説明

側溝切断装置及び側溝切断方法

【課題】U字溝等の側溝の底面を走行可能として切断位置を任意に設定できるとともに、側溝の幅よりも大きなカッターを用いる場合も容易にカッターを交換できるようにした側溝切断装置の提供。
【解決手段】側溝(2)の底面を走行自在とする車輪(5)が配設された架台(4)と、架台(4)に立設したフレーム(10)と、フレーム(10)の上部に配設した軸受(12)及び架台(4)に配設した軸受(6)に夫々軸支された旋回支柱(20)と、旋回支柱(20)に設けたラック(21)と噛合し上下動自在な台座(22)と、台座(22)に固設され着脱自在の円盤状のカッター(32)を回転させる駆動部(31)を有する切断部本体(30)と、カッター(32)を側溝(2)の左右方向に旋回させる旋回用ハンドル(25)と、架台(4)とフレーム(10)に設けた伸縮自在な押圧機構(33)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側溝の側壁を切断する側溝切断装置及び側溝切断方法に関し、特に、U字溝等の側溝の底面を走行可能とすることで側溝の切断位置を任意に設定できるとともに、側溝の幅より大きなカッターを用いる場合でも、容易にカッターを取り付けられ、場所を選ばずに確実に切断できる側溝切断装置及び側溝切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車道の側面や歩道には、雨水を導き入れるためのU字溝等の側溝が路面を少々傾斜させて設けられているが、最近は通行車両の増加と通行車両の重量が増したことにより、側溝の縁部の破損が生じたり、路面に生じるひび割れ、わだち等の路面補修に伴い、U字溝の縁部を交換することが行われている。また、歩道のバリアフリー化を図るために、U字溝の縁部を切除し車道と歩道の段差を無くすようにすることがある。これ等の場合には作業効率をあげるため、U字溝の側壁の上部を切除し、新しい縁部材を配置して敷設するための側溝切断装置が使用に供されている。
【0003】
この切断作業に適した側溝切断装置が、特許文献1に示すように、本出願人により提案されている。提案されたこの側溝切断装置は、U字溝内の側壁下部に配置したジャッキの伸縮部先端でU字溝を押圧して固定し、ジャッキに固設した走行用のレール上にガイドローラを有する走行自在な架台を設け、架台にU字溝の内側上部に切込みを行うための切込駆動装置と、前記レールに沿って走行させるための送り駆動装置とで構成される切断機本体とを配置したもので、送り駆動装置でレールを移動しながら切込駆動装置で切断するため、U字溝の切断作業が早く正確に仕上げることができる。
【0004】
また、特許文献2に示す側溝切断装置は、側溝の左右上端部に置かれて走行するようにした走行ユニットにフレームを立設し、このフレームに側溝の幅に合わせて走行ユニットの幅を変えられるようにした左右スライドシャフトと、側溝切断装置による切断作業時に伴う装置の左右の移動を、U字溝の上端内壁で規制するための移動規制ローラと、側溝の壁を切断するカッターを配設して上下に移動可能とした上下動スライドシャフト棒とが設けられている。
【特許文献1】特開2006−192677号
【特許文献2】特開2006−28948号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の側溝切断装置は、レールはジャッキの中央固定部のみに載置されるため、側溝の内幅が異なる際の切断作業、特に内幅が大きくなるような場合においては、切込駆動装置の切込角度を大きく振らねばならず、切込駆動装置に負荷をかけることになるため、別の大型用の切断機本体に交換する必要性があり、スペースのとれない作業現場での管理が面倒なことがある。また、所定長さ毎にレールを延長させる手間を要することがある。
【0006】
特許文献2記載の側溝切断装置は、側溝内部にレールを設置する手間を省くことができるが、U字溝内に挿入したカッターによる側溝切断時、特に鉄筋入りコンクリートの切断の際や、側溝の下部を切断する際は抵抗増大による上下動スライドシャフト棒に過大な負荷や振動がかかり、側溝切断装置を損傷する虞がある。
【0007】
また、U字溝の近傍に塀などの障害物が存在すると、障害物により側溝の左右上端部分に走行シャフトを載置することができず、切断装置の使用ができなく、以前のように手作業で切断しなければならなくなってしまう。また、側溝の上部面に段差や縁部の破損による傾斜面が存在すると、側壁の切断位置が途中でずれたり、切断面が斜めになる等して切断作業に支障をきたすといった問題がある。
【0008】
カッターの直径を切断作業の途中で大きな径のものに交換する際に、U字溝の幅が小さいときは、側溝の切断位置の一部の上下に複数の捨て切りを入れ、その部分をはつった後に直径の大きなカッターに交換することが行われるが、複数の捨て切りを入れるための作業に手間が掛かるとともに、はつり部分から大きなカッターを切込み装置に正確に装着するのが困難であった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するために、U字溝等の側溝の底面を自由に走行し、かつ側壁内面に当接する押圧機構で側溝切断装置を安定させ、側壁の切断位置を任意に変えられるとともに、複数の捨て切りが簡単に入れられはつり部分における直径の大きなカッターを容易に装着できる側溝切断装置及び側溝切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、側溝(2)の底面を走行自在とする車輪(5)が配設された架台(4)と、この架台(4)に立設したフレーム(10)と、該フレーム(10)の上部に配設した軸受(12)に一方が軸支され、前記架台(4)に配設した軸受(6)に他方が軸支され架台(4)に対して回動自在の旋回支柱(20)と、該旋回支柱(20)に設けたラック(21)と噛合し上下動自在な台座(22)と、該台座(22)に固設され着脱自在の円盤状のカッター(32)を回転させる駆動部(31)を有する切断部本体(30)と、該切断部本体(30)のカッター(32)を側溝(2)の左右方向に旋回させる前記台座(22)に設けた旋回用ハンドル(25)と、前記架台(4)とフレーム(10)に設けた伸縮自在な押圧機構(33)とを備えるようにしたものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記押圧機構(33)は筒状のケーシング(34)と、該ケーシング(34)内に挿入される保持部材(36)と、該保持部材(36)に支持されたガイドローラ(35)とからなり、保持部材(36)をケーシング(34)に対して摺動させてガイドローラ(35)を側溝の側壁(3)に当接させ、側溝切断装置(1)をガイドローラ(35)にて側溝内で固定安定させるようにしたものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、カッター(32)を切断部本体(30)に装着した側溝切断装置(1)を側溝(2)内に挿入する工程と、ラック(21)と噛合した台座(22)を所定切断位置に上下動させ固定する工程と、カッター(32)にて側溝の側壁(3)に切削溝(50)を形成する工程と、該切削溝(50)の一部分に複数の捨て切り溝(51)を切削溝(50)と平行に切削する工程と、該捨て切り溝(51)部分をはつる工程とからなるようにしたものである。
【0013】
請求項4に係る発明は、側溝(2)の溝幅より小さい直径のカッター(32)を切断部本体(30)に装着した側溝切断装置(1)を側溝内に挿入する工程と、ラック(21)と噛合した台座(22)を所定切断位置に上下動させ固定する工程と、小径のカッター(32)にて側溝の側壁に切削溝(50)を形成する工程と、該切削溝(50)の一部分に複数の捨て切り溝(51)を切削溝(50)と平行に切削する工程と、該捨て切り溝(51)部分をはつり、側壁(3)の中間部分に空間(52)を画成する工程と、該空間で溝の幅より大きい直径のカッター(32)を小径のカッター(32)と交換する工程と、大径のカッターで切削溝を切削する工程とからなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、側溝切断装置は側溝の底面に設置した車輪で側溝空間内を移動可能であるので、側溝の切断位置を従来は不可能であった底面近くの任意の位置で切断可能となり、切断位置の選択肢を広げることができる。また、側溝切断装置全体を側溝空間内に配置させるので、側溝周辺の障害物の存在や側溝上部における破損に関係なく側溝切断を行うことができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、側溝切断装置の架台又はフレームに設けた押圧機構の保持部材を伸張して、保持部材に支持されたガイドローラを側溝内壁に当接させて切断するので、走行中及び切断中もカッターの振動が抑制されて側溝切断装置が安定し、カッターによる切断位置を一定に保つことができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、旋回支柱のラックとの噛合により台座を所定の切断高さ位置に上下動させて固定し、カッターにて両側壁に切削溝を形成した後に、切削溝の一部分に複数の捨て切り溝を切削孔と平行に切削して、捨て切り溝部分をはつるようにしたので、側溝の中間に空間を画成することができ、作業上側溝の縁を交換できないときにも、現状の状態を一時的に保つことができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、側溝の幅より小さい直径のカッターにて側溝を切削した後、切削溝の一部分に切削孔と平行に複数の捨て切り溝を施し、捨て切り溝部分をはつることで側溝の中間に空間を画成するようにしたので、空間部分に側溝の幅より大きい直径のカッターを切削溝と平行に挿入することができ、切断部本体に容易かつ確実にカッターを装着可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明に係るカッターを外した側溝切断装置の前方からの斜視図、図2は側溝切断装置の後方からの斜視図、図3は側溝空間内に配置された側溝切断装置の正面図、図4は側溝切断装置の背面図、図5は押圧機構の断面図、図6はカッターの取付機構、図7は切断作業におけるはつり状態の説明図である。
【0019】
図1乃至図5に示す1実施形態の側溝切断装置1について、側溝がU字溝である場合の例で説明する。側溝切断装置1は側溝2の底面を自在に走行可能な車輪5が配設された架台4と、該架台4に立設したフレーム10と、回動自在な旋回支柱20と、該旋回支柱20に設けたラック21と噛合し旋回支柱20に沿って上下動自在な台座22と、円盤状のカッター32を回転させる駆動部31を有し台座22に固定された切断部本体30と、架台4及びフレーム10に設けられた伸縮自在な押圧機構33を有する。台座22にはカッター32を側壁3に対し台座22を左右方向に回動させる棒状の旋回用ハンドル25が設けられている。
【0020】
架台4は鉄板や鋼板等の金属板により構成され矩形即ち長方形状をなし、その下面はアングル等により適宜補強されるとともに、その下面の4隅と中央のそれぞれに車輪5を配設され、架台4の上面に旋回支柱を軸支するための軸受け6が配設されている。この架台4の前後部分(側溝2の前後方向)に、側溝切断装置1を前後右方向に引っ張るためのロープが結束される係止部7が設けられているが、取り外すことも可能である。そして、架台4の前後に後述する図5に示す押圧機構が固設されている。
【0021】
尚、架台4の下面にピニオンを設け、側溝2の底部に載置した鉄板等の金属板に固設したラックにピニオンを係合して架台4を移動させるようにしてもよい。
【0022】
架台4の進行方向にみて後部には、長方形状のフレーム10が立設されている。図2に示すように、フレーム10の上部に溶接、ボルトナット等により天板11が設けられ、該天板11には旋回支柱20の上部を軸支する軸受12と、側溝切断装置1を人手により押し引きするための取手14が設けられている。
【0023】
天板11に一端が固定された第1の支持片15の他端に、第2の支持片17の一端がヒンジ16により回動自在に連結され、第2の支持片17の他端部に長軸方向に長孔18が形成されている。固定ノブ13の雄ねじ部は第2の支持片17の長孔18挿通されて、旋回支柱20の上部に凸設された突部201に形成されたねじ孔に螺合されている。固定ノブ13、第1の支持片15、第2の支持片17により旋回支柱20が切断方向に旋回された状態に固定するための旋回固定機構19が構成される。
【0024】
旋回支柱20は四角柱を呈し、その上下端部に円柱状の軸受け部(図示せず)が凸設され、これらの軸受け部がフレーム10の上部即ち天板11に設けた上部軸受12と、架台4に設けた下部軸受6との間で軸支される。旋回支柱20の切断面側となる前部に上下方向にラック21が配設されている。
【0025】
前記四角柱の旋回支柱20を抱持して、上下方向に摺動可能な台座22が設けられている。台座22の左右に上下調整用の取手23が設けられ、該取手23は台座22に枢支され、ラック21に係合するピニオン(図示せず)に連結されている。図示例では取手23は外形が6角形状をしており、所謂めがねスパナ状の回動レバー(図示せず)のめがね状角孔を取手23の外周に嵌合してピニオンを回動し、ピニオンラック21上を回転移動させることにより、台座22は旋回支柱20に沿って上下動することができ、例えば公知のラチェットスパナを用いても良い。また、台座22の両側に台座固定手段としてのストッパ24が設けられ、該ストッパは公知のものが使用される。本実施形態ではストッパ24のねじ部(図示せず)は台座22のねじ孔に螺合されており、蝶形つまみ部241を回動することによりねじ部は台座22内方に進行し旋回支柱20の側面に当接するかまたは該側面に一定間隔で設けた孔に係合するように構成されている。
【0026】
台座22の後部中央には、図4に示すように、旋回支柱20を左右方向に旋回してカッターを側溝側壁3に食い込ませるための旋回用ハンドル25が固設され、フレーム10の間隙を通して後方に延在している。
【0027】
この手動による旋回固定ノブ13と旋回用ハンドル25に変えて、天板11上の軸受け12に連結するようにした手動の丸ハンドルにて位置決めしたり、電磁ブレーキ付モータによって旋回支柱20を旋回又は固定するようにしもよい。また旋回用ハンドル25は棒状以外のU字状等の形状としてもよい。
【0028】
台座22の前方に配設された切断部本体30は、駆動部31とこの駆動部31に連結されたカッター32を有する。駆動部31は電動機を具備し、本実施例では内部構造を図示しないが、誘導電動機の速度を検出する速度検出器と、トルク特性を決定する滑り周波数演算器と、最高速度の周波数を設定する周波数設定器と、インバータの周波数を決定する周波数決定器と、電動機ギャップ磁束数が常に一定となるV/fが予め回路中に入力されている電圧演算器とを有し、電動機速度から滑り周波数演算器で演算された滑り周波数と周波数に換算した電動機速度を加え合わせ、この加算値と周波数設定器で設定された最高速度の周波数とを周波数演算器と電圧演算器とに入力し、これらの演算出力を前記インバータの周波数指令値及び電圧指令値とする可変周波数インバータで駆動される高速回転の誘導電動機を使用している。
【0029】
なお、カッター32の駆動部31として、本実施例における電動機の代わりに油圧モータやエアモータを使用してカッターを駆動してもよい。
【0030】
架台4の前方と後方およびフレーム10の下方との3箇所に、夫々左右に伸縮自在な押圧機構33が設けられている。この押圧機構33は図2及び図5に示すように、ケーシング34、ガイドローラ35、保持部材36及び固定部37を有する。両端が開口した筒状体乃至直方体状のケーシング34の開口部分に、ガイドローラ35を一端に保持しケーシング34の開口断面に対応する直方体状の保持部材36が挿入されている。
【0031】
ガイドローラ35を側溝の両側壁3に当接させた後、この保持部材36がケーシング34内を移動しないように固定するための固定手段37が設けられている。固定手段37は蝶型の握り部371、ボルト372及びケーシング34の開口近傍に設けられたナット38を有し、ボルト372をナット38に螺合して保持部36を固定する。固定手段37は図示例の外、公知の固定手段を使用することができる。
【0032】
なお、押圧機構33は切断位置や切削深さ又は曲がった側溝に対して、その取り付け位置及び個数は図示例に限定されず、架台の前方のみに設けたり、前方と後方又はフレームに設けたり、種々変更することができる。ガイドローラ35或いは架台4に配設した車輪の夫々に対して小型モータを配置して、小型モータの力で駆動するようにしてもよい。また、ケーシング34内にコイルスプリング等の弾性体を挿入し、保持部材36を介してガイドローラ35を常に両側壁3に押圧当接するようにしてもよい。
【0033】
カッター32はその取付け及び取り外しの便宜上、図6に示すように、駆動部31の下部に配設され電動機の回転力を受けるカッター基盤39とフランジ40との間に挟持され、ナット41により固定される。カッター基盤39は中央に配置した軸芯42の端部にねじが螺設され、軸芯42に穿設した切削水出口孔43と連通する複数の切削水出口溝44が下面に画成され、また、フランジ40上面に軸芯42の切削水出口孔43に連通した複数の切削水出口溝45が画成され、側壁3切断時のカッター32の冷却を行うとともに、カッター32による切断粉を冷却水の流れと共に流す役割を行う。
【0034】
なお、カッター基盤39にはピン46が植設され、カッター32に穿設した孔部47に挿入されて取付け時の回転を防止するようにしている。
【0035】
以上の構成からなる側溝切断装置1の作用と切断方法を説明する。
【0036】
まず、切断すべき側壁3の側溝2の底部に積もっているゴミや土砂を取り除いて側溝2の底面を露出させる。必要によっては、側溝2の底面に長板や鉄板を載置してその上面を切断しようとする側溝の切断線と平行にする。次に側溝2の幅よりも小さい径のカッター32を装備した側溝切断装置1を側溝2の内部に挿入し、架台4の前方と後方及びフレーム10の3箇所に配設された押圧機構33のケーシング34開口から保持部材36を引き出し伸張し、先端のガイドローラ35を側壁3に当接させた後、固定部37にて保持部材36をケーシング34に掛止する。
【0037】
台座22に設けた取手23を回転し、取手23に連結されたピニオン(図示せず)を旋回支柱20のラック21に対し回転移動することにより、切断すべき側壁3の高さに台座を上下動させて切断位置を決定し、ストッパ24を回動しその先端を旋回支柱20に係合して台座22を旋回支柱20に固定する。
【0038】
そして電動機31のスイッチを入れてカッター32を回転し、旋回固定ノブ13を緩めてから旋回用ハンドル25を、例えば、ゆっくりと左方に回動して旋回支柱20を旋回させる。側壁3をカッター32で所定の深さに切削した後、旋回固定ノブ13を締めて旋回支柱20を固定する。この状態を保ちながら、側溝切断装置1を側溝2の底部に沿って前後に移動しながら側壁3を切削していく。
【0039】
切削時に回動された側溝2の幅よりも小さいカッター32の刃先が、切断すべき側溝2の側壁3の厚さを切断できる場合は、このまま切断作業を終了することになるが、幅よりも小さいカッター32にて切断できない場合は、側溝2の幅よりも大きいカッター32と交換するために、図7に示すはつり作業を行うことになる。
【0040】
即ち、側壁3に切削した切削溝50の一部に、上下調整取手23を少しずつ上方に移動させてカッター32で切削溝50を形成する。図7に示すように、切削溝50と平行に複数、例えば3cmの間隔で10cmの長さに5本の捨て切り51を施し、この捨て切り51部分をはつることで側壁3の中間に半円柱状の空間52を画成する。この画成された空間52内に側溝2の幅よりも大きい直径のカッター32の円弧部分の一部が挿入されるので、従来のように交換すべきカッター32を側溝2内に傾けながら入れることがなく、フランジ40を取り外した後のカッター基盤39の軸芯42に側溝2内で容易かつ確実に挿入可能で、切削溝50と平行に挿入することができる。
【0041】
側溝2の側壁3を切断する速さは、現状復帰のための切断した側溝の縁を新たに載置して蓋板を施していく速さよりも格段に早いため、日没やトラブル等で、1日の作業終了時に側溝の縁を新たに載置して蓋板を施していくことが困難になり、仮の現状復帰を行わざるを得なく段差や強度の問題で交通に支障をきたすことがあるが、本発明の工法では、側壁の中間に半円柱状の空間52を形成するので、仮の現状復帰であっても段差や強度は工事前と変わらず交通に支障を来たすことがない。
【0042】
側溝切断装置1を側溝2内で移動する際に、押圧機構33のガイドローラ35が側溝2の側壁3の表面と離れることなく常に当接しており、カッター32による切断作業中に側溝切断装置1が動くことがなく、かつ側壁3切断のための側溝2内移動中に、左右に蛇行することがなく所定の位置で切断できる。
【0043】
以上の様に、側溝の切断位置を従来は不可能であった底面近くの任意の位置で切断可能とするので、切断位置の選択肢を広げることができる。また、側壁切断装置全体を側溝空間内に配置させるので、側溝周辺の障害物の存在有無や側溝縁部の破損等に関係なく側溝切断を行うことができる。
【0044】
なお、図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記載ではない旨を付記する。即ち、本側溝切断装置1はU字溝以外の側溝にも実施することができ、また、旋回支柱20やケーシング34及び保持部36は図示例の断面四角形以外の多角形や円形にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の1実施形態における側溝切断装置の前方からの斜視図。
【図2】前記側溝切断装置の後方からの斜視図。
【図3】側溝空間内に配置した前記側溝切断装置の正面図。
【図4】前記側溝切断装置の背面図。
【図5】前記側溝切断装置における押圧機構の斜視図。
【図6】前記側溝切断装置におけるカッターの取付機構を示す図。
【図7】前記側溝切断装置によるはつり状態の説明図。
【符号の説明】
【0046】
1・・・側溝切断装置
2・・・側溝
4・・・架台
6,12・・・軸受け
10・・・フレーム
13・・・旋回固定ノブ
20・・・旋回支柱
21・・・ラック
22・・・台座
23・・・上下調整用回取手
25・・・旋回用ハンドル
30・・・切断部本体
31・・・駆動部
32・・・カッター
33・・・押圧機構
34・・・ケーシング
35・・・ガイドローラ
36・・・保持部材
50・・・切削溝
51・・・捨て切り溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側溝の底面を走行自在とする車輪が配設された架台と、この架台に立設したフレームと、該フレームの上部に配設した軸受に一方が軸支され、前記架台に配設した軸受に他方が軸支され架台に対して回動自在の旋回支柱と、該旋回支柱に設けたラックと噛合し上下動自在な台座と、該台座に固設され着脱自在の円盤状のカッターを回転させる駆動部を有する切断部本体と、該切断部本体のカッターを側溝の左右方向に旋回させる前記台座に設けた旋回用ハンドルと、前記架台とフレームに設けた伸縮自在な押圧機構とを備えたことを特徴とする側溝切断装置。
【請求項2】
前記押圧機構は筒状のケーシングと、該ケーシング内に挿入される保持部材と、該保持部材に支持されたガイドローラとからなり、保持部材をケーシングに対して摺動させてガイドローラを側溝の側壁に当接させ、側溝切断装置をガイドローラにて側溝内で固定安定させることを特徴とする請求項1の側溝切断装置。
【請求項3】
カッターを切断部本体に装着した側溝切断装置を側溝内に挿入する工程と、ラックと噛合した台座を所定切断位置に上下動させ固定する工程と、カッターにて側溝の側壁に切削溝を形成する工程と、該切削溝の一部分に複数の捨て切り溝を切削溝と平行に切削する工程と、該捨て切り溝部分をはつる工程とからなることを特徴とする側溝切断装置の側溝切断方法。
【請求項4】
側溝の溝幅より小さい直径のカッターを切断部本体に装着した側溝切断装置を側溝内に挿入する工程と、ラックと噛合した台座を所定切断位置に上下動させ固定する工程と、小径のカッターにて側溝の側壁に切削溝を形成する工程と、該切削溝の一部分に複数の捨て切り溝を切削溝と平行に切削する工程と、該捨て切り溝部分をはつり、側壁の中間部分に空間を画成する工程と、該空間で溝の幅より大きい直径のカッターを小径のカッターと交換する工程と、大径のカッターで切削溝を切削する工程とからなることを特徴とする請求項3の側溝切断装置の側溝切断方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−13817(P2010−13817A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172954(P2008−172954)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(591080313)理研ダイヤモンド工業株式会社 (4)
【出願人】(000107251)ジェーピーイー株式会社 (18)
【Fターム(参考)】