説明

偽造防止対象物の偽造防止方法

【課題】偽造防止対象物の偽造を効果的に防止することができると共に高いコストをかけないでこれを行うことができる。
【解決手段】偽造防止対象物1を樹脂で形成し、その内部に、ホログラム、ICチップを含む回路等の電子情報その他のID機能を有する素子2を一体的に封入してなるものである。具体的な工程は、電子情報その他のID機能を有する素子2を、キャビティー側3Aとコア側3Bからなる金型3内に保持する。キャビティー側3Aとコア側3Bとの合わせ目に形成した樹脂注入口3Cから溶融した樹脂を注入し、冷却して固化させる。固化した樹脂が偽造防止対象物1となり、そして内部に電子情報その他のID機能を有する素子2が一体的に封入された状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム、ICチップを含む回路等の電子情報その他のID機能を有する素子が付着される証明書、証券、IDカード等の偽造防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラム、ICチップを含む回路等の電子情報その他のID機能を有する素子が付着される証明書、証券、IDカード等(以下、「偽造防止対象物」と称す。)は、その表面にホログラム、ICチップを含む回路等の電子情報その他のID機能を有する素子が付着され、そしてその外面を薄い保護層で被覆してなるものが一般的である。
【0003】
しかし、電子情報その他のID機能を有する素子はこのように薄い保護層で被覆しているに過ぎないから、容易にこれを剥がすことができる。そして、これにより、別の電子情報その他のID機能を有する素子と取り替えることによって簡単に偽造防止対象物の偽造を行うことができる。
【0004】
したがって、このような偽造を、コストがかからず、効果的に防止するための対策が要望されているが、従来具体化された例はない。また特許文献にも見当たらない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、コストがかからず、効果的に偽造を防止することができるようになした偽造防止対象物の偽造防止方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
而して、本発明の要旨とするところは、偽造防止対象物を樹脂で形成し、その内部にホログラム、ICチップを含む回路等の電子情報その他のID機能を有する素子を一体的に封入してなることを特徴とする偽造防止対象物の偽造防止方法にある。
【0007】
また、電子情報その他のID機能を有する素子を、キャビティー側とコア側からなる金型内に保持し、樹脂注入口から溶融した樹脂を注入した後冷却して固化させ、もって偽造防止対象物を樹脂で形成し、その内部にホログラム、ICチップを含む回路等の電子情報その他のID機能を有する素子を一体的に封入するようになしてもよい。
【0008】
また、成形可能な樹脂フィルムの裏面に、所定の部分を除いて着色層を形成し、次に該着色層における着色を除いた部分の前記樹脂フィルムと反対側の面に電子情報その他のID機能を有する素子を接着し且つこれを耐熱シートで被覆した状態において前記樹脂フィルムを立体形状に成形し、最後に立体形状に成形した樹脂フィルムの裏面にインサート成形によって所要の厚味に樹脂を裏打ちし、もって偽造防止対象物を樹脂で形成し、その内部に、ホログラム、ICチップを含む回路等の電子情報その他のID機能を有する素子を一体的に封入するようになしてもよい。
【0009】
また、成形可能な樹脂フィルムの裏面に、所定の部分を除いて着色層を形成した後該樹脂フィルムを立体形状に成形し、該立体形状に成形した樹脂フィルムの裏面の着色層における着色を除いた部分に、金型に保持した電子情報その他のID機能を有する素子を臨ませた状態において、該樹脂フィルムの裏面にインサート成形によって所要の厚味に樹脂を裏打ちし、もって偽造防止対象物を樹脂で形成し、その内部に、ホログラム、ICチップを含む回路等の電子情報その他のID機能を有する素子を一体的に封入するようになしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記の如く偽造防止対象物を樹脂で形成し、その内部にホログラム、ICチップを含む回路等の電子情報その他のID機能を有する素子を一体的に封入してなるものであるから、偽造防止対象物自体を破壊しない限りホログラム、ICチップを含む回路等の電子情報その他のID機能を有する素子を取り替えることができないものである。そして、万一偽造防止対象物の一部に破損が見つかれば、偽造された可能性を直ちに認識することができるものである。したがって、偽造防止対象物の偽造を効果的に防止することができると共に、万一偽造された場合、或いは偽造された可能性がある場合に、これを容易に見破ることができるものである。また、偽造防止対象物の一部を破損すれば、それ自体の価値を著しく低下させることになり、この点からも偽造防止を図ることができるものである。また、偽造防止対象物を樹脂で形成し、その内部に電子情報その他のID機能を有する素子を一体的に封入する作業は、インサート成形法によって行うものであるから、高いコストをかけないで行うことができるものである。そしてまた、偽造防止対象物の形状を立体的に且つまた複雑にし、更に大型化すればする程金型のコストが高くなり、これによっても偽造防止を図ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る偽造防止対象物の偽造防止方法を実施するための最良の形態について説明する。
【0012】
図1は本発明の第1実施形態の工程説明図、図2は電子情報その他のID機能を有する素子を保持した状態の金型におけるコア側の平面図、図3は同完成図、図4乃至図6は電子情報その他のID機能を有する素子の熱に対する保護対策の説明図である。
【0013】
本発明は、偽造防止対象物1を樹脂で形成し、その内部にホログラム、ICチップを含む回路等の電子情報その他のID機能を有する素子2を一体的に封入してなることを特徴とするものである。尚、図示した本実施形態は、偽造防止対象物1がIDカードであり、電子情報その他のID機能を有する素子2がICチップを含む回路である場合を示す。
【0014】
また、その具体的な工程は、図1に示す如く、電子情報その他のID機能を有する素子2を、キャビティー側3Aとコア側3Bからなる金型3内に保持し、キャビティー側3Aとコア側3Bとの合わせ目に形成した樹脂注入口3Cから溶融した樹脂を注入し、冷却して固化させるものである。これにより、固化した樹脂が偽造防止対象物1となり、そして内部に電子情報その他のID機能を有する素子2が一体的に封入された状態となるものである。したがって、偽造防止対象物1自体を破壊しない限り電子情報その他のID機能を有する素子2を取り替えることができないものである。
【0015】
また、上記の如く、電子情報その他のID機能を有する素子2を金型3内に保持した状態において溶融した樹脂を注入するについては、注意しなければならない点がある。それは、ホログラム、ICチップを含む回路等の電子情報その他のID機能を有する素子2は熱に弱く、金型3内に注入した樹脂の熱によって破壊される虞れがあることから、熱に対して保護対策をとる必要があることである。
【0016】
そして、この対策としては,二通りが考えられ、その1つは電子情報その他のID機能を有する素子2を耐熱材で被覆することである。具体的には、電子情報その他のID機能を有する素子2を、それが薄い場合には、図1乃至図4に示す如く、2枚の耐熱板(樹脂又はガラス)4、5の間にサンドイッチ状に挟んで被覆するか、或いはそれが厚い場合には、図5に示す如く、肉の厚い耐熱板(樹脂又はガラス)6に凹部6Aを設けてその中に電子情報その他のID機能を有する素子2を落とし込み、その上に肉の薄い耐熱板7を被せることによって行うものである。尚、これらの場合において、金型3内への保持は、図1乃至図4に示す如く、2枚の耐熱板4、5の夫々にピン挿通用の貫通孔4A、5Aを設け、金型3の例えばコア側3Bに植立したピン8を該貫通孔4A、5Aに挿通して保持するか、或いは図5に示す如く、下側に位置する耐熱板6の下面にピン嵌入用の凹部6Bを設け、金型3の例えばコア側3Bに植立したピン9を該凹部6Bに嵌入して行うものである。
【0017】
また、もう1つの対策は、電子情報その他のID機能を有する素子2を、金型3における樹脂注入口3Cから遠ざけて保持することである。これは金型3内に樹脂注入口3Cから入り込んだ樹脂は、金型3内を流動しているうちに冷却され、樹脂注入口3Cから遠ざかる程温度が低くなることに加えて流動性も少なくなることによるものである。これの具体例を図6に示しており、電子情報その他のID機能を有する素子2を金型3のコア側3Bにおける樹脂注入口3Cと反対側に保持している。尚、更に好ましくは樹脂注入口3Cと反対側における隅の部分が最適である。また、図示はしないが、金型3において樹脂注入口3Cを長さ方向の左右両側に設けている場合にあっては、長さ方向の中央部、より好ましくは幅方向の両端寄りの位置が最適である。
【0018】
次に、図7及び図8に示した本発明の第2実施形態について説明する。図7は工程説明図、図8は同完成図である。
【0019】
而して、本実施形態は、偽造防止対象物を立体的な形態とする場合であり、成形可能な樹脂フィルム10の裏面に、所定の部分11aを除いて着色層11を形成し、次に該着色層11における着色を除いた部分11aの前記樹脂フィルム10と反対側の面に電子情報その他のID機能を有する素子12を接着し且つこれを耐熱シート15で被覆した状態において前記樹脂フィルム10を立体形状に成形し、最後に立体形状に成形した樹脂フィルム10の裏面にインサート成形によって所要の厚味に樹脂13を裏打ちし、冷却して固化させるものである。これにより樹脂フィルム10とこれに裏打ちした樹脂13とが偽造防止対象物14となり、そして内部に電子情報その他のID機能を有する素子12が一体的に封入された状態となるものである。したがって、偽造防止対象物14自体を破壊しない限り電子情報その他のID機能を有する素子12を取り替えることができないものである。
【0020】
また、ここで上記立体形状に成形した樹脂フィルム10の裏面に、インサート成形により所要の厚味に樹脂13を裏打ちする作業について説明する。この作業は、図7に示す金型16を用いたインサート成形法により行う。該金型16はキャビティー側16Aとコア側16Bとからなり、キャビティー側16Aには前記立体形状に成形した樹脂フィルム10を嵌め込む凹部16aを形成する一方、コア側16Bには該凹部16a内に所要の間隙をとって嵌め込む凸部16bを形成している。そしてまた、該金型16におけるキャビティー側16Aとコア側16Bとの合わせ目には樹脂注入口16Cを形成すると共に、コア側16Bには該樹脂注入口16Cに連通する、先端が窄まった彎曲した樹脂注入口16Dが設けられている。そして、該樹脂注入口16Dから凸部16bに設けた注入孔16Eを介して樹脂フィルム10の裏面中央部に溶融した樹脂13を注入するものである。そしてまた、このときには金型16におけるキャビティー側16Aとコア側16Bとの間に樹脂フィルム10の周縁部の張り出し部分10Aを挟持させるものである。また、その他17、18は固化した樹脂を突き出すエジェクタピンである。尚、インサート成形法は公知であるから、その詳細な説明は省略する。
【0021】
次に、図9に示した本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態は前記第2実施形態の変形例であり、成形可能な樹脂フィルム10の裏面に、所定の部分を除いて着色層11を形成した後樹脂フィルム10を立体形状に成形し、該立体形状に成形した樹脂フィルム10の裏面の着色層11における着色を除いた部分11aに、金型16に保持した電子情報その他のID機能を有する素子12を臨ませた状態において、該樹脂フィルム10の裏面にインサート成形によって所要の厚味に樹脂13を裏打ちし、冷却して固化させるものである。而して、本実施形態においては電子情報その他のID機能を有する素子12を保持する仕方において前記第2実施形態と相違している。即ち、本実施形態においては前記の通り金型16に電子情報その他のID機能を有する素子12を保持している。尚、19、20は電子情報その他のID機能を有する素子12をサンドイッチ状に挟んで被覆した耐熱板(樹脂又はガラス)であり、21はピンである。また、その他の構成並びにインサート成形による樹脂の裏打ち作業は前記第2実施形態と同様であるから、同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態の工程説明図である。
【図2】電子情報その他のID機能を有する素子を保持した状態の金型におけるコア側の平面図である。
【図3】同完成図である。
【図4】電子情報その他のID機能を有する素子の熱に対する保護対策の説明図であり、耐熱板で被覆する例を示すものである。
【図5】電子情報その他のID機能を有する素子の熱に対する保護対策の説明図であり、耐熱板で被覆する他の例を示すものである。
【図6】電子情報その他のID機能を有する素子の熱に対する保護対策の説明図であり、金型における樹脂注入口から遠ざけて保持する例を示すものである。
【図7】本発明の第2実施形態の工程説明図である。
【図8】同完成図である。
【図9】本発明の第3実施形態の工程説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 偽造防止対象物
2 電子情報その他のID機能を有する素子
3 金型
3A 金型のキャビティー側
3B 金型のコア側
3C 樹脂注入口
4、5 耐熱板
6、7 耐熱板
8、9 ピン
10 樹脂フィルム
11 着色層
11a 着色を除いた部分
12 電子情報その他のID機能を有する素子
13 樹脂
14 偽造防止対象物
15 耐熱シート
16 金型
16A 金型のキャビティー側
16B 金型のコア側
16C 樹脂注入口
19、20 耐熱板
21 ピン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
偽造防止対象物を樹脂で形成し、その内部にホログラム、ICチップを含む回路等の電子情報その他のID機能を有する素子を一体的に封入してなることを特徴とする偽造防止対象物の偽造防止方法。
【請求項2】
電子情報その他のID機能を有する素子を、キャビティー側とコア側からなる金型内に保持し、樹脂注入口から溶融した樹脂を注入した後冷却して固化させ、もって偽造防止対象物を樹脂で形成し、その内部にホログラム、ICチップを含む回路等の電子情報その他のID機能を有する素子を一体的に封入してなる請求項1記載の偽造防止対象物の偽造防止方法。
【請求項3】
成形可能な樹脂フィルムの裏面に、所定の部分を除いて着色層を形成し、次に該着色層における着色を除いた部分の前記樹脂フィルムと反対側の面に電子情報その他のID機能を有する素子を接着し且つこれを耐熱シートで被覆した状態において前記樹脂フィルムを立体形状に成形し、最後に立体形状に成形した樹脂フィルムの裏面にインサート成形によって所要の厚味に樹脂を裏打ちし、もって偽造防止対象物を樹脂で形成し、その内部に、ホログラム、ICチップを含む回路等の電子情報その他のID機能を有する素子を一体的に封入してなる請求項1記載の偽造防止対象物の偽造防止方法。
【請求項4】
成形可能な樹脂フィルムの裏面に、所定の部分を除いて着色層を形成した後該樹脂フィルムを立体形状に成形し、該立体形状に成形した樹脂フィルムの裏面の着色層における着色を除いた部分に、金型に保持した電子情報その他のID機能を有する素子を臨ませた状態において、該樹脂フィルムの裏面にインサート成形によって所要の厚味に樹脂を裏打ちし、もって偽造防止対象物を樹脂で形成し、その内部に、ホログラム、ICチップを含む回路等の電子情報その他のID機能を有する素子を一体的に封入してなる請求項1記載の偽造防止対象物の偽造防止方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−217767(P2009−217767A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63568(P2008−63568)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(391047411)土屋工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】