説明

偏心バタフライ弁

【課題】弁体にゴムシールを有する偏心バタフライ弁において、閉弁時のゴムシールの摩耗を低減する弁座構造を提供する。
【解決手段】弁体3側にゴム製シートリング4’を設けた偏心バタフライ弁であって、流路の中心を通り弁棒と直交する平面での弁の断面形状のうち、弁箱側金属弁座5のシール面6部分の断面形状を直線片7とし、その直線片7が、弁全閉位置におけるゴム製シートリング4’の仮想自由端と旋回中心とを結んだ直線とほぼ直交し、前記仮想自由端からゴム締め代の分だけ旋回中心側に近付けた直線の上にあり、シール面6の立体形状が前記直線片7を弁箱内面に一周させた円錐内周面である偏心バタフライ弁において、前記直線片7を、弁全閉位置のゴム製シートリング4’と金属弁座5との接触部分を含みその接触幅の3倍以内の長さの直線片7とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏心バタフライ弁に関し、特に弁体側にゴム等の弾性体からなるシートリングを取り付けた偏心バタフライ弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体などを高圧で流す管路を遮断したり開放したりする制御弁として、止水性能に優れた偏心バタフライ弁が用いられてきた。この偏心バタフライ弁Vは、図7や図8に示すように、円盤状の弁体3と、その弁体3を支持する弁棒2と、弁棒2を回転可能に支持するとともに流路10を形成する弁箱1から構成されている。
【0003】
弁体3の外周にはゴム製のシートリング4’が取り付けられ、ゴム弁座4を形成している。そのゴム弁座4と交差しないように、弁棒2は弁体3の片面側に寄せて取り付けられている。つまり、弁棒の軸心が弁体の厚みの中心線と一致しない状態、いわゆる偏心した状態となっている。
また、弁箱1の内面には、一周する内向きの突条が、金属弁座5として設けられている。この金属弁座5には、弁を閉じる際にゴム弁座4が接触するシール面6が形成されていて、このシール面6にゴム弁座4が全周にわたって接触すると、流路が遮断され、図8に示すように弁は全閉状態となる。
【0004】
シール面6は、直線片7を弁箱1の内面に沿って一周させた円錐内周面として形成されている。この直線片7は、図10に示すように、流路の中心を通り弁棒と直交する平面(以下、横切断面という)における偏心バタフライ弁の断面図では、仮想自由端8と旋回中心9を結んだ直線L1とほぼ直交し、かつ、仮想自由端8からゴム締め代tだけ旋回中心側に近付けた直線の一部分として表れる。
ここで、ゴム弁座の仮想自由端8とは、弁を全閉状態にしたときに、ゴム弁座4が金属弁座5と接触せず圧縮もされないと仮定した場合のゴム弁座の先端位置をいい、旋回中心9とは、弁を開閉した時の弁体の旋回中心(弁棒軸心)をいう。
【0005】
このような形式の偏心バタフライ弁では、弁を全閉状態にした時に、ゴム弁座4が、圧縮されながらシール面6に押しつけられ、ある程度の接触幅をもって全周にわたってシール面と接触することで止水が行われる。そして、通水は、全閉位置の弁体3を回してシール面6からゴム弁座4を離していき、その離れた部分から液体を流して行われる。
【0006】
ところで、弁の全閉状態では、ゴム締め代tの分だけゴム弁座がシール面に押し付けられて圧縮されているから、弁を開け始めても、ゴムの圧縮が完全に開放されるまでの間は、ゴム弁座4の外周縁をシール面6に擦りながら、弁体3を開方向へ回すことになる。
また、弁を閉める時も、全閉状態になる前から、ゴム弁座4の外周縁を金属弁座5のシール面6に擦りながら弁体3を閉方向へ回すことになる。(図9(a)(b)参照)
【0007】
このように、ゴム弁座4の外周縁をシール面6に擦りながら弁の開閉を行うと、開閉の度にゴム弁座(シートリング)に負荷がかかるため、開閉回数が増えるとシートリング4’が破損して、全閉状態にしても止水できなくなる恐れがあった。
特に、開閉頻度の高い弁では、短期間でシートリングの破損が起こる可能性が高くなり、弁の耐久性能を確保する上での課題となっていた。
【0008】
この様な、ゴム弁座4の破損を防ぐ手段として、弁座の形状に着目し、弁体ゴムパッキンの損傷が少なく、その上、弁の開閉に大きなトルクを要さない弁座形状にした偏心バタフライ弁が開示されている。(特許文献1参照)
これは、弁箱側の弁座面のテーパー角度を弁座面の上流側部分と下流側部分とで相違させるものであり、上流側のテーパー角度を大きくし、下流側の角度を小さくすることで、弁開閉時の弁体ゴムパッキンの圧縮や開放の度合いを緩やかにして、ゴムパッキンの損傷を防ぐものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭62−46863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このように弁箱側の弁座面のテーパー角度を上流側部分と下流側部分で相違させると、弁座面の形状が複雑になる分、加工が煩雑となる。また、弁座のテーパー角度を変化させても、ゴムパッキンの圧縮量の変化が少し緩やかになるだけであり、ゴムパッキンの外周縁が弁座面に擦れる距離(長さ)はあまり変わらない。
【0011】
さらに、弁座面の上流側部分と下流側部分でテーパー角度が異なるため、その境界部分に角が出来るので、弁の全閉時にゴムパッキンが角の付いた弁座面と接触してシールすることになり、止水性能が不安定になる上、その角によってゴムパッキンの損傷を招く恐れもあり、耐久性能においても好ましくない。
【0012】
本発明は、弁座を複雑な形状にしなくても、安定した止水性能を維持し、その上、弁の開閉に伴うゴム弁座(シートリング)の損傷を防ぐことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の偏心バタフライ弁は、円盤状の弁体と、弁体を支持する弁棒と、弁棒を回転可能に支持するとともに流路を形成する弁箱を備え、
弁体の外周にはリング形状のゴム弁座を設け、弁箱の内面にはシール面とその両側に流路内面に伸びる側壁とを有する金属弁座を設け、
流路の中心を通り弁棒と直交する平面での弁の断面形状のうち、流路の中心を挟んで両側に表れる金属弁座部分のうち少なくとも一方のシール面部分の断面形状を、弁全閉位置のゴム弁座と金属弁座との接触部分を含む直線片とし、その直線片が、弁全閉位置におけるゴム弁座先端の仮想自由端と旋回中心とを結んだ直線とほぼ直交し、かつ、前記仮想自由端からゴム締め代の分だけ旋回中心側に近付けた直線の上にあるものであり、
シール面の立体形状が前記直線片を弁箱内面に一周させた円錐内周面である偏心バタフライ弁において、
前記直線片を、弁全閉位置のゴム弁座と金属弁座との接触幅の3倍以内の長さとした偏心バタフライ弁としたのである。
この偏心バタフライ弁によれば、弁開閉時にゴム弁座が金属弁座と擦れる距離が短くなり、ゴム弁座の損傷が減って、耐久性が向上する。
【0014】
また、前記リング形状のゴム弁座を、リング内面寄りの把持部分からリングの側面外端部分にかけては一定の厚みで形成され、その先のリング外周縁は全周に渡って丸められ、弁開閉時に金属弁座と接触すると、把持部分を支点として、弁体の旋回方向とは逆方向に撓んで反りながら、弁体の径方向に押しつぶされるものとすることができる。
この偏心バタフライ弁によれば、ゴム弁座が、簡単な形状なため製造し易く、またリングのどちら側から負荷を受けても剛性を保つことが出来る形状であるため、破損しにくい。
【0015】
また、前記側壁とシール面との間に加工面を設けた偏心バタフライ弁とすることができる。
この偏心バタフライ弁によれば、弁を閉じる時にはゴム弁座が加工面で緩やかに圧縮されてからシール面に達し、弁を開ける時にはゴム弁座の圧縮が加工面で緩やかに開放されてからゴム弁座が金属弁座から離れるので、弁開閉時にゴム弁座の負荷が急激に増減することがなく、負荷の急変によるゴム弁座の損傷を防ぐことができる。
【0016】
さらに、弁座の表面に低摩擦層を形成した偏心バタフライ弁とすることができる。
この偏心バタフライ弁によれば、ゴム弁座と金属弁座との摺動時の摩擦抵抗が減るため、ゴム弁座にかかる負荷も減少し、ゴム弁座の耐久性が向上する。その上、弁の開閉に要する操作トルクが小さくて済む。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、以上のように、弁座に複雑な成形や加工を施さなくても、弁の開閉に伴うゴム弁座(シートリング)の損傷を、簡単に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る偏心バタフライ弁の横切断面での断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る偏心バタフライ弁の全体図である。
【図3】図1の弁座部分の拡大図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る偏心バタフライ弁の要部拡大図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る偏心バタフライ弁の要部拡大図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る偏心バタフライ弁の横切断面での断面図であり、(a)は弁全閉状態から弁を開くときに、ゴム弁座のうち上流側に向かう部分の動作を説明する図で、(b)は弁全閉状態から弁を開くときに、ゴム弁座のうち下流側に向かう部分の動作を説明する図である。
【図7】従来の偏心バタフライ弁の全体図である。
【図8】従来の偏心バタフライ弁の横切断面での断面図である。
【図9】従来の一次偏心バタフライ弁の横切断面での断面図であり、(a)は弁全閉状態から弁を開くときに、ゴム弁座のうち上流側に向かう部分の動作を説明する図で、(b)は弁全閉状態から弁を開くときに、ゴム弁座のうち下流側に向かう部分の動作を説明する図である。
【図10】従来の一次偏心バタフライ弁の横切断面での断面図であり、直線片を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、前述した従来の偏心バタフライ弁と共通する部材については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0020】
まず、第1の実施形態について、図1〜図3を使って説明する。
図1や2に示すように、第1の実施形態にかかる偏心バタフライ弁V’は、主に、円盤状の弁体3と、弁体3を旋回させるための軸となる弁棒2と、弁棒2を回転可能に支持し流路を形成する弁箱1とから構成される。
【0021】
金属製で円盤形状の弁体3の外周には、ゴム(EPDM)製のシートリング4’が嵌め込まれてゴム弁座4が形成されている。
弁体3の一方の片面には、弁棒2を差し込むための孔(差し込み口)をあけた円形突部14が二箇所で突出している。
弁棒2は、丸い棒状の金属部品であり、前記軸受け13と円形突部14に挿通されている。円形突部の外側から内部の弁棒に向けてテーパーピン15が打ち込まれ、弁棒と弁体とは締結されており、弁棒を回せば、弁棒2の軸心を中心として弁体3が旋回する構造となっている。
弁体3の他方の片面には、円形リング状のシートリング押さえ16がネジで締結されている。
【0022】
弁箱1は鋳鉄製で、円形断面の流路10を形成する円筒部11を備えている。その円筒部11の軸方向の中央付近には、弁棒2を差し込むための円孔が、流路10の軸方向と直交する向きに二箇所に同心で開けられている。各円孔には、弁棒2を回転自在に支持するための軸受け13が内挿されている。また、その軸受け13や弁棒2を強固に支えるために、各円孔と同心で円筒部11から外側に伸びる枝管形状のボス部12が設けられている。
【0023】
円筒部11の内面には、一周する内向きの突条が、金属弁座5として設けられている。この金属弁座5にはシール面6が形成されていて、弁閉時には、弁体外周に設けたゴム弁座4がこのシール面6と接触して流路を遮断する。
【0024】
図3に示すように、横切断面におけるシール面6の断面形状は、一定長さの直線、いわゆる直線片であらわれる。
その直線片7は、既述の通り、弁全閉時のゴム弁座先端の仮想自由端と旋回中心(弁棒軸芯)を結んだ直線と直交し、仮想自由端からゴム締め代の分だけ旋回中心に近付けた直線の一部分となっている。
【0025】
本実施形態においては、直線片7の位置と長さは、弁全閉位置のゴム弁座と金属弁座との接触部分を含み、その接触部分の両端からそれぞれ、ほぼ同じ長さだけ伸び、全体の長さは接触部分の幅の約2倍となっている。
そして、シール面の立体形状は、流路の中心を軸心として前記直線片7を円筒部11の内面に一周させてできる円錐内周面の形状となっている。
また、シール面6の両端には流路の内面に真っ直ぐに伸びる側壁20が付いている。
【0026】
ここで、シートリング4’は、リングの内面寄りの部分を、全周に伸びる幅広の把持部分17とし、その把持部分17からリングの側面外端部分18にかけては、把持部分よりも狭い一定の幅で形成され、その先のリング外周縁は全周にわたって丸められている。
【0027】
弁体のシート嵌め込み部19にシートリング4’を嵌めてから、リング状のシートリング押さえ16を弁体3に取り付けると、シートリング4’は、弁体のシート嵌め込み部とシートリング押さえに挟まれて把持される。
特に、シートリングの内寄り全周に設けた把持部分17が、弁体とシートリング押さえで形成されるT溝部に嵌まり込むことで、シートリングの外側への抜け出しを防いでいる。
【0028】
弁体3が流路を遮断する全閉状態となったときに、弁体のゴム弁座4(シートリング)の外周縁が全周に亘って金属弁座のシール面6と接触する。
なお、弁箱のボス部12の上には減速機、モータ、ハンドルからなる開閉装置(図示せず)が取り付けられ、この装置の駆動により、弁棒の回転が行われる。
【0029】
続いて、第1実施形態に係る偏心バタフライ弁の開閉時の状態について、図1を使って説明する。図1は、全閉状態の弁の断面図である。
弁を全閉状態から全開へ開放するときは、開閉装置を駆動させ、弁体が開く方向に弁棒を回す。
このとき、リング状のゴム弁座(シートリング)のうち流路の下流側に進む部分(A部)は、金属弁座との摩擦により、ゴム弁座の先端が上流側に引かれるため、上流側に少し反りながら摺動する。
上流側に進む部分(B部)は、金属弁座との摩擦により、ゴム弁座の先端が下流側に引かれるため、下流側に少し反りながら摺動する。
【0030】
弁体を開く方向に回し続けると、ゴム弁座(シートリング)の外周縁のうち、流路の中心を通り弁棒と直交する平面(横切断面)と交差する部分(二箇所)が、まず最初にシール面から離れる。続いて、その部分を起点として、ゴム弁座(シートリング)の全周にわたって、シール面からの離脱が連続的に発生する。
【0031】
弁を全開状態から閉じる方向へ回転させて流路を遮断するときは、開放する場合とは逆の動作となる。
弁体を閉じる方向へ回転させると、リング状のゴム弁座の一部がシール面と接触し、その部分を起点として、接触部分がゴム弁座の全周に広がっていき、最後に、横切断面と交差する部分(二箇所)が、シール面に接触し、全閉状態となる。
【0032】
このとき、ゴム弁座(シートリング)のうち、弁を閉じる時に流路の下流側に進む部分(B部)は、金属弁座のシール面と接触すると、その摩擦によってゴム弁座の先端側が上流側に引かれるため、上流側に少し反りつつ、シール面と面接触しながら摺動し、最後に「ゴム締め代」の分だけ、弁体の径方向に圧縮される。
【0033】
また、上流側に進む部分(A部)は、金属弁座との摩擦により、ゴム弁座の先端側が下流側に引かれるため、下流側に少し反りつつ、シール面と面接触しながら摺動し、最後に「ゴム締め代」の分だけ、弁体の径方向に圧縮される。
【0034】
以上のように、第1実施形態の偏心バタフライ弁は、ゴム弁座が金属弁座と擦れて動く距離が短くなり、ゴム弁座の損傷が減って、耐久性が大幅に向上した。また、ゴム弁座(シートリング)の形状が、簡単な形状であるため成形しやすく、かつ、先端が上流側に引かれても下流側に引かれても、剛性を保つことができる形状であるため、破損もしにくい。
【0035】
次に、本発明の第2実施形態の偏心バタフライ弁について、図を使って説明する。
既述の偏心バタフライ弁と共通する部分については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図4は、第2の実施形態における偏心バタフライ弁の要部拡大図である。
【0036】
弁箱1の内面には、金属弁座5’が、弁箱の内面を一周する内向きの突条として設けられている。この金属弁座5’にはシール面6’が形成されていて、弁を閉じる時に弁体のゴム弁座40がそのシール面6’と接触し、流路を遮断する。
【0037】
流路の中心を通り弁棒と直交する平面(横切断面)におけるシール面の断面形状は、直線片7’で表れ、既述の偏心バタフライ弁と同様に、弁全閉時のゴム弁座先端の仮想自由端と旋回中心(弁棒軸芯)を結んだ直線と直交し、仮想自由端からゴム締め代の分だけ旋回中心に近付けた直線の一部分となっている。
【0038】
本実施形態においては、直線片7’の位置と長さは、弁全閉位置のゴム弁座40と金属弁座5’との接触部分を含み、その接触部分から上流側に伸びて、接触部分の幅の約3倍の長さとなっている。そして、シール面の立体形状は、流路中心を軸心として前記直線片7’を弁箱内面に一周させてできる円錐内周面の形状となってる。
【0039】
そして、金属弁座5’のシール面7’と側壁20との間には、角を落とすように、加工面21,21を設けている。
上流側の加工面21は、シール面7’よりも傾きの大きな円錐面となっており、下流側の加工面21は、傾きの無い円筒面となっている。加工面21,21の一端はシール面7’に繋がり、他端は側壁20に繋がっている。
【0040】
また、シートリング41の外周縁には、全周にわたって超高分子量ポリエチレンが薄く(約250ミクロンの厚みで)コーティングされている。
その他の、弁体やシートリングの形状や取り付け構造は、既述の偏心バタフライ弁と同様なので説明を省略する。
【0041】
第2実施形態に係る偏心バタフライ弁の開閉時の状態について、図6を使って説明する。まずは、全開動作時の状態について説明する。
弁を全閉状態から全開へ操作して流路を開放するときは、開閉装置(図示せず)を起動して、弁棒を回転させ、弁体を開く方向へ回す。このとき、リング状のゴム弁座40のうち、下流側に進む部分(A’部)は、金属弁座5’との摩擦により、先端が上流側に引かれるため、上流側に少し反りながら摺動する。(図6(b)参照)
そして、ゴム弁座の接触部がシール面7’から下流側の加工面21に移ると、ゴム弁座の圧縮力の軽減度合いが増えるが、急激な軽減とはならない。
やがて、ゴム弁座40が下流側の加工面21から離れる。
【0042】
ゴム弁座40のうち、上流側に進む部分(B’部)は、金属弁座5’との摩擦により、先端が下流側に引かれるため、下流側に少し反りながら摺動する。(図6(a)参照)
そして、ゴム弁座40の接触部がシール面7’から上流側の加工面21に移ると、ゴム弁座の圧縮力の軽減度合いが増えるが、急激な軽減とはならない。
やがてゴム弁座40が上流側の加工面21から離れる。
【0043】
弁体を開く方向に回転させていくと、リング状のゴム弁座40のうち、流路の中心を通り弁棒と直交する平面(横切断面)と交差する部分(二箇所)が、まず最初に加工面21から離れる。続いて、その部分を起点としてゴム弁座の全周にわたって、加工面21との離脱が連続的に発生する。
そのまま、弁体を全開位置まで回す。
【0044】
続いて、弁の全閉動作時の状態について説明する。
弁を全開状態から全閉へ操作して流路を遮断するときは、流路を開放する場合とは逆の動作となる。
弁体3を閉じる方向へ回転させると、リング状のゴム弁座40の一部が加工面21と接触し、その部分を起点として、接触部分がリング全周に広がっていく。そして最後に、ゴム弁座40のうち、横切断面と交差する部分(二箇所)が、加工面21と接触する。その後、ゴム弁座は、加工面と同様にシール面7’にも全周に亘って接触し全閉状態となる。
【0045】
リング状のゴム弁座40のうち、弁の閉動作時に下流側に進む部分(B’部)は、上流側の加工面21と接触すると、その摩擦により、先端が上流側に引かれ、上流側に少し反りつつ、加工面を擦りながら下流側に進む。
このとき、ゴム締め代の影響によりゴム弁座には圧縮力が徐々に加えられる。
そのまま、上流側の加工面を擦りながら移動し続け、シール面7’に達すると、圧縮の度合いが減り緩やかな圧縮となる。
【0046】
シール面7’においても、ゴム弁座40は、摩擦により、先端が上流側に引かれるため、上流側に少し反りつつ、圧縮されながら摺動し、最終的に、弁の全閉位置ではゴム締め代tの分だけ、弁体3の径方向に圧縮される。
【0047】
一方、ゴム弁座40のうち、上流側に進む部分(A’部)は、金属弁座の下流側加工面と接触すると、その摩擦により、先端側が下流側に引かれるため、下流側に反りつつ、圧縮されながら摺動する。
そのまま、下流側の加工面21を擦りながら移動し、シール面7’に達すると、圧縮の度合いが減り、緩やかな圧縮となる。
【0048】
シール面7’においても、ゴム弁座40は、摩擦により、先端側が下流側に引かれるため、下流側に少し反りつつ、弁の全閉位置ではシール面7’と面接触しながら摺動し、徐々に圧縮され、最終的にゴム締め代tの分だけ、弁体の径方向に圧縮される。
その他の動作については前述の偏心バタフライ弁と同様なので説明を省略する。
【0049】
以上のように、第2実施形態の偏心バタフライ弁は、ゴム弁座40が金属弁座5’と擦れて動く距離が短くなったので、ゴム弁座の損傷が減った。
また、シール面7’の上流側と下流側の両側に加工面21,21を設けて、ゴム弁座と金属弁座との接触を緩やかにしたので、ゴム弁座にかかる負荷の変化が緩和された。
【0050】
さらに、シートリング41の外周縁に低摩擦の超高分子量ポリエチレンをコーティングしているため、摺動抵抗が少なく、ゴム弁座にかかる負荷を低減できた。また、操作トルクも小さくなった。
これらの効果により、弁の耐久性能が大幅に向上した。具体的には、従来の偏心バタフライ弁の開閉実験では十万回程度の開閉でゴム弁座が損傷し始めていたのが、本実施形態の偏心バタフライ弁では三十万回開閉してもゴム弁座の損傷が無かった。
【0051】
なお、第2の実施形態では、弁座表面のコーティングとして、ゴム弁座(シートリング)の外周縁に低摩擦の超高分子量ポリエチレンをコーティングしているが、ゴム弁座側に限らず、金属弁座の表面に低摩擦層を形成することもできる。
低摩擦層を形成するためにコーティングする材料としては、超高分子量ポリエチレンの他に、テフロン(登録商標)なども採用し得る。
【0052】
また、第2の実施形態では、上流側の加工面を円錐面とし、下流側の加工面を円筒面としているが、加工面の形状としては、円錐や円筒といった、横切断面における断面形状が直線となるものに限られず、断面形状が曲線となる曲面としてもよく、シール面とその両側にある側壁との間の角を落とすような形状であればよい。そのような形状の一例を、図5に示す。
【0053】
最後に、弁開閉時の弁開度と弁座部分の状態を図6と図9を使って説明する。
図9(a)(b)は、従来の一次偏心バタフライ弁を横切断面で切った断面図であり、弁開閉時の弁座部分の動作を説明する図である。
【0054】
弁全閉時(=弁の開度0度)のゴム弁座の位置を基準位置とし、弁が開く向きに弁体を回転させた場合、ゴム弁座のうち上流側に向かう部分(C’部)は、開度4度くらいまでシール面に接触し、その後は離れている。下流側に向かう部分(D’部)は、開度1度くらいまでゴム弁座がシール面に接触し、その後は離れている。
【0055】
また、弁を全開にした状態から、弁が閉じる向きに弁体を回転させた場合、開度が徐々に減少し、ゴム弁座のうち下流側に向かう部分(C’部)は、開度が4度くらいにまで減ったときに、ゴム弁座がシール面に接触し始めている。上流側に向かう部分(D’部)は、開度が1度くらいにまで減ったときに、ゴム弁座がシール面に接触し始めている。
【0056】
図6(a)(b)は、本発明の第2実施形態に係る一次偏心バタフライ弁の横切断面での断面図であり、弁開閉時の弁座部分の動作を説明する図である。
弁全閉時(=開度0度)のゴム弁座の位置を基準位置とし、弁を開く向きに弁体を回転させた場合、ゴム弁座のうち上流側に向かう部分(B’部)は、開度2度くらいまでシール面に接触し、その後は離れている。下流側に向かう部分(A’部)は、開度1度くらいまでゴム弁座がシール面や下流側の加工面に接触し、その後は離れている。
【0057】
また、弁を全開にした状態から、弁を閉じる向きに弁体を回転させた場合、開度が徐々に減少し、ゴム弁座のうち弁を閉じる時に下流側に向かう部分(B’部)は、開度が2度くらいにまで減ったときに、シール面に接触し始めている。上流側に向かう部分(A’部)は、開度が1度くらいにまで減ったときに、シール面や下流側の加工面に接触し始めている。
【符号の説明】
【0058】
1 弁箱
2 弁棒
3 弁体
4、40 ゴム弁座
4’、41 シートリング
5、5’ 金属弁座
6、6’ シール面
7、7’ 直線片
8 仮想自由端
9 旋回中心
10 流路
11 円筒部
12 ボス部
13 軸受け
14 円形突部
15 ピン
16 シートリング押さえ
17 把持部分
18 側面外端部分
19 シート嵌め込み部
20 側壁
21、21’ 加工面
42 超高分子量ポリエチレン層
V、V’ 偏心バタフライ弁
t ゴム締め代
L1 直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状の弁体と、弁体を支持する弁棒と、弁棒を回転可能に支持するとともに流路を形成する弁箱を備え、
弁体の外周にはリング形状のゴム弁座を設け、弁箱の内面にはシール面とその両側に流路内面に伸びる側壁とを有する金属弁座を設け、
流路の中心を通り弁棒と直交する平面での弁の断面形状のうち、流路の中心を挟んで両側に表れる金属弁座部分のうち少なくとも一方のシール面部分の断面形状を、弁全閉位置のゴム弁座と金属弁座との接触部分を含む直線片とし、その直線片が、弁全閉位置におけるゴム弁座先端の仮想自由端と旋回中心とを結んだ直線とほぼ直交し、かつ、前記仮想自由端からゴム締め代の分だけ旋回中心側に近付けた直線の上にあるものであり、
シール面の立体形状が前記直線片を弁箱内面に一周させた円錐内周面である偏心バタフライ弁において、
前記直線片を、弁全閉位置のゴム弁座と金属弁座との接触幅の3倍以内の長さの直線片としたことを特徴とする偏心バタフライ弁。
【請求項2】
前記リング形状のゴム弁座が、リング内面寄りの把持部分からリングの側面外端部分にかけては一定の厚みで形成され、その先のリング外周縁は全周に渡って丸められ、弁開閉時に金属弁座と接触すると、把持部分を支点として、弁体の旋回方向とは逆方向に撓んで反りながら、弁体の径方向に押しつぶされることを特徴とする請求項1に記載の偏心バタフライ弁。
【請求項3】
前記側壁とシール面との間に加工面を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の偏心バタフライ弁。
【請求項4】
前記金属弁座とゴム弁座の少なくとも一方の表面に低摩擦層を形成したことを特徴とする請求項1乃至3に記載の偏心バタフライ弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−77845(P2012−77845A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223919(P2010−223919)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】