説明

偏光変換素子およびそれを用いた液晶表示装置

【課題】偏光分離膜と反射膜のアレイを透明部材中に形成し、これに位相差フィルムを用いた偏光変換素子について、耐熱性および耐光性を高めるとともに、これを用いた投射型液晶表示装置の信頼性を高めることを課題とする。
【解決手段】偏光変換素子に用いる位相差フィルムを、凹凸加工されて設けられた透明保護部材の凹部に収容されて接着固定された構成とすることにより、位相差フィルムがこの位置に固定され、位置ずれによる特性低下が防止され、また位相差フィルムの接着固定に耐熱・耐光性の良好な液体接着剤を用いることができ、偏光変換素子としての耐熱・耐光性を高めることができるようになった。また凹部の形成された2枚の透明保護部材に位相差フィルムが挟まれ、透明部材の出射面に対し空隙を有する構成とすることにより、位相差フィルムを効果的に空冷することが可能となり、また、位相差フィルムが劣化した場合に、劣化した位相差フィルムを新しいものと交換することが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光変換素子およびそれを用いた投射型液晶表示装置に関し、特に耐熱性、耐光性および耐久性を向上させた偏光変換素子およびそれを用いた投射型液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光方向の揃った偏光光を利用する液晶表示素子を用い、直線偏光光を入射させ出射光の光量を映像信号に応答して二次元的に制御し画像を表示する液晶表示素子の表示する画像を投射ユニットにより投射する投射型の液晶表示装置が注目されている。
【0003】
液晶表示装置では、液晶表示素子の照明領域を均一に照明するために、2枚のレンズアレイを用いたインテグレータ光学系が用いられており、また、光源が発する偏光していない光を特定の偏光方向の直線偏光に変換して液晶表示素子に入射させるために、偏光変換素子が利用されている。これらのインテグレータ光学系と偏光変換素子とを組合せた偏光照明装置およびこの照明装置を用いた液晶表示装置に関する文献としては、例えば特開平8−304739号公報がある。
【0004】
図8はこのような従来の投射型液晶表示素子で用いられてきた偏光変換素子の一例を示した図であって、(a)はその斜視図、(b)はその断面図を一部拡大し、偏光していない光がこの偏光変換素子によって偏光変換される様子を示した図である。図8において、偏光変換素子は、光学系の光軸に対して45°の角度をなす偏光分離膜201(201a,201b,…)と、反射膜202(202a,202b,…)と、これら偏光分離膜,反射膜をそれぞれ挟み込む透明部材200(200a〜200h,…)と、位相差フィルム203(203a,203b,…)で構成されている。透明部材には例えばガラスが用いられる。偏光分離膜202を透明部材200で挟み込んだブロックと、反射膜202を透明部材200で挟み込んだブロックとが交互に配置され、位相差フィルム203は反射膜202を挟み込んだ透明部材の出射側面に貼り付けられている。この例においては、位相差フィルム203が貼り付けられ、偏光分離膜201を挟み込んだ透明部材のブロック1個と、その隣りの反射膜202を挟み込んだ透明部材200のブロック1個とで、偏光変換ユニットが構成されており、この偏光変換ユニットの配列のピッチは、この偏光変換素子に光を供給するレンズアレイのレンズセル幅の約1/2に設定され、すべての光が偏光変換されるように構成されている。
【0005】
図8(b)に示した各偏光変換素子の偏光分離膜201には、光源から出射しレンズアレイによって分割された偏光のない光(P+S)波が入射する。偏光分離膜201は、所定の偏光方向のP偏光成分を透過させ、これに直交する偏光方向のS偏光成分を反射させる。偏光分離膜201で反射したS偏光成分は、隣接の反射膜202aにてもう一度反射した後、位相差フィルム203aにて偏光方向が90°回転され、P偏光成分となって外部に出射する。一方、偏光分離膜201aを透過したP偏光成分はそのままP偏光成分とて出射される。こうしてこの偏光変換素子を出射する光は、すべてP偏光の光となる。この偏光変換素子における位相差フィルム203には、延伸したポリカーボネートフィルムが主に用いられている。
【0006】
近年、こうした偏光変換素子を使用する投影型液晶表示装置には、装置を小型化することや、より明るい画像が得られるようにすることが特に強く求められるようになった。この結果、光源から出射される光量を増加させることが必要になり、必然的に各光学部品に入射する単位面積当たりの光量が増加してしまうこととなった。特に偏光変換素子は、光源の近くに配置されるので極めて強い光が通過することから、従来よりも優れた耐熱性および耐光性を有する偏光変換素子が望まれるようになった。
【0007】
偏光変換素子の耐熱性および耐光性を高める方法として、位相差フィルムの幅を適正に調整する方法(特開2004−361865号公報)や、位相差フィルムとして通常用いられている延伸カーボネートフィルムの代わりに水晶板を用いる方法(特開2003−302523号公報)などが開示されている。
【特許文献1】特開平8−304739号公報
【特許文献2】特開2004−361865号公報
【特許文献3】特開2003−302523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来の偏光変換素子には、位相差フィルムは透明部材の出射側の面に貼り付けられており、この位相差フィルムの貼り付けには、固体の粘着材が用いられている。粘着材は位相差フィルムにあらかじめ塗布されており、保護フィルムによって表面が保護されている。この保護フィルムをはがし、治具などを用いて位相差フィルムを決められた位置に圧着する。粘着材を用いると、圧着のみで接着力が得られるため、きわめて作業性がよいという大きな利点があった。
【0009】
しかしながら、粘着材には一般的に耐熱・耐光性が低いという問題点があり、位相差フィルムの貼り付けに用いられている粘着材が投射型液晶表示装置光学系のランプ近傍にて高温・強光に長時間さらされると、徐々に黄変し、可視光の短波長側の透過率が低下してくる。透過率が低下すると偏光変換素子内に吸収される光量が増加し、吸収された光は熱になるので、偏光変換素子の温度は更に上昇する。温度上昇すると偏光変換素子がさらに黄変が加速する。このようなサイクル進むと、やがて部品が焼損する事態となるため、このようなサイクルへの進入を事前に防止しなければならない。
【0010】
UV硬化型や熱硬化型などの液体接着剤を用いれば、粘着材よりも耐熱・耐光性の高いものを選択して用いることができる利点がある。このため偏光変換素子の耐熱・耐光性を向上させるには、位相差フィルムの接着に耐熱・耐光性の高い液体接着剤を用いることが望ましい。
【0011】
ところが、液体接着剤を用いて位相差フィルムを透明部材に貼り付け接着する場合には、貼り合わせ時に余分な接着剤が非接着部分、即ち位相差フィルムを貼らないガラス露出部分にもしくは位相差フィルム表面にはみ出してしまい、このはみ出した部分の液体接着剤を完全にふき取るのは非常に困難であるという問題点があった。この問題を回避する方法として、位相差フィルムを平板ガラスと透明部材との間に挟み込む方法が考えられる。しかしながら、この方法を用いた場合には接着後にUV照射をしたり、あるいは一定時間放置するなどして硬化させる工程が必要であり、その間に位相差フィルムが所定の位置からずれてしまうという、もう1つの問題点があることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、こうした問題点を解決し、耐熱性・耐光性が良好であり、また位相差フィルの位置ずれや接着剤のはみ出しなどが回避されたため素子性能が良好な偏光変換素子、およびこの偏光変換素子を用いた投影型液晶表示装置を提供するものである。
【0013】
本発明の偏光変換素子は、入射面と出射面を備えた平板状の透明部材と、この透明部材の内部に前記入射面および出射面に対し角度をなして平面状に形成され、入射光を第1の偏光光の透過光と第2の偏光光の反射光との直交する2偏光成分に分離する偏光分離膜と、 この透明部材の内部に偏光分離膜と平行な平面状に形成され、前記偏光分離膜を反射した第2の偏光光を反射して前記出射面の方向に出射する反射膜と、偏光分離膜を透過した第1の偏光光が前記透明部材から出射する出射位置、または前記偏光分離膜で反射しさらに前記反射膜で反射した前記第2の偏光光が前記透明部材から出射する出射位置のいずれか一方の位置に前記透明部材の出射面と平行に配置され、偏光光の偏光方向を90°回転させる位相差フィルムとを有すると偏光変換素子において、位相差フィルムが凹凸加工されて形成された透明保護部材の凹部に収容され接着されており、位相差フィルムを収容し接着している透明保護部材の表面が上記平板状の透明部材の出射面に平行な平坦面をなすように配置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の偏光変換素子において、上記位相差フィルムは、透明保護部材が凹凸加工されて設けられた凹部に収容されて接着され、前記透明部材の出射面に固定されて配置されていてもよいし、また上記位相差フィルムは、少なくとも一方が凹凸加工された2つの透明保護部材に挟まれて収容されて接着され、透明部材の出射面に対し空隙を有して配置されていてもよい。
【0015】
本発明の偏光変換素子において、上記透明保護部材としてガラスを用いる場合に、凹凸加工による凹部形成には、ガラスエッチング法が特に適していることがわかった。位相差フィルムの厚さは0.15mm前後(0.1〜0.2mm)であるため、凹部の深さはこの程度であればよく、フォトマスクを用いる通常のガラスエッチング法を用いて、例えば数分間の程度の短時間で、加工精度の良い凹部形成を生産性よく行うことができる。
【0016】
このようにして、本発明の偏光変換素子においては、あらかじめ凹凸加工による凹部が形成された透明保護部材を用いることにより、位相差フィルムが固定されるべき位置に正しく固定されるので、位相差フィルムの位置ずれを防ぐことができる。この際の位相差フィルムの接着固定には、耐熱・耐光性の良好な液体接着剤を用いることができ、このため偏光変換素子としての耐熱・耐光性を高めることができる。
【0017】
また本発明の投射型液晶表示装置は、白色光を放射する光源ユニットと、光源ユニットが放射する放射光を直線偏光光に変換する偏光変換素子と、直線偏光光を入射させ出射光の光量を映像信号に応答して二次元的に制御し画像を表示する液晶表示素子と、液晶表示素子の表示する画像を投射する投射ユニットとを備えた投射型液晶表示装置において、上記前記偏光変換素子が、入射面と出射面を備えた平板状の透明部材と、この透明部材の内部に入射面および出射面に対し角度をなして平面状に形成され、入射光を第1の偏光光の透過光と第2の偏光光の反射光との直交する2偏光成分に分離する偏光分離膜と、この透明部材の内部に偏光分離膜と平行な平面状に形成され、偏光分離膜を反射した第2の偏光光を反射して前記出射面の方向に出射する反射膜と、偏光分離膜を透過した第1の偏光光が透明部材から出射する出射位置または偏光分離膜で反射しさらに反射膜で反射した第2の偏光光が透明部材から出射する出射位置のいずれか一方の位置に、透明部材の出射面と平行に配置され、偏光光の偏光方向を90°回転させる位相差フィルムとを有し、上記位相差フィルムは、凹凸加工されて形成された透明保護部材の凹部に収容され接着されており、位相差フィルムを収容し接着している透明保護部材の表面が、平板状の透明部材の出射面に平行な平坦面をなすように配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の投射型液晶表示装置において、上記偏光変換素子の位相差フィルムは、凹凸加工されて形成された透明保護部材の凹部に収容され接着されており、位相差フィルムを収容し接着している透明保護部材の表面が、透明部材の出射面に接着されていてもよい。また上記の位相差フィルムは、2枚の透明保護部材に挟まれ、2枚の透明保護部材のうちの少なくとも一方が凹凸加工されて形成された透明保護部材の凹部に収容され接着されており、この位相差フィルムと2枚の透明保護部材が位相差フィルムユニットを構成しており、この位相差フィルムユニットが、透明部材の出射面に対し空隙を有して配置されていてもよい。
【0019】
また上記本発明の偏光変換素子において、位相差フィルムと2枚の透明保護部材が位相差フィルムユニットを構成し、この位相差フィルムユニットが、透明部材の出射面に対し空隙を有して配置されることにより、この空隙を利用して位相差フィルムを2つの透明保護部材と一緒に空冷することにより空冷効果が著しく改善されるので、さらに優れた耐熱・耐光性を得ることができることがわかった。
【0020】
また、位相差フィルムユニットと、偏光分離膜と反射膜の配列を有する透明部材とが、このようにして分離可能な偏光変換素子の構成とすることができたことにより、従来の偏光分離素子にはない多くの利点が得られるようになった。例えば位相差フィルムユニットを偏光変換素子の部品として偏光変換素子の製造とは切り離して製造し、その品質や生産性を高めることができることや、位相差フィルムが劣化した場合に、位相差フィルムユニットだけを交換することなどが可能となった。
【0021】
位相差フィムユニットの交換を容易にするためには、各部品を保持している光学ユニットケース等に溝を設け、この溝に位相差フィルムユニットを挿入さする方式が考えられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、位相差フィルムが凹凸加工されて形成された透明保護部材の凹部に収容され接着されており、位相差フィルムを収容し接着している透明保護部材の表面が上記平板状の透明部材の出射面に平行な平坦面をなすように配置された構成により、位相差フィルムがこの位置に固定され、位置ずれによる特性低下が防止され、また位相差フィルムの接着固定に、耐熱・耐光性の良好な液体接着剤を用いることができるようになり、偏光変換素子としての耐熱・耐光性を高めることができるようになった。さらに位相差フィルムが2枚の透明保護部材に挟まれ、位相差フィルムユニットを構成することにより、耐候性の向上が得られるほか、位相差フィルムを効果的に空冷することができるほか、位相差フィルムが劣化した場合に、劣化した位相差フィルムユニットを交換することも可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に図面を参照しながら本発明の実施の形態を示すことにより、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0024】
(実施の形態1)投射型液晶表示装置
図1は、本発明の一実施形態の投射型液晶表示装置100について、その構成を示した図である。図1において、光源2から出射した光は、第1レンズアレイ3に入射する。第1レンズアレイ3は、入射した光束をマトリックス状に配置された複数のレンズセルであって、複数の光束に分割し、効率よく第2レンズアレイ4と偏光変換素子1を通過するように導く。この偏光変換素子1には、以下に述べる耐熱・耐光性を有する素子を用いている。第2レンズアレイ4は、第1レンズアレイ3と同様にマトリックス状に配置された複数のレンズセルを持っており、各レンズセルは、対応する第1レンズアレイ3のレンズセルの形状を液晶表示素子10R,10G,10B側に重畳して投影する。この重畳により、第1レンズアレイ3と第2レンズアレイ4は、各液晶表示素子に対し均一な照明を行うことができる。この際、偏光変換素子1は、第2レンズアレイ4からの光を所定の直線偏光に揃える。そして、第1レンズアレイ3の各レンズセルの投影像、すなわち光源像は、集光レンズ5,及びコンデンサレンズ12R,12G,12B、第1リレーレンズ18,第2リレーレンズ19を経て、各液晶表示素子10R,10G,10B上に重ね合わされ、均一な照明となる。ここに光源2、第1レンズアレイ3、第2レンズアレイ4および偏光変換素子1は、直線偏光により各液晶表示素子に対し均一な照明を行う偏光照明装置50を形成している。
【0025】
光源2により出射され直線偏光に揃えられた白色光は、ダイクロイックミラー16,17により、赤(R),緑(G),青(B)の3原色に分離され、それぞれ対応する液晶表示素子10R,10G,10Bに照射される。なお、ここでは、ダイクロイックミラー16は赤反射緑青透過特性のミラーであり、ダイクロイックミラー17は緑反射青透過特性のミラーである。各液晶表示素子10R,10G,10Bには、入射側に入射側偏光板11R,11G,11Bを、出射側に出射側偏光板9R,9G,9Bを備えられている。これらは、映像信号に応じて画素ごとに光の濃淡を変える光強度変調を行い、映像(光学像)を形成する。
【0026】
液晶表示素子10R,10G,10Bにより形成された映像即ち光学像は、色合成プリズム8によって色合成され、更に、投射レンズ7によってスクリーン6上へと投射され、大画面映像を得ることができる。なお、第1リレーレンズ18と第2リレーレンズ19は、光路長の差を補正するためのものである。即ち、光源2から液晶表示素子10Bまでの光路長は、液晶表示素子10R,10Gまでの光路長に比し長くなっているので、それを補正する。またコンデンサレンズ12R,12G,12Bは、液晶表示素子10R,10G,10B通過後の光線の広がりを押さえ、投射レンズ7によって効率のよい投射を実現する。全反射ミラー13は、R光を折り曲げて液晶表示素子10Rに導き、全反射ミラー14と15は、B光を折り曲げて液晶表示素子10Bに導く。
【0027】
これら偏光変換素子1、各偏光板9R、9G、9B、11R、11G、11B、液晶表示素子10R、10G、10Bなどを強制冷却するために、冷却ファン20が用いられる。 この構成の投射型液晶表示装置では、各光学部品に入射する単位面積当たりの光量が高いため、特に位相差フィルムを用いた偏光変換素子1に高い耐熱・耐光性が要求される。そこで偏光変換素子1として、以下に述べる構成の偏光変換素子1を用いることにより、高い耐熱・耐光性を確保し、投射型液晶表示装置としての信頼性を確保することができた。
【0028】
(実施の形態2)偏光変換素子1
図2は本発明に係る一実施形態の偏光変換素子1を模式的に示した図であって、(a)は斜視図、(b)はその断面を示した図、また(c)は(b)に示した図の一部分を拡大した図である。
【0029】
図2において、偏光変換素子1は、偏光分離膜21(21a〜21f)および反射膜22(22a〜22f)が同じ45°の角度をなし、透明部材20に交互に挟まれて配列しており、透明部材20の出射面上において、偏光分離膜21を透過したP偏光光が出射する位置には、位相差フィルム23(23a〜23f)が、透明保護部材24の凹部25に接着され、この透明保護部材24と透明部材22の出射面に挟まれて配置されている。
【0030】
上記偏光変換素子における透明部材20および透明保護部材24の素材には、ガラスを用いている。ガラスのほか、ポリカーボネ−トやアクリル樹脂などの透明性樹脂が使用可能であるが、その中でも、光の透過性および耐熱性の観点から、ガラスが特に好ましい。また、上記偏光変換素子における偏光分離膜21は、入射する光成分のうち、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射させる膜であって、ここでは誘電体多層膜を用いている。また反射膜22は、偏光分離膜21を反射し斜め入射してくるS偏光の光を全反射させるものであり、ここでは誘電体多層膜を用いている。このほか、アルミ膜のような金属反射膜を用いることができる。
【0031】
また、上記位相差フィルム23には、延伸したポリカーボネートフィルムを用いている。この位相差フィルムは、所望される波帯域(一般的には可視波長帯域)において偏光方向を90°回転させる必要があるが、単層フィルムでは一部の波長帯域について回転効率が低下する場合がある。この場合は、フィルムを複数枚、たとえば2〜3枚積層接着することにより、より広波長帯域について高効率を得ることができる。位相差フィルムには、このほか、環状オレフィン系フィルム、脂肪族環状オレフィン系フィルム、ポリアリレートフィルム、ポリイミドフィルムなどを用いることができる。さらに上記偏光変換素子におけるガラスを用いた透明保護部材24の凹凸加工による凹部は、エッチング法によって形成した。さらに液体接着剤には、耐熱性に優れ上記位相差フィルムに適したアクリル系接着剤を採用している。また同様の理由でシリコン系接着剤を採用することも有効である。
【0032】
このような位相差フィルム23が固定されるべき位置にあらかじめ凹凸加工した透明保護部材24を用いて配置する構成により、位相差フィルム23がこの位置に固定され、位置ずれによる特性低下が防止されるので、位相差フィルム23の接着固定に耐熱・耐光性の良好な液体接着剤を用いることができるようになった。
【0033】
(実施の形態3)偏光変換素子2
図3は本発明に係る他の実施形態の偏光変換素子1を模式的に示した図であって、(a)はその断面を示した図、また同図(b)は同図(a)に示した図の一部分を拡大した図である。
【0034】
図3において、この実施の形態の偏光変換素子1は、実施の形態1の場合と同様、偏光分離膜21(21a〜21f)および反射膜22(22a〜22f)が同じ45°の角度をなし、透明部材20に交互に挟まれて配列しており、透明部材20の出射面上において、偏光分離膜21を透過したP偏光光が出射する位置には、位相差フィルム23(23a〜23f)が、透明保護部材24の凹部25に接着され、この透明保護部材24ともう1枚の透明保護部材26とに挟まれて配置されている。この位相差フィルム23には、実施の形態1の場合と同様の一軸延伸したポリカーボネートフィルムを用いている。
【0035】
透明保護部材24の凹部25に接着された位相差フィルム23(23a〜23f)を挟んだ透明保護部材24およびもう1枚の透明保護部材26と、透明部材20の出射面との間には、空隙27が設けられている。
【0036】
このような位相差フィルム23が固定されるべき位置にあらかじめ凹凸加工した透明保護部材24を用いて位相差フィルム23を配置する構成により、位相差フィルム23がその凹部25の位置に固定され、位置ずれによる特性低下が防止されている。また位相差フィルム23の接着固定には、耐熱・耐光性の良好な液体接着剤を用いることができ、偏光変換素子としての耐熱・耐光性を高めることが可能になった。また少なくとも一方が凹凸加工された2つの透明保護部材24.26に位相差フィルム23が挟まれ、透明部材20の出射面に対し空隙27を有して配置される構成とすることにより、これら2つの透明保護部材24,26と一緒に位相差フィルムを効果的に空冷することができるようになり、より高い耐熱、耐光性を得ることができるようになった。また、このようにして位相差フィルム23と偏光分離膜21と反射膜22のアレイを有する透明部材との間に空隙27を設け、位相差フィルム23を分離できる構成とすることにより、位相差フィルム23が劣化した場合に、偏光分離膜21と反射膜22のアレイを有する透明部材20をそのまま残し、劣化した位相差フィルム23をこれを挟んでいる2つの透光性保護部材24,26とともに新しいものと交換することが可能となった。
【0037】
(実施の形態4)偏光変換素子3
図4は、本発明に係るさらに他の一実施形態の偏光変換素子1を模式的に示した図である。図4は実施の形態2における位相差フィルム23の位置を、偏光分離膜21を透過し、透明部材20を出射する位置から、偏光分離膜21を反射し、さらに反射膜22を反射した偏光光が、透明部材20を出射する位置へと変えたものである。
【0038】
このような位相差フィルム23が固定されるべき位置にあらかじめ凹凸加工した透明保護部材24を用いて位相差フィルム23を配置する構成により、実施の形態2と同様、位相差フィルム23がこの位置に固定され、位置ずれによる特性低下が防止されるので、位相差フィルム23の接着固定に耐熱・耐光性の良好な液体接着剤を用いることができる。
【0039】
(実施の形態5)偏光変換素子4
図5は、本発明に係るさらに他の一実施形態の偏光変換素子1を模式的に示した図である。図5は実施の形態3における位相差フィルム23の位置を、偏光分離膜21を透過し、透明部材20を出射する位置から、偏光分離膜21を反射し、さらに反射膜22を反射した偏光光が、透明部材20を出射する位置へと変えたものである。
【0040】
このような構成により、実施の形態3の場合と同様に、位相差フィルム23が凹部25の位置に固定されるので、位置ずれによる特性低下が防止され、また位相差フィルム23の接着固定に、耐熱・耐光性の良好な液体接着剤を用いることができるようになり、偏光変換素子としての耐熱・耐光性を高めることができ、また、位相差フィルム23と偏光分離膜21と反射膜22のアレイを有する透明部材との間に空隙27を設けたことにより、位相差フィルムを効果的に空冷することが可能となり、より高い耐熱、耐光性を得ることができるようになった。さらに実施の形態3の場合と同様に、位相差フィルム23が劣化した場合に、偏光分離膜21と反射膜22のアレイを有する透明部材20をそのまま残し、劣化した位相差フィルム23をこれを挟んでいる2つの透光性保護部材24,26とともに新しいものと交換することが可能となった。
【0041】
(実施の形態6)偏光変換素子5
図6は、本発明に係るさらに他の一実施形態の偏光変換素子1を模式的に示した図である。図6は実施の形態2における偏光分離膜21とを反射膜22の傾きの方向を、左右対称にして双方に傾ける配置から、左右非対称で一方向に傾けた配置に変えたものである。
【0042】
このような構成により、実施の形態2と同様、位相差フィルム23がこの位置に固定され、位置ずれによる特性低下が防止されるので、位相差フィルム23の接着固定に耐熱・耐光性の良好な液体接着剤を用いることができる。
【0043】
(実施の形態7)偏光変換素子6
図7は、本発明に係るさらに他の一実施形態の偏光変換素子1を模式的に示した図である。図7は実施の形態3における偏光分離膜21とを反射膜22の傾きの方向を、左右対称にして双方に傾ける配置から、左右非対称で一方向に傾けた配置に変えたものである。
【0044】
このような構成により、実施の形態3の場合と同様に、位相差フィルム23が凹部25の位置に固定されるので、位置ずれによる特性低下が防止され、また位相差フィルム23の接着固定に、耐熱・耐光性の良好な液体接着剤を用いることができるようになり、偏光変換素子としての耐熱・耐光性を高めることができ、また位相差フィルムを効果的に空冷することが可能となり、より高い耐熱、耐光性を得ることができるようになった。さらに、位相差フィルム23が劣化した場合に、偏光分離膜21と反射膜22のアレイを有する透明部材20をそのまま残し、劣化した位相差フィルム23をこれを挟んでいる2つの透光性保護部材24,26とともに新しいものと交換することが可能となった。
【0045】
(実施の形態8)偏光変換素子7
本発明の偏光変換素子1の位相差フィルム23には、延伸ポリカーボネートフィルムが適しているが、高温あるいは長時間の使用での劣化は避けられない。そこで耐光性に優れた位相差フィルム23の代わりに、特許文献3(特開2003−302523号公報)に記載されている水晶板を用いることができる。偏光変換素子1の位相差フィルム23の代わりに水晶を用いる場合にも、水晶を接着し固定の際に、上述した接着時の位置ずれ対策が重要であり、本発明の構成が有用であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、耐熱性・耐光性が良好であり、しかも位相差フィルの位置ずれなどに伴う特性低下がなく、素子性能の優れた偏光変換素子が提供でき、またこの偏光変換素子を用いた投影型液晶表示装置が提供できるので、本発明の産業上の利用可能性は大である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態の投射型液晶表示装置について、その構成を示した図である。
【図2】本発明に係る一実施形態の偏光変換素子を模式的に示した図であって、(a)は斜視図、(b)はその断面を示した図、また(c)は(b)に示した図の一部分を拡大した図である。
【図3】本発明に係る他の実施形態の偏光変換素子を模式的に示した図であって、(a)はその断面を示した図、また同図(b)は同図(a)に示した図の一部分を拡大した図である。
【図4】本発明に係るさらに他の一実施形態の偏光変換素子を模式的に示した図である。
【図5】本発明に係るさらに他の一実施形態の偏光変換素子を模式的に示した図である。
【図6】本発明に係るさらに他の一実施形態の偏光変換素子を模式的に示した図である。
【図7】本発明に係るさらに他の一実施形態の偏光変換素子を模式的に示した図である。
【図8】従来の投射型液晶表示素子で用いられてきた偏光変換素子の一例を示した図であって、(a)はその斜視図、(b)はその断面図を拡大し、偏光のない光がこの偏光変換素子によって偏光変換される様子を示した図である。
【符号の説明】
【0048】
1…偏光変換素子、 2…光源、 3…第1レンズアレイ、 4…第2レンズアレイ4、 5…集光レンズ、 6…スクリーン、 7…投射レンズ、 12R,12G,12B、…コンデンサレンズ、 9R,9G,9B…出射側偏光板、 10R,10G,10B…液晶表示素子、 11R,11G,11B…入射側偏光板、 14,15…全反射ミラー、 16,17…ダイクロイックミラー、 18…第1リレーレンズ、 19…第2リレーレンズ、 20…透明保護部材、 21(21a〜21f)…偏光分離膜、 22(22a〜22f)…反射膜、 23(23a〜23f)…位相差フィルム、 24…透明保護部材、 25…凹部、 26…透明保護部材、 27…空隙、 50…偏光照明装置、 100…投射型液晶表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射面と出射面を備えた平板状の透明部材と、前記透明部材の内部に前記入射面および出射面に対し角度をなして平面状に形成され、入射光を第1の偏光光の透過光と第2の偏光光の反射光との直交する2偏光成分に分離する偏光分離膜と、前記透明部材の内部に前記偏光分離膜と平行な平面状に形成され、前記偏光分離膜を反射した第2の偏光光を反射して前記出射面の方向に出射する反射膜と、前記偏光分離膜を透過した前記第1の偏光光が前記透明部材から出射する出射位置、または前記偏光分離膜で反射しさらに前記反射膜で反射した前記第2の偏光光が前記透明部材から出射する出射位置のいずれか一方の位置に前記透明部材の出射面と平行に配置され、偏光光の偏光方向を90°回転させる位相差フィルムとを有する偏光変換素子において、
前記位相差フィルムは、凹凸加工されて形成された透明保護部材の凹部に収容され接着されており、前記位相差フィルムを収容し接着している前記透明保護部材の表面が、前記平板状の透明部材の出射面に平行な平坦面をなすように配置されていることを特徴とする偏光変換素子。
【請求項2】
前記位相差フィルムが、凹凸加工されて形成された透明保護部材の凹部に収容され接着されており、前記位相差フィルムを収容し接着している前記透明保護部材の表面が、前記前記透明部材の出射面に接着されていることを特徴とする請求項1記載の偏光変換素子。
【請求項3】
前記位相差フィルムが、2枚の透明保護部材に挟まれ、前記2枚の透明保護部材のうちの少なくとも一方が凹凸加工されて形成された透明保護部材の凹部に収容され接着されており、前記位相差フィルムと2枚の透明保護部材は位相差フィルムユニットを構成しており、前記位相差フィルムユニットが、前記透明部材の出射面に対し空隙を有して配置されていることを特徴とする請求項1記載の偏光変換素子。
【請求項4】
前記透明保護部材がガラスであり、凹凸加工による凹部形成がガラスエッチング法によりなされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の偏光変換素子。
【請求項5】
白色光を放射する光源ユニットと、前記光源ユニットが放射する放射光を直線偏光光に変換する偏光変換素子と、前記直線偏光光を入射させ出射光の光量を映像信号に応答して二次元的に制御し画像を表示する液晶表示素子と、前記液晶表示素子の表示する画像を投射する投射ユニットとを備えた投射型液晶表示装置において、
前記偏光変換素子は、入射面と出射面を備えた平板状の透明部材と、前記透明部材の内部に前記入射面および出射面に対し角度をなして平面状に形成され、入射光を第1の偏光光の透過光と第2の偏光光の反射光との直交する2偏光成分に分離する偏光分離膜と、前記透明部材の内部に前記偏光分離膜と平行な平面状に形成され、前記偏光分離膜を反射した第2の偏光光を反射して前記出射面の方向に出射する反射膜と、前記偏光分離膜を透過した前記第1の偏光光が前記透明部材から出射する出射位置、または前記偏光分離膜で反射しさらに前記反射膜で反射した前記第2の偏光光が前記透明部材から出射する出射位置のいずれか一方の位置に前記透明部材の出射面と平行に配置され、偏光光の偏光方向を90°回転させる位相差フィルムとを有する偏光変換素子であり、前記位相差フィルムが、凹凸加工されて形成された透明保護部材の凹部に収容され接着されており、前記位相差フィルムを収容し接着している前記透明保護部材の表面が、前記平板状の透明部材の出射面に平行な平坦面をなすように配置されていることを特徴とする投射型液晶表示装置。
【請求項6】
前記偏光変換素子の前記位相差フィルムが、凹凸加工されて形成された透明保護部材の凹部に収容され接着されており、前記位相差フィルムを収容し接着している前記透明保護部材の表面が、前記前記透明部材の出射面に接着されていることを特徴とする請求項5記載の投射型液晶表示装置。
【請求項7】
前記偏光変換素子の前記位相差フィルムが、2枚の透明保護部材に挟まれ、前記2枚の透明保護部材のうちの少なくとも一方が凹凸加工されて形成された透明保護部材の凹部に収容され接着されており、前記位相差フィルムと2枚の透明保護部材は位相差フィルムユニットを構成しており、前記位相差フィルムユニットが、前記透明部材の出射面に対し空隙を有して配置されていることを特徴とする請求項5記載の投射型液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−308866(P2006−308866A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131306(P2005−131306)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(500181027)株式会社日本真空科学研究所 (1)
【Fターム(参考)】