説明

個人認証装置及び個人認証方法

【課題】手書きサインによる個人認証方式において、本人のなりすましを抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】個人認証装置は、手書きサイン入力を受け付ける入力部と、入力部において手書きサイン入力を受け付ける際に、一定のタイミングを利用者に通知するタイミング通知部と、入力部から入力される手書きサインに基づき、手書きサインの内容を示すサイン情報と手書きサインが入力される際の経過時刻を示す入力時刻情報とを含む入力認証情報を生成する入力認証情報生成部と、入力認証情報と、予め登録されている登録手書きサインを示す登録サイン情報と登録手書きサインが入力される際の経過時刻を示す登録時刻情報とを含む登録認証情報と、に基づいて個人認証を実行する認証実行部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人認証技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、個人情報や機密情報を扱う装置(パーソナルコンピュータやプリンタ等)において、セキュリティを確保するために個人認証が行われている。この個人認証の方式として、利用者がタッチパネルから手書きサインを入力し、かかる手書きサインと予め登録されている手書きサインとを比較して認証を行う方式が提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−156967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような手書きサインによる個人認証方式では、悪意者によってサインの内容(文字や記号等)が盗まれてしまうと、このサインの内容がタッチパネルから入力されて、簡単に本人になりすまされてしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、手書きサインによる個人認証方式において、本人のなりすましを抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の個人認証装置は、手書きサイン入力を受け付ける入力部と、前記入力部において手書きサイン入力を受け付ける際に、一定のタイミングを利用者に通知するタイミング通知部と、前記入力部から入力される手書きサインに基づき、前記手書きサインの内容を示す入力サイン情報と、前記手書きサインが入力される際の経過時刻を示す入力時刻情報と、を含む入力認証情報を生成する入力認証情報生成部と、前記入力認証情報と、予め登録されている登録手書きサインを示す登録サイン情報と前記登録手書きサインが入力される際の経過時刻を示す登録時刻情報とを含む登録認証情報と、に基づいて個人認証を実行する認証実行部と、を備えることを要旨とする。
【0007】
本発明の個人認証装置は、登録サイン情報と登録時刻情報とを含む登録認証情報と、入力サイン情報と入力時刻情報とを含む入力認証情報と、に基づいて個人認証を実行するので、サインの内容と共に、サインが入力される際の経過時刻(サインの入力速度)も個人認証において考慮することができ、仮にサインの内容が盗まれたとしても、本人のなりすましを抑制することができる。また、本発明の個人認証装置は、手書きサイン入力を受け付ける際に一定のタイミングを利用者に通知するので、利用者は、サイン入力時において、通知された一定のタイミングに従ってサイン入力を調整して、登録時刻情報の示す経過時刻(サイン入力速度)を正確に再現することができる。
【0008】
上記個人認証装置は、さらに、音声出力部を備え、前記タイミング通知部は、前記音声出力部を用いて、前記一定のタイミングを示す音声を出力することで、前記一定のタイミングを利用者に通知するようにしてもよい。
【0009】
このようにすることで、利用者は、音声出力部から出力される一定のタイミングを示す音声を聞きながらサインを入力することができるので、サイン入力時において、入力速度を調整して、登録時刻情報の示す経過時刻(サイン入力速度)を正確に再現することができる。
【0010】
上記個人認証装置は、さらに、表示部を備え、前記タイミング通知部は、前記表示部を用いて、前記表示部における表示内容を前記一定のタイミングで変化させることにより、前記一定のタイミングを利用者に通知するようにしてもよい。
【0011】
このようにすることで、利用者は、一定のタイミングで変化する表示部の表示内容を見ながらサインを入力することができるので、サイン入力時において、入力速度を調整して、登録時刻情報の示す経過時刻(サイン入力速度)を正確に再現することができる。
【0012】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、個人認証方法や、個人認証方法または個人認証装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1の実施例:
B.第2の実施例:
C.変形例:
【0014】
A.第1の実施例:
図1は、本発明の一実施例としての個人認証装置を適用したプリンタ100の外観図である。このプリンタ100は、感圧式のタッチパネル36を備えており、ペン型の入力装置(スライラスペン)であるタッチペンTPを用いた各種入力を受け付ける。プリンタ100では、メモリカードMCに記憶されている画像等を印刷する際に、個人認証が行われる。そして、この個人認証では、タッチペンTPを用いてタッチパネル36に手書き入力されたサインに基づいて認証が実行される。なお、後述するように、サイン入力時にプリンタ100から所定の音声が出力される。
【0015】
図2は、図1に示すプリンタ100の内部構成を示すブロック図である。プリンタ100は、前述のタッチパネル36(図1)及びタッチペンTP(図1)の他に、制御回路20と、メモリカードスロット32と、操作パネル34と、スピーカ38と、プリンタエンジン40と、を備えている。プリンタエンジン40は、インクカートリッジを搭載したキャリッジ(図示省略)や、このキャリッジを駆動するモータなどを備えており、実際に印刷を実行する機構である。
【0016】
制御回路20は、CPU22と、メモリ24と、を備えている。メモリ24には、プリンタ100の動作を制御するための制御プログラム(図示省略)が格納されている。そして、CPU22は、この制御プログラムを実行することにより、認証実行部22aとして機能すると共に、サイン登録部22b,タッチパネル制御部22c,音声制御部22dとして、それぞれ機能することとなる。なお、サイン登録部22bが請求項におけるタイミング通知部及び入力認証情報生成部に相当し、また、音声制御部22d及びスピーカ38が請求項における音声出力部に、タッチパネル制御部22c及びタッチパネル36が請求項における表示部に、それぞれ相当する。
【0017】
なお、メモリ24には、制御プログラムの他に、個人認証の際の用いられる登録認証情報26が格納されている。この登録認証情報26は、後述するサイン登録処理において生成されてメモリ24に格納される。登録認証情報26及びサイン登録処理の詳細については後ほど説明する。
【0018】
図3は、プリンタ100において実行される個人認証処理の手順を示すフローチャートである。ユーザがタッチパネル36(図2)に表示された初期メニュー画面(図示省略)から画像印刷メニューを選択すると、ユーザ名を入力する画面(図示省略)がタッチパネル36に表示される。そして、ユーザがユーザ名を入力すると、プリンタ100において個人認証処理が開始される。なお、このユーザは、予めサイン登録処理を行っており、メモリ24には登録認証情報26が格納されているものとする。
【0019】
ステップS205(図3)では、サイン登録部22b(図2)は、タッチパネル制御部22cを介してタッチパネル36にサイン入力画面を表示させる。
【0020】
図4は、ステップS205においてタッチパネル36に表示されるサイン入力画面を示す説明図である。このサイン入力画面W1は、サイン入力部AR1と、タイミング表示部AR2と、開始ボタンB1と、完了ボタンB2と、を備えている。タイミング表示部AR2は、6つの点滅部WBを備えている。これらの6つの点滅部WBの点灯状態は、所定のタイミングで変化するようにサイン登録部22b(図2)によって制御される。なお、本実施例では、前述の所定のタイミングは1秒間隔であるが、任意の時間間隔とすることができる。ユーザは、開始ボタンB1を押下した後、タッチペンTPを用いてサイン入力部AR1にサインを入力することができる。
【0021】
ステップS205(図3)の後、サイン登録部22b(図2)は、サイン入力画面W1(図4)において開始ボタンB1が押下されるまで待機している(ステップS210)。そして、開始ボタンB1が押下されると、サイン登録部22bは、タッチパネル制御部22cを介して所定のタイミング(開始ボタンB1押下後1秒間隔)で点滅部WBの点灯状態を変化させる(タイミング表示)。それと共に、サイン登録部22bは、音声制御部22dを介して所定のタイミング(1秒間隔)のメトロノーム音をスピーカ38から出力しながら(タイミング音出力)、入力認証情報を記録する(ステップS215)。なお、入力認証情報の詳細については後述する。
【0022】
図5(A)は、開始ボタンB1が押されてから2秒後のサイン入力画面W1を示し、図5(B)は、開始ボタンB1が押されてから6秒後のサイン入力画面W1を示す。タイミング表示部AR2では、開始ボタンB1が押された後、1秒ごとに左から次々と点滅部WBが点灯していく。例えば、開始ボタンB1が押されてから2秒後には、図5(A)に示すように、タイミング表示部AR2において左から2つの点滅部WBが点灯しており、サインの一部がサイン入力部AR1に入力されている。なお、ユーザが入力したサインは、サイン入力部AR1に表示されている。そして、開始ボタンB1が押されてから6秒後には、図5(B)に示すように、タイミング表示部AR2において、全ての点滅部WBが点灯しており、サインが全てサイン入力部AR1に入力されている。こうして、ユーザは、点滅部WBの点灯状態の変化を見ながら、6秒間でサインの全てを入力するように入力速度を調整してサインを入力することができる。
【0023】
なお、点滅部WBが6つ全て点灯した後には、再び最も左の点滅部WBのみが点灯している状態に戻り、以下、1秒ごとに1つずつ点滅部WBが点灯することを繰り返す。従って、ユーザは、点滅部WBの点灯状態の変化を見ることで、6秒に限らず任意の時間でサイン入力を完了するように入力速度を調整しながらサインを入力することができる。また、スピーカ38(図2)からは1秒間隔のメトロノーム音が出力されるので、ユーザは、かかるメトロノーム音を聞くことでも、任意の時間でサイン入力を完了するように入力速度を調整しながらサインを入力することができる。そして、ユーザはサインの全てを入力し終わったら開始ボタンB1(図5(B))を押下する。
【0024】
ステップS215(図3)の後、サイン登録部22bは、サイン入力画面W1(図4)において完了ボタンB2が押下されるまで待機している(ステップS220)。そして、完了ボタンB2が押下されると、認証実行部22aは、ステップS215で記録された入力認証情報と、予めメモリ24に格納されている登録認証情報26(図2)とを比較して、個人認証を実行する(ステップS225)。
【0025】
図6(A)は、ステップS215において記録される入力認証情報を示す説明図である。入力認証情報は、所定の時刻を示す情報と、各所定時刻におけるサイン入力部AR1(図4)上のタッチペンTPの接触点の座標と、から成る。ここで、「所定の時刻」とは、開始ボタンB1(図4)の押下後に最初にタッチペンTPの接触点を検出した時点(時刻0)を基準として、この時刻0からの所定時間間隔ごとの時刻をいう。本実施例では、この「所定の時間間隔」は0.1秒とするが、任意の時間間隔とすることができる。なお、タッチペンTPの先端が大きく、複数の画素が接触点に該当する場合には、これらの複数の画素の座標の中心(重心)座標をタッチペンTPの接触点の座標としてもよい。
【0026】
図6の例では、時刻0には、(X,Y)=(8,65)にタッチペンTPの接触点があり、時刻1(時刻0から0.1秒後)には(10,62)にタッチペンTPの接触点があったことが入力認証情報として記録されている。時刻10,11には、座標(*,*)が記録されているが、これは、これらの時刻10,11においてタッチペンTPの接触点が検出されなかったことを示している。なお、登録認証情報26(図2)も、入力認証情報と同様に、時刻0を基準とした0.1秒ごとの時刻におけるタッチペンTPの接触点の座標から成る。
【0027】
図6(B)は、入力認証情報(X成分)の一例を表したグラフと登録認証情報(X成分)の一例を表したグラフとを示す説明図である。図6(B)において横軸は時刻を示し、縦軸はX座標を示す。また、黒丸(●)は入力認証情報(X成分)を示し、黒四角(■)は登録認証情報(X成分)を示す。入力認証情報のグラフと登録認証情報のグラフとを比較すると、グラフ全体としてほぼ同じような形状を示しており、また、時刻方向にはずれが生じておらず、X成分方向においてずれが生じている。グラフ全体の形状が近似していることは、同じ内容のサインが入力されてことを示している。また、時刻方向にずれが生じていないことは、サインを同程度の速度で入力していることを示している。また、各時刻においてX成分のずれが生じていることは、サイン入力部AR1における入力位置にずれがあることを示している。
【0028】
ステップS225(図3)において、認証実行部22a(図2)は、入力認証情報のグラフの形状が登録認証情報のグラフの形状に近似しているか否か(同じ内容のサインが入力されたか否か)、また、時刻方向にずれが生じているか否か(サイン入力速度が同程度であるか否か)を判定する。かかる判定の具体的方法としては、例えば、登録認証情報と入力認証情報とでX成分のずれが各時刻においてほぼ同程度であるか否かを判定するようにしてもよい。なお、サインの入力位置は、同一人物の入力であってもバラツキが生じ得るので、各時刻におけるX成分のずれの大きさ自体は、個人認証において考慮しないものとする。そして、以上の判定をY成分についても同様に実行する。認証実行部22aは、X成分とY成分とのいずれにおいても、入力認証情報のグラフの形状が登録認証情報のグラフの形状に近似しており、かつ、時刻方向にずれが生じていない場合に、個人認証成功と判定する。
【0029】
そして、ステップS225(図3)において個人認証が完了すると個人認証処理は終了する。その後、個人認証が成功の場合には、画像選択メニューがタッチパネル36に表示され、ユーザによって選択された画像がメモリカードMCから読み出されてプリンタエンジン40で印刷が実行される。一方、個人認証が失敗の場合には、画像印刷メニューが終了し、タッチパネル36には初期メニュー画面が表示される。
【0030】
図7は、登録認証情報(X成分)の一例を表したグラフと、悪意者がサイン入力した際の入力認証情報(X成分)の一例を表したグラフとを示す説明図である。横軸及び縦軸は、図6における横軸及び縦軸と同じである。また、黒丸(●)は悪意者がサイン入力した際の入力認証情報(X成分)を示し、黒四角(■)は登録認証情報(X成分)を示す。上述したように、個人認証においては、サイン入力時の入力速度がサイン登録時の入力速度と同程度であるか否かが判断される。それゆえ、ユーザは、なりすましを高い確率で抑制できるように、通常の入力速度とは異なる特殊な入力速度(ストローク)でサインを入力して登録しておくことができる。
【0031】
具体的には、例えば、或るサインについて、通常ではタッチペンTPの動きを止める部分はないところで、敢えてタッチペンの動きを止めて入力して登録することもできる。この場合、例えば、図7に示すように、時刻60〜70の1秒間においてタッチペンTPの動きを敢えて止めると、この期間(時刻60〜70)においてX座標は変化しないこととなる。一方、タッチペンTPの動きを止めてサインが登録されていることを知らない悪意者が、サインの内容を盗んで入力すると、時刻60〜70において、タッチペンTPの動きを止めないでサインを入力することになる。そうすると、図7に示すように、入力認証情報については、時刻60〜70においてX座標の値は変化することとなる。その結果、この期間において登録認証情報と入力認証情報とでグラフの形状が異なることとなり、個人認証は失敗することとなる。なお、ユーザ(本人)は、点滅部WB(図4)の点灯状態の変化やメトロノーム音を頼りに、タッチペンTPの動きを1秒間だけ止めることができ、特殊な入力速度(ストローク)を正確に再現することが可能となる。
【0032】
以上説明したように、個人認証処理では、入力認証情報のグラフの形状が登録認証情報のグラフの形状に近似しているか否かを判定すると共に、時刻方向にずれが生じているか否かを判定している。従って、同じ内容のサインが入力されているか否かを判定するのみならず、そのサインの入力速度が同程度であるか否かも判定することができる。それゆえ、仮にサインの内容が盗まれたとしても、悪意者によるサインの入力速度が本人の入力速度と同程度でない場合には、個人認証を失敗とすることができ、本人のなりすましを抑制することができる。特に、通常のサイン入力速度とは異なる特殊な速度(ストローク)でサインを入力して登録しておくことで、より高い確率でなりすましを抑制することが可能となる。また、プリンタ100では、個人認証処理においてタイミング表示及びタイミング音出力を行う。従って、ユーザは、サイン入力画面W1において点滅部WBの点灯状態を見ながら、或いは、1秒間隔のメトロノーム音を聞きながらサインの入力速度を調整して、サイン登録時の入力速度(ストローク)を正確に再現することができる。
【0033】
図8は、サイン登録処理の手順を示すフローチャートである。ユーザがタッチパネル36(図2)に表示された初期メニュー画面(図示省略)からサイン登録メニューを選択すると、ユーザ名を入力する画面(図示省略)がタッチパネル36に表示される。そして、ユーザがユーザ名を入力すると、プリンタ100においてサイン登録処理が開始される。
【0034】
ステップS305では、サイン登録部22b(図2)は、タッチパネル制御部22cを介してタッチパネル36にサイン入力画面を表示させる。このサイン入力画面は、上述したサイン入力画面W1(図4)と同じである。続いて実行されるステップS310〜S320は、上述した個人認証処理におけるステップS210〜S220と同じである。すなわち、プリンタ100ではタイミング表示及びタイミング音出力が実行され、ユーザはタッチペンTPを用いてサイン入力部AR1(図4)にサインを入力して完了ボタンB2を押下する。
【0035】
ステップS325では、サイン登録部22bは、2回目のサイン入力であるか否かを判定し、1回目の入力であれば、再びサイン入力画面をタッチパネル36に表示する(ステップS330)。なお、この2回目のサイン入力画面では、「もう1度同じサインを入力してください。」とのメッセージも表示される。そして、再びステップS310〜S325が実行される。2回目のサイン入力が完了すると、ステップS335において、認証実行部22aは、1回目のサイン入力時の入力認証情報と2回目のサイン入力時の入力認証情報とを比較し、両入力認証情報の示すサイン(サイン内容及びサイン速度)が一致するか否かを判定する。この判定は、上述したステップS225(図3)における個人認証と同様に、2回目の入力認証情報のグラフの形状が1回目の入力認証情報のグラフの形状に近似しているか否か、また、時刻方向にずれが生じているか否かを判定することにより行われる。
【0036】
1回目と2回目とで入力認証情報の示すサインが一致すると判定された場合には、サイン登録部22bは、各時刻において、サイン入力1回目の各接触点の座標と、サイン入力2回目の各接触点の座標との中間座標(平均サイン情報)を算出する(ステップS340)。そして、この平均サイン情報と、各時刻を示す情報とを、登録認証情報としてメモリ24(図2)に格納する(ステップS345)。
【0037】
以上のように、サイン登録処理では、2回連続して同じサイン内容が同じサイン速度で入力された場合にサインを登録する(登録認証情報をメモリ24に格納する)ので、特殊な入力速度(ストローク)でサインを入力して、本人自身が再現不可能なサインが登録されることを抑制することができる。また、サイン登録処理においてもタイミング表示及びタイミング音出力が実行されるので、ユーザは、所望する入力速度(ストローク)となるように調整しながら登録しようとするサインを入力することができる。
【0038】
B.第2の実施例:
図9は、第2の実施例におけるサイン入力画面の変化を示す説明図である。このサイン入力画面W1aは、タイミング表示部AR2に代えてタイミング表示部AR2aを備えている点が図4に示すサイン入力画面W1と異なり、他の構成は、サイン入力画面W1と同じである。また、本実施例におけるプリンタ100の構成及び個人認証処理の手順は第1の実施例と同じである。
【0039】
タイミング表示部AR2aでは、開始ボタンB1押下後の経過時刻をデジタル時計のごとく表示している。従って、例えば、開始ボタンB1が押下されてから2秒経過後には、真ん中の図に示すように、タイミング表示部AR2aに「00:02」が表示され、6秒経過後には、最下図に示すように、タイミング表示部AR2aに「00:06」が表示される。このような表示方法で所定のタイミング(開始ボタンB1押下後1秒間隔)を表示しても、ユーザは、かかるタイミング表示を見ながらサインの入力速度を調整することができる。
【0040】
C.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0041】
C1.変形例1:
上述した各実施例では、タイミング表示を実現するために、タイミング表示部AR2(図4)において点滅部WBの点灯状態を所定のタイミングで変化させる、或いは、タイミング表示部AR2a(図9)において経過時刻をデジタル時計のごとく表示するようにしていたが、これらの表示方法に限らず任意の表示方法によってタイミング表示を行うようにしてもよい。例えば、サイン入力部AR1の明るさを所定のタイミングで変化させるようにしてもよい。また、タイミング表示を実現するのに、サイン入力画面W1,W1aの一部の表示内容を変化させるのに限らず、プリンタ100が有する他の任意の表示部分において表示内容を変化させるようにしてもよい。例えば、プリンタ100が前面にLED(Light Emitting Diode)を備える構成であれば、かかるLEDを所定のタイミングで点滅させるようにしてタイミング表示を行うようにしてもよい。
【0042】
C2.変形例2:
上述した各実施例では、登録認証情報及び入力認証情報は、所定の時刻を示す情報と、各所定時刻におけるタッチペンTPの接触点の座標と、から成るものであったが、サインが入力される際の経過時刻を示す情報と、サインの内容を示す情報(サイン情報)と、から成るものであれば、任意の情報を登録/入力認証情報とすることができる。例えば、入力されるサインについて文字認識を行い、認識した文字のASCIIコードをサイン情報とし、サイン入力が完了して完了ボタンB2(図4,図9)が押下された時刻のみを所定の時刻を示す情報として、これらの情報を登録/入力認証情報としてもよい。このようにしても、個人認証において、登録認証情報と同じサイン内容が入力されたか否か、及び、サイン入力速度(ストローク)が同程度であるか否かについて判定することができる。
【0043】
C3.変形例3:
上述した各実施例では、個人認証処理及びサイン登録処理において、タイミング表示とタイミング音出力とをいずれも行っていたが、タイミング表示とタイミング音出力とのいずれか一方のみを行うようにしてもよい。このようにしても、ユーザに所定のタイミングを通知することができる。
【0044】
C4.変形例4:
上述した各実施例では、登録認証情報は、メモリ24(図2)に格納されているものとしたが、プリンタ100からアクセス可能な任意の記憶装置に格納するようにしてもよい。例えば、メモリカードMCに画像データと共に格納しておくようにしてもよい。このようにすることで、メモリカードMCの持ち主のみがメモリカードMC内に格納されている画像を印刷可能とすることができ、悪意者にメモリカードMCを盗まれたとしても画像を印刷されないようにすることができる。
【0045】
C5.変形例5:
上述した各実施例では、個人認証処理は、ユーザが初期メニュー画面(図示省略)から画像印刷メニューを選択した場合に実行されるものとしたが、他の任意のタイミングで実行されるようにしてもよい。具体的には、例えば、メモリカードMCに記憶されている画像をタッチパネル36に表示させる前に個人認証処理を実行するようにしてもよい。或いは、プリンタ100のメンテナンスメニューをタッチパネル36に表示させる前に、個人認証処理を実行するようにしてもよい。このようにすることで、個人情報や機密情報等が悪意者に漏洩することを抑制することができる。
【0046】
C6.変形例6:
上述した各実施例では、本発明の個人認証装置を適用した装置はプリンタ100であったが、プリンタに限らず任意の装置に適用することができる。例えば、パーソナルコンピュータや、PDA(Personal Digital Assistants)に適用することで、これら装置へのログイン時の認証等において、本人のなりすましを抑制することができる。また、例えば、スキャナやコピー機等に適用することで、これら装置の利用者を制限し、また、本人のなりすましを抑制することができる。
【0047】
C7.変形例7:
上述した実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例としての個人認証装置を適用したプリンタ100の外観図である。
【図2】図1に示すプリンタ100の内部構成を示すブロック図である。
【図3】プリンタ100において実行される個人認証処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】ステップS205においてタッチパネル36に表示されるサイン入力画面を示す説明図である。
【図5】開始ボタンB1が押下された後のサイン入力画面W1を示す説明図である。
【図6】入力認証情報と登録認証情報とを示す説明図である。
【図7】登録認証情報(X成分)の一例を表したグラフと悪意者がサイン入力した際の入力認証情報(X成分)の一例を表したグラフとを示す説明図である。
【図8】サイン登録処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施例におけるサイン入力画面の変化を示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
20...制御回路
22...CPU
22a...認証実行部
22b...サイン登録部
22c...タッチパネル制御部
22d...音声制御部
22d...タッチパネル制御部
22e...音声制御部
24...メモリ
26...登録認証情報
32...メモリカードスロット
34...操作パネル
36...タッチパネル
38...スピーカ
40...プリンタエンジン
100...プリンタ
AR1...サイン入力部
AR2,AR2a...タイミング表示部
B1...開始ボタン
B2...完了ボタン
W1,W1a...サイン入力画面
WB...点滅部
MC...メモリカード
TP...タッチペン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人認証装置であって、
手書きサイン入力を受け付ける入力部と、
前記入力部において手書きサイン入力を受け付ける際に、一定のタイミングを利用者に通知するタイミング通知部と、
前記入力部から入力される手書きサインに基づき、前記手書きサインの内容を示す入力サイン情報と、前記手書きサインが入力される際の経過時刻を示す入力時刻情報と、を含む入力認証情報を生成する入力認証情報生成部と、
前記入力認証情報と、予め登録されている登録手書きサインを示す登録サイン情報と前記登録手書きサインが入力される際の経過時刻を示す登録時刻情報とを含む登録認証情報と、に基づいて個人認証を実行する認証実行部と、
を備えることを特徴とする個人認証装置。
【請求項2】
請求項1に記載の個人認証装置であって、さらに、
音声出力部を備え、
前記タイミング通知部は、前記音声出力部を用いて、前記一定のタイミングを示す音声を出力することで、前記一定のタイミングを利用者に通知する、
個人認証装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の個人認証装置であって、さらに、
表示部を備え、
前記タイミング通知部は、前記表示部を用いて、前記表示部における表示内容を前記一定のタイミングで変化させることにより、前記一定のタイミングを利用者に通知する、
個人認証装置。
【請求項4】
手書きサイン入力を受け付ける入力部を備えた個人認証装置における個人認証方法であって、
(a)前記入力部において手書きサイン入力を受け付ける工程と、
(b)前記手書きサイン入力受付工程において、一定のタイミングを利用者に通知する工程と、
(c)前記入力部から入力される手書きサインに基づき、前記手書きサインの内容を示す入力サイン情報と、前記手書きサインが入力される際の経過時刻を示す入力時刻情報と、を含む入力認証情報を生成する工程と、
(d)前記入力認証情報と、予め登録されている登録手書きサインを示す登録サイン情報と前記登録手書きサインが入力される際の経過時刻を示す登録時刻情報とを含む登録認証情報と、に基づいて個人認証を実行する工程と、
を備える個人認証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−123390(P2008−123390A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308579(P2006−308579)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】