説明

修飾糖類

対応する未変性莢膜糖の単糖単位の内の少なくとも1個にヒドロキシル基位置でブロック基を含む修飾莢膜糖類であって、ここで前記ブロック基が、式(Ia)又は(Ib):−O−X−Y(Ia)又は−O−R(Ib)(式中、Xは、C(O)、S(O)又はSOであり;Yは、NR又はRであり;Rは、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基及びアミン基から独立して選択される1、2又は3個の基によって置換されるC1−6アルキル基であり;RはH又はC1−6アルキル基であり;及びRはC1−6アルキル基である)である、修飾莢膜糖類;ブロック基を有する莢膜糖を修飾するためのプロセス;修飾莢膜糖を含む糖−タンパク質複合体;糖−タンパク質複合体を作製するためのプロセス、修飾莢膜糖及び/又は糖−タンパク質複合体を含む医薬組成物;及びその方法と使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において引用される全ての文献は、その開示内容全体が参考として援用される。
【0002】
本発明は、多糖類化学の分野におけるものであって、修飾糖類と、それらの調製方法と、結合体化誘導体とに関する。特に、本発明は、水中での安定性が向上した修飾糖類に関する。
【背景技術】
【0003】
多糖類は、重要な生体分子であり、疾患の予防及び治療のための医薬品工業において広く使用されてきた。例えば、莢膜多糖は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)や、肺炎球菌(肺炎連鎖球菌)、Hib(インフルエンザ菌B型)等の莢膜形成細菌(capsulate bacteria)に対するワクチンにおいて長年使用されてきた。
【0004】
特に小児におけるこれらの多糖類の免疫原性を高めるために、結合体化ワクチンが開発されてきた。これらは、担体タンパク質[例えば参考文献1、2、3(特許文献1、2、3)]に結合体化する莢膜多糖を含む。結合体化によって、T細胞非依存性抗原は、T細胞依存性抗原になり得る。
【0005】
多くの種類の多糖類に関連する課題は、水中における安定性が低いことである。水中における多糖類の安定性は、糖単位を結合するO−グリコシド結合の性質に依存し得る。水中における安定性の低下は、O−グリコシド結合が酸又はグリコシダーゼの存在下で容易に加水分解されることによってもたらされる。血清群A髄膜炎菌の莢膜多糖は、水中で安定性が低い多糖類の一例である。
【0006】
多糖類の安定性は、結合体化ワクチンの製造における特定の課題である。多糖−タンパク質複合体を調製するためには、多糖がタンパク質と結合し得るように多糖上の化学官能基をマニピュレートする必要がある。これを行うための方法においては、多糖を、化学試薬、特に酸に曝露することによって、グリコシド結合の望ましくない切断と、それに伴う多糖の断片化とが生じる可能性がある。かかる断片化は非常に望ましくないことであり、それによって、多糖−タンパク質複合体の合成における収率の低下が引き起こされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,711,779号明細書
【特許文献2】米国特許第4,761,283号明細書
【特許文献3】米国特許第4,882,317号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように不安定である多糖類は、上記の課題を回避するために、一般的に慎重な試薬と条件との選択を必要とする。しかしながら、これによって、多糖類のマニピュレートに利用可能な試薬が限定され、しかるに多糖と担体タンパク質との間でなされ得る結合の範囲が限定される。更に、これらの多糖類の不安定性は、工業規模でのワクチンの調製に使用され得る確固たる手法の開発が困難であることを意味している。
【0009】
参考文献4は、対応する未変性莢膜糖の単糖単位の内の少なくとも1つの上のヒドロキシル基の位置のブロック基を含む修飾莢膜糖を開示している。修飾莢膜糖は、加水分解安定性が向上していると言われている。本発明の目的は、加水分解安定性が向上した、別の、又は改善された修飾莢膜糖を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特定のブロック基を有する莢膜糖類の単糖単位の上のヒドロキシル基の修飾によって安定性が向上するという発見に基づくものである。本発明の方法によって得られる修飾糖類は、それらの未変性の糖対応物よりも加水分解安定性が大きい。
【0011】
故に、本発明は、対応する未変性莢膜糖の単糖単位の内の少なくとも1つの上のヒドロキシル基の位置のブロック基を含む修飾莢膜糖を提供するものである。ブロック基については、以下で定義される。本発明の修飾莢膜糖は、その未変性の糖対応物よりも加水分解安定性が大きい。好ましくは、本発明の修飾莢膜糖は、その未変性の糖対応物との免疫学的交差反応性を保持する。
【0012】
また、本発明は、ブロック基を有する莢膜糖の修飾方法と、該修飾莢膜糖を含む糖−タンパク質複合体と、糖−タンパク質複合体の作製方法と、該修飾莢膜糖及び/又は糖−タンパク質複合体を含む医薬組成物と、その方法及び使用とを提供するものである。
【0013】
本発明の修飾糖類
本発明は、対応する未変性莢膜糖の単糖単位の内の少なくとも1つの上のヒドロキシル基の位置のブロック基を含む修飾莢膜糖を提供するものである。該ブロック基は、式(Ia)又は(Ib)
−O−X−Y (Ia) −O−R (Ib)
(式中、
Xは、C(O)、S(O)又はSOであり;
Yは、NR又はRであり;
は、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基及びアミン基から独立して選択される1、2又は3個の基で置換されるC1−6アルキル基であり;
は、H又はC1−6アルキル基であり;及び
は、C1−6アルキル基である)である。
【0014】
好ましくは、該ブロック基は、式(Ia)である。本実施形態においては、XがC(O)であることが好ましい。かかるカルバメート及びエステルブロック基は、グリコシド結合に対する安定効果を有しており、軽度の条件下で調製され得る。以下、カルバメート及びエステルブロック基を提供するために糖をマニピュレートする方法の例について説明する。しかしながら、本発明は、本明細書において例証される方法によって調製される修飾糖類に限定されるものではなく、本発明の修飾糖類を調製するための他の方法は、当業者に直ちに明らかであろう。
【0015】
好ましくは、RはHである。
【0016】
のC1−6アルキル基は、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基及びアミン基から独立して選択される1、2又は3個の基によって置換される。C1−6アルキル基が2又は3個の基で置換される場合、該置換は、同一の基又は異なる基によるものであってよいが、典型的には同一の基によるものである。好ましくは、RのC1−6アルキル基は、1、2又は3個のヒドロキシル基で置換される。
【0017】
は、C1−6アルキル鎖のいずれかの位置で置換され得る。好ましくは、少なくとも1つの置換は、C1−6アルキル鎖の末端に存在する。C1−6アルキル鎖が直鎖アルキル基である場合、このことは、C1−6アルキル基がCで置換されることを意味し、ここでxは、C1−6アルキル鎖中の炭素原子の総数である。同様に、C1−6アルキル鎖が分枝鎖アルキル基である場合、このことは、C1−6アルキル基が、分枝の内の1つ(典型的には最長の分枝)の末端で置換されることを意味する。
【0018】
好ましい実施形態においては、Rは単一の基で置換されるが、この置換は、上記のようにC1−6アルキル鎖の末端で生じる。かかる基は、加水分解安定性の向上を得ることに特に有効である。好ましくは、該単一の基はヒドロキシル基である。故に、好ましい基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、6−ヒドロキシヘキシル基が挙げられる。特に好ましい基は、2−ヒドロキシエチル基である。
【0019】
他の好ましい実施形態において、Rは、2個のビシナルである基(即ち、C1−6アルキル鎖に沿って隣接する位置の2個の基)によって置換される。かかる基は、加水分解安定性の向上を得ることに特に有効である。好ましくは、2個のビシナルである基は、C1−6アルキル鎖の末端にある。C1−6アルキル鎖が直鎖アルキル基である場合、このことは、2個のビシナルである基がC及びCx−1であることを意味し、ここでxは、C1−6アルキル鎖中の炭素原子の総数である。同様に、C1−6アルキル鎖が分枝鎖アルキル基である場合、このことは、2個のビシナルである基が、分枝の内の1つ(典型的には最長の分枝)の末端で置換されることを意味する。好ましくは、2個のビシナルである基はヒドロキシル基である。後述するように、かかる基は、担体分子への結合体化のための結合手を提供する。故に、好ましい基としては、1,2−ジヒドロキシエチル;1,2−ジヒドロキシプロピル及び2,3−ジヒドロキシプロピル;1,2−ジヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシブチル及び3,4−ジヒドロキシブチル;1,2−ジヒドロキシペンチル、2,3−ジヒドロキシペンチル、3,4−ジヒドロキシペンチル及び4,5−ジヒドロキシペンチル;1,2−ジヒドロキシヘキシル、2,3−ジヒドロキシヘキシル、3,4−ジヒドロキシヘキシル、4,5−ジヒドロキシヘキシル及び5,6−ジヒドロキシヘキシルが挙げられる。上記したように、2個のビシナルである基がC1−6アルキル鎖の末端にあることが好ましい。故に、特に好ましい基としては、1,2−ジヒドロキシエチル、2,3−ジヒドロキシプロピル;3,4−ジヒドロキシブチル、4,5−ジヒドロキシペンチル及び5,6−ジヒドロキシヘキシルが挙げられる。特に好ましい基は、4,5−ジヒドロキシペンチルである。
【0020】
幾つかの実施形態において、修飾莢膜糖は、(上記の通り)少なくとも2種のブロック基を含む。例えば、該糖は、a)少なくとも1個のブロック基(ここでRは単一の基によって置換され、この置換は、(上記のように)C1−6アルキル鎖の末端で生じる);及びb)少なくとも1個のブロック基(ここでRは、(上記のように)2個のビシナルである基によって置換される)を含むことが好ましい。かかる混合ブロック基は、加水分解安定性の向上を得ることに特に有効である。更に、後述するように、Rが2個のビシナルであるヒドロキシル基によって置換される少なくとも1個のブロック基を含むことによって、担体分子への結合体化のための結合手が提供される。
【0021】
好ましくは、RはC−Cアルキル基である。最も好ましくは、RはCアルキル基(CH)であるが、Cアルキル基及びCアルキル基もまた好ましい。
【0022】
式:−O−X−Y又は−O−Rのブロック基は、ハロゲン化アシル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化スルホニル等とのヒドロキシル基の反応等の標準的な誘導体化手法によって、(例えば未変性分子内に見出される通りの)ヒドロキシル基から調製され得る。したがって、−O−X−Yの中の酸素原子は、好ましくはヒドロキシル基の酸素原子であるが、−O−X−Yの中の−X−Y基は、好ましくはヒドロキシル基の水素原子と置換する。或いは、該ブロック基は、光延型置換等の置換反応を介して利用可能となり得る。ヒドロキシル基からブロック基を調製するこれらの及び他の方法は、よく知られている。
【0023】
典型的には、本発明の修飾糖類はオリゴ糖類である。オリゴ糖類は、本明細書に記載の解重合方法及びサイジング方法のいずれかによって多糖類から得ることが可能である。
【0024】
本発明の修飾莢膜糖類は、未変性の莢膜糖類から得ることができる。しかしながら、本発明は、未変性の莢膜糖類から得られる修飾糖類に限定されない。本発明の修飾莢膜糖類は、全合成や部分合成等の他の方法によって得ることが可能である(例えば、参考文献5参照)。
【0025】
本発明の修飾莢膜糖類においては、ブロック基を有する単糖単位の数は変化し得る。好ましくは、修飾莢膜糖の単糖単位の全て又は実質的に全ては、ブロック基を有してよい。或いは、修飾莢膜糖の単糖単位の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%は、ブロック基を有してよい。修飾莢膜糖の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40個の単糖単位は、ブロック基を有してよい。
【0026】
修飾莢膜糖が少なくとも2種のブロック基を含む場合、各種のブロック基を有する単糖単位の数もまた変化し得る。例えば、あるタイプのブロック基が構成するブロック基の総数の、別のタイプのブロック基に対する比率は、変化し得る。特に、2種のブロック基が存在する場合、あるタイプのブロック基の、他のタイプのブロック基に対する比は、1:20、1:19、1:18、1:17、1:16、1:15、1:14、1:13、1:12、1:11、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2及び1:1から選択され得る。特に上記の実施形態においては、該糖が、a)少なくとも1個のブロック基(ここでRは単一の基で置換され、この置換はC1−6アルキル鎖の末端で生じる);及び、b)少なくとも1個のブロック基(ここでRは2個のビシナルである基によって置換される)を含む場合、前者のタイプのブロック基の、後者のタイプのブロック基に対する比は、99:1、98:2、97:3、96:4、95:5、94:6、93:7、92:8、91:9、90:10、89:11、88:12、87:13、86:14、85:15、84:16、83:17、82:18、81:19及び80:20から選択されることが好ましい。これらの比の中で、95:5、94:6、93:7、92:8、91:9、90:10、89:11、88:12、87:13、86:14及び85:15が特に好ましい。これらの中では、90:10が好ましい。
【0027】
同様に、単糖単位上のブロック基の数は、変化し得る。例えば、単糖単位上のブロック基の数は、1、2、3、4、5又は6個であり得、好ましくは1〜4個、より好ましくは1又は2個、最も好ましくは1個である。
【0028】
一実施形態において、ブロック基を有する少なくとも1個の単糖単位は、非末端単糖単位を含む。「非末端単糖単位」という用語は、オリゴ糖/多糖鎖の末端単糖単位の内の1つではない単糖単位を意味する。
【0029】
本発明は、末端単糖単位及び非末端単糖単位の全てのヒドロキシル基位置がブロック基を有する修飾莢膜糖類を包含する。しかしながら、幾つかの好ましい実施形態においては、本発明の修飾莢膜糖類の中に少なくとも1個の遊離ヒドロキシル基又はアミノ基がある。後述するように、遊離ヒドロキシル基又はアミノ基は、修飾莢膜糖の更なる反応のための、例えば担体分子への結合体化のための結合手を提供するので、有利である。該修飾糖は、遊離ヒドロキシル基を含む場合、アノマーヒドロキシル基、特に末端アノマーヒドロキシル基であってよい。該修飾糖は、アミノ基を含有する場合、アノマーヒドロキシル基から誘導され得る。アミノ基は、(例えば、NaBHCN/NHClを使用して)還元的アミノ化によってアノマーヒドロキシル基から容易に利用可能である。同様に、他の好ましい実施形態においては、修飾莢膜糖の少なくとも1個の単糖単位が、対応する未変性莢膜糖の2個のビシナルであるヒドロキシル基がブロック基を含まない場合に存在する。好ましくは、このようにして、単糖単位の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%又は20%が2個のビシナルであるヒドロキシル基を有する。例えば、このようにして、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40個の単糖単位が2個のビシナルであるヒドロキシル基を有する。好ましくは、単糖単位の5〜15%の間、最も好ましくは10%が、このようにして、2個のビシナルであるヒドロキシル基を有する。後述するように、単糖単位の中の2個のビシナルであるヒドロキシル基は、担体分子への結合体化のための結合手を提供するので、有利である。
【0030】
或いは、幾つかの好ましい実施形態においては、上記の通り、修飾莢膜糖の単糖単位の内の少なくとも1個或いは少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%又は20%がブロック基を有し、ここでRは2個のビシナルであるヒドロキシル基によって置換される。例えば、修飾莢膜糖の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40個の単糖単位は、かかるブロック基を有することができる。好ましくは、修飾莢膜糖の単糖単位の5〜15%の間、最も好ましくは10%がブロック基を有し、ここでRは2個のビシナルであるヒドロキシル基によって置換される。再度、後述するように、単糖単位の中の2個のビシナルであるヒドロキシル基は、担体分子への結合体化のための結合手を提供するので有利である。
【0031】
有効なブロック基が電子吸引性基であることは、参考文献4において示唆されている。理論に束縛されるものではないが、グリコシド結合は、グリコシド結合上の糖ヒドロキシル基の分子内求核攻撃からの助力によって(即ち環状中間体の形成によって)加水分解に不安定であると考えられる。ヒドロキシル基の求核性がより大きいほど、分子内求核攻撃の傾向がより大きくなる。電子吸引性ブロック基は、酸素の非共有電子対を非局在化し、それによって酸素求核性を低下させ、分子内求核攻撃の傾向を低下させる効果を有する。意外にも、ブロック基の中の求核性のヒドロキシル基、スルフヒドリル基又はアミン基の存在にもかかわらず、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基及びアミン基から独立して選択される1、2又は3個の基によって置換されたC1−6アルキル基を含む基が有効なブロック基である可能性があるということが見出されている。更に、これらのヒドロキシル基、スルフヒドリル基又はアミン基で置換された基は、担体分子への修飾莢膜糖のより効果的な結合体化を可能にするため、有利である。理論に束縛されるものではないが、この効果は、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基及びアミン基から独立して選択される1、2又は3個の基によって置換されたC1−6アルキル基を含む基の相対的親水性に起因すると考えられる。更に、該ブロック基が、2個のビシナルであるヒドロキシル基によって置換されたC1−6アルキル基を含む場合、該ブロック基自体は、担体分子への結合体化のための結合手を提供する。
【0032】
上記の全ての実施形態において、該修飾莢膜糖は、好ましくはリン酸ジエステル結合を有する修飾莢膜糖である。より好ましくは、該修飾莢膜糖は、修飾Neisseria meningitidis血清群A糖である。Neisseria meningitidis血清群A糖は、特に加水分解に不安定である。
【0033】
該修飾莢膜糖が修飾Neisseria meningitidis血清群A糖である場合、該ブロック基は、好ましくは対応するNeisseria meningitidis血清群A糖の4位及び/又は3位、より好ましくは4位にある。4位及び/又は3位のNeisseria meningitidis血清群A糖におけるブロック基が特に加水分解に対する安定性の向上に有効であることを示した。
【0034】
エステルブロック基による実施形態において(即ち、ブロック基が式(Ia)であり、XがC(O)であり、及びYがRである場合)、本発明者らは、修飾Neisseria meningitidis血清群A糖の安定性が、ブロック基を有する4位及び/又は3位の比率に影響されることを明らかにした。例えば、ブロック基を有する4位の比率は、約0%、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は約100%であってよく、少なくとも30%及び約100%であることが好ましい。同様に、ブロック基を有する3位の比率は、約0%、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は約100%であってよく、少なくとも95%及び約100%であることが好ましい。典型的には、ブロック基を有する4位及び3位の比率は各位置でほぼ同じである。換言すれば、ブロック基を有する3位に対するブロック基を有する4位の比は、約1:1である。しかしながら、幾つかの実施形態においては、ブロック基を有する3位に対するブロック基を有する4位の比率は変化し得る。例えば、ブロック基を有する3位に対するブロック基を有する4位の比は、1:20、1:19、1:18、1:17、1:16、1:15、1:14、1:13、1:12、1:11、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3又は1:2であってよい。同様に、ブロック基を有する4位に対するブロック基を有する3位の比は、1:20、1:19、1:18、1:17、1:16、1:15、1:14、1:13、1:12、1:11、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3又は1:2であってよい。
【0035】
本発明はまた、式:
【0036】
【化1】

(式中、
Tは式(A)又は(B):
【0037】
【化2】

であり;
nは、1から100までの整数であり;
各Z基は、−OH、OAc又は上記記載の通りのブロック基から独立して選択され;
各Q基は、−OH、OAc又は上記記載の通りのブロック基から独立して選択され;
Vは、−NH、−NHE、−NE、W又は−O−Dから選択され、ここでE、E及びEは、同一又は異なっていてよい窒素保護基であり、及びDは、酸素保護基であり;
Wは、−OH又は上記記載の通りのブロック基であり;
は、−OH又は上記記載の通りのブロック基であり;
は、−OH又は上記記載の通りのブロック基であり;
及び、Z基の少なくとも1個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40個)及び/又はQ基の少なくとも1個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40個)は、上記記載の通りのブロック基である)の糖を提供するものである。
【0038】
好ましくは、nは15から25までの整数である。
【0039】
n+2個のZ基の各々は、それぞれ同一又は異なっていてよい。同様に、n+2個のQ基は、それぞれ同一又は異なっていてよい。
【0040】
Vは、好ましくは−NH又は−NHEである。
【0041】
適切な窒素保護基としては、シリル基(例えば、TMS、TES、TBS、TIPS等)、アシル誘導体(例えば、トリフルオロアセトアミド、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Z又はCbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル(Troc)等)、スルホニル誘導体(例えば、β−トリメチルシリルエタンスルホニル(SES)等)、スルフェニル誘導体、C1−12アルキル基、ベンジル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、アリル基、9−フェニルフルオレニル基等がある。好ましい窒素保護基は、Fmocである。
【0042】
として使用され得る二価の窒素保護基としては、
環状イミド誘導体(例えば、N−フタルイミド、N−ジチアスクシンイミド、N−2,3−ジフェニルマレイミド等)、イミン誘導体(例えば、N−1,1−ジメチルチオメチレンアミン、N−ベンジリデンアミン、N−p−メトキシベンジリデンアミン、N−ジフェニルメチレンアミン等)、エナミン誘導体(例えば、N−(5,5−ジメチル−3−オキソ−1−シクロヘキセニル)アミン等)等が挙げられる。好ましい二価の窒素保護基は、N−フタルイミジルである。
【0043】
適切な酸素保護基としては、エステル、エーテル(例えば、シリルエーテルやアルキルエーテル)、アセタールが挙げられる。具体例としては、アリル、アセチル、Aloc、ベンジル、ベンジルオキシメチル(BOM)、t−ブチル、トリチル、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリエチルシリル(TES)、トリメチルシリル(TMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、パラメトキシベンジル(PMB)、MEM、メトキシメチル(MOM)、MTM、テトラヒドロピラニル(THP)が挙げられる。
【0044】
全てのZ基は、OH(ブロック基であるZ基の内の少なくとも1つ及び/又はQ基の内の少なくとも1つの影響を受けやすい)であってよい。OHである全てのZ基に代えて、Z基の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%は、OAcであってよい。好ましくは、Z基の約60〜90%がOAcであり、Z基の残部がOH又は上記記載の通りのブロック基である。好ましくは、Z基の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%又は40%がブロック基であり、60〜90%がOAcであり、残部がOHである。好ましくは、Z基の約10〜40%がブロック基であり、60〜90%がOAcであり、残部がOHである。或いは、Z基の約0%、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は約100%がブロック基であり、少なくとも95%及び約100%であることが好ましい。
【0045】
全てのQ基は、OH(ブロック基であるZ基及び/又はQ基の内の少なくとも1つの影響を受けやすい)であってよい。或いは、Q基の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%又は20%は、OAcであってよい。好ましくは、Q基の約1〜20%がOAcであり、残部がOH又は上記記載の通りのブロック基である。好ましくは、Q基の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%で、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%がブロック基であり、1〜20%がOAcであり、残部がOHである。好ましくは、Q基の約80〜99%がブロック基であり、1〜20%がOAcであり、残部がOHである。或いは、Q基の約0%、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は約100%がブロック基であり、少なくとも30%及び約100%であることが好ましい。
【0046】
また、本発明は、式
【0047】
【化3】

(式中、
Tは、式(A)又は(B):
【0048】
【化4】

であり;
n、Z、Q及びWは、上記で定義された通りであり;Z基の内の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40)及び/又はQ基の内の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40)がブロック基であり;及びLは、O、NH、NE、S又はSeである)の糖部分を含む分子を提供するものである。
【0049】
Lの遊離(free)共有結合は、任意の適切な部分、例えば、−H−E、リンカー、タンパク質担体等に結合し得る。Lは、好ましくはN又はOである。また、LはNであることが可能でり、二価のリンカー、二価の保護基又は二価のタンパク質担体に結合する。
【0050】
n、Z、Q及びW基の好ましい本性は、上に記載される。
【0051】
また、本発明は、式
【0052】
【化5】

(式中、
Tは、式(A)又は(B):
【0053】
【化6】

であり;
n、Z、Q、W、W及びVは、上記で定義された通りであり、Z基の内の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40)及び/又はQ基の内の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40)が式(IIa)又は(IIb):
−O−X−Y' (IIa) −O−R (IIb)
(式中、
Xは、上記で定義された通りであり;
Y’は、NRであり;
は、上記で定義された通りであり;及び
は、−C1−4アルキレン−CH(O)又は−C1−5アルキレン−NH−であり、ここで−NH−基はタンパク質担体の一部である)である)の糖を含む分子を提供するものである。
【0054】
好ましくは、該少なくとも1個のZ基及び/又はQ基は、式(IIa)である。本実施形態においては、XがC(O)であることが好ましい。
【0055】
好ましいR基については、式(Ia)に関して、上で記載される。
【0056】
好ましいR基としては、−Cアルキレン−CH(O)、−Cアルキレン−CH(O)、−Cアルキレン−CH(O)、−Cアルキレン−CH(O)が挙げられる。特に好ましいR基は、−Cアルキレン−CH(O)である。
【0057】
他の好ましいR基としては、−Cアルキレン−NH−、−Cアルキレン−NH−;−Cアルキレン−NH−、−Cアルキレン−NH−、−Cアルキレン−NH−が挙げられる。特に好ましいR基は、−Cアルキレン−NH−である。
n、Z、Q、W、W及びV基の好ましい本性は、上で記載される。
【0058】
修飾糖の製造方法。
【0059】
本発明は、
(a)単糖単位上に少なくとも1個のヒドロキシル基を有する莢膜糖を提供するステップ;及び
(b)該少なくとも1個のヒドロキシル基をブロック基に変換するステップ、を含む、莢膜糖の修飾方法を提供する。
【0060】
該ブロック基は、上で定義されたブロック基のいずれかである。
【0061】
該莢膜糖は、未変性の莢膜糖(オリゴ糖又は多糖)であってよい。代わりとして、該莢膜糖は、例えば、脱−O−アセチル化莢膜糖及び/又は末端アミノ基を有する莢膜糖(例えば、還元的アミノ化によって得られるもの)。
【0062】
ブロック基が−OC(O)NRである糖を修飾するための好ましい方法は、ステップ(b)が、
(b1)莢膜糖類を有機溶媒中の二価性試薬と反応させるステップ;及び
(b2)ステップ(b1)の生成物を式(III):
HNR (III)
(式中、R及びRは上記記載の通りである)のアミノ化合物と反応させるステップ、を含む場合である。
【0063】
「二価性試薬」という用語は、(i)ステップ(b1)において、該糖上のヒドロキシル基との結合のための第1の求電子性炭素原子を提供する;及び(ii)ステップ(b2)において使用されるアミノ基との結合のための第2の求電子性炭素原子を提供する、という二重機能を行うことができる任意の試薬を意味する。一般的に、第2の求電子性炭素原子は、ステップ(b)の間に第1の求電子性炭素原子から再生成される。該二価性試薬によって、多糖とアミノ化合物との間に−C(O)−結合が形成される。
【0064】
本発明に使用される二価性試薬としては、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、カルボニルジ−1,2,4−トリアゾール(CDT)、カルボニルジ−1,2,3−ベンゾトリアゾール(CDB)、ジフェニルカーボネート、臭化シアン、ホスゲン、トリホスゲンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。当業者は、これらと同じ機能を行うことが可能な他の二価性試薬を知っているであろう。
【0065】
好ましい二価性試薬は、CDIである。CDIには、例えばホスゲンや臭化シアンよりも穏やかな試薬であるという長所がある。特に、CDIを使用するカップリング反応によって、HClやHBr等のハロゲン化水素酸ガスは生成されない。HClガスやHBrガスの生成は、これらの気体によって、大気中へのそれらのガスの漏出を回避するために反応室排出口の洗浄が必要となるので、望ましくない。更に、HClガス又はHBrガスの生成は、該糖上の感受性が高い官能基に影響を及ぼす可能性があり、それによって、糖の分解又は断片化による収率の低下が生じる。
【0066】
ステップ(b1)で使用する有機溶媒は、好ましくは非プロトン性溶媒である。非プロトン性溶媒は、当業者によく知られており、いかなるイオン化水素原子も含むものではない。これらの溶媒は、ヒドロキシル基の求核性を高めることによって、二価性試薬との糖上のヒドロキシル基の反応を容易にするため、有利である。適切な非プロトン性溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)、1,3ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。DMSOが好ましい。
【0067】
本発明の方法のステップ(b2)において、ステップ(b1)の生成物は、アミノ化合物と反応して修飾多糖を形成する。上記記載の通り、本発明の方法において使用されるアミノ化合物は、式(III)である。
【0068】
本発明で使用され得る適切なアミノ化合物は、RとRによって決まる。上記のように、他の好ましい実施形態において、Rは単一のヒドロキシル基によって置換され(この置換はC1−6アルキル鎖の末端で生じる)、RはHである。故に、本発明で使用され得る好ましいアミノ化合物としては、アミノメタノール、2−アミノエタノール、3−アミノプロパン−1−オール、4−アミノブタン−1−オール、5−アミノペンタン−1−オール、6−アミノヘキシル−1−オールが挙げられる。特に好ましいアミノ化合物は、2−アミノエタノールである。他の好ましい実施形態においては、Rは2個のビシナルであるヒドロキシル基によって置換され、且つ、RはHである。故に、本発明で使用され得る好ましいアミノ化合物としては、1−アミノエタン−1,2−ジオール;1−アミノプロパン−1,2−ジオール及び3−アミノプロパン−1,2−ジオール;1−アミノブタン−1,2−ジオール、1−アミノブタン−2,3−ジオール及び4−アミノブタン−1,2−ジオール;1−アミノペンタン−1,2−ジオール、1−アミノペンタン−2,3−ジオール、5−アミノペンタン−2,3−ジオール及び5−アミノペンタン−1,2−ジオール;1−アミノヘキサン−1,2−ジオール、1−アミノヘキサン−2,3−ジオール、5−アミノヘキサン−3,4−ジオール、6−アミノヘキサン−2,3−ジオール及び6−アミノヘキサン−1,2−ジオールが挙げられる。特に好ましい実施形態において、Rは、C1−6アルキル鎖の末端で、2個のビシナルであるヒドロキシル基によって置換される。故に、本発明で使用され得る好ましいアミノ化合物としては、3−アミノプロパン−1,2−ジオール、4−アミノブタン−1,2−ジオール、5−アミノペンタン−1,2−ジオール、6−アミノヘキサン−1,2−ジオールが挙げられる。特に好ましいアミノ化合物は、5−アミノペンタン−1,2−ジオールである。これらは、塩の形態(例えば塩酸塩)で使用され得る。
【0069】
本発明の好ましい方法は、下記の模式図1において例示される。
【0070】
【化7】

この模式図において、糖(例えば、MenA多糖やオリゴ糖)は、まず、DMSO溶媒内のCDIを使用して、単糖単位上のそのヒドロキシル基の内の少なくとも1つによって活性化される。それによって生じるイミダゾールカルバメート中間体は、アミンRNH(例えば2−アミノエタノール)によって捕捉されて、修飾糖が得られる。
【0071】
或いは、修飾糖は、莢膜糖上の一個以上のヒドロキシル基を式:XC(O)NR(式中、Xは脱離基であり、且つ、R及びRは、上で定義された通りである)の試薬と反応させることによって一段階過程において調製され得る。適切な脱離基としては、−Cl、−Br、−CF、−OC、−CClが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
ブロック基が−OC(O)Rである糖を修飾するための好ましい方法は、ステップ(b)が、
(b1)イミダゾール触媒の存在下で[(RC(O)]Oと莢膜糖を反応させるステップ、を含む場合である。
【0073】
この方法は、ブロック基が−OC(O)CHである糖を修飾することに特に適切である。本実施形態において、ステップ(b)は、
(b1)イミダゾール触媒の存在下で莢膜糖を[(CHC(O)]O(無水酢酸)と反応させるステップ、を含む。
【0074】
或いは、本発明の修飾莢膜糖類は、例えば適切な単糖単位から、合成手段によって調製され得る。典型的には、修飾莢膜糖の全合成は、適切な単糖単位の間にグリコシド結合(例えばリン酸ジエステル結合)を形成することと、次いで得られた糖を上記記載の任意の方法で修飾することとを含む。或いは、同一の修飾莢膜糖を得るために、単糖単位は、グリコシド結合を形成する前に修飾され得る。
【0075】
本発明の修飾莢膜糖類は、好ましくはオリゴ糖類である。未変性の莢膜多糖類から開始する場合、修飾莢膜オリゴ糖類は、2つの方法:
(1)莢膜多糖を修飾し、その後修飾多糖の解重合及びサイジングを行って修飾オリゴ糖を形成すること;又は(2)莢膜多糖の解重合及びサイジングを行って、その後得られたオリゴ糖を修飾して修飾オリゴ糖を形成すること、のいずれかによって得ることが可能である。両方法は、本発明の中に包含される。しかしながら、第1の方法は、この方法によって、タンパク質等の担体分子への修飾オリゴ糖の結合体化を引き続いて行うために末端のヒドロキシル基を利用し得ることが確実にされることから、特定の実施形態において好ましい。
【0076】
また、本発明は、
(a)Neisseria meningitidis血清群A多糖を提供するステップ;
(b)該多糖の解重合及びサイジングを行ってオリゴ糖を提供するステップ;及び
(c)該オリゴ糖の少なくとも1個のヒドロキシル基を上記の通りのブロック基に変換するステップ、を含む、Neisseria meningitidis血清群A多糖の修飾方法を提供するものである。
【0077】
この方法のステップ(b)の後、ステップ(c)の前に既知の誘導体化ステップを任意に行ってよい。既知の誘導体化ステップとしては、例えば、還元的アミノ化を行い、その後、生じた−NH基の保護及び/又は脱−O−アセチル化を行うことが挙げられる。
【0078】
また、本発明は、
(a)Neisseria meningitidis血清群A多糖を提供するステップ;
(b)該多糖の少なくとも1個のヒドロキシル基を上記の通りのブロック基に変換するステップ;
(c)それによって生じた多糖の解重合及びサイジングを行ってオリゴ糖を提供するステップ、を含む、Neisseria meningitidis血清群A多糖の修飾方法を提供するものである。
【0079】
この方法のステップ(c)の後、既知の誘導体化ステップを任意に行ってよい。既知の誘導体化ステップとしては、例えば、還元的アミノ化を行い、その後、生じた−NH基の保護及び/又は脱−O−アセチル化を行うことが挙げられる。
【0080】
上記の方法の内のいずれかを行った後、混入物(例えば低分子量混入物)を除去するステップを行ってよい。
【0081】
莢膜糖出発材料
本発明の修飾莢膜糖類は、未変性莢膜糖類から得ることが可能である。「未変性莢膜糖」という用語は、髄膜炎菌、肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌等の細菌(グラム陽性及びグラム陰性の両方)の莢膜内に見出され得る糖含有ポリマー(例えば、糖類や、糖酸、アミノ糖、多価アルコール、糖アルコール、糖リン酸のポリマー等)を意味する。更に、「未変性莢膜糖」は、多糖類及びオリゴ糖類の両方を包含する。未変性莢膜オリゴ糖類は、未変性多糖類の解重合及びサイジングによって得ることが可能である。
【0082】
未変性莢膜糖の「ヒドロキシル基の位置」とは、ヒドロキシル基を有する未変性莢膜糖上の位置である。しかしながら、それは、ヒドロキシル基(例えば、ヒドロキシル基の位置を占めないリン酸塩結合の一部であるヒドロキシル基)を有するグリコシド結合又はその残基における位置を含まない。また、それは、未変性莢膜糖上にアセトキシ基(AcO)が存在する位置も含まず、ヒドロキシル基の位置でもない。
【0083】
未変性莢膜糖は、ホスホジエステル結合によって連結される糖単位を含むことができる。ホスホジエステル結合を含む糖は、加水分解に不安定であってよい。
【0084】
未変性莢膜糖及び本発明の修飾莢膜糖は、哺乳類(例えばヒト)において、好ましくは免疫原性である。該哺乳類は、ヒト成人又は子供であってよい。
【0085】
未変性莢膜糖は、好ましくは、髄膜炎菌(血清群A、B、C、W135、Y等)、肺炎連鎖球菌(血清タイプ1、4、5、6B、9V、14,18C、19F、23F等)、インフルエンザ菌B型、ナイセリアゴノロエエ、ストレプトコッカス−アガラクティエ、大腸菌、チフス菌、ストレプトコッカス−ミュータンス、クリプトコックス・ネオフォルマンス、モラクセラカタラーリス、肺炎桿菌、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌に由来する多糖(又はそのオリゴ糖断片)である。
【0086】
本発明は、髄膜炎菌の任意の血清群に適用され得るが、血清群A(「MenA」)に由来する莢膜糖を使用することが好ましい。MenA莢膜糖は、特に水溶液中で不安定であるが、このことは、この分子上における化学的マニピュレート(例えば、担体タンパク質への結合体化)を行うために特殊な手法を使用する必要があることを意味する。しかしながら、本発明に従って修飾されたMenA糖は、有利には水溶液中で安定であることが分かる。
【0087】
MenA莢膜多糖{→6)−D−ManpNAc(3/4OAc)−α−(1→OPO→}は、以下に示される反復単位を有するα1−6ホスホジエステル結合によって共に連結されるN−アセチルマンノサミン残基から構成される。
【0088】
【化8】

上記の定義によれば、4位の約80〜99%はヒドロキシル基位置であり、3位の約10〜40%はヒドロキシル基位置である。また、末端1−ヒドロキシ基は、ヒドロキシル基位置を占める。末端1−ヒドロキシ基は、末端アノマーヒドロキシル基である。−OP(O)(OH)O基の一部であるヒドロキシル基は、ヒドロキシル基位置ではない。
【0089】
糖−タンパク質複合体
本発明の修飾糖類は、糖類に適用される任意の通常の下流の処理(例えば、誘導体化、結合体化、断片化等)に供され得る。免疫原性を高めるために、本発明の修飾糖類は、好ましくは担体タンパク質に結合体化される。担体タンパク質への結合体化は、特に小児科ワクチンに有用であり[6]、よく知られた技法である[例えば、参考文献7〜15等において概説される]。多糖はタンパク質に直接連結され得るか[2、16]、若しくはリンカー基を介して連結され得る。多くの異なるタイプのリンカー基は、多糖類をタンパク質に連結するために提案されてきたものである[例えば、3、17]。
【0090】
しかるに、本発明は、タンパク質と本発明の修飾糖との複合体を提供するものである。タンパク質は直接糖に結合体化され得るか、若しくはリンカーが使用され得る。任意の適切なリンカー化学が使用され得る。修飾多糖の安定性を向上することによって、有利には広範囲にわたる結合が使用され得る。
【0091】
上記の通り、幾つかの実施形態において、修飾莢膜糖は、担体タンパク質への次の結合のための結合手として使用され得る少なくとも1個の遊離ヒドロキシル基又はアミノ基を有することが好ましい。
【0092】
遊離ヒドロキシル基を有する修飾莢膜糖は、莢膜糖上のヒドロキシル基を選択的にブロックすることによってか、若しくは全てのヒドロキシル基がブロックされる修飾莢膜糖を選択的に非ブロック化することによって得られ得る。或いは、遊離ヒドロキシル基は、修飾莢膜糖の解重合及びサイジングによって出現する。好ましくは、該少なくとも1個の遊離ヒドロキシル基は、末端アノマーヒドロキシル基である。末端アノマーヒドロキシル基は、修飾莢膜糖の解重合及びサイジングによって出現し得るため、末端アノマーヒドロキシル基は、遊離ヒドロキシル基として好ましい。
【0093】
遊離アミノ基を有する修飾莢膜糖は、末端アノマーヒドロキシル基の還元的アミノ化を行い、その後、得られた−NH基を任意に保護することによって得られ得る。還元的アミノ化反応は、本発明の修飾ステップの前又は後に行われ得る。好ましくは、還元的アミノ化は、得られた−NH基がヒドロキシル基/ブロック基の存在下で選択的に保護/脱保護され得ることから、本発明の修飾ステップの前に行われる。
【0094】
例えば、本発明は、
(a)本発明の修飾莢膜糖を提供するステップであって、該修飾糖が、末端アノマーヒドロキシル基又は末端アノマーヒドロキシル基から誘導されるアミノ基を含む、ステップ;及び
(b)末端アノマーヒドロキシル基又は末端アノマーヒドロキシル基から誘導されるアミノ基を介してタンパク質に修飾莢膜糖類を連結するステップ、を含む、糖−タンパク質複合体の作製方法を提供するものである。
【0095】
該タンパク質は、好ましくは細菌毒素又は細菌トキソイド、特にジフテリアトキシン又はジフテリアトキソイドである。例えば、タンパク質は、好ましくはCRM197である。
【0096】
リンカー基を介した結合は、任意の既知の手法、例えば、参考文献3及び17に記載の手法を使用して形成され得る。好ましいタイプの結合はカルボニルリンカーであり、それは、修飾糖の遊離ヒドロキシル基をCDI[18、19]と反応させ、その後タンパク質と反応させてカルバメート結合を形成することによって形成され得る。別の好ましいタイプの結合はアジピン酸リンカーであり、それは、(例えば、ジイミド活性化を使用して)修飾糖上の遊離−NH基をアジピン酸と結合し、次いで得られた糖−アジピン酸中間体にタンパク質を結合することによって得られ得る[11、20、21]。他のリンカーとしては、B−プロピオンアミド[22]、ニトロフェニル−エチルアミン、[23]、ハロアシルハライド[24]、グリコシド結合[25]、6−アミノカプロン酸[26]、ADH[27]、C〜C12部分[28]等が挙げられる。
【0097】
結合体化は、1次ヒドロキシル基へのアノマー末端の還元、1次ヒドロキシル基の任意の保護/脱保護;CDIカルバメート中間体を形成するためのCDIとの1次ヒドロキシル基の反応;及びタンパク質上のアミノ基へのCDIカルバメート中間体の結合を含む。
【0098】
模式図2は、本発明において、いかにして莢膜糖が担体タンパク質に結合体化され得るのかについての2つの異なる例を示す。第1の例において、タンパク質は、末端ヒドロキシル基を介して結合体化される。第2の例において、タンパク質は、末端アミノ基を介して連結される。
【0099】
【化9】

例えば参考文献2及び16に記載されるように、タンパク質への直接結合は、多糖を酸化し、その後タンパク質と還元的アミノ化を行うことを含む。例えば、実施形態において、対応する未変性莢膜糖の2個のビシナルであるヒドロキシル基がブロック基を含まない修飾莢膜糖の少なくとも1個の単糖単位が存在する場合、ビシナルであるヒドロキシル基の1個以上の対は、酸化開裂によってアルデヒド基に変換され得る(例えば、NaIO、Pb(OAc)等)。次いで、修飾莢膜糖は、還元的アミノ化によってタンパク質に連結され得る。
【0100】
例えば、本発明は、
(a)本発明の修飾莢膜糖を提供するステップであって、対応する未変性莢膜糖の2個のビシナルであるヒドロキシル基がブロック基を含まない該修飾莢膜糖の少なくとも1個の単糖単位が存在する、ステップ;
(b)酸化開裂によってビシナルであるヒドロキシル基の対の内の少なくとも1つをアルデヒド基に変換するステップ;及び
(c)還元的アミノ化によって該修飾莢膜糖をタンパク質に連結するステップ、を含む、糖−タンパク質複合体の作製方法を提供する。
【0101】
タンパク質は、好ましくは細菌性毒素又は細菌性トキソイド、特にジフテリアトキシン又はジフテリアトキソイドである。例えば、タンパク質は、好ましくはCRM197である。
【0102】
上記のように、幾つかの実施形態においては、修飾莢膜糖の単糖単位の内の少なくとも1つがブロック基を含むことが好ましく、ここでRは、2個のビシナルであるヒドロキシル基によって置換される。2個のビシナルであるヒドロキシル基は、担体タンパク質への次の結合のための結合手として使用され得る。例えば、ビシナルであるヒドロキシル基の1個以上の対は、酸化開裂によって、アルデヒド基に変換され得る(例えば、NaIO、Pb(OAc)等)。次いで、修飾莢膜糖は、還元的アミノ化によってタンパク質に連結され得る。
【0103】
例えば、本発明は、
(a)単糖単位の内の少なくとも1つがブロック基を含む本発明の修飾莢膜糖を提供するステップであって、ここでRが2個のビシナルであるヒドロキシル基によって置換される、ステップ;
(b)酸化開裂によってビシナルであるヒドロキシル基の対の内の少なくとも1つをアルデヒド基に変換するステップ;及び
(c)還元的アミノ化によって該修飾莢膜糖をタンパク質に連結するステップ、を含む、糖−タンパク質複合体の作製方法を提供する。
【0104】
タンパク質は、好ましくは細菌性毒素又は細菌性トキソイド、特にジフテリアトキシン又はジフテリアトキソイドである。例えば、タンパク質は、好ましくはCRM197である。
【0105】
この方法の幾つかの実施形態において、ブロック基内に存在するビシナルであるヒドロキシル基の全ては、ステップ(b)においてアルデヒド基に変換される。これらの実施形態において、生じるアルデヒド基の数は、ブロック基の総数によって決まり、ここでRは、修飾莢膜糖に存在する2個のビシナルであるヒドロキシル基によって置換される。他の実施形態において、酸化開裂のための条件は、ブロック基内に存在するある比率のビシナルであるヒドロキシル基だけがアルデヒド基に変換されるように選択される。これらの実施形態において、生じるアルデヒド基の数は、Rが修飾莢膜糖内に存在する2個のビシナルであるヒドロキシル基によって置換されるブロック基の総数と、選択される条件によって決まる。かかる実施形態において、修飾莢膜糖の単糖単位の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%又は20%が、アルデヒド基に変換されるブロック基を有することが好ましい。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40個の単糖単位が、アルデヒド基に変換されるブロック基を有する。好ましくは、単糖単位の5〜15%の間、最も好ましくは10%が、アルデヒド基に変換されるブロック基を有する。
【0106】
模式図3は、本発明において、いかにして莢膜糖が担体タンパク質に結合体化され得るのかについての2つの更なる例を示す。第1の例(左側)において、ブロック基の全ては、2個のビシナルであるヒドロキシル基によって置換されるR基を有する。ある比率(例えば10%)のこれらのビシナルであるヒドロキシル基は、タンパク質への結合体化のためのアルデヒド基に変換される。第2の例(右側)において、2つのタイプのブロック基が存在する。これらの比率(例えば10%)は、2個のビシナルであるヒドロキシル基によって置換されるRを有する。これらのビシナルであるヒドロキシル基の全ては、タンパク質への結合体化のためのアルデヒド基に変換される。
【0107】
【化10】

好ましい担体タンパク質は、細菌毒素又は細菌トキソイド(例えば、ジフテリアトキソイドや破傷風トキソイド等)である。これらは、結合体化ワクチンにおいて一般的に用いられる。CRM197ジフテリアトキソイドは、特に好ましい[29]。他の適切な担体タンパク質としては、髄膜炎菌外膜タンパク質[30]、合成ペプチド[31、32]、熱ショックタンパク質[33、34]、百日咳タンパク質[35、36]、インフルエンザ菌由来のタンパク質D[37]、サイトカイン[38]、リンホカイン[38]、ホルモン類[38]、成長因子[38]、クロストリジウム・ディフィシレ由来の毒素A又はB[39]、鉄取り込みタンパク質[40]等が挙げられる。担体タンパク質の混合物を使用することが可能である。
【0108】
結合体化後、遊離糖類と結合体化糖類とが分離され得る。疎水性クロマトグラフィ、接線限外濾過、ダイアフィルトレーション等を含む多くの適切な方法がある[また、参考文献41、42等を参照]。
【0109】
単一の担体タンパク質は、多くの異なる糖類を担持することができる[43]。
【0110】
医薬組成物及び方法
本発明の方法を用いて作製される組成物は、薬学的に許容される。それらは、修飾糖及び/又は複合体の他の成分を含むことが可能であり、例えば、それらは、1種以上の医薬担体を典型的に含むことになる。かかる成分についての綿密な考察は、参考文献44において得ることが可能である。しかるに、本発明は、(a)本発明の修飾糖及び/又は本発明の複合体と、(b)薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供するものである。該組成物は、好ましくは免疫原性組成物(例えばワクチン)である。糖類又は糖タンパク質複合体に基づくワクチンは、当該技術分野でよく知られている。
【0111】
組成物は、1種以上の緩衝液を含むことができる。典型的な緩衝液としては、リン酸緩衝液;トリス緩衝液;ホウ酸緩衝液;コハク酸緩衝液;ヒスチジン緩衝液;又はクエン酸緩衝液が挙げられる。緩衝液は、典型的には5〜20mMの範囲で含まれる。
【0112】
張性を制御するために、ナトリウム塩等の生理的塩を含むことが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、1〜20mg/mLで存在し得る。存在してよい他の塩としては、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二ナトリウム無水物、塩化マグネシウム、塩酸カルシウム等が挙げられる。
【0113】
組成物は、重量オスモル濃度が、一般的に200mOsm/kg〜400mOsm/kg、好ましくは240〜360mOsm/kgであり、より好ましくは290〜310mOsm/kgの範囲にある。重量オスモル濃度は、接種に起因する疼痛に対する衝撃を有さないことが既に報告されている[45]が、それでも、この範囲に重量オスモル濃度を維持することが好ましい。
【0114】
組成物のpHは、一般的に5.0〜80であり、より典型的には5.5〜6.5であり、例えば6.5〜7.5である。故に、本発明の方法は、包装前にバルクワクチンのpHを調整するステップを含むことができる。
【0115】
該組成物は、好ましくは無菌である。該組成物は、好ましくは非発熱原性であり、例えば1回の投与につき1EU(エンドトキシン単位、標準測定値)未満であり、好ましくは1回の投与につき0.1EU未満である。該組成物は、好ましくはグルテンを含まない。
【0116】
該組成物は、チオメルサールや2−フェノキシエタノール等の保存剤を含むことができる。しかしながら、ワクチンは、水銀材料を実質的に含まない(即ち、5μg/mL未満)、例えば、チオメルサールを含まないことが好ましい。水銀を含有しないワクチンは、より好ましい。
【0117】
組成物は、単回免疫化のための材料を含むことができるか、若しくは多回免疫化のための材料(即ち「多回投与」キット)を含むことができる。保存剤の混在物は、多回投与の配置において好ましい。
【0118】
ワクチンは、典型的には約0.5mLの投与量で投与される。
【0119】
組成物は、好ましくは2℃〜8℃の間で保存される。それらは、凍結していてはならない。それらは、理想的には直接光を当ててはならない。
【0120】
組成物が複合体を含む場合、次いでそれは非結合体化型担体タンパク質を含むこともできるが、非結合体化型担体の量は、その担体の総量に対して5%未満であることが好ましい。
【0121】
本発明の組成物は、ヒト患者への投与に適切であり、本発明は、かかる組成物を該患者に投与するステップを含む、患者における免疫応答を高める方法を提供するものである。本発明はまた、医薬として使用するための本発明の組成物を提供する。また、本発明は、患者の免疫応答を高めるための医薬の製造における修飾糖及び/又は本発明の複合体の使用を提供する。これらの方法及び使用によって高まる免疫応答は、一般的に抗体応答、好ましくは髄膜炎菌感染に対する防御抗体応答を含む。ナイセリアに起因する疾患としては、髄膜炎、敗血症、淋疾が挙げられる。細菌性髄膜炎の予防及び/又は治療が好ましい。
【0122】
該組成物は、各種方法で投与され得る。最も好ましい免疫化経路は、筋肉内注射(例えば腕や脚の中)によるものであるが、他に利用し得る経路としては、皮下注射、鼻腔内[46〜48]、経口[49]、皮内[50、51]、経皮的、経皮性[52]等が挙げられる。
【0123】
本発明によって調製される組成物は、小児と成体との両方を治療するために使用され得る。患者は、1歳未満、1〜5歳未満、5〜15歳、15〜55歳、又は少なくとも55歳であってよい。該患者は、高齢者(例えば、50歳以上、好ましくは65歳以上)、若者(例えば5歳以下)、入院患者、医療従事者、軍部や軍隊の人、妊婦、慢性的疾患患者、免疫不全患者、及び海外旅行をしている人々であってよい。しかしながら、該組成物は、単にこれらの群についてのみ適切であるわけではなく、個体群においてより一般的に使用され得る。
【0124】
治療は、単回投与スケジュール又は多回投与スケジュールによることができる。多回投与は、一次免疫化スケジュール及び/又は追加免疫化スケジュールにおいて使用され得る。多回投与スケジュールにおいて、各種投与は、同一又は異なる経路、例えば、非経口初回抗原刺激と粘膜追加免疫、粘膜初回抗原刺激と非経口追加免疫等によって与えられ得る。1回超の投与量(典型的には2回投与量)の投与は、免疫学的に無感作の患者において特に有用である。多回投与は、典型的には、少なくとも1週間隔(例えば約2週間、約3週間、約4週間、約6週間、約8週間、約12週間、約16週間等)で投与される。
【0125】
本発明の組成物は、他の組成物と実質的に同時(例えば同じ医療相談や医療専門家への来院の間)、特に他のワクチンと同時に、患者に投与され得る。
【0126】
免疫原性組成物は、免疫学的有効量の糖抗原、並びに場合により他の特定の成分のいずれか他のものを含む。「免疫学的有効量」によって、単回投与において又は連続投与の一部としてのいずれかにおける個体へのその量の投与は、治療又は予防に有効であることが意味される。この量は、治療される個体の健康及び身体の状態、年齢、治療される個体の分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類等)、抗体を合成する個体の免疫系の能力、所望の保護度、ワクチンの製剤化、医学的状態の治療医師の評価、及び他の関連因子に応じて変化する。その量は、ルーチン試験で決定され得る相対的に広い範囲にあるものと考えられる。用量処置は、単回投与スケジュール又は多回投与スケジュール(例えば、追加抗原投与量等を含む)であってよい。
【0127】
本発明によるワクチンは、予防的(即ち、感染の予防)又は治療的(即ち、感染後の疾患の治療)のいずれかであってよいが、典型的には予防的である。
【0128】
アジュバント
本発明の組成物は、有利には、該組成物の投与を受ける患者において誘発される免疫応答を高める働きをし得るアジュバントを含むことができる。本発明と共に使用され得るアジュバントとしては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。
【0129】
・カルシウム塩及びアルミニウム塩(又はそれらの混合物)を含む無機質含有組成物。カルシウム塩としては、リン酸カルシウム(例えば、参考文献53において開示される「CAP」粒子)が挙げられる。アルミニウム塩としては、任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶質、非晶質等)をとる塩と共に、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これらの塩に対する吸着は、好ましい。また、無機質含有組成物は、金属塩の粒子として製剤化され得る[54]。アルミニウム塩アジュバントについては、以下で更に詳細に記載される。
【0130】
・以下で更に詳細に記載される水中油形乳剤。
【0131】
・免疫刺激性オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフ(リン酸結合によってグアノシンに連結される非メチル化シトシンを含有するジヌクレオチド配列)、TpGモチーフ[55]、二本鎖RNA、パリンドローム配列を含有するオリゴヌクレオチド、ポリ(dG)配列を含有するオリゴヌクレオチドを含有するもの等)。免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド修飾体/類似体(例えば、ホスホロチオエート修飾体)を含むことが可能であり、二本鎖又は(RNAを除いて)一本鎖であり得る。参考文献56〜58は、類似体置換(例えば、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンとのグアノシンの置換)の可能性を開示する。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果については、参考文献59〜64において更に考察されている。CpG配列は、TLR9に指向され得る(例えば、モチーフGTCGTTやTTCGTT)[65]。CpG配列は、Th1免疫応答の誘発に特異的であってよく(例えば、CpG−A ODN(オリゴデオキシヌクレオチド))、B細胞応答の誘発により特異的であってよい(例えば、CpG−B ODN)。CpG−A ODN及びCpG−B ODNについては、参考文献66〜68において考察される。好ましくは、CpGは、CpG−A ODNである。好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端が受容体認識に利用可能であるように構築される。場合により、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列を、それらの3’末端で結合して、「イムノマー」を形成し得る。例えば、参考文献65及び69〜71を参照。有用なCpGアジュバントは、CpG7909(別名ProMune(登録商標))(Coley Pharmaceutical Group,Inc.)である。免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、典型的には少なくとも20個のヌクレオチドを含むものである。それらは、100個未満のヌクレオチドを含むことができる。
【0132】
・3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA(「3dMPL」(別名「MPL(登録商標)」))[72〜75]。3dMPLは、サルモネラ・ミネソタのヘプトース欠損変異体から調製されたものであって、リピドAと化学的に類似しているが、酸に不安定なホスホリル基と塩基に不安定なアシル基とが欠失している。3dMPLの調製については、元々参考文献76に記載された。3dMPLは、関連分子の混合物という形態をとることが可能であり、その形態は、その分子のアシル化によって変化する(例えば、異なる長さであり得る3、4、5又は6個のアシル鎖を有する)。2個のグルコサミン(別名2−デオキシ−2−アミノグルコース)単糖は、それらの2位の炭素(即ち、2位及び2’位)でN−アシル化され、3’位ではO−アシル化も生じる。
【0133】
・イミダゾキノリン化合物(例えば、イミキモッド(「R−837」)[77、78])、レジキモド(「R−848」)[79]、それらの類似体);及びその塩(例えば塩酸塩)。免疫刺激性イミダゾキノリンに関する更なる詳細については、参考文献80〜84に見出され得る。
【0134】
・チオセミカルバゾン化合物(例えば、参考文献85において開示されるもの等)。活性化合物のための調製、製造及びスクリーニングの方法は、参考文献85にも記載される。また、活性化合物のための調製、製造及びスクリーニングの方法は、参考文献85に記載される。チオセミカルバゾンは、TNF−α等のサイトカインの産生のためのヒト末梢血単核細胞の刺激において特に有効である。
【0135】
・トリプタントリン化合物(例えば参考文献86において開示されるもの等)。また、活性化合物のための調製、製造及びスクリーニングの方法は、参考文献86に記載される。チオセミカルバゾンは、TNF−α等のサイトカインの産生のためのヒト末梢血単核細胞の刺激において特に有効である。
【0136】
・ヌクレオシド類似体(例えば:(a)イサトラビン(Isatorabine)(ANA−245;7−チア−8−オキソグアノシン):
【0137】
【化11】

及びそのプロドラッグ;(b)ANA975;(c)ANA−025−1;(d)ANA380;(e)参考文献87〜89に開示される化合物;(f)式:
【0138】
【化12】

(式中、
及びRは、それぞれ独立してH、ハロ、−NR、−OH、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、C1−6アルキル又は置換C1−6アルキルであり;
は、存在しないか、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、ヘテロシクリル又は置換ヘテロシクリルであり;
及びRは、それぞれ独立してH、ハロ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、−C(O)−R、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、又は共に結合してR4−5
【0139】
【化13−1】

における通りの5員環を形成し、該結合は、
【0140】
【化13−2】

で示される結合で達成され、
及びXは、それぞれ独立してN、C、O又はSであり;
は、H、ハロ、−OH、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、−OH、−NR−(CH−O−R、−O−(C1−6アルキル)、−S(O)又は−C(O)−Rであり;
は、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル又はR9aであり、
ここでR9aは、
【0141】
【化14−1】

であり、該結合は
【0142】
【化14−2】

で示される結合で達成され、
10及びR11はそれぞれ独立してH、ハロ、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、−NR、又は−OHであり;
各R及びRは、独立してH、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、−C(O)R、C6−10アリールであり;
各Rは、独立してH、ホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェート、C1−6アルキル又は置換されたC1−6アルキルであり;
各Rは、独立してH、ハロ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、−NH、−NH(C1−6アルキル)、−NH(置換C1−6アルキル)、−N(C1−6アルキル)、−N(置換C1−6アルキル)、C6−10アリール又はヘテロシクリルであり;
各Rは、独立してH、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、ヘテロシクリル又は置換ヘテロシクリルであり;
各Rは、独立してH、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、−C(O)R、ホスフェート、ジホスフェート又はトリホスフェートであり;
各nは、独立して0、1、2又は3であり;
各pは、独立して0、1又は2である)を有する化合物;
(g)(a)〜(f)のいずれかの薬学的に許容される塩、(a)〜(f)のいずれかの互変異性体、又は互変異性体の薬学的に許容される塩等)。
【0143】
・ロキソリビン(7−アリル−8−オキソグアノシン)[90]。
【0144】
・参考文献91において開示される化合物(アシルピペラジン化合物、インドールジオン化合物、テトラヒドロイソキノリン(THIQ)化合物、ベンゾシクロジオン化合物、アミノアザビニル化合物、アミノベンゾイミダゾールキノリノン(ABIQ)化合物[92、93]、ヒドラフタルアミド化合物、ベンゾフェノン化合物、イソオキサゾール化合物、ステロール化合物、キナゾリノン化合物、ピロール化合物[94]、アントラキノン化合物、キノキサリン化合物、トリアジン化合物、ピラゾロピリミジン化合物、ベンザゾール化合物、[95]等)。
【0145】
・参考文献96において開示される化合物(3,4−ジ(1H−インドール−3−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン、スタウロスポリン類似体、誘導体化ピリダジン、クロマン−4−オン、インドリノン、キナゾリン、ヌクレオシド類似体等)。
【0146】
・アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体(例えばRC−529[97、98])。
【0147】
・ホスファゼン(例えば参考文献99及び100に記載される通りのポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン](「PCPP」))。
【0148】
・小分子免疫賦活薬(SMIP)(例えば:
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−エチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−ペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロプ−2−エニル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−(2−メチルプロピル)−2−[(フェニルメチル)チオ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
1−(2−メチルプロピル)−2−(プロピルチオ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
2−[[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ]エタノール
2−[[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ]酢酸エチル
4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン
N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−{4−アミノ−2−[メチル(プロピル)アミノ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル}−2−メチルプロパン−2−オール
1−[4−アミノ−2−(プロピルアミノ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]−2−メチルプロパン−2−オール
N4,N4−ジベンジル−1−(2−メトキシ−2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン等)。
【0149】
・広範囲にわたる植物種の樹皮、葉、茎、根や花においてさえ見出されるステロール・グリコシド及びトリテルペノイドグリコシドの非相同基であるサポニン[参考文献131の第22章]。キラヤの木の樹皮に由来するサポニンは、アジュバントとして広く研究されてきた。サポニンは、スミラックス・オルナタ(サルサパリラ)、シュッコンカスミソウ(ブライダル・ベール)及びサポナリア・オフィシナリス(ソープ・ルート)から商業的に得ることが可能である。サポニンアジュバント製剤は、精製製剤(例えばQS21)並びに脂質製剤(例えばISCOM)を包含する。QS21は、Stimulon(登録商標)として販売されている。サポニン成分は、HPLC及びRP−HPLCを使用して精製されてきた。これらの技法を使用した特定の精製画分が同定されたが、それらとして、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−B及びQH−Cが挙げられる。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の製造方法は、参考文献101において開示される。また、サポニン製剤は、コレステロール等のステロールを含んでよい[102]。サポニン及びコレステロールの組み合わせを使用して、免疫刺激複合体(ISCOM)と呼称される固有の粒子を形成することができる[参考文献131の第23章]。また、ISCOMは、典型的には、リン脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミンやホスファチジルコリン)を含む。いかなる既知のサポニンも、ISCOMにおいて使用され得る。好ましくは、ISCOMは、QuilA、QHA及びQHCの内の1種以上を含む。ISCOMは、参考文献102〜104に更に記載されている。場合により、ISCOMSは、更なる界面活性剤を含まなくてよい[105]。サポニンに基づくアジュバントの開発の概要については、参考文献106及び107に記載されている。
【0150】
・細菌性ADP−リボシル化毒素(例えば、大腸菌易熱性腸毒素「LT」コレラ毒素「CT」又は百日咳毒素「PT」)及びその無毒化された誘導体(例えば、LT−K63及びLT−R72として知られている変異体毒素)[108]。粘膜アジュバントとしての無毒化されたADP−リボシル化毒素の使用については、参考文献109に記載されており、非経口アジュバントとしての使用については、参考文献110に記載されている。
【0151】
・生体接着剤及び粘膜接着剤(例えば、エステル化ヒアルロン酸マイクロスフェア[111]やキトサン及びその誘導体[112])。
【0152】
・生分解性及び非毒性の材料(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリカプロラクトン等)から、好ましく、場合により負に荷電する表面(例えばSDSによる)又は正に荷電する表面(例えば、陽イオン界面活性剤(例えばCTAB)によって)を有するように処理されるポリ(ラクチド−コ−グリコリド)によって形成される微小粒子(即ち、直径約100nm〜約150μmの粒子、より好ましくは、直径約200nm〜約30μm、又は直径約500nm〜約10μm)。
【0153】
・リポソーム(参考文献131の第13及び14章)。アジュバントとしての使用のために適切なリポソーム製剤の例は、参考文献113〜115に記載されている。
【0154】
・ポリオキシエチレンエーテル及びポリオキシエチレンエステル[116]。かかる製剤は、更に、オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤[117]、並びにオクトキシノール等の少なくとも1種の更なる非イオン性活性剤と組み合わせたポリオキシエチレンアルキルエーテル又はエステル界面活性剤[118]を含む。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス9)、ポリオキシエチレン−9−ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−4ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル及びポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0155】
・ムラミルペプチド(例えば、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(「thr−MDP」)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニン−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Al−D−isoglu−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド(「DTP−DPP」又は「Theramide(登録商標)」)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(「MTP−PE」)。
【0156】
・第2のグラム陰性菌に由来するリポサッカライド(LPS)製剤と組み合わせて第1のグラム陰性菌から調製される外膜タンパク質プロテオソーム製剤(該外膜タンパク質プロテオソーム及びLPS製剤は、安定性のある非共有結合性アジュバント複合体を形成する)。かかる複合体としては、「IVX−908」(Neisseria meningitidis外膜及びLPSをから構成される複合体)が挙げられる。
【0157】
・メチルイノシン5’−一リン酸(「MIMP」)[119]。
【0158】
・ポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物[120](例えば、式:
【0159】
【化15】

(式中、Rは、水素、直鎖又は分岐鎖、非置換又は置換、飽和又は不飽和のアシル基、アルキル基(例えば、シクロアルキル基)、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基を含む群から選択される)を有するもの)、或いはその薬学的に許容される塩又はその誘導体。例としては、カスアリン、カスアリン−6−α−グルコピラノース、3−エピ−カスアリン、7−エピ−カスアリン、3,7−ジエピ−カスアリン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0160】
・γイヌリン[121]又はその誘導体(例えばアルガムリン)。
【0161】
・参考文献122において定義される通りの
式I、II又はIII
【0162】
【化16】

の化合物或いはその塩(例えば、「ER 803058」、「ER 803732」、「ER 804053」、「ER 804058」、「ER 804059」、「ER 804442」、「ER 804680」、「ER 804764」、「ER 803022」又は「ER 804057」、例えば
【0163】
【化17】

【0164】
【化18】

)。
【0165】
・大腸菌(例えばOM−174)由来のリピドAの誘導体(参考文献123及び124に記載)。
【0166】
・カチオン脂質の製剤及び(通常は中性の)共脂質(例えば、アミノプロピル−ジメチル−ミリストレイルオキシ−プロパンアミニウムブロミド−ジフィタノイルホスファチジル−エタノールアミン(「Vaxfectin(登録商標)」)やアミノプロピル−ジメチル−ビス−ドデシルオキシ−プロパンアミニウムブロミド−ジオレオイルホスファチジル−エタノールアミン(「GAP−DLRIE:DOPE」)。(±)−N−(3−アミノプロピル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(syn−9−テトラデセンイルオキシ)−1−プロパンアミニウム塩を含有する製剤が好ましい[125]。
【0167】
・ホスフェート含有非環式骨格鎖(例えば、TLR4拮抗剤E5564[126、127]):
【0168】
【化19−1】

に連結する脂質を含有する化合物。
【0169】
これら及び他のアジュバント活性物質は、参考文献131及び132において更に詳細に考察される。
【0170】
組成物は、該アジュバントの内の2種個以上を含んでよい。
【0171】
組成物中の抗原及びアジュバントは、典型的には混合物の中にある。
【0172】
水中油形乳剤アジュバント
水中油乳剤は、特にアジュバントとして有用である。各種のそのような乳剤は、知られており、典型的には少なくとも1種の油と少なくとも1種の界面活性剤とを含んでおり、該油及び界面活性剤は、生分解性(代謝可能)且つ生体適合性である。乳剤における油滴は、一般的に直径5μm未満であり、サブミクロンの直径を有してもよく、これらの小さなサイズは、マイクロフリューダイザによって達成されて、安定した乳剤が提供される。220nm未満のサイズを有する液滴が好ましいが、それは、それらが濾過殺菌に供せられ得るからである。
【0173】
本発明は、動物(例えば魚)や植物の原料に由来するもの等の油と共に使用され得る。植物油についての原料としては、ナッツ、種子、穀粒が挙げられる。最も一般的に利用され得る落花生油、大豆油、椰子油及びオリーブ油によって、ナッツ油が例示される。ホホバ油が、例えばホホバ豆から得られ、使用され得る。種子油としては、サフラワー油、綿実油、ヒマワリ種子油、ゴマ種子油等が挙げられる。穀粒の群において、トウモロコシ油は、最も容易に利用可能であるが、他の穀物粒(例えば、小麦、オート麦、ライ麦、米、テフ、ライ小麦等)の油もまた使用され得る。グリセロール及び1,2−プロパンジオールの炭素数6〜10個の脂肪酸エステルは、種子油中に天然には生じないが、ナッツ及び種子油をはじめとする適切な材料の加水分解、分離及びエステル化によって調製され得る。哺乳類の乳に由来する油脂は、代謝可能であり、故に本発明の実施において使用され得る。動物原料から純粋な油を得るために必要な分離、精製、鹸化及び他の手段のための手法は、当該技術分野で周知である。大部分の魚は、容易に回収され得る代謝可能な油を含む。例えば、鱈肝油、鮫肝油、鯨油(例えば鯨蝋)によって、本明細書に使用され得る魚油の内の幾つかが例示される。多くの分枝鎖油は、炭素数5個のイソプレン単位において生化学的に合成され、一般的にテルペノイドと呼ばれる。鮫肝油は、特に本明細書において好ましいスクアレンとして既知の分岐鎖、不飽和のテルペノイド(2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエン)を含有する。また、スクアラン(スクアレンに対する飽和類似体)も好ましい油である。スクアレン及びスクアランを含む魚油は、市販の原料から容易に入手可能である、若しくは当該技術分野で周知の方法によって得られる。他の好ましい油としては、トコフェロール(下記参照)がある。油の混合物を使用することが可能である。
【0174】
界面活性剤は、それらの「HLB」(親水性/親油性バランス)によって分類され得る。本発明の好ましい界面活性剤は、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも16のHLBを有する。本発明は、界面活性剤と共に使用され得るが、その界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般的にTweenと呼ばれる)、特にポリソルベート20及びポリソルベート80;DOWFAX(登録商標)の下で販売されているエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)及び/又はブチレンオキシド(BO)のコポリマー(例えば、直鎖状EO/POブロックコポリマー);反復エトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の数が変化し得るオクトキシノール(特に興味深いのは、オクトキシノール−9(Triton X−100、又はt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール));(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);リン脂質(例えば、ホスファチジルコリン(レシチン));ラウリル、セチル、ステアリル及びオレイルアルコールに由来するポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤として知られる)(例えば、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30);ソルビタンエステル(一般的に、SPANとして知られる)(例えば、ソルビタントリオレエート(Span85)及びソルビタンモノラウレートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。乳剤中に含むための好ましい界面活性剤としては、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Span 85(ソルビタントリオレエート)、レシチン及びTriton X−100がある。界面活性剤の混合物(例えば、Tween 80/Span 85の混合物)を、使用することが可能である。
【0175】
本発明と共に有用な特定の水中油形乳剤アジュバントとしては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0176】
・スクアレン、Tween 80及びSpan 85のサブミクロンの乳剤。乳剤の組成物は、容量%で、約5%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80及び約0.5%のSpan 85であり得る。重量の観点において、これらの比は、4.3%のスクアレン、0.5%のポリソルベート80及び0.48%のSpan 85となる。このアジュバントは、参考文献131の第10章及び参考文献132の第12章においてより詳細に記載されるように、「MF59」[128〜130]として知られている。MF59乳剤は、有利にはクエン酸イオン(例えば、10mMクエン酸ナトリウム緩衝液)を含む。
【0177】
・スクアレン、トコフェロール及びTween 80の乳剤。該乳剤は、リン酸緩衝生理食塩水を含んでよい。また、それは、Span 85(例えば1%で)及び/又はレシチンを含んでよい。これらの乳剤は、2〜10%のスクアレン、2〜10%のトコフェロール、及び0.3〜3%のTween 80を有することが可能であり、スクアレン:トコフェロールの重量比は、好ましくは1以下であり、それは、これによってより安定的な乳剤が提供されるからである。そのようなある種の乳剤は、Tween 80をPBSに溶解して2%溶液を得て、次いで90mLのこの溶液を混合物(5gのDL−α−トコフェロール及び5mLのスクアレン)と混合し、次いでその混合物をマイクロフリューダイズすることによって作製され得る。得られた乳剤は、例えば平均直径が100〜250nmの間の、好ましくは約180nmの、サブミクロンの油滴を有し得る。
【0178】
・スクアレン、トコフェロール及びトリトン界面活性剤(例えば、Triton X−100)の乳剤。
【0179】
・スクアラン、ポリソルベート80及びポロキサマー401(「Pluronic(登録商標)L121」)の乳剤。該乳剤は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)において製剤化され得る。この乳剤は、ムラミルジペプチドのための有用な送達ビヒクルであり、「SAF−1」アジュバント[133](0.05〜1%Thr MDP、5%スクアラン、2.5%Pluronic L121及び0.2%ポリソルベート80)におけるスレオニルMDPと共に使用される。また、それは、Thr−MDPなしで、「AF」アジュバント[134](5%スクアラン、1.25%Pluronic L121及び0.2%ポリソルベート80)における通りに使用され得る。マイクロフリューダイズが好ましい。
【0180】
・0.5〜50%の油と、0.1〜10%のリン脂質と、0.05〜5%の非イオン性界面活性剤とを有する乳剤。参考文献135において記載され通り、好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリン及びカルジオリピンである。サブミクロンの液滴直径が有利である。
【0181】
・非代謝性油(例えば軽油)のサブミクロン水中油型乳剤及び少なくとも1種の界面活性剤(例えば、レシチン、Tween 80、Span 80)。添加剤(例えば、QuilAサポニン、コレステロール、サポニン親油性複合体(例えば、グルクロン酸のカルボキシル基を介してデアシルサポニンに脂肪族アミンを付加することによって作製される、参考文献136に記載のGPI−0100)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド及び/又はN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン)が含まれ得る。
【0182】
・サポニン(例えば、QuilAやQS21)及びステロール(例えばコレステロール)が螺旋状のミセルとして会合する乳剤[137]。
【0183】
乳剤は、送達時に即座に抗原と混合され得る。しかるに、アジュバント及び抗原は、使用時の最終的な製剤化の準備を整えた、包装又は分注されたワクチンの中に別々に保持され得る。抗原は、ワクチンが混合二液体によって最終的に調製されるように、一般的に水性の形態においてある。混合のための二液体の体積比は、変化し得る(例えば、5:1〜1:5の間)が、一般的に約1:1である。
【0184】
アルミニウム塩アジュバント
水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウムとして知られているアジュバントを使用可能である。これらの名前は、従来のものであるが、便宜上使われるだけであって、存在する実際の化学化合物の厳密な記述ではない(例えば、参考文献131の第9章参照)。本発明は、アジュバントとして一般的に使用される「水酸化物」又は「ホスフェート」アジュバントのいずれかを使用できる。
【0185】
「水酸化アルミニウム」として知られているアジュバントは、典型的にはアルミニウムオキシ水酸化物塩であり、それは通常、少なくとも部分的に結晶質である。式:AlO(OH)によって示され得るアルミニウムオキシ水酸化物は、赤外(IR)分光法によって、特に1070cm−1の吸着帯及び3090〜3100cm−1の強い肩部の存在によって、他のアルミニウム化合物(例えば水酸化アルミニウムAl(OH))と区別され得る[参考文献131の第9章]。水酸化アルミニウムアジュバントの結晶化度は、より小さい微結晶サイズのためより大きな線幅拡大を示す十分に結晶質でない粒子によって、半分の高さ(WHH)で回折バンドの幅で表される。WHHが増加するにつれて表面積は増大し、より高いWHH値を有するアジュバントは、抗原吸着の能力がより大きいことが示された。(例えば透過電子顕微鏡組織において認められる通りの)線維形態は、水酸化アルミニウムアジュバントについて典型的である。水酸化アルミニウムアジュバントのpIは、典型的には約11であり、即ち、アジュバントそのものは、生理学的pHで正の表面電荷を有する。水酸化アルミニウムアジュバントについては、pH7.4でAl+++1mg当たり1.8〜2.6mgの間のタンパク質の吸着容量が報告された。
【0186】
「リン酸アルミニウム」として知られているアジュバントは、典型的にはヒドロキシリン酸アルミニウムであり、それはまた、多くの場合、少量の硫酸塩(即ち、ヒドロキシリン酸アルミニウムスルフェート)を含有する。それらは、沈殿によって得ることが可能であり、沈殿の間の反応条件及び濃度は、該塩中のヒドロキシルに対するリン酸塩の置換度に影響する。ヒドロキシリン酸塩は、一般的に0.3〜1.2の間のPO/Alモル比を有する。ヒドロキシリン酸塩は、ヒドロキシル基の存在によって狭義のAlPOから区別され得る。例えば、3164cm−1(例えば、200℃に加熱される場合)のIRスペクトル帯は、構造的ヒドロキシルの存在を示す[参考文献131の第9章]。
【0187】
リン酸アルミニウムアジュバントのPO/Al3+モル比は、一般的に0.3〜1.2の間、好ましくは0.8〜1.2の間、より好ましくは0.95±0.1である。特にヒドロキシリン酸塩について、リン酸アルミニウムは、一般的に非晶質である。典型的なアジュバントは、0.6mg Al3+/mLで含まれる、PO/Alモル比が0.84〜0.92の間の非晶質ヒドロキシリン酸アルミニウムである。リン酸アルミニウムは、一般的に微粒子(例えば、透過電子顕微鏡組織で認められるように板状形態)である。いかなる抗原吸着の後においても、該粒子の典型的な直径は、0.5〜20μm(例えば、約5〜10μm)の範囲である。リン酸アルミニウムアジュバントについては、pH7.4のAl+++1mg当たり0.7〜1.5mgの間のタンパク質の吸着容量が報告された。
【0188】
リン酸アルミニウムのゼロ電荷点(PZC)は、ヒドロキシルに対するリン酸塩の置換度に反比例の関係があり、この置換度は、沈殿によって塩を調製するために使用される反応物の反応条件及び濃度に応じて変化し得る。また、PZCは、溶液中の遊離リン酸イオンの濃度を変えることによって変化し得るか(より多くのリン酸塩は、より酸性のPZCと関連している)、若しくは緩衝液(例えばヒスチジン緩衝液)を添加することによって変化し得る(PZCをより塩基性にする)。本発明に従って使用されるリン酸アルミニウムは、一般的に4.0〜7.0の間の、より好ましくは5.0〜6.5の間の、例えば約5.7のPZCを有する。
【0189】
本発明の組成物を調製するために使用されるアルミニウム塩の懸濁液は、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液やヒスチジン緩衝液やトリス緩衝液)を含むことが可能であるが、これは、必ずしも必要ではない。懸濁液は、好ましくは無菌であり且つ発熱物質を含まない。懸濁液は、(例えば、1.0〜20mMの間の、好ましくは5〜15mMの間の、より好ましくは約10mMの濃度で存在する)遊離水溶性リン酸イオンを含んでよい。また、該懸濁液は、塩化ナトリウムを含むこともできる。
【0190】
本発明は、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウムの両方の混合物を使用することができる。この場合、水酸化物よりもリン酸アルミニウムのほうが多く存在してよい(例えば、重量比が少なくとも2:1、例えば5:1以上、6:1以上、7:1以上、8:1以上、9:1以上等)。
【0191】
患者への投与のための組成物中のAl+++の濃度は、好ましくは10mg/mL未満、例えば5mg/mL以下、4mg/mL以下、3mg/mL以下、2mg/mL以下、1mg/mL以下等である。好ましい範囲は、0.3〜1mg/mLの間である。
【0192】
更なる抗原
該組成物は、修飾糖類及び/又は複合体だけでなく、更なる抗原成分も含むことができる。例えば、該組成物は、1種以上の更なる糖類(本発明に従って修飾されたものであろうとなかろうと)を含むことができる。例えば、該組成物は、髄膜炎菌の血清群C、W135及びYに由来する糖類を(例えば、修飾MenA糖に加えて)含むことができる。これらは、担体タンパク質に典型的に結合体化するものであって、髄膜炎菌の異なる血清群に由来する糖類は、同一又は異なる担体タンパク質に結合体化することができる。混合物が血清群A及びCの両方に由来する莢膜糖類を含む場合、MenA糖:MenC糖の比(w/w)が1超(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1以上)であることが好ましい。MenA成分の免疫原性の向上は、それがMenC成分に対して過度(質量/投与量)に存在する場合に認められた[138]。
【0193】
該組成物はまた、タンパク質抗原を含むこともできる。
【0194】
本発明の組成物中に含まれ得る抗原としては、以下のものが挙げられる。
【0195】
−髄膜炎菌血清群B由来のタンパク質抗原(下記参照)。
【0196】
−参考文献139、140、141、142等に開示される髄膜炎菌由来の外膜小胞(OMV)製剤。
【0197】
−CagA[143〜146]、VacA[147、148]、NAP[149、150、151]、HopX[例えば、152]、HopY[例えば、152]及び/又はウレアーゼ等、ピロリ菌由来の抗原。
【0198】
−肺炎連鎖球菌由来の糖抗原[例えば、153、154、155]。
【0199】
−非活化ウイルス等のA型肝炎ウイルス由来の抗原[例えば、156、157]。
【0200】
−B型肝炎ウイルス由来の抗原(例えば、表面抗原及び/又はコア抗原[例えば、157、158]。
【0201】
−C型肝炎ウイルス由来の抗原[例えば、159]。
【0202】
−百日咳菌由来の無細胞抗原(例えば、百日咳菌由来の百日咳ホロトキシン(PT)や糸状の赤血球凝集素(FHA)、場合によりペルタクチン及び/又は凝集原2及び3とも組み合わされる[例えば、参考文献160及び161]。
【0203】
−細胞性百日咳菌抗原。
【0204】
−ジフテリア抗原(例えば、ジフテリアトキソイド)[例えば、参考文献162の第3章]例えば、CRM197変異体[例えば、163]。
【0205】
−ポリオ抗原[例えば、164、165](例えば、不活性化ポリオウイルス(IPV))。
【0206】
−破傷風抗原(例えば、破傷風トキソイド)[例えば、参考文献162の第4章]。
【0207】
−インフルエンザ菌B型由来の糖抗原[例えば、参考文献166〜174]。
【0208】
−麻疹抗原、耳下腺炎抗原及び/又は風疹抗原[例えば、参考文献162の第9、10及び11章]。
【0209】
−淋菌由来の抗原。
【0210】
−クラミジア・ニューモニエ由来の抗原[例えば、175、176、177、178、179、180、181]。
【0211】
−トラコーマクラミジアに由来する抗原[例えば、182]。
【0212】
−ポルフィロモナス・ジンジバリスに由来する抗原[例えば、183]。
【0213】
−狂犬病抗原[例えば、184](例えば、凍結乾燥非活化ウイルス[例えば、RabAvert(登録商標)])。
【0214】
−インフルエンザ抗原[例えば、参考文献162の第19章](例えば、赤血球凝集素及び/又はノイラミニダーゼ表面タンパク質)。
【0215】
−モラクセラカタラーリス由来の抗原[例えば、186]。
【0216】
−ストレプトコッカス・アガラクティエ(B群連鎖球菌)由来の抗原[例えば、187、188]。
【0217】
−ストレプトコッカス・アガラクティエ(B群連鎖球菌)由来の糖抗原。
【0218】
−化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌)由来の抗原[例えば、188、189、190]。
【0219】
−黄色ブドウ球菌由来の抗原[例えば、191]。
【0220】
−バシラスアンスラシス由来の抗原[例えば、192、193、194]。
【0221】
−単純ヘルペスウィルス(HSV)抗原。本発明に使用するための好ましいHSV抗原は、膜糖タンパク質gDである。HSV−2株(「gD2」抗原)由来のgDを使用することが好ましい。該組成物は、C末端膜アンカー領域が欠失したgD[195](例えば、C末端でのアスパラギン及びグルタミンの付加を伴う天然タンパク質のアミノ酸1〜306を含むトランケーションされたgD)の形態を使用することができる。この形態のタンパク質は、切断されて成熟283アミノ酸タンパク質を産生するシグナルペプチドを含む。アンカーの欠失によって、タンパク質は可溶形態に調製され得る。
【0222】
−ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原。本発明に使用するための好ましいHPV抗原は、L1キャプシドタンパク質であり、それは組み立てされてウイルス様粒子(VLP)として知られている構造を形成する。VLPは、イースト細胞における(例えば、サッカロマイセス・セレヴィシエにおける)又は昆虫細胞における(例えば、スポドプテラ・フルギペルダ等のスポドプテラ細胞における、或いはドロソフィラ細胞における)L1の組換え発現によって産生され得る。イースト細胞については、プラスミドベクターが、L1遺伝子を担持することが可能であり;昆虫細胞については、バキュロウイルスベクターが、L1遺伝子を担持することが可能である。より好ましくは、該組成物は、HPV−16株及びHPV−18株の両方に由来するL1 VLPを含む。この二価の組み合わせは非常に有効であることが示されている[196]。HPV−16株及びHPV−18株に加えて、HPV−6株及びHPV−11株に由来するL1 VLPを含むことも可能である。腫瘍原性HPV株の使用も可能である。ワクチンは、1つのHPV株につき20〜60μg/mLの間(例えば、約40μg/mL)のL1を含むことができる。
【0223】
−フラビウイルス科(フラビウイルス属)のウイルス由来の(例えば、黄熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、デング熱ウイルスの4種の血清タイプ、ダニ媒介性脳炎ウイルス、西ナイルウイルス由来の)抗原。
【0224】
−ペスチウイルス抗原(例えば、ブタコレラウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス及び/又はボーダー病ウイルスに由来するもの等)。
【0225】
−例えばパルボウィルスB19に由来するパルボウィルス抗原。
【0226】
−プリオンタンパク質(例えば、CJDプリオンタンパク質)。
【0227】
−アミロイドタンパク質(例えば、ベータペプチド)[197]。
【0228】
−癌抗原(例えば、参考文献198の表1又は参考文献199の表3及び4に記載されるもの)。
【0229】
該組成物は、これらの更なる抗原の内の1種以上を含み得る。
【0230】
毒性タンパク質抗原は、必要な場合、無毒化され得る(例えば、化学的手段及び/又は遺伝学的手段による百日咳毒素の解毒[161])。
【0231】
ジフテリア抗原が該組成物中に含まれる場合、破傷風抗原及び百日咳抗原をも含むことが好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原及び百日咳抗原をも含むことが好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原及び破傷風抗原をも含むことが好ましい。
【0232】
抗原は、アルミニウム塩に吸着され得る。
【0233】
組成物中の抗原は、典型的には各々少なくとも1μg/mLの濃度で存在する。一般的に、任意の所与の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を誘発するために十分なものである。
【0234】
本発明の組成物中のタンパク質抗原の使用に代わるものとして、抗原をコードする核酸が使用され得る[例えば、参考文献200〜208]。しかるに、本発明の組成物のタンパク質成分は、タンパク質をコードする核酸(好ましくはDNA(例えば、プラスミドの形態))で置換され得る。
【0235】
非糖髄膜炎菌抗原
髄膜炎菌血清群A、C、W135及びYの内の莢膜糖類を使用して防御免疫を生じさせることができるが、同じ方法は、血清群Bについては機能しなかった。しかるに、本発明の修飾糖類及び複合体は、莢膜糖類に基づかない髄膜炎菌抗原(例えば、タンパク質抗原、リポ多糖、膜小胞)と共に(例えば、別々に又は混合して)使用され得る。
【0236】
髄膜炎菌血清群A[209]及びB[210、211]についてゲノム配列が報告されており、適切なタンパク質抗原は、コードされたポリペプチドから選択され得る[例えば、参考文献212〜217]。候補抗原が、非相同発現を向上させるためにマニピュレートされた[参考文献218〜220]。
【0237】
1つの好ましい組成物は、Tbpタンパク質とHsfタンパク質とを含む[221]。Hsfは、オートトランスポータータンパク質[222〜224](別名、nhhA[224]、GNA0992[212]又はNMB0992[210])である。Tbpは、トランスフェリン結合タンパク質であり[225〜228]、TbpA及びTbpBの両方並びに高分子量及び低分子量の形態のTbpA及びTbpBを包含する。Tbpは、上記の個々のタンパク質と、該タンパク質の複合体と、トランスフェリンと結合し得る他のタンパク質又はそれらの複合体とを包含する。Tbpは、高分子形態又は低分子形態のいずれかのTbpA又はTbpBを意味し得るが、高分子量形態及び低分子量形態のTbpA及び/又はTbpBが存在することが好ましい。高分子量及び低分子量のTbpAが存在することが最も好ましい。
【0238】
別の好ましい組成物は、ナイセリアの中の異なる機能を有する少なくとも2種の異なるカテゴリーのタンパク質の各々から選択される少なくとも1種の抗原を含む。かかるカテゴリーのタンパク質の例としては、付着因子、オートトランスポータータンパク質、毒素、内在性外膜タンパク質、鉄獲得タンパク質がある。これらの抗原は、参考文献229の命名法を用いて以下の通りに選択され得る:FhaB、NspA PilC、Hsf、Hap、MafA、MafB、Omp26、NMB0315、NMB0995、NMB1119及びNadAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア付着因子;Hsf、Hap、IgAプロテアーゼ、AspA及びNadAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリアオートトランスポーター;FrpA、FrpC、FrpA/C、VapD、NM−ADPRT(NMB1343)並びにLPS免疫型L2とLPS免疫型L3の一方又は両方からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア毒素;TbpA、TbpB、LbpA、LbpB、HpuA、HpuB、Lipo28(GNA2132)Sibp、NMB0964、NMB0293、FbpA、Bcp、BfrA、BfrB及びP2086(XthA)からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリアFe獲得タンパク質;PilQ、OMP85、FhaC、NspA、TbpA、LbpA、TspA、TspB、TdfH、PorB、MItA、HpuB、HimD、HisD、GNA1870、OstA、HlpA(GNA1946)、NMB1124、NMB1162、NMB1220、NMB1313、NMB1953、HtrA及びPLDA(OMPLA)からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア膜関連タンパク質、好ましくは外膜タンパク質、特に内在性外膜タンパク質。ナイセリア抗原のこれらの組み合わせによって、ナイセリア感染に対するワクチンの有効性が驚異的に高まると言われている[229]。
【0239】
特に好ましい組成物は、以下の5種の抗原の内の1種以上を含む[230]:(1)「NadA」タンパク質(好ましくはオリゴマー形態(例えば、三量体形態)のもの);(2)「741」タンパク質;(3)「936の」タンパク質;(4)「953」タンパク質;及び(5)「287」タンパク質。
【0240】
MenB由来の「NadA」(ナイセリア付着因子A)は、参考文献215にタンパク質「961」(配列番号:2943及び2944)として、及び参考文献210に「NMB1994」として(また、GenBank受託GI:11352904及び7227256も参照)開示されている。該タンパク質の詳細な研究については、参考文献231に見出すことが可能である。NadAは、本発明に従って使用される場合、各種の形態をとり得る。好ましい形態のNadAは、野生型配列のトランケーション変異体又は欠失変異体(例えば、参考文献218〜220において開示されるもの等)である。特に、そのC末端膜アンカーを有さないNadAが好ましい(例えば、2996株については残基351〜405の欠失)。
【0241】
MenB由来の「741」タンパク質は、参考文献215に開示され(配列番号:2535及び2536)、及び「NMB1870」としては参考文献210に開示されている(また、GenBank受入番号GI:7227128も参照)。血清群A株[209]の対応するタンパク質は、GenBank受入番号7379322を有する。741は、天然におけるリポタンパク質である。741タンパク質は、本発明に従って使用される場合、各種形態をとることができる。好ましい形態の741は、野生型配列のトランケーション変異体又は欠失変異体(例えば、参考文献218〜220において開示されるもの等)である。特に、741のN末端は、そのポリグリシン配列までそれを含んで欠失され得(即ち、株MC58について残基1〜72の欠失)、これは、「ΔG」プレフィックスを使用して本明細書において区別され得る場合がある。この欠失によって、発現が高められ得る。また、該欠失によって、741の脂質化部位が除去される。各種741配列は、参考文献220の配列番号:1〜22において、参考文献232の配列番号:1〜23において、及び参考文献233の配列番号:1〜299において見出され得る。
【0242】
血清群B由来の「936」タンパク質は、参考文献215に開示され(配列番号:2883及び2884)、及び「NMB2091」としては参考文献210に開示されている(また、GenBank受入番号GI:7227353も参照)。血清群Aにおける対応する遺伝子[209]は、GenBank受入番号7379093を有する。936タンパク質は、本発明に従って使用される場合、各種形態をとることができる。好ましい形態の936は、野生型配列のトランケーション変異体又は欠失変異体(例えば、参考文献218〜220において開示されるもの等)である。特に、936のN末端リーダーペプチドは、欠失され得る(例えば、株MC58について残基1〜23の欠失(936(NL)が得られる))。
【0243】
血清群B由来の「953」タンパク質は、参考文献215に開示され(配列番号:2917及び2918)、及び「NMB1030」としては参考文献210に開示されている(また、GenBank受入番号GI:7226269も参照)。血清群Aにおける対応するタンパク質[209]は、GenBank受入番号7380108を有する。953タンパク質は、本発明に従って使用される場合、各種形態をとることができる。好ましい形態の953は、野生型配列のトランケーション変異体又は欠失変異体(例えば、参考文献218〜220において開示されるもの等)である。特に、953のN末端リーダーペプチドは、欠失され得る(例えば、株MC58について残基1〜19の欠失)。
【0244】
血清群B由来の「287」タンパク質は、参考文献215に開示され(配列番号:3103及び3104)、及び「NMB2132」としては参考文献210に開示され、「GNA2132」としては参考文献212に開示されている(また、GenBank受入番号GI:7227388も参照)。血清群Aにおける対応するタンパク質[209]は、GenBank受入番号7379057を有する。287タンパク質は、本発明に従って使用される場合、各種形態をとることができる。好ましい形態の287は、野生型配列のトランケーション変異体又は欠失変異体(例えば、参考文献218〜220において開示されるもの等)である。特に、287のN末端は、そのポリグリシン配列までそれを含んで欠失され得る(即ち、株MC58について残基1〜24の欠失(ΔG287が得られる))。
【0245】
タンパク質287は、好ましくは株2996由来であり、或いはより好ましくは株394/98由来である。タンパク質741は、好ましくは血清群B株MC58、2996、394/98又は95N477に由来し、又は血清群C株90/18311に由来する。株MC58がより好ましい。タンパク質936、953及びNadAは、好ましくは株2996に由来する。組成物が特定のタンパク質抗原(例えば、741又は287)を含む場合、該組成物は、1種超の異型におけるその抗原(例えば、同一のタンパク質であるが、1種超の株に由来するもの)を含むことができる。これらのタンパク質は、タンデム又は別々のタンパク質として含まれ得る。
【0246】
本発明の組成物中に含まれ得る他のMenBポリペプチド抗原としては、以下のアミノ酸配列:参考文献213由来の配列番号:650;参考文献213由来の配列番号:878;参考文献213由来の配列番号:884;参考文献214由来の配列番号:4;参考文献215由来の配列番号:598;参考文献215由来の配列番号:818;参考文献215由来の配列番号:864;参考文献215由来の配列番号:866;参考文献215由来の配列番号:1196;参考文献215由来の配列番号:1272;参考文献215由来の配列番号:1274;参考文献215由来の配列番号:1640;参考文献215由来の配列番号:1788;参考文献215由来の配列番号:2288;参考文献215由来の配列番号:2466;参考文献215由来の配列番号:2554;参考文献215由来の配列番号:2576;参考文献215由来の配列番号:2606;参考文献215由来の配列番号:2608;参考文献215由来の配列番号:2616;参考文献215由来の配列番号:2668;参考文献215由来の配列番号:2780;参考文献215由来の配列番号:2932;参考文献215由来の配列番号:2958;参考文献215由来の配列番号:2970;参考文献215由来の配列番号:2988の内の1種を含むものや、(a)該配列に対して50%以上の同一性(例えば、60%、70%、80%、90%、95%、99%以上)を有する;及び/又は(b)該配列から少なくともn個の連続するアミノ酸の断片(ここでnは、7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250以上))を含むアミノ酸配列を含むポリペプチドが挙げられる。(b)についての好ましい断片は、関連配列に由来するエピトープを含む。これらのポリペプチドの内の2種以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14種以上)が含まれ得る。
【0247】
しかしながら、幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、同一のタンパク質であるが1種超の株に由来するものを含む。この方法は、741タンパク質において有効であることが分かった。このタンパク質は、抗髄膜炎菌抗体応答を誘発するための極めて有効な抗原であり、全ての髄膜炎菌血清群に亘って発現する。系統発生学的解析によって、タンパク質が2個の基に分割し、これらの内の1つは再度分割して全体で3個の変異体が得られることが示され[234]、所与の変異体に対して増加される血清は、同一の変異体群の中で殺菌性であるが、他の2種の変異体の内の1種を発現する株に対しては活性でない(即ち、変異体内干渉効果があるが、変異体間干渉効果がない)[232,234]。故に、クロス株有効性が最大になるためには、組成物が、タンパク質741の1種超の変異体を含むことが好ましい。
【0248】
本発明の組成物は、少数の精製血清群Bタンパク質(例えば、t個未満の抗原(ここでtは、10、9、8、7、6、5、4又は3である))を含む。該タンパク質は、好ましくは非相同の宿主内で組換え発現し、次いで精製される。t個のMenB抗原を含む組成物については、t個の別々のポリペプチドがあるが、複雑度は更に低下しており、該抗原の内の少なくとも2つが単一のポリペプチド鎖として発現すること(「ハイブリッド」タンパク質[参考文献218〜220])、即ちt個の抗原がt個未満のポリペプチドを形成するように発現することが好ましい。ハイブリッドタンパク質は、2つの主要な利点を提供する。それは即ち、第1には、不安定又はそれ自体で不十分に発現したタンパク質は、課題を克服する適切なハイブリッドパートナーを付加することによって助力を受け得ること;第2には、2種の別々に有用なタンパク質を産生するために用いられる必要がある発現及び精製が1回だけなので、商業生産が単純化されること、である。本発明の組成物中に含まれるハイブリッドは、上記の5種のタンパク質の2種以上(即ち、2、3、4又は5種)を含むことができる。5種のタンパク質の内の2種からなるハイブリッドが好ましい。
【0249】
別の好ましい組成物は、血清群Bリポオリゴ糖(LOS)を含む[235]。LOSは、血清群Bポリペプチドに加えて使用され得るか、若しくはそれ/それらの代わりに使用され得る。
【0250】
膜小胞もまた、該組成物において使用され得る。これらの小胞は、髄膜炎菌外膜を崩壊させて外膜のタンパク質成分を含む外膜の小胞を形成することによって得られるいずれかのプロテオリポソーム小胞であり得る。「OMV」は、(例えば、界面活性剤処理によって)細菌から人工的に調製され、しかるに微細小胞(MV[236])及び「未変性OMV」(「NOMV」[237])(その両方は、細菌増殖中に自然に形成し、培養培地に放出される天然由来の膜小胞である)から区別される。MVは、ナイセリアをブロス培養培地中で培養し、ブロス培養培地中のより小さなブレブから細胞全体を分離し、次いで細胞欠失培地からMVを回収することによって得ることが可能である。MVの製造に用いられる株は、培養において産生するMVの量に基づいて一般的に選択することが可能であり、例えば、参考文献238及び239においては、MV産生が高いナイセリアについて記載されている。また、小胞は、mltAノックアウト株から得ることも可能である[240]。
【0251】
発熱活性を低下させるために、該細菌は、エンドトキシン(LPS)レベルが低いことが好ましい。適切な変異細菌が知られており、例えば、変異ナイセリア[241]や変異ヘリコバクター[242]が知られている。グラム陰性菌からLPS欠失外膜を調製するためのプロセスは、参考文献243に開示されている。
【0252】
該細菌は、野生型細菌であってよく、又は組換え細菌であってよい。好ましい組換え細菌は、(対応する野生株と比較して)イムノゲン(例えば、NspA、タンパク質287[244]、タンパク質741[244]、TbpA、TbpB、スーパーオキシドジスムターゼ[245]等)を過剰発現する。該細菌は、1種超のPorAクラスI外膜タンパク質(例えば、PorAサブタイプ:P1.7,16;P1.5,2;P1.19,15;P1.5c,10;P1.12,13;及びP1.7h,4の内の2、3、4、5又は6種)を発現することができる[例えば、参考文献246及び247]。
【0253】
本発明で使用され得る他の組換え細菌は、特定の遺伝子産物の発現を低下する(又は、好ましくはノックアウトする)ために、1つ以上の変異を有する(例えば、参考文献248及び249)。ダウンレギュレーション及び/又はノックアウトのための好ましい遺伝子としては:(a)Cps、CtrA、CtrB、CtrC、CtrD、FrpB、GalE、HtrB/MsbB、LbpA、LbpB、LpxK、Opa、Opc、PilC、PorA、PorB、SiaA、SiaB、SiaC、SiaD、TbpA及び/又はTbpB[248];(b)CtrA、CtrB、CtrC、CtrD、FrpB、GalE、HtrB/MsbB、LbpA、LbpB、LpxK、Opa、Opc、PhoP、PilC、PmrE、PmrF、PorA、SiaA、SiaB、SiaC、SiaD、TbpA及び/又はTbpB[249];(c)溶解トランスグリコシラーゼNMB0033[250];(d)ExbB、ExbD、rmpM、CtrA、CtrB、CtrD、GalE、LbpA、LpbB、Opa、Opc、PilC、PorA、PorB、SiaA、SiaB、SiaC、SiaD、TbpA及び/又はTbpB[251];及び(e)CtrA、CtrB、CtrD、FrpB、OpA、OpC、PilC、PorA、PorB、SiaD、SynA、SynB及び/又はSynC[252]が挙げられる。
【0254】
これらの非糖抗原のための原料としての血清群Bの中の好ましい株は、MC58、2996、H44/76、394/98及びニュージーランド株98/254である。しかしながら、使用する最良の血清タイプ及び株は、特定の地理的位置における一般的な株によって決まる。例えば、髄膜炎菌は、任意の血清サブタイプ(P1.2;P1.4;P1.5;P1.5,2;P1.7,16;P1.7,16b;P1.9;P1.9,15;P1.12,13;P1.13;P1.14;P1.15;P1.21,16;P1.22,14;等)及び任意の免疫型(例えば、L1;L3,3,7;L10;等)の任意の血清タイプ(例えば、1、2a、2b、4、14、15、16等)のものであり得、好ましい株としては:(a)B:4:P1.4;(b)B:4:P1.15;(c)B:15:P1.7,16;及び(d)B:4:P1.7b,4が挙げられる。髄膜炎菌は、超侵襲性及び超毒性系統等、任意の適切な系統(例えば、以下の7種の超有毒性系統のいずれか:亜群I;亜群III;亜群IV−1;ET−5複合体;ET−37複合体;A4クラスター;系統3)に由来するものであってよい。これらの系統は、多遺伝子座酵素電気泳動(MLEE)によって明らかにされるが、髄膜炎菌を分類するために多座配列タイピング(MLST)も使用されてきた[参考文献253](例えば、ET−37複合体は、MLSTによるST−11複合体であり、ET−5複合体は、ST−32(ET−5)であり、系統3は、ST−41/44等である)。
【0255】
MenB超毒性系統A4、ET−5及び系統3の内の2種又は3種に対して有効である血清殺菌性抗体応答を誘発するために、非糖抗原を使用することができる。それらは、超毒性系統の亜群I、亜群III、亜群IV−1又はET−37複合体の内の1種以上に対する、及び他の系統(例えば、超侵襲性系統)に対する殺菌性抗体応答を更に誘発することができる。これらの抗体応答は、マウスにおいて都合よく測定され、ワクチン有効性の標準的指標である[例えば、参考文献212の巻末の注14を参照]。血清殺菌性活性(SBA)は、補体によって媒介される殺菌について評価するものであって、ヒト又は乳児ウサギの補体を使用してアッセイされ得る。WHOの基準は、ワクチンによって、90%超のレシピエントにおけるSBAの少なくとも4倍の増大が誘発されることを義務づけている。
【0256】
該組成物は、これらの超毒性系統の中のどのMenB株に対しても殺菌性抗体を誘発する必要はなく;むしろ、特定の超毒性系統の中の血清群B髄膜炎菌のより多くの株の内の4種の任意の所与の群については、該組成物によって誘発される抗体は、該群の少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、90%以上)に対して殺菌性である。株の好ましい群は、以下の国の内の少なくとも4カ国において単離された株を含む:GB、AU、CA、NO、IT、US、NZ、NL、BR及びCU。血清は、好ましくは、殺菌性力価が少なくとも1024(例えば、210、211、212、213、214、215、216、217、218以上、好ましくは少なくとも214)であって、即ち、参考文献212に記載されるように、血清は、1/1024に希釈される場合、特定の株の少なくとも50%の試験細菌を死滅させることが可能である。
【0257】
好ましい組成物は、血清群B髄膜炎菌の以下の株に対する殺菌性応答を誘発することが可能である:(i)クラスターA4由来の、株961〜5945(B:2b:P1.21,16)及び/又は株G2136(B:−);(ii)ET−5複合体由来の、株MC58(B:15:P1.7,16b)及び/又は株44/76(B:15:P1.7,16);(iii)系統3由来の、株394/98(B:4:P1.4)及び/又は株BZ198(B:NT:−)。より好ましい組成物は、株961〜5945、44/76及び394/98に対する殺菌性応答を誘発することができる。株961〜5945及びG2136は、両ナイセリアMLST参考株である[参考文献254におけるid638及び1002]。株MC58は、広く利用可能であり(例えば、ATCC BAA−335)、参考文献210において配列化された株であった。株44/76は、広く使用され、特徴が記述されてきており(例えば、参考文献255)、ナイセリアMLST参考株の内の1種である[参考文献254のid237;参考文献256の表2の32行目]。株394/98は、元々1998年にニュージーランドで単離されたものであって、この株を使用した研究が幾つか公表されている(例えば、参考文献257及び258)。株BZ198は、別のMLST参考株である[参考文献254のid409;参考文献256の表2の41行目]。該組成物は、ET−37複合体由来の血清群W135株LNP17592(W135:2a:P1.5,2)に対する殺菌性応答を更に誘発することができる。
【0258】
一般
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」並びに「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、Xだけからなることができるか、又は更なる何か(例えば、X+Y)を含むことができる。
【0259】
「実質的に」という語は、「完全に」を除外するものではなく、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてもよい。必要な場合、「実質的に」という語は、本発明の定義から省略され得る。
【0260】
数値xに関する「約」という用語は、例えばx±10%を意味する。
【0261】
「アルキル」という用語は、直鎖及び分岐鎖の形態のアルキル基を意味するために本明細書において使用される。しかしながら、「アルキル」という用語は、通常直鎖形態のアルキル基を意味する。アルキル基は、−O−、−NH−又は−Sから選択される1、2又は3個のヘテロ原子によって割込まれ得る。アルキル基は、1、2又は3個の二重結合及び/又は三重結合によって割込まれ得る。しかしながら、「アルキル」という用語は、ヘテロ原子割込み或いは二重結合割込み又は三重結合割込みを有さないアルキル基を通常意味する。C1−6アルキル基に対する参照がなされる場合、アルキル基が、1〜6個の間の任意の数の炭素原子(例えば、C、C、C、C、C、C)を含有し得ることが意味される。
【0262】
「アルキレン」という用語は、上記記載の通り、二価のアルキル基を意味するために本明細書において使用される。C1−5アルキレン基に対する参照がなされる場合、アルキレン基が、1〜5個の間の任意の数の炭素原子(例えば、C、C、C、C、C)を含有し得ることが意味される。同様に、C1−4アルキレン基に対する参照がなされる場合、アルキレン基が、1〜4個の間の任意の数の炭素原子(例えば、C、C、C、C)を含有し得ることが意味される。
【0263】
「アミノ基」という用語は、式:−NH又は−NH−E(ここでEは窒素保護基である)の基を含む。典型的な窒素保護基の例は、上で記載される。
【0264】
「アミン」という用語は、特に他に文脈によって示されない限り、式:−NHの基を意味する。
【0265】
「修飾莢膜糖」という用語は、適切な修飾によって未変性莢膜糖から得ることができる糖を意味する。故に、未変性莢膜糖における反復単糖単位の塩基性配列は、本発明の修飾莢膜糖類において保持される。
【0266】
「糖」という用語は、オリゴ糖類(例えば、2〜39個の単糖単位を含有)及び多糖類(例えば、40個以上の単糖単位を含有)の両方を包含する。細菌において天然に見出されるように、未変性莢膜糖類は、一般的に多糖類の形態をとる。多糖類をマニピュレートして、より短いオリゴ糖類を得ることができる。オリゴ糖類は、未変性多糖類の精製及び/又は解重合の後、サイジングによって(例えば、緩酸における加水分解によって、加熱によって、サイジングクロマトグラフィーによって、等)、得ることが可能である。
【0267】
動物(及び特にウシ)の材料が細胞の培養に使用される場合、それらは、伝達性海綿状脳症(TSE)を含まない、特にウシ海綿状脳症(BSE)を含まない原料から得られなければならない。全体として、動物由来材料が全体的に存在しない細胞を培養することが好ましい。
【0268】
イオン化可能な基は、本明細書における式に示される中性形態の中に存在し得る、或いは、例えばpHに応じて、荷電性形態の中に存在し得るということはいうまでもない。しかるに、リン酸基は−P−O−(OH)として示すことが可能であり、この式は、中性リン酸基の単なる代表であって、他の荷電性形態は本発明に包含される。同様に、
カチオン性基及びアニオン性基に対する本明細書における参照は、例えばアミン−NHがプロトン化されてカチオン性−NH3+基が得られる(このプロトン化は、生理学的pHで生じるものである)生理学的条件の下でその基上に存在する電荷を意味するためになされなければならない。更に、カルボキシル−COOHが脱プロトン化されてアニオン性−COO基が得られる(このプロトン化は、生理学的pHで生じ得るものである)。その上、本発明は、本発明の分子の荷電性形態の塩を包含する。糖環は、開いた形態及び閉じた形態で存在することが可能であり、閉じた形態が本明細書において構造式に示されると共に、開いた形態も本発明に包含される。同様に、本発明は、互変異性体(例えば、イミン/エナミン互変異性体)、配座異性体、鏡像異性体、ジアステレオ異性体等を含む、本発明の分子の異性体形態を包含するものである。
【0269】
血清群の後、髄膜炎菌分類は、血清タイプ、血清サブタイプ、次いで免疫型を含み、標準的命名法は、血清群、血清タイプ、血清サブタイプ及び免疫型を記載し、各々は、コロン(例えば、B:4:P1.15:L3,7,9)で区切られる。血清群Bの中で、幾つかの系統は、多くの場合(超侵襲性の)疾患を生じさせ、幾つかの系統は、他の(超毒性)疾患よりも重度の形態の疾患を生じさせ、他は、めったに疾患を生じさせない。7種の超毒性系統(即ち、亜群I、III及びIV−1、ET−5複合体、ET−37複合体、A4クラスター及び系統3)が認められる。これらは、多遺伝子座酵素電気泳動(MLEE)によって定義されてきたが、多遺伝子座配列タイピング(MLST)もまた、髄膜炎菌を分類するために使用されてきた[参考文献256]。
【図面の簡単な説明】
【0270】
【図1】CRM197−MenA複合体の化学合成についての模式図を提供する。「MenA10/90」(約10%の単糖単位上に4,5−ジヒドロキシペンチルカルバメートブロック基と、約90%の単糖単位上に2−ヒドロキシエチルカルバメートブロック基とを含むMenAオリゴ糖)及び「MenA10/0」(約10%の単糖単位上に4,5−ジヒドロキシペンチルカルバメートブロック基を含むMenAオリゴ糖)の一般的構造が示される。
【図2】(パネルA)サイジングの前で且つ(パネルB)サイジングの後のMenAオリゴ糖類が214nmでの陰イオン交換解析的なプロファイルを提供する。
【図3】化学修飾なしのMenAオリゴ糖(パネルA)、MenA10/90オリゴ糖(パネルB)及びMenA10/0オリゴ糖(パネルC)の25℃での600MHz H NMRスペクトルを提供する。
【図4】化学修飾なしのMenAオリゴ糖、MenA10/90オリゴ糖及びMenA10/0オリゴ糖による37℃での保存中に発現するホスホモノエステルのパーセンテージを比較する。
【図5】MenAオリゴ糖の31P NMRスペクトルを提供する。
【図6】化学修飾なしのMenAオリゴ糖、MenA10/90オリゴ糖及びMenA10/0オリゴ糖の37℃での保存中の31P NMRで測定された重合(DP)の程度を比較する。
【図7】CRM−MenAオリゴ糖複合体:Lane M−Mw Markers;Lane 1−CRM;Lane 2−CRM−MenA10/90;及びLane 3−CRM−MenA10/0のSDS−Pageプロファイルを提供する。
【図8】CRM−MenA10/90オリゴ糖複合体及びCRM−MenA10/0オリゴ糖複合体から37℃での保存中に放出される遊離糖(FS)を比較する。
【図9】CRM−MenA10/90オリゴ糖複合体及びCRM−MenA10/0オリゴ糖複合体によって37℃で保存中に発現するホスホモノエステルのパーセンテージを比較する。
【発明を実施するための形態】
【0271】
実施例1
Men Aオリゴ糖の修飾
MenA 多糖の加水分解の制御
MenA多糖溶液の化学的加水分解によって、MenAオリゴ糖類を生成した。概略説明すると、終濃度が10mg/mLでMenA多糖を50mM酢酸緩衝液(pH4.75)に可溶化した。約10の重合度(DP)に達するまで、前記溶液を73℃で加熱した。以下の式:DP=1/{0.5817[1−(α/α)]}(ここで、αは、溶液の温度が50℃の場合の6つの試料の旋光能の平均値であり、αは、時間tにおける旋光能である)に従って、時間と共に溶液の光学活性(α Hg 365nm)の変化をモニタすることによって、前記加水分解を制御した。DPが10である場合に対応するα値に達した時、加水分解を停止した。加水分解反応終了時、室温及び約6.5に調製されたpHで前記溶液を冷却した。
【0272】
MenAオリゴ糖のサイズ分画
MenA多糖の酸性加水分解を制御することによって、目標平均DPを有する多分散度が得られる。複合体調製のために、オリゴ糖多分散度は、二段階サイズ分画を使用して更に限定され得る。これらのサイジングステップは、全リン(Pt)の値と末端モノエステルリン酸塩(Pm)の値との間のモル比で測定する場合、典型的には約10の値から15〜20間の値までMenAオリゴ糖類のDPを変化させる。参考文献259に記載される方法に従ってPt濃度を決定し、ジャガイモ酸性ホスファターゼとの酵素反応によって放出される無機リン酸塩を測定することによってPmを決定した[260]。
【0273】
概略説明すると、高分子量種を除去するために、まず、30KDa接線流膜によってMenA加水分解物を限外濾過した。この手法の間、生成物を10倍に濃縮し、次いで体積が13の5mM酢酸緩衝液(pH6.5)に対してダイアフィルターする。所望のオリゴ糖類を含有する透過物を、濃縮水を廃棄すると共に回収する。
【0274】
第2ステップにおいては、アニオン性交換カラムクロマトグラフィーによって透過物を分画する。このステップは、免疫原性が不十分であり得る6未満のDPを特徴とする低Mw種を除去するようにデザインされる[261]。既に5mM酢酸ナトリウム(pH6.5)で平衡させたQ−Sepharose Fast Flowをパックしたカラム上に、30KDa限外濾過から得られるオリゴ糖類混合物をロードした。オリゴ糖/パック体積の比は、パック樹脂17mg/mLであった。次いで、5カラム体積(cv)の平衡化緩衝液でカラムを洗浄した。次いで、10cvの5mM酢酸ナトリウム緩衝液/125mMNaClの洗浄液(pH6.5)をカラムに加えて、DPが6以下のオリゴ糖類を溶出した。次いで、5mM酢酸ナトリウム緩衝液/500mM NaCl(pH6.5)による溶出によって、所望のオリゴ糖類分画物を回収した。5cvの2M NaClによるストリッピングと、1M NaOHによる浄化によって、この手法を完了した。
【0275】
分画の前後でオリゴ糖多分散度を測定するために、解析的陰イオン交換クロマトグラフィを用いた。概略説明すると、Mono−Q HR 5/5カラムを使用してHPLCによってMenAオリゴ糖の多分散度を解析した。水による平衡化の後、約1mgの糖を含有する1mLの試料をカラム上にロードし、次いでそれを、0.5mLの流量で、直線濃度勾配が0〜60%のNaCl(1M)で発現させた。214nmでクロマトグラムをモニタした。テストされた多分散試料において6未満のDPを有するオリゴ糖類の存在又は除去を同定するために、質量分析及びH NMRによって証明されたように、それぞれ5及び6の定義されたDPを有する単分散MenAオリゴ糖の標準製剤を使用した。図2は、サイジングされたMenAオリゴ糖類(パネルB)と比較した加水分解物(パネルA)の解析的プロファイルを示す。
【0276】
対イオン交換
非水溶媒中のオリゴ糖に溶解度を与えるナトリウム対イオンのテトラブチルアンモニウムとの交換のため、3KDa膜上で、二段階サイズ分画手法からのQ−Sepharose溶出液を限外濾過した。概略説明すると、体積4の10mMテトラブチルアンモニウムブロミドに対して、その後体積10の水に対して、MenAオリゴ糖溶液をダイアフィルターした。所望の生成物を含有する残留物を回収し、透過物を廃棄した。回転蒸発によって、残留物から水を除去した。
【0277】
MenAオリゴ糖の化学修飾
2つの異なる標的構造を得るために、1,1’カルボニルジイミダゾール(CDI)活性化と、その後の1−アミノ−4,5−ペンタンジオール(APD)単独か、APD及び2−アミノエタノール(ETA)のいずれかとの反応とを用いて、MenAオリゴ糖を修飾した(図1):
i)約10%の単糖単位上における4,5−ジヒドロキシペンチルカルバメートブロック基と約90%の単糖単位上における2−ヒドロキシエチルカルバメートブロック基とを含むMenAオリゴ糖(MenA10/90);及び
ii)約10%の単糖単位上における4,5−ジヒドロキシペンチルカルバメートブロック基を含むMenAオリゴ糖(MenA10/0)。
【0278】
概略説明すると、上記の3KDa膜限外濾過から誘導されるMenAオリゴ糖を、約10mg/mLの終濃度にDMSO中で可溶化した。この溶液に、(MenA単糖単位のモル数と比較して)20倍のモル過剰のCDIを添加して、その溶液を室温で2時間撹拌した。次いで、体積が9の低温(−20℃)酢酸エチルに活性化オリゴ糖溶液を添加し、その後、MenA単糖単位と等モルの終濃度にCaClの2M溶液を添加した。混合物を30分間撹拌し、オリゴ糖の沈降後、ほとんどの上清を吸入によって除去し、ペレットを、遠心分離によって回収し、酢酸エチルで3回洗浄し、真空下で乾燥した。
【0279】
ブロック基の付加のために、活性化オリゴ糖を10mg/mLの終濃度にDMSO中で可溶化した。「MenA10/0」オリゴ糖を得るために、(MenA単糖単位のモル数と比較して)0.1倍のモル過剰のAPDを添加し、反応液を室温で2時間撹拌した。この時以後、体積が19の0.25Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を撹拌下で添加した。この操作の間、形成されるいかなる蛋白石濁も、0.2μm膜による濾過によって除去した。「MenA10/90」オリゴ糖を得るために、0.6倍のモル過剰のトリエチルアミン及び0.1倍モル過剰のAPDを添加して、反応液を室温で2時間撹拌した。その後、(MenA単糖単位のモル数と比較して)50倍のモル過剰のETAを添加し、反応液を更に2時間撹拌することを続けた。再度、この時以後、体積が19の0.25Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を撹拌下で添加し、0.2μmの膜による濾過によっていかなる蛋白石濁も除去した。
【0280】
3KDa膜上の限外濾過によって、過剰の低分子量試薬から誘導体化オリゴ糖の粗溶液を精製した。まず、前記溶液を約20倍に濃縮し、次いで体積が10の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)に対してダイアフィルターを行い、その後、体積が10の蒸留水に対して行った。残留物から精製生成物を回収し、透過物を廃棄した。
【0281】
H NMRによる化学修飾の確認
所望の化学修飾が生じたことを確認するためのNMRによって、化学修飾MenAオリゴ糖の特性を評価した。
【0282】
未変性MenAオリゴ糖類のH NMRスペクトルは、図3(パネルA)に示される。スペクトルは、公表された文献[262、263]と一致している。純粋APD及びETAにおいて行われたH NMRによって、以下のシグナルが得られた:APDシグナル:HOCHCH(OH)CHCHCHNH(3.6ppmでH、3.7ppmでH、1.5ppmでH、1.6ppmでH、2.7ppmでH);ETAシグナル:HOCHCHNH(4.4ppmでH、3.6ppmでH)。これらの割当をガイドとして使用して、誘導体化オリゴ糖類のスペクトルにおけるAPD及びETAシグナルを同定した。MenA10/90オリゴ糖のH NMRスペクトは、図3(パネルB)において報告される。MenA10/0オリゴ糖のH NMRスペクトルは、図3(パネルC)において報告される。ETA基又はAPD基と、N−アセチル−マンノサミンの4位及び/又は3位において導入されるカルボニル基との間の共有結合を、HSQCスペクトルにおいて検出される(H,13C)異種核相関によって確認した。カルボニル基と、ETAのH又はAPDのHとの間の長距離相関ピークを検出した。同様に、カルボニル基によって、N−アセチル−マンノサミンの3/4位のジェミナルプロトンとの長距離相関が得られた。化学的処理によって導入されるAPD基のパーセンテージを、APD及びMenAからの選択シグナルの積分によって推定した。1.5ppm(APD基)でのH+H重なりシグナルを、4.6ppm(MenAオリゴ糖)でのHピークに対して積分した。異なる実験において、6%〜14%のMenA単糖単位が、APD基と置換された。同一の方法に従って、ETA基を、4.6ppm(MenAオリゴ糖)でのHピークに対する3.6ppm(ETA基)でのH重なりシグナルの比によって推定した。APDシグナルとの部分的重なり(3.6ppmでのH及び3.7ppmでのH)のため、Hの積分を、H+H値の3/4減算した。異なる実験において、66%〜85%のMenA単糖単位が、ETA基と置換された。期待されたように、図3において、ETA基に関連したパネルCシグナルは存在せず、それによって、提唱された構造と、構造解析及び同一性評価のためのツールとしてのNMRの適合性とが確認された。図3(パネルA)は、血清群A髄膜炎菌多糖の酸性加水分解の後、O−アセチル化が保存されることを示しており、カルバメート基によって、局所磁場が変化し、割当がより複雑になるが、O−アセチル化状態は、化学修飾の後において維持されると思われる(図3、パネルB及びC)。
【0283】
MenAオリゴ糖類の安定性
ホスホジエステル結合における加水分解の帰結であるMenAオリゴ糖類の分解によって、ホスホモノエステル基が新しく形成される。MenA10/90オリゴ糖及びMenA10/0オリゴ糖の安定性を、未変性オリゴ糖類の安定性と比較した。
【0284】
概略説明すると、1.4〜3mg/mLの濃度範囲のMenAオリゴ糖類の溶液のインキュベーションを、10mMヒスチジン緩衝液(pH7.2)において37℃で行った。42日間に亘る異なる時点において、保存中に生成するホスホモノエステルの量について、オリゴ糖類を解析した。
【0285】
図4は、前述の3種のオリゴ糖について、37℃での保存中におけるホスホモノエステル基の増加を示す。ホスホモノエステルのパーセンテージを、[Pm(t)―Pm(0)]×100/[(Pt(0)−Pm(0)](ここで、Pm(t)及びPt(t)は、時間tにおけるホスホモノエステル基の濃度及び全リンであり;Pm(0)及びPt(0)は、時間0のホスホモノエステル基の濃度及び全リンである)として算出した。参考文献259に記載された方法に従って全リン(Pt)濃度を決定し、そしてジャガイモ酸性ホスファターゼとの酵素反応によって放出された無機リン酸塩を測定することによって末端モノエステルリン酸塩(Pm)を決定した[260]。
【0286】
MenA10/90オリゴ糖及びMenA10/0オリゴ糖は、時間に亘ってホスホモノエステル基を放出する傾向が低減することによって証明されるように、未変性オリゴ糖と比較して安定性が向上した。これらの結果は、本発明によるブロック基でN−アセチルマンノサミンの4位及び3位のヒドロキシル基をブロック化することによって、MenAオリゴ糖の安定性が高まり得ることを示す。
【0287】
同様に、31P NMR解析[264]を用いて、10mMヒスチジン緩衝液(pH7.2)において、37℃で42日間、未変性のオリゴ糖類と比較して修飾MenAオリゴ糖類の安定性を評価した。概略説明すると、解重合度の平均(avDP)を、連鎖基(Pin chain)のホスホジエステルとホスホモノエステル非還元末端基(Pnon−red end)との間のモル比によって決定した(図5)。
avDP=[Pin chain+1]/Pnon−red end
再度、MenA10/90オリゴ糖及びMenA10/0オリゴ糖は、全ての時点で重合度がより大きいことによって証明されるように、未変性オリゴ糖と比較して安定性が向上した(図6)。
【0288】
【表1】

CRM197―MenA複合体
過ヨウ素酸酸化の制御による反応性アルデヒド基の生成
MenA10/90オリゴ糖及びMenA10/0オリゴ糖におけるAPDから誘導された4,5−ジヒドロキシペンチルカルバメートブロック基のビシナルであるヒドロキシル基を、限定された過ヨウ素酸ナトリウム処理によって酸化して、反応性アルデヒド基を生成した。概略説明すると、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)におけるMenA10/90オリゴ糖及びMenA10/0オリゴ糖の溶液を、MenA単糖単位1モル当たり0.1モルのNaIOと反応させた。前記反応を、撹拌しながら暗所で行い、225nmにおいて分光測光法でモニタした。約2時間後、225nmの吸光度がプラトーに達した。前記反応によって生成するアルデヒド基の量を、酸化中に放出されるホルムアルデヒドの等モル量を解析することによって決定した[265]。NaIOと等モルの終濃度にエチレングリコールを添加することによって、前記反応を停止させた。
【0289】
アルデヒド基の生成は、4,5−ジヒドロキシペンチルカルバメートブロック基の最初の数と比較してほぼ定量的だった。
【0290】
酸化オリゴ糖の精製
酸化オリゴ糖類を、3KDa膜上における限外濾過によって精製した。溶液を2倍に濃縮し、体積が10の0.5M NaClに対して、その後体積が10の蒸留水に対してダイアフィルターした。所望の生成物を含有する残留物を回収し、透過物を廃棄した。回転蒸発によって残留物から水を除去した。
【0291】
CRM197への結合体化
還元的アミノ化を介してCRM197(ジフテリアトキシンの無毒性変異体[266])に酸化MenAオリゴ糖類を結合体化させ、それぞれCRM−MenA10/90及びCRM−MenA10/0を得た(図1)。
【0292】
概略説明すると、タンパク質1モル当たりアルデヒド基が13モルの比で、CRM197の50mg/mL溶液において酸化MenAオリゴ糖類を可溶化した。100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)を添加して、30mg/mLの最終タンパク質濃度を得た。次いで、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)におけるNaBHCNの2M溶液を添加して、アルデヒド基に対して70倍のモル過剰のNaBHCNを得た。反応は、37℃で3日間行った。次いで、体積が14の10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)を添加し、その後、(アルデヒド基のモル数と比較して)25倍のモル過剰のNaBHを添加した。いかなる残存するアルデヒド基も消滅させるために、pHを8.5に制御して、混合物を室温で2時間撹拌した。消滅ステップの終了時、pHを再度7.2に調整し、0.2μm細孔膜によって溶液を濾過した。
【0293】
複合体の精製
30KDa膜上の限外濾過によって、過剰の試薬及び残存する未反応オリゴ糖類から、複合体を精製した。体積が100の0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)に対して、その後体積が50の10mMヒスチジン(pH7.2)に対して、反応混合物のダイアフィルターを行った。次いで、精製複合体を含有する溶液を、0.2μm細孔膜によって濾過し、2〜8℃で保存した。
【0294】
CRM197への結合体化の確認
CRM197へのMenAオリゴ糖類の結合体化について、SDS−Pageによって示した(図7)。濃縮ゲル用7.5%アクリルアミド及び分離ゲル用7.5%アクリルアミドを使用して、参考文献267に従ってSDS−Pageを行った。電気泳動の前に、試料を、試料緩衝液によって1:4に処理し、10分間沸騰させた。200Vの定常電圧で約40分間電気泳動を行った。ゲルを、クーマシー染色液によって約20分間作製し、約4時間酢酸/EtOH溶液(7/40%)において脱染色した。
【0295】
図7における複合体のプロファイルは、CRM197と比較して、より高分子量の方へシフトしており、CRM197とは著しく異なる。SDS−Page解析はまた、高分子量材料の存在を示す。この材料は、結合体化結合反応の間に形成され得るが、このことによって、オリゴ糖分子1個当たりCRM197の付着点が多くなり得る。
【0296】
また、糖及びタンパク含有量についての複合体の解析も行った。0.20〜0.32の範囲の糖/タンパク質比(wt/wt)が観察された。
【0297】
CRM197−MenA複合体の安定性
ホスホジエステル結合の加水分解から生じる、時間に亘る非結合体化糖の放出を測定することによって、CRM197−MenA複合体の安定性を決定した。
【0298】
Centricon30装置(2mL容量)を、1mlの蒸留水で洗浄し、2回転させた。約0.3mg/mLの糖を含有する940μL試料(CRM−MenA10/90又はCRM−MenA10/0)に、60μL生理食塩水を添加した。全リン含有量を、前記装置に混合物を添加する前に上記の通りに測定した。100〜200μLの溶液が残留物チャンバに残るまで、前記装置を1942gで回転させ、次いで2×1mL生理食塩水で洗浄し、再度回転を行った。透過物チャンバ内の溶液を回収し、生理食塩水で試料体積を3mLに調整した。各試料から誘導された透過物を、上記の通りに全リン含有量について解析した。
【0299】
(P2/P1)×100(P1は、セントリコン処理の前の全リンであり、P2は、セントリコン処理の後の全リンである)の値は、遊離糖のパーセンテージを示す。940μLの試料又は生理食塩水に60μLの約2mg/mLオリゴ糖を添加し、次いで上記記載の分離手法を適用することによって、膜による遊離オリゴ糖の回収を示すためのスパイキング実験を行った。回収率は、一貫して80%を越えた。
【0300】
図8は、複合体CRM−MenA10/90が、CRM−MenA10/0と比較して、遊離糖を放出する傾向の低下を示したことを示している。FS(遊離糖)は、FS%(t)−FS%(0)(ここで、FS%(t)及びFS%(0)は、それぞれ時間t及び0における遊離糖のパーセンテージである)として算出される。
【0301】
CRM197−MenA複合体の安定性を、保存中のホスホモノエステル生成を測定することによって決定した。概略説明すると、複合体の溶液のインキュベーションを、157〜253μg/mLの濃度範囲で、10mMヒスチジン緩衝液(pH7.2)において37℃で行った。42日間に亘る異なる時点において、保存中に生成したホスホモノエステルの量について、前記複合体を解析した。
【0302】
図9は、前述の2種の複合体について、37℃で保存中のホスホモノエステル基の増加を示している。ホスホモノエステルのパーセンテージを、上記の通りに算出した。複合体CRM−MenA10/90が示すホスホモノエステルを生成する傾向は、CRM−MenA10/0と比較して低かった。
【0303】
CRM−MenA複合体の免疫原性
未変性MenA莢膜多糖を認識する抗体を誘発するMenA複合体の能力を評価するために、マウスにおいて免疫原性実験を行った。
【0304】
ワクチン製剤
CRM−MenA10/90及びCRM MenA10/0複合体を、リン酸ナトリウム緩衝液及びAlPO懸濁液と混合して、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)において終濃度が20μg/mLの糖及び0.6mg/mLのAl3+を得た。非アジュバント製剤のために、AlPO懸濁液を、リン酸ナトリウム緩衝液と交換した。得られたワクチンを、免疫化前に1:5に生理食塩水で希釈した。
【0305】
マウスの免疫化
8匹のBalb/cマウスの群(6〜8週齢の雌)を、2μgの糖を含有する0.5mLの結合体化ワクチンによって、皮下で2回又は3回免疫した。2回注射スケジュールの場合、1回目と2回目の投与の間の間隔は、4週間であった。免疫化の前、及び2回目の投与の2週間後に、ブリーディングを行った。3回投与スケジュールの場合、0、14及び28日目にワクチンを与え、ゼロ時、3回目の免疫化の1日前(2回の血清投与後)及び3回目の免疫化の14日後(3回の血清投与後)にブリーディングを行った。
【0306】
免疫原性
特異的抗MenA莢膜多糖総IgG抗体について、及びNeisseria meningitidis血清群Aに対する補体媒介血清殺菌活性(SBA)について、免疫マウス由来の血清を解析した。
【0307】
動物血清分析に適合させた参考文献268の方法に従って、特異的抗MenA莢膜多糖総IgG抗体を本質的に決定した。個別のマウス血清を、滴定曲線によって重複して解析した。抗MenA多糖力価を、Reference Line Assay Methodに基づくソフトウェアを使用して、Mouse Elisa Unit(MEU)/mLとして算出した。幾何平均力価(GMT)を、各免疫化群について算出した。
【0308】
SBAを、各免疫化群について、post II及びpost III(場合により)血清プールにおいて測定した。標準的SBAプロトコールは、0.25%グルコースを添加したMueller Hinton Brothにおける試験菌株(MenA F8238)の接種材料に基づくものであった。細菌培養物のインキュベーションを、5%COの存在下で37℃で行い、細菌が指数増殖期の初期に達した時(約0.220〜0.240 OD600)、増殖を停止させた。次いで、GBBS緩衝液における1%BSAで細菌を10−4に希釈し、熱不活性血清プール(56℃で30分間)と補体の原料としての25%乳児ウサギ血清との存在下で、5%COで37℃で1時間インキュベートした。次いで,
反応混合物を、Mueller Hintonアガー上で平板培養し、37℃で終夜インキュベートした。殺菌力価を、細菌の50%の死滅を生じさせる相互血清希釈物として表した。
【0309】
表IIは、ELISAで測定される通りのGMT(±95信頼限界)として表される抗MenA莢膜多糖総IgG力価と、CRM−MenA10/90及びCRM−MenA10/0によって誘導されるSBA力価とを示す。両複合体は、殺菌機能活性を有するマウス特異的抗MenA多糖抗体における誘導が可能であった。
【0310】
【表2】

第2の実験において、CRM−MenA10/90のマウスにおける免疫原性を、AlPOのある場合とない場合でテストした。CRM−MenA10/90の免疫原性は、表IIIにおいて確認され、その表は、2回及び3回の免疫化後に誘導される特異的抗MenA IgG抗体力価と、これらの抗体の補体媒介殺菌活性とを示している。前免疫化力価は、陰性(SBA<4)であることが分かった。これらのデータは、アジュバントの存在によって抗体応答が高まることを示唆している。MenAオリゴ糖、CRM197及びAlPOの物理的混合物が免疫原性ではなかったため、複合体において観察される免疫原性は、明らかにタンパク質担体へのオリゴ糖の化学的結合体化の帰結である。
【0311】
【表3】

実施例2
Men A多糖の修飾
MenA多糖の化学修飾
20mgの未変性MenA莢膜多糖(0.072mmol)を、170mg(2.5mmol)のイミダゾール及び1mLのCHCNに添加した。磁気バーで撹拌しながら、163μL(1.59mmol)の無水酢酸を添加し、反応液を21時間55℃でインキュベートした。イミダゾール:無水酢酸のモル比は、2:4であった。Milli−Q水(1:7vol/vol)に対してCentriconセルロース膜(1kDa分画分子量)を使用したダイアフィルトレーションステップを用いて、反応生成物を精製した。材料を、最終的に真空下で乾燥した(SpeedVac)。
【0312】
H及び13C NMRによる化学修飾の確認
アセチル化度を定めるために、修飾MenA莢膜多糖の完全な構造的特性評価を、H及び13C NMR分光法によって行った。
【0313】
糖鎖のO−アセチル化のレベルを定量するために、定量的NMR解析を使用した。H(N−アセチル−マンノサミン残基の位置C−1のプロトン)と比較して、H3OAcピーク(C−3でO−アセチル化されたN−アセチル−マンノサミン残基の位置C−2のプロトン)、H4OAcピーク(C−4でO−アセチル化されたN−アセチル−マンノサミン残基の位置C−2のプロトン)及びHdeOAcピーク(O−アセチル化されないN−アセチルマンノサミン残基の位置C−2のプロトン)の積分によって、O−アセチル化のパーセンテージを推定した。H3OAcピーク積分及びH4OAcピーク積分の合計によって総O−アセチル化レベルを得た。
【0314】
%O−アセチル化=[H3OAc+H4OAc]/[HOAc+HdeOAc
更に、H(N−アセチル−マンノサミン残基の位置C−1のプロトン)と比較して、H3OAc/H4OAcピーク(C−3でO−アセチル化されたN−アセチル−マンノサミン残基の位置C−3のプロトン及びC−4でO−アセチル化されたN−アセチル−マンノサミン残基の位置C−4のプロトン)の積分によって、O−アセチル化パーセンテージを推定した。
【0315】
%O−アセチル化=[H3OAc/H4OAc]/[HOAc+HdeOAc
MenA多糖類の安定性
上記のように、10mMヒスチジン緩衝液(pH7.2)において、37℃で42日間、未変性多糖及び対応するオリゴ糖と比較して、完全にアセチル化された修飾MenA莢膜多糖の安定性を評価するために、31P NMR解析を使用した。
【0316】
完全にO−アセチル化された修飾MenA多糖類は、未変性莢膜多糖及び対応するオリゴ糖よりもはるかに安定的であった。
【0317】
【表4】

これらの結果から、本発明によるブロック基によってN−アセチルマンノサミンの4位及び3位でヒドロキシル基をブロック化することによって、MenAオリゴ糖の安定性を高めることができることが確認される。
【0318】
本発明を単なる例によって記載したが、本発明の適用範囲内及び趣旨の範囲内にとどまる限り、変更をなすことが可能であるということが理解されよう。
【0319】
参考文献(これらの内容は、参考として本明細書に援用される)
【0320】
【化19−2】

【0321】
【化19−3】

【0322】
【化19−4】

【0323】
【化19−5】

【0324】
【化19−6】

【0325】
【化19−7】

【0326】
【化19−8】

【0327】
【化19−9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する未変性莢膜糖の単糖単位の内の少なくとも1つにヒドロキシル基の位置のブロック基を含む修飾莢膜糖であって、該ブロック基が式(Ia)又は(Ib):
−O−X−Y (Ia) −O−R (Ib)
(式中、
Xは、C(O)、S(O)又はSOであり;
Yは、NR又はRであり;
は、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基及びアミン基から独立して選択される1、2又は3個の基で置換されるC1−6アルキル基であり;
は、H又はC1−6アルキル基であり;
は、C1−6アルキル基である)である、修飾莢膜糖。
【請求項2】
前記ブロック基が式(Ia)である、請求項1に記載の修飾莢膜糖。
【請求項3】
XがC(O)である、請求項2に記載の修飾莢膜糖。
【請求項4】
YがNRである、請求項2又は請求項3に記載の修飾莢膜糖。
【請求項5】
がHである、請求項4に記載の修飾莢膜糖。
【請求項6】
が、1、2又は3個のヒドロキシル基で置換される、請求項4又は請求項5に記載の修飾莢膜糖。
【請求項7】
が単一の基によって置換され、この置換がC1−6アルキル鎖の遠位端である、請求項4〜6のいずれか1項に記載の修飾莢膜糖。
【請求項8】
が2個のビシナルである基によって置換される、請求項4〜6のいずれか1項に記載の修飾莢膜糖。
【請求項9】
前記糖が、a)少なくとも1個のブロック基(ここでRは単一の基によって置換され、この置換はC1−6アルキル鎖の遠位端である);及びb)少なくとも1個のブロック基(ここでRは、2個のビシナルである基によって置換される)を含む、請求項4〜8のいずれか1項に記載の修飾莢膜糖。
【請求項10】
が単一の基で置換されるブロック基の、Rが2個のビシナルである基によって置換されるブロック基に対する比が90:10である、請求項9に記載の修飾莢膜糖。
【請求項11】
YがRである、請求項2又は請求項3に記載の修飾莢膜糖。
【請求項12】
がCHである、請求項11に記載の修飾莢膜糖。
【請求項13】
前記糖の単糖単位の少なくとも10%がブロック基を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の修飾莢膜糖。
【請求項14】
前記糖の全ての単糖単位がブロック基を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の修飾莢膜糖。
【請求項15】
前記対応する未変性莢膜糖が、ホスホジエステル結合によって連結される単糖単位を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の修飾莢膜糖。
【請求項16】
前記対応する未変性莢膜糖がNeisseria meningitidis血清群A糖である、請求項15に記載の修飾莢膜糖。
【請求項17】
前記ブロック基が、前記対応するNeisseria meningitidis血清群A糖の4位及び/又は3位のいずれかにある、請求項16に記載の修飾莢膜糖。
【請求項18】
前記ブロック基が、前記対応するNeisseria meningitidis血清群A糖の4位のいずれかにある、請求項17に記載の修飾莢膜糖。
【請求項19】
前記修飾莢膜糖がオリゴ糖である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の修飾莢膜糖。
【請求項20】
前記修飾糖が、末端アノマーヒドロキシル基又は末端アノマーヒドロキシル基から誘導されるアミノ基を含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の修飾莢膜糖。
【請求項21】
前記対応する未変性莢膜糖の2個のビシナルであるヒドロキシル基がブロック基を含有しない、前記修飾莢膜糖の少なくとも1つの単糖単位が存在する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の修飾莢膜糖。
【請求項22】
前記糖の単糖単位の内の少なくとも1つが、Rが2個のビシナルであるヒドロキシル基によって置換されるブロック基を含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の修飾莢膜糖。
【請求項23】
式:
【化20】

(式中、
Tは式(A)又は(B):
【化21】

であり;
nは、1から100までの整数であり;
各Z基は、OH、OAc又は請求項1〜8又は11〜12で定義される通りのブロック基から独立して選択され;及び
各Q基は、OH、OAc又は請求項1〜8又は11〜12で定義される通りのブロック基から独立して選択され;
Vは、−NH、−NHE、−NE、W又は−O−Dから選択され、ここでE、E及びEは、同一又は異なっていてよい窒素保護基であり、及びDは、酸素保護基であり;
Wは、−OH又は請求項1〜8又は11〜12のいずれか1項で定義される通りのブロック基から選択され;
は、−OH又は請求項1〜8又は11〜12のいずれか1項で定義される通りのブロック基から選択され;
は、−OH又は請求項1〜8又は11〜12のいずれか1項で定義される通りのブロック基から選択され;
及び、Z基の少なくとも1個及び/又はQ基の少なくとも1個が、請求項1〜8又は11〜12で定義される通りのブロック基である)の糖。
【請求項24】
Z基の少なくとも10%がブロック基である、請求項23に記載の糖。
【請求項25】
nが15〜25の整数である、請求項23又は請求項24に記載の糖。
【請求項26】
Q基の少なくとも1%がブロック基である、請求項23〜25のいずれか1項に記載の糖。
【請求項27】
(a)単糖単位上に少なくとも1個のヒドロキシル基を有する莢膜糖を提供するステップ;及び
(b)該少なくとも1個のヒドロキシル基を、請求項1〜8又は11〜12で定義される通りのブロック基に変換するステップ、を含む、莢膜糖を修飾するためのプロセス。
【請求項28】
前記ブロック基が−OC(O)NRであり、ステップ(b)が、
(b1)前記莢膜糖を有機溶媒中の二価性試薬と反応させるステップ;及び
(b2)ステップ(b1)の生成物を式(I):
HNR (I)
(式中、R及びRは、請求項1〜8のいずれかで定義される通りである)のアミノ化合物と反応させるステップ、を含む、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記ブロック基が−OC(O)Rであり、ステップ(b)が、
(b1)イミダゾール触媒の存在下で、前記莢膜糖を[(RC(O)]Oと反応させるステップを含む、請求項27に記載のプロセス。
【請求項30】
ステップ(a)における前記莢膜糖が莢膜オリゴ糖である、請求項28又は請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
前記莢膜オリゴ糖類が、該対応する未変性莢膜多糖の解重合及びサイジングによって取得可能である、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
ステップ(a)における前記莢膜糖類が未変性莢膜多糖であり、前記プロセスが、ステップ(b)の生成物がサイジングされ、それによって修飾莢膜オリゴ糖を提供するステップ(c)を更に含む、請求項30に記載のプロセス。
【請求項33】
(a)未変性Neisseria meningitidis血清群A多糖を提供するステップ;
(b)該多糖の解重合及びサイジングを行ってオリゴ糖を提供するステップ;及び
(c)該オリゴ糖の少なくとも1個のヒドロキシル基を、請求項27〜29のいずれか1項に記載のブロック基に変換するステップ、を含む、Neisseria meningitidis血清群A多糖を修飾するためのプロセス。
【請求項34】
(a)未変性Neisseria meningitidis血清群A多糖を提供するステップ;
(b)該多糖の少なくとも1個のヒドロキシル基を、請求項27〜29のいずれか1項に記載のブロック基に変換するステップ;
(c)得られた多糖の解重合及びサイジングを行うステップ、を含む、Neisseria meningitidis血清群A多糖を修飾するためのプロセス。
【請求項35】
2個以上の単糖単位の間にグリコシド結合を形成することを含む全体的な合成プロセスである、請求項1〜26に記載の修飾莢膜糖を調製するためのプロセス。
【請求項36】
請求項27〜35のいずれかに記載のプロセスによって取得可能な又は得られた修飾莢膜糖。
【請求項37】
請求項1〜26又は36のいずれか1項に記載の修飾糖の糖−タンパク質複合体。
【請求項38】
前記タンパク質が細菌毒素又は細菌トキソイドである、請求項37に記載の複合体。
【請求項39】
前記細菌毒素又は細菌トキソイドがジフテリアトキシン又はジフテリアトキソイドである、請求項38に記載の複合体。
【請求項40】
前記細菌毒素又は細菌トキソイドがCRM197である、請求項39に記載の複合体。
【請求項41】
(c)請求項20に記載の修飾莢膜糖を提供するステップ;
(d)末端アノマーヒドロキシル基又は末端アノマーヒドロキシル基から誘導されるアミノ基を介してタンパク質に該修飾莢膜糖を結合体化するステップ、を含む、糖−タンパク質複合体を作製するためのプロセス。
【請求項42】
(a)請求項21に記載の修飾莢膜糖を提供するステップ;
(b)酸化開裂によってビシナルであるヒドロキシル基の対の内の少なくとも1つをアルデヒド基に変換するステップ;及び
(c)還元的アミノ化によって該修飾莢膜糖をタンパク質に連結するステップ、を含む、糖−タンパク質複合体を作製するためのプロセス。
【請求項43】
(a)請求項22に記載の修飾莢膜糖を提供するステップ;
(b)酸化開裂によってビシナルであるヒドロキシル基の対の内の少なくとも1つをアルデヒド基に変換するステップ;及び
(c)還元的アミノ化によって該修飾莢膜糖をタンパク質に連結するステップ、を含む、糖−タンパク質複合体を作製するためのプロセス。
【請求項44】
前記ブロック基内に存在するビシナルであるヒドロキシル基の全てがステップ(b)においてアルデヒド基に変換される、請求項43に記載のプロセス。
【請求項45】
酸化開裂のための条件が、ステップ(b)においてブロック基内に存在するある比率のビシナルであるヒドロキシル基だけがアルデヒド基に変換されるように選択される、請求項43に記載のプロセス。
【請求項46】
前記タンパク質が、請求項38〜40のいずれか1項で定義される通りである、請求項41〜45のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項47】
請求項41〜46のいずれかに記載のプロセスによって取得可能な又は得られた修飾糖の糖−タンパク質複合体。
【請求項48】

【化22】

(式中、
Tは式(A)又は(B):
【化23】

であり;
nは、1から100までの整数であり;
各Z基は、OH又は請求項1〜8又は11〜12で定義される通りのブロック基から独立して選択され;及び
各Q基は、OH又は請求項1〜8又は11〜12で定義される通りのブロック基から独立して選択され;
Wは、OH又は請求項1〜8又は11〜12で定義される通りのブロック基から選択され;
Lは、O、NH、NE、S又はSeであり;
ここでLの遊離共有結合は、タンパク質担体に結合し;
及び該タンパク質担体は、請求項38〜40のいずれか1項に定義される通りであり;
及びZ基の内の少なくとも1つ及び/又はQ基の内の少なくとも1つは、請求項1〜8又は11〜12で定義される通りのブロック基である)の糖部分を含む分子。
【請求項49】

【化24】

(式中、
Tは、式(A)又は(B):
【化25】

であり;
n、Z、Q、W、W及びVは、請求項23で定義される通りであり、Z基の内の少なくとも1つ及び/又はQ基の内の少なくとも1つは式(IIa)又は(IIb):
−O−X−Y' (IIa) −O−R (IIb)
であり、
ここで
Xは、C(O)、S(O)又はSOであり;
Y’は、NRであり;
は、H又はC1−6アルキル基であり;及び
は、−C1−4アルキレン−CH(O)又は−C1−5アルキレン−NH−であり、ここで−NH−基はタンパク質担体の一部であり;
及び該タンパク質担体は、請求項38〜40のいずれか1項で定義されるタンパク質である)の糖を含む分子。
【請求項50】
(a)請求項1〜26又は36のいずれか1項に記載の修飾糖及び/又は請求項37〜40又は47のいずれか1項に記載の糖−タンパク質複合体及び/又は請求項48又は49に記載の分子と、(b)薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項51】
髄膜炎菌の血清群C、W135及びYの内の1種以上に由来する糖抗原を更に含み、該糖が、場合によりオリゴ糖であり、場合により担体タンパク質に結合体化する、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
ワクチンアジュバントを更に含む、請求項50又は請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記アジュバントがリン酸アルミニウムである、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
髄膜炎菌に起因する疾患に対するワクチンである、請求項50〜53のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項55】
哺乳類に対して請求項50〜54のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、該哺乳類における抗体応答を惹起するための方法。
【請求項56】
医薬として使用するための、請求項1〜26又は36のいずれか1項に記載の修飾糖;請求項37〜40又は47のいずれか1項に記載の複合体;又は請求項48又は49に記載の分子。
【請求項57】
1種以上の莢膜形成細菌に起因する疾患の予防又は治療のための医薬の製造における、請求項1〜26又は36のいずれか1項に記載の修飾多糖、又は請求項37〜40又は47のいずれか1項に記載の複合体、又は請求項48又は49に記載の分子の使用。
【請求項58】
前記疾患が細菌性髄膜炎である、請求項57に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−515718(P2010−515718A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545256(P2009−545256)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001116
【国際公開番号】WO2008/084411
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】