充填豆腐取出し器具
【課題】充填豆腐は豆乳を容器内で密封・殺菌・凝固するために長期間の保存に耐えうるという利点があるが、豆腐と容器内壁面が密着しやすく豆腐を容器から取出しにくいという問題がある。そこで、使用する凝固材の分量や加熱時間の加減により容器に付着しにくい豆腐を作る方法、容器表面に剥離処理を施す方法等が採られているが、豆腐を崩さずに短時間で容器から取り出すには不十分であるという課題がある。
【解決手段】本発明は充填豆腐容器に小さな貫通穴を開け、密着した豆腐と容器内壁の間に空気を流入させることにより豆腐を容器内壁から剥離させて豆腐の形を崩すことなく取出すことを可能とする。貫通穴をあけるに際して細い針を用い、高低差のある複数の針を配列することにより一回の動作で多数の貫通穴を作り、より短時間で豆腐を取出すことができる。
【解決手段】本発明は充填豆腐容器に小さな貫通穴を開け、密着した豆腐と容器内壁の間に空気を流入させることにより豆腐を容器内壁から剥離させて豆腐の形を崩すことなく取出すことを可能とする。貫通穴をあけるに際して細い針を用い、高低差のある複数の針を配列することにより一回の動作で多数の貫通穴を作り、より短時間で豆腐を取出すことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原材料を合成樹脂製の容器内へ充填、密封後に加熱、固化させた充填豆腐に代表される半固形食品に対し、容器へ小さな穴を開けることにより食品を容器から崩すことなく、短時間に取り出すことのできる、充填豆腐の取出し器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、充填豆腐の取出しに関してはさまざまな開発がなされており、掴み棒を設けた内皿を容器内に沈めた上から豆乳の充填凝固を行い、使用時は内皿ごと豆腐を引き上げる装置があった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、内容物が容器内面に付着することを防止するための容器として、多価アルコールを添加したポリオレフィン系樹脂の容器(例えば、特許文献2参照)や、帯電防止処理剤を含有する合成樹脂容器をエージング処理した容器(例えば、特許文献3参照)があった。
【0004】
また、容器の内壁面にマグネシウム塩を塗布して、豆乳を充填、密封後、加熱凝固させた後に、容器外部より衝撃を与える方法(例えば、特許文献4参照)があった。
【特許文献1】特開2001−48262号公報
【特許文献2】特開平7−62163号公報
【特許文献3】特開2006−62673号公報
【特許文献4】特開2002−272404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
豆腐の製造法には大きく分けて豆乳を型枠の中で凝固させた後水晒しし、適度な大きさにカッティングするカット豆腐 と、凝固剤を添加、混合した豆乳を小型容器 に充填、密封し、その容器内で凝固させる充填豆腐がある。充填豆腐はカット豆腐と比べ保存期間が長く、また使い切りのサイズで流通しているため近年ではこの充填豆腐 が主流となっている。
【0006】
しかしながら充填豆腐は容器内で凝固させるために豆腐と容器が密着することから、容器を逆さにしても容易に取り出すことができず、豆腐の一部が容器内に残存して完全な形で取り出すこと難しいという欠点があり、種々の方策が取られている。
【0007】
例えば、容器素材を改良して豆腐が付着しにくい容器素材にする方法や、使用する凝固材の分量や加熱時間の加減により容器に付着しにくい豆腐を作る方法、容器表面に剥離処理を施す方法などがある。しかしながらこれらの方法を用いても、充填豆腐が簡素に、時間をかけることなく、崩れないように取り出すことは不完全であった。
【0008】
充填豆腐使用者の取出し方は2つのタイプに大別される。容器に包丁をいれたりスプーンで掬うなど豆腐の原型を最初から崩しながら使用するタイプと、容器に衝撃を加えたり豆腐が崩れない程度の力を容器に力を加え容器から豆腐を剥離させて取出すタイプである。
【0009】
本発明は、充填豆腐に代表される合成樹脂容器に充填、密封、加熱、凝固されている食品において、簡単な操作で、時間をかけることなく、食品の形を崩さずに容器から取出すことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明である充填豆腐の取出し器具は、針により容器の小さな穴を空け、容器を反転させることによりその穴から空気が流入し、豆腐が容器内壁から剥離し、充填豆腐が崩れることなく、容器から取出すことができる。
【0011】
本発明は、容器に穴を空けるに際して力を加えやすいように一定の太さを有する軸棒の先端に針を設けており、軸棒を押し付けることにより先端の針で容器に穴を空ける。
【0012】
使用者が安全に操作できるように、針のついた軸棒は筐体の収納されており、使用時に針の部分のみ筐体から突出し、不使用時には没入する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、筐体内部に収納された針の操作により充填豆腐容器に微細な穴をあけることから、安全に、簡単に、豆腐の形状を崩すことなく、数秒で豆腐を容器から取出すことができる。
【0014】
本発明は構造が簡素でありかつ、その部品のすべてが一般市場に流通している汎用部品や素材で構成されているため、部品面と加工面の双方でコストを低く抑えることができ、市場展開を行いやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(全体像)
図1は本発明である充填豆腐取出し器具40の斜視図である。筐体1の中央部に設けられたスライドボタン2bにより、スライドボタンと連動している針10が筐体1の先端に設けられた針出没口1bから出てくる。図14に示すように使用時は針10を出した状態で、逆さにした容器20の底面や側面に複数の貫通穴20aをあけると、図15に示すように豆腐30の取出しができる。
【0016】
(原理)
豆腐を容器から取り出すための基本的な原理は、針で合成樹脂容器に穴を開け、その部分から空気が入ることにより容器の内壁に付着している豆腐を剥離させることである。
【0017】
(障害要因:容器の変形)
図9は使用する針が太い場合におこる現象を示している。太い針10(概ね直径1mmを超える場合)により容器20を貫通する場合、貫通する前に容器20が針10の圧力により変形をおこし、容器20の内壁側にある豆腐30を圧迫し、ひび30aを発生させた後に針10は容器20を貫通する。ひび30aが発生した豆腐30は、容器20から崩れた状態で取出される。あるいは、ひび30aを発生した付近の豆腐は小さな塊となって容器の内壁から剥離しないまま取出しから残されてしまう。この現象は合成樹脂容器入りの充填豆腐すべてに共通しており、充填豆腐メーカーにより容器20の素材や厚み、また豆腐の硬さが異なるものの、針10の太さが直径1.5mmを超えた場合、どのメーカーの充填豆腐においてもひび30aの発生は顕著になる。
【0018】
(障害要因:穴の太さ)
図10は、針10により容器20に貫通穴20aをあけた状態を表しているが、貫通に供した針10の細太に関わらず、貫通穴20は容器20の内側に容器素材の破曲部20bを伴っている。破曲部20bが大きい場合は豆腐30を取出す際に引っ掛りになってしまい、豆腐30の割れが発生し、崩れていない状態で豆腐30を取出す際の障害要因となる。即ち、太い針10を使用するとこの破曲部20bが大きくなり、豆腐30を取出す際に崩してしまうことになる。
【0019】
(針の要件)
即ち豆腐30を崩すことなく取出すためには、豆腐のひび30aの発生を防ぎかつ容器20の破曲部20bを微少にとどめる必要がある。従って、使用する針10の太さは一定の細さを有する必要がある。しかし、針10を細くしすぎると1度の動作で空ける貫通穴20aの径が小さいために、空気の流入が少なくなり、豆腐30を取出すために多数の貫通穴20aを空ける必要がある。さらに、細すぎる針10は動作中に折れたり曲がったりする可能性が高くなり危険が伴う。空気の流入と安全面を考えると、針10の直径は0.3mmから1mmが望ましい。
【0020】
(針の配置)
直径が0.3mmから1mmの針10であれば、10秒以内で豆腐30取出すために数個から20個程度の貫通穴20aが必要となる。例えば12個の貫通穴20aをあけるとする。針10は1本あれば12回の動作により貫通穴20aを12個あけることができるが、利便性を考えるとできるかぎり少ない動作で容器20に12個の貫通穴20aをあける必要がある。そこで当該径を有する複数の針10を一動作で貫通させることにより、動作の数を少なくすることができる。図11に示すとおり、針10は針10a、針10b、針10cで構成され軸先部2aで固定されている。3本の針は貫通面である容器20に対し高低差を設けており、針10aが容器20に貫通した後に針10bが容器20に接し、針10bが容器20を貫通した後に針10cが容器20に接し更に貫通する空間的配置となっている。この針の構成と配置により、容器20の変形にともなうひび30aの発生を抑制しつつ、一動作により、3つの貫通穴20aをあけることが可能となり、先の例でいえば4回の動作で12個の貫通穴20aをあけることができる。この高低差をもった針10の配列により、破曲部20bを微少にとどめる直径が0.3mmから1mmの針10を複数本使用して、一度に多数の貫通穴20aをあけ、動作時に豆腐30のひび30aを発生させないことが可能となる。
【0021】
(構造:外形)
図2、図3および図6で示すように筐体1は両端を閉じつつ下端に針出没口1bを設けた円筒形であり、図3で示すように筐体1内部に筐体1の内径より小さい径を有する軸2が内設されている。軸2の片方の端である軸先部2aは軸2の径よりも小さく、軸2と軸先部2aの段差部分にコイルスプリング3の一端が当接し、コイルスプリング3の他端は筐体1の下端内壁に当接し、コイルスプリング3の復元力により軸2は押し上げられ、針10が筐体1に没入した状態となる。
【0022】
(構造:針)
図4に示すように針10は軸先部2a内部で固定されており、容易に抜けない構造となっている。また、図5において針10は3本で構成され、針10の固定位置は正三角形に近い配置となっている。尚、針10の本数は3本に限らず図13に示すように4本でも良く、概ね10本以内の複数の針を使用することが可能である。
【0023】
(構造:針2)
使用する針の太さにより針10の本数は決定する。針が太ければ本数を減らし、針が細ければ本数を増やす関係にある。ただし、複数の本数の場合は前述のとおり図11で示した如く、貫通動作時にそれぞれの針10が同時でなく、順序をもって容器20を貫通するように針10の高低差をつけた状態で軸先部2aに固定される必要がある。例えば3本針の場合、図7に示したような高低差をもった針10の空間的配置となる。
【0024】
(針の出没)
図3に示すとおり針10は軸2を基台とした軸先部2aに固定され、軸2からはスライドボタン2bが突設しており、スライドボタン2bと針10は連動する関係にある。図2に示すように筐体1の中央部にはスライドボタン孔1aがあり、スライドボタン2bはスライドボタン孔1aから突出している(図3同時参照)。図8に示すように、スライドボタン2bを押下げると針10が筐体1の下端に設けられている針出没口1bを通って突出する。スライドボタン2bの押圧を止めれば、針10はスプリングコイル3の復元力により、筐体内に没入する。
【0025】
(洗浄)
使用後の針10に豆腐のかけらがつくことはないが、針10および充填豆腐取出し器具40の筐体1内部の洗浄は、スライドボタン孔1aに流水を通すことによって行う。図12に示すように、洗浄専用の穴として筐体1の先付近に指の入らない程度の径をもつ洗浄口4を設けてもよい。
【実施例1】
【0026】
(3本針)
直径0.6mmの金属性の針10を3本使用し、高低差を2mmずつ設けて軸先部2aに一辺5mmの正三角形を形成するように針10を固定した軸先部2aを有する充填豆腐取出し器具40を用い、方形状の底面を有する充填豆腐の容器20を逆さにしたまま底面の各角付近と、それぞれの角から下方に延びる辺付近の側面に3つ穴の貫通穴20aを計8箇所あけ、容器底面の1対の角から下方に延びる2つの辺を親指と中指で軽くはさみ加圧し、容器20をやや変形させると、空気が貫通穴20aから入り込み、豆腐30が容器20の内壁から徐々に離れ、3秒から10秒の間(平均5.5秒)で豆腐30を崩さずに取出すことができた。
【実施例2】
【0027】
(1本針)
直径1mmの金属性の針10を1本使用し、軸先部2aの中心に固定した充填豆腐取出し器具40を用い、方形状の底面を有する充填豆腐の容器20を逆さにしたまま底面の各角付近と、それぞれの角から下方に延びる辺付近の側面に1つ穴の貫通穴20aを計8箇所あけ、容器底面の1対の角から下方に延びる2つの辺を親指と中指で軽くはさみ加圧し、容器20をやや変形させると、空気が貫通穴20aから入り込み、豆腐30が容器20の内壁から徐々に離れ、6秒から17秒の間(平均8.8秒)で豆腐30を崩さずに取出すことができた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、充填豆腐を容易に取出すことができることから、充填豆腐の取出しにくさから敬遠している消費者にとって、より積極的に充填豆腐を購入する要因となり、充填豆腐の拡販につながる。
【0029】
本発明は、充填豆腐に限らず合成樹脂容器に充填・凝固して製造されているさまざまな半固形の食品を容器から取出す際に使用することができる。
【0030】
本発明は、主として台所で使用する針であることから、例えば茹でたトマトやジャガイモなど野菜類の皮むきにも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】充填豆腐取出し器具使用時の斜視図
【図2】充填豆腐取出し器具の正面図
【図3】充填豆腐取出し器具A−A’間の部分断面図
【図4】充填豆腐取出し器具A−A’間の断面図
【図5】充填豆腐取出し器具の底面図
【図6】充填豆腐取出し器具の平面図
【図7】充填豆腐取出し器具使用時の正面図
【図8】充填豆腐取出し器具使用時のB−B’間の部分断面図
【図9】太い針が容器に貫通する直前の状態を表す部分断面拡大図
【図10】容器に貫通した後に針を抜いた状態を表す部分断面拡大図
【図11】高低差を設けた針の貫通状態を表す部分断面拡大図
【図12】筐体に洗浄口を設けた側面図
【図13】針を4本にした充填豆腐取出し器具使用時の斜視図
【図14】充填豆腐に当該器具を使用した状態を表す斜視図
【図15】充填豆腐の分離状態を表す斜視図
【符号の説明】
【0032】
1 筐体
1a スライドボタン孔
1b 針出没口
2 軸
2a 軸先部
2b スライドボタン
3 コイルスプリング
4 洗浄口
10 針
20 容器
20a 貫通穴
20b 破曲部
30 豆腐
30a ひび
40 充填豆腐取出し器具
【技術分野】
【0001】
本発明は、原材料を合成樹脂製の容器内へ充填、密封後に加熱、固化させた充填豆腐に代表される半固形食品に対し、容器へ小さな穴を開けることにより食品を容器から崩すことなく、短時間に取り出すことのできる、充填豆腐の取出し器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、充填豆腐の取出しに関してはさまざまな開発がなされており、掴み棒を設けた内皿を容器内に沈めた上から豆乳の充填凝固を行い、使用時は内皿ごと豆腐を引き上げる装置があった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、内容物が容器内面に付着することを防止するための容器として、多価アルコールを添加したポリオレフィン系樹脂の容器(例えば、特許文献2参照)や、帯電防止処理剤を含有する合成樹脂容器をエージング処理した容器(例えば、特許文献3参照)があった。
【0004】
また、容器の内壁面にマグネシウム塩を塗布して、豆乳を充填、密封後、加熱凝固させた後に、容器外部より衝撃を与える方法(例えば、特許文献4参照)があった。
【特許文献1】特開2001−48262号公報
【特許文献2】特開平7−62163号公報
【特許文献3】特開2006−62673号公報
【特許文献4】特開2002−272404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
豆腐の製造法には大きく分けて豆乳を型枠の中で凝固させた後水晒しし、適度な大きさにカッティングするカット豆腐 と、凝固剤を添加、混合した豆乳を小型容器 に充填、密封し、その容器内で凝固させる充填豆腐がある。充填豆腐はカット豆腐と比べ保存期間が長く、また使い切りのサイズで流通しているため近年ではこの充填豆腐 が主流となっている。
【0006】
しかしながら充填豆腐は容器内で凝固させるために豆腐と容器が密着することから、容器を逆さにしても容易に取り出すことができず、豆腐の一部が容器内に残存して完全な形で取り出すこと難しいという欠点があり、種々の方策が取られている。
【0007】
例えば、容器素材を改良して豆腐が付着しにくい容器素材にする方法や、使用する凝固材の分量や加熱時間の加減により容器に付着しにくい豆腐を作る方法、容器表面に剥離処理を施す方法などがある。しかしながらこれらの方法を用いても、充填豆腐が簡素に、時間をかけることなく、崩れないように取り出すことは不完全であった。
【0008】
充填豆腐使用者の取出し方は2つのタイプに大別される。容器に包丁をいれたりスプーンで掬うなど豆腐の原型を最初から崩しながら使用するタイプと、容器に衝撃を加えたり豆腐が崩れない程度の力を容器に力を加え容器から豆腐を剥離させて取出すタイプである。
【0009】
本発明は、充填豆腐に代表される合成樹脂容器に充填、密封、加熱、凝固されている食品において、簡単な操作で、時間をかけることなく、食品の形を崩さずに容器から取出すことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明である充填豆腐の取出し器具は、針により容器の小さな穴を空け、容器を反転させることによりその穴から空気が流入し、豆腐が容器内壁から剥離し、充填豆腐が崩れることなく、容器から取出すことができる。
【0011】
本発明は、容器に穴を空けるに際して力を加えやすいように一定の太さを有する軸棒の先端に針を設けており、軸棒を押し付けることにより先端の針で容器に穴を空ける。
【0012】
使用者が安全に操作できるように、針のついた軸棒は筐体の収納されており、使用時に針の部分のみ筐体から突出し、不使用時には没入する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、筐体内部に収納された針の操作により充填豆腐容器に微細な穴をあけることから、安全に、簡単に、豆腐の形状を崩すことなく、数秒で豆腐を容器から取出すことができる。
【0014】
本発明は構造が簡素でありかつ、その部品のすべてが一般市場に流通している汎用部品や素材で構成されているため、部品面と加工面の双方でコストを低く抑えることができ、市場展開を行いやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(全体像)
図1は本発明である充填豆腐取出し器具40の斜視図である。筐体1の中央部に設けられたスライドボタン2bにより、スライドボタンと連動している針10が筐体1の先端に設けられた針出没口1bから出てくる。図14に示すように使用時は針10を出した状態で、逆さにした容器20の底面や側面に複数の貫通穴20aをあけると、図15に示すように豆腐30の取出しができる。
【0016】
(原理)
豆腐を容器から取り出すための基本的な原理は、針で合成樹脂容器に穴を開け、その部分から空気が入ることにより容器の内壁に付着している豆腐を剥離させることである。
【0017】
(障害要因:容器の変形)
図9は使用する針が太い場合におこる現象を示している。太い針10(概ね直径1mmを超える場合)により容器20を貫通する場合、貫通する前に容器20が針10の圧力により変形をおこし、容器20の内壁側にある豆腐30を圧迫し、ひび30aを発生させた後に針10は容器20を貫通する。ひび30aが発生した豆腐30は、容器20から崩れた状態で取出される。あるいは、ひび30aを発生した付近の豆腐は小さな塊となって容器の内壁から剥離しないまま取出しから残されてしまう。この現象は合成樹脂容器入りの充填豆腐すべてに共通しており、充填豆腐メーカーにより容器20の素材や厚み、また豆腐の硬さが異なるものの、針10の太さが直径1.5mmを超えた場合、どのメーカーの充填豆腐においてもひび30aの発生は顕著になる。
【0018】
(障害要因:穴の太さ)
図10は、針10により容器20に貫通穴20aをあけた状態を表しているが、貫通に供した針10の細太に関わらず、貫通穴20は容器20の内側に容器素材の破曲部20bを伴っている。破曲部20bが大きい場合は豆腐30を取出す際に引っ掛りになってしまい、豆腐30の割れが発生し、崩れていない状態で豆腐30を取出す際の障害要因となる。即ち、太い針10を使用するとこの破曲部20bが大きくなり、豆腐30を取出す際に崩してしまうことになる。
【0019】
(針の要件)
即ち豆腐30を崩すことなく取出すためには、豆腐のひび30aの発生を防ぎかつ容器20の破曲部20bを微少にとどめる必要がある。従って、使用する針10の太さは一定の細さを有する必要がある。しかし、針10を細くしすぎると1度の動作で空ける貫通穴20aの径が小さいために、空気の流入が少なくなり、豆腐30を取出すために多数の貫通穴20aを空ける必要がある。さらに、細すぎる針10は動作中に折れたり曲がったりする可能性が高くなり危険が伴う。空気の流入と安全面を考えると、針10の直径は0.3mmから1mmが望ましい。
【0020】
(針の配置)
直径が0.3mmから1mmの針10であれば、10秒以内で豆腐30取出すために数個から20個程度の貫通穴20aが必要となる。例えば12個の貫通穴20aをあけるとする。針10は1本あれば12回の動作により貫通穴20aを12個あけることができるが、利便性を考えるとできるかぎり少ない動作で容器20に12個の貫通穴20aをあける必要がある。そこで当該径を有する複数の針10を一動作で貫通させることにより、動作の数を少なくすることができる。図11に示すとおり、針10は針10a、針10b、針10cで構成され軸先部2aで固定されている。3本の針は貫通面である容器20に対し高低差を設けており、針10aが容器20に貫通した後に針10bが容器20に接し、針10bが容器20を貫通した後に針10cが容器20に接し更に貫通する空間的配置となっている。この針の構成と配置により、容器20の変形にともなうひび30aの発生を抑制しつつ、一動作により、3つの貫通穴20aをあけることが可能となり、先の例でいえば4回の動作で12個の貫通穴20aをあけることができる。この高低差をもった針10の配列により、破曲部20bを微少にとどめる直径が0.3mmから1mmの針10を複数本使用して、一度に多数の貫通穴20aをあけ、動作時に豆腐30のひび30aを発生させないことが可能となる。
【0021】
(構造:外形)
図2、図3および図6で示すように筐体1は両端を閉じつつ下端に針出没口1bを設けた円筒形であり、図3で示すように筐体1内部に筐体1の内径より小さい径を有する軸2が内設されている。軸2の片方の端である軸先部2aは軸2の径よりも小さく、軸2と軸先部2aの段差部分にコイルスプリング3の一端が当接し、コイルスプリング3の他端は筐体1の下端内壁に当接し、コイルスプリング3の復元力により軸2は押し上げられ、針10が筐体1に没入した状態となる。
【0022】
(構造:針)
図4に示すように針10は軸先部2a内部で固定されており、容易に抜けない構造となっている。また、図5において針10は3本で構成され、針10の固定位置は正三角形に近い配置となっている。尚、針10の本数は3本に限らず図13に示すように4本でも良く、概ね10本以内の複数の針を使用することが可能である。
【0023】
(構造:針2)
使用する針の太さにより針10の本数は決定する。針が太ければ本数を減らし、針が細ければ本数を増やす関係にある。ただし、複数の本数の場合は前述のとおり図11で示した如く、貫通動作時にそれぞれの針10が同時でなく、順序をもって容器20を貫通するように針10の高低差をつけた状態で軸先部2aに固定される必要がある。例えば3本針の場合、図7に示したような高低差をもった針10の空間的配置となる。
【0024】
(針の出没)
図3に示すとおり針10は軸2を基台とした軸先部2aに固定され、軸2からはスライドボタン2bが突設しており、スライドボタン2bと針10は連動する関係にある。図2に示すように筐体1の中央部にはスライドボタン孔1aがあり、スライドボタン2bはスライドボタン孔1aから突出している(図3同時参照)。図8に示すように、スライドボタン2bを押下げると針10が筐体1の下端に設けられている針出没口1bを通って突出する。スライドボタン2bの押圧を止めれば、針10はスプリングコイル3の復元力により、筐体内に没入する。
【0025】
(洗浄)
使用後の針10に豆腐のかけらがつくことはないが、針10および充填豆腐取出し器具40の筐体1内部の洗浄は、スライドボタン孔1aに流水を通すことによって行う。図12に示すように、洗浄専用の穴として筐体1の先付近に指の入らない程度の径をもつ洗浄口4を設けてもよい。
【実施例1】
【0026】
(3本針)
直径0.6mmの金属性の針10を3本使用し、高低差を2mmずつ設けて軸先部2aに一辺5mmの正三角形を形成するように針10を固定した軸先部2aを有する充填豆腐取出し器具40を用い、方形状の底面を有する充填豆腐の容器20を逆さにしたまま底面の各角付近と、それぞれの角から下方に延びる辺付近の側面に3つ穴の貫通穴20aを計8箇所あけ、容器底面の1対の角から下方に延びる2つの辺を親指と中指で軽くはさみ加圧し、容器20をやや変形させると、空気が貫通穴20aから入り込み、豆腐30が容器20の内壁から徐々に離れ、3秒から10秒の間(平均5.5秒)で豆腐30を崩さずに取出すことができた。
【実施例2】
【0027】
(1本針)
直径1mmの金属性の針10を1本使用し、軸先部2aの中心に固定した充填豆腐取出し器具40を用い、方形状の底面を有する充填豆腐の容器20を逆さにしたまま底面の各角付近と、それぞれの角から下方に延びる辺付近の側面に1つ穴の貫通穴20aを計8箇所あけ、容器底面の1対の角から下方に延びる2つの辺を親指と中指で軽くはさみ加圧し、容器20をやや変形させると、空気が貫通穴20aから入り込み、豆腐30が容器20の内壁から徐々に離れ、6秒から17秒の間(平均8.8秒)で豆腐30を崩さずに取出すことができた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、充填豆腐を容易に取出すことができることから、充填豆腐の取出しにくさから敬遠している消費者にとって、より積極的に充填豆腐を購入する要因となり、充填豆腐の拡販につながる。
【0029】
本発明は、充填豆腐に限らず合成樹脂容器に充填・凝固して製造されているさまざまな半固形の食品を容器から取出す際に使用することができる。
【0030】
本発明は、主として台所で使用する針であることから、例えば茹でたトマトやジャガイモなど野菜類の皮むきにも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】充填豆腐取出し器具使用時の斜視図
【図2】充填豆腐取出し器具の正面図
【図3】充填豆腐取出し器具A−A’間の部分断面図
【図4】充填豆腐取出し器具A−A’間の断面図
【図5】充填豆腐取出し器具の底面図
【図6】充填豆腐取出し器具の平面図
【図7】充填豆腐取出し器具使用時の正面図
【図8】充填豆腐取出し器具使用時のB−B’間の部分断面図
【図9】太い針が容器に貫通する直前の状態を表す部分断面拡大図
【図10】容器に貫通した後に針を抜いた状態を表す部分断面拡大図
【図11】高低差を設けた針の貫通状態を表す部分断面拡大図
【図12】筐体に洗浄口を設けた側面図
【図13】針を4本にした充填豆腐取出し器具使用時の斜視図
【図14】充填豆腐に当該器具を使用した状態を表す斜視図
【図15】充填豆腐の分離状態を表す斜視図
【符号の説明】
【0032】
1 筐体
1a スライドボタン孔
1b 針出没口
2 軸
2a 軸先部
2b スライドボタン
3 コイルスプリング
4 洗浄口
10 針
20 容器
20a 貫通穴
20b 破曲部
30 豆腐
30a ひび
40 充填豆腐取出し器具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径0.3mmから1.5mmの針を下方に向けて固定する軸先部を有する軸が、両端を閉じつつ下端に針出没口を設けた円筒状の筐体内部に収納されており、筐体内部先方に設けられたコイルスプリングにより軸が上方に押されて針が筐体内部に没入している状態を不使用状態とし、使用時には筐体に設けられたスライドボタン孔を通っている軸から突設したスライドボタンを下方に押圧することにより、針出没口から針が突出し、当該針を充填豆腐容器に押し当てて貫通穴をあけることにより、豆腐を容器から取出すことに供する充填豆腐取出し器具。
【請求項2】
直径0.3mmから1.5mmの複数の針を軸先部に固定する際、軸先部から針が突出している軸先部面から、針先の距離がそれぞれ異なり、それぞれの針が高低差を有することにより、貫通動作時に容器に対し各々の針が同時でなく順序をもって容器に貫通穴をつくることを特徴とする請求項1に記載の充填豆腐取出し器具。
【請求項3】
充填豆腐のみでなく、合成樹脂性の容器に原材料を充填し、密封し、凝固した半固形の食品の取出しに使用することを特徴とした請求項1ないし請求項2に記載の充填豆腐取出し器具。
【請求項1】
直径0.3mmから1.5mmの針を下方に向けて固定する軸先部を有する軸が、両端を閉じつつ下端に針出没口を設けた円筒状の筐体内部に収納されており、筐体内部先方に設けられたコイルスプリングにより軸が上方に押されて針が筐体内部に没入している状態を不使用状態とし、使用時には筐体に設けられたスライドボタン孔を通っている軸から突設したスライドボタンを下方に押圧することにより、針出没口から針が突出し、当該針を充填豆腐容器に押し当てて貫通穴をあけることにより、豆腐を容器から取出すことに供する充填豆腐取出し器具。
【請求項2】
直径0.3mmから1.5mmの複数の針を軸先部に固定する際、軸先部から針が突出している軸先部面から、針先の距離がそれぞれ異なり、それぞれの針が高低差を有することにより、貫通動作時に容器に対し各々の針が同時でなく順序をもって容器に貫通穴をつくることを特徴とする請求項1に記載の充填豆腐取出し器具。
【請求項3】
充填豆腐のみでなく、合成樹脂性の容器に原材料を充填し、密封し、凝固した半固形の食品の取出しに使用することを特徴とした請求項1ないし請求項2に記載の充填豆腐取出し器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−125178(P2009−125178A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301120(P2007−301120)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(303020347)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(303020347)
【Fターム(参考)】
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