説明

充放電試験システム

【課題】充放電試験システムの電力使用効率を向上させる。
【解決手段】双方向AC−DCコンバータ11は、交流側端子が交流電源に接続され、直流側端子が直流バスに接続される。複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23は、一端が直流バス60に接続され、他端が試料31〜33に接続され。制御装置50は、複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23を制御して、複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23による複数の試料31〜33に対する充放電を制御する。その際、複数の複数の試料31〜33の充放電パターンに応じて、複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23を制御する。複数の試料31〜33の充放電パターンは、複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23から双方向AC−DCコンバータ11に供給される回生電力が最小化されるようスケジュールされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生機能付きの充放電試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境にやさしい、ハイブリット車、プラグインハイブリッド車、電気自動車が普及してきている。これらの車の普及には、安価な駆動用電池開発が鍵となっている。これらの電池は、携帯電池などのコンシューマ用とは異なり、一般に数kWから数十kWと大容量である。このため、開発時や量産試験時の充放電の電力が極めて大きくなる。今後、上述したタイプの車の普及が進むにつれて、その充放電の電力はさらに増大する。また、上述したタイプの車には多数の電池セルが組み合わせて用いられるため、多数の電池セルを並行して試験可能な装置が求められる。
【0003】
従来、充電した電気は抵抗から熱エネルギとして放電していたが、放電エネルギが無駄となる。これに対して、近年、放電電力を回生電源により交流に戻して効率を向上させる手法が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図1は、従来技術に係る充放電試験システム100の構成を示す図である。当該充放電試験システム100は、複数の試料31〜33の試験を並行して行うことができる。当該充放電試験システム100は、複数の双方向AC−DCコンバータ11〜13と、複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23を備える。図1では3つの試料31〜33を並行に試験可能な3チャンネルの充放電試験装置を備える当該充放電試験システム100の例を描いているが、当然のことながら4チャンネル以上の充放電装置を備えてもよい。制御装置50は充放電試験システム100に内蔵されていてもよいし、外付けされていてもよい。制御装置50は、充放電装置として機能する各双方向DC−DCコンバータ21〜23を制御することにより、各試料31〜33に対する充放電を制御する。また、制御装置50は、各試料31〜33から計測データを取得し、管理する。
【0005】
図1にて、各双方向AC−DCコンバータ11〜13は、交流電力回生機能を持つ交流回生電源として機能する。各双方向AC−DCコンバータ11〜13は、各双方向DC−DCコンバータ21〜23からの直流回生電力を交流回生電力に変換して、交流バス41に放出する。この放出された回生電力は、別の双方向AC−DCコンバータ11〜13で使用されるか、AC電源40に戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−253580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した各双方向AC−DCコンバータ11〜13は、各双方向DC−DCコンバータ21〜23からの直流回生電力を交流バス41に放出するため、その直流回生電力が抵抗により熱に変換される場合と比較し、電力の使用効率を向上させることができる。ただし依然として、各双方向AC−DCコンバータ11〜13における、直流回生電力から交流回生電力への変換ロスは発生する。本発明者は、充放電試験システムの電力使用効率をさらに向上させる手法を見出した。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、充放電試験システムの電力使用効率を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の充放電試験システムは、交流側端子が交流電源に接続され、直流側端子が直流バスに接続される双方向AC−DCコンバータと、一端が直流バスに接続され、他端が試料に接続される双方向DC−DCコンバータと、双方向DC−DCコンバータを制御して、双方向DC−DCコンバータによる試料に対する充放電を制御する制御装置と、を備える。直流バスに接続される双方向DC−DCコンバータの数は、直流バスに接続される双方向AC−DCコンバータの数より多く、制御装置は、複数の双方向DC−DCコンバータにそれぞれ接続される複数の試料の充放電パターンに応じて、複数の双方向DC−DCコンバータを制御する。複数の試料の充放電パターンは、複数の双方向DC−DCコンバータから双方向AC−DCコンバータに供給される回生電力が最小化されるようスケジュールされている。
【0010】
この態様によると、充放電試験システムの電力使用効率を大幅に向上させることができる。
【0011】
制御装置は、各種試験の充放電パターンを保持するパターンデータ保持部と、複数の試料のそれぞれについて試験条件設定を受け付ける受付部と、受付部により受け付けられた試験条件設定にしたがい、複数の試料のそれぞれの充放電パターンをパターンデータ保持部から取得するパターンデータ取得部と、パターンデータ取得部により取得された複数の充放電パターンにもとづく複数の試料の試験のそれぞれの開始タイミングを、複数の双方向DC−DCコンバータから直流バスを介して双方向AC−DCコンバータに供給される回生電力のピークまたは平均が最小化されるよう、スケジュールするスケジュール部と、を有してもよい。
【0012】
制御装置は、双方向AC−DCコンバータから供給される力行電力または双方向AC−DCコンバータに供給される回生電力が所定の設定電力を超えたとき、予め設定された優先順位にしたがい、少なくとも一つの双方向DC−DCコンバータを無効化してもよい。これによれば、優先順位の高い試験の停止を回避することができる。
【0013】
直流バスに接続される蓄電池をさらに備えてもよい。冗長の双方向AC−DCコンバータを含め複数の双方向AC−DCコンバータが直流バスに接続されてもよい。
【0014】
制御装置は、ユーザに対して所定の情報を通知する通知部と、スケジュール部によりスケジュールされた複数の充放電パターンをもとに実施される試験により、複数の双方向DC−DCコンバータによる複数の試料に対する総充電ピーク電力または総放電ピーク電力が、少なくとも一つの双方向AC−DCコンバータの総能力を超えるか否か検査する検査部と、さらに備えてもよい。通知部は、検査部による検査結果を通知してもよい。
【0015】
制御装置は、検査部により総充電ピーク電力または総放電ピーク電力が、少なくとも一つの双方向AC−DCコンバータの総能力を超えると判定されたとき、無効化させる双方向DC−DCコンバータの順番を決定する無効化順番決定部をさらに備えてもよい。通知部は、無効化順番決定部により決定された無効化順番を通知してもよい。
【0016】
制御装置は、総充電ピーク電力または総放電ピーク電力と、少なくとも一つの双方向AC−DCコンバータの総能力にもとづき、双方向AC−DCコンバータの余裕度を算出する余裕度算出部をさらに備えてもよい。通知部は、余裕度算出部により算出された余裕度を通知してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、充放電試験システムの電力使用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来技術に係る充放電試験システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る充放電試験システムの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る制御装置の構成例を示す図である。
【図4】サイクル試験に用いられる充放電パターンの一例を示す図である。
【図5】抵抗測定試験に用いられる充放電パターンの一例を示す図である。
【図6】充放電効率試験に用いられる充放電パターンの一例を示す図である。
【図7】スケジュール部によるスケジュール作成の基本概念を説明するための図である。図7(a)はスケジュール調整前の2種類の充放電パターンを示し、図7(b)はスケジュール調整後の2種類の充放電パターンを示す。
【図8】本実施の形態の変形例1に係る充放電試験システムの構成を示す図である。
【図9】本実施の形態の変形例2に係る充放電試験システムの構成を示す図である。
【図10】本実施の形態の変形例3に係る充放電試験システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図2は、本発明の実施の形態に係る充放電試験システム100の構成を示す図である。当該充放電試験システム100は、複数の試料31〜33の試験を並行して行うことができる。当該充放電試験システム100は、双方向AC−DCコンバータ11および複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23を備える。双方向AC−DCコンバータ11は、交流側端子が交流バス41を介してAC電源40に接続され、直流側端子が直流バス60に接続される。例えば、双方向AC−DCコンバータ11は、力行時、200Vの交流電圧を320Vの直流電圧に変換し、回生時、直流バス60の直流電圧を200Vの交流電圧に変換する。
【0020】
複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23のそれぞれは、一端が直流バス60に接続され、他端が各試料31〜33に接続される。例えば、各双方向DC−DCコンバータ21〜23は、力行時、直流バス60の直流電圧を12Vの直流電圧に変換し、回生時、各試料31〜33の直流放電電圧を、320Vの直流電圧に変換する。
【0021】
本実施の形態に係る充放電試験システム100では、直流バス60に接続される双方向DC−DCコンバータの数が、直流バス60に接続される双方向AC−DCコンバータの数より多くなるよう設計される。なお、図1では説明を分かりやすくするため直流バス60に接続される双方向AC−DCコンバータの数を1にしているが、1に限るものではない(後述する図10参照)。
【0022】
試料31〜33は、被試験対象であり、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などが挙げられる。
【0023】
制御装置50は、充放電試験システム100に内蔵されていてもよいし、外付けされてもよい。外付けされる場合、一般的なPCやサーバを用いることができる。制御装置50は、複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23を制御して、各双方向DC−DCコンバータ21〜23による複数の試料31〜33に対する充放電を制御する。その際、制御装置50は、複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23にそれぞれ接続される複数の試料31〜33の充放電パターンに応じて、複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23を制御する。複数の試料31〜33の充放電パターンは、複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23から双方向AC−DCコンバータ11に供給される回生電力が最小化されるようスケジュールされている。
【0024】
図3は、本発明の実施の形態に係る制御装置50の構成例を示す図である。当該制御装置50は、パターンデータ保持部51、計測データ保持部52、受付部53、通知部54および制御部55を備える。パターンデータ保持部51は、試料31〜33に対して実施すべき各種試験の充放電パターンを保持する。各種試験の充放電パターンの具体例は後述する。計測データ保持部52は、試料31〜33に対して実施する各種試験により得られる計測データを保持する。
【0025】
受付部53は、ユーザ操作に起因したユーザの指示を受け付ける。例えば、複数の試料31〜33のそれぞれについての試験条件設定を受け付ける。通知部54は、ユーザに対して制御部55により生成された各種情報を通知する。例えば、通知部54はディスプレイを備え、当該ディスプレイに各種情報を表示させる。
【0026】
制御部55は、パターンデータ取得部551、スケジュール部552、検査部553、無効化順番決定部554、余裕度算出部555、充放電制御部556および計測部557を含む。これらの構成は、ハードウェア的には、任意のプロセッサ、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウェア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組み合わせによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0027】
パターンデータ取得部551は、受付部53により受け付けられた試験条件設定にしたがい、複数の試料31〜33のそれぞれの充放電パターンをパターンデータ保持部51から取得する。スケジュール部552は、パターンデータ取得部551により取得された複数の充放電パターンにもとづく複数の試料31〜33の試験のそれぞれの開始タイミングを、複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23から直流バス60を介して双方向AC−DCコンバータ11に供給される回生電力のピークまたは平均が最小化されるよう、スケジュールする。
【0028】
充放電制御部556は、スケジュール部552により生成されたスケジュールにしたがい、複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23の充放電を制御する。通知部54は、スケジュール部552により生成されたスケジュールをユーザに通知することができる。計測部557は、各種試験中において、試料31〜33の電圧、電流、温度などを計測し、計測データとして計測データ保持部52に格納する。
【0029】
次に、試料である電池に対する各種試験に用いられる充放電パターンの具体例を挙げる。以下、サイクル試験、電圧保持試験および充放電効率試験に用いられる充放電パターンの例を挙げる。
【0030】
図4は、サイクル試験に用いられる充放電パターンの一例を示す。図4の充放電パターンは電流パターンを示している。まず、定電流(CC)充電がなされ、次に、定電圧(CV)充電がなされる。充電が終了すると、休止期間を挟み、定電流(CC)放電がなされる。放電が終了すると、休止期間となる。この一連のサイクルが繰り返し実行される。
【0031】
図5は、抵抗測定試験に用いられる充放電パターンの一例を示す。まず、定電流(CC)充電が短時間実行され、その後、定電圧(CV)充電がなされる。充電が終了すると、休止期間を挟み、定電流(CC)放電がなされる。放電が終了すると、休止期間となる。
【0032】
図6は、充放電効率試験に用いられる充放電パターンの一例を示す。まず、予備定電流(CC)充電がなされ、続けて予備定電圧(CV)充電がなされる。続けて本定電流(CC)充電がなされ、続けて本定電圧(CV)充電がなされる。充電が終了すると、定電流(CC)放電がなされる。放電が終了すると、休止期間となる。本充電期間の開始時点から本充電開始時点の電圧まで放電された時点までが、測定期間となる。
【0033】
なお、これらの試験は一例であり、容量・内部抵抗・最大出力密度の試験、実際の走行データにもとづくシミュレーション試験など、他にも様々な試験がある。ユーザは、各試料31〜33について、いずれの試験を行うか受付部53から指定することができる。
【0034】
次に、スケジュール部552によるスケジュール作成アルゴリズムの一例について説明する。図7は、スケジュール部552によるスケジュール作成の基本概念を説明するための図である。図7では、2つの電池に対して異なる試験が実行される場合の、2種類の充放電パターンを示す図である。図7(a)はスケジュール調整前の2種類の充放電パターンを示し、図7(b)はスケジュール調整後の2種類の充放電パターンを示す。スケジュール調整前では、第1充放電パターンP1のピーク充電電流と、第2充放電パターンP2のピーク充電電流が重複している。したがって、双方向AC−DCコンバータ11は大きな力行電力を直流バス60を介して2つの双方向DC−DCコンバータに供給する必要がある。また、第2充放電パターンP2の放電期間では、双方向AC−DCコンバータ11は大きな回生電力を交流バス41に戻す必要があり、大きな交流変換ロスが発生する。
【0035】
これに対して、スケジュール部552は第1充放電パターンP1の開始タイミングを、第2充放電パターンP2の放電期間まで遅らせることにより、第1充放電パターンP1の充電電流と第2充放電パターンP2の充電電流の合成電流のピーク値を低減できる。また、第2充放電パターンP2の放電電流が直流バス60を介して第1充放電パターンP1の充電電流に転用されるため、双方向AC−DCコンバータ11が交流バス41に戻す回生電力を低減できる。
【0036】
このように、複数の試料31〜33に対して並行して実行される試験において、少なくとも一つの試料に吸収される充電電流の総和と、少なくとも一つの試料から吐き出される放電電流の総和が可能な限り等しい状態が継続されることが好ましい。直流バス60を介して複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23間で電流をやりとりできれば、双方向AC−DCコンバータ11の力行電力および回生電力を低減することができ、双方向AC−DCコンバータ11の規模削減、低コスト化につながる。また、当該回生電力が低減するため、交流変換ロスを低減できる。
【0037】
スケジュール部552は、このようなスケジュールを生成するために既存のアルゴリズムを用いることができる。例えば、複数の試料31〜33に対する試験期間における各時点の総充電電流と総放電電流の和(以下、本明細書では偏差という)の合計が最小化される各充放電パターンの位相を求め、各充放電パターンの開始タイミングを決定してもよい。これは、無駄なエネルギロスを最小化するためのアルゴリズムである。
【0038】
また、スケジュール部552は、複数の試料31〜33に対する試験期間における上記偏差の最大値が最小化される各充放電パターンの位相を求め、各充放電パターンの開始タイミングを決定してもよい。これは、ピーク電流を最小化するためのアルゴリズムである。なお、ここまで電流ベースの例を挙げたが、電力ベースで演算してもよい。
【0039】
図3に戻る。検査部553は、スケジュール部552によりスケジュールされた複数の充放電パターンをもとに実施される試験により、複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23による複数の試料31〜33に対する総充電ピーク電力または総放電ピーク電力が、双方向AC−DCコンバータ11の許容電力範囲を超えるか否か検査する。通知部54は、検査部553による検査結果をユーザに通知する。ユーザは、この検査結果を参酌して、各試料31〜33に対する試験の内容変更を受付部53から指定することができる。
【0040】
無効化順番決定部554は、検査部553により総充電ピーク電力または総放電ピーク電力が、双方向AC−DCコンバータ11の許容電力範囲を超えると判定されたとき、無効化させる双方向DC−DCコンバータ21〜23の順番を決定する。無効化とは、例えば、直流バス60と双方向DC−DCコンバータとを電気的に切り離すことを指す。無効化順番決定部554は、例えば、優先順位が低い試験を行っている双方向DC−DCコンバータ21〜23の順に無効化させる。優先順位が低い試験とは、例えば、試験時間が短い試験である。通知部54は、無効化順番決定部554により決定された無効化順番をユーザに通知する。ユーザは、この無効化順番を参酌して、各試料31〜33に対する試験の内容変更を受付部53から指定することができる。また、当該無効化順番を、ユーザが受付部53から指定してもよい。
【0041】
余裕度算出部555は、総充電ピーク電力または総放電ピーク電力と、双方向AC−DCコンバータ11の許容電力範囲にもとづき、双方向AC−DCコンバータ11の余裕度を算出する。通知部54は、余裕度算出部555により算出された余裕度をユーザに通知する。ユーザは、この余裕度を参酌して、各試料31〜33に対する試験の内容変更を受付部53から指定することができる。
【0042】
以上説明したように本発明の実施の形態によれば、複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23間で電流をやりとりするための直流バス60を設けたことにより、双方向AC−DCコンバータ11から交流バス41に戻される回生電力を低減でき、双方向AC−DCコンバータ11における交流変換ロスを低減できる。したがって、充放電試験システムの電力使用効率を向上させることができる。また、図1の充放電試験システム100と比較し、双方向AC−DCコンバータ11の数を減らすことができ、交流回生電源の規模削減、低コスト化を図ることができる。
【0043】
また、各充放電プログラムパターンを適宜、時間移動させることにより、ユーザの設定条件範囲内で総充電電力および総放電電力が最小となる充放電プログラムパターンを自動生成することができ、省電力運転が可能となる。したがって、交流変換ピーク電力や交流変換平均電力の最小化運転が可能となり、電力使用効率をさらに向上させ、回生交流電源の規模削減、低コスト化をさらに図ることができる。このように本発明の実施の形態によれば、充放電試験システム100の導入コストや量産試験時のランニングコストを低減することにより、低価格な電池の提供が可能となり、ひいては車の電動化を推進することにつながる。
【0044】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0045】
図8は、本実施の形態の変形例1に係る充放電試験システム100の構成を示す図である。変形例1に係る充放電試験システム100は、図2に示した充放電試験システム100に対して電力検出部61が追加された構成である。電力検出部61は、双方向AC−DCコンバータ11から直流バス60を介して複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23に供給される力行電力または複数の双方向DC−DCコンバータ21〜23から直流バス60を介して双方向AC−DCコンバータ11に供給される回生電力を検出する。電力検出部61には一般的な電力計や電流計を用いることができる。
【0046】
制御装置50は、電力検出部61により検出された力行電力または回生電力が所定の設定電力(例えば、双方向AC−DCコンバータ11の許容電力範囲)を超えたとき、予め設定された優先順位にしたがい、少なくとも一つの双方向DC−DCコンバータを無効化させる。当該優先順位は、ユーザが受付部53から指定したものであってもよいし、無効化順番決定部554により自動算出されたものであってもよい。
【0047】
変形例1によれば、ユーザの操作ミスやサージ電流などによる電力オーバーに対して、優先順位にしたがい双方向DC−DCコンバータを電気的に切断する機能を設けたことにより、優先順位の高い試験の停止を回避することができる。とくに、長時間かかる試験のデータは貴重な財産であり、その保護の必要性は高い。
【0048】
図9は、本実施の形態の変形例2に係る充放電試験システム100の構成を示す図である。変形例2に係る充放電試験システム100は、図2に示した充放電試験システム100に対して蓄電池62が追加された構成である。蓄電池(二次電池)62は、直流バス60に接続される。
【0049】
変形例2によれば、直流バス60に蓄電池62を接続したことにより、交流回生電源のピーク電力を低下させることができ、交流回生電源の規模削減、低コスト化に寄与する。
【0050】
図10は、本実施の形態の変形例3に係る充放電試験システム100の構成を示す図である。変形例3に係る充放電試験システム100は、図2に示した充放電試験システム100と比較し、冗長の双方向AC−DCコンバータを含め複数の双方向AC−DCコンバータ11〜1nが直流バス60に接続される構成である。また、直流バス60には複数の双方向DC−DCコンバータ21〜2mが接続される。変形例3において、双方向AC−DCコンバータの数は、双方向DC−DCコンバータの数より少なく設置される。
【0051】
上述したように直流バス60により複数の双方向DC−DCコンバータ21〜2m間で電流をやりとりすることには多数のメリットがある。ただし、双方向AC−DCコンバータに不具合が発生すると、すべての試験データに被害が及んでしまう。電池の試験データは1ヶ月以上の長期に渡ることもあり、極めて貴重なものである。変形例3によれば、冗長の双方向AC−DCコンバータを設けることにより、直流バス60による直流供給をより信頼度の高いものとすることができる。
【0052】
また、上述した実施の形態では、試料31〜33として電池を想定したが、キャパシタや電力変換器を伴うモータなど、充放電試験の対象となるものであれば、電池に限るものではない。
【符号の説明】
【0053】
100 充放電試験システム、 11,12,13,1n 双方向AC−DCコンバータ、 21,22,23,2m 双方向DC−DCコンバータ、 31,32,33,3m 試料、 40 AC電源、 41 交流バス、 50 制御装置、 51 パターンデータ保持部、 52 計測データ保持部、 53 受付部、 54 通知部、 55 制御部、 551 パターンデータ取得部、 552 スケジュール部、 553 検査部、 554 無効化順番決定部、 555 余裕度算出部、 556 充放電制御部、 557 計測部、 60 直流バス、 61 電力検出部、 62 蓄電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流側端子が交流電源に接続され、直流側端子が直流バスに接続される双方向AC−DCコンバータと、
一端が前記直流バスに接続され、他端が試料に接続される双方向DC−DCコンバータと、
前記双方向DC−DCコンバータを制御して、前記双方向DC−DCコンバータによる前記試料に対する充放電を制御する制御装置と、を備え、
前記直流バスに接続される双方向DC−DCコンバータの数は、前記直流バスに接続される双方向AC−DCコンバータの数より多く、
前記制御装置は、前記複数の双方向DC−DCコンバータにそれぞれ接続される複数の試料の充放電パターンに応じて、前記複数の双方向DC−DCコンバータを制御し、
前記複数の試料の充放電パターンは、前記複数の双方向DC−DCコンバータから前記双方向AC−DCコンバータに供給される回生電力が最小化されるようスケジュールされていることを特徴とする充放電試験システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
各種試験の充放電パターンを保持するパターンデータ保持部と、
前記複数の試料のそれぞれについて試験条件設定を受け付ける受付部と、
前記受付部により受け付けられた試験条件設定にしたがい、前記複数の試料のそれぞれの充放電パターンを前記パターンデータ保持部から取得するパターンデータ取得部と、
前記パターンデータ取得部により取得された複数の充放電パターンにもとづく前記複数の試料の試験のそれぞれの開始タイミングを、前記複数の双方向DC−DCコンバータから前記直流バスを介して前記双方向AC−DCコンバータに供給される回生電力のピークまたは平均が最小化されるよう、スケジュールするスケジュール部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の充放電試験システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記双方向AC−DCコンバータから供給される力行電力または前記双方向AC−DCコンバータに供給される回生電力が所定の設定電力を超えたとき、予め設定された優先順位にしたがい、少なくとも一つの双方向DC−DCコンバータを無効化することを特徴とする請求項1または2に記載の充放電試験システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
ユーザに対して所定の情報を通知する通知部と、
前記スケジュール部によりスケジュールされた前記複数の充放電パターンをもとに実施される試験により、前記複数の双方向DC−DCコンバータによる前記複数の試料に対する総充電ピーク電力または総放電ピーク電力が、前記少なくとも一つの双方向AC−DCコンバータの総能力を超えるか否か検査する検査部と、さらに備え、
前記通知部は、前記検査部による検査結果を通知することを特徴とする請求項2に記載の充放電試験システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記検査部により前記総充電ピーク電力または前記総放電ピーク電力が、前記少なくとも一つの双方向AC−DCコンバータの総能力を超えると判定されたとき、無効化させる双方向DC−DCコンバータの順番を決定する無効化順番決定部をさらに備え、
前記通知部は、前記無効化順番決定部により決定された無効化順番を通知することを特徴とする請求項4に記載の充放電試験システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記総充電ピーク電力または前記総放電ピーク電力と、前記少なくとも一つの双方向AC−DCコンバータの総能力にもとづき、前記双方向AC−DCコンバータの余裕度を算出する余裕度算出部をさらに備え、
前記通知部は、前記余裕度算出部により算出された余裕度を通知することを特徴とする請求項4または5に記載の充放電試験システム。
【請求項7】
前記直流バスに接続される蓄電池をさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の充放電試験システム。
【請求項8】
冗長の双方向AC−DCコンバータを含め複数の双方向AC−DCコンバータが前記直流バスに接続されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の充放電試験システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−154793(P2012−154793A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14170(P2011−14170)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】