説明

信号処理装置、信号処理装置の制御方法及び信号処理装置用制御プログラム

【課題】回転一次ピークの追従性を向上させ、変動する回転数を応答よく正確に検出することができる回転計、回転計の制御方法及び回転計用制御プログラムを提供する。
【解決手段】入力された信号を、高速フーリエ変換するFFT(Fast Fourier Transformation)演算手段(12a)と、記憶手段(16)にピークスペクトルデータが記憶されているか否かを判断する判断手段(12b)と、スペクトルデータを探索する探索手段(12d)と、スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと前記スペクトルデータの周波数の略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)を検索する検索手段(12e)と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動する測定対象の回転数を測定する信号処理装置、信号処理装置の制御方法及び信号処理装置用制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転運動する測定対象の回転数は、その測定対象にロータリーエンコーダなどの信号処理装置としての回転計を取り付けるなどして測定されている。しかし、このような回転計は、測定対象に直接取り付ける必要があるので、回転計を取り付ける治具を作製する必要があったり、取り付けた回転計の影響で測定対象の回転運動の特性を変化させてしまい、正確に測定対象の回転数を測定できなかったりなどの問題点があった。
そのため、測定対象の回転数に悪影響を与えないで計測することができる回転計が提案され、一般市場に導入されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の発明は、測定対象である回転モータの漏洩磁束を検出して、高速フーリエ変換(FFT)により漏洩磁束のスペクトル(解析データ)を求め、そのスペクトルの最大値を示す周波数を、回転モータの回転周波数と判断することにより回転数を求めている。
【0003】
このような回転計のアルゴリズムでは、例えば前の計測サイクルで得られた測定値を元に探索範囲を設定し、その範囲内における最大ピークを測定値としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008―196876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ある範囲内における最大ピークを測定値とする測定方法では測定には直接関係のない成分(回転体の回転周波数の一次ピーク成分以外の周波数成分)が突然あらわれ、この測定に直接関係がないピーク成分が回転体の回転周波数の一次ピーク成分よりも大きくなる場合があり、安定した回転速度計測が実現できなかった。
【0006】
特に、回転体の加速減速時において安定した回転速度計測が実現できなかった。
【0007】
また、従来からの探索範囲を限定する方法であっても、最大ピークを利用するアルゴリズムでは計測エラーとなってしまうことがあった。
【0008】
本発明はこのような従来技術を考慮してなされたものであって、本発明の課題は、回転1次のピークに加えて、他の次数のピークも同時に追跡することで、回転一次ピークの追従性を向上させ、変動する回転数を応答よく正確に検出することができる信号処理装置、信号処理装置の制御方法及び信号処理装置用制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を括弧内に付して説明するが、これに限定され
るものではない。
【0010】
(1)入力された信号を、高速フーリエ変換してスペクトルデータを演算するFFT(Fast Fourier Transformation)演算手段(12a)と、記憶手段(16)に前記スペクトルデータの一つであるピークスペクトルデータが記憶されているか否かを判断する判断手段(12b)と、前記判断手段(12b)によって前記記憶手段(16)に前記ピークスペクトルデータが記憶されていると判断された場合に、前記ピークスペクトルデータ付近の周波数を探索範囲に設定する探索範囲設定手段(12e)と、前記探索範囲において、前記FFT演算手段(12a)によって演算された前記スペクトルデータを探索する探索手段(12d)と、前記探索手段(12d)によって探索された前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと前記スペクトルデータの周波数の略1/n倍の周波数のスペクトルデータを検索する検索手段(12e)と、前記検索手段(12e)によって、前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータの少なくとも何れか一方が検索された場合に、前記スペクトルデータを前記ピークスペクトルデータと決定し、前記記憶手段に前記ピークスペクトルデータを記憶する演算手段(12f)と、を備えることを特徴とする信号処理装置(ここで、nは2以上の自然数)。
【0011】
(1)に係る発明によれば、上述のような構成を有することにより、前回測定されたピークスペクトルデータに基づいて、前回測定されたピークスペクトルデータ付近の周波数を探索範囲に設定し、探索されたスペクトルデータについてスペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと前記スペクトルデータの周波数の略1/n倍の周波数のスペクトルデータを検索し、スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータの少なくとも何れか一方が検索された場合に、前記スペクトルデータをピークスペクトルデータと決定する(ここで、nは2以上の自然数)。
【0012】
このようにして、(1)に係る発明によれば、記憶部16に記憶されたスペクトルデータは、主成分(回転一次成分)のみが探索されたスペクトルデータではなく、回転一次成分のピークに加えて他の次数ピークが検索されたスペクトルデータなので、回転一次成分のピークの追従性を向上させることが可能になった(ノイズによるピークを追従することがなくなった)。
【0013】
すなわち、主成分(回転一次成分)によるピークだけではなく他の次数ピークも同時に追跡することで、ノイズが除去され、加速減速時においてもより安定した回転速度計測が実現可能となった。
【0014】
(2)前記探索手段(12d)によって探索されるスペクトルデータが複数存在する場合には、前記検索手段(12e)は前記スペクトルデータの大きさが最も大きい前記スペクトルデータから前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータを検索することを特徴とする(1)に記載の信号処理装置(ここで、nは2以上の自然数)。
【0015】
(2)に係る発明によれば、探索されるスペクトルデータが複数存在する場合には、(最もピークスペクトルデータである可能性が高い)スペクトルデータの大きさが最も大きいスペクトルデータからスペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータを検索するので、回転計の回転数を素早く、短い時間で、演算量が少なくとも計測することが可能になる(ここで、nは2以上の自然数)。
【0016】
(3)前記検索手段(12e)において前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータの少なくとも何れか一方が検索された前記スペクトルデータが複数存在し、前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータの両方が検索された前記スペクトルデータが存在する場合には、前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータの両方が検索された前記スペクトルデータを前記ピークスペクトルデータと決定することを特徴とする(1)または(2)に記載の信号処理装置(ここで、nは2以上の自然数)。
【0017】
(3)に係る発明によれば、スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)の両方が検索されたスペクトルデータをピークスペクトルデータと決定するので、より確実に継続して回転計の正確な回転数を安定して計測することが可能になる。
【0018】
(4)前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)の両方が検索された前記スペクトルデータが複数存在する場合には、前記スペクトルデータの大きさが最も大きい前記スペクトルデータを前記ピークスペクトルデータと決定することを特徴とする(1)から(3)までのいずれかに記載の信号処理装置。
【0019】
(4)に係る発明によれば、スペクトルデータの周波数の略n倍と略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)の両方が検索された前記スペクトルデータが複数存在する場合には、前記スペクトルデータの大きさが最も大きい前記スペクトルデータを前記ピークスペクトルデータと決定するので、何れのスペクトルデータを回転計の回転数として決定すべきかの判断が容易であり、誤って他の異なるスペクトルデータを回転計の回転数として決定することを防ぐことが可能となる。
【0020】
また、ノイズ成分が効率よく除去されるので、より確実に継続して回転計の正確な回転数を安定して計測することが可能になる。
【0021】
(5)前記信号は、測定対象から計測された回転運動に起因する時系列の物理現象の検出結果であり、前記演算手段(12f)によって決定された前記ピークスペクトルデータの周波数は、前記測定対象の回転数であること、を特徴とする(1)から(4)までのいずれかに記載の信号処理装置。
【0022】
(5)に係る発明によれば、信号処理装置は、測定対象から計測された回転運動に起因する時系列の物理現象の検出結果を信号としているので、容易に、測定対象の回転に起因する物理現象から測定対象の回転数を求めることができる。
【0023】
(6)前記探索範囲設定手段(12c)は、前記探索範囲の上限を、前記ピークスペクトルデータの周波数のn倍よりも小さい周波数で決定し、前記探索範囲の下限を、前記ピークスペクトルデータの周波数の1/n倍よりも大きい周波数で設定すること、を特徴とする(1)から(5)までのいずれか記載の信号処理装置(ここで、nは2以上の自然数)。
【0024】
(6)に係る発明によれば、探索範囲の上限を、特定のスペクトルの周波数のn倍よりも小さい周波数として演算し、探索範囲の下限を、特定のスペクトルの周波数の1/n倍よりも大きい周波数として演算するので、特定のスペクトルの1/n次成分及びn次成分を探索範囲から除外することができ、誤って異なるスペクトルを探索するのを防止することができる(ここで、nは2以上の自然数)。
【0025】
(7)前記探索範囲設定手段(12c)は、前記探索範囲の上限を、前記ピークスペクトルデータの周波数のn(n:自然数)倍の周波数の略逆数を、前記探索範囲として設定すること、を特徴とする(1)から(5)までのいずれかに記載の信号処理装置。
【0026】
(7)に係る発明によれば、特定のスペクトルの周波数の1/2次成分や2次成分などのスペクトルを除外するだけでなく、より妥当な周波数範囲を探索範囲に設定することが可能になる。
【0027】
(8)入力された信号を、高速フーリエ変換してスペクトルデータを演算するFFT演算工程と、記憶工程における前記スペクトルデータの一つであるピークスペクトルデータが記憶されているか否かを判断する判断工程と、前記判断工程において前記記憶工程における前記ピークスペクトルデータが記憶されていると判断された場合に、前記ピークスペクトルデータ付近の周波数を探索範囲に設定する探索範囲設定工程と、前記探索範囲において、前記FFT演算工程において演算された前記スペクトルデータを探索する探索工程と、前記探索工程において探索された前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと前記スペクトルデータの周波数の略1/n倍の周波数のスペクトルデータを検索する検索工程と、前記検索工程において、前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータの少なくとも何れか一方が検索された場合に、前記スペクトルデータを前記ピークスペクトルデータと決定し、前記記憶工程において前記ピークスペクトルデータを記憶する演算工程と、を備えることを特徴とする信号処理装置の制御方法(ここで、nは2以上の自然数)。
【0028】
(8)に係る発明によれば、上述のような構成を有することにより、前回測定されたピークスペクトルデータに基づいて、前回測定されたピークスペクトルデータ付近の周波数を探索範囲に設定し、探索されたスペクトルデータについてスペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと前記スペクトルデータの周波数の略1/n倍の周波数のスペクトルデータを検索し、スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータの少なくとも何れか一方が検索された場合に、前記スペクトルデータをピークスペクトルデータと決定する(ここで、nは2以上の自然数)。
【0029】
このようにして、(8)に係る発明によれば、記憶工程において記憶されたスペクトルデータは、主成分(回転一次成分)のみが探索されたスペクトルデータではなく、回転一次成分のピークに加えて他の次数ピークが検索されたスペクトルデータなので、回転一次成分のピークの追従性を向上させることが可能になった(ノイズによるピークを追従することがなくなった)。
【0030】
すなわち、主成分(回転一次成分)によるピークだけではなく他の次数ピークも同時に追跡することで、ノイズが除去され、加速減速時においてもより安定した回転速度計測が実現可能となった。
【0031】
(9)(8)に記載の方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【0032】
このような構成によれば、当該プログラムをコンピュータに実行させることにより、(8)と同様の効果が期待できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、記憶部16に記憶されたスペクトルデータは、主成分(回転一次成分)のみが探索されたスペクトルデータではなく、回転一次成分のピークに加えて他の次数ピークが検索されたスペクトルデータなので、回転一次成分のピークの追従性を向上させることが可能になった(ノイズによるピークを追従することがなくなった)。
【0034】
すなわち、主成分(回転一次成分)によるピークだけではなく他の次数ピークも同時に追跡することで、ノイズが除去され、加速減速時においてもより安定した正確な回転速度計測が実現可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による信号処理装置の一実施例としての回転計の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る回転計で処理されるスペクトルデータの一例を示す図である。
【図3】本実施形態に係る回転計による処理手順についての説明に供するフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る回転計で処理されるスペクトルデータの他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、周波数の変動した特定のスペクトルを正確に読み取ることができる信号処理
装置及び信号処理装置の制御方法等を提供すために、変動した特定のスペクトルの周波数である回転1次のピークに加えて、他の次数のピークも同時に追跡することで、特定のスペクトルを探索する探索範囲を追従させることにより実現する。
【実施例1】
【0037】
以下、図面等を参照して、本発明の実施例をあげて、さらに詳しく説明する。
【0038】
[システム全体構成]
【0039】
図1は、本発明による信号処理装置の一実施例としての回転計の構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態に係る回転計で処理されるスペクトルデータを示す図である。図3は、本実施形態に係る回転計による処理手順についての説明に供するフローチャートである。
【0040】
回転計(信号処理装置)10は、入力部11、演算制御部12(FFT演算手段としてのFFT演算部、判断手段としての判断部、探索範囲設定手段としての探索範囲設定部、探索手段としての探索部、検索手段としての検索部、演算手段としての演算部)、表示部13、操作部(図示せず)、入力アンプ部14、フィルタ部15及び記憶部16を有しており、ガソリンエンジン30に配置された振動計20で検出した振動データ(信号)に基づいて、ガソリンエンジン30の内部に設けられた回転機構の回転数を測定する測定器である。本実施例では、振動計20から検出したガソリンエンジン30の振動データに基づいた主成分(1次成分)のスペクトルの周波数f1と、ガソリンエンジン30の回転機構の回転周波数は1:1の関係であるとして説明する。
【0041】
入力部11は、振動計20で検出した時系列の振動データを離散化して、連続的に、回転計10の演算制御部12に入力するA/D変換器である。
【0042】
演算制御部12は、FFT演算部(FFT演算手段)12a、判断部(判断手段)12b、探索範囲設定部(探索範囲設定手段)12c、探索部(探索手段)12d、検索部(検索手段)12e及び演算部(演算手段)12fを有し、回転計10の各部を統括制御する制御回路である。また、操作部によって測定時間および探索範囲を設定する(測定時間および探索範囲は数値入力することができる他に、測定時間および探索範囲のレンジを切り替えることで測定時間の範囲および探索範囲を設定することもできる)ことができる。
【0043】
FFT演算部12aは、入力部11から連続的に入力した離散化された振動データを、高速フーリエ変換(FFT)し、振動のスペクトルデータを演算する演算回路である。
【0044】
判断部(判断手段)12bは、記憶部16にスペクトルデータの一つであるピークスペクトルデータ(FFT演算部12aにおいてあるタイミングでFFT演算された一群のスペクトルデータ中のスペクトルデータであって所定の条件を満たすスペクトルデータ(詳細は後述する)が記憶されているか否かを判断する。
【0045】
ピークスペクトルデータが記憶されていれば、演算部12fにおいて回転計の回転数が少なくとも一度は演算されていることになる。本実施形態では、回転計の回転数が少なくとも一度は演算されている場合に引き続いて回転計の回転数を演算する場合について詳細に説明する。
【0046】
探索範囲設定部12cは、判断部12bによって記憶部16にピークスペクトルデータが記憶されていると判断された場合に、前記ピークスペクトルデータ付近の周波数を探索範囲に設定する(探索範囲設定部12cで探索するべき主成分のスペクトルの探索範囲を演算する)部分である。
【0047】
FFT演算部12aにおいて演算されたスペクトルデータには、主成分(1次成分)のスペクトル、主成分の1/2次成分、主成分の2次成分及び主成分の3次成分などのスペクトルが含まれる他に、ノイズの各次数成分のスペクトルも含まれる。
【0048】
本実施形態では、一例として、探索範囲を1/2次成分及び2次成分のスペクトルを除外するように自動的に設定する。具体的には、ガソリンエンジン30の初期動作時の主成分(1次成分)のスペクトルの周波数f1が2kHzであるときに、1/2次成分及び2次成分のスペクトルはそれぞれ1kHz及び4kHzとして現れる。従って、探索範囲は、この1/2次及び2次成分を含まない範囲を設定する必要があり、例えば、下限の周波数fLを周波数f1の4割減(f1の0.6倍)に設定し、上限の周波数fHを周波数f1の8割増(f1の1.8倍)に設定することによって、1/2次成分及び2次成分のスペクトルを探索範囲から除外している。
【0049】
従って、探索範囲設定部12cは、主成分のスペクトルの周波数f1に基づいて、探索範囲を演算し、例えば、主成分のスペクトルの周波数f1が2kHzであるときは、探索範囲の下限の周波数fLは、1.2kHzとなり、上限の周波数fHは、3.6kHzとなる。
【0050】
さらに、探索範囲設定部12cは、ピークスペクトルデータ付近の周波数として、ピークスペクトルデータの周波数のn(n:自然数)倍の周波数の逆数を、前記探索範囲として設定するようにしてもよい。
【0051】
さらにまた、探索範囲設定部12cは、ピークスペクトルデータ付近の周波数として、任意の固定の周波数を前記探索範囲として設定するようにしてもよく、任意の固定の周波数は操作部(図示せず)から入力されてもよい。
【0052】
探索部12dは、ガソリンエンジン30の回転数の測定中に、FFT演算部12aで演算されるスペクトルデータ中のスペクトルデータを逐次探索する回路である。ここで、スペクトルデータは、スペクトルデータの全体から探索されてもよいが、好ましくは前述の探索範囲設定部12cで演算した探索範囲から探索される。
【0053】
検索部12eは、探索部12dによって探索されたスペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータとスペクトルデータの周波数の略1/2倍の周波数のスペクトルデータを検索する(ここで、nは2以上の自然数)。
【0054】
ここで、探索部12dによって探索されたスペクトルデータの周波数の略n倍の周波数とスペクトルデータの周波数の略1/n倍の周波数が、探索範囲設定部12cで演算された探索範囲から外れる場合には、探索範囲設定部12cで演算された探索範囲から外れた周波数範囲から略n倍の周波数と略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)が検索部12eによって検索される。
【0055】
すなわち、探索部12dによって探索されたスペクトルデータの周波数の略n倍の周波数とスペクトルデータの周波数の略1/n倍の周波数の範囲(ここで、nは2以上の自然数)は、探索範囲設定部12cで演算した探索範囲を超えている場合もある。
【0056】
また、検索部12eは、探索部12dによって探索されるスペクトルデータが複数存在する場合には、スペクトルデータの大きさが最も大きいスペクトルデータからスペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)を検索する。
【0057】
また、探索部12dによって探索されたスペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)の両方または何れか一方が存在しない場合もある。このような場合には検索部12eはその後の処理を実行する。
【0058】
演算部12fは検索部12eによって、スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)の少なくとも何れか一方が検索された場合に、少なくとも何れか一方が検索されたスペクトルデータをピークスペクトルデータと決定し、記憶部16にピークスペクトルデータを記憶する。
【0059】
また、演算部12fは検索部12eにおいてスペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータの少なくとも何れか一方が検索されたスペクトルデータが複数存在し、前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータの両方が検索された前記スペクトルデータが存在する場合には、スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)の両方が検索されたスペクトルデータをピークスペクトルデータと決定する。
【0060】
また、演算部12fは検索部12eにおいてスペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)の少なくとも何れか一方のみが検索されたスペクトルデータが複数存在する場合には、スペクトルデータの大きさが最も大きいスペクトルデータをピークスペクトルデータと決定してもよい。
【0061】
さらに、スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)の両方が検索されたスペクトルデータが複数存在する場合には、スペクトルデータの大きさが最も大きいスペクトルデータをピークスペクトルデータと決定してもよい。
【0062】
表示部13は、演算部12fで演算されたピークスペクトルデータを表示する。表示部13で表示されるピークスペクトルデータはガソリンエンジン30の回転機構の回転周波数を示している。
【0063】
また、表示部13には操作部で入力された数字、文字等の記号および探索範囲が表示されてもよい。
【0064】
入力アンプ部14は、振動計20から検出された振動データを増幅する増幅器である。
【0065】
フィルタ部15は、入力アンプ部14で増幅した振動データに含まれる折り返し雑音を除去するAAF(アンチ・エイリアシング・フィルタ)を含むフィルタである。
【0066】
記憶部16には、検索部12eによって、スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)の少なくとも何れか一方が検索されたスペクトルデータが記憶される。
【0067】
振動計20は、ガソリンエンジン30の筐体に固定され、ガソリンエンジン30の回転機構の振動を加速度の振動データとして検出する加速度計である。
【0068】
ガソリンエンジン30は、内部に回転機構を備え、燃料(ガソリン)と空気の混合気をシリンダ中に吸入し、この混合気をピストンで圧縮したあと点火、燃焼・膨張させて(予混合燃焼)ピストンを往復運動させる内燃機関である。
【0069】
このように、本発明によれば、記憶部16に記憶されたスペクトルデータは、主成分(回転一次成分)のみが探索されたスペクトルデータではなく、回転一次成分のピークに加えて他の次数ピークが検索されたスペクトルデータなので、回転一次成分のピークの追従性を向上させることが可能になった(ノイズによるピークを追従することがなくなった)。
【0070】
すなわち、主成分(回転一次成分)によるピークだけではなく他の次数ピークも同時に追跡することで、ノイズが除去され、加速減速時においてもより安定した回転速度計測が実現可能となった。
【0071】
次に図2を用いて実施形態の一例について説明する。
【0072】
図2(a)では、ガソリンエンジン30の内部に設けられた回転機構の回転数の測定ピーク(スペクトルデータ)f1と測定ピークf1の周波数の略2倍の周波数のスペクトルデータ2f1とスペクトルデータの周波数の略1/2倍の周波数のスペクトルデータ1/2f1が検索された状態を示す。
【0073】
図2(b)では、図2(a)の測定サイクルの次の測定サイクルにおいて、FFT演算部12aが、入力部11から連続的に入力した離散化された振動データを、高速フーリエ変換(FFT)し、振動のスペクトルデータを演算した結果を示す。
【0074】
図2(a)の測定サイクルにおいて測定された、ガソリンエンジン30の内部に設けられた回転機構の回転数の測定ピークf1の周辺の周波数領域に測定ピークf1よりも大きなノイズ成分等の回転成分とは関係のない周波数成分f2が出現している。
【0075】
従来の測定手法においては、回転成分とは関係のない周波数成分f2を誤って、ガソリンエンジン30の内部に設けられた回転機構の回転数であると判断してしまっていた。
【0076】
しかし、図2(b)においては、回転成分とは関係のない周波数成分f2の略n倍の周波数のスペクトルデータとスペクトルデータの周波数の略1/n倍の周波数のスペクトルデータがFFT演算部12aの演算結果として出現しておらず、回転成分とは関係のない周波数成分f2の略n倍の周波数のスペクトルデータとスペクトルデータの周波数の略1/n倍の周波数のスペクトルデータは存在しない(ここで、nは2以上の自然数)。
【0077】
従って、周波数成分f2は、ガソリンエンジン30の内部に設けられた回転機構の回転数の回転成分とは関係のない周波数成分であると演算部12fにおいて判断される。
【0078】
測定ピークf1の周辺の周波数領域には、周波数成分f2のスペクトルデータよりも大きさが小さいが、略2倍の周波数のスペクトルデータ(2(f1+Δ))とスペクトルデータの周波数の略1/2倍の周波数のスペクトルデータ(1/2(f1+Δ))を持つスペクトルデータ(f1+Δ)が存在する。
【0079】
従って、演算部12fはスペクトルデータ(f1+Δ)をガソリンエンジン30の内部に設けられた回転機構の回転数の測定ピーク(スペクトルデータ)として決定する。
【0080】
スペクトルデータ(f1+Δ)はスペクトルデータf1が測定サイクル間で回転機構の回転数の変動等の要因により変化したスペクトルデータであるが、他のノイズ成分等のスペクトルデータ(スペクトルデータ(f1+Δ)よりも大きい値を有する)があっても正確に回転機構の回転数として決定(判断)され、回転数の変動に追随することが可能になっている。
【0081】
このように、本発明によれば、回転一次成分のピークに加えて他の次数ピークが検索されるので、回転一次成分のピークの追従性を向上させることが可能になった(ノイズによるピークを追従することがなくなった)。
【0082】
すなわち、主成分(回転一次成分)によるピークだけではなく他の次数ピークも同時に追跡することで、ノイズが除去され、加速減速時においてもより安定した回転速度計測が実現可能となった。
【0083】
[処理手順]
【0084】
ここで、本発明を適用した場合において実現され得る具体的な処理手順について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。なお、以下に示す処理手順は、一例であってこれ以外にも実現され得る処理手順は無数に存在する。
【0085】
ステップS1において、回転計10は、振動計20で検出した時系列の振動データを離散化して、ガソリンエンジン30の内部に設けられた回転機構の回転数の測定をする。
【0086】
ステップS2において、回転計10の探索部12dは一つ前の(測定)サイクルの測定ピーク(ピークスペクトルデータ)周辺にあるピークを探索する。
【0087】
この場合、記憶部16に一つ前の(測定)サイクルのピークスペクトルデータが存在する場合には、探索範囲設定部12cが演算して設定した、ピークスペクトルデータ付近の周波数範囲である探索範囲にあるスペクトルデータを探索部12dは探索する。
【0088】
記憶部16に一つ前の(測定)サイクルのピークスペクトルデータが存在しない場合には、全ての周波数範囲を探索部12dは探索してもよいが、操作部によって設定された探索範囲を(探索範囲は数値入力することができる他に、回転計10の探索範囲のレンジを切り替えることで探索範囲を設定することもできる)探索する。
【0089】
ステップS3において、一つ前の(測定)サイクルの測定ピーク(ピークスペクトルデータ)周辺にあるピークが回転計10の探索部12dによって探索された場合には、回転計10の検索部12eは、探索部12dによって探索されたピーク(スペクトルデータ)の周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータとスペクトルデータの周波数の略1/n倍の周波数のスペクトルデータを検索する(ここで、nは2以上の自然数)。
【0090】
ステップS4において、回転計10の演算部12fは、探索部12dによって探索されたピーク(スペクトルデータ)に、略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータが存在するか否かを判断する(ここで、nは2以上の自然数)。
【0091】
ピーク(スペクトルデータ)に、略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータの少なくとも何れか一方が存在する場合(ステップS4:YES)にはステップS5に進み、ピーク(スペクトルデータ)に、略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)の何れもが存在しない場合(ステップS4:NO)にはステップS6に進む。
【0092】
ステップS5において、回転計10の演算部12fはステップS4の判断結果に基づいて測定ピーク(ピークスペクトルデータ)を決定する。
【0093】
回転計10の演算部12fは、スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)の両方が検索されたスペクトルデータをピークスペクトルデータと決定する。
【0094】
スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)の両方が検索されたスペクトルデータが存在しない場合には、少なくとも何れか一方のみが検索されたスペクトルデータを、回転計10の演算部12fは、ピークスペクトルデータと決定する。
【0095】
ステップS6において、回転計10の演算部12fは、ステップS5においてピークスペクトルデータと決定したスペクトルデータ(の周波数)、および、ステップS5においてピークスペクトルデータと決定したスペクトルデータの略n倍の周波数のスペクトルデータ(の周波数)と略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(の周波数)(ここで、nは2以上の自然数)の少なくとも何れか一方を記憶部16に記憶する。
【0096】
ステップS7において、回転計10の演算制御部12は、計測を終了すべき場合(ステップS7:YES)は計測を終了し、計測を継続すべき場合(ステップS7:NO)はステップS1に戻り、周波数の計測を継続する。
【0097】
周波数計測の終了は、操作部等から信号が入力されることで判断される。
【0098】
ステップS8において、従来の技術(例えば特許文献1参照)を用いて周波数計測を実行する。
【0099】
このように、本発明によれば、記憶部16に記憶されたスペクトルデータは、主成分(回転一次成分)のみが探索されたスペクトルデータではなく、回転一次成分のピークに加えて他の次数ピークが検索されたスペクトルデータなので、回転一次成分のピークの追従性を向上させることが可能になった(ノイズによるピークを追従することがなくなった)。
【0100】
すなわち、主成分(回転一次成分)によるピークだけではなく他の次数ピークも同時に追跡することで、ノイズが除去され、加速減速時においてもより安定した回転速度計測が実現可能となった。
【0101】
次に図4を用いて実施形態の他の一例について詳細に説明する。
【0102】
図4(a)では、ガソリンエンジン30の内部に設けられた回転機構の回転数の測定ピーク(スペクトルデータ)f1、測定ピークf1の周波数の略2倍の周波数のスペクトルデータ2f1、スペクトルデータの周波数の略1/2倍の周波数のスペクトルデータ1/2f1、およびその他のノイズ成分f3、f4が検索された状態を示す。
【0103】
図4(a)において、回転計10の演算部12fは、略2倍の周波数のスペクトルデータ2f1、略1/2倍の周波数のスペクトルデータ1/2f1が検索されたスペクトルデータf1をガソリンエンジン30の内部に設けられた回転機構の回転数の測定ピーク(ピークスペクトルデータ)として決定する。
【0104】
図4(b)は、図4(a)の測定サイクルの次の測定サイクルにおいて、FFT演算部12aが、入力部11から連続的に入力した離散化された振動データを、高速フーリエ変換(FFT)し、振動のスペクトルデータを演算した結果を示す。
【0105】
図4(b)では、ピークスペクトルデータ付近の周波数の探索範囲としてΔf1(探索する周波数範囲)の範囲で探索部12dがスペクトルデータを逐次探索する。
【0106】
探索範囲Δf1の中には、図4(a)においてピークスペクトルデータとして決定されたスペクトルデータf1は存在しないが、スペクトルデータf5、f6およびf7が存在し、それらが探索部12dによって探索される。
【0107】
次に、検索部12eが、探索部12dによって探索されスペクトルデータf5、f6およびf7について順番にそれぞれのスペクトルデータの略n倍の周波数のスペクトルデータまたは略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)が存在するかを検索する。
【0108】
ここで、スペクトルデータf5、f6およびf7を検索する順番は任意に(ピークスペクトルデータをより早く検索する順番に)設定することができる。
【0109】
ここではスペクトルデータの周波数の小さい順に、最初はスペクトルデータf5について、探索部12dが略n倍の周波数のスペクトルデータまたは略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)を検索する。
【0110】
しかし、スペクトルデータf5の略n倍の周波数のスペクトルデータおよび略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)は存在しないので検索できない。
【0111】
この場合には、検索部12eは、スペクトルデータf5を記憶部16等に記憶することはしない。
【0112】
次に、検索部12eは、スペクトルデータf6について、略n倍の周波数のスペクトルデータまたは略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)を検索する。
【0113】
スペクトルデータf6の略2倍の周波数のスペクトルデータ2f6および略1/2倍の周波数のスペクトルデータ1/2f6は図4(c)に図示されたように存在するので検索部12eは、それらを検索することができる。
【0114】
従って、検索部12eは、スペクトルデータf6、スペクトルデータf6の略2倍の周波数のスペクトルデータ2f6およびスペクトルデータf6の略1/2倍の周波数のスペクトルデータ1/2f6を記憶部16等に記憶する。
【0115】
この場合には、前回の測定サイクルにおいて検索され、スペクトルデータとして記憶されているスペクトルデータf1の値、スペクトルデータf1の略2倍の周波数のスペクトルデータ2f1およびスペクトルデータf1の略1/2倍の周波数のスペクトルデータ1/2f1を検索部12eが記憶部16等から消去する。
【0116】
次に、検索部12eは、スペクトルデータf7について、略n倍の周波数のスペクトルデータまたは略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)を検索する。
【0117】
この場合には、スペクトルデータf7の略n倍の周波数のスペクトルデータおよび略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)が存在しないので検索できない。
【0118】
従って、検索部12eは、スペクトルデータf7を記憶部16等に記憶することはしない。
【0119】
次に、探索範囲Δf1中のスペクトルデータf5、f6およびf7の検索部12eによる検索が終了したので、演算部12fで次の演算が実行される。
【0120】
演算部12fでは、記憶部16に記憶されているスペクトルデータをチェックする。
【0121】
図4(c)に図示されたように記憶部16に記憶されているスペクトルデータの略n倍の周波数のスペクトルデータまたは略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)の少なくとも一方が存在するスペクトルデータはスペクトルデータf6だけなので、演算部12fはスペクトルデータf6をピークスペクトルデータとして決定する。
【0122】
次に、演算部12fは、演算されたピークスペクトルデータを表示部13に表示する。表示部13で表示されるピークスペクトルデータはガソリンエンジン30の回転機構の回転周波数を示している。
【0123】
このように、本発明によれば、記憶部16に記憶されたスペクトルデータは、主成分(回転一次成分)のみが探索されたスペクトルデータではなく、回転一次成分のピークに加えて他の次数ピークが検索されたスペクトルデータなので、回転一次成分のピークの追従性を向上させることが可能になった(ノイズによるピークを追従することがなくなった)。
【0124】
すなわち、主成分(回転一次成分)によるピークだけではなく他の次数ピークも同時に追跡することで、ノイズが除去され、加速減速時においてもより安定した回転速度計測が実現可能となった。
【0125】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【0126】
なお、図3における動作手順を、ハードディスク等の記録媒体に予め記録しておき、或いはインターネット等のネットワークを介して予め記録しておき、これを汎用のマイクロコンピュータ等により読み出して実行することにより、当該汎用のマイクロコンピュータ等を実施形態に係わるCPUとして機能させることも可能である。
【符号の説明】
【0127】
10 回転計
11 入力部
12 演算制御部
12a FFT演算部
12b 判断部
12c 探索範囲設定部
12d 探索部
12e 検索部
12f 演算部
13 表示部
14 入力アンプ部
15 フィルタ部
16 記憶部
20 振動計
30 ガソリンエンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された信号を、高速フーリエ変換してスペクトルデータを演算するFFT(Fast Fourier Transformation)演算手段と、
記憶手段に前記スペクトルデータの一つであるピークスペクトルデータが記憶されているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段によって前記記憶手段に前記ピークスペクトルデータが記憶されていると判断された場合に、前記ピークスペクトルデータ付近の周波数を探索範囲に設定する探索範囲設定手段と、
前記探索範囲において、前記FFT演算手段によって演算された前記スペクトルデータを探索する探索手段と、
前記探索手段によって探索された前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと前記スペクトルデータの周波数の略1/n倍の周波数のスペクトルデータを検索する検索手段と、
前記検索手段によって、前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータの少なくとも何れか一方が検索された場合に、前記スペクトルデータを前記ピークスペクトルデータと決定し、前記記憶手段に前記ピークスペクトルデータを記憶する演算手段と、
を備えることを特徴とする信号処理装置(ここで、nは2以上の自然数)。
【請求項2】
請求項1に記載の信号処理装置において、
前記探索手段によって探索されるスペクトルデータが複数存在する場合には、前記検索手段は前記スペクトルデータの大きさが最も大きい前記スペクトルデータから前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)を検索することを特徴とする信号処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の信号処理装置において、
前記検索手段において前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータの少なくとも何れか一方が検索された前記スペクトルデータが複数存在し、前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータの両方が検索された前記スペクトルデータが存在する場合には、前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータの両方が検索された前記スペクトルデータを前記ピークスペクトルデータと決定することを特徴とする信号処理装置(ここで、nは2以上の自然数)。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の信号処理装置において、
前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータ(ここで、nは2以上の自然数)の両方が検索された前記スペクトルデータが複数存在する場合には、前記スペクトルデータの大きさが最も大きい前記スペクトルデータを前記ピークスペクトルデータと決定することを特徴とする信号処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の信号処理装置において、
前記信号は、測定対象から計測された回転運動に起因する時系列の物理現象の検出結果
であり、
前記演算手段によって決定された前記ピークスペクトルデータの周波数は、前記測定
対象の回転数であること、
を特徴とする信号処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の信号処理装置において、
前記探索範囲設定手段は、前記探索範囲の上限を、前記ピークスペクトルデータの周波数のn倍よりも小さい周波数で決定し、前記探索範囲の下限を、前記ピークスペクトルデータの周波数の1/n倍よりも大きい周波数で設定すること、
を特徴とする信号処理装置(ここで、nは2以上の自然数)。
【請求項7】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の信号処理装置において、
前記探索範囲設定手段は、前記探索範囲の上限を、前記ピークスペクトルデータの周波数のn(n:自然数)倍の周波数の略逆数を、前記探索範囲として設定すること、
を特徴とする信号処理装置。
【請求項8】
入力された信号を、高速フーリエ変換してスペクトルデータを演算するFFT演算工程と、
記憶工程における前記スペクトルデータの一つであるピークスペクトルデータが記憶されているか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程において前記記憶工程における前記ピークスペクトルデータが記憶されていると判断された場合に、前記ピークスペクトルデータ付近の周波数を探索範囲に設定する探索範囲設定工程と、
前記探索範囲において、前記FFT演算工程において演算された前記スペクトルデータを探索する探索工程と、
前記探索工程において探索された前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと前記スペクトルデータの周波数の略1/n倍の周波数のスペクトルデータを検索する検索工程と、
前記検索工程において、前記スペクトルデータの周波数の略n倍の周波数のスペクトルデータと略1/n倍の周波数のスペクトルデータの少なくとも何れか一方が検索された場合に、前記スペクトルデータを前記ピークスペクトルデータと決定し、前記記憶工程において前記ピークスペクトルデータを記憶する演算工程と、
を備えることを特徴とする信号処理装置の制御方法(ここで、nは2以上の自然数)。
【請求項9】
請求項8に記載の方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−160120(P2010−160120A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4030(P2009−4030)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)
【Fターム(参考)】