説明

信号捕捉装置および信号捕捉方法

【課題】時間の経過とともに周波数が変動するようなクロック信号を使用する場合でも、所定の周波数の信号をより確実に捕捉すること。
【解決手段】GPS信号受信部104は、GPS用クロック生成部106が生成するGPSクロック信号を基にGPS信号の捕捉を行う。周波数比較部107は、GPSクロック信号の周波数の理想値との周波数差を出力する。サーチ周波数制御部109は、サーチ基準周波数を基点として、サーチ対象周波数を時間の経過とともに周囲の周波数帯域に広げていく。周波数変動推定部111は、GPSクロック信号の周波数の変動を推定し、タイミング信号発生部113は、その推定値が所定値に達すると、サーチ周波数制御部109に対してサーチ基準周波数およびサーチ対象周波数をリセットさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばGPS(Global Positioning System)衛星から送出される信号のような所定の周波数の信号を捕捉するための信号捕捉装置および信号捕捉方法に関し、特に携帯電話機等の移動体通信端末に好適な信号捕捉装置および信号捕捉方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)といった高速でのデータ伝送が可能な移動体通信端末の普及が進んでいる。このような移動体通信端末では、その利便性や用途の拡大を図るために、衛星測位システムを利用した位置情報の取得機能を追加することが注目されている。
【0003】
衛星測位システムは、地球の周回軌道を回る複数の人工衛星から送出される情報を受信して、各人工衛星との間の距離を測定し、受信側の装置の現在位置を計算するシステムである。米国の国防総省が構築したGPSは、このような衛星測位システムの代表的なものであり、GPS衛星と呼ばれる人工衛星を複数配置している。
【0004】
GPS衛星は、送出の対象となる信号に対して、所定のPRN(Pseudo Random Noise:擬似ランダム雑音)コードを用いたスペクトラム拡散処理を行う。すなわち、移動体通信端末では、このGPS衛星から送出される信号(以下、「GPS信号」という。)に対し対応するPRNコードを用いて逆拡散処理を行うことによって、元の信号を取得することが可能である。そして、取得した信号に対して、メッセージ同期、エフェメリス(ephemeris)収集、PVT(Position, Velocity, Time)計算等の処理を行うことにより、自己の現在位置や時刻についての情報を得ることができる。
【0005】
このような測位機能が搭載された移動体通信端末では、GPS信号の受信処理に使用するためのクロック信号(以下、「GPSクロック信号」という。)を生成する装置部として、小型で安価であることから、水晶発振器を適用することが広く行われている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0006】
ただし、水晶発振器の発振周波数は、周囲温度その他の使用条件によって変動するため、サーチ周波数範囲を大きく設定する必要があり、その結果、信号捕捉に時間がかかることがある。そこで、この従来の提案では、移動体通信端末が地上の無線基地局との間で無線通信を行う際に得られる高い周波数精度のクロック信号を使用して、自装置内部の水晶発振器が生成するGPSクロック信号の周波数がその理想値からどの程度ずれているかを検出する。そして、その周波数差に基づいて、測位に関する信号処理を行うようになっている。これにより、水晶発振器が発生させるGPSクロック信号の周波数(以下、「GPSクロック周波数」という。)が理想値と異なっていても、周波数サーチ範囲を限定して、高速な信号捕捉を行うことが出来る。
【0007】
ところで、前記したGPS信号のスペクトラム拡散処理で使用されるPRNコードは、コード長1ms(ミリ秒)、チップレート1.023MHz(メガヘルツ)であり、1チップの周期は約1μs(マイクロ秒)である。このスペクトラム拡散処理は、それぞれのGPS衛星に搭載された原子時計の時刻に同期して行われる。したがって、移動体通信端末は、0.5μs以下の誤差の精度で送出側のGPS衛星との時刻同期を確立してからでなければ、前記したメッセージ同期以降の処理を開始することができず、測位を行うことができない。
【0008】
しかしながら、移動体通信端末は、GPS信号の受信を開始していない状態ではいずれのGPS衛星からも独立して動作しているのが通常である。そこで、測位に先立って、まずGPS信号をサーチし、GPS信号に対する周波数同期または位相同期やPRNコードの同期(以下、「コード同期」と総称する。)を確立するための処理が必要となる。
【0009】
図22は、このような従来のGPS信号のサーチの様子の一例を示す説明図である。横軸はサーチが開始されてからの経過時間を示し、縦軸は周波数を示している。移動通信端末は、サーチ対象となる周波数としてのサーチ対象周波数1を、GPS信号の標準の周波数として予め定められたサーチの基準となる周波数(以下、「サーチ基準周波数」という。)fを基準として、時間の経過とともに徐々に周囲の周波数帯域に移動させる。これは、GPS衛星と移動体通信端末との間の相対速度その他の原因によって、サーチの対象となる周波数を移動体通信端末に到達するGPS信号の周波数としてのGPS信号周波数fに正確に合わせ込むことが難しいためである。この例では、時刻tでGPS信号が捕捉されることになる。また、移動体通信端末が携帯電話網に設けられたサーバとの通信によってGPS衛星の軌道情報を授受することで、GPS信号の標準の周波数よりも高い周波数精度で設定することも可能である。この場合には、より早い時刻にGPS信号を捕捉することができる。
【0010】
一方で、サーチ範囲を広げると、広げた分だけサーチする時間がかかる。また、サーチ速度を上げてこの時間の短縮を図ろうとすると、信号レベルが低い場合にはGPS信号を誤って捕捉し損ねてしまう可能性が高くなる。そこで、通常は、同図に示すようにサーチ対象周波数1に周波数上限値fmaxと周波数下限値fminを定める。そして、サーチを所定の時間内にサーチ対象周波数1がその上限値と下限値に到達するような速度でサーチ対象周波数を上下に広げていくことにより、設定されたサーチ範囲、すなわち周波数上限値fmaxと周波数下限値fminとの間の周波数帯域についてのサーチを、所定の時間内に終了することができる。ここで、サーチを終了してもGPS信号の捕捉が出来なかった場合には、前記した一連のサーチ処理を再実行する。
【特許文献1】特開2003−329761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、水晶発振器には、前記したように周辺の温度変化等の原因によって発振周波数が変化してしまうという特徴がある。また、GPS信号のサーチは、前記したGPSクロック信号を動作クロックとして使用して行われる。したがって、サーチが開始された後に水晶発振器の発振周波数が変動し、GPSクロック信号の周波数が理想値のときのサーチ範囲に対して、実際のサーチ範囲が時間の経過とともにずれていってしまう場合がある。この場合、捕捉できるはずのGPS信号をいつまでも捕捉できないといった事態が発生する恐れがある。
【0012】
本発明はかかる点に鑑みてなされたもので、時間の経過とともに周波数が変動するようなクロック信号を使用する場合でも、所定の周波数の信号をより確実に捕捉することが可能な信号捕捉装置および信号捕捉方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するため、本発明の信号捕捉装置は、所定のクロック信号を動作クロックとして捕捉の対象となる信号のサーチを行うとともに、そのサーチの対象となる信号の周波数を補正情報を用いて補正する信号受信手段と、所定のクロック信号の周波数の理想値に対する差の変動値としての周波数変動値を推定する周波数変動推定手段と、周波数差推定手段の推定値に基づいて、補正情報を修正すべきタイミングを判別するタイミング判別手段と、所定のクロック信号の周波数の理想値に対する差としての周波数差を検出する周波数差検出手段と、タイミング判別手段によって判別されたタイミングに、周波数差検出手段による検出結果に基づいて補正情報を修正する周波数設定手段とを具備する構成を採る。
【0014】
また、本発明の信号捕捉装置は、所定のクロック信号を動作クロックとして捕捉の対象となる信号のサーチを行うとともに、そのサーチの対象となる信号の周波数を補正情報を用いて補正する信号受信手段と、所定のクロック信号の周波数の理想値に対する差としての周波数差を検出する周波数差検出手段と、周波数差検出手段の検出結果に基づいて、補正情報を修正すべきタイミングを判別するタイミング判別手段と、タイミング判別手段によって判別されたタイミングに、周波数差検出手段による最新の検出結果に基づいて補正情報を修正する周波数設定手段とを具備する構成を採る。
【0015】
また、本発明の信号捕捉方法は、所定のクロック信号の周波数の理想値に対する差の変動値としての周波数変動値を推定する周波数変動推定ステップと、周波数差推定ステップによる推定値に基づいて、所定のクロック信号を動作クロックとして捕捉の対象となる信号のサーチを行う信号受信手段がそのサーチの対象となる信号の周波数を補正するのに用いる補正情報を修正すべきか否かを判別する補正情報修正判別ステップと、補正情報修正判別ステップで補正情報を修正すべきと判別されると、所定のクロック信号の周波数の理想値に対する差としての周波数差を検出する周波数差検出ステップと、周波数差検出ステップによる検出結果に基づいて補正情報を修正する周波数設定ステップとを有する構成を採る。
【0016】
また、本発明の信号捕捉方法は、所定のクロック信号の周波数の理想値に対する差としての周波数差を検出する周波数差検出ステップと、周波数差検出ステップによる検出結果に基づいて、所定のクロック信号を動作クロックとして捕捉の対象となる信号のサーチを行う信号受信手段がそのサーチの対象となる信号の周波数を補正するのに用いる補正情報を修正すべきか否かを判別する補正情報修正判別ステップと、補正情報修正判別ステップで前記補正情報を修正すべきと判別されると、周波数差検出ステップによる検出結果に基づいて補正情報を修正する周波数設定ステップとを有する構成を採る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、捕捉の対象となる信号のサーチを行う信号受信手段が動作クロックとして使用する所定のクロック信号の周波数の理想値に対する差としての周波数差を検出し、最新の検出結果に基づいて補正情報を修正する。また、補正情報の修正を行うタイミングは、所定のクロック信号の周波数変動値の推定値あるいは周波数差の検出結果に基づいて決定される。これにより、所定のクロック信号の周波数が時間の経過とともに変動する場合でも、その変動値に応じたタイミングで補正情報を修正し、サーチの対象となる信号の周波数をより適切な値に補正できる。すなわち、予め定められた周波数の信号の捕捉をより確実に行うことができる。更に、クロック信号の周波数変動に対する耐性が向上するため、より柔軟な装置設計が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る信号捕捉装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る信号捕捉装置が使用される通信システムの構成を示すシステム構成図である。この通信システム20は、携帯電話機10と、携帯電話網21と、この携帯電話網21に接続された無線基地局23と、携帯電話機10の上空に配置されたGPS衛星(ここでは説明のために、4つのGPS衛星24−1〜24−4を示す)と、から主に構成される。
【0020】
携帯電話機10は、無線基地局23と無線信号を送受信することによって、携帯電話網21に配置された図示しない他の携帯電話機や固定電話機あるいは情報サーバと通信を行う。また、4つのGPS衛星24−1〜24−4のそれぞれから送出されるGPS信号を捕捉し、各GPS信号から情報を抽出することによって測位を行う。このGPS信号は、1,57542GHz(ギガヘルツ)の同一の周波数の搬送波に、GPS信号ごとに異なるC/Aコード(Coarse/Acquisition Code)やPコード(Precise CodeもしくはProtected Code)といったPRNコードを重畳したものである。
【0021】
図2は、図1に示す携帯電話機10の構成を示すブロック図である。携帯電話機10は、無線用アンテナ101と、無線通信部102と、GPS用アンテナ103と、GPS信号受信部104と、測位演算部105と、GPS用クロック生成部106と、周波数比較部107と、基準周波数設定部108と、サーチ周波数制御部109と、測位開始指示入力部110と、周波数変動推定部111と、タイマ112と、タイミング信号発生部113と、から主に構成される。サーチ周波数制御部109は基準補正情報格納部121を備えており、周波数変動推定部111は周波数特性格納部122を備えている。
【0022】
また、携帯電話機10は、図示しないがCPU(Central Processing Unit)と、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体と、RAM(Random Access Memory)等の作業用メモリと、既存のハードウェアとしての通信回路によって構成されている。すなわち、制御プログラムをCPUが実行することで上記した各装置部の機能が実現する。
【0023】
無線通信部102は、図1に示す無線基地局23との間で無線信号の送受信を行う。無線基地局23は、図示しないが高い周波数精度でクロック信号を生成するクロック発振器を備えている。そして、このクロック信号を搬送周波数として使用し、無線通信部102と無線通信を行う。無線通信部102は、図示しないがPLL(Phase-Locked Loop)回路を有するAFC(Automatic Frequency Control)装置を備えており、無線基地局23から送出される無線信号の搬送波周波数に周波数同期した基準クロック信号を生成する。
【0024】
GPS信号受信部104は、GPS信号をサーチするとともにこれを捕捉し、GPS信号に含まれる情報を取得する。そして、測位演算部105は、この取得された情報を基に測位のための演算を行う。すなわち、携帯電話機10は、携帯電話網21に接続する機能と、GPSシステムによる測位機能とを備えた移動体通信端末である。
【0025】
測位開始指示入力部110は、図示しないがキースイッチを備えており、GPSによる測位の開始の指示を受け付ける。GPS用クロック生成部106は、図示しない温度補償型水晶発振器(Temperature Compensated Crystal Oscillator : TCXO)を使用して、GPS信号受信部104の動作クロックとして使用されるGPSクロック信号を生成する。このGPS用クロック生成部106は、携帯電話機10の無線通信部102のAFC装置のような周波数同期は施されず、自走のクロック源である。また、温度補償型となっているものの、水晶発振器の発振周波数は周囲温度からの影響によって変動する。したがって、GPSクロック信号の周波数精度は、無線通信部102が出力する基準クロック信号の周波数精度よりも低くなっている。
【0026】
周波数特性格納部122は、GPS信号のサーチ開始時からの経過時間に対応付けて、各時刻でのGPSクロック周波数の理想値に対する差分(以下、「クロック周波数差」という。)の推定値を予め格納している。周波数変動推定部111は、この周波数特性格納部122を参照し、タイマ112を使用してGPSクロック周波数の変動の推定値を示す周波数変動推定情報を逐次出力する。GPS用クロック生成部106の発振周波数は、温度補償型水晶発振器の周囲温度からの影響によって変動する。一方で、この周囲温度は、GPS用クロック生成部106でGPSクロック信号の出力が開始された後、時間の経過とともに上昇する。このような周波数特性格納部122と周波数変動推定部111を備えることにより、GPSクロック周波数がどのくらい変動したかを逐次推定することができる。
【0027】
タイミング信号発生部113は、タイマ112から出力される時間情報と周波数変動推定部111から出力される周波数変動推定情報に基づいて、サーチ基準周波数およびサーチ対象周波数のリセットが必要か否かを判別する。そして、リセットが必要であると判別したとき、周波数比較部107に対して周波数補正タイミング信号を出力するとともに、サーチ周波数制御部109に対してサーチ周波数リセット信号を出力する。
【0028】
周波数比較部107は、タイミング信号発生部113から周波数補正タイミング信号を入力されるたびに、GPSクロック信号の周波数(以下、単に「GPSクロック周波数」という。)をその理想値と比較し、その周波数の差分を周波数差情報として出力する。
【0029】
基準周波数設定部108は、周波数比較部107から周波数差情報を入力されるたびに、周波数差情報を基にして実際のGPSクロック周波数に対するGPSクロック周波数の理想値の比を示す情報である基準補正情報をサーチ周波数制御部109へ出力する。すなわち、タイミング信号発生部113から周波数補正タイミング信号が出力されるたびに、基準補正情報をサーチ周波数制御部109へ出力する。
【0030】
基準補正情報格納部121は、基準周波数設定部108から入力される基準補正情報の最新のものを格納する。サーチ周波数制御部109は、基準補正情報格納部121に格納された基準補正情報に基づいて、GPS信号受信部104がGPS信号を捕捉する際の基準となる周波数としてのサーチ基準周波数を補正する。また、タイミング信号発生部113からサーチ周波数リセット信号を入力されるたびに、基準周波数設定部108から入力される基準補正情報で基準補正情報格納部121の格納内容を更新してサーチ基準周波数をリセットするとともに、サーチ基準周波数を基点とするサーチ対象周波数の移動をリセットする。
【0031】
図3は、図2に示すGPS信号受信部104の回路構成を示すものである。GPS信号受信部104は、増幅回路131と、第1のミキサ132と、第1の帯域制限フィルタ133と、第2のミキサと134と、第2の帯域制限フィルタ135と、アナログデジタル(A/D)変換器136と、第3のミキサ137と、積分器138と、周波数逓倍器139と、数値制御発振器(Numerical Controlled Oscillator:NCO)140と、PRNコード生成部141と、から主に構成される。
【0032】
周波数逓倍器139は、GPSクロック信号を逓倍してGPS信号の搬送波の周波数レベルの第1のローカル信号(周波数:fLo1)に変換する。図2に示すGPS用アンテナ103で受信された受信信号は、増幅回路131で増幅され、第1のミキサ132でこの第1のローカル信号と乗算されてから、第1の帯域制限フィルタ133で不要な周波数成分を除去することでGPS信号は第1のIF(Intermediate Frequency)周波数(fIF1)にダウンコンバートされる。数値制御発振器140は、GPSクロック信号を動作クロックとし、入力されるサーチ対象周波数と同一の周波数をもつ第2のローカル信号(周波数:fLo2)を生成する。第1の帯域制限フィルタ133から出力される第1のIF周波数に変換された受信信号は、第2のミキサ134でこの第2のローカル信号と乗算され、第2のIF周波数(fIF2)に変換される。ここでは第2のIF周波数はベースバンド相当の信号、すなわち0Hz付近としているが、第2のIF周波数fLo2はベースバンドでなくても構わない。第2のIF周波数fLo2に変換された受信信号は、第2の帯域制限フィルタ135で不要な周波数成分が除去される。そして、アナログデジタル変換器136で、デジタル信号に変換される。
【0033】
PRNコード生成部141は、PRNコードを数値制御発振器140から出力されるクロック信号に同期してPRNコードを生成する。アナログデジタル変換器136でデジタル化された受信信号は、第3のミキサ137でこの生成されたPRNコードと乗算され、積分器138で積分される。すなわち、受信する信号がGPS信号であり、なおかつ数値制御発振器140から出力されるクロック信号がこれと周波数同期したとき、PRNコード生成部141が出力するPRNコードとの同期が確立し、積分器138が出力する積分値はピークをとる。したがって、図2に示す測位演算部105は、この積分値を監視することによって、コード同期が確立されたか否かを判別し、GPS信号の捕捉を検出する。
【0034】
数値制御発振器140の設定周波数は、GPSクロック周波数が理想値に一致する前提での内容となっている。具体的には、前記した第1のローカル信号はGPSクロック信号を逓倍したものであり、更に第2のローカル信号を出力する数値制御発振器140はGPSクロック周波数が正しいものとして動作するため、その上で設定された周波数で第2のローカル信号を出力する。したがって、サーチ対象周波数をfと設定した場合、GPSクロック周波数をfclk、周波数逓倍器139の逓倍率をNとすると、数値制御発振器140の設定周波数(fnco)を以下の式(1)で示される内容に設定することで、サーチ対象周波数fをサーチすることが可能となる。
【0035】
nco=f−N×fclk−fIF2……(1)
【0036】
GPSクロック周波数が理想値からずれている場合には、第1のローカル信号および第2のローカル信号も周波数が想定する周波数からずれたものとなる。たとえば、GPSクロック周波数が理想値のm倍であった場合、出力される第1のローカル信号の周波数および第2のローカル信号の周波数も想定される周波数のm倍となる。したがって、これらの信号によってダウンコンバートされて出力される信号、すなわちIF変換された受信信号の周波数も、指定されたサーチ対象周波数fに対応するIF周波数からずれたものとなる。
【0037】
なお、GPS信号の捕捉は、図1に示す4つのGPS衛星24−1〜24−4の全てについてそれぞれ異なるチャネルで行われる必要がある。ここでは、説明の簡便化のために、GPS信号受信部104にはGPS衛星24−1に対応する構成のみが備えられているものとするが、実際にはチャネルごとに図3に示す構成が備えられる。
【0038】
以上の構成を有する携帯電話機10について、以下、各装置部の動作を説明する。
【0039】
携帯電話機10のユーザは、測位開始指示入力部110のキースイッチを操作することによって任意のタイミングでGPSによる測位の開始の指示を入力できる。また、測位開始指示入力部110は、携帯電話機10に搭載されたアプリケーションソフトウェアあるいは携帯電話網21側からの測位開始の指示の入力も受け付ける。測位開始指示入力部110は、測位開始の指示が入力されると、その旨を示す測位開始指示情報をGPS用クロック生成部106と周波数比較部107と周波数変動推定部111に出力する。
【0040】
GPS用クロック生成部106は、測位開始指示情報が入力されると、温度補償型水晶発振器への電源供給を開始し、GPSクロック信号の出力を開始する。
【0041】
周波数変動推定部111は、測位開始指示情報が入力されると、タイマ112を値「0」に初期化するとともにその計時を開始させる。そして、周波数特性格納部122を参照してタイマ112が出力する時間情報に対応するクロック周波数差を逐次取得し、取得したクロック周波数差に基づいて周波数推定情報を生成してタイミング信号発生部113へ出力する処理を開始する。
【0042】
具体的には、最初にサーチ基準周波数を補正した時点において、周波数特性格納部122から取得したクロック周波数差を記憶しておき、周波数特性格納部122から取得する最新のクロック周波数差からこの記憶したクロック周波数差を差し引いた値を周波数推定情報として逐次出力する。また、タイミング信号発生部113から後に説明する周波数補正タイミング信号が出力されるたびに、記憶された周波数差を、周波数補正タイミング信号が出力された時点の最新のクロック周波数差に更新し、以降の周波数推定情報の演算に使用する。すなわち、周波数補正タイミング信号が最後に出力されてからのGPSクロック周波数の変動値を、周波数推定情報として逐次出力する。
【0043】
タイミング信号発生部113は、周波数変動推定情報の入力が開始されると、サーチ基準周波数およびサーチ対象周波数をリセットすべきであるか否かを逐次判別し、リセットすべきと判別したタイミングに、周波数補正タイミング信号およびサーチ周波数リセット信号を出力する。タイミング信号発生部113には、サーチ基準周波数およびサーチ対象周波数をリセットしない周波数変動推定情報の絶対値の上限値としての所定値Aと、サーチ基準周波数およびサーチ対象周波数をリセットしない最大時間としての所定値Bが、予め設定されている。
【0044】
図4は、タイミング信号発生部113によるタイミング信号発生処理の流れを示すフロー図である。タイミング信号発生部113は、周波数変動推定部111からの周波数変動推定情報の入力が開始されると(ステップS201:YES)、周波数比較部107および周波数変動推定部に対して周波数補正タイミング信号を出力し、サーチ周波数制御部109に対してサーチ周波数リセット信号を出力するとともに、そのときタイマ112から出力される時間情報を記憶する(ステップS202)。そして、GPS信号のサーチがまだ終了していない場合には(ステップS203:NO)、周波数変動推定部111から入力される最新の周波数変動推定情報が所定値A以上か否かを判別するとともに、周波数補正タイミング信号およびサーチ周波数リセット信号が最後に出力されてからの経過時間としてのサーチ時間が所定値B以上か否かを判別する(ステップS204)。サーチ時間は、ステップS202で記憶された時間情報とその時点でタイマ112から出力される時間情報との差分をとることによって求められる。
【0045】
タイミング信号発生部113は、周波数変動推定情報が所定値A未満であり、かつサーチ時間が所定値B未満の場合には(ステップS204:NO)、サーチ基準周波数およびサーチ対象周波数をリセットする必要がないと判断して、ステップS203へ戻る。一方、周波数変動推定情報が所定値A以上か、サーチ時間が所定値B以上の場合には(ステップS204:YES)、そのままサーチを継続してもGPS信号を速やかに補足することができない恐れがあることからサーチ基準周波数およびサーチ対象周波数をリセットすべきと判断して、ステップS202へ戻り、周波数補正タイミング信号とサーチ周波数リセット信号を再び出力するとともに新たに時間情報を記憶する。ステップS202からステップS204の処理を繰り返すうちにGPS信号のサーチが終了すると(ステップS203:YES)、ステップS201へ戻り、再び新たに測位開始指示情報が入力されるのを待機する(リターン)。すなわち、タイミング信号発生部113は、周波数変動推定情報が所定値Aに達したときと、サーチ基準周波数およびサーチ対象周波数がリセットされない時間が所定値Bに相当する長さに達したときに、周波数補正タイミング信号およびサーチ周波数リセット信号を出力する。
【0046】
なお、GPS信号のサーチが終了するのは、たとえば、測位に必要な数のGPS衛星24との間でコード同期を確立できたときや、後に説明する所定のサーチ範囲についてサーチを実施したものの、測位に必要な数のGPS衛星24との間でコード同期を確立できなかったときである。この場合には、タイミング信号発生部113はステップS202へ戻り、再度サーチ基準周波数およびサーチ対象周波数のリセットを行うようにしてもよい。
【0047】
周波数比較部107は、周波数補正タイミング信号を入力されるたびに、無線通信部102が出力する基準クロック信号とGPS用クロック生成部106が出力するGPSクロック信号に基づいて、GPSクロック周波数のクロック周波数差を判別する。そして、その判別結果を、周波数差情報として基準周波数設定部108に対して出力する。クロック周波数差は、たとえば基準クロック信号が所定回数立ち上がる区間にGPSクロック信号が何回立ち上がるかをカウントし、GPSクロック周波数が理想値であったときに得られるカウント値と実際のカウント値を比較することによって求めることができる。
【0048】
基準周波数設定部108は、周波数比較部107からの周波数差情報の入力に対応して、サーチ周波数制御部109に対して基準補正情報を出力する。
【0049】
図5は、基準周波数設定部108による基準周波数設定処理の流れを示すフロー図である。基準周波数設定部108は、周波数比較部107から周波数差情報を入力されると(ステップS221:YES)、周波数比較部107から入力される周波数差情報に対応してサーチ基準周波数を補正するための基準補正情報を生成する(ステップS222)。
【0050】
GPS信号受信部104では、既に説明したようにGPSクロック周波数が理想値のm倍であった場合、出力される第1のローカル信号の周波数および第2のローカル信号の周波数も想定される周波数のm倍となる。また、サーチ周波数制御部109は、後に詳しく説明するが、サーチ対象周波数に基準補正情報を乗じたものをGPS信号受信部104に出力する。したがって、実際のGPSクロック周波数に対するGPSクロック周波数の理想値の比が基準補正情報に設定されることにより、GPS信号受信部104で実際にサーチの対象となる周波数を、想定値に合わせ込むことが可能となる。したがって、基準周波数設定部108は、GPSクロック信号の理想的な周波数をfとし、入力された周波数差情報をΔfとすると、基準補正情報を、f/(f+Δf)で示される値に決定する。
【0051】
基準周波数設定部108は、サーチ周波数制御部109に対して、生成した基準補正情報を出力してサーチ対象周波数の制御の開始を指示し(ステップS223)、ステップS201へ戻って新たに周波数差情報が入力されるのを待機する(リターン)。
【0052】
サーチ周波数制御部109は、基準周波数設定部108から基準補正情報を入力されるたびに、その基準補正情報で基準補正情報格納部121の格納内容を更新する。また、基準補正情報格納部121に格納された基準補正情報に基づいて、GPS信号受信部104がGPS信号を捕捉する際の基準となる周波数としてのサーチ基準周波数を補正し、タイミング信号発生部113からサーチ周波数リセット信号を入力されるたびに、補正されたサーチ基準周波数を基点として、時間の経過とともにサーチ対象周波数を上下に理想的な増加率および増減率で移動させる。
【0053】
図6は、サーチ周波数制御部109によるサーチ周波数制御処理の流れを示すフロー図である。サーチ周波数制御部109は、タイミング信号発生部113からサーチ周波数リセット信号を入力されると(ステップS241:YES)、予め定められたサーチ基準周波数fに基準補正情報格納部121に格納された基準補正情報を乗じた値を図3に示す数値制御発振器140へと出力し、GPS信号受信部104に対して該当する周波数についてのサーチを行わせる。また、サーチ基準周波数fに対するサーチ対象周波数のシフト量を示すパラメータFに初期値「0」を設定する(ステップS242)。サーチ基準周波数fには、たとえばPRNコードのチップレート1.023MHzが設定される。
【0054】
サーチ周波数制御部109は、GPS信号が捕捉されない場合には(ステップS243:NO)、予め定められたサーチステップΔFだけパラメータFを増加させてから(ステップS244)、サーチ基準周波数fとパラメータFとの加算値に基準補正情報を乗じた値を数値制御発振器140へと出力し、GPS信号受信部104に対して該当する周波数についてのサーチを行わせる(ステップS245)。GPS信号が捕捉されない場合には(ステップS246:NO)、サーチ基準周波数fからパラメータFを減じた値に基準補正情報を乗じ、算出された値を数値制御発振器140へと出力してGPS信号受信部104に対して該当する周波数についてのサーチを行わせる(ステップS247)。
【0055】
まだGPS信号が捕捉されず(ステップS248:NO)、新たなサーチ周波数リセット信号の入力も無い場合には(ステップS249:NO)、サーチ周波数制御部109は、ステップS244へ戻ってパラメータFを更に増加させてGPS信号のサーチを継続する。新たにサーチ周波数リセット信号が入力された場合には(ステップS249:YES)、ステップS242へ戻ってサーチ対象周波数のリセットを行い、GPS信号のサーチを継続する。このとき、新たな基準補正情報も基準周波数設定部108から入力されているため、サーチ基準周波数もリセットされる。
【0056】
ステップS242からステップS249までの処理を繰り返す間にGPS信号が捕捉されると(ステップS243:YES、ステップS246:YESまたはステップS248:YES)、サーチ周波数制御部109は、再びステップS241へ戻って新たにサーチ周波数リセット信号が入力されるのを待機する(リターン)。なお、サーチ周波数リセット信号の入力と基準補正情報の入力は対応しているため、ステップS241で基準補正情報が入力の有無を判別し、基準補正情報が入力されたときにステップS242へ進むようにしてもよい。
【0057】
このようにして、最後にサーチ基準周波数およびサーチ対象周波数がリセットされてからのクロック周波数差の変動値が所定値Aに達するごとに、あるいはサーチ基準周波数およびサーチ対象周波数がリセットされない時間が所定値Bに相当する長さに達するごとに、サーチ基準周波数およびサーチ対象周波数はリセットされる。
【0058】
図7は、GPS信号受信部104によるサーチ対象周波数の変化の様子の一例を示す説明図である。横軸はサーチが開始されてからの経過時間を示し、縦軸は周波数を示している。説明の簡便化のため、以下、GPSクロック信号の理想的な周波数が、PRNコードのチップレートと同一であり、実際にGPS信号受信部104でサーチされる際の基準となる周波数(以下、「実サーチ基準周波数」という。)がGPSクロック信号の実際の周波数に一致するものとする。また、サーチ周波数制御部109の基準補正情報格納部121には、初期値として値「1」が格納されているものとし、GPS信号の実際の変動は周波数特性格納部122の格納内容と一致しているものとする。
【0059】
ここで、第1の時刻tにサーチが開始され、タイミング信号発生部113から周波数補正タイミング信号およびサーチ周波数リセット信号が出力されたとする。基準補正情報は、PRNコードのチップレート、すなわちここではGPSクロック信号の理想的な周波数をサーチ基準周波数fとすると、f/(f+Δf)で示される値に決定される。すると、同図に示すように、第1の時刻tの直後には、実サーチ基準周波数fはサーチ基準周波数fにほぼ一致する。
【0060】
ただし、周波数差情報は無線クロック信号に基づいて生成されているため、GPS信号のPRNコードのチップレートとしてのGPS信号周波数fとの間に、周波数誤差Δdは残る。しかしながら、GPS用クロック生成部106の発振周波数を調整した場合に比べて、その周波数精度は数ppm(parts per million)から1ppm以下の値へと向上する。
【0061】
サーチ対象周波数290は、図6で説明した処理により、実サーチ基準周波数fを基準として時間の経過とともに高周波側と低周波側に移動していく。ここで、GPSクロック周波数(実サーチ基準周波数f)が増加し、第2の時刻tでクロック周波数差がサーチ基準周波数fに前記した所定値Aを加算した値(以下、周波数変動上限値という。)fmaxに到達すると、タイミング信号発生部113は周波数補正タイミング信号およびサーチ周波数リセット信号を出力する。その結果、第2の時刻tの直後に実サーチ基準周波数fは再びサーチ基準周波数fと一致するように補正され、実サーチ基準周波数fを基点とするGPS信号のサーチが再開される。
【0062】
第3の時刻tに再びクロック周波数差が周波数変動上限値fmaxに到達すると、同様にGPS信号のサーチがリセットされる。GPSクロック周波数の変動は、同図に示すように温度補償型水晶発振器の動作開始時が最も大きく、時間の経過とともに小さくなっていく。したがって、第1の時刻tから第2の時刻tまでの時間長さよりも、第2の時刻tから第3の時刻tまでの時間長さのほうが長くなっている。第4の時刻tにサーチ対象周波数290がGPS信号周波数fに到達すると、サーチは終了する。なお、参考として、第2の時刻tと第3の時刻tでGPS信号のサーチがリセットされなかった場合の実サーチ基準周波数fを点線で示している。
【0063】
図8は、参考のためにクロック周波数差の推定値によらずにサーチのリセットを行った場合のGPS信号受信部104によるサーチ対象周波数の変化の様子の一例を示す説明図であり、図7に対応するものである。ここでは、周期SでGPS信号のサーチをリセットした場合のサーチ対象周波数の変化の様子を図示している。この例では、GPSクロック周波数の変動の大きさに係らずリセットが行われるため、たとえば第1の時刻tから第5の時刻tまでは実サーチ基準周波数fが大きく変動し、広い範囲の周波数帯域について無駄なサーチが行われている。一方で、第6の時刻tから第7の時刻tまでは実サーチ基準周波数fの変動が小さいにもかかわらず、第7の時刻tでサーチのリセットが行われてしまう。この例では、サーチ対象周波数290がGPS信号周波数fを捕捉するのは、図7の第4の時刻tよりも後の第8の時刻tとなることがわかる。
【0064】
図2に示すGPS信号受信部104では、GPS信号受信部104で捕捉されたGPS信号から元の信号を抽出し、コード同期時のコード位相や、周波数、信号レベルといった衛星捕捉情報を測位演算部105へと出力する。具体的には、図3に示す積分器138は、コード同期が確立されると、その出力がピークをとる。そこで、測位演算部105はこのピークを検出することによって、上記した衛星捕捉情報を取得することができる。測位演算部105は、取得した各衛星捕捉情報を基に測位演算を行い、測位結果を出力する。具体的には、PRNコードの位相シフト量から図1に示す4つのGPS衛星24−1〜24−4それぞれとの間の疑似距離を算出し、算出された各疑似距離を基に現在位置を算出し、その算出結果を出力する。
【0065】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、サーチ開始時からの経過時間に対応付けてGPSクロック信号のクロック周波数差の推定値を予め格納しておき、サーチが開始され、該当する推定値が所定値に達するタイミングをGPS信号のサーチをリセットすべきタイミングであると判別し、基準補正情報の修正を行ってサーチ基準周波数の合わせ込みを再度行うとともにサーチ対象周波数をサーチ基準周波数に戻す。これにより、サーチ開始後にGPSクロック信号が変動する場合でも、その変動が大きくなり所定値に達したタイミングで実際のサーチ基準周波数を理想値に合わせこむことができ、設定されたサーチ範囲についてのGPS信号のサーチをより確実に行うことができる。また、サーチ基準周波数およびサーチ対象周波数をリセットしない時間が所定値に達すると、同様にGPS信号をリセットするため、一時的にGPS信号が受信不能となっているような場合でも、理想的なサーチ範囲についてのサーチを速やかに再実行することができる。
【0066】
なお、周波数特性格納部122には、サーチ開始時からの経過時間だけでなくたとえば周囲温度などの他の条件に対応付けてクロック周波数差を格納しておき、各時刻に該当する複数のクロック周波数差の中から、他の条件に該当するものを周波数変動推定情報として出力するようにしてもよい。また、サーチ開始時の最初のサーチ基準周波数のリセットは、周波数比較部107への測位開始指示情報の入力をトリガとして行うようにしてもよい。
【0067】
また、周波数比較部107が出力する周波数差情報を基に、クロック周波数差の推定値の誤差を修正するようにしてもよい。更に、サーチ開始時から時間が経過するにしたがって通常はクロック周波数差の変動は小さくなることから、たとえばサーチ開始時からの経過時間に応じて、サーチ基準周波数およびサーチ対象周波数をリセットしないクロック周波数差の絶対値の上限値やサーチ基準周波数およびサーチ対象周波数をリセットしない最大時間を増加させるようにしてもよい。
【0068】
通常、水晶発振器の発振周波数は、電源の供給開始から十分に時間が経ち、温度が安定すると安定する。したがって、サーチ範囲のシフトを低減させるための対策として、水晶発振器に温度制御を施し、常に電源を供給しておくことも考えられる。しかしながら、携帯電話機を含めた各種の移動体通信端末では通常、蓄電池の小型化や軽量化の観点から、できるだけ消費電力を抑えることが求められている。したがって、このような市場の要求に適合した形で、より確実なGPS信号を実現することができる。
【0069】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係る信号捕捉装置が使用される移動通信端末装置としての携帯電話機の構成を示すブロック図であり、実施の形態1の図2に対応するものである。図2と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。携帯電話機30は、GPS用クロック生成部106の温度補償型水晶発振器の周辺温度(以下、発振器温度という。)を検出する温度センサ314を備えている。また、発振器温度の所定の単位時間あたりの変化量としての温度変動値を判別する温度変動値演算部320と、温度変動値に応じて所定の単位時間あたりのクロック周波数差の変化量としての周波数変動値がどのように変化するかを表す温度変動対周波数変動特性情報を格納する周波数特性格納部322とを有し、図2の周波数変動推定部111とは異なる処理を行う周波数変動推定部311を備えている。温度変動値演算部320は、温度センサ314が検出結果として出力する温度情報を基に温度変動値を演算し、周波数変動推定部311は、この演算結果に対応する周波数変動値を周波数特性格納部322から取得し、周波数変動推定情報としてタイミング信号発生部113へと出力する。
【0070】
図10は、周波数特性格納部322に格納された温度変動対周波数変動特性情報の内容を示す説明図である。横軸は温度変動値を、縦軸は周波数変動値をそれぞれ示す。温度変動対周波数変動特性情報391では、所定の単位時間あたりの温度変動値に、同じ単位時間あたりの周波数変動値が対応付けられている。たとえば、第1の温度変動値Δhには、同図に示すように第1の周波数変動値Δfが対応付けられている。
【0071】
図11は、周波数変動推定部311による周波数変動推定処理の流れを示すフロー図である。周波数変動推定部311は、図9に示す測位開始指示入力部110から測位開始指示情報を入力されると(ステップS401:YES)、タイマ112を初期化するとともにその計時を開始させ、最初の周波数変動推定情報を出力する(ステップS402)。この周波数変動推定情報は、タイミング信号発生部113に最初の周波数補正タイミング信号およびサーチ周波数リセット信号を出力させるためのトリガなので、所定値A未満であれば値は特に限定されない。そして、周波数変動推定部311は、温度センサ314が出力する最新の温度情報を取得し、取得した温度情報を記憶した後(ステップS403)、前記した所定の単位時間が経過したか否かの判別を行う(ステップS404)、まだ所定の単位時間が経過しておらず(ステップS404:NO)、かつGPS信号のサーチが終了していない場合には(ステップS405:NO)、ステップS404に戻る。所定の単位時間が経過したか否かの判別は、たとえばタイマ112から出力される時間情報を使用して行えばよい。
【0072】
周波数変動推定部311は、所定の単位時間が経過した場合には(ステップS404:YES)、温度センサ314が出力する最新の温度情報を取得し、温度変動値演算部320を使用して温度変動値を演算する(ステップS406)。温度変動値演算部320は、取得された温度情報からステップS403で記憶された温度情報を差し引いて、温度変動値を演算する。周波数変動推定部311は、演算された温度変動値に対応する周波数変動値を周波数特性格納部322から取得し、周波数変動推定情報としてタイミング信号発生部113に出力する(ステップS407)。
【0073】
周波数変動推定部311は、新たな周波数補正タイミング信号が入力されていない場合には(ステップS408:NO)、ステップS404へ戻る。このようにして、所定の単位時間ごとに温度変動値演算部320で温度変動値が演算され、対応する周波数変動値Δfがタイミング信号発生部113に出力される。ステップS404からステップS408を繰り返す間に、周波数補正タイミング信号が入力された場合には(ステップS408:YES)、サーチ基準周波数およびサーチ対象周波数のリセットが行われるため、ステップS403へ戻る。すなわち、GPS信号のサーチのリセットが行われるたびに、ステップS406での演算の基準となる温度情報が更新される。そして、GPS信号のサーチが終了すると(ステップS405:YES)、再びステップS401へ戻って新たに測位開始指示情報が入力されるのを待機する(リターン)。このようにして、実施の形態1と同様に、周波数変動推定情報がタイミング信号発生部113へと出力され、タイミング信号発生部113ではこの周波数変動推定情報に基づいて周波数補正タイミング信号およびサーチ周波数リセット信号を出力する。
【0074】
このように、本実施の形態では、サーチを開始してからの経過時間ではなく、発振器温度の変動値に基づいて周波数変動値を推定し、サーチ基準周波数およびサーチ対象周波数をリセットするタイミングを決定するため、クロック周波数差を基準としてリセットを行う場合に、より正確にタイミング決定を行うことができる。
【0075】
(実施の形態3)
図12は、本発明の実施の形態3に係る信号捕捉装置が使用される移動通信端末装置としての携帯電話機の構成を示すブロック図であり、実施の形態1の図2および実施の形態2の図9に対応するものである。そこで、図2および図9と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。携帯電話機50は、発振器温度に応じてGPSクロック周波数がどのように変化するかを表す周波数対温度特性情報を格納する周波数特性格納部522を有し、実施の形態1および実施の形態2の周波数変動推定部とは異なる処理を行う周波数変動推定部511を備えている。
【0076】
図13は、周波数特性格納部522に格納された周波数対温度特性情報の内容を示す説明図である。横軸は発振器温度を、縦軸はGPSクロック周波数をそれぞれ示す。周波数対温度特性情報591では、発振器温度にGPSクロック周波数が対応付けられている。たとえば、同図に示すように、第1の発振器温度hには第1のGPSクロック周波数fが対応付けられており、第2の発振器温度hには第2のGPSクロック周波数fが対応付けられている。この場合、第1の発振器温度hと第2の発振器温度hとの間の差分としての第1の温度変動値Δhには、第1のGPSクロック周波数fと第2のGPSクロック周波数fとの間の差分としての第1の周波数変動値Δfが対応付けられていることになる。
【0077】
図14は、周波数変動推定部511による周波数変動推定処理の流れを示すフロー図であり、実施の形態2の図11に対応するものである。周波数変動推定部511は、図12に示す測位開始指示入力部110から測位開始指示情報を入力されると(ステップS601:YES)、タイマ112を初期化するとともにその計時を開始させ、最初の周波数変動推定情報を出力する(ステップS602)。そして、温度センサ314が出力する最新の温度情報を取得し、その温度情報が示す発振器温度に対応するGPSクロック周波数を周波数特性格納部522から取得するとともに取得したGPSクロック周波数を記憶する(ステップS603)。
【0078】
周波数変動推定部511は、GPS信号のサーチが終了していない場合には(ステップS604:NO)、温度センサ314が出力する最新の温度情報を取得し、その温度情報が示す発振器温度に対応するGPSクロック周波数を周波数特性格納部522から取得する(ステップS605)。そして、ステップS605で取得したGPSクロック周波数からステップS603で記憶したGPSクロック周波数を差し引いて周波数変動値を演算し、演算結果を周波数変動推定情報としてタイミング信号発生部113へ出力する(ステップS606)。
【0079】
周波数変動推定部511は、タイミング信号発生部113から新たな周波数補正タイミング信号が入力されない場合には(ステップS607:NO)、ステップS604へ戻り、新たな周波数補正タイミング信号が入力された場合には(ステップS607:YES)、ステップS603へ戻る。すなわち、GPS信号のサーチのリセットが行われるたびに、ステップS606での演算の基準となるGPSクロック周波数が更新される。そして、GPS信号のサーチが終了すると(ステップS604:YES)、再びステップS601へ戻って新たに測位開始指示情報が入力されるのを待機する(リターン)。このようにして、実施の形態1および2と同様に、周波数変動推定情報がタイミング信号発生部113へと出力され、タイミング信号発生部113ではこの周波数変動推定情報に基づいて周波数補正タイミング信号およびサーチ周波数リセット信号を出力する。
【0080】
このように、本実施の形態では、発振器温度の変動値ではなく、発振器温度に対応するGPSクロック周波数の変動の推定値に基づいてサーチ基準周波数およびサーチ対象周波数をリセットするタイミングを決定するため、発振器温度によって周波数変動値が異なる場合にも対応させて、より正確にタイミング決定を行うことができる。
【0081】
(実施の形態4)
図15は、本発明の実施の形態4に係る信号捕捉装置が使用される移動通信端末装置としての携帯電話機の構成を示すブロック図であり、実施の形態3の図12に対応するものである。図12と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。携帯電話機70は、図12の温度センサ314に変えて携帯電話機70の動作状態を判別し、その動作状態を表す端末動作情報を出力する端末動作判別部715を備えている。また、周波数変動推定部711は、周波数特性格納部522の他に、端末動作情報に応じて発振器温度がどのように変動するかを示す端末動作対温度特性情報が予め格納された温度特性格納部723と、タイマ112から出力される時間情報に応じてそのカウント値を増加させることによって初期化が最後に行われてからの経過時間を測定するカウンタ724とを備えている。
【0082】
端末動作判別部715は、無線通信部102が無線通信を行っているか否かを監視しており、その監視結果を端末動作情報として周波数変動推定部711へ出力する。具体的には、通信オフの状態から通信オンの状態へ移行したと判別すると、通信オン信号を出力し、通信オンの状態から通信オフの状態へ移行したと判別すると、通信オフ信号を出力する。
【0083】
周波数変動推定部711は、端末動作判別部715から通信オン信号や通信オフ信号が入力されるたびにカウンタ724を初期化する。また、温度特性格納部723を参照してカウンタ724のカウント値に対応する発振器温度を取得し、周波数特性格納部522を参照して発振器温度に対応するGPSクロック周波数を取得する。
【0084】
図16は、温度特性格納部723に格納された端末動作対温度特性情報の内容を示す説明図である。横軸は時間を、縦軸は温度変動値をそれぞれ示す。端末動作対温度特性情報791では、無線通信部102が通信オフの状態から通信オンの状態に移行するときの時刻としての通信オン時刻tONを基点とする通信オンの区間TONの経過時間と、通信オンの状態から通信オフの状態に移行するときの時刻としての通信オフ時刻tOFFを基点とする通信オフの区間TOFFの経過時間に、発振器温度が対応付けられている。
【0085】
通信オン時刻tONの直後および通信オフ時刻tOFFの直後は、同図に示すように発振器温度の変化が大きいが、通信オン時刻tONから時間が経過するにしたがって、あるいは通信オフ時刻tOFFから時間が経過するにしたがって、発振器温度の変化は緩やかになっていき、それぞれ異なる一定の値に収束する。
【0086】
図17は、周波数変動推定部711による周波数変動推定処理の流れを示すフロー図であり、実施の形態3の図14に対応するものである。周波数変動推定部711は、端末動作判別部715から通信オン信号あるいは通信オフ信号が入力されるのを監視するとともに(ステップS801)、図15に示す測位開始指示入力部110から測位開始指示情報を入力されるのを監視する(ステップS802)。通信オン信号あるいは通信オフ信号のいずれかが入力されると(ステップS801:YES)、カウンタ724を初期化し(ステップS803)、ステップS801へ戻る。測位開始指示情報を入力されると(ステップS802:YES)、最初の周波数変動推定情報を出力し(ステップS804)、カウンタ724のカウント値に対応する発振器温度を温度特性格納部723から取得する(ステップS805)。更に、取得した発振器温度に対応するGPSクロック周波数を周波数特性格納部522から取得するとともに、取得したGPSクロック周波数を記憶する(ステップS806)。
【0087】
GPS信号のサーチが終了していない場合には(ステップS807:NO)、周波数変動推定部711は、通信オン信号あるいは通信オフ信号が新たに入力されたか否かを判別する(ステップS808)、通信オン信号あるいは通信オフ信号が新たに入力された場合には(ステップS808:YES)、カウンタ724を初期化した後(ステップS809)、カウンタ724のカウント値に対応する発振器温度を温度特性格納部723から取得し(ステップS810)、取得した発振器温度に対応するGPSクロック周波数を周波数特性格納部522から取得する(ステップS811)。そして、ステップS811で取得したGPSクロック周波数からステップS806で記憶したGPSクロック周波数を差し引いて周波数変動値を演算し、演算結果を周波数変動推定情報としてタイミング信号発生部113へ出力する(ステップS812)。通信オン信号と通信オフ信号のいずれも新たに入力されていない場合には(ステップS808:NO)、そのままステップS810へ進み、周波数変動推定情報の出力を行う。
【0088】
周波数変動推定部711は、タイミング信号発生部113から新たな周波数補正タイミング信号が入力されない場合には(ステップS813:NO)、ステップS807へ戻り、新たな周波数補正タイミング信号が入力された場合には(ステップS813:YES)、ステップS805へ戻る。ただし、ステップS804に対応してタイミング信号発生部113から最初に入力された周波数補正タイミング信号については、判別の対象としない。すなわち、サーチのリセットが行われるたびに、ステップS812での演算の基準となるGPSクロック周波数が更新される。GPS信号のサーチが終了すると(ステップS807:YES)、再びステップS801へ戻って新たに通信オン信号や、通信オフ信号、測位開始指示情報が入力されるのを監視する(リターン)。
【0089】
なお、ステップS805およびステップS811では、周波数変動推定部711は最後に端末動作判別部715から入力された信号が通信オン信号と通信オフ信号のいずれであるかを記憶し、これに基づいて発振器温度を取得する。また、カウンタ724のカウント値に該当する時間についての発振器温度が格納されていない場合には、通信オンの区間TONあるいは通信オフの区間TOFFのうち該当する区間の最後の時間に対応する発振器温度を取得する。
【0090】
図18は、以上説明した処理による基準補正情報の修正タイミングの一例を示す説明図である。横軸はサーチが開始されてからの経過時間を示し、縦軸はGPSクロック周波数を示している。GPSクロック周波数が、通信オン時刻tONの直後に急激に増加するものの時間の経過とともに徐々にその変化が緩やかになっていったとする。周波数補正タイミング信号およびサーチ周波数リセット信号は、既に説明したように、周波数変動推定情報が所定値Aだけ増加するごとに出力される。すると、基準補正情報の修正タイミングtS1〜tS5の時間間隔は、同図に示すように時間の経過とともに広くなっていく。
【0091】
このように、本実施の形態では、発振器温度に対応付けてGPSクロック周波数を予め格納するとともに、無線通信部102の動作状態に対応付けて発振器温度を予め格納しておく。そして、無線通信部102の状態を監視して該当する発振器温度を取得し、取得した発振器温度に基づいて該当するGPSクロック周波数を逐次取得して、周波数変動値を演算して周波数変動推定情報としてタイミング信号発生部113に出力する。これにより、GPSクロック周波数のクロック周波数差を、無線通信部102の動作状態から推定することができ、温度センサ等の温度変動値を検出するための装置を不要とすることができる。
【0092】
なお、本実施の形態では、無線通信部102の動作状態に基づいて周波数変動値を推定する例について説明したが、このように限定されるものではない。たとえば携帯電話機に備えられた小型カメラの動作状態など、無線通信部102の動作状態以外のGPSクロック周波数の変動に影響を及ぼす特定のパラメータに対応付けて、発振器温度やGPSクロック周波数あるいは周波数変動値を予め格納しておき、この特定のパラメータを決定あるいは判別する装置部を設けるようにしてもよいことは勿論である。
【0093】
(実施の形態5)
図19は、本発明の実施の形態5に係る信号捕捉装置が使用される移動通信端末装置としての携帯電話機の構成を示すブロック図であり、実施の形態1の図2に対応するものである。そこで、図2と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。この携帯電話機90は、実施の形態1のタイミング信号発生部113、周波数比較部107および基準周波数設定部108とはそれぞれ異なる処理を行うタイミング信号発生部913、周波数比較部907および基準周波数設定部908を備えている。また、実施の形態1の周波数変動推定部111は備えられていない。
【0094】
測位開始指示入力部110から出力される測位開始指示情報は、タイミング信号発生部913にも入力されるようになっている。本実施の形態の周波数比較部907は、測位開始指示情報が入力されると、GPSクロック周波数をその理想値と逐次比較して周波数差情報をタイミング信号発生部913および基準周波数設定部908へと出力する処理を開始する。タイミング信号発生部913は、周波数比較部907から入力される周波数差情報に基づいて、周波数補正タイミング信号およびサーチ周波数リセット信号を出力する。ただし、周波数補正タイミング信号は、基準周波数設定部908に出力される。基準周波数設定部908は、周波数補正タイミング信号の入力をトリガとして基準補正情報の修正を行う。
【0095】
図20は、タイミング信号発生部913によるタイミング信号発生処理の流れを示すフロー図である。タイミング信号発生部913は、図19に示す測位開始指示入力部110から測位開始指示情報を入力されると(ステップS951:YES)、タイマ112を初期化するとともにその計時を開始させ(ステップS952)、周波数補正タイミング信号およびサーチ周波数リセット信号を出力するとともに最新の周波数差情報および時間情報を記憶する(ステップS953)。
【0096】
GPS信号のサーチが終了していない場合には(ステップS954:NO)、タイミング信号発生部913は、最新の周波数差情報と時間情報を取得し、取得した周波数差情報からステップS953で記憶した周波数差情報を差し引いて周波数差変動値Δfを演算するとともに、取得した時間情報からステップS953で記憶した時間情報を差し引いてサーチ時間を演算する(ステップS955)。
【0097】
タイミング信号発生部913には、サーチ基準周波数およびサーチ対象周波数をリセットしない周波数差変動値の絶対値|Δf|の上限値としての所定値Aと、サーチ基準周波数およびサーチ対象周波数をリセットしない最大時間としての所定値Bが、予め設定されている。タイミング信号発生部913は、演算された周波数差変動値の絶対値|Δf|が所定値A未満であり、かつサーチ時間が所定値B未満の場合には(ステップS956:NO)、ステップS954へ戻る。一方、周波数差変動値の絶対値|Δf|が所定値A以上か、サーチ時間が所定値B以上の場合には(ステップS956:YES)、ステップS953へ戻り、周波数補正タイミング信号とサーチ周波数リセット信号を再び出力するとともに新たに最新の周波数差情報と時間情報を記憶する。
【0098】
ステップS953からステップS956の処理を繰り返すうちにGPS信号のサーチが終了すると(ステップS954:YES)、タイミング信号発生部913は、ステップS951へ戻り、再び新たに測位開始指示情報が入力されるのを待機する(リターン)。すなわち、タイミング信号発生部913は、周波数差変動値の絶対値|Δf|が所定値Aに達したときと、サーチ基準周波数およびサーチ対象周波数がリセットされない時間が所定値Bに相当する長さに達したときに、周波数補正タイミング信号およびサーチ周波数リセット信号を出力する。
【0099】
なお、サーチ基準周波数が補正されるたびに、周波数差情報を記憶して周波数差変動値Δfを演算しているが、周波数比較が逐次実行されるたびに周波数差情報を記憶し、前回の周波数比較時からの周波数変動値Δfを演算し、これを基に周波数補正タイミングを判定するものとしても良い。この場合、一定時間ごとの周波数変動、すなわち周波数変動の速度を基準としてサーチ基準周波数の補正タイミングを決定できる。このようにすることで、瞬時的に大きな周波数変動が起こりGPS信号のサーチが出来ない場合に対応でき、より正確に周波数補正タイミングを決定することができる。
【0100】
タイミング信号発生部913のタイミング信号発生処理は、以下に示すような内容にしてもよい。
【0101】
図21は、タイミング信号発生部913によるタイミング信号発生処理の流れの他の一例を示すフロー図である。タイミング信号発生部913は、測位開始指示情報を入力されると(ステップS971:YES)、サーチ基準周波数およびサーチ対象周波数をリセットするタイミングを決定するためのパラメータDに初期値として所定値Aを設定し(ステップS972)、周波数補正タイミング信号およびサーチ周波数リセット信号を出力する(ステップS973)。
【0102】
GPS信号のサーチが終了していない場合には(ステップS974:NO)、タイミング信号発生部913は、最新の周波数差情報の絶対値がパラメータD以上であるか否かを判別する(ステップS975)。周波数差情報の絶対値がパラメータD未満の場合には(ステップS975:NO)、ステップS974へ戻る。一方、周波数差情報の絶対値がパラメータD以上の場合には(ステップS975:YES)、タイミング信号発生部913は、パラメータDを所定値Aだけ増加させてから(ステップS976)、ステップS973へ戻り、周波数補正タイミング信号とサーチ周波数リセット信号を再び出力する。
【0103】
ステップS973からステップS976の処理を繰り返すうちにGPS信号のサーチが終了すると(ステップS974:YES)、タイミング信号発生部913は、ステップS971へ戻り、再び新たに測位開始指示情報が入力されるのを待機する(リターン)。すなわち、タイミング信号発生部913は、周波数差情報の絶対値が所定値Aだけ増加するごとに、周波数補正タイミング信号およびサーチ周波数リセット信号を出力する。
【0104】
基準周波数設定部908は、周波数補正タイミング信号が入力されるのを待機しており、周波数補正タイミング信号が入力されたと判別すると、実施の形態1の図5で説明したように、周波数比較部907から入力される周波数差情報に基づいて基準補正情報を生成し、サーチ周波数制御部109へと出力する。
【0105】
このように、本実施の形態では、クロック周波数差の変動の推定値ではなく、周波数差情報に基づいてサーチ基準周波数およびサーチ対象周波数をリセットするタイミングを決定するため、クロック周波数差を基準としてリセットを行う場合に、より正確にタイミング決定を行うことができる。また、クロック周波数差の変動を推定するための装置部が不要となり、装置の小型化や軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0106】
なお、以上説明した各実施の形態では、GPSクロック信号の比較の対象として、無線基地局との通信で得られるクロック信号を基準クロック信号として使用するようにしたが、他のクロック信号を使用してもよい。たとえば、あるチャネルでGPS信号を捕捉できた場合に、そのGPS信号の搬送波周波数に同期する形で得られるクロック信号を、他のチャネルでのサーチに基準クロック信号として使用するようにしてもよい。また、GPSクロック信号の理想的な周波数がPRNコードのチップレートと同一であるものとして説明を行ったが、当然ながらこれに限定されるものではない。周波数比較部が出力する周波数差情報に、PRNコードのチップレートをGPSクロック信号の理想値で除した値を乗じることによって、同様に適用することが可能である。更に、GPS機能を有する携帯電話機に本願発明を適用する場合について説明したが、これに限るものではなく、周波数が変動する可能性のあるクロック信号を使用して所定の周波数の信号の捕捉を試みるような他の各種装置に適用できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本願発明は、GPS(Global Positioning System)衛星から送出される信号を捕捉する機能を有する移動体通信端末に用いるに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の実施の形態1に係る信号捕捉装置が使用される通信システムの構成を示すシステム構成図
【図2】本発明の実施の形態1に係る携帯電話機の構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態1に係るGPS信号受信部の回路構成を示す回路構成図
【図4】本発明の実施の形態1に係るタイミング信号発生部によるタイミング信号発生処理の流れを示すフロー図
【図5】本発明の実施の形態1に係る基準周波数設定部による基準周波数設定処理の流れを示すフロー図
【図6】本発明の実施の形態1に係るサーチ周波数制御部によるサーチ周波数制御処理の流れを示すフロー図
【図7】本発明の実施の形態1に係るGPS信号受信部によるサーチ対象周波数の変化の様子の一例を示す説明図
【図8】参考のためにクロック周波数差の推定値によらずにサーチのリセットを行った場合のGPS信号受信部によるサーチ対象周波数の変化の様子の一例を示す説明図
【図9】本発明の実施の形態2に係る信号捕捉装置が使用される移動通信端末装置としての携帯電話機の構成を示すブロック図
【図10】本発明の実施の形態2に係る周波数特性格納部に格納された温度変動対周波数変動特性情報の内容を示す説明図
【図11】本発明の実施の形態2に係る周波数変動推定部による周波数変動推定処理の流れを示すフロー図
【図12】本発明の実施の形態3に係る信号捕捉装置が使用される移動通信端末装置としての携帯電話機の構成を示すブロック図
【図13】本発明の実施の形態3に係る周波数特性格納部に格納された周波数対温度特性情報の内容を示す説明図
【図14】本発明の実施の形態3に係る周波数変動推定部による周波数変動推定処理の流れを示すフロー図
【図15】本発明の実施の形態4に係る信号捕捉装置が使用される移動通信端末装置としての携帯電話機の構成を示すブロック図
【図16】本発明の実施の形態4に係る温度特性格納部に格納された端末動作対温度特性情報の内容を示す説明図
【図17】本発明の実施の形態4に係る周波数変動推定部による周波数変動推定処理の流れを示すフロー図
【図18】本発明の実施の形態4に係る基準補正情報の修正タイミングの一例を示す説明図
【図19】本発明の実施の形態5に係る信号捕捉装置が使用される移動通信端末装置としての携帯電話機の構成を示すブロック図
【図20】本発明の実施の形態5に係るタイミング信号発生部によるタイミング信号発生処理の流れを示すフロー図
【図21】本発明の実施の形態5に係るタイミング信号発生部によるタイミング信号発生処理の流れの他の一例を示すフロー図
【図22】従来の提案による従来のGPS信号のサーチの様子の一例を示す説明図
【符号の説明】
【0109】
10、30、50、70、90 携帯電話機
20 通信システム
21 携帯電話網
23 無線基地局
24 GPS衛星
101 無線用アンテナ
102 無線通信部
103 GPS用アンテナ
104 GPS信号受信部
105 測位演算部
106 GPS用クロック生成部
107、907 周波数比較部
108、908 基準周波数設定部
109 サーチ周波数制御部
110 測位開始指示入力部
111、311、511、711 周波数変動推定部
112 タイマ
113、913 タイミング信号発生部
121 基準補正情報格納部
122、322、522 周波数特性格納部
131 増幅回路
132 第1のミキサ
133 第1の帯域制限フィルタ
134 第2のミキサ
135 第2の帯域制限フィルタ
136 アナログデジタル変換器
137 第3のミキサ
138 積分器
139 周波数逓倍器
140 数値制御発振器
141 PRNコード生成部
314 温度センサ
320 温度変動値演算部
715 端末動作判別部
723 温度特性格納部
724 カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のクロック信号を動作クロックとして捕捉の対象となる信号のサーチを行うとともに、そのサーチの対象となる信号の周波数を補正情報を用いて補正する信号受信手段と、
前記所定のクロック信号の周波数の理想値に対する差の変動値としての周波数変動値を推定する周波数変動推定手段と、
前記周波数差推定手段の推定値に基づいて、前記補正情報を修正すべきタイミングを判別するタイミング判別手段と、
前記所定のクロック信号の周波数の理想値に対する差としての周波数差を検出する周波数差検出手段と、
前記タイミング判別手段によって判別されたタイミングに、前記周波数差検出手段による検出結果に基づいて前記補正情報を修正する周波数設定手段と、
を具備することを特徴とする信号捕捉装置。
【請求項2】
所定のクロック信号を動作クロックとして捕捉の対象となる信号のサーチを行うとともに、そのサーチの対象となる信号の周波数を補正情報を用いて補正する信号受信手段と、
前記所定のクロック信号の周波数の理想値に対する差としての周波数差を検出する周波数差検出手段と、
前記周波数差検出手段の検出結果に基づいて、前記補正情報を修正すべきタイミングを判別するタイミング判別手段と、
前記タイミング判別手段によって判別されたタイミングに、前記周波数差検出手段による検出結果に基づいて前記補正情報を修正する周波数設定手段と、
を具備することを特徴とする信号捕捉装置。
【請求項3】
前記周波数変動推定手段は、前記周波数設定手段によって最後に前記補正情報が修正されてからの前記周波数差の変動値を逐次推定し、
前記タイミング判別手段は、前記周波数差推定手段の最新の推定値が所定の範囲内であるか否かを判別し、前記所定の範囲内ではないことが判別されたタイミングを前記補正情報を修正すべきタイミングと判別することを特徴とする請求項1記載の信号捕捉装置。
【請求項4】
前記タイミング判別手段は、前記周波数設定手段によって最後に前記補正情報が修正されてからの前記周波数差の変動値が所定の範囲内であるか否かを判別し、前記所定の範囲内ではないことが判別されたタイミングを前記補正情報を修正すべきタイミングと判別することを特徴とする請求項2記載の信号捕捉装置。
【請求項5】
前記所定のクロック信号を生成するクロック信号生成手段と、
前記クロック信号生成手段の温度の変動値としての温度変動値に対応付けて、前記周波数変動値の推定値を格納する周波数変動情報格納手段と、
前記クロック信号生成手段の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段による検出結果に基づいて、前記周波数設定手段によって最後に前記補正情報が修正されてからの前記温度変動値を逐次演算する温度変動値演算手段とを更に具備し、
前記周波数変動推定手段は、前記温度変動値演算手段の最新の演算結果に対応する前記周波数変動値の推定値を前記周波数差情報格納手段から取得することを特徴とする請求項1記載の信号捕捉装置。
【請求項6】
前記所定のクロック信号を生成するクロック信号生成手段と、
前記クロック信号生成手段の温度に対応付けて、前記所定のクロック信号の周波数としてのクロック周波数の推定値を格納する周波数変動情報格納手段と、
前記クロック信号生成手段の温度を検出する温度検出手段とを更に具備し、
前記周波数変動推定手段は、前記温度検出手段によって検出された温度に対応する前記クロック周波数の推定値を前記周波数差情報格納手段から取得し、取得された前記クロック周波数の推定値に基づいて、前記周波数設定手段によって最後に前記補正情報が修正されてからの前記周波数変動値を判別することを特徴とする請求項1記載の信号捕捉装置。
【請求項7】
前記所定のクロック信号を生成するクロック信号生成手段と、
前記クロック信号生成手段の温度に影響を及ぼす所定の装置部の動作状態に対応付けて、前記クロック信号生成手段の温度の推定値を格納する温度情報格納手段と、
前記クロック信号生成手段の温度に対応付けて、前記所定のクロック信号の周波数としてのクロック周波数の推定値を格納する周波数変動情報格納手段と、
前記所定の装置部の動作状態を判別する動作判別手段とを更に具備し、
前記周波数変動推定手段は、前記動作判別手段の最新の判別結果に対応する前記クロック信号生成手段の温度の推定値を取得し、取得した前記クロック信号生成手段の温度に対応する前記周波数変動値の推定値を前記周波数差情報格納手段から取得することを特徴とする請求項1記載の信号捕捉装置。
【請求項8】
捕捉の対象となる信号のサーチの開始からの経過時間に対応付けて、前記周波数変動値の推定値を格納する周波数変動情報格納手段と、
前記サーチの開始からの経過時間を測定するタイマとを更に具備し、
前記周波数変動推定手段は、前記タイマが測定する前記経過時間に対応する前記周波数変動値の推定値を前記周波数差情報格納手段から取得することを特徴とする請求項1記載の信号捕捉装置。
【請求項9】
所定のパラメータの値を時間の経過とともに増加させ、基準周波数に前記所定のパラメータの値を加算した周波数と基準周波数に前記所定のパラメータの値を符号反転させた値を加算した周波数を対象として前記信号受信手段に対してサーチを行わせるとともに、前記周波数設定手段によって前記補正情報が修正されるたびに前記所定のパラメータの値を初期化するサーチ対象周波数制御手段を更に具備することを特徴とする請求項1または請求項2記載の信号捕捉装置。
【請求項10】
所定のクロック信号の周波数の理想値に対する差の変動値としての周波数変動値を推定する周波数変動推定ステップと、
前記周波数差推定ステップによる推定値に基づいて、前記所定のクロック信号を動作クロックとして捕捉の対象となる信号のサーチを行う信号受信手段がそのサーチの対象となる信号の周波数を補正するのに用いる補正情報を修正すべきか否かを判別する補正情報修正判別ステップと、
前記補正情報修正判別ステップで前記補正情報を修正すべきと判別されると、前記所定のクロック信号の周波数の理想値に対する差としての周波数差を検出する周波数差検出ステップと、
前記周波数差検出ステップによる検出結果に基づいて前記補正情報を修正する周波数設定ステップと、
を具備することを特徴とする信号捕捉方法。
【請求項11】
所定のクロック信号の周波数の理想値に対する差としての周波数差を検出する周波数差検出ステップと、
前記周波数差検出ステップによる検出結果に基づいて、前記所定のクロック信号を動作クロックとして捕捉の対象となる信号のサーチを行う信号受信手段がそのサーチの対象となる信号の周波数を補正するのに用いる補正情報を修正すべきか否かを判別する補正情報修正判別ステップと、
前記補正情報修正判別ステップで前記補正情報を修正すべきと判別されると、前記周波数差検出ステップによる検出結果に基づいて前記補正情報を修正する周波数設定ステップと、
を具備することを特徴とする信号捕捉方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−285780(P2007−285780A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111375(P2006−111375)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】