説明

信号読取装置用樹脂成形部品及びその成形方法

【課題】 軽量で振動減衰特性の向上や共振周波数の高周波数化が可能であるとともに放熱性に優れた信号読取装置用樹脂成形部品。
【解決手段】 下記一般式(I)〜(IV)で表される構成単位からなる液晶性ポリマー(A)55〜75重量%及び無機球状中空体(B1)20〜10重量%及び繊維状無機充填剤(B2)25〜15重量%からなり、比重dが1.4以下、熱伝導率λが0.5W/m・K以上、曲げ弾性率が10GPa以上である信号読取装置用樹脂成形部品。
【化1】


(Ar1は2,6−ナフタレン基;Ar2は1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基及び1,4−フェニレン基から選ばれる;Ar3は1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基及びp,p’−ポリフェニレン基から選ばれる;Ar4は1,4−フェニレン基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で振動減衰特性の向上や共振周波数の高周波数化が可能であるとともに放熱性に優れた信号読取装置用樹脂成形部品及びその射出成形方法に関し、詳しくは、液晶性ポリマー及び無機充填剤からなり、比重dが1.4以下、熱伝導率λが0.5W/m・K以上である信号読取装置用樹脂成形部品及びその射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の信号読取装置、特にデジタルディスク駆動装置の扱う情報の大容量化、高速化には目覚ましいものがあり、CD-ROMのディスク回転速度の高倍速化、DVDの普及による記録情報密度の高密度化が進んでいる。
これらのデジタルディスク駆動装置のディスクは、偏心、面振れ、回転振動等に起因した振動を生じることから、ディスクの情報を読み取る場合に、例えばレーザーを用いていると、レーザーの焦点とディスク上の読み取るべき情報の位置が相対的にずれてしまい、読み取りエラーが発生する。
これを防止するため、従来から信号読取装置には振動等によりずれた量を補正する機構が設けられているが、上記したような、近年のデジタルディスク駆動装置の高速化により振動が増大したことや、振動周波数の高周波数化や情報密度の高密度化により、信号読取装置の振動減衰特性の向上や共振周波数の高周波数化が、一層求められるようになってきている。
【0003】
そのため、従来信号読取装置に用いていた熱可塑性樹脂材料では、安定した読取性能が得られなくなってきた。また信号読取装置やその他の構成部品は高倍速化に対応するために、速い応答性が要求される。この応答性に最も関わる要因として信号読取装置やその他構成部品自身の重さが大きく影響する。このため比重の低い材料が要求されている。
従来、低比重の材料要求に対しては充填剤の量を減らしたり、中空の無機フィラーを複合することで実現されている。
しかし、高倍速化に伴いデジタルディスク駆動装置の発熱が問題となり、安定した信号読取精度が得られなく、高放熱材料が要求されている。
【0004】
特開2001−172479号公報には、LCP100重量部に対して、平均粒径5〜500μm、中空率60〜80%の中空球体2〜50重量部、および無機繊維0〜40重量部を配合してなり、かつ、中空球体の破壊率を示すXの値が10〜50である軽量で低熱伝導性の液晶ポリエステル樹脂組成物が開示されている。(特許文献1参照。)
しかし、該技術には、信号読取装置の中でも共振周波数の高周波数化や振動減衰特性の向上に適した材料として用いられることは記載も示唆もされていない。また、実施例の熱伝導率は0.42W/m・K以下であり、高いものは不適当とされている。
【0005】
特開2004−27021号公報には、融点320℃以上の全芳香族液晶ポリエステル90〜45重量%、アスペクト比が2以下の無機球状中空体10〜40重量%、アスペクト比が4以上の無機充填剤0〜15重量%を配合した組成物を射出成形して得られる、比誘電率が3.0以下、誘電正接が0.04以下の全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物成形体が、耐ハンダリフロー等の耐熱性を有し、誘電特性に優れ、マイクロ波、ミリ波などの高周波帯域で用いられる情報通信機器の送受信部品の固定あるいは保持部材に用いられる成形体が開示されている。(特許文献2参照。)
しかし、該技術には、共振周波数の高周波数化や効果的な振動減衰特性を有し、且つ熱伝導率の高い信号読取装置用材料として用いられることは記載も示唆もされていない。
【0006】
【特許文献1】特開2001−172479号公報(請求項1〜4、実施例、表1)
【特許文献2】特開2004−27021号公報(請求項1〜7、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、軽量で振動減衰特性の向上や共振周波数の高周波数化が可能であるとともに放熱性に優れた信号読取装置用樹脂成形部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、液晶性ポリマー及び無機充填剤を用いて、比重を特定の値以下、熱伝導率を特定の値以上である樹脂成形部品を用いることにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の第1は、液晶性ポリマー(A)及び無機充填剤(B)からなり、比重dが1.4以下、熱伝導率λが0.5W/m・K以上である信号読取装置用樹脂成形部品を提供する。
本発明の第2は、d2/λが4以下である本発明の第1に記載の信号読取装置用樹脂成形部品を提供する。
本発明の第3は、液晶性ポリマー(A)が、下記一般式(I)、(II)、(III)及び(IV)で表される構成単位からなり、構成単位(I)が40〜75モル%、構成単位(II)が8.5〜30モル%、構成単位(III)が8.5〜30モル%及び構成単位(IV)が0.1〜8モル%((I)〜(IV)の構成単位の合計は100モル%である)である本発明の第1又は2に記載の信号読取装置用樹脂成形部品を提供する。
【化1】

(上記式(I)〜(IV)において、Ar1は2,6−ナフタレン基;Ar2は1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基及び1,4−フェニレン基から選ばれる1種以上の基;Ar3は1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基及びp、p’−ポリフェニレン基から選ばれる1種以上の基;Ar4は1,4−フェニレン基を表す。)
本発明の第4は、液晶性ポリマー(A)55〜75重量%、無機球状中空体(B1)20〜10重量%及び繊維状無機充填剤(B2)25〜15重量%((A)、(B1)及び(B2)の合計は100重量%である)からなる本発明の第1〜3のいずれか1項に記載の信号読取装置用樹脂成形部品を提供する。
本発明の第5は、無機球状中空体(B1)がガラスバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、炭素バルーン、及び/又は各種炭素数のフラーレンである本発明の第1〜4のいずれか1項に記載の信号読取装置用樹脂成形部品を提供する。
本発明の第6は、繊維状無機充填剤(B2)がガラス繊維、カーボン繊維、カーボンナノ繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維及び/又はアルミナ繊維である本発明の第1〜5のいずれか1項に記載の信号読取装置用樹脂成形部品を提供する。
本発明の第7は、ISO 178による試験片に成形した場合に、曲げ弾性率が10GPa以上を示す本発明の第1〜6のいずれか1項に記載の信号読取装置用樹脂成形部品を提供する。
本発明の第8は、信号読取装置が、光信号デジタルディスク読取装置であり、光ピックアップ用レンズホルダー、軸受、ボビン、摺動軸及び/又はアクチュエーターボディに使用される本発明の第1〜7のいずれか1項に記載の信号読取装置用樹脂成形部品を提供する。
本発明の第9は、液晶性ポリマー(A)55〜75重量%及び無機充填剤(B)45〜25重量%((A)と(B)の成分の合計は100重量%である)からなるペレットを射出成形して、ISO 178による試験片に成形した場合に、曲げ弾性率が10GPa以上、比重dが1.4以下、熱伝導率λが0.5W/m・K以上である信号読取装置用樹脂成形部品を得る成形方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軽量で振動減衰特性の向上や共振周波数の高周波数化が可能であるとともに放熱性に優れた信号読取装置用樹脂成形部品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
デジタルディスク駆動装置の制御機構は、ムービングコイル型のモータ(ボイスコイルモーター)が主として使用されている。
ムービングコイルに発生する電磁力は、F=I・l・Bg(F:電磁力、I:電流、l:磁束と直交しているコイル長さ、Bg:空隙内の磁束密度)で表される。
運動方程式は、F=m・a(F:力、m:質量(=比重×体積)、a:加速度)で表されるので、電磁力との関係より、材料比重とコイル電流が比例関係にあり、比重の大きい材料ほど大きい電流が必要となる。
一方、ムービングコイルに電流を流すと、電気抵抗により発熱する。単位時間あたりの発熱量は、ジュールの法則により、Q=R・I2(Q:発熱量、R:電気抵抗、I:電流)で表される。
放熱量は、材料の熱伝導率に比例するから、発熱量を一定とすると、比重dが同じ材料の場合、熱伝導率λの高い材料の方が有利であり、熱伝導率λが同じである場合は、比重dの小さい材料の方が発熱量が小さくなり有利であり、材料特性としては、d2/λが低い材料ほど良好な材料と言える。
【0012】
本発明では、信号読取装置用樹脂成形部品の材料として、液晶性ポリマー(A)及び無機充填剤(B)からなり、比重dが1.4以下、熱伝導率λが0.5W/m・K以上であるものを用いる。
本発明では、上記材料のd2/λは4以下である。
本発明では、上記材料をISO 178による試験片に成形した場合に、曲げ弾性率が10GPa以上である。
本発明では、上記材料を用いて作成したピックアップの2次共振点の周波数は20kHz以上、好ましくは25kHz以上である。
【0013】
液晶性ポリマー(A)
液晶性ポリマーとは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有する溶融加工性ポリマーを指す。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することが出来る。本発明に適用できる液晶性ポリマーは直交偏光子の間で検査したときに、たとえ溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示す。
本発明で使用する液晶性ポリマーは、芳香族ポリエステルである。
【0014】
上記芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドとして、特に好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンの群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を構成成分として有する芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルアミドである。
上記液晶性ポリマー(A)は、下記一般式(I)、(II)、(III)及び(IV)で表される構成単位からなる。
構成単位(I)は、40〜75モル%、好ましくは40〜60モル%、さらに好ましくは45〜60モル%である。
構成単位(II)は、8.5〜30モル%、好ましくは17.5〜30モル%である。
構成単位(III)は、8.5〜30モル%、好ましくは17.5〜30モル%である。
構成単位(IV)は、0.1〜8モル%好ましくは1〜6モル%である。
(ここで、(I)〜(IV)の構成単位の合計は100モル%である)
【化2】

(上記式中、Ar1は2,6−ナフタレン基;Ar2は1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基及び1,4−フェニレン基から選ばれる1種以上の基;Ar3は1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基及びp、p’−ポリフェニレン基から選ばれる1種以上の基;Ar4は1,4−フェニレン基を表す。)
【0015】
構成単位(I)を与えるモノマーとしては、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
構成単位(II)を与えるモノマーとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
構成単位(III)を与えるモノマーとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等が挙げられる。
構成単位(IV)を与えるモノマーとしては、m−及び/又はp−ヒドロキシ安息香酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸が挙げられ、好ましくはp−体である。
また、上記(I)〜(IV)のモノマーはヒドロキシル基が炭素数1〜6のカルボン酸でエステル化されていたり、カルボキシル基が炭素数1〜6のアルコール又はフェノールでエステル化されていたり、酸ハライドの形であったりしてもよい。
上記の構成成分に、必要に応じてさらに分子量調整剤を併用してもよい。
上記液晶ポリマー(A)としては、製造方法、製造触媒、製造原料の形態を問わない。
【0016】
無機充填剤(B)
上記無機充填剤(B)は、無機球状中空体(B1)及び/又は繊維状無機充填剤(B2)である。
無機球状中空体(B1)としては、ガラスバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、炭素バルーン、各種炭素数のフラーレンなどが挙げられる。
繊維状無機充填剤(B2)としては、ガラス繊維、カーボン繊維、カーボンナノ繊維(直径のみがナノサイズである。)、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、アモルファス繊維、シリコン・チタン・炭素系繊維、セピオライト等が挙げられる。
なお、信号読取装置用としては、10GPa以上の高剛性を有する材料が好ましく、繊維状無機充填剤としてはアスペクト比10以上のものであり、20以上で樹脂組成物内に分散されるものが好ましい。ガラス繊維やカーボン繊維等の場合は長さ2〜6mm程度のチョップドストランドを用いることにより、一般的な溶融混練により、長さ300〜600μm程度で分散される。
これらの充填剤は、公知の表面処理剤を併用したり、予め処理してあってもかまわない。表面処理剤として一般的に用いられるのは、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、チタネート系化合物、シラン系化合物等である。
【0017】
液晶性ポリマー(A)と無機充填剤(B)の配合比率は、液晶性ポリマー(A)55〜75重量%、好ましくは60〜70重量%、及び無機充填剤(B)45〜25重量%、好ましくは40〜30重量%((A)と(B)の成分の合計は100重量%である。)である。
液晶性ポリマー(A)55〜75重量%、無機球状中空体(B1)10〜20重量%及び繊維状無機充填剤(B2)15〜25重量%、好ましくは液晶性ポリマー(A)60〜70重量%、無機球状中空体(B1)10〜15重量%及び繊維状無機充填剤(B2)20〜25重量%である。
【0018】
なお、本発明で用いられる液晶性ポリマー(A)に対して、本発明の目的を損なわない範囲で針状の補強材、他の無機もしくは有機充填材、フッ素樹脂や金属石鹸類などの離型剤、染料、顔料、カーボンブラックなどの着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等の滑剤効果を有する配合剤などの通常の添加剤を1種以上添加することができる。
【0019】
本発明に係る信号読取装置は、光信号デジタルディスク読取装置であり、光の種類はレーザーが好ましく、光の波長は赤外から紫外まで可能であるが、好ましくは可視光領域であり、さらに好ましくは青色領域である。
デジタルディスクとしては、CD、MD、DVDなどが挙げられる。
本発明の信号読取装置用樹脂成形部品としては、光ピックアップ用レンズホルダー、軸受、ボビン、摺動軸及び/又はアクチュエーターボディ等が挙げられる。
【0020】
(実施例)
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
(製造例1)(液晶ポリマー(A1)の製造)
攪拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、4−ヒドロキシ安息香酸5g(2モル%)、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸166g(48モル%)、テレフタル酸76g(25モル%)、4,4'−ジヒドロキシビフェニル86g(25モル%)、酢酸カリウム22.5mg、無水酢酸193gを仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。
その後、更に360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから30分かけて5Torr(即ち667Pa)まで減圧にして、副生酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重縮合を行った。攪拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレット化し、ポリマー(A1)(比重1.39)を得た。
【0022】
(製造例2)(液晶ポリマー(A2)の製造)
4−ヒドロキシ安息香酸226g(73モル%)、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸114g(27モル%)、酢酸カリウム22.5mg、無水酢酸236gを仕込んだ以外は製造例1と同様に行い、ポリマー(A2)(比重1.39)を得た。
【0023】
(製造例3)(液晶ポリマー(A3)の製造)
2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸266g(60モル%)、テレフタル酸66g(20モル%)、4−アセトキシアミノフェノール60g(20モル%)、酢酸カリウム22.5mg、無水酢酸168gを仕込んだ以外は製造例1と同様に行い、ポリマー(A3)(比重1.39)を得た。
【0024】
(製造例4)(液晶ポリマー(A4)の製造)
4−ヒドロキシ安息香酸188g(60モル%)、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸21g(5モル%)、テレフタル酸66g(17.5モル%)、4,4'−ジヒドロキシビフェニル53g(12.5モル%)、4−アセトキシアミノフェノール17g(5モル%)、酢酸カリウム22.5mg、無水酢酸227gを仕込んだ以外は製造例1と同様に行い、ポリマー(A4)(比重1.39)を得た。
【0025】
(製造例5)(液晶ポリマー(A5)の製造)
4−ヒドロキシ安息香酸184g(60モル%)、テレフタル酸55g(15モル%)、イソフタル酸18g(5モル%)、4,4'−ジヒドロキシビフェニル83g(20モル%)、酢酸カリウム22.5mg、無水酢酸231gを仕込んだ以外は製造例1と同様に行い、ポリマー(A5)(比重1.39)を得た。
【0026】
以下の実施例および比較例で使用した充填剤を示す。
(1)無機球状中空体:住友3M(株)製S60HS(平均粒径:30μm、真比重:0.60)
(2)ガラス繊維(GFと略す):旭ファイバーガラス(株)製CSO3JA419(繊維径10μm、長さ3mmのチョップドストランドファイバー)
(3)ミルドファイバー(MFと略す):日東紡(株)製PF70E-001(繊維径10μm、平均繊維長70μm)
(4)カーボンファイバー(CFと略す):東邦テナックス(株)製HTA-C-X132(繊維径7μm、長さ6mmのチョップドストランドファイバー)
【0027】
実施例および比較例中の物性の測定および試験は次の方法で行った。
(1)熱伝導率測定:直径30mm、厚さ2mmの円板状成形品試験片を4枚重ねたサンプルを用い、ホットディスク法にて熱伝導率を測定した。
[成形条件]
成形機:東芝IS30FPA-1A
シリンダー温度:
(実施例1〜4及び比較例1〜3、7〜9)370-370-360-350℃
(比較例4,5)300-300-290-280℃
(比較例6)350-350-340-330℃
金型温度:80℃、射出速度:200mm/秒、保圧力:39.2MPa、保圧時間:3秒、
冷却時間:7秒、スクリュー回転数:120rpm、スクリュー背圧:0.5MPa
(2)比重測定:ISO 178に従って、(株)日本製鋼所製J75SSII−A射出成形機によりダンベル試験片を成形し、その試験片をISO 1183に従って室温(23℃)にて比重測定を行なった。
(3)周波数特性評価:図1に示される形状及び寸法のレンズホルダーを射出成形により作成し、対物レンズ及びコイルを装着して、光ピックアップ用レンズホルダーを作成した。図1において、1は対物レンズ装着穴、2はレンズホルダー、3はワイヤー支持穴である。図1における各部の寸法は、a:10.0mm、b:6.5mm、c:10.0mm、d:4.0mm、e:4.0mmである。
作成した光ピックアップ用レンズホルダーをピックアップの位置決め磁気回路に設置し、各周波数の雑音電気信号を入力し、ピックアップを振動させて、各周波数における光ピックアップ用レンズホルダーの変位をレーザードップラー式変位計で読み取ることにより周波数特性を測定した。
測定チャートの例を図2に示す。チャートの横軸は周波数(Hz)、縦軸は(dB)を示す。2次共振点が制御範囲の20kHz未満に現れると、レンズホルダー自体が共振して制御不能となるため、2次共振点が20kHz以上の周波数特性を持つ材料でなければならない。そこで2次共振点が20kHz以上の周波数特性を持つ材料を○とし、2次共振点が20kHz未満の周波数特性を持つ材料を×とした。
なお、2次共振点(周波数)は評価装置の電気的特性などには依存しない。
(4)曲げ弾性率測定:ISO 178に準拠して行った。
【0028】
(実施例1)
日本製鋼所製、二軸スクリュー押出機TEX-30α(スクリュー径32mm、L/D:38.5)を用い、シリンダー温度370℃で、液晶ポリマーA1の65重量%を上流部から供給し、サイドフィード部より無機中空フィラー15重量%とガラス繊維20重量%を供給して溶融混練し樹脂組成物ペレット得た。得られた樹脂組成物ペレットを各種試験に使用した。なお、以下の例でも液晶ポリマーは上流部から供給し、サイドフィード部より無機充填剤を供給した。
【0029】
(実施例2)
液晶ポリマーA1の60重量%、無機中空フィラー20重量%とガラス繊維20重量%を供給した以外は実施例1と同様に行った。
【0030】
(実施例3)
液晶ポリマーA1の65重量%、無機中空フィラー15重量%とカーボン繊維20重量%を供給した以外は実施例1と同様に行った。
【0031】
(実施例4)
液晶ポリマーA1の70重量%、無機中空フィラー15重量%とガラス繊維15重量%を供給した以外は実施例1と同様に行った。
【0032】
(比較例1)
液晶ポリマーA1の65重量%、ガラス繊維35重量%を供給した以外は実施例1と同様に行った。
【0033】
(比較例2)
液晶ポリマーA1の80重量%、ガラス繊維20重量%を供給した以外は実施例1と同様に行った。
【0034】
(比較例3)
液晶ポリマーA1の60重量%、無機中空フィラー30重量%とガラス繊維10重量%を供給した以外は実施例1と同様に行った。
【0035】
(比較例4)
シリンダー温度300℃で、液晶ポリマーA2の65重量%、無機中空フィラー15重量%とガラス繊維20重量%を供給した以外は実施例1と同様に行った。
【0036】
(比較例5)
シリンダー温度300℃で、液晶ポリマーA3の65重量%、無機中空フィラー15重量%とガラス繊維20重量%を供給した以外は実施例1と同様に行った。
【0037】
(比較例6)
シリンダー温度350℃で、液晶ポリマーA4の65重量%、無機中空フィラー15重量%とガラス繊維20重量%を供給した以外は実施例1と同様に行った。
【0038】
(比較例7)
液晶ポリマーA5の90重量%、ガラス繊維10重量%を供給した以外は実施例1と同様に行った。
【0039】
(比較例8)
液晶ポリマーA1の90重量%、ガラス繊維10重量%を供給した以外は実施例1と同様に行った。
【0040】
(比較例9)
液晶ポリマーA1の65重量%、無機中空フィラー15重量%とミルドファイバー20重量%を供給した以外は実施例1と同様に行った。
上記結果を表1にまとめて示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】光アップレンズホルダーの形状を示す図である。図1(a)は光アップレンズホルダーの平面図である。図1(b)は光アップレンズホルダーの右側面図である。図1(c)は光アップレンズホルダーの前側面図である。
【図2】本発明で使用する信号読取装置の振動測定例を示すチャートの一例である。
【符号の説明】
【0044】
1 対物レンズ装着穴
2 レンズホルダー
3 ワイヤー支持穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶性ポリマー(A)及び無機充填剤(B)からなり、比重dが1.4以下、熱伝導率λが0.5W/m・K以上である信号読取装置用樹脂成形部品。
【請求項2】
2/λが4以下である請求項1に記載の信号読取装置用樹脂成形部品。
【請求項3】
液晶性ポリマー(A)が、下記一般式(I)、(II)、(III)及び(IV)で表される構成単位からなり、構成単位(I)が40〜75モル%、構成単位(II)が8.5〜30モル%、構成単位(III)が8.5〜30モル%及び構成単位(IV)が0.1〜8モル%((I)〜(IV)の構成単位の合計は100モル%である)である請求項1又は2に記載の信号読取装置用樹脂成形部品。
【化1】

(上記式(I)〜(IV)において、Ar1は2,6−ナフタレン基;Ar2は1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基及び1,4−フェニレン基から選ばれる1種以上の基;Ar3は1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基及びp,p’−ポリフェニレン基から選ばれる1種以上の基;Ar4は1,4−フェニレン基を表す。)
【請求項4】
液晶性ポリマー(A)55〜75重量%、無機球状中空体(B1)20〜10重量%及び繊維状無機充填剤(B2)25〜15重量%((A)、(B1)及び(B2)の合計は100重量%である)からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の信号読取装置用樹脂成形部品。
【請求項5】
無機球状中空体(B1)がガラスバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、炭素バルーン、及び/又は各種炭素数のフラーレンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の信号読取装置用樹脂成形部品。
【請求項6】
繊維状無機充填剤(B2)がガラス繊維、カーボン繊維、カーボンナノ繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維及び/又はアルミナ繊維である請求項1〜5のいずれか1項に記載の信号読取装置用樹脂成形部品。
【請求項7】
ISO 178による試験片に成形した場合に、曲げ弾性率が10GPa以上を示す請求項1〜6のいずれか1項に記載の信号読取装置用樹脂成形部品。
【請求項8】
信号読取装置が、光信号デジタルディスク読取装置であり、光ピックアップ用レンズホルダー、軸受、ボビン、摺動軸及び/又はアクチュエーターボディに使用される請求項1〜7のいずれか1項に記載の信号読取装置用樹脂成形部品。
【請求項9】
液晶性ポリマー(A)55〜75重量%及び無機充填剤(B)45〜25重量%((A)と(B)の成分の合計は100重量%である)からなるペレットを射出成形して、ISO 178による試験片に成形した場合に、曲げ弾性率が10GPa以上、比重dが1.4以下、熱伝導率λが0.5W/m・K以上である信号読取装置用樹脂成形部品を得る成形方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−152120(P2006−152120A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344680(P2004−344680)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】