説明

信号伝送装置

【課題】複数の系統の受信機C1、C2、D1、D2を有し、同一の信号が分配された複数の信号の各々を各系統の受信機により受信して、これら複数の系統の受信信号の中から1つの系統の受信信号を選択するように切り替える信号伝送装置で、選択系の機器の異常が発生したようなときにおいても、選択系から予備系への切り替えをシームレスに行う。
【解決手段】クロック情報受信手段12が当該信号伝送装置以外の機器51から送信されるクロックに関する情報を受信し、クロック信号生成手段12、13が受信された情報に基づいてクロック信号b4、b5を生成し、切替手段21が生成されたクロック信号を用いて複数の系統の受信信号の中から1つの系統の受信信号を選択するように切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、受信された複数の系統の信号のうちで1つの系統(選択系)の信号を出力するように切り替える信号伝送装置に関し、特に、選択系の機器の異常が発生したようなときにおいても、選択系から予備系への切り替えをシームレスに行う信号伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地上デジタルテレビジョン放送のシステムでは、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式などにより、デジタル放送信号を伝送することが行われる。
【0003】
このようなシステムでは、放送局(演奏所)或いは他の送信所から或る送信所へ送られるデジタル放送信号を伝送する信号伝送装置(例えば、デジタルデータの送受信装置)が設けられる。
このような信号伝送装置の受信装置では、デジタル放送信号を予備の目的で設けられた2系統以上の受信機(例えば、受信変換器や復調器)により受信して、系切替装置(例えば、切替器)により各系統の受信機からの出力信号のうちで1つの系統を選択する構成が検討等されている。
【0004】
図2には、デジタルデータ送受信装置の構成例を示してある。
なお、説明の便宜上から、後述する実施例で参照する図1に示されるものと同様な処理部や信号については、図2では同一の符号を付してあり、ここでは詳しい説明を省略するが、本発明を不要に限定する意図は無い。
【0005】
図2に示されるデジタルデータ送受信装置における動作を説明する。
放送局(演奏所)では、伝送信号源1からの信号を分配器2により分配して、複数(本例では、2つ)の系統の送信機(本例では、変調器A1、A2や送信変換器B1、B2)により送信する。伝送信号源1は、GPS(Global Positioning System)51に同期したRb(ルビジウム)発振器3からの基準信号a1を受けて、信号を発生する。
【0006】
送信所では、放送局(演奏所)からの複数の系統の信号を複数(本例では、2つ)の系統の受信機(本例では、受信変換器C1、C2や復調器D11、D12)により受信する。各復調器D11、D12から切替部21へ復調結果の信号としてデータストリーム(TS)b1、b2とクロック信号(CLK)b11、b12が出力される。切替部21は、制御部23により制御されて、複数の系統のうちで選択された1つの系統(選択系)の復調器からの信号(本例では、データストリーム及びクロック信号)を出力するように切り替えを行う。選択されなかった系統は、予備の系統(予備系)となる。
【0007】
【特許文献1】特開2001−189657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図2に示されるようなデジタルデータ送受信装置では、例えば、選択系の機器の異常が発生して、クロック信号の同期が外れたような場合には、それが原因で、切替部21の内部にあるデータ保持メモリ31のデータ読み出し位置が変動してしまう。この結果、切替器11からの出力信号に遅延変動が発生してしまう場合や、異常が発生した選択系から正常な予備系への切り替えをシームレスに行うことができない場合が生じて、後段の装置(本例では、放送装置41や中継装置42)の動作が破綻して、放送事故につながるようなことが考えられた。
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、例えば、複数の系統を用いて信号を伝送し、受信された複数の系統の信号のうちで1つの系統(選択系)の信号を出力するように切り替える構成において、選択系の機器の異常が発生したようなときにおいても、選択系から予備系への切り替えをシームレスに行うことができる信号伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明では、複数の系統の受信機を有し、同一の信号が分配された複数の信号の各々を各系統の受信機により受信して、これら複数の系統の受信信号の中から1つの系統の受信信号を選択するように切り替える信号伝送装置において、次のような構成とした。
すなわち、クロック情報受信手段が、当該信号伝送装置以外の機器から送信されるクロックに関する情報を受信する。クロック信号生成手段が、前記クロック情報受信手段により受信された情報に基づいて、クロック信号を生成する。切替手段が、前記クロック信号生成手段により生成されたクロック信号を用いて、前記複数の系統の受信信号の中から1つの系統の受信信号を選択するように切り替える。
【0011】
従って、例えば、複数の系統を用いて信号を伝送し、受信された複数の系統の信号のうちで1つの系統(選択系)の信号を出力するように切り替える構成において、選択系の機器の異常が発生したようなときにおいても、選択系から予備系への切り替えをシームレスに行うことができる。
【0012】
ここで、複数の系統の数としては、2つ以上の種々な数が用いられてもよい。
また、受信機としては、例えば、受信変換器(例えば、周波数変換器)や復調器を用いて構成することができる。
また、複数の系統の受信信号の中から1つの系統の受信信号を選択する場合における受信信号としては、例えば、受信信号そのものが用いられてもよく、或いは、受信信号に含まれるデータ(例えば、データストリーム)のように、受信信号の一部が用いられてもよい。
【0013】
また、信号伝送装置以外の機器としては、種々な機器が用いられてもよく、例えば、GPSの機器(例えば、GPS衛星)などを用いることができる。
また、クロックに関する情報としては、種々な情報が用いられてもよく、例えば、クロック信号を生成するための基準となるような情報が用いられ、具体例として、信号の送信側との間でクロックの同期(例えば、周波数の同期)を確保するために用いることができるような情報が用いられる。
また、クロック信号は、例えば、受信信号に含まれるデータ(例えば、データストリーム)をメモリに保持してから読み出すような場合に、データの読み出し位置(例えば、読み出しのタイミング)を決めるために用いられる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る信号伝送装置によると、例えば、複数の系統を用いて信号を伝送し、受信された複数の系統の信号のうちで1つの系統(選択系)の信号を出力するように切り替える構成において、選択系の機器の異常が発生したようなときにおいても、選択系から予備系への切り替えをシームレスに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施例に係る地上デジタルテレビジョン放送システムのデジタルデータ送受信装置の構成例を示してある。
本例では、放送局(演奏所)から送信所へ伝送するデジタル放送信号を、予備の目的で設けられた複数(本例では、2つ)の系統の信号に分配して伝送する。
【0016】
放送局(演奏所)には、Rb(ルビジウム)発振器3と、伝送信号源1と、分配器2と、2つの系統のそれぞれ毎に設けられる変調器A1、A2及び送信変換器B1、B2が備えられている。
送信所には、2つの系統のそれぞれ毎に設けられる受信変換器C1、C2及び復調器D1、D2と、Rb発振器12と、クロック変換器13と、切替器11が備えられている。また、放送装置41と、中継装置42が備えられている。
切替器11には、データ保持メモリ31を有する切替部21と、分配部22と、制御部23が備えられている。
また、本例では、放送局(演奏所)や送信所において、GPS51を利用する。
【0017】
本例の装置において行われる動作の一例を示す。
放送局(演奏所)において行われる動作について説明する。
Rb発振器3は、GPS51(例えば、GPS衛星)から無線により送信された信号を受信して、当該受信信号に同期した(GPS51のクロックに同期した)基準信号a1を伝送信号源1へ出力する。
伝送信号源1は、Rb発振器3からの基準信号a1を受信して、当該受信信号(本例では、その周波数)に基づいて、信号(本例では、演奏所等で製作された放送プログラムの信号)を発生して分配器2へ出力する。
【0018】
分配器2は、伝送信号源1から入力された信号を複数の系統の送信機(本例では、変調器A1、A2や送信変換器B1、B2)と同数の信号(本例では、2つの信号)に分配して、分配した各信号(伝送信号)a2、a3を各系統の変調器A1、A2へ出力する。
各系統の変調器A1、A2は、分配器2から入力された伝送信号a2、a3を変調して、当該変調結果の信号を各系統の送信変換器B1、B2へ出力する。
各系統の送信変換器B1、B2は、各系統の変調器A1、A2から入力された信号を周波数変換(アップコンバート)して、当該周波数変換後の信号を送信所に設けられた各系統の受信機(本例では、受信変換器C1、C2や復調器D1、D2)に対して送信する。なお、放送局(演奏所)から送信所への伝送(通信)は、有線で行われてもよく、或いは、無線で行われてもよい。
【0019】
送信所において行われる動作について説明する。
各系統の受信変換器C1、C2は、放送局(演奏所)に設けられた各系統の送信変換器B1、B2から送信された信号を受信して、当該受信信号を周波数変換(ダウンコンバート)して、当該周波数変換後の信号を各系統の復調器D1、D2へ出力する。
各系統の復調器D1、D2は、各系統の受信変換器C1、C2から入力された信号を復調して、当該復調結果の信号としてデータストリーム(TS)b1、b2を切替部21へ出力する。
【0020】
Rb発振器12は、GPS51(例えば、GPS衛星)から無線により送信された信号を受信して、当該受信信号に同期した(GPS51のクロックに同期した)基準信号b3をクロック変換器13へ出力する。
クロック変換器13は、Rb発振器12から入力された基準信号b3(本例では、その周波数)に基づいて、当該基準信号b3をレート変換して得られたクロック信号(CLK)b4、b5を各系統のクロック信号として切替部21へ出力する。
【0021】
切替部21は、各系統について復調器D1、D2からのデータストリーム(TS)b1、b2及びクロック変換器13からのクロック信号(CLK)b4、b5を入力し、そして、制御部23により制御されて、複数の系統のうちで選択された1つの系統(選択系)の信号(本例では、データストリーム及びクロック信号)を分配部22へ出力するように切り替えを行う。選択されなかった系統は、予備の系統(予備系)となる。
【0022】
ここで、本例では、切替部21はその内部にデータ保持メモリ31を有しており、例えば、入力された各系統のデータストリームb1、b2のデータをデータ保持メモリ31に一時的に保持してから読み出して分配部22へ出力する。この場合に、入力されるクロック信号b4、b5に同期したタイミングで、データ保持メモリ31のデータ読み出し位置が決定される。
【0023】
制御部23は、各系統の状態(例えば、機器の状態)を監視して、選択系に異常があることを検出した場合には、切替部21を制御して、切替部21から分配部22へ出力される信号の系統を、現在の選択系から予備系へ切り替える。また、他の構成例として、外部制御装置を設けて、外部制御装置から制御部23へ制御信号c3を出力して制御部23に対する指示を行うことなどにより、切替器11に対する制御や監視を行うことも可能である。
【0024】
分配部22は、切替部21から入力された選択系の信号を複数(本例では、2つ)に分配して、分配した各信号(伝送信号)c1、c2を各装置(本例では、放送装置41及び中継装置42)へ出力する。
放送装置41は、分配部22から入力された信号c1を放送する。
中継装置42は、分配部22から入力された信号c2を他の装置(例えば、他の放送装置や、他の送信所など)に対して中継する。
【0025】
以上のように、本例では、2系統以上に分配して伝送された同一の受信信号を系統別の復調器D1、D2により復調して、これにより得られた複数の系統のデータストリームb1、b2の中から1つの系統のものを選択する切替部21を備えたデジタルデータの受信装置(本例では、送信所の装置)において、当該受信装置以外の機器や伝送路(本例では、GPS51)からの情報により得られたクロック(本例では、当該受信装置により受信するデータストリームのデータビットレートの情報が含まれているもの)を当該受信装置における切替部21の動作クロックとして使用する。
【0026】
このように、本例では、切替部21で使用するクロック信号として、復調器から出力されるクロック信号ではなく、GPS51からの情報に基づいて受信側(本例では、送信所)におけるRb発振器12で得られた基準信号b3をクロックレート変換した信号b4、b5を使用する。
また、本例では、送信側(本例では、放送局(演奏所))で使用される周波数の元となるシステム(本例では、GPS51)と同一のシステムを元として受信側(本例では、送信所)で使用される周波数が生成されている。
【0027】
従って、本例では、例えば、伝送系(選択系)に異常が発生して、受信装置における復調器D1、D2からの出力信号が乱れるような場合においても、切替器11により異常な選択系から正常な予備系へシームレスに切り替えることができ、この結果、後段の放送装置41や中継装置42の動作を破綻させずに放送事故を防止することができる。このように、本例では、複数の系統の受信機からの出力信号のうちで、1つの系統の信号を採用するようにシームレスに切り替えることができる。
【0028】
ここで、本例では、複数の系統として、2つの系統を用いた場合を示したが、他の構成例として、3つ以上の系統が用いられてもよい。
また、本例では、周波数の基準として、GPS51のシステムを用いた場合を示したが、他の構成例として、周波数の安定度が高い任意のシステムが用いられてもよい。
また、本例では、発振器として、Rb発振器3、12を用いた場合を示したが、他の構成例として、セシウム発振器などの任意の発振器が用いられてもよい。
また、本例では、受信側として送信所を用いた場合を示したが、他の構成例として、受信側として中継所などの任意のところが用いられてもよい。
【0029】
なお、本例のデジタルデータ送受信装置では、送信所に設けられた受信側の装置(信号伝送装置の一例)において、複数(本例では、2つ)の系統について備えられた受信変換器C1、C2及び復調器D1、D2の機能により受信機(信号受信手段)が構成されており、Rb発振器12によりGPS51からの情報を無線により受信する機能によりクロック情報受信手段が構成されており、Rb発振器12及びクロック変換器13によりクロック信号b4、b5を生成する機能によりクロック信号生成手段が構成されており、生成されたクロック信号b4、b5を用いて切替部21により複数の系統の受信信号の中から1つの系統の受信信号(本例では、データストリームb1、b2)及びそのクロック信号b4、b5を選択するように切り替える機能により切替手段が構成されている。
【0030】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例に係るデジタルデータ送受信装置の構成例を示す図である。
【図2】背景技術に係るデジタルデータ送受信装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1・・伝送信号源、 2・・分配器、 3、12・・Rb発振器、 11・・切替器、 13・・クロック変換器、 21・・切替部、 22・・分配部、 23・・制御部、 31・・データ保持メモリ、 41・・放送装置、 42・・中継装置、 51・・GPS、
A1〜A2・・変調器、 B1〜B2・・送信変換器、 C1〜C2・・受信変換器、 D1〜D2、D11〜D12・・復調器、
a1、b3・・基準信号、 a2、a3、c1、c2・・伝送信号、 b1、b2・・データストリーム、 b4、b5、b11、b12・・クロック信号、 c3・・制御信号、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の系統の受信機を有し、同一の信号が分配された複数の信号の各々を各系統の受信機により受信して、これら複数の系統の受信信号の中から1つの系統の受信信号を選択するように切り替える信号伝送装置において、
当該信号伝送装置以外の機器から送信されるクロックに関する情報を受信するクロック情報受信手段と、
前記クロック情報受信手段により受信された情報に基づいてクロック信号を生成するクロック信号生成手段と、
前記クロック信号生成手段により生成されたクロック信号を用いて、前記複数の系統の受信信号の中から1つの系統の受信信号を選択するように切り替える切替手段と、
を備えたことを特徴とする信号伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−105588(P2009−105588A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274584(P2007−274584)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】