説明

修飾抗体Fabフラグメント

本発明は、重鎖定常領域がC1の鎖間システインで終了している抗体Fabフラグメントを提供する。1個又は複数のエフェクター分子が結合している、重鎖定常領域がC1の鎖間システインで終了している抗体Fabフラグメントもまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された抗体フラグメント、より詳細には、1つ又は複数、好ましくは2つ以上のエフェクター分子が結合する改良された抗体フラグメント、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体可変領域は特異性及び親和性が高いので、該領域は、特にタンパク質間相互作用を調節するための理想的な診断剤及び治療剤になる。抗体フラグメントは、ReoPro(登録商標)などの製品の最近の成功に見られるように、多用途の治療剤となることが判明しつつある。Fv、Fab、Fab’、F(ab)、及び他の抗体フラグメントにコードされている標的対応官能基は、直接使用できるか、或いは効力を増加させるために、細胞毒性薬剤、毒素、又はポリマー分子などの1種又は複数のエフェクター分子に複合できる。例えば、これらのフラグメントはFc領域を欠くために、動物中で短い循環半減期を有するが、これは、ポリエチレングリコール(PEG)などの特定の型のポリマーへの複合によって改良できる。複合したPEGのサイズを増加させると、数分間から何時間までも循環半減期が増加することが判明しており、5kDaから100kDaまでの範囲のPEGを用いるFab’の修飾が実証された(Chapman et al.,1999,Nature Biotechnology,17,780−783;Leong et al.,2001,Cytokine,16,106−119;Chapman,2002,Advanced Drug Delivery Reviews,54,531−545)。PEG化された抗体フラグメント(例えば、CDP870)は現在臨床試験を受けており、ここでは、複合PEGの効果は、循環半減期を、治療のために許容可能なレベルにまで導くことである。
【0003】
エフェクター分子は、多数の異なる方法によって抗体フラグメントに結合していることが可能であり、これには、アルデヒド糖を経由するもの、又はより一般的には、抗体フラグメント中に位置する任意の利用可能なアミノ酸側鎖、又は末端アミノ酸官能基、例えば、任意の遊離のアミノ基、イミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基を経由するものが含まれる。エフェクター分子の結合の部位は、ランダムであるか、又は部位特異的のいずれかであってもよい。
【0004】
ランダム結合は、しばしば、リジンのようなアミノ酸を経由して達成され、そしてこれは、リジンの位置に依存して、抗体フラグメント全体を通して多数の部位において結合しているエフェクター分子を生じる。これは、いくつかの場合において成功したが、結合するエフェクター分子の正確な位置及び数は制御不可能であり、且つこれは活性の損失(例えば、結合するエフェクター分子が少なすぎる場合)及び/又は親和性の損失(例えば、エフェクター分子が結合部位を妨害する)をもたらす可能性がある(Chapman,2002,Advanced Drug Delivery Reviews,54,531−545)。その結果、エフェクター分子の制御された部位特異的結合は、通常、選択方法である。
【0005】
エフェクター分子の部位特異的結合は、最も一般的には、システイン残基に対する結合によって達成される。なぜなら、このような残基は、抗体フラグメントにおいて比較的一般的ではないからである。抗体のヒンジは、部位特異的結合のためのよく知られた領域である。なぜなら、これらはシステイン残基を含み、且つ抗原結合に関与するらしい抗体の他の領域から離れているからである。適切なヒンジはフラグメント中に天然に存在するか、又は組換えDNA技術を使用して作製できるかのいずれかである(例えば、米国特許第5,677,425号;国際公開第98/25971号;Leong et al.,2001,Cytokine,16,106−119;Chapman et al.,1999,Nature Biotechnology,17,780−783を参照のこと)。或いは、又は更に、部位特異的システインは、例えば、表面に露出したシステインを作製するために抗体フラグメントに操作できる(米国特許第5,219,996号)。
【0006】
エフェクター分子をシステインを介して部位特異的に結合しようとする場合、抗体フラグメント中の標的チオールは、しばしば、グルタチオンなどの小さな発酵関連ペプチド産物によってキャップするか、又は抗体フラグメントの抽出及び精製の間に使用する5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)などの化学的添加物によって意図的にキャップする。これらのキャッピング剤は、標的(ヒンジ又は表面)チオールを活性化するために除去する必要がある。抗体フラグメントは、重鎖の定常領域と軽鎖の定常領域(C1及びC)の間の未変性の鎖間ジスルフィド結合を有し、これは一般的には、抗体の安定性及び結合特性を維持する上で必須であると見なされてきた。その結果、C:C1間のジスルフィドが損なわれないように、標的ヒンジ又は表面チオールの活性化は、ある程度の注意を払って実行しなければならない。それゆえに「穏和な」還元条件を、エフェクター分子との反応の前に、チオールキャッピング剤を除去するために使用するのが都合が良い。これは通常、β−メルカプトエタノール(β−ME)、β−メルカプトエチルアミン(β−MA)、及びジチオスレイトール(DTT)などのチオール系還元剤を使用することによって達成される。しかし、これらの還元剤の各々は、還元するつもりのシステインと反応し、且つそれに結合したままとなり得るため、(Begg及びSpeicher,1999 Journal of Biomolecular techniques、10,17−20)エフェクター分子の結合効率を低下させることが知られている。したがって、還元及びエフェクター分子との反応の後、高い比率の抗体フラグメントが、エフェクター分子を全く結合せず、これらは、適数のエフェクター分子を結合した抗体フラグメントから除去しなければならない。この乏しい修飾効率は、最大限の生産効率を実現することが重要である、修飾された治療用抗体フラグメントの大規模生産中には明確に欠点となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、エフェクター分子が結合してもよい新規クラスの抗体Fabフラグメントを提供する。これらのフラグメントの特別な利点は、これらのフラグメント中に存在するシステイン残基にある。このようなシステイン残基は、修飾されたヒンジ領域及び/又は表面アミノの酸置換を操作する必要性を回避しながら、エフェクター分子の部位特異的結合のために使用できる。エフェクター分子が本発明の抗体Fabフラグメントに結合する場合、重鎖と軽鎖の間に鎖間共有結合は存在しない。重鎖と軽鎖の間に全く共有結合がなく、しかもエフェクター分子が結合しているにも関わらず、本発明のフラグメントは、多数のインビトロ及びインビボの試験において野生型フラグメントと比較し得る性能を示す。驚くべきことに、これらの新規なフラグメントは、野生型フラグメントと抗原に対する同じ親和性、及び野生型フラグメントと同様のインビボ及びインビトロ安定性を有する。これらのフラグメントのさらなる利点は、それらのフラグメントへのエフェクター分子の結合の容易さ、特に、結合の効率にある。したがって、このフラグメントは、エフェクター分子の結合後に、本来の鎖間共有結合を保持している、現在利用できるフラグメントに対する低コストの代替品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明によれば、重鎖定常領域がC1の鎖間システインで終止していることを特徴とする、抗体Fabフラグメントが提供される。
【0009】
本発明の抗体Fabフラグメントは、可変領域(V/V)及び定常領域(C/C)を有する任意の重鎖及び軽鎖の対であってもよい。好ましくは、重鎖及び軽鎖の対は、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域中の鎖間システインを介して共有結合したV/C1及びV/Cである。用語「鎖間システイン」は、本明細書で使用する場合、天然の生殖細胞系抗体遺伝子においてコードされる対応する重鎖又は軽鎖の定常領域中のシステインに対しては、ジスルフィド結合すると思われる、重鎖又は軽鎖の定常領域中のシステインを指す。特に、本明細書の鎖間システインは、天然の抗体において互いにジスルフィド結合している、軽鎖(C)定常領域中のシステイン、及び重鎖の第1の定常領域(C1)中のシステインである。このようなシステインの例は、代表的には、Kabat et al.,1987、免疫学的に興味が持たれるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、US Department of Health and Human Services,NIH,USAによって規定されるように、ヒトIgG1の軽鎖の214位及び重鎖の233位において、ヒトIgM、IgE、IgG2、IgG3、IgG4の重鎖の127位、並びにヒトIgD及びIgA2Bの重鎖の128位において見い出すことができる。マウスIgG1において、鎖間システインは軽鎖の214位及び重鎖の235位において見い出し得る。これらのシステインの正確な位置は、任意の修飾、例えば、欠失、挿入、及び/又は置換が抗体Fabフラグメントになされた場合には、天然の抗体の位置から変化し得ることが理解されよう。
【0010】
本発明の抗体Fabフラグメントにおいて、重鎖定常領域はC1の鎖間システインで終了している。したがって、本発明の抗体FabフラグメントのC1ドメイン中の最後のアミノ酸はシステインである。C1ドメインが切断されている本発明の抗体Fabフラグメントは、当該分野において公知の任意の適切な方法によって調製できる。例えば、本発明の抗体Fabフラグメントは、任意の適切な酵素的な切断及び/又は消化の技術を使用して、例えば、ペプシン又はパパイン及びc末端プロテアーゼを用いる処理によって、任意の全体の抗体、とりわけ、全体のモノクローナル抗体から入手できる。好ましくは、本発明の抗体Fabフラグメントは、抗体の可変領域及び定常領域をコードするDNAの操作及び再発現を含む組換えDNA技術の使用によって調製できる。標準的な分子生物学的技術が、所望されるような更なるアミノ酸又はドメインを修飾し、付加し、又は欠失させるために使用できる。可変領域又は定常領域に対する任意の変更が、本明細書で使用される用語「可変」領域及び「定常」領域によってなお包含される。好ましくは、PCRはC1の鎖間システインをコードするコドンの直後に終止コドンを導入するために使用され、その結果、C1ドメインの翻訳は鎖間システインで終止する。適切なPCRプライマーを設計するための方法は当該分野において周知であり、且つ抗体C1ドメインの配列は容易に利用可能である(Kabatら、前出)。或いは、終止コドンは、White(編)、PCRプロトコール:最新の方法及び応用(PCR Protocols:Current Methods and Applications(1993))に記載のものなどの部位特異的な変異誘発技術を使用して導入できる。本発明の抗体フラグメント出発物質は、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE及びそれらのサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む)を含む任意の抗体アイソタイプに由来してもよい。好ましくは、本発明の抗体FabフラグメントはIgG1に由来する。抗体フラグメントの出発物質は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ハムスター、ラクダ、ラマ、ヤギ、又はヒトを含む任意の種から入手できる。抗体フラグメントの部分は1種又は複数の種から入手でき、例えば、抗体フラグメントはキメラであってもよい。一例では、定常領域は1つの種由来であり、且つ可変領域は別の種由来である。抗体フラグメントの出発物質はまた、修飾されてもよい。一例では、抗体フラグメントの可変領域は組換えDNA操作技術を使用して作製される。このような操作して得た改変体には、例えば、天然の抗体のアミノ酸配列における又はそれに対する挿入、欠失、又は置換によって天然の抗体の可変領域から作製されたものが含まれる。この型の特定の例には、少なくとも1つのCDR、並びに場合により、1つの抗体からの1つ以上のフレームワークアミノ酸、及び第2の抗体からの可変領域ドメインの残りの部分を含む、可変領域ドメインが操作して得たものが含まれる。これらの抗体フラグメントを作製及び製造するための方法は当該技術分野において周知である(例えば、以下を参照のこと:Boss et al.,米国特許第4,816,397号;Cabilly et al.,米国特許第6,331,415号;Shrader et al.,国際公開第92/02551号;Orlandi et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,3833;Riechmann et al.,1988,Nature,322,323;Queen et al.,米国特許第5,585,089号;Adair、国際公開第91/09967号;Mountain及びAdair、1992,Biotechnol.Genet.Eng.Rev,10,1−142;Verma et al.,1998,Journal of Immunological Methods,216,165−181)。
【0011】
本発明の抗体フラグメントは、一般的に、抗原に選択的に結合可能であろう。該抗原は、任意の細胞関連抗原、例えば、細菌細胞、酵母細胞、T細胞、内皮細胞、若しくは腫瘍細胞などの細胞上の細胞表面抗原であってもよく、又は可溶性抗原であってもよい。抗原はまた、疾患又は感染の間にアップレギュレートされた抗原などの任意の医学関連抗原、例えば、レセプター及び/又はそれらの対応するリガンドであってもよい。細胞表面抗原の特定の例には、接着分子、例えば、β1インテグリンなどのインテグリン(例えば、VLA−4)、E−セレクチン、Pセレクチン若しくはL−セレクチン、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD11a、CD11b、CD18、CD19、CD20、CD23、CD25、CD33、CD38、CD40、CD45、CDW52、CD69、癌胎児性抗原(CEA)、ヒト乳脂肪グロブリン(HMFG1及び2)、MHCクラスI及びMHCクラスII抗原、並びにVEGF、並びに適切な場合、これらのレセプターが含まれる。可溶性抗原には、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−12、IL−16、又はIL−17などのインターロイキン、ウイルス抗原、例えば、呼吸器合胞体ウイルス又はサイトメガロウイルス抗原、IgEなどの免疫グロブリン、インターフェロンα、インターフェロンβ、又はインターフェロンγなどのインターフェロン、腫瘍壊死因子α、腫瘍壊死因子β、G−CSF又はGM−CSFなどのコロニー刺激因子、並びにPDGFα及びPDGFβなどの血小板由来成長因子、並びに適切な場合、これらのレセプターが含まれる。
【0012】
本発明は、重鎖定常領域がC1の鎖間システインで終了していることを特徴とする、抗体Fabフラグメントを提供する。一実施形態では、重鎖及び軽鎖定常領域はヒトIgG1に由来する。一実施形態では、本発明は、重鎖定常領域が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むか、又はその配列からなる抗体Fabフラグメントを提供する。本発明はまた、重鎖定常領域が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むか、又はその配列からなり、且つ軽鎖定常領域が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか、又はその配列からなる抗体Fabフラグメントを提供する。すべての配列及びこれらの配列番号は図5に示す。
【0013】
別の態様において、重鎖及び軽鎖定常領域はマウスIgG1に由来する。この態様において、本発明は、重鎖定常領域が、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むか、又はその配列からなる抗体Fabフラグメントを提供する。本発明はまた、重鎖定常領域が配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むか、又はその配列からなり、且つ軽鎖定常領域が配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むか、又はその配列からなる抗体Fabフラグメントを提供する。
【0014】
本発明はまた、重鎖の定常領域が、配列番号1に示される配列に対して少なくとも90%の同一性若しくは類似性を有する配列を含むか、又はその配列からなる抗体Fabフラグメントを提供する。
【0015】
「同一性」とは、本明細書で使用される場合には、整列した配列中の任意の特定の位置において、アミノ酸残基が配列間で同一であることを示す。「類似性」とは、本明細書で使用される場合には、整列した配列中の任意の特定の位置において、アミノ酸残基が配列間で類似の型であることを示す。例えば、ロイシンは、イソロイシン又はバリンの代わりに置換されることがある。しばしば相互に置換し得る他のアミノ酸には以下のものが含まれるが、これらに限定されない。
−フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸);
−リジン、アルギニン、及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸);
−アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸);
−アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸)並びに
−システイン及びメチオニン(硫黄含有側鎖を有するアミノ酸)。
同一性及び類似性の程度は容易に計算できる(コンピュータを利用する分子生物学(Computational Molecular Biology)、Lesk,A.M.編、Oxford University Press,New York,1988;バイオコンピュータ計算.インフォマティックス及びゲノムプロジェクト(Biocomputing.Informatics and Genome Projects)、Smith,D.W.編、Academic Press,New York,1993;配列データのコンピュータ分析、第1部(Computer Analysis of Sequence Data,Part 1)、Griffin,A.M.及びGriffin,H.G.編、Humana Press,New Jersey,1994;分子生物学における配列分析(Sequence Analysis in Molecular Biology)、von Heinje,G.Academic Press,1987;並びに配列分析プライマー(Sequence Analysis Primer)、Gribskov,M.及びDevereux,J.編、M Stockton Press,New York、1991)。好ましくは、本発明のこの態様の抗体Fabフラグメントは重鎖を含み、ここでこの重鎖の定常領域は、配列番号1に示される配列に対して少なくとも90%、95%、又は98%の同一性若しくは類似性を有する配列を含む。
【0016】
本発明はまた、重鎖の定常領域が、配列番号1に示される配列に対して少なくとも90%の同一性若しくは類似性を有する配列を含むか、又はその配列からなり、且つ軽鎖の定常領域が、配列番号2に示される配列に対して少なくとも90%の同一性若しくは類似性を有する配列を含むか、又はその配列からなる抗体Fabフラグメントを提供する。好ましくは、本発明のこの態様の抗体Fabフラグメントは、重鎖の定常領域が配列番号1に示される配列に対して少なくとも90%、95%、又は98%の同一性若しくは類似性を有する配列を含む重鎖、及び軽鎖の定常領域が配列番号2に示される配列に対して少なくとも90%、95%、又は98%の同一性若しくは類似性を有する配列を含む軽鎖を含む。
【0017】
本発明はまた、重鎖の定常領域が、配列番号3に示される配列に対して少なくとも90%の同一性若しくは類似性を有する配列を含むか、又はその配列からなる抗体Fabフラグメントを提供する。一実施形態では、本発明は、重鎖の定常領域が、配列番号3に示される配列に対して少なくとも90%の同一性若しくは類似性を有する配列を含むか、又はその配列からなり、且つ軽鎖の定常領域が、配列番号4に示される配列に対して少なくとも90%の同一性若しくは類似性を有する配列を含むか、又はその配列からなる抗体Fabフラグメントを提供する。好ましくは、本発明のこの態様の抗体Fabフラグメントは、重鎖の定常領域が配列番号3に示される配列に対して少なくとも90%、95%、又は98%の同一性若しくは類似性を有する配列を含む重鎖、及び軽鎖の定常領域が配列番号4に示される配列に対して少なくとも90%、95%、又は98%の同一性若しくは類似性を有する配列を含む軽鎖を含む。
【0018】
配列番号1〜4に示すアミノ酸配列をコードする核酸配列は、当該分野において公知の方法を使用して設計できる。一実施形態では、本発明は、配列番号1〜4に示す重鎖及び/又は軽鎖定常領域をコードする単離されたDNA配列を提供する。一実施形態では、配列番号1、2、3、及び4に示すアミノ酸配列をコードする各核酸配列は、それぞれ配列番号5、6、7、及び8に示されるものである。
【0019】
本発明はまた、本発明の1つ又は複数のDNA配列を含むクローニングベクター又は発現ベクターに関する。したがって、本発明の抗体Fabフラグメントをコードする1つ又は複数のDNA配列を含むクローニングベクター又は発現ベクターが提供される。特に、本発明のクローニングベクター又は発現ベクターは、配列番号5〜8に示すような、本発明の抗体定常領域をコードする1つ又は複数のDNA配列を含む。一実施形態では、このベクターは、配列番号5及び配列番号6に示される配列を含む。別の実施形態において、このベクターは配列番号7及び配列番号8に示される配列を含む。
【0020】
ベクターがそれによって構築できる一般的方法、トランスフェクション方法、及び培養方法は当業者に周知である。これに関して、参照が、「分子生物学の最新のプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、1999、F.M.Ausubel(編)、Wiley Interscience,New York、及びCold Spring Harbor Publishingによって作製されたManiatisのマニュアルに対してなされる。
【0021】
1ドメインが鎖間システインで終了する抗体Fabフラグメントを発現する宿主細胞もまた、本発明によって提供される。任意の適切な宿主細胞/ベクター系が、本発明の抗体FabをコードするDNA配列の発現のために使用できる。したがって、本発明の抗体フラグメントをコードする1つ又は複数のDNA配列を含む1つ又は複数のクローニングベクター又は発現ベクターを含む宿主細胞もまた、提供される。特に、宿主細胞は、配列番号5〜8に示すような、本発明の抗体の定常領域をコードする1つ又は複数のDNA配列を含む本発明のクローニングベクター又は発現ベクターを含む。細菌、例えば、E.coli(大腸菌)及び他の微生物系が使用されてもよく、又は真核生物、例えば、哺乳動物宿主細胞発現系もまた使用されてもよい。本発明に使用するための適切なE.coli株は、組換えタンパク質を産生できる天然株又は変異株であってもよい。特定の宿主E.coli株の例には、MC4100、TG1、TG2、DHB4、DH5α、DH1、BL21、XL1 Blue、及びW3110(ATCC27,325)が含まれる。適切な哺乳動物宿主細胞には、CHO細胞、ミエローマ細胞、又はハイブリドーマ細胞が含まれる。本発明の抗体Fabフラグメントを発現する宿主細胞を培養する工程、及びフラグメントを単離する工程を含む、本発明の抗体Fabフラグメントを産生する方法もまた提供される。一旦宿主細胞中で産生されると、抗体Fabフラグメントは、当該分野において公知である任意の適切な方法を使用して抽出及び精製できる。熱抽出は、鎖間ジスルフィド結合の存在に起因して、米国特許第5,665,866号において記載されるように使用できる。適切な精製方法には、サイズ排除、疎水性相互作用クロマトグラフィー、プロテインA、プロテインG、又はプロテインLのアフィニティークロマトグラフィー、及びイオン交換を含まれるがこれらに限定されない。
【0022】
所望される場合、本発明の抗体Fabフラグメントは、それに結合する1個又は複数のエフェクター分子を有してもよい。用語エフェクター分子は、本明細書で使用される場合には、例えば、抗新生物剤、薬物、毒素(例えば、細菌又は植物起源の酵素的に活性な毒素及びそのフラグメント、例えば、リシン及びそのフラグメント)、生物活性タンパク質、例えば、酵素、他の抗体又は抗体フラグメント、合成又は天然ポリマー、核酸及びそのフラグメント、例えば、DNA、RNA、及びそのフラグメント、放射性核種、特に放射性ヨウ素、放射性同位元素、キレートされた金属、ナノ粒子、並びにレポーター基、例えば、蛍光化合物又はNMR若しくはESRスペクトル測定によって検出できる化合物を含む。
【0023】
特定の抗新生物剤には、細胞毒性剤及び細胞増殖抑制剤、例えば、ナイトロジェンマスタード(例えば、クロランブシル、メルファラン、メクロレタミン、シクロホスファミド、又はウラシルマスタード)及びその誘導体、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、ブスルファン、又はシスプラチンなどのアルキル化剤;メトトレキサート、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、フルオロ酢酸又はフルオロクエン酸などの代謝拮抗剤、ブレオマイシン(例えば、硫酸ブレオマイシン)、ドキソルビシン、ダウノルビシン、マイトマイシン(例えば、マイトマイシンC)、アクチノマイシン(例えば、ダクチノマイシン)、プリカマイシン、カリキマイシン及びその誘導体、又はエスペラマイシン及びその誘導体などの抗生物質、エトポシド、ビンクリスチン又はビンブラスチン、及びその誘導体などの分裂抑制剤;エリプシチンなどのアルカロイド;タキシン−I又はタキシン−IIなどのポリオール;アンドロゲンなどのホルモン(例えば、ドロモスタノロン若しくはテストステロン)、プロゲスチン(例えば、酢酸メゲストロール若しくは酢酸メドロキシプロゲステロン)、エストロゲン(例えば、ジメチルスチルベストロール二リン酸、リン酸ポリエストラジオール、若しくはリン酸エストラムスチン)又は抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン);ミトキサントロンなどのアントラキノン、ヒドロキシウレアなどのウレア;プロカルバジンなどのヒドラジン;又はデカルバジンなどのイミダゾールが含まれる。
【0024】
キレートされた金属には、2から8まで(両端を含む)配位数を有する、2価又は3価の正電荷を有する金属のキレートが含まれる。このような金属の特定の例には、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、コバルト(Co)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ガドリニウム(Gd)、及びスカンジウム(Sc)が含まれる。一般的に、この金属は好ましくは放射性核種である。特定の放射性核種には、99mTc、186Re、188Re、58Co、60Co、67Cu、195Au、199Au、110Ag、203Pb、206Bi、207Bi、111In、67Ga、68Ga、88Y、90Y、160Tb、153Gd、及び47Scが含まれる。
【0025】
キレートされた金属は、例えば、任意の適切な多座(polyadentate)キレート剤、例えば、非環状又は環状ポリアミン、ポリエーテル(例えば、クラウンエーテル及びその誘導体);ポリアミド;ポルフィリン;及び炭素環誘導体でキレートされた上記の型の金属の1つであってもよい。
【0026】
一般的に、キレート剤の型は、使用する金属に依存する。しかし、本発明による結合体における、1つの特に有用なキレート剤の群は、非環状及び環状ポリアミン、とりわけポリアミノカルボン酸、例えば、ジエチレントリアミンペンタ酢酸及びその誘導体、並びに大環状アミン、例えば、環状トリアザ及びテトラアザ誘導体(例えば、国際特許明細書の国際特許公開第92/22583号に記載されているようなもの);並びにポリアミド、とりわけデスフェリオックス−アミン及びその誘導体である。
【0027】
他のエフェクター分子には、タンパク質、ペプチド、及び酵素が含まれる。対象とする酵素には、タンパク質分解性酵素、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼが含まれるがこれらに限定されない。対象とするタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドには、免疫グロブリン、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、若しくはジフテリア毒素などの毒素、インスリン、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、若しくは組織プラスミノーゲン活性化因子などのタンパク質、血栓剤若しくは血管形成剤(例えば、アンギオスタチン若しくはエンドスタチン)、又はリンホカイン、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、神経成長因子(NGF)、若しくは他の成長因子及び免疫グロブリンなどの生物学的応答調節剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
他のエフェクター分子は、例えば、診断において有用である検出可能な物質を含んでもよい。検出可能な物質の例には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射活性核種、陽電子放出金属(陽電子放出断層撮影に使用するため)、及び非放射活性常磁性金属イオンが含まれる。一般的には、診断剤としての使用のために抗体に複合され得る金属イオンについては、米国特許第4,741,900号を参照のこと。適切な酵素には、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが含まれ;適切な補欠分子族には、ストレプトアビジン、アビジン、及びビオチンが含まれ;適切な蛍光物質には、アンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロライド、及びフィコエリトリンが含まれ;適切な発光物質にはルミノールが含まれ;適切な生物発光物質には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエオクリンが含まれ;並びに適切な放射活性核種には125I、131I、111In、及び99Tcが含まれる。
【0029】
エフェクター分子としての使用のための合成又は天然ポリマーには、例えば、任意選択で置換された直鎖若しくは分枝鎖のポリアルキレン、ポリアルケニレン、若しくはポリオキシアルキレンポリマー、又は直鎖若しくは分枝鎖の多糖類(例えば、ラクトース、アミロース、デキストラン、又はグリコーゲンなどのホモ若しくはヘテロ多糖類)が含まれる。
【0030】
上述の合成ポリマー上に存在する可能性のある特定の任意選択の置換基には、1つ以上のヒドロキシ基、メチル基、又はメトキシ基が含まれる。合成ポリマーの特定の例には、任意選択で置換された直鎖若しくは分枝鎖のポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、又はその誘導体、とりわけ、メトキシポリ(エチレングリコール)又はその誘導体などの任意選択で置換されたポリ(エチレングリコール)が含まれる。
【0031】
「誘導体」は、本明細書で使用される場合には、反応性誘導体、例えば、α−ハロカルボン酸又はエステル、例えば、ヨードアセトアミドなどのチオール選択性反応基、イミド、例えば、マレイミド、ビニルスルホン、又はジスルフィドマレイミドなどを含むことを意図する。反応基は、直接的に、又はポリマーへのリンカーセグメントを通して結合できる。このような基の残基は、いくつかの例においては、抗体フラグメントとポリマーとの間の連結基としての生成物の一部を形成することが理解されよう。
【0032】
ポリマーのサイズは、所望通りに変化させてもよいが、一般的には、500Daから50,000Daまで、好ましくは5,000から40,000Daまで、並びにより好ましくは10,000から40,000Daまで、及び20,000から40,000Daまでの範囲の平均分子量である。ポリマーのサイズは、特に、生成物の意図する用途、例えば、腫瘍などの特定の組織に局在するか、又は循環半減期を延長する能力に基づいて選択してもよい(概説としては、Chapman,2002,Advanced Drug Delivery Reviews,54,531−545を参照のこと)。したがって、例えば、生成物が循環系を出て、組織に浸透することを意図する場合、例えば、腫瘍の治療に使用するために、低分子量ポリマー、例えば、約5,000Daの分子量を有するポリマーを使用することが有利となり得る。生成物が循環中に留まる用途に対しては、より高分子量ポリマー、例えば、25,000Daから40,000Daまでの範囲の分子量を有するポリマーを使用することが有利となり得る。
【0033】
特に好ましいポリマーには、ポリ(エチレングリコール)などのポリアルキレンポリマー、又は、とりわけ、メトキシポリ(エチレングリコール)又はその誘導体、及びとりわけ、約10,000Daから約40,000Daの範囲の分子量を有するポリマーが含まれる。
【0034】
本発明のポリマーは、市販品を入手してもよいし(例えば、Nippon Oil and Fats;Nektar Therapeuticsより)、又は市販の出発物質から、便利な化学的手順を使用して調製してもよい。
【0035】
エフェクター分子は、該抗体フラグメントを直接、又はカップリング剤を介してエフェクター分子へ連結する、標準的な化学的手順又は組換えDNA手順を使用して結合してもよい。このようなエフェクター分子を抗体に複合するための技術は当該分野において周知である(例えば、Hellstrom et al.,制御薬物送達(Controlled Drug Delivery),第2版、Robinsonら編、1987,623〜53頁;Thorpe et al.,1982,Immunol.Rev.,62:119−58、及びDubowchik et al.,1999,Pharmacology and Therapeutics,83,67−123)。特定の化学的手順には、例えば、国際特許明細書の国際公開第93/06231号、国際公開第92/22583号、国際公開第90/09195号、国際公開第89/01476号、国際公開第9915549号、及び国際公開第03031581号に記載されるものが含まれる。或いは、エフェクター分子がタンパク質又はポリペプチドである場合、結合は、例えば、欧州特許明細書第392745号に記載のような組換えDNA手順を使用して達成できる。
【0036】
エフェクター分子は、抗体フラグメント中にある任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は末端アミノ酸官能基、例えば、任意の遊離のアミノ基、イミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基を通して本発明の抗体フラグメントに結合できる。このようなアミノ酸は抗体フラグメント中に天然に存在してもよく、又は組換えDNA法を使用してフラグメントに操作して得られてもよい。例えば、米国特許第5,219,996号を参照されたい。好ましくは、エフェクター分子は、天然又は改変された抗体フラグメント中にあるシステイン残基のチオール基を通して共有結合している。この共有結合は、一般的にはジスルフィド結合であり、又は特に、硫黄−炭素結合である。チオール基が適切に活性化されたエフェクター分子の結合点として使用される場合、例えば、マレイミド及びシステイン誘導体などのチオール選択的誘導体が使用できる。
【0037】
抗体フラグメントに結合する2つ以上のエフェクター分子が存在する場合、これらは同一であってもよく又は異なっていてもよく、且つ異なる部位で抗体フラグメントに結合してもよいことが理解される。2つ以上のエフェクター分子は、例えば、2つ以上のエフェクター分子を連結し、且つ結合の単一の部位を提供するために、分枝状結合構造の使用により単一の部位で抗体フラグメントに結合できることもまた、理解される。
【0038】
本発明の好ましい態様において、抗体フラグメントに結合した少なくとも1個のエフェクター分子は、ポリマー分子、好ましくはPEG又はその誘導体である。結合するポリ(エチレングリコール)(PEG)部分に関しては、一般的に、「ポリエチレングリコールの化学、生物技術的及び生物医学的応用(Poly(ethyleneglycol)Chemistry,Biotechnical and Biomedical Applications)」、1992、J.Milton Harris(編)、Plenum Press、New York;「ポリエチレングリコールの化学及び生物学的応用(Poly(ethyleneglycol)Chemistry and Biological Applications)」、1997、J.Milton Harris及びS.Zalipsky(編)、American Chemical Society、Washington DC、並びに「生物医科学のための生物複合タンパク質カップリング技術(Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences)」、1998、M.Aslam及びA.Dent,Grove Publishers、New Yorkを参照されたい。
【0039】
好ましくは、本発明のFabフラグメントに結合したすべてのエフェクター分子はPEGであり、且つ各分子が、マレイミド基を介して、抗体フラグメント中の1個又は複数のチオール基に共有結合している。このPEGは任意の直鎖又は分枝状分子であってもよい。PEGは、500Daから50,000Daまで、好ましくは5,000から40,000Daまで、並びにより好ましくは10,000から40,000Daまで、及び20,000から40,000Daまでの範囲の平均分子量である、任意の直鎖又は分枝状分子であってもよい。分枝状PEG分子を結合するために、リジン残基が、好ましくはマレイミド基に共有結合している。リジン残基上のアミン基の各々に、好ましくはメトキシ(ポリ(エチレングリコール)ポリマーが結合している。一例では、リジンに結合した各ポリマーの分子量は約20,000Daであり、それゆえに全ポリマー分子の全分子量は約40,000Daである。好ましくは、本発明のFabフラグメントに結合しているPEG分子は線状である。
【0040】
1個又は複数のエフェクター分子が本発明の抗体Fabフラグメントに結合できる。好ましい態様において、少なくとも2つのエフェクター分子がFabフラグメントに結合しており、1つが軽鎖定常領域のシステイン、及び1つが重鎖定常領域のシステインに結合している。好ましくは、エフェクター分子が結合しているシステイン残基は、さもなくば、エフェクター分子が結合していない場合、ジスルフィド結合によって互いに連結される。結合のための適切なシステインには、軽鎖及び/又は重鎖の定常領域に存在する天然のシステイン(例えば、鎖間システイン)が含まれる。本発明の好ましい態様において、エフェクター分子は、抗体Fabフラグメント中のCの鎖間システイン及びC1の鎖間システインに結合している。一実施形態において、エフェクター分子が結合しているCの鎖間システインは軽鎖の214位にあり、エフェクター分子が結合しているC1の鎖間システインは重鎖の233位にある。定常領域がマウスIgG1に由来する別の実施形態において、エフェクター分子が結合しているCの鎖間システインは軽鎖の214位にあり、エフェクター分子が結合しているC1の鎖間システインは重鎖の235位にある。他の適切なシステインには、組換えDNA技術を使用して定常領域に操作して得たものが含まれる。例えば、2つのシステインが抗体フラグメントに操作して得られ、1つが重鎖定常領域及び軽鎖定常領域の各々に結合していることが可能であり、好ましくは、それにより、その位置でこれらは互いにジスルフィド結合を形成できる。
【0041】
本発明のこの態様に従う特定のフラグメントは以下の場合のものを含む:
(i)エフェクター分子に結合している重鎖及び軽鎖の定常領域中のシステイン残基は、さもなくば、エフェクター分子が結合していない場合、ジスルフィド結合を介して互いに連結される、又は
(ii)エフェクター分子が結合している軽鎖システインはCの鎖間システインであり、且つエフェクター分子が結合している重鎖システインはC1の鎖間システインである。
【0042】
本発明の抗体Fabフラグメントにおけるシステインへのエフェクター分子の結合の間、本明細書に記載されるように、システイン間のいかなる共有結合も、還元剤を使用して除去される。このようなフラグメントにおいて、重鎖はもはや軽鎖に共有結合しておらず、且つCの鎖間システインとC1の鎖間システインの間の、天然の抗体において見い出されるジスルフィド結合は存在しない。
【0043】
したがって、本発明の抗体Fabフラグメントにエフェクター分子を結合させるための方法もまた、本発明によって提供される。この方法は以下の工程を含む:
a)本発明の抗体Fabフラグメントを還元剤で処理する工程であって、この還元剤は、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域のシステイン中の遊離チオール基を生成できる工程
b)処理したフラグメントをエフェクター分子と反応させる工程。
【0044】
好ましい態様において、この方法は以下の工程を含む:
a)本発明の抗体FabフラグメントにおけるC1の鎖間システインとCの鎖間システインとの間の鎖間ジスルフィド結合を還元する工程
b)処理したフラグメントをエフェクター分子と反応させる工程。
【0045】
本発明によって提供される方法は、1個又は複数のエフェクター分子が抗体フラグメント中のシステイン、特に定常領域中のシステインに結合していることを可能にする。2つ以上のエフェクター分子は、本明細書に記載される方法を使用して、この方法を同時又は連続的にのいずれかで反復することによって、抗体フラグメントに結合できる。
【0046】
追加のエフェクター分子は、抗体フラグメント中の他の箇所、特に定常領域に結合できる。したがって、本発明の方法はまた、上記の還元方法の前及び/又は後で1つ又は複数の工程に拡張され、ここでは、追加のエフェクター分子が、以前に記載された任意の適切な方法を使用して、例えば、アミノ基及びイミノ基などの他の利用可能なアミノ酸側鎖を介して抗体フラグメントに結合している。
【0047】
本発明の方法に使用するための還元剤は、本発明の抗体Fabフラグメント出発物質中のシステインを還元して、遊離チオールを産生できる任意の還元剤である。好ましくは、この還元剤は、システインへのエフェクター分子の結合を可能にするために、重鎖定常領域のシステインと軽鎖定常領域のシステインとの間の、例えば、Cの鎖間システインとC1の鎖間システインとの間の鎖間ジスルフィド結合を還元する。本発明の抗体Fabフラグメントは、意外にも鎖間ジスルフィド結合についての要求性を有していないので、鎖間ジスルフィド結合を保持する野生型抗体フラグメントで従来使用されるものよりも強力な還元剤が使用できる。その結果、より多くの数の遊離チオールを有するFab分子が産生され、且つより高い割合の抗体フラグメントが正確に修飾され、即ち、正確な数のエフェクター分子が結合している。更に、本発明の抗体FabフラグメントにおけるC1の末端の鎖間システインは、C1鎖間システインに対してC末端である上流のヒンジ又は他のアミノ酸の存在に起因して、立体的又は局所的な静電的効果が存在し得る通常のFabフラグメントよりも、エフェクター分子結合及び還元のためにより高度にアクセス可能である。したがって、本発明の抗体フラグメントは、従来の抗体フラグメントよりも効率的且つコスト効果が高く修飾できる。適切な還元剤が、抗体フラグメントが還元剤で処理される後で産生される遊離チオールの数を決定することによって同定できることは当業者には明らかである。遊離チオールの数を決定するための方法は当該分野において周知であり、例えば、Lyons et al.,1990,Protein Engeering,3,703を参照のこと。本発明に使用するための還元剤は当該分野において広範に公知である(例えば、Singh et al.,1995,Methods in Enzymology、251,167−73に記載されるもの)。特定の例には、還元グルタチオン(GSH)、β−メルカプトエタノール(β−ME)、β−メルカプトエチルアミン(β−MA)、及びジチオスレイトール(DTT)などのチオール系還元剤が含まれる。本発明の抗体フラグメントを還元するための他の方法には、電気分解的方法を使用すること(例えば、Leach et al.,1965,Div.Protein.Chem,4,23−27において記載される方法)、及び光還元的方法を使用すること(例えば、Ellison et al.,2000,Biotechniques,28(2),324−326に記載される方法)が含まれる。しかし、好ましくは、本発明に使用するための還元剤は、抗体フラグメント中の1つ以上のチオールを遊離させることが可能である非チオール系還元剤である。好ましくは、非チオール系還元剤は、抗体フラグメント中の鎖間チオールを遊離させることが可能である。本発明に使用するための好ましい還元剤は、トリアルキルホスフィン還元剤である(Ruegg UT及びRudinger,J.,1977,Methods in Enzymology,47,111−126;Burns J et al.,1991,J.Org.Chem,56,2648−2650;Getz et al.,1999,Analytical Biochemistry,273,73−80;Han及びHan、1994,Analytical Biochemistry,220,5−10;Seitz et al.,1999,Euro.J.Nuclear Medicine,26,1265−1273)。これらの特定の例には、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、トリスブチルホスフィン(TBP)、トリス−(2−シアノエチル)ホスフィン、トリス−(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THP)、及びトリス−(2−ヒドロキシエチル)ホスフィンが含まれる。最も好ましくは、本発明に使用するため還元剤は、TCEP又はTHPのいずれかである。本発明に使用するための還元剤の濃度は、例えば、還元剤の濃度を変化させること、及び産生した遊離チオールの数を測定することによって経験的に決定できることは当業者には明らかである。代表的には、本発明に使用するための還元剤は、抗体フラグメントよりも過剰で、例えば、2倍から1000倍モル濃度過剰で使用される。好ましくは、この還元剤は、2、3、4、5、10、100、又は1000倍過剰である。一実施形態では、還元剤は2から5mMで使用する。
【0048】
本発明による修飾抗体Fabフラグメントは、エフェクター分子、好ましくは、チオール選択性活性化エフェクター分子と、少なくとも1つの反応性システイン残基を含む本明細書に記載されるような抗体Fabフラグメントを反応細胞させることによって調製できる。上記の工程(a)及び(b)における反応は、一般的に、溶媒、例えば、酢酸又はリン酸などの水性緩衝溶液中で、中性pH、例えば、約pH4.5から約pH8.5、典型的にはpH4.5から8、適切にはpH6から7において実行できる。反応は、一般的に、任意の適切な温度、例えば、約5℃から約70℃の間、例えば、室温で実行できる。溶媒は、場合により、EDTA、EGTA、CDTA、又はDTPAなどのキレート剤を含んでもよい。好ましくは、溶媒は、EDTAを、1から5mMの間、好ましくは2mMで含む。或いは、又は更に、溶媒は、クエン酸、シュウ酸、葉酸、ビシン、トリシン、トリス、又はADAなどのキレート剤緩衝液であってもよい。エフェクター分子は、一般的に、抗体フラグメントの濃度に比較して過剰の濃度で利用される。代表的には、エフェクター分子は、2から100倍モル濃度過剰、好ましくは5、10、又は50倍過剰である。
【0049】
必要である場合、所望の数のエフェクター分子を含む所望の生成物は、いずれかの開始物質、又は製造工程の間に生成される他の生成物から、通常の手段によって、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、プロテインA、プロテインG、若しくはプロテインLのアフィニティークロマトグラフィー、又は疎水性相互作用クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー技術によって分離できる。
【0050】
本発明によって、2種以上の抗体Fabフラグメントを含む混合物もまた提供され、この混合物はFabフラグメントで富化されており、ここでフラグメント中の重鎖定常ドメインがC1の鎖間システインで終了しており、フラグメント中の重鎖が軽鎖に共有結合しておらず、フラグメントが軽鎖及び重鎖の定常領域中のシステインに結合したエフェクター分子を有することを特徴とする。この混合物は、本発明によって提供される方法を使用して産生できる。「富化される」によって、本発明者らは、結合したエフェクター分子の所望の数を有する抗体Fabフラグメントが、この混合物の50%以上を占めることを意味する。好ましくは、結合したエフェクター分子の所望の数を有する抗体Fabフラグメントは、この混合物の50%から99%の間を占める。好ましくは、この混合物は、50%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超を占める。所望の数のエフェクター分子を有する抗体Fabフラグメントを含むこのような混合物の割合は、本明細書に記載されるようなサイズ排除HPLC法を使用することによって決定できる。
【0051】
本発明による抗体フラグメントは、多数の疾患又は障害の検出又は治療において有用であってもよい。このような疾患又は障害には、感染性疾患、例えば、細菌感染;真菌感染;炎症性疾患/自己免疫、例えば、関節リウマチ、骨関節炎、炎症性腸疾患;癌;アレルギー性/アトピー性疾患、例えば、喘息、湿疹;先天性疾患、例えば、嚢胞性線維症、鎌状赤血球貧血;皮膚科学的疾患、例えば、乾癬;神経学的疾患、例えば、多発性硬化症;移植、例えば、移植臓器拒絶、移植片対宿主疾患;及び代謝性/特発性疾患、例えば、糖尿病の一般的な標題の下で記載されるものが含まれる可能性がある。
【0052】
本発明による抗体フラグメントは、治療及び/又は診断に使用するために製剤化してもよく、本発明のさらなる態様によれば、重鎖定常領域がC1の鎖間システインで終了している抗体Fabフラグメントを、1種又は複数の医薬として許容可能な賦形剤、希釈剤、又は担体とともに含む医薬組成物を提供する。重鎖定常領域がC1の鎖間システインで終了しており、重鎖が軽鎖に共有結合しておらず、且つフラグメントが軽鎖及び重鎖の定常領域中のシステインに結合したエフェクター分子を有する抗体Fabフラグメントを、1種又は複数の医薬として許容可能な賦形剤、希釈剤、又は担体とともに含む、医薬組成物もまた提供する。
【実施例】
【0053】
本発明を以下に図面を参照しながら、例示のみのために説明する。
【0054】
(実施例1)
新規な「切断型」Fabフラグメントの作製
実施例2における抗体Fab分子は、ヒヒ血小板由来成長因子レセプター(PDGFr)に結合するg163であった。実施例3〜6における抗体Fab分子は、可溶性サイトカインを結合するヒトFab(本明細書では以後FAB(B)と呼ばれる)であった。実施例7〜8における抗体Fab分子は、可溶性サイトカインを結合するマウスFab、m13であった。g163及びFAB(B)を産生するために、PCRプライマーをヒトIgG1 C1領域に基づいて設計し、PCR変異誘発を使用して、C1の鎖間システインの直後に終止コドンを挿入した。m13を産生するために、PCRプライマーをマウスIgG1 C1領域に基づいて設計し、PCR変異誘発を使用して、C1の鎖間システインの直後に終止コドンを挿入した。重鎖及び軽鎖の定常領域の配列を以下及び図5に示す。
【0055】
野生型ヒトγ1Fab定常領域:
κ(配列番号2)
KRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
CH1(配列番号9)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCAA
g163及びFab(B)において使用されるヒト「切断型」γ1 Fab定常領域:
κ(配列番号2)
KRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQES VTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGE
CH1(配列番号1)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKS
m13において使用されるマウス「切断型」γ1 Fab定常領域
κ(配列番号4)
DAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRGE
CH1(配列番号3)
KTTPPSVYPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSETVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRD
下線を付したシステイン残基は、エフェクター分子が結合できる鎖間システインを示す。
【0056】
Fabフラグメントは、E.coli株W3110において産生され、且つ標準的な方法を使用して精製された(Humphrey et al.,2002,Protein Expression and Purification,26,309−320)。
【0057】
(実施例2)
g163のPEG化
すべての還元及びPEG化を、0.1Mリン酸pH 6.0;2mM EDTA中で実行した。Fabの濃度は5mg/mlであり、還元剤の濃度は40mMの最終濃度であった。すべての場合において、還元を室温(約24℃)で30分間行い、タンパク質をPD−10カラム(Pharmacia)上で脱塩し、次いでFabに対して5倍モル濃度過剰の20kDa PEG−マレイミドと混合した。20kDa PEGはNippon Oils and Fats(NOF)製であった。PEG化されたFabを、PEG化されていないFabから、サイズ排除HPLCによって、分析用Zorbax GF−450カラム及びGF−250カラム上で、順次に分離した。これらを、0.2Mリン酸pH 7.0+10%エタノールの30分間の定組成勾配で、1ml/分にて展開し、Fabを214nm及び280nmにおける吸収を使用して検出した。
【0058】
g163 Fabを、2種の非チオール系還元剤、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、トリスブチルホスフィン(TBP)を使用して還元し、2つの20kDa PEG分子を鎖間システインに結合させた。PEG化は、鎖間ジスルフィドが還元されたときに、両方のシステイン上で起こることが予想された。両方の部位のPEG化を、非還元SDS−PAGEによって確認した(図1)。レーンBは、TCEPを用いる還元後に結合した2つのPEG分子を有する、g163切断型Fabに対応する。100kDa付近でともに非常に密接している2つの高分子量バンドは、1つの結合したPEG分子を有する重鎖及び軽鎖から構成される。45kDa付近のより低分子量のバンドは、結合したPEGを有しない、少量の未修飾Fabである。25kDa付近のより低分子量のバンドは、遊離の重鎖及び軽鎖である。レーンDは、水性緩衝液及びタンパク質とより適合性でないTBPを使用して還元した、同じフラグメントである。還元剤としてTCEP及びTBPを使用して二重PEG化されるg163切断型Fabのパーセンテージは、HPLCによって決定されるように、それぞれ76%及び21%であった。したがって、TCEPは、本発明の修飾抗体フラグメントを製造するための有用な還元剤である。
【0059】
(実施例3)
還元剤TCEP及びTHPを使用する、Fab(B)のPEG化の効率の比較
本実施例において、還元及びPEG化を、50mM MOPS、2mM EDTA、pH 6.8中で実行した。Fab(B)(20mg/ml)の還元を、10mMの還元剤TCEP又はTHPを使用して、1時間、大気温度で実行した。還元剤のキャリーオーバーを阻止するために、厳密なカットを用いて、還元剤をPD10脱塩カラム(Pharmacia)上で除去した。PEG化を、Fabに対して3倍モル濃度過剰の20kDa PEG−マレイミドを使用して、一晩、大気温度で実行した。図2は、THPもまた、本発明の抗体フラグメントにPEGを結合させるための有用な還元剤であることを示す。
【0060】
(実施例4)
マウスFab、m13の二重PEG化
マウス切断型Fab、m13の鎖間システインを、20kDa線状PEGを使用してPEG化した。還元及びPEG化を、50mM Tris.HCl、5mM EDTA、pH 7.14中20.06mg/mlのFab、10mM TCEP(最終)及び4モル濃度過剰の20kDa 線状PEGで、室温で実行した。両方の部位のPEG化は、SDS−PAGE(図3)によって確認された。レーン1は二重PEG化されたm13であり(非還元)、レーン2は還元し二重PEG化されたm13であり、レーン3は非還元m13(PEGなし)であり、レーン4は還元したm13(PEGなし)である。
【0061】
(実施例5)
マウスにおけるm13 Fab−PEG(2×20kDa)の薬物動態
動物中における両方のポリペプチド(実施例4に記載のようなもの)上のm13 Fab PEG化の循環半減期を決定した。125I標識されたPEG化Fab分子を、皮下又は静脈内でマウスに注射し、血清性能を決定した。
【0062】
マウスを、頸部の背側に皮下で、又は軽度の麻酔の下で尾静脈中に静脈内注射をした。注射量はマウスあたり100μlであった。これは、13μgタンパク質及び1.2μCiアイソトープ線量(比活性(0.1μCi/μg)と等価であった。4匹のマウスを、各時点において心臓穿刺によって出血させた。ヘパリン処理血液を、あらかじめ秤量したチューブに収集した。血液の重量を測定後、γカウンター中で放射能を計数した。
調べた時間の点は以下の通り:
静脈内;注射の0.5、2、4、6、24、48、72、及び144時間後
皮下;注射の3、6、24、30、48、72、及び144時間後
【0063】
【表1】

【0064】
表1及び図4の結果は、PEG化Fab中の重鎖及び軽鎖は共有結合していないが、循環半減期は、非PEG化Fab(t1/2=約30分間)及び一層短い可能性がある遊離のLC又はHCより長いことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】重鎖定常領域がC1の鎖間システインで終了しているPEG化g163 Fabの非還元SDS−PAGEの図である。レーンBは、TCEPを用いる還元後に結合したPEGを有するg163Fabを示す。レーンDは、THPを用いる還元後に結合したPEGを有するg163Fabを示す。
【図2】Fab(B)のPEG化効率に対する還元剤THP及びTCEPの比較の図である。
【図3】PEG化マウスFab、m13のSDS−PAGEの図である。
【図4】マウスにおける125I標識 m13 PEG−二重PEG(2×20kDa)の薬物動態の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖定常領域がC1の鎖間システインで終了していることを特徴とする、抗体Fabフラグメント。
【請求項2】
1の鎖間システインがCの鎖間システインに共有結合している、請求項1に記載の抗体Fabフラグメント。
【請求項3】
1の鎖間システインが重鎖の233位にある、請求項1又は請求項2に記載の抗体Fabフラグメント。
【請求項4】
1の鎖間システインが重鎖の127位にある、請求項1又は請求項2に記載の抗体Fabフラグメント。
【請求項5】
1の鎖間システインが重鎖の128位にある、請求項1又は請求項2に記載の抗体Fabフラグメント。
【請求項6】
1の鎖間システインが重鎖の235位にある、請求項1又は請求項2に記載の抗体Fabフラグメント。
【請求項7】
軽鎖定常領域の鎖間システインが軽鎖の214位にある、請求項1から5までに記載の抗体Fabフラグメント。
【請求項8】
重鎖定常領域が、配列番号1に示される配列に対して少なくとも90%の同一性若しくは類似性を有する配列を含むか、又はその配列からなる、請求項1から3までに記載の抗体Fabフラグメント。
【請求項9】
軽鎖定常領域が、配列番号2に示される配列に対して少なくとも90%の同一性若しくは類似性を有する配列を含むか、又はその配列からなる、請求項8に記載の抗体Fabフラグメント。
【請求項10】
重鎖定常領域が、配列番号3に示される配列に対して少なくとも90%の同一性若しくは類似性を有する配列を含むか、又はその配列からなる、請求項1、2、及び6に記載の抗体Fabフラグメント。
【請求項11】
軽鎖定常領域が、配列番号4に示される配列に対して少なくとも90%の同一性若しくは類似性を有する配列を含むか、又はその配列からなる、請求項10に記載の抗体Fabフラグメント。
【請求項12】
1個又は複数のエフェクター分子が結合している、請求項1から11までに記載の抗体Fabフラグメント。
【請求項13】
2つ以上のエフェクター分子が結合している、請求項12に記載の抗体Fabフラグメント。
【請求項14】
エフェクター分子が軽鎖定常領域中のシステイン及び重鎖定常領域中のシステインに結合している、請求項13に記載の抗体フラグメント。
【請求項15】
エフェクター分子に結合している、重鎖及び軽鎖定常領域中のシステイン残基は、エフェクター分子が結合していない場合、ジスルフィド結合を介して互いに連結されると見込まれる、請求項14に記載の抗体フラグメント。
【請求項16】
エフェクター分子が結合している軽鎖システインはCの鎖間システインであり、且つエフェクター分子が結合している重鎖システインはC1の鎖間システインである、請求項15に記載の抗体フラグメント。
【請求項17】
エフェクター分子がPEGである、請求項12から16までに記載の抗体Fabフラグメント。
【請求項18】
請求項12から17までに記載の抗体Fabフラグメントを産生する方法であって、
a.請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11に記載の抗体Fabフラグメントを還元剤で処理する工程であって、前記還元剤が、重鎖及び軽鎖定常領域のシステイン中に遊離チオール基を生成できる工程
b.処理したフラグメントをエフェクター分子と反応させる工程
を含む方法。
【請求項19】
還元剤が非チオール系還元剤である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
還元剤がトリアルキルホスフィンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
非チオール系還元剤がトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
非チオール系還元剤がトリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THP)である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
工程(a)及び(b)のいずれか又はその両方をキレート剤の存在下で実行する、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
キレート剤がEDTAである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程(a)及び(b)の両方をEDTAの存在下で実行する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
2種以上の抗体Fabフラグメントを含む混合物であって、混合物がFabフラグメントで富化されており、C1ドメインが鎖間システインで終止しており、フラグメント中の重鎖が軽鎖に共有結合しておらず、フラグメントが軽鎖及び重鎖の定常領域中のシステインに結合しているエフェクター分子を有することを特徴とする混合物。
【請求項27】
混合物の50%超がFabフラグメントを含んでおり、C1ドメインが鎖間システインで終了し、前記フラグメント中の重鎖は軽鎖に共有結合しておらず、且つ前記フラグメントは軽鎖及び重鎖の定常領域中のシステインに結合したエフェクター分子を有する、請求項26に記載の混合物。
【請求項28】
請求項3から11までのいずれか一項に記載の抗体Fabフラグメントの重鎖及び/又は軽鎖の定常領域をコードする、単離されたDNA配列。
【請求項29】
請求項28に記載の1つ又は複数のDNA配列を含む、クローニングベクター又は発現ベクター。
【請求項30】
配列番号5に示される配列を含む、請求項29に記載のベクター。
【請求項31】
配列番号6に示される配列を更に含む、請求項30に記載のベクター。
【請求項32】
配列番号7に示される配列を含む、請求項29に記載のベクター。
【請求項33】
配列番号8に示される配列を更に含む、請求項32に記載のベクター。
【請求項34】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11に記載の抗体Fabフラグメントを発現する宿主細胞。
【請求項35】
請求項29から33までに記載の1つ又は複数のクローニングベクター又は発現ベクターを含む、請求項34に記載の宿主細胞。
【請求項36】
請求項34に記載の宿主細胞を培養し、前記フラグメントを単離することを含む、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11に記載の抗体Fabフラグメントを産生する方法。
【請求項37】
請求項1から17まで及び26から27までに記載の抗体Fabフラグメントを、1種又は複数の医薬として許容可能な賦形剤、希釈剤、又は担体とともに含む、医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−536898(P2007−536898A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516487(P2006−516487)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002810
【国際公開番号】WO2005/003169
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(501460693)セルテック アール アンド ディ リミテッド (29)
【Fターム(参考)】