説明

個別スピンドル駆動装置を有する紡績機または撚糸機

【課題】紡績機または撚糸機において制御電子装置およびエネルギ供給部を構成するための新規の構造コンセプトを提供する。
【解決手段】1つのセクションの複数のスピンドル駆動電子ユニットおよびセクション電子ユニットが共通の導体路板上に配置されており、スピンドル駆動電子ユニットが導体路の形の第2のデータ線を介してセクション電子ユニットと接続されており、セクション電子ユニットは第1の接続インタフェースおよび第1のデータ線を介して機械制御ユニットと接続されており、スピンドル駆動電子ユニットは第2の接続インタフェースおよび第1の給電線を介してスピンドル駆動装置と接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個別スピンドル駆動装置を有する紡績機または撚糸機に関する。この紡績機または撚糸機は、制御技術的に複数のセクションに分割されている複数の作業個所を収容する機枠を有し、各セクションは複数の作業個所を有し、作業個所毎に1つのスピンドルと1つの回転数制御式スピンドル駆動装置とを備えたスピンドルユニットが設けられており、スピンドルユニット毎に1つのスピンドル駆動電子ユニットが設けられている。さらに紡績機または撚糸機は、スピンドルを駆動制御するための1つの機械制御ユニットと、セクション毎に1つ設けられているセクション電子ユニットとを有し、このセクション電子ユニットは第1のデータ線を介して機械制御ユニットと接続されており、それぞれ1つのセクション電子ユニットに複数のスピンドル駆動電子ユニットが第2のデータ線を介して接続されており、スピンドル駆動電子ユニットは所属のセクション電子ユニットを介して機械制御ユニットによって駆動制御される。
【背景技術】
【0002】
個別スピンドル駆動装置を備えた、複数の作業個所を有する紡績機または撚糸機の駆動制御と配線は複雑である。つまり、例えばスピンドルの駆動制御モータを個別に駆動制御しなければならない。そのため各スピンドルはセクション電子装置を介して機械制御部と直接的または間接的に通信することができる固有の紡糸個所用電子装置を必要とする。紡糸個所用電子装置はスピンドル駆動モータと共に共通の1つの構造ユニット内に設けられており、それらはまたスピンドルと共にスピンドルユニットを形成する。この関係において、各スピンドル駆動モータがドライバとも称される所属の駆動電子装置と共に物理的なユニットとして生産、出荷され、繊維機械に取付けられることを考慮しなければならない。スピンドル駆動モータや所属の駆動電子装置のような構成要素は単独では使用することができないので、駆動モータと所属の駆動電子装置は分離不可能な物理的ユニットと見なされる。
【0003】
機械制御部によって個々のスピンドルが直接的に駆動制御される個別スピンドル駆動装置を有する紡績機の従来の構造様式は制御技術的に、さらには配線の手間および実装の手間に関して非常に繁雑で費用がかかることが分かっている。いずれにせよ、大きな紡績機では1600個までものスピンドルを有していることが考えられる。したがって、スピンドルを制御技術的に複数のセクションに統合するコンセプトを発展させることが望ましい。このコンセプトでは、1つのセクションのスピンドル駆動装置のスピンドル駆動電子ユニットがもはや機械制御部と直接的に通信せずに、固有のインテリジェンスを備えたセクション電子装置と通信する。機械制御部は他方ではスピンドルをもはや直接的に駆動制御せずに、上位のセクション電子装置を介して駆動制御する。セクション電子装置は機械制御部から受信した命令に基づき所属のスピンドル駆動装置を制御する。
【0004】
特許文献1には、セクション毎の共通の監視および制御が可能である、複数の紡糸個所を有するリング紡績機用の制御システムが開示されている。動作機能の少なくとも一部を独立して実施するために、1つの紡績個所に1つのスピンドル駆動電子装置が割り当てられている。それぞれが複数の紡糸個所を有するセクションには、スピンドル駆動電子装置の上位の装置であり、且つ固有のインテリジェンスを有するセクション電子装置が割り当てられており、このセクション電子装置もまた上位の階層レベルに設けられている機械制御部と接続されている。セクション電子装置も動作機能の少なくとも一部、例えば断糸検知を独立して実施するために設計されている。
【0005】
このコンセプトは少なくとも紡績機の制御プロシージャを著しく改善しているが、それ自体は有利な制御コンセプトであっても建設的に実施すれば従前通りの重大な欠点を伴う。つまり相応の紡績機の製造、実装および配線に関するコストは依然として非常に高い。
【0006】
セクション電子装置がデータバスを介して機械制御部と接続されており、またスピンドル駆動装置に設けられている紡績個所用電子装置もそれぞれ個別に、またはバスを介してセクション電子装置と結線されていることに起因して配線コストは高くなる。データ線に関する配線コストに加え、電気的なエネルギをスピンドル駆動装置に供給するための配線に関するコストも生じる。さらには、セクション電子装置およびスピンドル駆動装置にも給電線を介して電気的なエネルギを供給しなければならない。電子装置はスピンドル駆動装置とは異なる給電電圧を有するので、付加的に別個の配線も設けなければならない。
【0007】
相応にコストがかかる熟練工によって通常は手作業により処理しなければならない、コストのかかる配線に関する費用の他に、別個のモジュールとして製造されるセクション電子ユニットおよびスピンドル駆動電子ユニットならびにそれらの配線に関する製造コストも捻出しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP-A-0 389 849
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の課題は、紡績機または撚糸機において制御電子装置およびエネルギ供給部を構成するための新規の構造コンセプトを提供することにより、上記の欠点を克服するか、少なくとも大幅に改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、1つのセクションの複数のスピンドル駆動電子ユニットおよびセクション電子ユニットが共通の導体路板上に配置されており、スピンドル駆動電子ユニットが導体路の形の第2のデータ線を介してセクション電子ユニットと接続されており、セクション電子ユニットは第1の接続インタフェースおよび第1のデータ線を介して機械制御ユニットと接続されており、スピンドル駆動電子ユニットは第2の接続インタフェースおよび第1の給電線を介してスピンドル駆動装置と接続されていることにより解決される。
【0011】
紡績機はリング紡績機、ループ紡績機、ポット紡績機またはホッパ紡績機でよい。紡績機または撚糸機を片側式または両側式に構成することができる。両側式とは、機械の横断面において両方の側に鏡面対象的な配置で紡績個所または撚糸個所が配置されていることを意味する。したがって片側式の機械では一方の側にのみ作業個所が配置されている。単独で用いられる「セクション」という概念とは、本明細書において複数の作業個所、すなわち複数の紡績個所または撚糸個所を備えた制御技術的なセクションと解され、このセクションにおける複数のスピンドル駆動電子ユニットは共通のセクション電子ユニットを介して駆動制御ないし管理される。その種のセクションを一方の機械側に限定し、その側に隣接する複数の作業個所を設けることができる。しかしながらセクションが一方の機械側に限定されずに、紡績機または撚糸機の両方の側に配置されており、且つ所属の機械側においてそれぞれ隣接している複数の紡績個所または撚糸個所を有することも考えられる。
【0012】
1つのセクションは一方の機械側に例えば24の作業個所、すなわち紡糸個所を有することができる。本発明の有利な実施形態において、セクションはこのセクションに割り当てられている全ての作業個所またはスピンドル駆動装置のスピンドル駆動電子ユニットならびにセクション電子ユニットを備えた導体路板を有する。
【0013】
導体カードまたはボードとも称される導体路板とは絶縁性材料、殊にプラスチックからなる支持体であり、この支持体上に固定または固着されており導体路とも称される導電性の接続体と解される。導体路は導電性の層の形で支持体上に設けられている。通常の場合、この導電性の材料から成る層は比較的薄い。導体路はエッチングプロセスまたはプリントプロセスによって製造することができる。
【0014】
導体路板はセクション電子ユニットおよびスピンドル駆動電子ユニットならびにこれらの電子モジュールの電気的な接続部(データ線または信号線)を、信号交換またはデータ交換用の導体路を介して相互に機械的に固定するために使用される。本発明の実施形態においては、セクション電子ユニットとスピンドル駆動電子ユニットとの間に導体路としてのデータ接続線または信号接続線のみが設けられているのではなく、セクション電子ユニットおよび/またはスピンドル駆動電子ユニットに電気的なエネルギを供給する給電線も導体路として支持体上に設けられている。さらに有利には、スピンドル駆動装置に最終的に電気的なエネルギを供給するスピンドル駆動電子ユニットの出力段への給電線も導体路として支持体上に設けられている。電子モジュールの機械的な固定を例えばピンのような導電性のコネクタおよび/またはハンダ接続を介して行うことができる。
【0015】
機械制御部は有利には、紡績機を制御するメインプロセッサ(CPU)を備えた中央制御ユニット、例えばメモリプログラム可能な制御部(SPS)を有する。異なる階層レベルが既知である本発明による制御コンセプトとの関係において機械制御部はマスタと見なされる。機械制御部は有利には少なくとも動作機能の一部に関して、有利には該当するセクション電子ユニットおよび所属のスピンドル駆動電子ユニットを介して作業個所に介入制御するために構成されている。つまり、機械の起動動作(例えば紡績開始プロセス)および機械の計画的な停止動作(紡績終了プロセス)が機械制御部によって制御される。
【0016】
セクション電子ユニットは、有利には制御電子装置によって動作機能を独立して実施することができるコントローラを有する。コントローラは集積回路を備えた電子ユニットである。この電子ユニットは種々のプロセスの制御、調整または切り替えを実施する。さらにコントローラは機械制御部のCPUのタスク処理も支援することができる。コントローラはまた機械制御部とスピンドル駆動電子装置との間のデータトラフィックの制御に使用される。コントローラは有利にはプロセッサ、すなわち計算ユニットを有する。コントローラは有利にはマイクロコントローラである。コントローラとマイクロプロセッサの境界は明確でない場合もあるので、コントローラの概念にはマイクロプロセッサも含まれるものとする。コントローラはCPLD(Complex Programmable Logic Device)であってもよい。しかしながらCPLDを用いる場合にはセクション電子装置のレベルにおける機能が非常に制限されているので、CPLDが対象になることは殆どない。
【0017】
コントローラは有利には光結合器を介して通信インタフェースと接続されている。光結合器は光電式の接続モジュールであり、電気信号の伝送と同時に入力回路と出力回路との間の導電分離(電気的な絶縁)に使用される。
【0018】
スピンドル駆動電子ユニットは所属のスピンドル駆動モータを直接的に駆動制御するために使用される。スピンドル駆動電子ユニットはコントローラを有し、このコントローラは動作機能、例えば出力段の制御またはスイッチング、スピンドル駆動装置の電流消費量または電力消費量の測定または外部の表示部またはハンドスイッチもしくは手持式スイッチング装置の管理などを独立して実施する。コントローラは集積回路を備えた電子ユニットである。この電子ユニットは種々のプロセスの制御、調整または切り替えを実施する。コントローラは有利にはプロセッサ、すなわち計算ユニットを有する。コントローラは有利にはマイクロコントローラである。コントローラとマイクロプロセッサの境界は明確でない場合もあるので、コントローラの概念にはマイクロプロセッサも含まれるものとする。コントローラはCPLD(Complex Programmable Logic Device)であってもよい。しかしながらCPLDを用いた場合には機能がスピンドル駆動電子装置のレベルに非常に限定されるので、CPLDが対象になることは殆どない。
【0019】
さらに、スピンドル駆動電子ユニットは出力ドライバまたは電力段とも称される出力段を有し、この出力段を介してスピンドル駆動装置への給電が行われる。出力段は、負荷(スピンドル駆動装置)を流れる電流による制御部の直接的な負荷を回避し、電圧レベルを適合させるために制御部(コントローラ)と負荷との間に接続されている構成素子である。このために負荷の動作電圧が出力ドライバに印加され、また制御部は予測可能な電流が流れる入力側においてその動作電圧を出力ドライバの出力側に導通させる。したがって出力段を介して所属のスピンドル駆動モータの給電が切り替えられる。
【0020】
複数のスピンドル駆動電子ユニットを物理的に共通の支持体、例えばチップ上に設けることができるが、各スピンドル駆動電子ユニットは固有のコントローラならびに固有の出力段および固有のインタフェースを有する。
【0021】
本発明の有利な実施形態によれば、各作業個所に割り当てられているスピンドル駆動装置を、所属のスピンドル駆動電子ユニットまたは上位のセクション電子ユニットを介して電子的に遮断することができ、好適にはハンドスイッチを用いて遮断することもできる。しかしながら基本的には、各紡績機または撚糸機をマスタによって遮断することもでき、このことは所定の障害時に殊に好適である。
【0022】
作業個所を独立して停止または起動させるために、スピンドル駆動電子ユニットはインタフェース電子装置、殊にディジタルI/O(入力/出力)インタフェースを有し、このインタフェースを介して例えばスピンドル駆動装置を手動でオン・オフするためのハンドスイッチをその場で、すなわち直接的に紡績個所に直接的に接続することができる。好適には、相応のオン/オフ入力機能を備えたハンドスイッチは紡績個所、例えばスピンドルの近傍にあるスピンドルレールに配置されている。このようにして、紡績作業を行う人間が例えば断糸を直した後にその場で、手動で再びスピンドルをスイッチオンすることができるか、障害が識別された際にはスピンドルを停止することができる。すなわちハンドスイッチを介するスピンドル駆動装置の駆動制御は機械制御部から独立して行われ、またスピンドル駆動電子ユニットを介して、および/または、必要に応じてセクション電子ユニットを介して実施される。
【0023】
さらには、スピンドル駆動電子ユニットのインタフェース電子装置を表示部(作業個所表示部)、殊に障害表示部に接続するためにも使用することができる。表示部、例えば光学的な表示部(照明装置)は例えば断糸、停止したスピンドル、緩慢に動作するスピンドルまたは作業個所におけるその他の障害を表示することができる。表示部を同様に機械制御部から独立して、スピンドル駆動電子ユニットを介して、および/または、必要に応じてセクション電子ユニットを介して制御することができる。さらには、これに付加的にまたは択一的に、セクション電子ユニットと接続されているセクション表示部を設けることができる。このセクション表示部は例えばセクションに割り当てられている作業個所における障害を表示する。セクション表示部は相応にセクションの領域内に配置されている。前述の表示部を機械制御部によって駆動制御することも可能である。
【0024】
さらには、小枠停止装置および/またはストップモーション装置を所属のスピンドル駆動電子ユニットまたはセクション電子ユニットに接続することができる。例えば、障害に起因して作業個所がセクション電子ユニットまたはスピンドル駆動電子ユニットによって停止される場合には、このユニットはストップモーション装置を介してスラッビングの停止を指示することができる。
【0025】
機械制御部、セクション制御部およびスピンドル駆動装置制御部による非常に多くの動作機能の実施ならびにそれらの制御部のタスク分配に関する詳細な説明はEP-A-0 389 849に記載されている。
【0026】
スピンドル駆動装置は電気モータ、殊にBLDCモータ(ブラシレス直流モータ)である。しかしながら電気モータは同期式または非同期式でよい。使用されるモータのタイプに応じて出力段が変換器、例えば周波数変換器を有することも考えられる。
【0027】
機械制御部からデータ線または信号線がセクション電子ユニットに延びており、セクション電子ユニットを機械制御部に接続している。データ線は有利にはデータバスである。セクション電子ユニットは有利にはデータバスによって相互に接続されており、機械制御部はこのデータバスにアクセスする。データバスは好適にはそれぞれの繊維機械に沿って2つの機械側に延びている。データバスは2つの機械側に分割されており、それぞれ1つの終端抵抗を備えた左側と右側の分岐を有する。2つの分岐は機械制御部において統合される。しかしながらデータバスをリング型バスまたはスター型バスとして構成することもできる。データバスはシリアルバスまたはパラレルバスでよい。データバスを電気的な導体、光導体またはそれらの組み合わせから構成することができる。
【0028】
通常の通信用の電気的な導体を用いるデータバスの他に、機械制御部のレベルとセクション電子ユニットのレベルとの間に光学的な導体または電気的な導体をディジタル信号の高速な伝送のために付加的に設けることができる。この付加的な導体を別個に実施することができるか、データバスに組み込むことができる。しかしながら有利には、付加的な導体はそれぞれ別個の入力側(ディジタルI/O)を介してセクション電子ユニットに案内されている。この付加的な信号線は有利には、機械制御部または電源故障検出システムとセクション電子ユニットとの間、または直接的にスピンドル駆動電子ユニットとの間の直接的なハードウェア接続を確立する。
【0029】
この付加的な信号線は、例えば電源故障時にスピンドル駆動電子モータをジェネレータモードに切り替えるために、制御命令の直接的な伝送に使用される。この構成はそれ自体公知の着想、すなわち電源故障時またはスピンドル駆動装置がジェネレータモードに切り替えられた際に、ジェネレータにより形成された出力を用いて、停止しようとしている伸張駆動部を緩慢に動作するスピンドルと協働させることにより制御しながら停止させることができるという着想を基礎としている。このジェネレータモードによるエネルギ回復がなければ、伸張シリンダは制御されずにスピンドルに比べて早く停止する虞があり、これにより断糸が生じる可能性がある。電源故障時のスピンドル駆動部のジェネレータモードを支持するコンセプトに関する詳細は例えばDE-C-43 120 23またはEP-B-451 534に記載されている。
【0030】
基本的に、ジェネレータモードへの切り替えは可能な限り遅延無く行われるべきである。しかしながら慣例の通信線路を介する制御信号の伝送は、所定の場所に到達して、制御命令を相応に実行させるまで比較的長い時間を要する。そのようなディジタル信号線は制御信号を機械制御部から、もしくはそれどころか直接的に電源故障検出システムからセクション電子ユニットに伝送することができ、このセクション電子ユニットはこの制御信号に基づきスピンドル駆動装置の回復を指示する。
【0031】
最適な情報伝送ならびに配線コストの低減に関して、作業個所もしくはそのスピンドル駆動電子ユニットからの全てのデータ、またはそれらへの全てのデータを所属のセクション電子ユニットによって制御し、集中させることができる場合には好適である。このことは導体路板が機械制御部とのデータ交換および信号交換用の接続インタフェースを有していることも意味する。
【0032】
作業個所はこの作業個所における所定のパラメータを決定するためのセンサまたは他の手段を有することができる。つまり例えば、スピンドル駆動装置による電流消費量または電力消費量またはスピンドル回転数をスピンドル駆動電子ユニットによって、必要に応じてセンサを用いて検出することができる。この測定データから断糸または糸張力に関する情報を求めることができる。該当するスピンドルまたはそのスピンドルに割り当てられている駆動装置を、断糸の際にスピンドル駆動電子ユニットまたはセクション電子ユニットによって独立して停止させることができる。
【0033】
例えば作業個所のセンサによって検出された信号の少なくとも一部を、該当するスピンドル駆動電子ユニットおよび上位のセクション電子ユニットを介して、評価および/または上位の表示のために機械制御ユニットに供給することができる。機械制御ユニットにはその種の評価または表示のために例えば断糸、手動の遮断、スピンドル回転数に関する信号および/または同様に表される他の信号が供給される。
【0034】
紡績機または撚糸機を構造技術的に構造ブロックの原理に基づきセクション形式で構成することができ、その種の構造技術的なセクション(以下では単に機械セクションと称する)には複数の紡績個所または撚糸個所が割り当てられている。機械をセクションに分割することにより、紡績機または撚糸機のモジュール構造が実現される。この場合、紡績機または撚糸機は相互に接しているセクションから構成される。機枠は勿論同様に相応のセクション構造を有する。構造技術的なセクション構造の様式は上述したような制御技術的なセクション構造の様式と必ずしも一致している必要はない。しかしながら有利には、作業個所とセクションの制御技術的な統合、またそれぞれのセクション電子ユニットへの相応の割り当ては、機械の製造に起因する機械セクションへの構造的な分割によって、すなわち構造的なセクション構造の様式によって設定される。すなわち、1つまたは統合された複数の、殊に2つの制御技術的なセクションは作業個所の割り当てに関して1つの機械セクションと一致する。
【0035】
このことは例えば、既知のとおり両方の機械側に複数の作業個所を有する機械セクションに、それぞれ1つのセクション電子ユニットを備えた2つの導体路板が割り当てられており、各導体路板には一方の機械側の複数の作業個所が制御技術的に割り当てられていることによって、2つの導体路板がこの機械セクションの複数の作業個所の半分をそれぞれカバーすることを意味する(図3bによる実施例も参照されたい)。しかしながら、機械セクション毎に1つのセクション電子ユニットを備えた導体路板を1つだけ設けることも考えられる。したがって、セクション電子ユニットには両方の機械側の複数の作業個所が制御技術的に割り当てられている(図3aによる実施例も参照されたい)。上述の実施形態に応じて、一方の機械側のみの作業個所のためのスピンドル駆動電子ユニット、または両方の機械側の作業個所のためのスピンドル駆動電子ユニットが導体路板上にそれぞれ設けられている。
【0036】
その種の構造ブロックコンセプトを使用することにより、製造会社のもとで機械セクションを事前に実装することができ、これにより紡績会社における実装時間を著しく短縮することができる。
【0037】
有利には、スピンドル駆動装置への給電は同様に導体路を介して行われる。欧州特許明細書第07021866.4号には、紡績機のスピンドル駆動モータに電流を供給するためのコンセプトが記載されている。本発明の有利な実施形態においては、スピンドル駆動モータの電流供給は上記の明細書に記載されているコンセプトに基づく。しかしながら、上記の明細書による前述の給電コンセプトは間接的にしか本発明と関係していない。
【0038】
殊にBLDCスピンドル駆動モータが使用される場合、スピンドル駆動装置の給電は前述の欧州特許明細書第07021866.4号による給電コンセプトにしたがい有利には270V(ボルト)の直流電圧源を介して(例えばDCバスを介して)行われる。DCバスは電圧U1(例えば+270V)の第1の直流電圧レールと、電圧U2(例えば−270V)の第2の直流電圧レールと、第3の直流電圧レール(例えば0V)とから構成されている。第1の直流電圧源は第1の直流電圧レールおよび第3の直流電圧レールによって形成され、第2の直流電圧源は第2の直流電圧レールおよび第3の直流電圧レールから形成される。第1の直流電圧源および第2の直流電圧源は270Vの電圧の直流電流を供給する。さらには、第1の直流電圧レールおよび第2の直流電圧レールから540Vの電圧の直流電流を供給する第3の直流電圧源を形成することができる。上述の直流電圧源に関する詳細な説明も欧州特許明細書第07021866.4号に記載されている。
【0039】
スピンドル駆動電子ユニットの出力段が上述のDCバスからエネルギを取り出す場合、有利には、1つの導体路板内の連続する出力段、しかしながらまた機械長手方向において並んで配置されている全体の複数の導体路板における出力段には第1の直流電源と第2の第2の直流電源から常に交互に給電が行われる。このようにして給電の対称性が保証され、給電系は安定して動作する。導体路には、第1の直流電圧源および第2の直流電圧源から個々の出力段に交互に給電するために、相応に接続インタフェースおよび導体路が実装されている。
【0040】
上記の理由から、データバス接続部を介して電気的なエネルギが供給されない場合には、セクション電子ユニット、また殊にスピンドル駆動電子ユニットへの給電は+270Vの第1の直流電源または−270Vの第2の直流電源を介してではなく、540Vの第3の直流電源を介して行われる。第1の直流電源または第2の直流電源を介して給電を行うことも確かに可能ではあるが、給電の対称性は損なわれるので、給電系が不安定に動作する可能性がある。第3の直流電源から給電を行う場合、変換器には必要に応じてトランスを割り当てることができる。
【0041】
基本的には、使用されるスピンドル駆動装置に依存して他の電圧源、例えば交流電圧源を選択することもできる。スピンドル駆動電子ユニットの出力段は相応の線路によって電圧源と接続されている。給電線は前述のように導体路板上で有利には導体路として構成されている。導体路板は出力段またはスピンドル駆動装置の給電のために有利には接続インタフェースを介して外部の電圧源と接続されている。上述したように電圧源を切り替えながら出力段に給電を行う場合には、導体路板は出力段ないしスピンドル駆動装置の給電のために2つの接続インタフェースを介して2つの外部の電圧源(第1の直流電圧源および第2の直流電圧源)と接続されている。もちろん、導体路板は論理的に各出力段に対して、外部電圧源との別個の接続インタフェースを有することができる。しかしながらこの手段は経済的な観点から好適なものではない。
【0042】
セクション電子ユニットおよび/またはスピンドル駆動電子ユニットにも同様に電気的なエネルギが供給されなければならないが、スピンドル駆動装置よりも低い電圧のエネルギ、例えば5V、15Vまたは24Vが供給されなければならない。有利には、前述の電子モジュールに給電するための線路は導体路板上で同様に導体路として構成されている。電圧源に関して:
a.有利には専ら電子モジュールへの給電用の別の接続インタフェースを介して、導体路板を外部の電圧源(例えば第3の直流電圧源)と接続することができる;または、
b.電子モジュールの給電を出力段用の上述の給電部(例えば第1の直流電圧源または第2の直流電圧源)を介して行うことができる。
【0043】
bの場合、導体路板上には接続インタフェースの後段において、または接続インタフェースにおいて、または導体路板の外部において電子モジュールに対する給電が分岐される。ここではいずれの場合にも導体路板の給電が専ら共通の電圧源を介して行われる。
【0044】
有利には導体路に変換器、殊に電圧変換器が設けられている。この変換器は例えば入力直流電圧(例えば270Vまたは540V)を低い出力直流電圧(例えば5Vまたは15V)に変換する。入力電圧が直流電圧か交流電圧かに応じて、変換器には電流変換機能が備えられる。殊に、電圧が出力段用の給電部から取り出され、相応に低いレベルの電圧に変換しなければならない場合には変換器が必要である。
【0045】
要約すると、本発明によれば、導体路板上に直接的に、またはこの導体路板に固定的に取付けられているそれぞれのケーブルヘッドに、
−セクション電子ユニットを外部のデータ線または信号線(データバス)に接続するための共通の接続インタフェースが設けられている;
−スピンドル駆動電子ユニットおよび/またはセクション電子ユニットの給電部を外部の電圧源に接続するための共通の接続インタフェースが設けられている;
−スピンドル駆動電子ユニットの出力段の給電部を外部の電圧源に接続するための共通の接続インタフェース(DCバス)が設けられている;
−スピンドル駆動装置の給電部をスピンドル駆動電子ユニット、すなわち出力段に接続するための接続インタフェースが設けられている;
−外部の機器、例えば表示部またはハンドスイッチをスピンドル駆動電子ユニットに接続するための接続インタフェースが設けられている。
【0046】
スピンドル駆動電子ユニットに依存せずに、セクション電子ユニットにデータバスを介して給電を行うこともできる。
【0047】
前述の接続インタフェースとして、例えばはんだ接続部のような固定的な接続部または差込接続部もしくはコネクタ接続部またはスナップコンタクトのような取り外し可能な接続部が考えられる。ケーブルヘッドによって導体路板から外部への接続部が設けられる場合、ケーブルヘッドは有利には固定的な接続部、例えばはんだ接続部を介して、導体路板上において所属の導体路と接続されているか、直接的に相応のセクション電子ユニットまたはスピンドル駆動電子ユニットと接続されている。ケーブルヘッドの自由な端部には上述のような接続インタフェースがそれぞれ外部の給電部にケーブルヘッドを接続するために設けられている。
【0048】
本発明の有利な実施形態においては、導体路板に有利には固定的な接続部を介して、ケーブルテールとも称される接続インタフェースを備えたいわゆるケーブルヘッドが取付けられており、このケーブルヘッドを介してスピンドル駆動モータに電気的なエネルギが供給される。ケーブルヘッドは有利にはコネクタを有し、このコネクタを用いてケーブルヘッドを直接的または間接的にスピンドルレールを介してスピンドルユニットに接続することができる。
【0049】
コネクタ接続部を例えばケーブルヘッドとスピンドルレールとの間に設けることができ、そこには相応のコネクタ端子が設けられている。スピンドルユニット自体はスピンドルレールにおける別のコネクタ接続部または差込接続部を介してスピンドルレールに接続することができる。スピンドルレールはケーブルヘッド用のコネクタ接続部と導電的に接続されている。このようにして、導体路板のケーブルヘッドをスピンドルレールにおけるコネクタ端子に接続することができる。このような接続はスピンドルユニットが既に実装されているか否かは関係ない。他方では、ケーブル接続を解消する必要なく、スピンドルユニットを任意にスピンドルレールから取り外すことができる。
【0050】
表示部および/またはハンドスイッチへの接続線も上述のように接続インタフェース、例えばコネクタを備えたケーブルヘッドとして実施することができ、このケーブルヘッドは有利には固定的な接続部を介して導体路板に接続されている。コネクタはコネクタ端子を介して直接的または間接的に表示部またはハンドスイッチと接続される。
【0051】
コネクタ端子とは本明細書においてコネクタの雄部または雌部と解される。コネクタ端子は例えばコネクタまたはパネルプラグもしくは継手またはブシュである。コネクタ接続部に取り外し可能な「スナップイン部」またはスナップコンタクトを設けることができる。
【0052】
さらに、出力段に電気的なエネルギを供給するための導体路板の給電線も、有利には固定的に導体路板と接続されている、接続インタフェースを備えたケーブルヘッド、例えばコネクタを有することができる。ケーブルヘッドは例えばコネクタまたはスナップコンタクトを介して中央給電線(DCバス)に接続することができる。
【0053】
本発明の別の実施形態においては、機械制御部と電子制御ユニットとの間の通信、および/または、セクション電子ユニットとスピンドル駆動電子ユニットとの間の通信をエネルギ給電線に乗せて変調させることにより行うことも考えられる。すなわち、通信が給電線を介して行われる。この場合には、例えば機械制御部とセクション電子ユニットとの間の通信線、すなわちデータバスが省略される。この実施形態によれば、請求項1の特徴部に記載されているセクション電子ユニットとスピンドル駆動電子ユニットとの間のデータ線はデータ線であっても給電線であってもよい。さらには、請求項1の上位概念および特徴部に記載されている機械制御部とセクション電子ユニットとの間のデータ線はデータ線であっても給電線であってもよい。
【0054】
したがって導体路板には別個の通信用の導体路が部分的にしか設けられていない、または全く設けられていないことが考えられる。データ伝送および給電が導体路板との共通のインタフェースおよび共通の線路を介して実施されることも考えられる。この場合にはデータ伝送および給電がセクション電子ユニットの前段に接続されている変換器において、またはセクション電子ユニット自体において相互に分離させて、別個の導体路板において、例えばスピンドル駆動電子ユニットへとさらに案内される。
【0055】
機械制御部とセクション電子ユニットとスピンドル駆動電子ユニットとが階層的に分割されていることに基づき、監視および制御すべき作業個所の数が多い場合であっても、僅かな手間で常に問題なく、紡績機または撚糸機のその種の全体的な制御を実施することができる。殊に、配線コストが最小限であること、ならびに、全自動で取付けられた導体路を備えた導体路板が高度にオートメーション化されて製造されることに基づき製造コストを顕著に低減することができる。個々の機能領域を明瞭に相互に分離することができる。紡績機または撚糸機の制御に関して得られるヴァリエーションは殊に、本発明の殊に有利な実施形態により異なる階層レベルに設けられているセクション電子ユニットおよびスピンドル駆動電子ユニットが固有のインテリジェンスを有するモジュールであることによって著しく増加する。複数の階層レベルに複数のサブシステムが設けられており、これらのサブシステムには機械制御ユニットが例えばマスタとして割り当てられている。したがって共通の紡績機または撚糸機を制御および駆動させるために必要とされるインテリジェンスは異なるレベルに分割されている。さらにそれぞれの階層レベルに垂直な方向ではやはり僅かな配線コストしか必要とされない。異なる階層レベルへの機能の分割を問題なく、例えば費用に関する判定基準に従い行うこともできる。
【0056】
前述の構成要素を備えた導体路板は、別個に製造されてユニットとして紡績機または撚糸機に取付けられるモジュールである。コネクタ接続部のような簡単に取り外し可能な接続部を介して、導体路板を迅速に大きな手間を要することなく外部の電圧源、データ線または信号線および負荷(スピンドル駆動装置)に接続することができる。スピンドルユニット、例えば紡績機または撚糸機内の全体の配線も別個に、また制御電子装置に依存せずに導体路板上に実装することができる。
【0057】
それぞれのスピンドル駆動電子ユニットの他に、付加的または択一的に、それぞれのセクション電子ユニットも動作機能の少なくとも一部を自動的に実施するために設計することができる。これにより、上位の機械制御部の他に、下位の階層に設けられているモジュールも独立して少なくとも個々の動作機能を実施することができる。
【0058】
該当するスピンドル駆動電子ユニットまたはセクション電子ユニットを例えば以下の機能、すなわち断糸の検出、スラッビングの停止、個々のスピンドルの駆動制御、個々のスピンドルの駆動装置の熱の監視、スラッビングの切換、スピンドルの回転数測定、糸張力の測定、所属の繊維機械との通信、紡績個所のユーザガイド、障害表示、ハンドスイッチおよび/または別の検出機能のうちの1つまたは複数を独立して実施するために設計することができる。有利には、断糸および/または高い糸張力をそれぞれのスピンドル駆動電子ユニットによって、それぞれの作業個所に割り当てられている電子モータ駆動装置の電流消費量または電力消費量を介して検出することができる。
【0059】
機械制御ユニット自体によって、例えば通常の停止時にも電源網が故障した際の緊急停止時にも有効である起動制御および/または停止制御が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】電子モジュールを備えた本発明による導体路板の概略図を示す。
【図2】導体路板の結合体の概略図を示す。
【図3a】紡績機または撚糸機における電子モジュールの構成の第1の実施形態を示す。
【図3b】紡績機または撚糸機における電子モジュールの構成の第2の実施形態を示す。
【実施例】
【0061】
図1は、本発明による導体路板2.1の一部を示す。この導体路板2.1は複数のスピンドル駆動電子ユニット5.1,5.2,5.3と1つのセクション電子ユニット3とを有し、これらのユニットは導体路の形のデータ線/信号線34を介して相互に接続されている。セクション電子ユニット3はコネクタ接続部35を介してデータバス33と接続されている。さらに上位の階層レベルに設けられている機械制御ユニット(図示せず)がこのデータバス33にアクセスする。
【0062】
セクション電子ユニット3はコントローラ31ならびにインタフェース電子装置32を有する。スピンドル駆動電子ユニット5.1,5.2,5.3は同様にコントローラ51、インタフェース電子装置53をそれぞれ1つずつ有し、また出力段52も有する。コネクタ10.1,10.2,10.3,10.4を有するケーブルヘッドである接続線8.1,8.2,8.3,8.4は導体路板2.1における固定的な接続部、例えばはんだ接続部を介してスピンドル駆動電子ユニット5.1,5.2,5.3と接続されている。接続線8.1,8.2,8.3,8.4はコネクタ10.1,10.2,10.3,10.4を介してハンドスイッチ7.1,7.2,7.3,7.4に接続されている。ハンドスイッチ7.1,7.2,7.3,7.4の代わりに、もしくはそれに加えて、(障害)表示部または粗糸停止装置(いずれも図示せず)を設けることもできる。
【0063】
スピンドル駆動電子ユニット5.1,5.2,5.3の出力段52には導体路の形の給電線41を介して電気的なエネルギが供給される。コネクタ44を備えたケーブルヘッドの形の接続線47が導体路板2.1上に例えばハンダ接続により固定的に給電線41と接続されている。接続線47はコネクタ44を介して外部の電圧源46に接続されている。電気的なエネルギ、例えば270Vの直流電圧が導体路板2.1上の接続線47および給電線41を介してスピンドル駆動電子ユニット5.1,5.2,5.3の出力段52に供給される。
【0064】
コネクタ11.1,11.2,11.3を備えたケーブルヘッドの形の給電線9.1,9.2,9.3がそれぞれ固定的にスピンドル駆動電子ユニット5.1,5.2,5.3と接続されている。各ケーブルヘッド9.1,9.2,9.3を例えばはんだ接続によりスピンドル駆動電子ユニット5.1,5.2,5.3または導体路板における導体路に直接的に取付けることができる。スピンドル駆動モータ6.1,6.2,6.3への給電を行う給電線9.1,9.2,9.3は直接的または間接的にスピンドル駆動モータ6.1,6.2,6.3と接続されている。この実施例においてスピンドル駆動モータ6.1,6.2,6.3はBLDCモータである。
【0065】
さらに導体路板2.1にはこの導体路板2.1上の電子モジュール、すなわちセクション電子ユニットおよびスピンドル駆動電子ユニットに所定の電圧の電気的なエネルギを供給するための電圧変換器4が設けられている。電圧変換器4からの電気的なエネルギは導体路42を介して電子モジュール3,5に供給される。電圧変換器4は例えば相応の給電線43a(導体路)を介して電気的なエネルギをスピンドル駆動電子ユニット用の給電線41から取り出し、取り出した電圧を必要とされるより低い電圧、例えば5Vまたは15Vに変換することができる。しかしながら電圧変換器4は電気的なエネルギを、導体路板2.1に案内されている、コネクタ45を有するケーブルヘッドの形の別個の給電線43bから別の外部の電圧源を介して取り出すこともできる。このためにケーブルヘッド43bはコネクタ45を介して外部の電圧源(図示せず)と接続されている。セクション電子ユニット3自体は電気的なエネルギを前述の電圧変換器を介して得る代わりに、データバス33を用いて別個の給電線を介して得ることもできる。
【0066】
図2は、両側式の紡績機または撚糸機の種々のセクションのシステム結合体を示す。紡績機または撚糸機は機械長手方向において並んで配置されている複数の導体路板2.1〜2.n+3を有する。各導体路板2.1〜2.n+3は所定数の作業個所を有する1つのセクションに対応する。ここでは、その種のセクションはそれぞれ一方の機械側81,82に限定されている。導体路板2.1〜2.n+3はリングバス33を介して相互に接続されており、且つ上位の機械制御部1と接続されている。図1および図2において同一の構成素子には確かに同一の参照番号を付しているが、これは図1による導体路板を図2による導体路板の結合体とは異なる形では構成できないことを意味しているのではない。
【0067】
図3aに示されている、紡績機または撚糸機における電子モジュールを構成するための第1の実施形態によれば、導体路板62.1,62.2,62.3,62.4上においてそれぞれ実施されている制御技術的なセクションが隣接する複数の作業個所を両方の機械側83,84に有する。すなわち、導体路板は2つの機械側83,84のためのスピンドル駆動電子ユニットを有する。したがって、線路接続部66が導体路板62.1,62.2,62.3,62.4から、両方の機械側83,84においてそれぞれスピンドルレール61a,61bに固定されているスピンドル駆動装置64へと延びている。導体路板62.1,62.2,62.3,62.4は2つの機械側83,84の間に設けられており、機械長手方向65において並んで配置されている。導体路板62.1,62.2,62.3,62.4はデータバス63を介して相互に接続されており、且つ機械制御部(図示せず)と接続されている。データバス63を適切な形態で構成することができる。データバスの具体的な構成は本願発明との関係において重要ではない。
【0068】
紡績機または撚糸機の機械セクションは常に機会の両側に作業個所を有しているので、この実施例において制御技術的なセクションと機械セクションは互いに一致する。このことは、機械セクションがセクション電子装置を備えた導体路板をそれぞれ1つずつ有することを意味する。
【0069】
図3bに示されている、紡績機または撚糸機における電子モジュールを構成するための第2の実施形態によれば、導体路板72.1〜72.n+3上にそれぞれ設けられている制御技術的なセクションは隣接する複数の作業個所を一方の機械側85,86にのみ有している。すなわち、各機械側85,86は別個の導体路板72.1〜72.n+3を有し、また各導体路板72.1〜72.n+3は一方の機械側85,86に対してのみスピンドル駆動電子ユニットを有する。したがって、一方の機械側85,86に対してのみ、線路接続部が導体路板72.1〜72.n+3から、それぞれスピンドルレール71a,71bに固定されているスピンドル駆動装置74へと延びている。導体路板72.1〜72.n+3は機械長手方向75においてそれぞれ並んで配置されている。導体路板72.1〜72.n+3はデータバス73を介して相互に接続されており、且つ機械制御部(図示せず)と接続されている。データバス73を適切な形態で構成することができる。データバスの具体的な構成は本願発明との関係において重要ではない。
【0070】
紡績機または撚糸機の機械セクションは常に機械の両側に作業個所を有しているので、制御技術的なセクションと機械セクションは互いに一致しない。有利な実施形態によれば、1つの機械セクションがそれぞれ2つの導体路板72.1〜72.n+3を有し、各導体路板には制御技術的に一方の機械側85,86の複数の作業個所がそれぞれ割り当てられている。基本的に、機械セクションは任意の偶数個の導体路板を有することができる。
【0071】
機械セクションは例えば48の紡糸個所を有し、2つの機械側にそれぞれ24の紡糸個所を設けることができる。図3aの実施例によれば、1つの導体路板が48のスピンドル駆動電子ユニットを有し、図3bの実施例によれば1つの導体路板がそれぞれ24のスピンドル駆動電子ユニットを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別スピンドル駆動装置を有する紡績機または撚糸機であって、
制御技術的に複数のセクションに分割されている複数の作業個所を収容する機枠を有し、各セクションは複数の作業個所を有し、作業個所毎に1つのスピンドルと1つの回転数制御式スピンドル駆動装置(6)とを備えたスピンドルユニットが設けられており、スピンドルユニット毎に1つのスピンドル駆動電子ユニット(5)が設けられており、
さらに、前記スピンドルを駆動制御するための1つの機械制御ユニット(1)と、セクション毎に1つ設けられているセクション電子ユニット(3)とを有し、該セクション電子ユニット(3)は第1のデータ線(33)を介して前記機械制御ユニット(1)と接続されており、それぞれ1つのセクション電子ユニット(3)に複数のスピンドル駆動電子ユニット(5)が第2のデータ線(34)を介して接続されており、前記スピンドル駆動電子ユニット(5)は所属のセクション電子ユニット(3)を介して前記機械制御ユニット(1)によって駆動制御される、個別スピンドル駆動装置を有する紡績機または撚糸機において、
1つのセクションの複数のスピンドル駆動電子ユニット(5)およびセクション電子ユニット(3)が共通の導体路板(2)上に配置されており、
前記スピンドル駆動電子ユニット(5)が導体路の形の前記第2のデータ線(34)を介して前記セクション電子ユニット(3)と接続されており、
前記セクション電子ユニット(3)は第1の接続インタフェース(35)および前記第1のデータ線(33)を介して前記機械制御ユニット(1)と接続されており、
前記スピンドル駆動電子ユニット(5)は第2の接続インタフェース(11)および第1の給電線(9)を介して前記スピンドル駆動装置(6)と接続されていることを特徴とする、個別スピンドル駆動装置を有する紡績機または撚糸機。
【請求項2】
前記スピンドル駆動電子ユニット(5)は表示部および/またはオン/オフスイッチ(7)に接続するためのインタフェース電子装置(53)、例えばディジタルI/Oインタフェースを有し、前記スピンドル駆動電子ユニット(5)から表示部および/またはオン/オフスイッチ用の第2の給電線(8)および信号線が延びている、請求項1記載の紡績機または撚糸機。
【請求項3】
セクション毎に、1つの導体路板(2)には1つのセクション電子ユニット(3)および複数のスピンドル駆動電子ユニット(5)が設けられており、複数のスピンドル駆動電子ユニット(5)には該スピンドル駆動電子ユニット(5)のセクションに属する複数の作業個所が割り当てられており、
機械長手方向(75)において、それぞれ機械セクションが割り当てられている複数の導体路板(2)が並んで配置されている、請求項1または2記載の紡績機または撚糸機。
【請求項4】
複数のセクション電子ユニット(3)が前記第1のデータ線(33)を介して相互に接続されており、且つ前記機械制御ユニット(1)と接続されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の紡績機または撚糸機。
【請求項5】
前記スピンドル駆動電子ユニット(5)は第1のコントローラ(51)と出力段(52)と第1のインタフェース電子装置(53)とを有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の紡績機または撚糸機。
【請求項6】
前記セクション電子ユニット(3)は第2のコントローラ(31)と第2のインタフェース電子装置(32)とを有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の紡績機または撚糸機。
【請求項7】
前記スピンドル駆動装置(6)の給電用の給電電圧が1つまたは複数の第3の接続インタフェース(44)および第3の給電線(47)を介して前記導体路板(2)に供給され、該導体路板(2)において第1の導体路(41)を介して前記スピンドル駆動電子ユニット(5)の前記出力段(52)に供給される、請求項5記載の紡績機または撚糸機。
【請求項8】
前記スピンドル駆動電子ユニット(5)および/または前記セクション電子ユニット(3)の給電用の給電電圧が1つまたは複数の第4の接続インタフェース(45)および第4の給電線(43b)を介して前記導体路板(2)に供給され、該導体路板(2)において第2の導体路(42)を介して前記スピンドル駆動電子ユニット(5)および/または前記セクション電子ユニット(3)に供給される、請求項1から7までのいずれか1項記載の紡績機または撚糸機。
【請求項9】
前記導体路板(2)に変換器(4)が設けられており、該変換器(4)は入力電圧を出力電圧に変換し、必要に応じて入力周波数を出力周波数に変換し、前記スピンドル駆動電子ユニット(5)および/または前記セクション電子ユニット(3)に供給する、請求項8記載の紡績機または撚糸機。
【請求項10】
複数の前記セクションはそれぞれ一方の機械側(85,86)において、機械長手方向に連続的に設けられている所定数の作業個所に沿って延びている、請求項1から9までのいずれか1項記載の紡績機または撚糸機。
【請求項11】
複数の前記セクションはそれぞれ両方の機械側(83,84)において、該両方の機械側(83,84)で相互に対向し、且つ機械長手方向に連続的に設けられている所定数の作業個所に沿って延びている、請求項1から9までのいずれか1項記載の紡績機または撚糸機。
【請求項12】
スピンドルユニット(74)が機械長手方向(75)に延びるスピンドルレール(71a,71b)上に相互に所定の間隔を空けて固定されており、導体路板(72)は所属のセクション領域における保持系を介して機枠に固定されているか、機枠と結合されている構成部材に固定されている、請求項1記載の紡績機または撚糸機。
【請求項13】
導体路板(72)は機械横断面において2つの機械側の間の機械中心部に固定されているか、所属のスピンドルユニット(74)を収容するスピンドルレール(71a,71b)に固定されている、請求項1記載の紡績機または撚糸機。
【請求項14】
機械の両側にセクションが設けられている場合には、1つの導体路板(62)上に2つの機械側(83,84)の複数の作業個所用の複数のスピンドル駆動電子ユニットが配置されており、前記導体路板(62)から前記2つの機械側(83,84)に複数のスピンドル駆動装置(64)への複数の給電線が延びている、請求項10から13までのいずれか1項記載の紡績機または撚糸機。
【請求項15】
1つの導体路板(72)上に1つの機械側(85,86)の複数の作業個所用の複数のスピンドル駆動電子ユニットが配置されており、前記導体路板(72)から前記1つの機械側(85,86)に複数のスピンドル駆動装置(74)への複数の給電線が延びている、請求項10から13までのいずれか1項記載の紡績機または撚糸機。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公開番号】特開2009−256869(P2009−256869A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96659(P2009−96659)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(590005597)マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト (93)
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH−8406 Winterthur,Switzerland
【Fターム(参考)】