説明

充電コネクタ

【課題】装置側インレットの凹部と充電コネクタの抜け止めフックの係合状態を、通常の動作で解除できない異常事態が生じても、解除できる充電コネクタを提供する。
【解決手段】充電コネクタ100は、第1揺動アーム10と抜け止めフック11と第1付勢部材12とスライド棒30(解除部材)とを具える。第1揺動アーム10は、本体部1の外部から挿脱可能な軸13iが挿通される軸孔部13oを有して軸孔部13oを中心に揺動する。第1付勢部材12は、軸13iが軸孔部13oに挿通されているとき、抜け止めフック11が突出するように、軸13iが軸孔部13oから抜脱されたとき、抜け止めフック11が突出する側とは逆方向にそれぞれ第1揺動アーム10を付勢する。スライド棒30は、軸13iが軸孔部13oに挿通されているとき、第1揺動アーム10の後方部分に当接して、第1揺動アーム10を突出側とは逆方向に揺動させる押当部32を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池を備える装置のインレットに接続し、装置の蓄電池に給電するための充電コネクタに関する。特に、装置側インレットの凹部と充電コネクタの抜け止めフックの係合状態を、通常の動作で解除できない異常事態が生じても、解除できる充電コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりから、蓄電池(バッテリー)を搭載し、その電力でモータを駆動して走行する電動車両(代表的には、電気自動車)の普及が進められており、電気自動車のインフラ整備として充電器の拡充が図られている。また、電気自動車の普及に向け、電気自動車用急速充電器の規格化が進められている(例、日本電動車両規格(JEVS:Japan Electric Vehicle Standard))。
【0003】
充電器側の充電コネクタに関する技術が、例えば特許文献1に記載されている。この充電コネクタの使用方法は、充電コネクタの先端部を車両側インレットに差し込み、その後さらに、充電コネクタのレバーを握ることで、車両側インレットへの嵌合を完了する。このとき、充電コネクタが差し込まれることで、先端部の外周面からフックが突出し、車両側インレットの内周面に設けられた凹部に係合して、充電コネクタと車両側インレットとが係止される。また、嵌合状態において、所謂ソレノイド(電磁コイルとプランジャとバネとを備える機構部品)の通電駆動により解除レバーをロックすることで、給電中に誤って解除レバーが操作されて、車両側インレットの内周面の凹部とフックの係合状態を解除することを防止する。一方、充電コネクタを車両側インレットから取り外すときは、給電終了により、ソレノイドへの通電が停止され解除レバーのロックが解除される。次いで、解除レバーを操作して、車両側インレットの内周面の凹部に係合するフックを引っ込め、係合を解除した状態で、充電コネクタを車両側インレットから引き抜く(特許文献1(段落0023−0026)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−192802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
充電コネクタには、安全性や操作性に優れることが望まれる。しかし、上記した特許文献1に記載されるような従来の充電コネクタは、次のような課題がある。
【0006】
給電終了後、車両側インレットから充電コネクタを引き抜く際に、解除レバーの回動に関わる機構に異物が咬み込むなどといった不測の不具合により解除レバーが通常動作せず、車両側インレットの凹部に係合された充電コネクタのフックを引っ込ませることができない異常事態が起こり得る。その場合、凹部とフックの係合状態が解除できず、車両側インレットから充電コネクタを引き抜くことが困難になる。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、装置側インレットの凹部と充電コネクタの抜け止めフックの係合状態を、通常の動作で解除できない異常事態が生じても、解除できる充電コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の充電コネクタは、蓄電池を備える装置のインレットに接続して装置の蓄電池に給電するためのものであり、本体部とこの本体部の先端側に設けられる挿入部とを備える。この挿入部は、装置側インレットに差し込まれる。また、充電コネクタは、第1揺動アームと、抜け止めフックと、第1付勢部材と、解除部材とを備える。上記第1揺動アームは、本体部側から挿入部側に亘って延設され、本体部の外部から挿脱可能な軸が挿通される軸孔部を有して、当該軸孔部を中心に揺動する。上記抜け止めフックは、第1揺動アームの軸孔部より挿入部側の前方部分に設けられ、挿入部から外側に突出可能である。上記第1付勢部材は、上記軸が軸孔部に挿通されているとき、抜け止めフックが突出するように第1揺動アームを付勢して、上記軸が軸孔部から抜脱されたとき、抜け止めフックが突出する側とは逆方向に第1揺動アームを付勢する。上記解除部材は、上記軸が軸孔部に挿通されているとき、上記第1揺動アームの上記前方部分とは反対側の後方部分に当接して、上記第1揺動アームを上記抜け止めフックが突出する側とは逆方向に揺動させる押当部を有する。
【0009】
本発明の充電コネクタでは、挿入部が装置側インレットに差し込まれた状態から充電コネクタを引き抜く際、軸が軸孔部に挿通された通常時においては、解除部材の押当部により第1揺動アームを抜け止めフックが突出する側とは逆方向に揺動させて装置側インレットの内周面に設けられた凹部と、抜け止めフックとの係合状態を解除する。しかし、解除部材が上述のように正常に動作しないような異常事態が生じた場合でも、軸孔部に挿通される軸を抜脱することで、軸孔部の固定が解除ひいては第1揺動アームの本体部への固定が解除されると共に、第1付勢部材によって抜け止めフックが突出する側とは逆方向に付勢されるので、抜け止めフックと上記凹部との係合状態を解除できる。つまり、解除部材により上記凹部と抜け止めフックとの係合状態を解除できない異常事態が生じても、充電コネクタを分解、または破壊などすることなく、充電コネクタを装置側インレットから容易にかつ確実に引き抜くことができる。
【0010】
本発明の充電コネクタの一形態としては、さらに、プランジャを有し、通電時にプランジャを一方向に移動させ、非通電時にプランジャを元の位置に復帰させるソレノイドと、上記プランジャに連動して、上記第1揺動アームの前方部分における抜け止めフックが突出する側とは反対側の面に当接するように進出する押え片とを備えることが挙げられる。そして、第1揺動アームの前方部分に貫通部が形成され、上記軸が軸孔部に挿通されているとき、プランジャが元の位置にある状態では、上記押え片が上記貫通部に臨むように位置し、プランジャの移動した状態では、押え片が第1揺動アームの前方部分に当接するように進出する。また、軸が軸孔部から抜脱されたとき、押え片が貫通部に遊嵌状態で挿通される。
【0011】
上記の構成によれば、ソレノイドのプランジャに連動して、押え片が第1揺動アームの前方部分に当接するように進出する。軸が軸孔部に挿通されている場合、この押え片の第1揺動アームへの当接により抜け止めフックが挿入部から突出状態に維持され、抜け止めフックが挿入部から引っ込まないように、第1揺動アームの揺動を規制することができる。つまり、抜け止めフックが挿入部から引っ込むことを直接的に防止することができる。そのため、使用者が誤って解除部材を操作したり、衝撃や振動、或いは抜け止めフックを突出させる第1付勢部材が破損するなどのトラブルが生じたりしても、抜け止めフックが引っ込むことがなく、抜け止めフックと装置側インレットの凹部との係合状態が解除されることを確実に防止することができる。よって、例えば給電中に、装置側インレットから充電コネクタが不用意に抜けることがなく、安全性に優れる。
【0012】
そして、この構成では挿入部から装置側インレットに差し込まれた状態から充電コネクタを引き抜く際、解除部材が正常に動作して、ソレノイドが正常に動作すれば、上記凹部と抜け止めフックとの係合状態を解除できる。というのも、プランジャが元の位置に復帰されてから、上述したように解除部材の押当部により第1揺動アームを抜け止めフックが突出する側とは逆方向に揺動させる。このとき、第1揺動アームの貫通部は、ソレノイドで元の位置に復帰された押え片と対応する位置にあるため、抜け止めフックを第1揺動アームの揺動により挿入部に引っ込めても、押え片は貫通部に挿通される。そのため、上記凹部と抜け止めフックとの係合状態を解除できる。
【0013】
一方、解除部材が正常に動作しない異常事態が生じた場合でも、軸を軸孔部から抜脱することで上記係合状態を解除できる。というのも、このときソレノイドが正常に動作すれば、プランジャが元の位置に復帰されてから、軸を軸孔部から抜脱することで、第1揺動アームが第1付勢部材によって抜け止めフックが突出する側とは逆方向に付勢されるので、押え片を第1揺動アームの貫通部に挿通できる。それにより、抜け止めフックを挿入部に引っ込めて上記凹部と抜け止めフックとの係合状態を解除できる。つまり、解除部材が正常に動作しない異常事態が生じた場合でも、上述したように、軸を軸孔部から抜脱することで上記係合状態を解除できる。
【0014】
さらに、この構成によると、解除部材が正常に動作しない上に、ソレノイドがプランジャを元の位置に復帰できない異常事態が生じた場合でも、上記凹部と抜け止めフックとの係合状態を解除できる。というのも、軸を軸孔部から抜脱して充電コネクタを引くと、軸の抜脱により第1揺動アームの本体部への固定を解除して、第1付勢部材によって抜け止めフックが突出する側とは逆方向に第1揺動アームを付勢する。それと共に、充電コネクタの引き抜きにより、第1揺動アームが押え片上を摺動して挿入部側へ移動する。その結果、押え片が貫通部に挿通されて、上記凹部と抜け止めフックとの係合状態を解除できる。
【0015】
つまり、この構成によれば、充電コネクタを分解、または破壊などすることなく、充電コネクタを装置側インレットから容易にかつ確実に引き抜くことができる。
【0016】
本発明の充電コネクタの一形態としては、上記軸孔部の中心軸が上記抜け止めフックの突出側に位置することが挙げられる。
【0017】
上記の構成によれば、軸孔部の中心軸が抜け止めフックの突出側と同じ側に位置していることで、抜け止めフックを装置側インレットの凹部に係合させる際、抜け止めフックの上記凹部に掛かる力が分散し難く、抜け止めフックを装置側インレットの凹部から抜け難くすることができる。そのため、例えば給電中に、充電コネクタが装置側インレットから不用意に抜けることがなく、安全性に優れる。
【0018】
本発明の充電コネクタの一形態としては、本体部の内周面は誘導面を有し、誘導面と軸孔部との間に移動代があることが挙げられる。上記誘導面は、本体部の内周面のうち上記軸孔部の挿入部側に位置する面であり、本体部側から挿入部側に向かうに従って本体部の内方に傾斜している。そして、上記移動代は、軸が軸孔部から抜脱されたとき、軸孔部が挿入部側に移動可能な程度である。
【0019】
上記の構成によれば、上記異常事態が生じた場合はもちろん、さらに第1付勢部材が破損するなどのトラブルが生じて、軸を軸孔部から抜脱したときに、第1揺動アームを上記突出側とは逆方向に付勢できなくても、抜け止めフックと上記凹部との係合状態を解除できる。というのも、軸を軸孔部から抜脱して充電コネクタを装置側インレットから引くことで、第1揺動アームを上記誘導面に沿わせて相対的に第1揺動アームが挿入部側に誘導される。その結果、第1揺動アームを充電コネクタ内部に収納でき、それに伴い抜け止めフックが挿入部から引っ込むからである。
【0020】
本発明の充電コネクタの一形態としては、上記抜け止めフックは摺接面を有し、上記挿入部は切欠きを有し、切欠きの一部が傾斜するガイド面である形態が挙げられる。この抜け止めフックの摺接面は、第1揺動アームの先端側ほど厚みが薄くなるように傾斜している。挿入部の切欠きは、抜け止めフックを当該挿入部から露出させるように形成されている。そして、上記ガイド面は、切欠きで挿入部に形成される開口面のうち第1揺動アームの先端に臨む面であり、上記フックの摺接面と同じ方向に傾斜する。
【0021】
上記の構成によれば、上記異常事態が生じた場合はもちろん、さらに第1付勢部材が破損するなどのトラブルが生じて、軸を軸孔部から抜脱したときに、第1揺動アームを上記突出側とは逆方向に付勢できなくても、抜け止めフックと上記凹部との係合状態を解除できる。というのも、軸を軸孔部から抜脱して充電コネクタを装置側インレットから引くと、抜け止めフックが装置側インレットの凹部に係合(接触)しているため、相対的に第1揺動アームが挿入部側に進出する。そして、抜け止めフックが傾斜する摺接面を有し、切欠きのガイド面が抜け止めフックの摺接面と同じ方向に傾斜していることで、相対的に挿入部側に進出した第1揺動アームが上記ガイド面と摺接する。その結果、抜け止めフックの摺接面がガイド面の傾斜に沿って挿入部の径方向内方に案内されて、第1揺動アームが突出する側とは逆方向に移動されるからである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の充電コネクタは、装置側インレットの内周面の凹部に係合している充電コネクタのフックの係合状態を解除する解除部材に異常事態が生じても確実に係合状態を解除できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態1に係る車両用充電コネクタを模式的に示す左後方斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る車両用充電コネクタを模式的に示す要部拡大上面図である。
【図3】実施の形態1に係る車両用充電コネクタの内部構造を模式的に示す左側面図である。
【図4】実施の形態1に係る車両用充電コネクタの内部構造を模式的に示す左後方斜視図である。
【図5】実施の形態1に係る車両用充電コネクタの内部構造を模式的に示す右後方斜視図である。
【図6】実施の形態1に係る車両用充電コネクタにおける嵌合機構の初期状態を模式的に示す要部拡大左側面図である。
【図7】実施の形態1に係る車両用充電コネクタにおける嵌合機構の初期状態を模式的に示す要部拡大右側面図である。
【図8】実施の形態1に係る車両用充電コネクタにおける嵌合機構の一状態を模式的に示す要部拡大右側面図である。
【図9】実施の形態1に係る車両用充電コネクタにおける嵌合機構の一状態を模式的に示す要部拡大左側面図である。
【図10】実施の形態1に係る車両用充電コネクタにおける嵌合機構の別の状態を模式的に示す要部拡大左側面図である。
【図11】実施の形態1に係る車両用充電コネクタにおける嵌合機構のさらに別の状態を模式的に示す要部拡大左側面図である。
【図12】実施の形態1に係る車両用充電コネクタにおけるスライドスイッチの状態を説明するために模式的に示す要部拡大上面図であり、(A)は初期状態でのスライドスイッチの位置を示し、(B)は後退限まで後退した状態でのスライドスイッチの位置を示す。
【図13】実施の形態1に係る車両用充電コネクタの異常事態における嵌合機構の初期状態を模式的に示す要部拡大右側面図である。
【図14】実施の形態1に係る車両用充電コネクタの異常解除における嵌合機構の一状態を模式的に示す要部拡大右側面図である。
【図15】実施の形態1に係る車両用充電コネクタの異常解除における嵌合機構の別の状態を模式的に示す要部拡大右側面図である。
【図16】実施の形態1に係る車両用充電コネクタの異常解除における嵌合機構のさらに別の状態を模式的に示す要部拡大右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を、図を用いて説明する。なお、ここでは、蓄電池を備える装置が電動車両(具体的には、電気自動車)であり、充電コネクタが車両用充電コネクタである場合を例として説明する。また、図中、同一符号は同一部分を示す。
【0025】
(実施の形態1)
図1に示す車両用充電コネクタ(以下、単に「充電コネクタ」と呼ぶ場合がある)100は、図示しない電気自動車のインレット(車両側インレット)に接続して、電気自動車の蓄電池に給電するために利用される。この充電コネクタ100は、図示しない充電器から延びるケーブル200の先端に取り付けられ、二つ割れのアルミ合金製カバー(右カバーと左カバー)で外装されている。充電コネクタ100は、L字状の本体部1と、本体部1の先端に設けられる挿入部2と、本体部1の背面に形成されるハンドル部3とを備える。本体部1は、その前端側(挿入部2側)に突出部6を備え、その後端からケーブル200が導入されている。そして、挿入部2の上方から外部に露出されて車両側インレットに係合される抜け止めフック11が露出している。この抜け止めフック11は、上記突出部6に軸13iで揺動自在に軸支される第1揺動アーム(後述)の先端部を構成する。一方、ハンドル部3の上部には、第1揺動アームを揺動させて抜け止めフック11の車両側インレットとの係合を解除するスライドスイッチ4を備える。この充電コネクタ100の特徴とするところは、第1揺動アームが動作不良になって、抜け止めフック11と車両側インレットとの係合をスライドスイッチ4で解除できない場合でも、軸13iを抜脱することでこの係合を解除して、充電コネクタ100を車両側インレットから引き抜けるようにする構成にある。以下、その構成を備える充電コネクタ100の構造を詳細に説明する。
【0026】
充電コネクタ100の外部構造を、主に図1、2を用いて説明する。本体部1は、充電コネクタ100の機械部品や機構部品が格納される部分であり、筒状の前端部の上部に、上方へ突出する突出部6を備える。この突出部6は、山型に湾曲した膨出面と、その膨出面の両側にその湾曲に沿った略三角形状のサイド面とで形成される切妻形の部分である。膨出面は、上記筒状の前端部における軸方向の両側が低く、その中間部が高くなるよう、一対の傾斜面を稜線部でつないで構成され、サイド面は、本体部1の軸方向と直交する方向に対向して並列されている。この突出部6の各サイド面に、外部から挿脱可能な軸13iが挿通される孔が形成されている。両サイド面のこの孔に軸13iを架け渡すように挿通して第1揺動アームを軸支し、突出部6の上記膨出面と両サイド面とで構成される略三角柱状の空間に第1揺動アームの後述する軸孔部13oが収納される。
【0027】
挿入部2は、車両側インレットに差し込まれる部分であり、抜け止めフック11を挿入部から露出させる切欠き41を有している(図2参照)。
【0028】
ハンドル部3は、C字状であり、一端側が本体部1の上面に沿って延長するように形成され、他端側が本体部1の後端に連結されている。このハンドル部3の上面にはスライドスイッチ4の一部が露出するように配置され、ハンドル部3の背面下方にはLEDランプ5が埋め込まれている。
【0029】
充電コネクタ100の内部構造を、図3〜7を用いて説明する。図3、4、6は左カバーを、図5、7は右カバーをそれぞれ取り外した状態であり、いずれの図も充電コネクタ100を車両側インレットに差し込んで嵌合させる前の状態(初期状態)を示している。図3〜5に示すように、本体部1には、ケーブル200が配設されると共に、後述する機械部品や機構部品が格納されている。また、挿入部2には、端子(図示せず)が格納されており、端子は端子ケース70に収納されている。以下、充電コネクタ100における車両側インレットに嵌合させるための嵌合機構を説明する。なお、端子は、例えばJEVS G 105-1993などの規格に準拠した端子配列となっており、ここでは説明を省略する。
【0030】
充電コネクタ100は、第1揺動アーム10と、抜け止めフック11と、第1付勢部材12とを備える(図4、6参照)。第1揺動アーム10は、本体部1側から挿入部2側に亘って延設され、本体部1の外部から挿脱可能な軸13iが挿通される軸孔部13oを有して、当該軸孔部13oを中心に揺動する。抜け止めフック11は、第1揺動アーム10の軸孔部13o(軸13i)より挿入部2側の前方部分に設けられ、挿入部2から突出可能である。第1付勢部材12は、抜け止めフック11が突出するように第1揺動アーム10を付勢する。
【0031】
この例では、第1揺動アーム10は、平板状の部材であり、その長手方向の中間部に丸棒状の軸13iが挿通される円孔を持った軸孔部13oが形成されており、この軸13iに揺動可能に支持されている。
【0032】
抜け止めフック11は、第1揺動アーム10の先端部に設けられており、第1揺動アーム10の揺動により、挿入部2に形成された切欠き41(図2参照)から挿入部2の径方向外方(上方)に突出可能である。抜け止めフック11の形状は、第1揺動アーム10の先端側ほど厚みが薄くなるように傾斜する摺接面11tを有するくさび状である。この抜け止めフック11の配置箇所は、挿入部2が車両側インレットに確実に差し込まれたとき、車両側インレットの内周面に設けられた凹部に対応する位置とされる。さらに、この抜け止めフック11は、後述する第2揺動アーム20に設けられた突起部21よりも挿入部2の前方側に配される。
【0033】
上記軸孔部13oの中心軸の位置は、抜け止めフック11の突出する側にある。具体的には、この中心軸が、第1揺動アーム10における抜け止めフック11と軸孔部13o以外の平板箇所の厚みを二分する長手方向沿いの中心線よりフックの突出側に位置することが好ましい。軸孔部13oを抜け止めフック11の突出する側に位置させることで、抜け止めフック11の車両側インレットの凹部に係合する際に、当該凹部に抜け止めフック11の力が掛かり易く、抜け止めフック11が車両側インレットの凹部から不用意に抜け難い。特に、軸孔部13oの中心軸と抜け止めフック11の先端とが略一直線にあることが好ましい。
【0034】
第1揺動アーム10の軸孔部13o(軸13i)の後方部分は、第1付勢部材12の一端が押し付けられる押付部15が軸孔部13oから本体部1の径方向内方(下方)に向かって傾斜して形成されている。さらに、その押付部15の後方部分は、長手方向に平行に延びる平板状の部材の一部がL字状に屈曲し、後端部が本体部1の径方向内方(下方)に突出している。
【0035】
一方、この軸孔部13oに挿通される軸13iは、外部から挿脱可能であれば適宜な構成のものが利用できる。例えば、円柱や円筒のなどの棒状体の少なくとも一端に雌ネジが形成された雌部材と、その雌ネジに螺合される雄ネジなどの雄部材との組み合わせが挙げられる。但し、本体部1の外部から挿脱可能であるが、いたずらにより容易に抜脱されないように、例えば雄部材に雄ネジを用いる場合、頭部に一文字或いは十文字の溝が形成された一般的な雄ネジなどではなく、頭部に特殊な溝が形成された雄ネジを使用することが好ましい。具体的には、円柱部材とその外側を囲む環状部材との間に形成される環状溝で、環状の内縁形状が円で、外縁形状が星型や多角形状を有する溝が挙げられる。
【0036】
またこの例では、第1付勢部材12に捻じりバネを利用している(図4参照)。具体的には、捻じりバネ12を軸13iに同心状に配置し、捻じりバネ12の一端を第1揺動アーム10の押付部15の上面に押し付け、他端を本体部1に固定する。そして、第1揺動アーム10の先端部に設けられた抜け止めフック11が挿入部2から突出するように、第1揺動アーム10を揺動(回動)させる方向に付勢するように捻じりバネ12を取り付けている。第1揺動アーム10の第1付勢部材12による揺動は、第1揺動アーム10の前方部分が本体部1の内周面に当接するまで許容される。
【0037】
さらにこの例では、第1揺動アーム10の前方部分の中央部に貫通部14が形成されている(図4、5参照)。この例では、第1揺動アーム10の前方部分の中央部に貫通部14が形成され、貫通部14は貫通孔である。貫通部として貫通孔以外にも、例えば、第1揺動アーム10の前方部分の一部を切欠いた切欠きであってもよい。
【0038】
この例の充電コネクタ100は、第2揺動アーム20と、突起部21と、第2付勢部材22とを備える(図5、7参照)。第2揺動アーム20は、本体部1側から挿入部2側に向かって延設され、本体部1に固定された軸23を中心に揺動する。突起部21は、第2揺動アーム20の軸23より挿入部2側の前方部分に設けられ、本体部1と挿入部2との境界から突出可能である。第2付勢部材22は、突起部21が突出するように第2揺動アーム20を付勢する。
【0039】
この例では、第2揺動アーム20は、棒状の部材であり、中央部に軸23が挿通される孔が形成されており、この軸23に揺動可能に支持されている。つまり、第1揺動アーム10と第2揺動アーム20とは、異なる軸13i,23で支持されている。また、第1揺動アーム10と第2揺動アーム20とは、左右に並列に配置されている。突起部21は、第2揺動アーム20の先端部に設けられており、挿入部2に形成された切欠き42(図2参照)から挿入部2の径方向外方(上方)に突出可能である。突起部21は、第2揺動アーム20の先端側ほど厚みが薄くなる傾斜面を有するくさび状に形成されている。この突起部21は、挿入部2が車両側インレットに確実に差し込まれたとき、車両側インレットの周縁に当接する位置に位置する。一方、第2揺動アーム20の前方部分とは軸23を挟んで反対側の後方部分は、L字状に屈曲し、後端部が本体部1の径方向内方(下方)に突出している。
【0040】
またこの例では、第2付勢部材22に捻じりバネを利用している(図5参照)。具体的には、捻じりバネ22を軸23に同心状に配置し、捻じりバネ22の一端を第2揺動アーム20に固定し、他端を本体部1に固定する。そして、第2揺動アーム20の先端部に設けられた突起部21が挿入部2から突出するように、第2揺動アーム20を揺動(回動)させる方向に付勢するように捻じりバネ22を取り付けている。第2揺動アーム20の第2付勢部材22による揺動は、前方部分が本体部1の内周面に当接するまで許容される。
【0041】
また、充電コネクタ100は、第1揺動アーム10を第1付勢部材12による付勢方向とは逆方向に揺動させ、抜け止めフック11と車両側インレットの凹部との係合を解除する解除部材(ここでは、スライド棒30)を備える。スライド棒30は、第1揺動アーム10の延設方向に平行し、かつ、第1揺動アーム10の前方部分とは反対側の後方部分よりさらに後方に向かって延設され、その延設方向にスライド移動可能である。そして、このスライド棒30は、第1揺動アーム10の後方部分に当接して、第1揺動アーム10を第1付勢部材12による付勢方向とは逆方向に揺動させる押当部32を有する。
【0042】
この例では、スライド棒30の先端部に押当部32が設けられており、反対側の後端部にスライドスイッチ4が連結されている。押当部32は、スライド棒30の先端側ほど厚みが薄くなる傾斜面を有するくさび状に形成されている(図4、6参照)。押当部32は、スライド棒30(スライドスイッチ4)が挿入部2側(前方)に前進したとき、第1揺動アーム10の後端部に当接し、第1揺動アーム10の後端部を押し上げることで、第1揺動アーム10を第1付勢部材12による付勢方向とは逆方向に揺動させることができる。これにより、抜け止めフック11を下降させ、抜け止めフック11を挿入部2から引っ込めることで、抜け止めフック11と車両側インレットの凹部との係合を解除する。
【0043】
またこの例では、スライド棒30を後退させる方向に付勢する第3付勢部材31を備えると共に、スライド棒30は、第2揺動アーム20の後方部分に当て止めされ、第3付勢部材31による後退を阻止する当止部33を有する。
【0044】
当止部33は、スライド棒30の先端部に設けられた押当部32から第2揺動アーム20側に向かって突出する片状に形成されており、先端側に向かって傾斜する上面を有する(図5、7参照)。スライド棒30が前進したとき、当止部33の上面が傾斜しているので、第2揺動アーム20の後端部を押し上げて通過できる。図5、7に示すように、当止部33が第2揺動アーム20の後端部に当て止めされることで、第3付勢部材31による付勢に抗って、スライド棒30の後退が阻止される。つまり、スライド棒30(スライドスイッチ4)が第2揺動アーム20側、即ち挿入部2側にスライドした(押し込まれた)状態で固定される。そして、挿入部2が車両側インレットに差し込まれたとき、車両側インレットの周縁に第2揺動アーム20の先端部に設けられた突起部21が当接して押し込まれて、第2揺動アーム20の後端部が上昇するように第2揺動アーム20が揺動する。これにより、当止部33と第2揺動アーム20との当止状態が解除され、スライド棒30が第3付勢部材31による付勢により後退限まで後退する。
【0045】
ここでは、第3付勢部材31に圧縮バネを利用している。具体的には、圧縮バネ31の一端を本体部1に固定された支持板43に固定し、他端をスライドスイッチ4に固定する。そして、スライド棒30(スライドスイッチ4)を後退方向、即ち挿入部2側とは反対側方向に付勢するように圧縮バネ31を取り付けている。
【0046】
さらに、充電コネクタ100は、ソレノイド50を備える。このソレノイド50は、プランジャ51を有し、通電駆動時に内蔵された電磁コイル(図示せず)によりプランジャ51を一方向に移動させ、非通電時に内蔵されたバネ(図示せず)によりプランジャ51を元の位置に復帰させる。この例では、ソレノイド50が、第1揺動アーム10の後方で、かつ第2揺動アーム20の仮想延長上とはスライド棒30を挟んで反対側であって、スライド棒30に並列に配置されている(図4、5参照)。また、プランジャ51が挿入部2側に向かって第1揺動アーム10の延設方向と平行(ここでは、水平方向)に移動する。初期状態では、非通電となっている。プランジャ51の移動方向側の先端には、連結部52が取り付けられ、その先端部に押え片53が設けられている。連結部52は、プランジャ51の移動方向側に延びる板状片と、この板状片の先端側から上方に突出すると共に、第1揺動アーム10の前方部分の下方に延びる屈曲部とを有する(図4、6参照)。そして、連結部52の屈曲部先端に挿入部2(抜け止めフック11)側に延びる押え片53が設けられている(図6参照)。
【0047】
この押え片53は、ソレノイド50が非通電状態、即ちプランジャ51が元の位置にある状態では、第1揺動アーム10の前方部分に形成された貫通部14に臨む位置に位置し、抜け止めフック11が押し込まれたとき、第1揺動アーム10に形成された貫通部14に遊嵌状態で挿通される。一方、抜け止めフック11が挿入部2から突出した状態で、ソレノイド50が通電駆動され、プランジャ51が挿入部2側に向かって移動すると、押え片53は、抜け止めフック11側に進出し、第1揺動アーム10の前方部分における抜け止めフック11が突出する側とは反対側の下面に当接する位置に位置する。このとき、押え片53は、第1揺動アーム10に形成された貫通部14から位置ずれする。そして、第1揺動アーム10の前方部分が押え片53に当接することで、抜け止めフック11が挿入部2から引っ込まないように、第1揺動アーム10の揺動が規制される。つまり、抜け止めフック11が挿入部2から突出した状態が維持される。
【0048】
続いて、スライドスイッチ4の操作では抜け止めフック11と車両側インレットの凹部との係合を解除できない異常事態が生じた場合、この係合を解除するための構成について説明する。ここでは、軸13iを軸孔部13oから抜脱した状態として説明する。
【0049】
突出部6の内周面のうち、軸孔部13oの挿入部2側に位置する面は、本体部1側から挿入部2側に向かうに従って本体部1の内方に傾斜する誘導面60を有する(図3)。誘導面60を傾斜させることで、第1付勢部材12による押付部15の付勢と充電コネクタ100の後方への引き抜きにより、軸孔部13oをこの誘導面60に沿わせて、第1揺動アーム10を前方内方側へ誘導できる。
【0050】
挿入部2側の誘導面60と軸孔部13oとの間は、軸孔部13oが挿入部2側に移動可能な移動代を有する(図3)。軸13iを軸孔部13oから抜脱した際、第1揺動アーム10を前方へ誘導させ易くするためである。その移動代は、貫通部14に押え片53が挿通される程度の距離とする。そうすれば、後述する異常事態における充電コネクタ100の引き抜き操作において、第1揺動アーム10の貫通部14を押え片53に対応する位置に移動させることができる。
【0051】
挿入部2に切欠き41で形成される開口面のうち第1揺動アーム10の先端に臨む面が、抜け止めフック11の摺接面11tと同じ方向に傾斜するガイド面41gを有する(図3)。上記誘導面60及び移動代と共に、ガイド面41gを有することで、このガイド面41gに抜け止めフック11の摺接面11tを摺接させて、第1揺動アーム10の先端部を挿入部2の径方向内方に案内できる。それにより、第1揺動アーム10の貫通部14に押え片53を挿通させることができる。そのため、このガイド面41gは、抜け止めフック11の摺接面11tと略平行となるように傾斜していることが好ましい。そうすれば、抜け止めフック11の摺接面11tをガイド面41gに摺接させ易くなり、第1揺動アーム10の先端部を挿入部2の径方向内方に案内し易くできる。
【0052】
次に、充電コネクタ100における車両側インレットへの差し込み操作、及び車両側インレットからの引き抜き操作での嵌合機構の動作について、主に図6〜12を用いて詳しく説明する。
【0053】
まず、挿入部2を差し込む前の初期状態では、抜け止めフック11及び突起部21が第1付勢部材12及び第2付勢部材22による付勢により挿入部2から突出している(図6、7参照)。また、当止部33が第2揺動アーム20の後端部に当て止めされることで、第3付勢部材31による付勢に抗って、スライド棒30の後退が阻止されている。そのため、スライド棒30の後端部に連結されているスライドスイッチ4が挿入部2側にスライドした(押し込まれた)状態で固定される。
【0054】
ここで、スライドスイッチ4が摺動するカバーの上面において、スライドスイッチ4が押し込まれた状態では露出し、かつスライドスイッチ4が後退限まで後退したときは露出しない箇所は、表示部45に利用することができる(図4、5参照)。例えば、この表示部45に周囲と異なる色を塗装することで、色によってスライドスイッチ4が押し込まれた状態、即ち当止部33が第2揺動アーム20の後端部に当て止めされていることによりスライド棒30の後退が阻止されている状態であることを視覚的に容易に判別することができる(図12(A)参照)。
【0055】
〈差し込み操作〉
挿入部2を車両側インレットに差し込むと、まず、抜け止めフック11が車両側インレットの内周面に当接し、第1付勢部材12による付勢に抗って、抜け止めフック11が押し込まれる。抜け止めフック11の摺接面11tは傾斜しているので、挿入部2から突出していても、車両側インレットに挿入し易い。
【0056】
次いで、挿入部2を車両側インレットの奥まで差し込むと、突起部21が車両側インレットの周縁に当接し、第2付勢部材22による付勢に抗って、突起部21が押し込まれる(図8参照)。突起部21は傾斜面を有するので、挿入部2から突出していても、車両側インレットに本体部1が突き当たるまで挿入し易い。そして、突起部21が押し込まれることで、第2揺動アーム20の後端部が上昇するように第2揺動アーム20が揺動することにより、当止部33と第2揺動アーム20との当止状態が解除され、スライド棒30が第3付勢部材31による付勢により後退限まで後退する(図8、9参照)。このとき、抜け止めフック11が車両側インレットの内周面に設けられた凹部に対応する位置に位置することになり、第1付勢部材12による付勢により挿入部2から突出する。これにより、抜け止めフック11が車両側インレットの凹部に正常に係合して係止されることから、充電コネクタ100と車両側インレットとが完全に嵌合した状態となる。以上により、充電コネクタ100の車両側インレットへの差し込み操作が完了する。このとき、充電コネクタ100と車両側インレットとの間で端子同士の電気的接続も確立される。
【0057】
ここで、スライドスイッチ4の上面において、スライドスイッチ4が押し込まれた状態では露出せず、かつスライドスイッチ4が後退限まで後退したときは露出する箇所は、表示部46に利用することができる(図4、5参照)。例えば、この表示部46に文字などを表記したり、周囲と異なる色を塗装したりすることで、文字や色によってスライドスイッチ4(スライド棒30)が後退限まで後退したことを視覚的に容易に判別することができる(図12(B)参照)。
【0058】
さらに、抜け止めフック11が車両側インレットの凹部に突出して係止された状態で、ソレノイド50を通電駆動して、第1揺動アーム10の前方部分の下方であって、第1揺動アーム10に形成された貫通部14からずれた位置に、押え片53を進出させる(図10参照)。これにより、第1揺動アーム10の前方部分が押え片53に当接することから、抜け止めフック11が挿入部2から突出した状態で、第1揺動アーム10の揺動が規制される。つまり、抜け止めフック11がロックされた状態となる。そのため、抜け止めフック11が挿入部2から引っ込むことがなく、抜け止めフック11と車両側インレットの凹部との係合が外れることを確実に防止することができる。この例では、ソレノイド50のプランジャ51と押え片53とをつなぐ連結部52の板状片を水平方向に案内するガイド溝54(図4参照)が端子ケース70に設けられており、このガイド溝54に沿って連結部52を移動させることができるので、押え片53を水平方向の正確な位置に進出させ易い。また、ソレノイド50への通電中は、LEDランプ5(図1参照)が点灯する。
【0059】
ソレノイド50への通電開始は、例えば、充電器から車両への給電を開始するときに行うことが挙げられる。これにより、給電中に使用者が充電コネクタ100を車両側インレットから誤って引き抜いたり、充電コネクタ100が車両側インレットから抜け落ちたりすることを確実に防止することができる。
【0060】
〈引き抜き操作〉
ソレノイド50への通電を停止して、押え片53を元の位置(即ち、第1揺動アーム10に形成された貫通部14の下方)に復帰させる(図9参照)。これにより、抜け止めフック11のロック状態が解除される。ソレノイド50への通電停止は、例えば、充電器から車両への給電を終了するときに行うことが挙げられる。
【0061】
次いで、スライドスイッチ4を挿入部2側(前方)に押し込むことで、スライド棒30を前進させ、押当部32を第1揺動アーム10の後端部に当接させる(図11参照)。また、押当部32は、第1揺動アーム10の後端部に当接し、第1揺動アーム10の後端部を押し上げることで、第1揺動アーム10を第1付勢部材12による付勢方向とは逆方向に揺動させる。このとき、押当部32は傾斜面を有するので、第1揺動アーム10の後端部を押し上げ易い。そして、抜け止めフック11が下降し、抜け止めフック11が挿入部2から引っ込むことで(図11参照)、抜け止めフック11と車両側インレットの凹部との係合状態が解除される。
【0062】
そして、この状態で、充電コネクタ100を車両側インレットから引き抜くことで、充電コネクタ100の車両側インレットからの引き抜き操作が完了する。引き抜き操作完了後、スライド棒30は、第3付勢部材31の付勢により、当止部33が第2揺動アーム20の後端部に当て止めされるまで後退して、初期状態の位置に戻る(図6、7参照)。
【0063】
次に、スライド棒30の破損などにより、第1揺動アーム10が動作不良になり、スライドスイッチ4の操作では抜け止めフック11と車両側インレットの凹部との係合を解除できない異常事態が生じた場合の対処手順と各部の動作を説明する。この異常事態には、ソレノイド50が正常に動作して押え片53を貫通部14に対応する位置に移動できた場合(ソレノイド作動時)と、ソレノイド50が正常に動作せず、押え片53を貫通部14に対応する位置に移動できない場合(ソレノイド不作動時)とがある。以下、ソレノイド作動時と不作動時について順次説明する。
【0064】
《ソレノイド作動時》
まず、軸13iを軸孔部13oから抜脱する。そうすると、第1揺動アーム10の本体部1への固定が解除される。このとき、第1揺動アーム10が軸13iにより軸支されなくなるため、第1付勢部材12が押付部15を押して第1揺動アーム10を抜け止めフック11の突出する側とは逆方向へ動かす。このとき、第1付勢部材が傾斜している押付部15を押すので、第1揺動アーム10が真下ではなく前方内方側へ移動する。このときでもソレノイド50によりスライドスイッチ4側に後退された押え片53が貫通部14に対応した位置に配されているため、第1揺動アーム10の貫通部14に押え片53が挿通されて、抜け止めフック11が挿入部2から引っ込む。つまり、抜け止めフック11と車両側インレットの凹部との係合状態が解除される。この状態で、充電コネクタ100を引き抜くことで充電コネクタ100の車両側インレットからの引き抜き操作が完了する。
【0065】
《ソレノイド不作動時》
ソレノイド不作動時における抜け止めフック11の係合状態の手順と各部の動作は、図13〜16を用いて説明する。図13〜16は、右カバーをそれぞれ外した状態であり、説明の便宜上、第2揺動アームを省き、車両側インレット300の凹部近傍を記載している。
【0066】
ソレノイド50が押え片53を元の位置に戻すことができず、第1揺動アーム10の前方部分が押え片53に当接した状態(図13)において、ソレノイド作動時と同様に、まず、軸孔部13oに挿通されている軸13iを抜脱する。そうすると、上述と同様に、軸孔部13oの固定が解除されて、第1付勢部材12が傾斜している押付部15を押して第1揺動アーム10を移動させる。このとき、第1揺動アーム10の前方部分が押え片53に当接しているので本体部1の前方内方側ではなく、挿入部2側(前方)へ進み、押え片53上を摺動する。次いで、充電コネクタ100を本体部1の後方側へ引く。このとき、軸孔部13oの前方は誘導面60との間に移動代があり、抜け止めフック11が車両側インレット300の凹部に係合(接触)し、且つ第1揺動アーム10の前方部分が押え片53に当接している。そのため、相対的に第1揺動アーム10が押え片53上を摺動して前方へ移動する。(図14)。この第1揺動アーム10の相対的な移動により、第1揺動アーム10の貫通部14が押え片53に対応する位置まで移動する。それと共に、軸孔部13oが誘導面60に当接し、抜け止めフック11の先端が挿入部2の切欠き41の開口面に当接する。そして、軸孔部13oが誘導面60に案内されると共に、抜け止めフック11の摺接面11tがガイド面41gの傾斜に沿うので、第1揺動アーム10が前方内方側へ移動する。このとき、挿入部のガイド面41gは、抜け止めフック11の先端の摺接面11tと同じ方向に傾斜していると、抜け止めフック11の摺接面11tをガイド面41gの傾斜に沿わせ易い。その結果、貫通部14に押え片53が挿通される。それに伴い、抜け止めフック11が下降して挿入部2から引っ込み(図15)、抜け止めフック11と車両側インレット300の凹部との係合状態が解除される。この状態で、充電コネクタ100を車両側インレット300から引き抜くことで、充電コネクタ100の車両側インレット300からの引き抜き操作が完了する(図16)。
【0067】
以上説明した実施の形態1に係る充電コネクタ100は、次の効果を奏する。
【0068】
ソレノイド50によりプランジャ51が元の位置に復帰した状態で、スライド棒30が破損するなど何らかの不具合により正常に動作せず、抜け止めフック11と車両側インレットの凹部との係合状態を解除できない異常事態が生じた場合に、軸13iを軸孔部13oから抜脱することで、第1揺動アーム10の本体部1への固定を解除できるため、抜け止めフック11と車両側インレットとの係合状態を解除できる。従って、異常事態が生じても、車両用充電コネクタを分解、或いは破壊することなく車両側インレットから引き抜くことができる。
【0069】
さらに、ソレノイド50によりプランジャ51を元の位置に復帰できず、抜け止めフック11の車両側インレットへの係合状態を解除できない異常事態が生じた場合でも、軸13iを軸孔部13oから抜脱して、車両側インレットから充電コネクタ100を引くことで、抜け止めフック11と車両側インレットの凹部との係合状態を解除できる。従って、異常事態が生じても、車両用充電コネクタを分解、或いは破壊することなく車両側インレットから引き抜くことができる。
【0070】
その他、本体部1と挿入部2との境界から突出可能な突起部21が設けられた第2揺動アーム20を備え、挿入部2が車両側インレットの奥まで差し込まれたとき、スライド棒30(スライドスイッチ4)が後退限まで後退する。そのため、スライド棒30(スライドスイッチ4)が後退限まで後退したか否かによって、車両側インレットへの差し込みが確実に行われたかどうかを確認することができる。したがって、不慣れな使用者であっても、スライド棒30(スライドスイッチ4)の状態を確認することで、車両側インレットへの差し込みを確実に行うことができ、充電コネクタ100の車両側インレットとの嵌合が不完全な状態(半嵌合状態)を防止することができる。また、表示部45,46を備えることで、スライド棒30(スライドスイッチ4)が後退限まで後退したことを使用者が容易に判別することができ、車両側インレットへの差し込みが確実に行われたか否かを容易に確認することができる。
【0071】
車両側インレットへの差し込み操作は、充電コネクタ100の挿入部2を車両側インレットに差し込むだけの動作でよく、上記した特許文献1に記載の充電コネクタ(差し込み+レバーを握る)に比較して、直観的に分かり易く操作性に優れる。また、充電コネクタ100の内部構造(嵌合機構)も部品点数が少なくシンプルな構造のため、信頼性が高く、小型化、メンテナンスの容易化、低コスト化を図ることができる。さらに、スライドスイッチ4をハンドル部3の上面に配置したことにより、車両側インレットからの引き抜き操作を片手で行うことが可能である。
【0072】
さらに、ソレノイド50により押え片53を第1揺動アーム10の前方部分の下方に進出させることで、抜け止めフック11が挿入部2から引っ込むことを直接的に防止している。そのため、衝撃や振動、或いは抜け止めフック11を突出させる第1付勢部材12の破損などのトラブルが生じても、抜け止めフック11が引っ込むことがなく、抜け止めフック11と車両側インレットの凹部との係合状態が解除されることを確実に防止することができる。これに対し、上記した特許文献1に記載の充電コネクタでは、解除レバーをロックして解除レバーの操作を禁止することで、抜け止めフックと車両側インレットの凹部との係合状態が解除されることを間接的に防止している。そのため、衝撃や振動、或いは抜け止めフックを突出させる付勢部材の破損など、解除レバーの操作に関係なく、抜け止めフックが引っ込むようなトラブルが生じたときは、抜け止めフックと車両側インレットの凹部との係合状態が解除されることを確実に防止することができない。
【0073】
また、ソレノイド50を第1揺動アーム10の後方に配置し、プランジャ51が挿入部2側に向かって水平方向に移動することで押え片53を第1揺動アーム10の前方部分の下方に進出させる構成としたことで、ソレノイド50の設置スペースを確保し易い。
【0074】
なお、上述した実施の形態では、本発明の充電コネクタを車両用充電コネクタに適用し、車両側インレットに接続して車両の蓄電池に給電する場合を例に説明した。この他、例えば、車両以外の船舶や潜水艇、航空機などの移動体に搭載された蓄電装置のインレットや、家庭やビル・工場などに設置された蓄電装置のインレットが上記した車両側インレットと同様の形状、即ち、インレットの内周面に凹部を有するような場合にも、本発明を適用可能である。
【0075】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、第1揺動アーム、第2揺動アーム及びスライド棒の形態を適宜変更することが可能である。第1付勢部材、第2付勢部材及び第3付勢部材としては、捻じりバネや圧縮バネに限らず、例えばゴムなどでもよく、バネの種類を適宜変更することも可能である。バネの種類を変更する場合、目的に応じてバネの配置を適宜変更するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、蓄電池を備える装置のインレットに接続し、装置の蓄電池に給電するための充電コネクタに利用することができ、例えば、電気自動車用充電器に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
100 車両用充電コネクタ(充電コネクタ) 300 車両側インレット
200 ケーブル
1 本体部 2 挿入部 3 ハンドル部 4 スライドスイッチ
5 LEDランプ 6 突出部
10 第1揺動アーム
11 抜け止めフック 11t 摺接面 12 第1付勢部材(捻じりバネ)
13i 軸 13o 軸孔部 14 貫通部 15 押付部
20 第2揺動アーム
21 突起部 22 第2付勢部材(捻じりバネ) 23 軸
30 スライド棒(解除部材)
31 第3付勢部材(圧縮バネ)
32 押当部 33 当止部
41,42 切欠き 41g ガイド面 43 支持板 45,46 表示部
50 ソレノイド
51 プランジャ 52 連結部 53 押え片 54 ガイド溝
60 誘導面
70 端子ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池を備える装置のインレットに接続し、前記装置の蓄電池に給電するための充電コネクタであって、
本体部と、
前記本体部の先端側に設けられ、前記インレットに差し込まれる挿入部と、
前記本体部側から前記挿入部側に亘って延設され、前記本体部の外部から挿脱可能な軸が挿通される軸孔部を有して当該軸孔部を中心に揺動する第1揺動アームと、
前記第1揺動アームの前記軸孔部より挿入部側の前方部分に設けられ、前記挿入部から外側に突出可能な抜け止めフックと、
前記軸が前記軸孔部に挿通されているとき、前記抜け止めフックが突出するように前記第1揺動アームを付勢して、前記軸が前記軸孔部から抜脱されたとき、前記抜け止めフックが突出する側とは逆方向に前記第1揺動アームを付勢する第1付勢部材と、
前記軸が前記軸孔部に挿通されているとき、前記第1揺動アームの前記前方部分とは反対側の後方部分に当接して、前記第1揺動アームを前記抜け止めフックが突出する側とは逆方向に揺動させる押当部を有する解除部材とを備えることを特徴とする充電コネクタ。
【請求項2】
さらに、プランジャを有し、通電時にプランジャを一方向に移動させ、非通電時にプランジャを元の位置に復帰させるソレノイドと、
前記プランジャに連動して、前記第1揺動アームの前方部分における抜け止めフックが突出する側とは反対側の面に当接するように進出する押え片とを備え、
前記第1揺動アームの前方部分に貫通部が形成され、
前記軸が前記軸孔部に挿通されているとき、
前記プランジャが元の位置にある状態では、前記押え片が前記貫通部に臨むように位置し、前記プランジャの移動した状態では、前記押え片が前記第1揺動アームの前方部分に当接するように進出し、
前記軸が前記軸孔部から抜脱されたとき、
前記押え片が前記貫通部に遊嵌状態で挿通されることを特徴とする請求項1に記載の充電コネクタ。
【請求項3】
前記軸孔部の中心軸が前記抜け止めフックの突出側に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の充電コネクタ。
【請求項4】
前記本体部の内周面のうち前記軸孔部の挿入部側に位置する面は、本体部側から挿入部側に向かうに従って本体部の内方に傾斜する誘導面を有し、
前記誘導面と前記軸孔部との間に、前記軸が当該軸孔部から抜脱されたとき、当該軸孔部が挿入部側に移動可能な移動代があることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の充電コネクタ。
【請求項5】
前記抜け止めフックは、前記第1揺動アームの先端側ほど厚みが薄くなるように傾斜している摺接面を有し、
前記挿入部は、前記抜け止めフックを当該挿入部から露出させる切欠きを有し、
前記切欠きで挿入部に形成される開口面のうち前記第1揺動アームの先端に臨む面が、前記摺接面と同じ方向に傾斜するガイド面であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の充電コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−243687(P2012−243687A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115184(P2011−115184)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000213884)住電朝日精工株式会社 (24)
【Fターム(参考)】