説明

信号通過時間を用いた心血管症状の監視

心血管症状、すなわち、高拍出性循環、血管拡張、血管収縮、または中枢から末梢の動脈圧分断状態を監視する方法が記載される。これらの方法は、被験者の心臓活動と比例する、または被験者の心臓活動の関数である中枢信号、および中枢信号に関連する信号と比例する、または中枢信号に関連する信号の関数である末梢信号を測定することを伴う。次いで、同一の心臓事象を表す中枢および末梢信号における特徴の間の時間差を算出する。心血管症状は、時間差が閾値よりも大きい場合もしくは小さい場合、特定された期間にわたって時間差が閾値よりも大きい場合もしくは小さい場合、または特定された期間にわたって時間の有意な統計的変化がある場合に示される。これらの方法は、被験者が心血管症状を体験していることをユーザに警告することができ、それは臨床医が被検者に治療を適切に提供することを可能にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本願は、同一人に譲渡された米国仮出願第61/221,238号(2009年6月29日出願、名称「Monitoring Cardiovascular Conditions Using Signal Transmit Times」)の利益を主張する。該出願は、その全体が参照により本明細書に引用される。
【背景技術】
【0002】
とりわけ、1回拍出量(SV)、心拍出量(CO)、拡張末期容量、駆出分画、1回拍出量変動(SVV)、脈圧変動(PPV)、および収縮期圧変動(SPV)等の指標は、疾患の診断だけでなく、被検者における臨床的に有意な変化の「リアルタイム」、すなわち、継続的監視にも重要である。例えば、医療介護提供者は、ヒトおよび動物被検体の両方における前負荷依存、流体反応性、または容量反応性の変化、ならびに例えば、中枢から末梢の分断に関心がある。したがって、示された変化のうちの1つ以上が被検者で発生しているという警告を提供するために、1つ以上の心臓指標を監視するための何らかの形態の機器がない病院は少ない。侵襲的技法、非侵襲的技法、およびそれらの組み合わせを含む、多くの技法が使用されており、さらには文献で提案されてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
被験者における心血管症状を監視する方法が記載される。本方法は、被験者の心臓活動と比例する、または被験者の心臓活動の関数である中枢信号と、中枢信号に関連する信号と比例する、または中枢信号に関連する信号の関数である末梢信号とを測定することを伴う。次いで、中枢信号および末梢信号について、同一の心臓事象を表す信号特徴の間の時間差が算出され、時間差が閾値よりも大きい場合、心臓症状が示される。
【0004】
被験者における心血管症状を監視するためのさらなる方法は、被験者の心臓活動と比例する、または被験者の心臓活動の関数である中枢信号と、中枢信号に関連する信号と比例する、または中枢信号に関連する信号の関数である末梢信号とを測定することを伴う。次いで、中枢信号および末梢信号について、同一の心臓事象を表す信号特徴の間の時間差が算出され、特定された期間にわたって時間差の有意な統計的変化がある場合、心血管症状が示される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、正常血液動態状態中のブタ動物モデルの上行大動脈(大動脈)、大腿動脈(大腿)、および橈骨動脈(橈骨)における同時記録された圧力波形を示す。
【図2】図2は、大量の流体で蘇生させられた、内毒素性ショック(敗血症性ショック)中のブタ動物モデルの上行大動脈(大動脈)、大腿動脈(大腿)、および橈骨動脈(橈骨)における同時記録された圧力波形を示す。
【図3】図3は、類似した心臓事象の間の時間差の変化を用いる、被験者における心血管症状を監視するための推論法の例を例証する、フローチャートを示す。
【図4】図4は、特定された期間にわたる、類似した心臓事象の間の時間差の有意な統計的変化を用いる、被験者における心血管症状を監視するための推論法の例を例証する、フローチャートを示す。
【図5】図5は、類似した心臓事象の間の時間差が示される、中枢(ECG)および末梢橈骨圧信号を示す。
【図6】図6は、類似した心臓事象の間の時間差が示される、中枢大動脈圧および末梢橈骨圧信号を示す。
【図7】図7は、本明細書に記載される方法を実装するシステムの主要構成要素を示す、ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
心臓症状、すなわち、中枢から末梢の動脈圧分断、高心拍出量状態、管拡張、または血管収縮を監視する方法が記載される。これらの方法は、被験者の心臓活動と比例する、または被験者の心臓活動の関数である中枢信号と、中枢信号に関連する信号と比例する、または中枢信号に関連する信号の関数である末梢信号とを測定することを伴う。次いで、同一の心臓事象を表す中枢および末梢信号における特徴の間の時間差、例えば、圧力が測定される場合、識別された心拍周期の最大圧力および末梢位置で測定された同一の最大圧力の間の時間差を算出する。時間差が閾値よりも大きい、または小さい場合、心血管症状が示される。時間差は、特定された期間にわたって監視することができ、この特定された期間にわたる時間の有意な統計的変化もまた、心血管症状の発現を示す。これらの方法は、被験者が心血管症状を体験していることをユーザに警告することができ、それは臨床医が被検者に治療を適切に提供することを可能にすることができる。
【0007】
本明細書で使用される場合、高心拍出量および血管拡張という語句は、末梢動脈圧および流量が中枢動脈圧および流量から分断される状態を意味し、末梢動脈という用語は、心臓から離れて位置する動脈、例えば、橈骨、大腿、または上腕動脈を意味することを意図している。分断された動脈圧とは、末梢動脈圧と中枢動脈圧との間の正常な関係が有効でなく、中枢動脈圧を決定するために末梢動脈圧を使用できないことを意味する。これはまた、末梢動脈圧が中枢大動脈圧に比例していないか、または中枢大動脈圧の関数ではない状態も含む。正常な血液動態条件下では、心臓からさらに遠く離れて測定が得られると、血圧は増加する。そのような圧力増加が図1に示されており、すなわち、橈骨動脈で測定される圧力波の振幅は、大腿動脈で測定される圧力よりも大きく、同様にそれは大動脈圧よりも大きい。これらの圧力の差異は、波反射に関連付けられ、すなわち、圧力は、末梢に向かって増幅される。
【0008】
この圧力の正常な血液動態関係、すなわち、心臓から離れた圧力の増加は、しばしば、医学的診断で頼られる。しかしながら、高心拍出量/血管拡張条件下では、この関係は逆転され、動脈圧は中枢大動脈圧よりも低くなり得る。この逆転は、例えば、上記で論議される波反射に影響を及ぼすことが示唆される、末梢血管における動脈緊張に起因している。そのような高心拍出量状態は、図2に示され、すなわち、橈骨動脈で測定される圧力波の振幅は、大腿動脈で測定される圧力よりも低く、同様にそれは大動脈圧よりも低い。小末梢動脈を拡張させる薬物(例えば、硝酸塩、ACE阻害剤、およびカルシウム阻害剤)が、高心拍出量状態の一因となると考えられている。橈骨動脈圧が大動脈における圧力を過小評価する、これらの種類の重度血管拡張状態はまた、心肺バイパス(冠状動脈バイパス)の直後の状況でも、しばしば観察される。末梢動脈圧が中枢大動脈圧を過小評価する、大幅な中枢から末梢の圧力差は、重度の血管拡張につながる、大量の流体で治療されている重度敗血症の患者で通常観察される。また、非常に類似した状態が、末期肝疾患の患者でも観察される。当業者によって十分理解されるように、正常な血液動態状態の患者に対するある治療は、高心拍出量状態の被検者に対するものとは異なってアプローチされる。したがって、本開示方法は、存在する場合、被検者における中枢から末梢の動脈圧分断、高拍出量状態、血管拡張、および血管収縮等の心血管症状を検出する。
【0009】
被験者における心血管症状を監視するための第1の方法は、図3のフローチャートとして示され、被験者の心臓活動と比例する、または被験者の心臓活動の関数である中枢信号を測定すること(10)、および中枢信号に対する末梢等価物と比例する、または中枢信号に対する末梢等価物の関数である末梢信号を測定すること(20)、を伴う。次に、中枢信号および末梢信号における、同一の心臓事象を表す信号特徴の間の時間差が算出される(30)。時間差が閾値よりも大きいか、または特定された期間にわたって時間差が閾値よりも大きい場合、心血管症状が示される。さらなる方法(図4のフローチャートとして示される)では、特定された期間にわたって時間差の有意な統計的変化がある場合、心血管症状が示される。
【0010】
本明細書で使用される場合、被験者の心臓活動と比例する、または被験者の心臓活動の関数である中枢信号という語句は、被験者の心臓においてまたはその周辺で測定された心拍出量に関連する、例えば、心拍出量と比例する、心拍出量に由来する、または心拍出量の関数である信号を示すために使用される。そのような信号の例としては、大動脈圧、大動脈流、パルス酸素濃度測定波形(例えば、侵襲的手技中の中枢動脈からの)、反射酸素濃度測定(例えば、侵襲的手技中の頸動脈から、または任意の中枢動脈からの)、経胸腔バイオインピーダンス波形、インピーダンスプレチスモグラフィ波形、心電図(ECG)、超音波、心音、およびドップラー波形が挙げられるが、それらに限定されない。被験者の心臓活動と比例する、または被験者の心臓活動の関数である中枢信号は、直接的または間接的に監視することができる。侵襲的技法の例としては、カテーテル載置圧力トランスデューサ、カテーテル載置流量計、および温度希釈技法が挙げられる。被験者の中枢大動脈圧は、例えば、大動脈中に導入された1つ以上の圧力トランスデューサにより、直接的に監視することができる。直接的測定について、圧力トランスデューサは、例えば、被験者の大動脈弓、上行大動脈 胸部大動脈、腹大動脈、または頸動脈のうちの1つ以上の中に配置することができる。他の圧力計およびそれらの配置のための位置は、当業者に公知である。非侵襲的技法の例としては、中枢バイオインピーダンスプレチスモグラフィ、非侵襲的圧力測定、超音波、心音、およびパルス/反射酸素濃度測定が挙げられる。被験者の心臓においてまたはその周辺で測定された、心拍出量と比例する、心拍出量に由来する、または心拍出量の関数である他の信号は、当業者に公知である。
【0011】
第1の信号に関連する信号と比例する、または第1の信号に関連する信号の関数である末梢信号は、例えば、末梢位置において測定された、心拍出量(すなわち、第1の信号)と比例する、心拍出量に由来する、または心拍出量の関数に関連する信号である。そのような信号の例としては、末梢動脈(例えば、大腿、上腕、または橈骨)からの、末梢圧力、末梢流量、パルス酸素濃度測定波形、バイオインピーダンスプレチスモグラフィ波形、超音波、圧力測定、およびドップラー波形が挙げられるが、それらに限定されない。末梢信号が第1の信号に関連する信号であるとは、信号の特徴が直接比較され得るように、その信号が関連付けられることを示すことを意図する。異なる種類の信号は、信号の特徴、例えば、用いられる特定の測定技術に関わらず類似した時間測定を提供する最大値または最小値が直接比較され得る限り、本明細書に記載される方法とともに使用するために測定することができる。末梢位置とは、被験者の心臓から離れて、例えば、橈骨、大腿、または上腕に位置する動脈樹における任意の点で測定された信号を意味する。第1の信号に関連する信号と比例する、または第1の信号に関連する信号の関数である末梢信号は、侵襲的または非侵襲的のいずれかで測定することができる。侵襲的器具が使用される場合、任意の末梢動脈は可能な測定点である。例えば、被験者の末梢動脈圧は、1つ以上の橈骨、上腕、または大腿部血管中に導入された1つ以上の圧力トランスデューサにより直接監視することができる。他の侵襲的器具およびそれらの配置のための位置は、当業者に公知である。非侵襲的トランスデューサの配置は、典型的には、器具自体、例えば、指カフ、上腕圧力カフ、および耳朶クランプ、および圧力測定に基づく圧力トランスデューサによって決定付けられるであろう。例えば、被験者の末梢動脈圧は、中枢バイオインピーダンスプレチスモグラフィ、非侵襲的圧力測定、超音波、カフ血圧、またはパルス酸素濃度測定のうちの1つ以上によって測定することができる。他の非侵襲的器具およびその使用のための方法は、当業者に公知である。使用される具体的な器具または測定に関わらず、得られたデータは、最終的に、心拍出量に対応する(例えば、心拍出量と比例する、心拍出量に由来する、または心拍出量の関数である)電気信号を生み出すであろう。
【0012】
本明細書に記載される方法で有用な中枢および末梢信号の組み合わせの例としては、大動脈圧(中枢信号)および末梢圧力(末梢信号)、大動脈流(中枢信号)および末梢流量(末梢信号)が挙げられる。
【0013】
本明細書に記載される方法で使用される信号の特徴、すなわち、その間の時間差が算出されることになる、被験者の心臓活動と比例する、または被験者の心臓活動の関数である、中枢および末梢信号における特徴は、時間に対して測定され得る信号特徴に関係する。例えば、圧力が測定される場合、圧力信号の最大値または最小値特徴は、信号における識別可能な時間に生じる。そのような特徴のさらなる例としては、心拍開始時間、圧力または流量最大/最小時間、心拍周期の収縮期部分の開始時間、心拍周期の収縮期部分の終了時間、心拍周期の拡張期部分の開始時間、および重複隆起についての測定時点が挙げられる。
【0014】
中枢信号および末梢信号について、同一の心臓事象を表す信号特徴の間の時間差を算出することは、当業者に公知の方法を用いて達成され得る。同様に当業者に周知の方法によって、一旦、信号特徴が識別されると、決定される時間値は、単に互いから減算される。同様に、統計的有意性について、そのような時間差の変化を監視することは、当業者に周知の統計法を用いて達成され得る。図5は、時間を揃えられた、中枢信号(心電計(ECG))および末梢信号(橈骨動脈において測定された動脈圧)を示し、類似した信号特徴が破線により示される。図5において、時間差(Δt)は、破線の間の時間の差異である。さらに、図6は、中枢信号(中枢大動脈圧)および末梢信号(末梢橈骨動脈圧)を示し、類似した心臓事象の間の時間差(Δt)が示される。
【0015】
本明細書に記載される方法において、例えば、中枢から末梢の動脈圧分断等の心血管症状は、中枢信号における特徴および末梢信号における類似した特徴の間の時間差(すなわち、伝搬時間または通過時間)が、閾値よりも大きい(または小さい)場合に示される。末梢位置において心拍出量信号が認識される期間に起因して、中枢および末梢信号の間には幾らかの(通常は小さい)差異が自然に存在する。この時間のずれは、当業者に公知の他の理由の中でもとりわけ、動脈コンプライアンスおよび波反射等の要因に起因する。本明細書に記載される方法で有用な閾値の例としては、150ミリ秒以上、160ミリ秒以上、170ミリ秒以上、180ミリ秒以上、190ミリ秒以上、200ミリ秒以上、210ミリ秒以上、および220ミリ秒以上が挙げられる。さらに、心臓症状は、特定された期間にわたって時間差が閾値よりも大きい(または小さい)場合に示され得る。本明細書に記載される方法で有用な特定された期間の例としては、5分以上、10分以上、15分以上、30分以上、45分以上、60分以上、90分以上、120分以上、および240分以上が挙げられる。
【0016】
本明細書に記載される方法において、末梢血管収縮は、中枢信号における特徴および末梢信号における類似した特徴の間の時間差(すなわち、伝搬時間または通過時間)が、閾値よりも低い場合に示される。この時間のずれは、当業者に公知の他の理由に加えて、動脈コンプライアンスおよび波反射等の特徴に起因する。本明細書に記載される方法で有用なそのような閾値の例としては、100ミリ秒以下、90ミリ秒以下、80ミリ秒以下、70ミリ秒以下、60ミリ秒以下、50ミリ秒以下、40ミリ秒以下、または30ミリ秒以下が挙げられる。
【0017】
本明細書に記載される方法において、心血管症状もまた、特定された期間にわたって、中枢信号における特徴および末梢信号における類似した特徴の間の時間差の有意な統計的変化がある場合に示される。本明細書に記載される方法で有用な有意な統計的変化の例としては、50ミリ秒以上、60ミリ秒以上、70ミリ秒以上、80ミリ秒以上、90ミリ秒以上、100ミリ秒以上、110ミリ秒以上、および120ミリ秒以上の変化が挙げられる。本明細書に記載される方法で有用な有意な統計的変化のさらなる例としては、0.4標準偏差以上、0.5標準偏差以上、0.6標準偏差以上、0.7標準偏差以上、0.8標準偏差以上、0.9標準偏差以上、1標準偏差以上、1.5標準偏差以上、2標準偏差以上、および3標準偏差以上の変化が挙げられる。本明細書に記載される方法で有用な閾値の例としては、5分以上、10分以上、15分以上、30分以上、45分以上、60分以上、90分以上、120分以上、および240分以上が挙げられる。本明細書に記載される方法で有用な特定された期間の例としては、5分以上、10分以上、15分以上、30分以上、45分以上、60分以上、90分以上、120分以上、および240分以上が挙げられる。
【0018】
被験者の中枢信号および末梢信号の間の差異、または差異の経時的な統計的変化は、継続的に監視することができる。さらに、被験者の中枢信号および末梢信号の間の差異、または差異の経時的な統計的変化は、グラフィカルユーザインターフェース上で表示され得る。例えば、第1の信号および第2の信号の間の差異、または差異の経時的な統計的変化は、棒グラフまたは動向グラフとして表示され得る。心血管症状が検出されると、ユーザは、例えば、グラフィカルユーザインターフェース上で通知を公表することによって、または音を発することによって、警告され得る。
【0019】
図7は、被検者における心血管症状を監視するための本明細書に記載される方法を実装するシステムの主要構成要素を示す。方法は、既存の患者監視デバイス内で実装され得、または専用モニタとして実装され得る。上述の通り、被験者の心臓活動と比例する、または被験者の心臓活動の関数である中枢信号(10)、および中枢信号に関連する信号と比例する、または中枢信号に関連する信号の関数である末梢信号(20)は、侵襲的または非侵襲的といった2つの方法のうちのいずれか一方、または実際には両方で感知され得る。
【0020】
例として、図7は、このシステムについての、末梢圧力および流量信号を測定するための侵襲的および非侵襲的技法を示す。本明細書に記載される方法の最も実用的な用途では、いずれか一方または複数の変形例が、末梢信号測定のために典型的に実装されるであろう。本明細書に記載される方法のための侵襲的末梢(または中枢)信号測定では、従来の圧力センサまたは流量計100が、ヒトまたは動物被験体の身体の一部分130の、中枢または末梢動脈120の中またはその付近に挿入される、カテーテル110上に載置される。本明細書に記載される方法のための末梢信号測定の非侵襲的用途では、フォトプレチィスモグラフィ血圧プローブまたはバイオインピーダンスプレチィスモグラフィ血圧プローブ等の、従来の圧力または流量センサ200が、任意の従来の方式で、例えば、指の周囲のカフ230または患者の手首の上に載置されたトランスデューサを用いて、外部に載置される。
【0021】
センサ100、200からの信号は、通常は信号を処理し、コードを実行するように含まれる、1つ以上のプロセッサと、他の支援ハードウェアおよびシステムソフトウェア(図示せず)とを含む、処理システム300に、入力として任意の既知のコネクタを介して渡される。本明細書に記載される方法は、修正された標準パーソナルコンピュータを用いて実装され得、またはより大きい特殊監視システムに組み込まれ得る。本明細書に記載される方法で使用するために、処理システム300はまた、必要に応じて、増幅、フィルタリング、またはレンジング等の通常の信号処理タスクを行う、調整回路302を含み得、またはそれに接続され得る。次いで、調整された感知入力信号は、クロック回路305からの時間参照を有するか、または時間参照を得る、従来のアナログ・デジタル変換器ADC304によって、デジタル形態に変換される。十分理解されるように、ADC304のサンプリング周波数は、圧力信号のエイリアシングを回避するよう、ナイキスト基準に関して選択されるべきである(この手順はデジタル信号処理の技術分野で非常に良く知られている)。ADC304からの出力は、その値が従来のメモリ回路(図示せず)に記憶され得る、離散信号となる。
【0022】
信号値は、本明細書に記載される方法の1つ以上の態様を実装するためのコンピュータ実行可能コードを備える、ソフトウェアモジュール310によって、メモリに渡されるか、またはメモリからアクセスされる。そのようなソフトウェアモジュール310の設計は、コンピュータプログラミングの技術分野に精通する者にとって単純明快であろう。方法によって使用される追加的な比較および/または処理は、320および330等の追加的モジュールによって行うことができる。
【0023】
使用される場合、差異値または他の算出の記録等の信号特有のデータは、必要に応じて他のデータまたはパラメータも記憶し得る、メモリ領域315に記憶することができる。これらの値は、従来の方式で任意の公知の入力デバイス400を用いて入力され得る。
【0024】
図7によって例証される通り、結果は、最終的に、ユーザへの提示およびユーザによる解釈のために、従来のディスプレイまたは記録デバイス500上で表示され得る。入力デバイス400と同様に、ディスプレイ500は、典型的には、他の目的で処理システムによって使用されるものと同じであろう。
【0025】
本発明の例示的実施形態は、方法、装置、およびコンピュータプログラム製品のブロック図およびフローチャート図示を参照して上述されてきた。当業者であれば、ブロック図およびフローチャート図示の各ブロック、ならびにブロック図およびフローチャート図示のブロックの組み合わせは、それぞれ、コンピュータプログラム命令を含む種々の手段によって実装することができると理解するであろう。これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置上で実行する命令が、フローチャートブロック(複数可)で特定される機能を実装するための手段を作成するように、機械を生産するために、汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ、または他のプログラム可能なデータ処理装置上にロードされ得る。
【0026】
本明細書に記載される方法はさらに、コンピュータ可読メモリに記憶された命令が、図7に図示されたブロックで特定される機能を実装するためのコンピュータ可読命令を含む製造品を生産するように、コンピュータ、またはプロセッサもしくは処理システム内にあるような他のプログラム可能なデータ処理装置(図7で300として示される)に、特定の方式で機能するように指図することができる、コンピュータ可読メモリに記憶され得るコンピュータプログラム命令に関する。コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータまたは他のプログラム可能な装置上で実行する命令が、ブロックで特定される機能を実装するためのステップを提供するように、一連の動作ステップをコンピュータ、処理システム300、または他のプログラム可能な装置上で行わせて、コンピュータ実装過程を生産するために、コンピュータ、処理システム300、または他のプログラム可能なデータ処理装置上にロードされ得る。さらに、種々のソフトウェアモジュール310、320、および330は、種々の計算を行うため、および本明細書に記載される関連方法ステップを行うために使用することができ、また、方法が、異なる処理システムにロードされ、異なる処理システムによって実行されることを可能にするために、コンピュータ可読媒体上にコンピュータ実行可能命令として記憶することもできる。
【0027】
したがって、ブロック図およびフローチャート図示のブロックは、特定された機能を果たすための手段の組み合わせ、特定された機能を果たすためのステップの組み合わせ、および特定された機能を果たすためのプログラム命令手段を支援する。当業者であれば、ブロック図およびフローチャート図示の各ブロック、およびブロック図およびフローチャート図示のブロックの組み合わせは、特定された機能またはステップを果たす特殊用途ハードウェアベースのコンピュータシステム、または特殊用途ハードウェアおよびコンピュータ命令の組み合わせによって実装することができると理解するであろう。
【0028】
本発明は、本発明のいくつかの態様の例証として意図される、本明細書で開示される実施形態によって範囲を限定されず、機能的に同等である任意の実施形態は、本発明の範囲内である。本明細書で示され、説明される方法に加えて、方法の種々の修正が、当業者に明白となり、添付の特許請求の範囲内に入ることが目的としている。さらに、本明細書で開示される方法ステップのある種の代表的な組み合わせのみが、上記の実施形態で具体的に論議されているが、方法ステップの他の組み合わせが、当業者に明白となり、また、添付の特許請求の範囲内に入ることを目的としている。したがって、ステップの組み合わせが、本明細書で明示的に記述され得る一方で、たとえ明示的に記載されなくても、ステップの他の組み合わせが含まれる。本明細書で使用される「備える」という用語およびその変形例は、「含む」という用語およびその変形例と同意語として使用され、制約のない非限定的用語である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者における心血管症状を監視する方法であって、
該被験者の心臓活動と比例する、または該被験者の心臓活動の関数である中枢信号を測定することと、
該中枢信号に関連する信号と比例する、または該中枢信号に関連する信号の関数である末梢信号を測定することと、
該中枢信号および該末梢信号について、同一の心臓事象を表す信号特徴の間の時間差を算出することと
を含み、
該心血管症状は、該時間差が閾値よりも大きい場合に示される、
方法。
【請求項2】
被験者における心血管症状を監視する方法であって、
該被験者の心臓活動と比例する、または該被験者の心臓活動の関数である中枢信号を測定することと、
該中枢信号に関連する信号と比例する、または該中枢信号に関連する信号の関数である末梢信号を測定することと、
該中枢信号および該末梢信号について、同一の心臓事象を表す信号特徴の間の時間差を算出することと
を含み、
該心血管症状は、特定された期間にわたって該時間差の有意な統計的変化がある場合に示される、
方法。
【請求項3】
前記心血管症状は、血管拡張である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記心血管症状は、血管収縮である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記心血管症状は、高拍出性循環の発現を示す、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記心血管症状は、中枢から末梢の圧力または流量の分断である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記閾値は、150ミリ秒以上である、請求項3、5、または6のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記閾値は、100ミリ秒以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記統計的に有意な変化は、50ミリ秒以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記統計的に有意な変化は、0.4標準偏差以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記閾値は、5分以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記特定された期間は、5分以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記心血管症状は、特定された期間にわたって前記時間差が前記閾値よりも大きい場合に示される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記特定された期間は、5分以上である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記被験者の心臓活動と比例する、または該被験者の心臓活動の関数である、前記中枢信号は、心電図、大動脈圧、大動脈流、超音波、ドップラー、経胸腔バイオインピーダンス、または心音のうちの1つ以上である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の信号に対する末梢等価物と比例する、または前記第1の信号に対する末梢等価物の関数である、前記末梢信号は、末梢圧力、末梢流量、超音波、ドップラー、圧力測定、またはパルス酸素濃度測定である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
前記中枢信号は、大動脈圧であり、前記末梢信号は、末梢圧力である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
前記中枢信号は、大動脈流であり、記末梢信号は、末梢流量である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項19】
前記中枢信号は、心電図信号であり、前記末梢信号は、末梢動脈圧である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項20】
前記中枢信号と前記末梢信号との間の前記時間差は、継続的に監視される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記中枢信号と前記末梢信号との間の前記時間差は、グラフィカルユーザインターフェース上で表示される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記中枢信号と前記末梢信号との間の前記時間差は、棒グラフまたは動向グラフとして表示される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記中枢信号と前記末梢信号との間の前記時間差、または経時的な統計的変化は、継続的に監視される、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
前記中枢信号と前記末梢信号との間の前記時間差、または経時的な統計的変化は、グラフィカルユーザインターフェース上で表示される、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記中枢信号と前記末梢信号との間の前記時間差、または経時的な統計的変化は、棒グラフまたは動向グラフとして表示される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記心血管症状が示される場合に、ユーザに警告することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記心血管症状が示される場合に、ユーザに警告することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項28】
前記ユーザは、グラフィカルユーザインターフェース上で通知を公表することによって警告される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記ユーザは、音を発することによって警告される、請求項26または27に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−531944(P2012−531944A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517788(P2012−517788)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/040059
【国際公開番号】WO2011/008477
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(500218127)エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション (93)
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
【Fターム(参考)】