説明

偏光フィルムの製造方法

【課題】 微小な異物に起因する光学的欠点が解消された偏光フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】 レタデーション値が10〜50nmであるポリビニルアルコール系フィルムに、一軸延伸、ヨウ素による染色およびホウ素化合物による処理を施すことにより偏光フィルムを製造するに際して、ホウ素化合物による処理に用いる処理液に界面活性剤を添加することを特徴とする偏光フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール系フィルムを用いた偏光フィルムの製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、微小な異物に起因する光学的欠点が解消された偏光フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに、液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。このLCDの適用分野も、開発初期の頃の電卓および腕時計などの小型機器から、近年では、ノートパソコン、液晶モニター、液晶カラープロジェクター、液晶テレビ、車載用ナビゲーションシステム、携帯電話および屋内外で用いられる計測機器などの広範囲の分野に広がっている。特にモニターや液晶テレビの分野では液晶ディスプレイの大画面化が急速に進んでおり、それに合わせて偏光板も大面積のものが用いられるため、偏光板に染色むら、光学的欠点などの欠陥が含まれていると、大面積の偏光板の全てが不良品となってしまい、このことが製品の収率を著しく低下させる大きな原因となっている。
【0003】
偏光板は、一般に、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後で、ヨウ素や二色性染料を用いて染色するか、または染色後に一軸延伸して、染色された一軸延伸フィルムをつくり、それをホウ素化合物で固定処理する方法や、前記した一軸延伸・染色処理の際に染色と同時にホウ素化合物で固定処理を行う方法などによって偏光フィルムを製造し、偏光フィルムの表面に三酢酸セルロース(TAC)フィルム、脂環式ポリオレフィン(COP)フィルムなどの保護膜を貼り合わせることにより製造される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶モニターや液晶テレビなどの高精細度を要求される製品を製造するためには、その製品の製造に用いられる部材について、異物などの混入によって生じる輝度欠点を減少させることが重要である。これまでに提案されている方法として、偏光板の製造に用いられるポリビニルアルコール系フィルムに着目し、該フィルムに水流を吹き付ける、気体を噴射する、布/ゴム等のブレードを用いて異物を掻き落とすなどの方法により異物を除去したり、あるいはポリビニルアルコール系フィルムを用いて得られる偏光フィルムに保護膜を張り合わせる際に、浮遊するゴミが極力少ない環境下で作業を行うことで、色むら・光学欠点の少ない偏光板を製造することが知られている(特許文献1)。しかしながら、近年、液晶ディスプレイは高精細なものが求められる傾向がますます強まっており、それにつれて問題となる異物のサイズも小さくなっており、従来知られている方法ではこの要求に十分応えることができないという問題を有している。
【0005】
また、一軸延伸したポリビニルアルコール系フィルムを染料および無機塩と界面活性剤を含む水溶液で染色したのち、硼酸と界面活性剤または硼酸と界面活性剤と無機塩を含む水溶液で後処理することにより、偏光度が高くて耐久性に優れる染料系偏光フィルムを製造する方法が提案されている(特許文献2)。この方法は、染料分子をポリビニルアルコールフィルム中に均一に分散させることを主目的にしているため、染色性を改善するために、実施例において見られるように、400ppmというかなりの高濃度で界面活性剤を添加する必要がある。
【0006】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素染色するに際し、ヨウ素染色槽に界面活性剤を添加して、偏光フィルムを製造する方法も知られている(特許文献3)。しかしながら、ヨウ素染色槽に界面活性剤を添加する方法によっては、偏光フィルムにおける異物の低減効果が発現しないばかりか、界面活性剤の種類によっては、界面活性剤とヨウ素染色液がヨウ素染色槽中で相互作用により凝集物が発生してしまい、異物の低減効果としては逆効果となってしまう場合がある。
【0007】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】特開2003−207625号公報
【特許文献2】特開昭61−275704号公報
【特許文献3】特開2005−202386号公報
【0008】
本発明は、微小な異物に起因する光学的欠点が解消された偏光フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、レタデーション値が10〜50nmであるポリビニルアルコール系フィルムに、一軸延伸、ヨウ素による染色およびホウ素化合物による処理を施すことにより偏光フィルムを製造するに際して、ホウ素化合物による処理に用いる処理液に界面活性剤を添加することにより、微小な異物に起因する光学的欠点が解消された偏光フィルムを製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法により、偏光フィルムの表面に空気中の粉塵、糸くず、人間の皮膚や、工程中で発生すると考えられる鉄サビ、ステンレス片、フィルム破片、塗料片などの微小な異物が付着するのを防止して、該異物に起因する光学的欠点が解消された偏光フィルムを得ることができ、さらに延伸時にしばしば生じるポリビニルアルコール系フィルムの切断を抑制することができる。そのため、このようにして得られる偏光フィルムを用いることにより、大面積の偏光板を製造した場合に、上記の欠陥が含まれる割合が低下し、偏光板を高い収率で得ることができる。
このようにして得られる偏光板には、因果関係は必ずしも明確ではないが、ポリビニルアルコール系フィルムの延伸時の張力むらに起因すると考えられる位相差むらが低減するという効果も認められ、偏光板の収率向上への寄与も期待できる。
しかして、本発明の製造方法により製造される偏光フィルムは、上記した優れた特性を活かして、電卓、腕時計、ノートパソコン、液晶モニター、液晶カラープロジェクター、液晶テレビ、車載用ナビゲーションシステム、携帯電話、屋内外で用いられる計測機器などの高い表示品質を求められる液晶表示装置の構成部品である偏光板の作製に有効に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において用いられるポリビニルアルコール系フィルム(以下、「PVA系フィルム」と略記することがある)を構成するポリビニルアルコール系重合体(以下、「PVA系重合体」と略記することがある)は、例えば、ビニルエステルを重合して得られるポリビニルエステルをけん化することにより製造することができる。この他にPVA系重合体としては、PVAの主鎖に不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィンなどをグラフト共重合させた変性PVA系重合体、ビニルエステルと不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィンなどを共重合させた変性ポリビニルエステルをけん化することにより製造される変性PVA系重合体、未変性または変性PVA系重合体の水酸基の一部をホルマリン、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類で架橋したいわゆるポリビニルアセタール樹脂などを挙げることができる。
【0012】
PVA系重合体の製造に用いられる前記のビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどを挙げることができるが、これらの中でも酢酸ビニルが生産性の観点から好ましい。
【0013】
また、変性PVA系重合体の製造に使用される上記のコモノマーは、主としてPVAの変性を目的に共重合されるもので、本発明の趣旨を損なわない範囲で使用される。このようなコモノマーとして、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体などのメタクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステル;イタコン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどを挙げることができる。これらの中でもα−オレフィンが好ましく、特にエチレンが好ましい。
変性PVA系重合体における変性量は15モル%未満であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
【0014】
PVA系重合体のけん化度は、PVA系フィルムを一軸延伸して偏光フィルムにした際の偏光性能および耐久性、ならびに該偏光フィルムから作製される偏光板の偏光性能および耐久性の点から、95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることがさらに好ましく、99.3モル%以上であることが最も好ましい。
本明細書におけるけん化度とは、けん化によりビニルアルコール単位に変換されうる単位の中で、実際にビニルアルコール単位にけん化されている単位の割合を示したものであって、JIS K 6726に記載の方法により測定したけん化度を意味する。
【0015】
PVA系重合体の重合度は、PVA系フィルムを一軸延伸して偏光フィルムにした際の偏光性能および耐久性、ならびに該偏光フィルムから作製される偏光板の偏光性能および耐久性の点から、1000以上であることが好ましく、1500以上であることがさらに好ましく、2000以上であることが特に好ましい。均質なPVA系フィルムの製造の容易性、延伸性などの点から、PVA系重合体の重合度は8000以下、特に6000以下であることが好ましい。
本明細書におけるPVA系重合体の重合度は、JIS K 6726に準じて測定される重合度をいい、PVA系重合体を再けん化し、精製した後に30℃の水中で測定した極限粘度から求められる。
【0016】
前記のPVA系重合体を使用してPVA系フィルムを製造する方法としては、例えば、含水状態のPVA系重合体を溶融して押出を行う溶融押出製膜法、PVA系重合体を溶剤に溶解したPVA系重合体溶液を使用して、流延製膜法、湿式製膜法(貧溶媒中への吐出)、ゲル製膜法(PVA系重合体水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去し、PVA系フィルムを得る方法)、およびこれらの組み合わせによる方法などを採用することができる。これらの中でも、流延製膜法および溶融押出製膜法が、良好な偏光フィルムを得る観点から好ましい。
【0017】
PVA系フィルムを製造する際に使用されるPVA系重合体を溶解する溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、グリセリン、水などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも、ジメチルスルホキシド、水、またはグリセリンと水との混合溶媒が好適に使用される。
【0018】
PVA系フィルムを製造する際に使用されるPVA系重合体溶液または含水状態のPVA系重合体におけるPVA系重合体の濃度は、PVA系重合体の重合度によっても変化するが、20〜70重量%であることが好適であり、25〜60重量%であることがより好適であり、30〜50重量%であることが最も好適である。PVA系重合体の濃度が70重量%よりも高いと、PVA系重合体溶液または含水状態のPVA系重合体の粘度が高くなり過ぎて、フィルムの製膜原液を調製する際に行われる濾過や脱泡が困難となり、異物や欠点のないフィルムを得るのが困難となる傾向がある。また、PVA系重合体の濃度が20重量%よりも低いと、PVA系重合体溶液または含水状態のPVA系重合体の粘度が低くなり過ぎて、目的とする厚みを有するPVA系フィルムを製造するのが困難になる傾向がある。また、このPVA系重合体溶液または含水状態のPVA系重合体には、必要に応じて、界面活性剤、可塑剤などが含有されていてもよい。
【0019】
PVA系重合体溶液または含水状態のPVA系重合体に含有されていてもよい界面活性剤としては、脂肪酸アルカノールアミド系の非イオン界面活性剤、または硫酸エステル塩型アニオン系界面活性剤が好適に用いられる。脂肪酸アルカノールアミドの具体例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸などの脂肪酸のモノまたはジエタノールアミド、エタノールアミド、プロパノールアミド、ブタノールアミドなどが挙げられる。これらの中でも、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドが好適に用いられる。
また、硫酸エステル塩としては、ヘキシル硫酸ナトリウム、ヘプチル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、ノニル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、エイコシル硫酸ナトリウム、あるいはこれらのカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等の有機アミン塩等に代表されるアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヘプチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンエイコシルエーテル硫酸ナトリウム、あるいはこれらのカリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等の有機アミン塩等に代表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、およびカプロン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、カプリル酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、カプリン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、ラウリン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、パルミチン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、ステアリン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、オレイン酸エタノールアミド硫酸ナトリウムあるいはこれらのカリウム塩、更にはこれらエタノールアミドに変えてプロパノールアミド、ブタノールアミド等に代表される脂肪酸アルカノールアミド硫酸エステル塩などが挙げられる。
これらの界面活性剤は1種または2種以上を組合せて用いることができる。
【0020】
界面活性剤は、PVA系重合体100重量部に対して0.001〜1重量部の量で用いるのが好ましく、0.005〜0.8重量部の量で用いるのがさらに好ましく、0.01〜0.5重量部の量で用いるのが最も好ましい。界面活性剤の量が0.001重量部よりも少ないと、界面活性剤を用いたことによる効果が得られず、1重量部よりも多いと、PVA系フィルムの透過率が著しく低下する傾向があり好ましくない。
【0021】
PVA系重合体溶液または含水状態のPVA系重合体に含有されていてもよい可塑剤としては、多価アルコールが好ましく用いられる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどを挙げることができ、これらは1種または2種以上を組合せて用いることができる。これらの中でも、延伸性の向上効果の点から、ジグリセリン、エチレングリコール、グリセリンが好適に使用されるが、グリセリンの使用が最も好ましい。
【0022】
多価アルコールは、PVA100重量部に対して1〜30重量部の量で用いるのが好ましく、3〜25重量部の量で用いるのがさらに好ましく、5〜20重量部の量で用いるのが最も好ましい。多価アルコールの量が1重量部よりも少ないと、PVA系フィルムの染色性や延伸性が低下する場合があり、30重量部よりも多いと、PVA系フィルムが柔軟になり過ぎて、取り扱い性が低下する場合がある。
【0023】
PVA系重合体溶液または含水状態のPVA系重合体を含む製膜原料をT型スリットダイからドラム型ロール上に吐出(流延)し、形成されたPVA系重合体膜を乾燥することによりPVA系フィルムが得られる。ドラム型ロールの材質としては、特に限定されないが、通常ステンレスが好適に用いられ、ロールの表面は傷つき防止のため金属メッキが施されていることが好ましい。用いられる金属メッキの種類としては、例えばクロムメッキ、ニッケルメッキ、亜鉛メッキ等が好適であり、これらを用いて単層または2層以上のメッキ層をロール表面に形成させることができる。PVAフィルムの表面を平滑にし、あるいは耐久性に優れたPVAフィルムを得る観点から、ドラム型ロールの最表面はクロムメッキが施されていることが好ましい。ドラム型ロールの表面は平滑性が保持されていることが望ましく、表面粗さが3S以下、特に0.5S以下であることが好ましい。
【0024】
PVA系重合体溶液または含水状態のPVA系重合体を吐出するドラム型ロールの表面温度は50〜120℃であることが好ましい。ドラム型ロール上で形成されたPVA系重合体膜は、その含水率が5〜30重量%に達した時点でドラム型ロールから剥離され、続いて、好ましくは多段ロールを用い、フィルムの表裏面を交互に乾燥する。乾燥処理を行ったPVA系重合体膜は、必要に応じて、熱処理、調湿処理などを行い、このようにして得られるPVA系フィルムは、最後に芯管に所定の長さでロール状に巻き取られる。
PVA系フィルムは、ブロッキングの防止を目的として、フィルムの表面に、酸化硅素、二酸化チタン、クレー、ベントナイト、ステアリン酸またはその塩などのブロッキング防止剤を塗布してもよい。
【0025】
レタデーション値が10〜50nmであるPVA系フィルムは、形成されたPVA系重合体膜を乾燥する際に、該PVA系重合体膜にかかる張力を制御することにより製造することができる。具体的には、PVA系重合体膜を乾燥する際に、各ロール間の速度比や各ロールの温度を適宜選択し、トータルの製膜速度比(巻取り速度/最上流のドラム型ロールの周速度)を0.9〜1.1の間にすることで達成できる。トータルの製膜速度比が0.9より小さい場合は、PVA重合体膜がロール間でたるんでシワが発生したり、多段ロールに巻き付いて切断が発生したりするため、生産性を低下させる場合がある。一方、製膜速度比が1.1を越える場合は、偏光フィルムを作製する際に目的とする5倍以上の延伸倍率が得られないことがある。このようにして得られたPVA系フィルムを使用し、本発明の方法を適用して偏光フィルムを製造すると、因果関係は必ずしも明らかでないが、偏光フィルムの位相差むらが改善する傾向にある。
【0026】
なお、ここでいうレタデーション値は、PVA系フィルムを「KOBRA−WFD」(王子計測機器株式会社製、測定波長590nm)を用いて、幅方向に50mmピッチで全幅にわたってレタデーションを測定し、平均値を求めたものである。
【0027】
PVA系フィルムの厚さは特に制限されないが、一般的には10〜100μm、さらには20〜90μm、特に30〜80μmであることが好ましい。PVA系フィルムが薄すぎたり、あるいは厚すぎたりすると、偏光フィルムを製造するための一軸延伸が困難となるため好ましくない。
PVA系フィルムの幅は、一般的には30cm〜5mであり、該PVA系フィルムから製造される偏光フィルムの用途などに応じて決めることができる。近年、液晶ディスプレイの大画面化が進行しており、その要求に合わせて、PVA系フィルムの幅を2m以上、好ましくは2.5m以上、特に3m以上にすると、本発明の効果が一層顕著に発現する。
フィルムの長さは、一般的には1000m〜10000mである。
【0028】
本発明においてPVA系フィルムから偏光フィルムを製造するには、一軸延伸、ヨウ素による染色およびホウ素化合物による処理を行えばよく、特に、PVA系フィルムに、膨潤処理、ヨウ素による染色、ホウ素化合物による処理および洗浄処理をこの順番で施し、かつ一軸延伸をホウ素化合物による処理と同時にまたはそれ以前の処理工程で行うのがよい。その際、一軸延伸は二段以上の多段で行ってもよい。
【0029】
また、PVA系フィルムに膨潤処理を施す前に水洗処理を行うのが、PVA系フィルムに付着しているブロッキング防止剤などを除去して、偏光フィルムの製造工程に異物が持込まれるのを防止する観点から好ましい。
【0030】
膨潤処理は20〜40℃程度の水、もしくはホウ酸水溶液中で行うことが好ましい。
染色は、PVA系フィルムをヨウ素―ヨウ化カリウムを含有する溶液(特に水溶液)中に浸漬させることにより行うことが一般的であり、本発明においてもヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液を用いる染色方法が好適に採用される。染色用水溶液におけるヨウ素の濃度を0.05〜2.0g/l、ヨウ素/ヨウ化カリウムの重量比を20〜100の範囲にすることが好ましい。また、染色浴の温度は20〜50℃、特に25〜40℃とすることが好ましい。染色浴には、ホウ酸などの架橋剤が含有されていてもよい。
場合によっては、染色浴を用いずに、ヨウ素、ヨウ化カリウムをPVA系フィルムを製造するための原液中に混ぜて製膜してもよく、その際の処理条件や処理方法は特に制限されない。また、ホウ酸、硼砂などのホウ素化合物を架橋剤として添加して製膜を行ってもよい。
【0031】
偏光フィルムの製造に当たって、PVA系フィルムへのヨウ素の吸着を強固にするために、ホウ素化合物による固定処理を行う。固定処理に使用する処理浴としては、通常、ホウ酸、硼砂などのホウ素化合物の1種または2種以上を添加した水溶液を使用する。また、必要に応じて固定処理用の処理浴中にヨウ素化合物や金属化合物を添加してもよい。固定処理用の処理浴におけるホウ素化合物の濃度は、一般に0.1〜6重量%であることが好ましい。固定処理を行う際の処理浴の温度は30〜70℃、処理時間は1〜20分であることが好ましい。
【0032】
本発明の製造方法にしたがって偏光フィルムを製造するに当たり、ホウ素化合物による処理に用いる処理液に界面活性剤を添加することが重要であり、これにより微小な異物が付着するのに起因して生じる光学的欠点を解消することができるので、液晶ディスプレイの大画面化の要求に応えて、大面積の偏光フィルムを高い収率で得ることが可能になる。
界面活性剤としては、アルキルエーテル系非イオン性界面活性剤、またはアルキルエーテル硫酸塩のアニオン系界面活性剤が好適に用いられる。アルキルエーテル系非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどに代表されるアルキルエーテル類、ラウリルアミノエーテル、ステアリルアミノエーテル、オレイルアミノエーテルなどに代表されるアルキルアミノエーテル類、およびポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミドなどに代表されるアルキルアミドエーテル類が挙げられる。また、アルキルエーテル硫酸塩としてはポリオキシエチレンヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヘプチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンエイコシルエーテル硫酸ナトリウム、あるいはこれらのカリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等の有機アミン塩等に代表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。
【0033】
界面活性剤の使用量は、ホウ素化合物を含有する処理液に対して1〜1000ppmであることが好ましく、3〜500ppmであることがより好ましく、5〜300ppmであることが特に好ましく、10〜100ppmであることが最も好ましい。界面活性剤の使用量が1ppmより少ないと、界面活性剤をホウ素化合物を含有する処理液に添加したことによる効果が発現しにくく、1000ppmを超えると、ホウ素化合物による処理の際に激しい泡立ちが生じたり、偏光フィルムを保護フィルムと貼り合わせる時に十分な接着力が得られないことがあり好ましくない。
【0034】
一軸延伸は、湿式延伸法または乾熱延伸法のいずれで行ってもよい。湿式延伸法による
場合は、染料を含有する水溶液中での一軸延伸、染料とホウ酸を含有する水溶液によりな
る温水中での一軸延伸、染色後の固定処理浴中での一軸延伸、前記の工程に跨った多段延
伸、吸水後のPVA系フィルムを用いての空気中での一軸延伸などにより行うことができる。
延伸温度は、特に限定されないが、PVA系フィルムを温水中で湿式延伸する場合は30〜90℃が好ましく、乾熱延伸する場合は50〜180℃が好ましい。
また、一軸延伸の延伸倍率(多段で一軸延伸する場合には合計の延伸倍率)は、得られ
る偏光フィルムの偏光性能の点から4倍以上、特に5倍以上であることが好ましい。延伸
倍率の上限は特に制限されないが、均一延伸の観点から8倍以下であることが好ましい。
【0035】
PVA系フィルムから偏光フィルムを製造するに当たり、PVA系フィルムは膨潤処理を施したのち、一軸延伸して染色処理を行い、一軸延伸と染色処理を同時に行い、あるいは染色処理をして一軸延伸を行い、その後、ホウ素化合物による処理を行うことができる。さらに、PVA系フィルムの膨潤処理中に一軸延伸を行ったり、あるいは膨潤処理を施したPVA系フィルムに染色処理を行ったのち、ホウ素化合物による処理と一軸延伸を同時に行うこともでき、特に一軸延伸と染色処理を同時に行うか、またはホウ素化合物による処理と一軸延伸を同時に行うのが、光学性能に優れた偏光フィルムを得る観点から好ましい。
PVA系フィルムに対して施される膨潤処理、一軸延伸、ヨウ素による染色、ホウ素化合物による処理等の操作は、必要に応じて、二回以上繰り返して行ってもよい。
【0036】
ホウ素化合物による処理が施されたPVA系フィルムは、次いで洗浄処理に付される。洗浄処理には、通常水が用いられる。洗浄処理の回数は、特に制限されない。
このようにして得られた偏光フィルムを次いで乾燥処理する。乾燥処理の温度は40〜80が好ましく、乾燥処理の時間は1〜30分が好ましい。
【0037】
上記のようにして得られた偏光フィルムは、表面の4質量%ポリビニルアルコール系水溶液における接触角が40〜50度の範囲にあり、光学的欠点が解消されていて、優れた偏光性能を有している。
なお、本明細書において接触角とは静止接触角を意味する。接触角の測定は、接触角計(協和界面科学株式会社製、固液界面解析装置(型番:Drop Master 500)を用いて20℃、65%RHの条件で体積4μlのPVA水溶液(PVA117((株)クラレ製)、4質量%)の水滴を針先に作り、これを偏光フィルムに接触させてフィルムの表面に液滴を作製し、このとき生じる液滴とフィルム界面との角度を静止接触角とした。
【0038】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。
なお、以下の実施例および比較例において、「部」、「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0039】
実施例1
粘度平均重合度2400、ケン化度99.9モル%のPVA系樹脂100質量部、グリセリン12質量部、ラウリン酸ジエタノールアミド0.1質量部および水191質量部を押出機に供給し、融解して製膜原液[揮発分率(水分率)63質量%]を調製し、その製膜原液をT型ダイからドラム型ロール(ロール表面温度93℃)上に吐出した後、PVA膜の水分率が27質量%となった時点で剥離し、さらに金属ロール上で乾燥し、その際にトータルの製膜速度比(巻取り速度/最上流のドラム型ロールの周速度)を1.07にして、幅3.0m、厚さ75μm、含水率4質量%のPVA系フィルムを連続的に製造すると共に、ワインダーにてアルミ管にロール状に連続的に巻き取って、全長4000m(巻き取り長さ4000m)のPVA系フィルムを得た。なお、得られたPVA系フィルムのレタデーション値は23nmであった。
【0040】
次に、得られたロール状のPVA系フィルムを0.2m/分の速度で巻き出しながら、水洗槽(30℃)で水洗および膨潤させた後、ヨウ素染色槽(30℃、ヨウ素濃度0.1g/l、ヨウ化カリウム濃度4g/l)に浸漬し、2倍に一軸延伸した。続いて、ホウ酸処理液に対してポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルの濃度が40ppmとなるように調製したホウ素化合物処理槽(50℃、ヨウ化カリウム濃度40g/l、ホウ酸濃度40g/l)に浸漬し、2.5倍に一軸延伸をしつつ固定化処理を行い、トータルで5.0倍に一軸延伸した後、純水で洗浄し、乾燥機にて50℃で乾燥して偏光フィルムを得た。偏光フィルムのPVA水溶液による接触角は、43.4度であった。また、4000mのロール状PVA系フィルムを一軸延伸して偏光フィルムを製造する間で、PVA系フィルムの延伸による切断は0回であった。
【0041】
PVA系接着剤を用い、得られた偏光フィルムの両面にセルローストリアセテートフィルムを貼り合わせて偏光板とした。
【0042】
得られた偏光板について、偏光板1mあたりの異物数(60μm以上)を目視により確認し、以下の基準にしたがって異物付着性を評価した。
○:0〜1個
△:2〜3個
×:4個以上
その異物付着性の評価の結果、異物数は1個/mであり、判定は○であった。
【0043】
また、偏光板を、パラレルニコル状態の2枚の偏光板(単体透過率42.3%、偏光度99.99%)の間にクロスニコルから時計回りに10°の角度で挟んだ後、暗室にて照度20000ルックスのライトボックスを用いて、透過モードで位相差むらを観察し、以下の基準にしたがって評価した。
○:位相差むらが全く確認できないもの
△:スジ状の位相差むらがわずかに認められるもの
×:スジ状の位相差むらが明らかに認められるもの
その位相差むらの評価の結果、位相差むらはなく、判定は○であった。
【0044】
実施例2
実施例1において、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルの代わりにポリオキシエチレン2級アルキル(C12−14)エーテルを用いた以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを製造し、さらに得られた偏光フィルムを用いて、実施例1と同様にして偏光板を製造した。
偏光フィルムのPVA水溶液による接触角は、45.2度であった。また、4000mのロール状PVA系フィルムを一軸延伸して偏光フィルムを製造する間で、PVA系フィルムの延伸による切断は0回であった。
得られた偏光板について異物付着性を評価した結果、異物数は0個/mであり、判定は○であった。また、偏光板の位相差むらを評価した結果、位相差むらはなく、判定は○であった。
【0045】
実施例3
実施例1において、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルの代わりにポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムを用いた以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを製造し、さらに得られた偏光フィルムを用いて、実施例1と同様にして偏光板を製造した。
偏光フィルムのPVA水溶液による接触角は、48.1度であった。また、4000mのロール状PVA系フィルムを一軸延伸して偏光フィルムを製造する間で、PVA系フィルムの延伸による切断は0回であった。
得られた偏光板について異物付着性を評価した結果、異物数は1個/mであり、判定は○であった。また、偏光板の位相差むらを評価した結果、位相差むらはなく、判定は○であった。
【0046】
比較例1
実施例1において、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルを添加しなかった以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを製造し、さらに得られた偏光フィルムを用いて、実施例1と同様にして偏光板を製造した。
偏光フィルムのPVA水溶液による接触角は、52.5度であった。また、4000mのロール状PVA系フィルムを一軸延伸して偏光フィルムを製造する間で、PVA系フィルムは延伸による切断は3回発生した。
得られた偏光板について異物付着性を評価した結果、異物数は5個/mであり、判定は×であった。また、偏光板の位相差むらを評価した結果、位相差むらが確認され、判定は×であった。
【0047】
比較施2
実施例1で得られたPVA系フィルムを0.2m/分で巻き出しながら、水洗槽(30℃)で水洗および膨潤させた後、ヨウ素染色液に対してドデシル硫酸ナトリウムの濃度が5ppmとなるように調製したヨウ素染色槽(30℃、ヨウ素濃度0.1g/l、ヨウ化カリウム濃度4g/l)に浸漬し、2倍に一軸延伸した。続いて、ホウ素化合物処理槽(50℃、ヨウ化カリウム濃度40g/l、ホウ酸濃度40g/l)に浸漬し、2.5倍に一軸延伸をしつつ固定化処理を行い、トータルで5.0倍に一軸延伸した後、純水で洗浄し、乾燥機にて50℃に乾燥して偏光フィルムを得た。偏光フィルムのPVA水溶液による接触角は、54.1度であった。
4000mのロール状PVA系フィルムを一軸延伸して偏光フィルムを製造する間で、PVA系フィルムの延伸による切断は3回発生した。
得られた偏光板について異物付着性を評価した結果、異物数は3個/mであり、判定は△であった。また、偏光板の位相差むらを評価した結果、スジ状の位相差むらがわずかに認められ、判定は△であった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の製造方法により、微小な異物が付着するのを防止して、該異物に起因する光学的欠点が解消された偏光フィルムを得ることができ、そのため、このようにして得られる偏光フィルムを用いて大面積の偏光板を製造した場合に、上記の欠陥が含まれる割合が低下して、偏光板を高い収率で得ることができる。
本発明の製造方法により製造される偏光フィルムは、高い表示品質が要求される液晶表示装置の構成部品である偏光板の作製に有効に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レタデーション値が10〜50nmであるポリビニルアルコール系フィルムに、一軸延伸、ヨウ素による染色およびホウ素化合物による処理を施すことにより偏光フィルムを製造するに際して、ホウ素化合物による処理に用いる処理液に界面活性剤を添加することを特徴とする偏光フィルムの製造方法。
【請求項2】
界面活性剤がアルキルエーテル系非イオン性界面活性剤およびアルキルエーテル硫酸塩のアニオン系界面活性剤から選ばれる少なくとも一種の界面活性剤である請求項1に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項3】
界面活性剤をホウ素化合物による処理に用いる処理液に対して1〜1000ppmとなる量で添加する請求項1または2に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項4】
ポリビニルアルコール系フィルムが脂肪酸アルカノールアミド系の非イオン界面活性剤および硫酸エステル塩型アニオン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む製膜原液を製膜することにより製造されたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項5】
ポリビニルアルコール系フィルムに、膨潤処理、ヨウ素による染色、ホウ素化合物による処理および洗浄処理をこの順番で施し、かつ一軸延伸をホウ素化合物による処理と同時にまたはそれ以前の処理工程で行う請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項6】
偏光フィルムの表面の4質量%ポリビニルアルコール系水溶液における接触角が40〜50度の範囲である請求項1〜5のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2008−145919(P2008−145919A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335431(P2006−335431)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】