波形を復元することを特徴とする信号伝送回路。
【請求項3】
前記トランス手段の、前記1次巻線の両端間に接続された、前記1次巻線の蓄積エネルギー消費用の第1のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子に一端が接続された、1次巻線励磁用の第2のスイッチング素子と、を備え、
前記第1のスイッチング素子は、前記方形波の開始エッジの検出タイミングで非導通状態または導通状態、前記方形波の終了エッジの検出タイミングで導通状態または非導通状態に制御され、
前記第2のスイッチング素子は、前記方形波の開始エッジの検出タイミングで導通状態または非道通状態、前記方形波の終了エッジの検出タイミングで非導通状態または導通状態に制御されることを特徴とする請求項1または2に記載の信号伝送回路。
【請求項4】
前記第1のスイッチング素子はPまたはNチャネル電界効果型トランジスタであり、前記第2のスイッチング素子はドレイン側が前記PまたはNチャネル電界効果型トランジスタに接続されたNまたはPチャネル電界効果型トランジスタであって、
前記方形波が前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子のゲートに入力されることを特徴とする請求項3記載の信号伝送回路。
【請求項5】
前記2次巻線の出力電圧をそれぞれの基準電圧と比較して前記第1および第2のパルス信号を抽出する第1および第2のコンパレータと、前記第1のパルス信号をトリガーとして第1および第2の時間をそれぞれ計時する第1および第2のタイマーを備え、
前記第1のタイマーが前記第1の時間の計時を完了してから前記第2のタイマーが前記第2の時間の計時を完了するまでの期間に前記第2のパルス信号が抽出されたときに、前記方形波相当の波形を復元することを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の信号伝送回路。
【請求項6】
負荷へ流入する電流を通電及び遮断するスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の導通及び非導通を指示する制御信号を生成する制御回路と、
前記制御信号に基づいて前記スイッチング素子の制御端子を駆動する駆動回路と、
前記制御回路で生成した前記制御信号を前記駆動回路に伝送する信号伝送部と、を備え、
前記請求項1から請求項5の何れかに記載の信号伝送回路を、前記信号伝送部として利用したことを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−206754(P2010−206754A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53131(P2009−53131)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】