説明

傾斜複合粒子およびその製造方法

【課題】 傾斜複合粒子、それを焼成してなる傾斜複合粒子、並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】 2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向かって、組成が段階的または連続的に変化している傾斜複合粒子、それを焼成してなる傾斜複合粒子、並びに1〜3個の非加水分解性基と3〜1個のアルコキシル基を有する有機ケイ素化合物の中から2種以上を選び、加水分解、縮合させて、傾斜複合粒子を形成させたのち、乾燥処理し、次いで200〜700℃で焼成することにより、傾斜複合粒子を製造する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な傾斜複合粒子、その製造方法および該傾斜複合粒子からなる液晶表示装置用スペーサに関する。さらに詳しくは、本発明は組成が中心部から表面方向に向って変化しているシリカ系傾斜複合粒子、それを焼成してなる10%圧縮弾性率の制御が容易であって、10%圧縮弾性率および回復率を損なうことなく、破壊強度を向上させた単分散性の傾斜複合粒子、このものを効率よく製造する方法、および該焼成傾斜複合粒子からなる液晶表示装置用スペーサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粒径分布が単分散状のシリカ粒子(以下、単に単分散シリカ粒子ということがある)は、各種充填材やセラミックス原料などとして有用であることが知られているが、特に最近では、液晶表示装置のスペーサとしての用途が注目され、使用され始めている。
【0003】
液晶表示装置のスペーサには、従来ガラスファイバーチップあるいは合成樹脂の微粒子が用いられてきた。しかしながらガラスファイバーチップはファイバー径精度には優れているものの、その長さにばらつきが大きく、余りに長いものは目視され画質を低下するおそれがあり、またその端部が鋭利であるため、基板上に成形された配向膜や保護膜、カラーフィルターあるいは電気素子などを傷つけてしまうおそれがある。また、合成樹脂の微粒子は粒径精度が劣るため、液晶表示装置用スペーサとして要求される性能を満たし得ないことがある。したがって、より高度のギャップ精度を要求される場合には、粒径精度が良く、かつ球形で、基板上に形成された配向膜や保護膜、カラーフィルターあるいはITO導電膜等の電気素子を傷つけるおそれのないものが要求される。
【0004】
これらの要求を満たすものとして、アルコキシシランを加水分解・重縮合することによって得られたシリカ粒子が提案されている。このシリカ粒子は、
(1)純度が高く、溶出成分による液晶への影響が少ない
(2)粒径精度が良く、下式
CV(%)=[微粒子径の標準偏差(μm)]
/[平均粒子径(μm)]×100
で得られるCV値(変動係数)を10%以下とすることができるなどの利点を有している。
【0005】
しかし、シリカ粒子は変形性に乏しく、また、その硬さからカラーフィルターへのめり込みを起こすことから、液晶の配向不良を発生させたり、液晶との熱膨張係数の差が大きいため低温下で液晶の収縮に追随することができず、液晶素子内に気泡を生じ、表示機能に支障をきたす等の問題があった。
そこで、最近、樹脂粒子とシリカ粒子の中間の硬さを有し、シリカ粒子よりも液晶に近い熱膨張係数を持つ、有機成分を有するシリカ粒子の開発が行われてきた。
【0006】
アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合により得られた有機成分を有するシリカ粒子は上記のような利点を有するため、これまで数多くの製造方法が提案されている。
例えば、メチルトリメトキシシランを原料とし、ポリメチルシルセスキシロキサン微粒子を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法においては、技術内容から、単分散でかつ硬さが制御された回復率の良好な粒子を得ることは困難である。また、一般式
Si(OR′)4−m
(式中、RおよびR′は、それぞれ特定の有機基を示し、mは0〜3の整数である。)
で表される有機ケイ素化合物を加水分解、縮合して得られた粒子を熱処理することで、特定の圧縮弾性率を有する粒子からなる液晶セル用スペーサを製造する技術が開示されている(特許文献2参照)。この技術においては、スペーサの圧縮弾性率は、熱処理工程において、粒子内部に存在する有機基の一部を分解し、その分解程度により制御されている。しかしながら、この場合、熱分解された粒子内部の有機基部分にボイドが発生し、得られた液晶セル用スペーサの破壊強度が低下するのを免れないという問題があった。
【0007】
そこで、テトラエトキシシランなどの4官能性アルコキシドをメチルトリメトキシシランなどの3官能性アルコキシドと複合し、破壊強度を向上させることが多く検討されてきたが、この場合、加水分解、縮合の特性が異なるため、粒子内で均一に複合した粒子を得ることは困難で、初期圧縮曲線に変曲点がみられる場合が多く、このような急激な弾性率が変化する点を有することは、液晶セル用スペーサとしては好ましくないという問題があった。
【0008】
さらに、乾燥工程として熱処理を行うが、有機基を分解しないで特定の範囲の圧縮弾性率を有する粒子を製造する技術が開示されている(特許文献3および4参照)。しかしながら、この場合、粒子成分によって圧縮弾性率が決まり、圧縮弾性率が特定範囲にある粒子は作製できるが、その圧縮弾性率の範囲において、任意に圧縮弾性率を制御することは困難である。
なお、任意に圧縮弾性率を制御する理由は、液晶基板内に存在するカラーフィルターや保護膜などの硬さが、液晶表示素子メーカー各社において様々であり、要求される硬さが異なるのが現状であり、それに対応するためである。
【0009】
一方、これらのすべての粒子について言えることであるが、破壊強度を向上させるために、4官能アルコキシドを均一な状態で複合すると、複合しない粒子と比較した場合、破壊強度は向上するが、一般に、破壊強度の向上と共に、10%圧縮弾性率も変化し、高くなる上、シロキサン骨格の柔軟さが減るために、回復率が低下するのを免れないという問題が生じる。
【0010】
このように、従来のシリカ系粒子においては、それぞれ問題点を有しており、単分散性を有し、かつ10%圧縮弾性率の制御が容易であって、その値を低く抑えると共に、回復率を損なうことなく、破壊強度を向上させたシリカ系粒子は、まだ見出されていないのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平4−70335号公報
【特許文献2】特許第2698541号
【特許文献3】特開平8−81561号公報
【特許文献4】特開平9−59384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような事情のもとで、10%圧縮弾性率の制御が容易であって、10%圧縮弾性率および回復率を損なうことなく、破壊強度を向上させた単分散性の球状シリカ系粒子、このものを効率よく製造する方法、および該粒子からなる液晶表示装置用スペーサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、(1)10%圧縮弾性率を任意に制御するには、破壊強度が低下する問題はあるものの、有機ケイ素化合物を加水分解、縮合して得られた粒子を熱処理し、その際熱処理条件を変化させることが有利であること、(2)10%圧縮弾性率などで表される荷重に対する初期の圧縮弾性率は、粒子の表面付近の物性が大きく影響を及ぼし、一方、破壊強度は、主に粒子中心部から表面側に向う引張強度と考えられ、したがって破壊強度を高くするには、特に粒子中心部を高くするのが有利である。したがって、粒子の中心部分は強度が高く、表面部分は柔らかい粒子が望ましいこと、(3)しかし、上記(2)の性状を有する粒子においては、粒子中心部と表面部には大きな硬さの差が生じるため、その異なる2種類の物性をもつ材質の界面には、一般に応力を粒子全体に分散させることができず、応力が集中して亀裂を生じ、逆に破壊強度の低下を引き起こしたり、荷重に対する圧縮変位を示す曲線である初期圧縮曲線において、その界面付近で変曲点がみられ、液晶セルのギャップを均一に保持するのに支障をきたすおそれがあること、さらに、荷重に対する粒子の回復性においても、同様の理由から支障をきたすおそれがあること、などに着目した。
【0014】
本発明者らは、これらの着目に基づき、さらに研究を進め、粒子の中心部から表面に向って傾斜的に硬さが異なるようにすれば、上記(3)の問題を解決しうること、そして、このような傾斜粒子は、ケイ素原子に結合した1〜3個の非加水分解性基と3〜1個のアルコキシル基を有する有機ケイ素化合物の中から2種以上を選び、加水分解、縮合させることにより、2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向って組成が段階的または連続的に変化している球状複合粒子を形成させたのち、特定の温度で焼成することにより、得られることを見出した。
【0015】
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)異なる有機基を有する2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向かって、組成が段階的または連続的に変化していることを特徴とする傾斜複合粒子(以下、傾斜複合粒子Iと称す。)、
(2)異なる有機基を有する2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向かって、組成が段階的または連続的に変化している球状複合粒子を焼成してなることを特徴とする傾斜複合粒子(以下、傾斜複合粒子IIと称す。)、および
(3)上記傾斜複合粒子IIからなる液晶表示装置用スペーサ、
を提供するものである。
【0016】
上記傾斜複合粒子IIは、本発明に従えば、ケイ素原子に結合した1〜3個の非加水分解性基と3〜1個のアルコキシル基を有する有機ケイ素化合物の中から2種以上を選び、加水分解、縮合させることにより、2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向って組成が段階的または連続的に変化している球状複合粒子を形成させたのち、乾燥処理し、次いで200〜700℃の温度において焼成することにより、製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、10%圧縮弾性率の制御が容易であって、10%圧縮弾性率および回復率を損なうことなく、破壊強度を向上させた単分散性の傾斜複合粒子を容易に得ることができる。この傾斜複合粒子は、特に液晶表示装置用スペーサとして好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1で得られた傾斜複合粒子(1−4)および比較例1で得られた粒子(7−3)の初期圧縮曲線を示すグラフである。
【図2】比較例3で得られた複合粒子の初期圧縮曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の傾斜複合粒子Iは、実質上真球状の複合シリカ系粒子であって、異なる有機基を有する2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向かって、組成が段階的または連続的に変化している球状複合粒子であり、傾斜複合粒子IIは、この粒子を焼成してなるものである。
【0020】
この傾斜複合粒子IIの物性としては、10%圧縮弾性率(X)が19.6GPa(2000kgf/mm)以下であって、破壊強度(Y)が式
Y(GPa)≧0.13X−0.196
の関係を満たし、かつ回復率が90%以上であることが肝要である。10%圧縮弾性率、破壊強度および回復率のいずれか1つでも上記範囲を逸脱すると、液晶表示装置用スペーサとしての性能を充分に満たすことができなくなるおそれがある。液晶装置用スペーサの性能の面から、特に10%圧縮弾性率は3〜15GPa(300〜1500kgf/mm)の範囲が好ましく、更に好ましくは、5〜10GPa(500〜1000kgf/mm)の範囲が好ましい。一方、破壊強度は500MPa(50kgf/mm)以上が好ましい。
【0021】
なお、上記10%圧縮弾性率、破壊強度および回復率は、微小圧縮試験機(島津製作所製MCTE−200)を用い、以下に示す方法で測定した値である。
(1)10%圧縮弾性率(n=10)
微小圧縮試験機(島津製作所MCTE−200)により、試料台上に粒子を散布し、その中の試料粒子1個について、粒子の中心方向に一定の負荷速度で荷重をかけ、荷重−圧縮変位を測定し、粒子径の10%変位時の荷重を求めた。この荷重と粒子の圧縮変位及び粒子径を次式に代入し、10%圧縮弾性率を算出した。なお、負荷速度は、0.284mN/秒(0.029gf/秒)にて行った。
E=[3×P10×(1−K)]/[20.5×S1.5×R0.5
[ただし、Eは圧縮弾性率(MPa)、P10は圧縮荷重(N)、Kは粒子のポアソン比(定数0.38)、Sは圧縮変位(mm)、Rは粒子の半径(mm)である。]
【0022】
(2)破壊強度(n=10)
上記測定機を用いて、同様に試料粒子1個について、圧縮破壊荷重を求め、次式により破壊強度を算出した。なお、負荷速度は、2.65mN/秒(0.27gf/秒)にて行った。
St(MPa)=2.8P/πd
[ただし、Pは圧縮破壊強度(N)、dは試料の粒径(mm)である。]
【0023】
(3)回復率(n=10)
上記測定機を用いて、同様に試料台上に散布した粒子1個について、粒子中心方向に、反転荷重値(1.96mN=0.2gf)まで負荷を与え、その後原点用荷重値(0.098mN=0.01gf)まで徐荷を行った。この間の荷重−圧縮変位を測定し、原点用荷重値から反転荷重値までの変位をL1とし、原点用荷重値から、反転荷重徐荷後の原点用荷重値までの変位をL2とし、下記式に代入し、回復率を求めた。なお、この際の負荷速度は1.42mN/秒(0.145gf/秒)とした。
回復率(%)=[(L−L)/L]×100
【0024】
また、本発明の傾斜複合粒子IIは、荷重に対する圧縮変位を示す初期圧縮曲線において、変曲点のないものが、液晶表示装置用スペーサの性能の面から好ましい。
【0025】
さらに、本発明の傾斜複合粒子I、IIは、平均粒径が通常0.5〜15μm、好ましくは1〜10μmであり、また、粒度分布の変動係数(CV値)が、通常3.0%以下であって、実質上真球状の単分散粒子である。
【0026】
本発明の傾斜複合粒子IIは、異なる有機基を有する2種以上のポリオルガノシロキサンを有する粒子を焼成することにより得られたものであるが、上記ポリオルガノシロキサンが有機成分の熱分解温度が異なる2種からなり、かつその熱分解温度差が50℃以上であるものが好ましい。そして、有機成分の熱分解温度の低いポリオルガノシロキサンが中心部に向って多くなるように存在し、かつ有機成分の熱分解温度の高いポリオルガノシロキサンが表面側に向って多くなるように存在する球状複合粒子を焼成してなるものが特に好適である。
【0027】
球状複合粒子の焼成は、一般には200〜700℃の範囲の温度で行われるが、上記のように、ポリオルガノシロキサンを2種のみ有する場合には、有機成分の熱分解温度の低いポリオルガノシロキサンの熱分解温度より高く、かつ有機成分の熱分解温度の高いポリオルガノシロキサンの熱分解温度より低い温度で行うことが好ましい。
【0028】
また、本発明の傾斜複合粒子IIにおいては、特に、前記の有機成分の熱分解温度の低いポリオルガノシロキサンがビニルトリメトキシシランの加水分解縮合物であり、かつ有機成分の熱分解温度の高いポリオルガノシロキサンがメチルトリメトキシシランの加水分解縮合物であるものが好ましい。上記ビニルトリメトキシシランの加水分解縮合物であるポリビニルシルセスキシロキサン(PVSO)からなる単独粒子と、メチルトリメトキシシランの加水分解縮合物であるポリメチルシルセスキシロキサン(PMSO)からなる単独粒子を同条件で焼成した場合において、PMSOのメチル基が分解しない条件以下で、かつPVSOのビニル基が一定量以上分解する条件(窒素雰囲気下では、焼成温度が約270℃以上640℃以下の間である。)では、PMSO粒子は低圧縮弾性率を有するが、一方のPVSO粒子は高圧縮弾性率及び高い破壊強度を有し、しかもその温度条件差は、窒素雰囲気下で200℃以上と大きい。したがって、これらのPMSOとPVSOを粒子内部において傾斜的に複合させた粒子(PVSOを中心部に向って多くなるように存在させるとともに、PMSOを表面側に向って多くなるように存在させた粒子)を、上記範囲の温度で焼成することにより、所望の物性を有する傾斜複合粒子IIを容易に得ることができる。また、所望の物性を有する粒子を得るための焼成温度幅が大きいため、その温度条件範囲内において、任意の10%圧縮弾性率の粒子を得ることが可能となる。
【0029】
さらに、原料のビニルトリメトキシシラン及びメチルトリメトキシシランは、入手が容易であり、かつ安価である上、加水分解、縮合性が比較的似ているので、複合粒子の合成が容易であるなどのメリットも有している。
本発明の傾斜複合粒子I、IIの製造方法としては前記性状を有する傾斜複合粒子I、IIが得られる方法であればよく、特に制限はないが、以下に示す本発明の方法に従えば、効率よく所望の傾斜複合粒子I、IIを製造することができる。
【0030】
本発明の方法においては、原料として、ケイ素原子に結合した1〜3個の非加水分解性基と3〜1個のアルコキシル基を有する有機ケイ素化合物の中から2種以上を選択して用いる。
上記有機ケイ素化合物としては、一般式(I)
nSi(OR4−n …(I)
で表される化合物(nは1〜3の整数である)を用いることができる。
【0031】
上記一般式(I)において、Rは炭素数1〜20のアルキル基、(メタ)アクリロイルオキシ基若しくはエポキシ基を有する炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。ここで、炭素数1〜20のアルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、またこのアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。(メタ)アクリロイルオキシ基若しくはエポキシ基を有する炭素数1〜20のアルキル基としては、上記置換基を有する炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、またこのアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。この置換基を有するアルキル基の例としては、γ−アクリロイルオキシプロピル基、γ−メタクリロイルオキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数2〜20のアルケニル基としては、炭素数2〜10のアルケニル基が好ましく、また、このアルケニル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基などが挙げられる。炭素数6〜20のアリール基としては、炭素数6〜10のものが好ましく、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられる。炭素数7〜20のアラルキル基としては、炭素数7〜10のものが好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0032】
一方、Rは炭素数1〜6のアルキル基であって、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。nは1〜3の整数であり、Rが複数ある場合、各Rはたがいに同一であってもよいし、異なっていてもよく、またORが複数ある場合、各ORはたがいに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
前記一般式(I)で表されるケイ素化合物の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0034】
本発明の方法においては、まずこれらの有機ケイ素化合物の中から2種以上選び、加水分解、縮合させることにより、2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向って組成が段階的または連続的に変化している球状複合粒子(傾斜複合粒子I)を形成させる。この際、2種以上の有機ケイ素化合物としては、傾斜複合粒子II用には、その加水分解縮合物であるポリオルガノシロキサンの熱分解温度が50℃以上異なる2種の有機ケイ素化合物を選択し、用いるのが好ましく、特に前述の理由から、ビニルトリメトキシシランとメチルトリメトキシシランを用いるのが好適である。
【0035】
前記球状複合粒子(傾斜複合粒子I)は、例えば(1)ケイ素原子に結合した1〜3個の非加水分解性基と3〜1個のアルコキシル基を有する有機ケイ素化合物の中から選ばれた単独または2種以上を含み、かつそれぞれ組成が異なる複数組の有機ケイ素化合物を、二段階以上で加水分解、縮合反応させる方法、あるいは(2)ケイ素原子に結合した1〜3個の非加水分解性基と3〜1個のアルコキシル基を有する有機ケイ素化合物の中から選ばれた2種以上の有機ケイ素化合物を用い、該有機ケイ素化合物を含む水溶液を、その組成を連続的に変化させながら一段階で加水分解、縮合反応させる方法、により製造することができる。上記(1)の方法によれば、2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向って組成が実質上段階的に変化している球状複合粒子が得られる。一方、(2)の方法によれば、2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向って組成が実質上連続的に変化している球状複合粒子が得られる。
【0036】
この際、傾斜複合粒子II用としては、有機成分の熱分解温度の低いポリオルガノシロキサンが中心部に向って多くなるように存在させ、かつ有機成分の熱分解温度の高いポリオルガノシロキサンが表面側に向って多くなるように存在させるのが好ましい。例えば、原料としてビニルトリメトキシシランとメチルトリメトキシシランを用いる場合、ポリビニルシルセスキシロキサン(PVSO)が中心部に向って多くなるように存在させ、ポリメチルシルセスキシロキサン(PMSO)が表面側に向って多くなるように存在させるのがよい。
【0037】
まず、前記(1)の方法における加水分解、縮合反応について説明すると、前記有機ケイ素化合物単独または2種以上の混合物と、アンモニアおよび/またはアミンを含有する水溶液または水と有機溶剤との混合溶剤溶液(以後、この水溶液、混合溶剤溶液を水性溶液と称すことがある。)とを、好ましくは実質上混合することなく、2層状態を保持しながら、界面で反応させる。
【0038】
上記アンモニアやアミンは、有機ケイ素化合物の加水分解、縮合反応の触媒である。ここで、アミンとしては、例えばモノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミンなどを好ましく挙げることができる。このアンモニアやアミンは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、毒性が少なく、除去が容易で、かつ安価なことから、アンモニアが好適である。
【0039】
このアンモニアやアミンは、水溶液または水と有機溶剤との混合溶剤溶液として用いられる。ここで、有機溶剤としては、水混和性のものが好ましく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール類、アセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテルなどのエーテル類などが挙げられる。
【0040】
アンモニアやアミンの使用量としては特に制限はないが、反応開始前の下層の水層のpHが、7.5〜11.0の範囲になるように選定するのが好ましい。また、反応温度は、原料の有機ケイ素化合物の種類などに左右されるが、一般的には0〜60℃の範囲で選ばれる。
【0041】
次に、上層が実質上消失したのち、上記とは異なる組成の有機ケイ素化合物単独または2種以上の混合物を用い、上記と同様にして2段目の加水分解、縮合反応を行い、さらに、必要に応じ、組成の異なる有機ケイ素化合物単独又は2種以上の混合物を用い、上記と同様の操作を所望回数繰り返す。
【0042】
最後の加水分解、縮合反応において、上層が消失したのち、反応系にアンモニアおよび/またはアミンを添加し、熟成させる。この熟成は反応の際と同じ温度で行ってもよいし、若干昇温して行ってもよい。
熟成終了後は、常法に従い生成した粒子を充分に洗浄したのち、必要ならば分級処理を行い、極大粒子または極小粒子を取り除き、乾燥処理を行う。分級処理方法としては特に制限はないが、粒径により沈降速度が異なるのを利用して分級を行う湿式分級法が好ましい。乾燥処理は、通常常温〜150℃の範囲の温度で行われる。
【0043】
次に、前記(2)の方法における加水分解、縮合反応についてその1例を説明すると、まず、前記有機ケイ素化合物単独または2種以上を含み、かつそれぞれ組成の異なる水溶液2種以上を調製する。次いで、これらの水溶液を、連続的に同一速度で次から次に他の水溶液に加えながら、最後の水溶液を前述のアンモニアおよび/またはアミンを含有する水性溶液中に連続的に、上記と同一速度で滴下する。具体的には、例えば(A)、(B)、(C)及び(D)のそれぞれ組成の異なる有機ケイ素化合物含有水溶液を調製したとする。この場合、連続的に同一速度で(D)を(C)に加え、その(C)を(B)に加え、さらにその(B)を(A)に加えながら、該(A)をアンモニアおよび/またはアミンを含有する水性溶液中に連続的に、上記と同一速度で滴下する。滴下終了後、1〜4時間程度熟成して、加水分解、縮合反応させる。反応温度は、通常0〜60℃の範囲で選ばれる。次に、反応系にアンモニアおよび/またはアミンを添加し、十分に熟成させる。この熟成は反応の際と同じ温度で行ってもよいし、若干昇温して行ってもよい。
【0044】
その後は、前記(1)の場合と同様な操作を行うことにより、所望の球状複合粒子(傾斜複合粒子I)が得られる。
この方法によれば、反応場に滴下される有機ケイ素化合物含有水溶液の組成が連続的に変化していくので、前記(1)の方法で得られたものが、実質上段階的な傾斜構造を有するのに対し、実質上連続的な傾斜構造を有する粒子が得られる。また、各有機ケイ素化合物をそれぞれ水に溶かし、水溶液として用いるので、反応場における溶媒に対する溶解速度差による影響を、粒子形成において受けなくなるため、傾斜複合構造を前記(1)の2層系の反応よりも作りやすい。
【0045】
このようにして、単分散性の球状複合粒子(傾斜複合粒子I)を得たのち、焼成処理することにより、傾斜複合粒子IIが得られる。この焼成処理温度は、通常200〜700℃の範囲で選ばれるが、該球状複合粒子中のポリオルガノシロキサンが2種類のみである場合には、有機成分の熱分解温度の低いポリオルガノシロキサンの熱分解温度より高く、かつ有機成分の熱分解温度の高いポリオルガノシロキサンの熱分解温度より低い範囲の温度で選定するのがよい。また、この焼成処理は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことができる。焼成時間は、球状複合粒子の種類および焼成温度などにより左右され、一概に定めることはできないが、一般的には0.5〜10時間程度である。
【0046】
このようにして焼成処理終了後、必要ならば分級処理を行い、焼成で合一した粒子を取り除いてもよい。
このようにして、10%圧縮弾性率、破壊強度及び回復率が所望の範囲にある単分散性の実質上真球状の傾斜複合粒子IIが得られる。
本発明の傾斜複合粒子IIは、前記の性状を有することから、特に、液晶表示装置用スペーサとして好適である。
【実施例】
【0047】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
300ミリリットル容のプラスチック容器に、1モル/リットル濃度のアンモニア水0.2ミリリットル/リットルを含有する水溶液250ミリリットルを入れ、これを磁気撹拌装置によって約60rpmで撹拌しながら、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)5gをゆっくり添加し、上層にVTMS層を形成させた。次いで、これを室温にて上層が完全に消失するまで撹拌したのち、VTMS3.3gとメチルトリメトキシシラン(MTMS)1.7gとの均質混合液をゆっくり添加し、上層にVTMSとMTMSの混合液層を形成させ、さらにこの上層が完全に消失するまで撹拌した。次に、VTMS2.5gとMTMS2.5gとの均質混合液、VTMS1.7gとMTMS3.3gとの均質混合液及びMTMS5gを、上記と同様にして、それぞれ順次添加していき、傾斜的にケイ素化合物の組成を変化させてポリメチルシルセスキオキサン(PMSO)/ポリビニルシルセスキオキサン(PVSO)粒子の形成を行った。
【0048】
最後に添加したMTMS層消失後から、約2時間そのまま撹拌を行ったのち、25重量%アンモニア水2ミリリットルを添加し、形成した粒子を固化させた。さらに、一夜熟成後、遠心分離して得られた粒子をメタノール中に投入してデカンテーションしたのち、アンモニア水の添加による粒子固化時に形成した微小粒子の除去を行い、約50℃で乾燥処理して、乾燥粉末を得た。
【0049】
得られた粉末について、コールカウンターにて粒度分布及び粒径を測定した結果、大きな粒径ピークは1つだけ観察され、平均粒径が3.232μm、CV値が1.55%の単分散粒子が得られていることが確認された。また、この粒子の赤外吸収スペクトルの測定により、PVSOとPMSOの複合粒子であることが確認された。
【0050】
次に、このようにして得られた粒子を、窒素雰囲気下、280〜400℃の各温度で2時間焼成を行い、表1に示す性状の粒子1−1〜1−5を得た。なお、10%圧縮弾性率、破壊強度及び回復率は、微小圧縮試験機(島津製作所製MCTE−200)にて測定した。
【0051】
【表1】

【0052】
また、これらの粒子について、荷重と圧縮変位との関係(初期圧縮曲線)を求めた。粒子1−4の例をグラフにして図1に示す。この図から分かるように、変曲点がなく、非常に滑らかな曲線であった。なお、他の粒子も同様であった。
【0053】
実施例2
300ミリリットル容のプラスチック容器に、1モル/リットル濃度のアンモニア水0.12ミリリットル/リットルを含有する水溶液250ミリリットルを入れ、これを磁気撹拌装置によって約60rpmで撹拌しながら、VTMS12.5gをゆっくり添加し、上層にVTMS層を形成させた。次いで、これを室温にて上層が完全に消失するまで撹拌したのち、MTMS12.5gをゆっくり添加し、上層にMTMS層を形成させ、同様に上層が完全に消失するまで撹拌した。その後、実施例1と同様に操作して乾燥粉末を得た。
【0054】
得られた粉末について、コールカウンターにて粒度分布及び粒径を測定した結果、大きな粒径ピークは1つだけ観察され、平均粒径が3.852μm、CV値が2.07%の単分散粒子が得られていることが確認された。また、この粒子の赤外吸収スペクトルの測定により、PVSOとPMSOの複合粒子であることが確認された。
次に、このようにして得られた粒子を、窒素雰囲気下、330〜400℃の各温度で2時間焼成を行い、表2に示す性状の粒子2−1〜2−3を得た。
【0055】
【表2】

また、これらの粒子についての初期圧縮曲線も実施例1と同様に変曲点のない滑らかな曲線であった。
【0056】
実施例3
300ミリリットル容のプラスチック容器に、1モル/リットル濃度のアンモニア水0.1ミリリットル/リットルを含有する水溶液250ミリリットルを入れ、これを磁気撹拌装置によって約60rpmで撹拌しながら、VTMS4gをゆっくり添加し、上層にVTMS層を形成させた。次いで、これを室温にて上層が完全に消失するまで撹拌したのち、MTMS20gをゆっくり添加し、上層にMTMS層を形成させ、同様に上層が完全に消失するまで撹拌した。その後、実施例1と同様に操作して乾燥粉末を得た。
【0057】
得られた粉末について、コールカウンターにて粒度分布及び粒径を測定した結果、大きな粒径ピークは1つだけ観察され、平均粒径が3.485μm、CV値が1.93%の単分散粒子が得られていることが確認された。また、この粒子の赤外吸収スペクトルの測定により、PVSOとPMSOの複合粒子であることが確認された。
次に、このようにして得られた粒子を、窒素雰囲気下、340〜500℃の各温度で2時間焼成を行い、表3に示す性状の粒子3−1〜3−5を得た。
【0058】
【表3】

【0059】
また、これらの粒子についての圧縮曲線も実施例1と同様に変曲点のない滑らかな曲線であった。
【0060】
実施例4
1500ミリリットル容のプラスチック容器に、1モル/リットル濃度のアンモニア水0.1ミリリットル/リットルを含有する水溶液1000ミリリットルを入れ、これを磁気撹拌装置によって約60rpmで撹拌しながら、VTMS25gをゆっくり添加し、上層にVTMSを形成させた。次いで、これを室温にて上層が完全に消失するまで撹拌したのち、MTMS75gをゆっくり添加し、上層にMTMS層を形成させ、同様に上層が完全に消失するまで撹拌した。その後、実施例1と同様に操作して乾燥粉末を得た。
【0061】
得られた粉末について、コールカウンターにて粒度分布及び粒径を測定した結果、大きな粒径ピークは1つだけ観察され、平均粒径が、3.823μm、CV値1.67%の単分散粒子が得られていることが確認された。また、この粒子の赤外吸収スペクトルの測定により、PVSOとPMSOの複合粒子であることが確認された。
次に、このようにして得られた粒子を、窒素雰囲気下、340〜500℃の各温度で2時間焼成を行い、表4に示す性状の粒子4−1〜4−5を得た。
【0062】
【表4】

【0063】
また、これらの粒子についての初期圧縮曲線も実施例1と同様に変曲点のない滑らかな曲線であった。
【0064】
実施例5
実施例1において、各アルコキシシランの添加順序を全く逆にし、かつ1モル/リットル濃度のアンモニア水含有水溶液中の1モル/リットル濃度のアンモニア水含有量を0.4ミリリットル/リットルに変えた以外は、実施例1と同様に操作して乾燥粉末を得た。
【0065】
得られた粉末について、コールカウンターにて粒度分布及び粒径を測定した結果、大きな粒径ピークは1つだけ観察され、平均粒径が4.609μm、CV値が1.49%の単分散粒子が得られていることが確認された。また、この粒子の赤外吸収スペクトルの測定により、PVSOとPMSOの複合粒子であることが確認された。
次に、このようにして得られた粒子を、窒素雰囲気下、330〜550℃の各温度で2時間焼成を行い、表5に示す性状の粒子5−1〜5−4を得た。
【0066】
【表5】

【0067】
また、これらの粒子についての圧縮曲線も実施例1と同様に変曲点のない滑らかな曲線であった。
【0068】
実施例6
300ミリリットル容のプラスチック容器に、イオン交換水225ミリリットルおよびVTMS25gを入れ、均一になるまで撹拌して部分加水分解液Aを得た。同様に、300ミリリットル容のプラスチック容器に、イオン交換水225ミリリットルおよびMTMS25gを入れ、均一になるまで撹拌して部分加水分解液Bを得た。
【0069】
一方、1000ミリリットル容のプラスチック容器に、イオン交換水500ミリリットルおよび1モル/リットル濃度のアンモニア水0.2ミリリットルを入れ、均一になるまで撹拌してC液を得た。次に、上記B液を撹拌中のA液に連続的に滴下させながら、そのA液を撹拌中のC液に同速度で滴下し、最終的なA液からC液への滴下までを5時間かけて行った。滴下終了後、そのまま約2.5時間撹拌したのち、25重量%アンモニア水2ミリリットルを添加し、形成した粒子を固化させた。その後は、実施例1と同様な操作を行い、乾燥粉末を得た。
【0070】
得られた粉末について、コールターカウンターにて粒度分布および粒径を測定した結果、大きな粒径ピークは1つだけ観察され、平均粒径が2.20μm、CV値が2.01%の単分散粒子が得られていることが確認された。また、赤外吸収スペクトルにより、PMSOとPVSOの複合粒子であることが分かった。
【0071】
次に、このようにして得られた粒子を、窒素雰囲気下で280〜400℃の間の各温度にて2時間焼成を行い、表6に示す性状の粒子6−1〜6−3を得た。
【0072】
【表6】

【0073】
比較例1
実施例1において、アルコキシシランとしてMTMSのみを25g用い、かつ1モル/リットル濃度のアンモニア水含有水溶液中の1モル/リットル濃度のアンモニア水含有量を1.0ミリリットル/リットルに変えて、一段で粒子の形成を行った以外は、実施例1と同様に操作して乾燥粉末を得た。
【0074】
得られた粉末について、コールカウンターにて粒度分布及び粒径を測定した結果、大きな粒径ピークは1つだけ観察され、平均粒径が3.262μm、CV値が1.56%の単分散粒子が得られていることが確認された。
次に、このようにして得られた粒子を、窒素雰囲気下、640〜660℃の各温度で数時間焼成を行い、表7に示す性状の粒子7−1〜7−4を得た。
【0075】
【表7】

また、これらの粒子についての初期圧縮曲線を求めた。その1例として、7−3粒子の初期圧縮曲線を図1に示す。この図から分かるように、いずれの粒子も変曲点のない滑らかな曲線であった。
【0076】
比較例2
比較例1において、MTMSの代わりにVTMSを25g添加し、かつ1モル/リットル濃度のアンモニア水含有水溶液中の1モル/リットル濃度のアンモニア水含有量を0.1ミリリットル/リットルに変えた以外は、比較例1と同様に操作して乾燥粉末を得た。
【0077】
得られた粉末について、コールカウンターにて粒度分布及び粒径を測定した結果、大きな粒径ピークは1つだけ観察され、平均粒径が4.005μm、CV値が1.60%の単分散粒子が得られていることが確認された。
次に、このようにして得られた粒子を、窒素雰囲気下、270〜400℃の各温度で2時間焼成を行い、表8に示す性状の粒子8−1〜8−6を得た。
【0078】
【表8】

また、これらの粒子についての圧縮曲線も実施例1と同様に変曲点のない滑らかな曲線であった。
【0079】
比較例3
2リットルセパラブルフラスコに、1モル/リットル濃度のアンモニア水0.25ミリリットル/リットルを含有する水溶液1600ミリリットルを入れ、これを撹拌羽根にて30rpmで撹拌しながらMTMS140gを添加し、上層にMTMS層を形成させた。これを室温で上層が完全に消失するまで撹拌した。その後撹拌速度を75rpmにして、テトラエトキシシラン(TEOS)75gをメタノール75gに溶解した液を添加した。さらに約1時間撹拌を行ったのち、25重量%アンモニア水10ミリリットルを添加し、恒温槽中にて50℃で3時間の熟成を行った。以下、実施例1と同様に操作して乾燥粉末を得た。
【0080】
得られた粉末について、コールカウンターにて粒度分布及び粒径を測定した結果、大きな粒径ピークは1つだけ観察され、平均粒径が4.21μm、CV値が2.03%の単分散粒子が得られていることが確認された。
次に、このようにして得られた粒子を、窒素雰囲気下、550℃で9時間焼成を行った。この粒子について初期圧縮曲線を求めた。その結果をグラフにして図2に示す。この図から分かるように、変曲点が確認された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる有機基を有する2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向かって、組成が段階的または連続的に変化していることを特徴とする傾斜複合粒子。
【請求項2】
異なる有機基を有する2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向かって、組成が段階的または連続的に変化している球状複合粒子を焼成してなることを特徴とする傾斜複合粒子。
【請求項3】
10%圧縮弾性率(X)が19.6GPa(2000kgf/mm)以下であって、破壊強度(Y)が式
Y(GPa)≧0.13X−0.196
の関係を満たし、かつ回復率が90%以上である請求項2に記載の傾斜複合粒子。
【請求項4】
異なる有機基を有する2種以上のポリオルガノシロキサンが、有機成分の熱分解温度が異なる2種からなり、かつその熱分解温度差が50℃以上である請求項2または3に記載の傾斜複合粒子。
【請求項5】
有機成分の熱分解温度の低いポリオルガノシロキサンの熱分解温度より高く、かつ有機成分の熱分解温度の高いポリオルガノシロキサンの熱分解温度より低い温度において焼成してなる請求項4に記載の傾斜複合粒子。
【請求項6】
焼成温度が200〜700℃である請求項2ないし5のいずれか1項に記載の傾斜複合粒子。
【請求項7】
有機成分の熱分解温度の低いポリオルガノシロキサンがビニルトリメトキシシランの加水分解縮合物であり、かつ有機成分の熱分解温度の高いポリオルガノシロキサンがメチルトリメトキシシランの加水分解縮合物である請求項4ないし6のいずれか1項に記載の傾斜複合粒子。
【請求項8】
平均粒径0.5〜15μm、粒度分布の変動係数(CV値)3.0%以下である請求項2ないし7のいずれか1項に記載の傾斜複合粒子。
【請求項9】
ケイ素原子に結合した1〜3個の非加水分解性基と3〜1個のアルコキシル基を有する有機ケイ素化合物の中から2種以上を選び、加水分解、縮合させることにより、2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向って組成が段階的または連続的に変化している球状複合粒子を形成させたのち、乾燥処理し、次いで200〜700℃の温度において焼成することを特徴とする傾斜複合粒子の製造方法。
【請求項10】
ケイ素原子に結合した1〜3個の非加水分解性基と3〜1個のアルコキシル基を有する有機ケイ素化合物の中から選ばれた単独または2種以上を含み、かつそれぞれ組成が異なる複数組の有機ケイ素化合物を、二段階以上で加水分解、縮合反応させ、2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向って組成が実質上段階的に変化している球状複合粒子を形成させる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項2ないし8のいずれか1項に記載の傾斜複合粒子からなる液晶表示装置用スペーサ。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−235951(P2010−235951A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117906(P2010−117906)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【分割の表示】特願平11−373829の分割
【原出願日】平成11年12月28日(1999.12.28)
【出願人】(000120010)宇部日東化成株式会社 (203)
【Fターム(参考)】