説明

充電用コネクタ

【課題】キャビティに異物が侵入することを規制するとともにキャビティの前壁が破損することを防ぐ。
【解決手段】本発明は、車両に設けられた車両側コネクタ50に嵌合可能な充電用コネクタ10であって、車両側コネクタ50に設けられた車両側端子60と導通可能に接続される端子金具20と、端子金具20を収容するキャビティ17が内部に形成された端子収容部15とを備え、キャビティ17の前壁は、車両側端子60の全周に密着した状態で車両側端子60をキャビティ17に進入させる弾性部材30を備えて構成されているところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられた車両側コネクタに嵌合可能な充電用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の充電用コネクタとして、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。このものは、端子金具を収容するキャビティが内部に形成された端子収容部を備えて構成されている。端子金具は、車両側コネクタに設けられたピン状の車両側端子が挿入される円筒状の嵌合部を有しており、この嵌合部の内周面に周溝が形成され、この周溝にOリングが装着されている。このような端子金具によると、車両側端子の表面に泥水などの異物が付着していた場合であっても、Oリングが車両側端子の全周に亘って密着することによって異物を拭き取ることができ、嵌合部の内部へ異物が侵入することを規制できる。
【0003】
このような充電用コネクタは、屋外で使用されることを前提としているため、充電用コネクタを泥水に漬けた後に乾燥させ、車両側コネクタに対して繰り返し嵌合および離脱を行う泥水試験が行われている。このため、充電用コネクタには泥水試験に耐えうる耐久性能が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−222314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の充電用コネクタは、嵌合部の内部に異物が侵入することを規制できたとしても、嵌合部と端子収容部との間、すなわちキャビティに異物が侵入することを規制するものではない。また、Oリングによる異物の除去は、キャビティに収容された嵌合部で行われているため、Oリングによって拭き取られた異物はそのままキャビティに残ることになる。その結果、車両側端子を繰り返し挿抜することにより、キャビティに大量の異物が蓄積されてしまう。
【0006】
また、誤って充電用コネクタを落としてしまい、その落下地点に突起物がある場合に、端子収容部の前端部、すなわちキャビティの前壁が突起物にぶつかって衝撃を受けることで破損するおそれもある。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、キャビティに異物が侵入することを規制するとともにキャビティの前壁が破損することを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両に設けられた車両側コネクタに嵌合可能な充電用コネクタであって、車両側コネクタに設けられた車両側端子と導通可能に接続される端子金具と、端子金具を収容するキャビティが内部に形成された端子収容部とを備え、キャビティの前壁は、車両側端子の全周に密着した状態で車両側端子をキャビティに進入させる弾性部材を備えて構成されているところに特徴を有する。
【0009】
このようにすると、車両側端子を端子金具に接続する際に、弾性部材が車両側端子の全周に密着するため、車両側端子の表面に付着した異物を除去することができる。また、誤って充電用コネクタを落とした場合であっても、キャビティの前壁が弾性部材を備えて構成されているため、弾性部材によって落下時の衝撃を吸収することができる。したがって、キャビティに異物が侵入することを規制できることに加えてキャビティの前壁が破損することを防ぐことができる。
【0010】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
キャビティの前壁は、二色成形によって端子収容部と一体成形されている構成としてもよい。
このような構成によると、キャビティの前壁と端子収容部を二色成形によって一度に形成することができるため、別部材として前壁を形成し、この前壁を端子収容部に別途組み付ける場合と比較して、前壁を容易に形成することができる。
【0011】
キャビティの前壁における車両側端子との接触部は、車両側端子の進入方向に延びて形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、車両側端子に対して面で密着させることができ、接触面積の増加により異物の侵入を確実に規制することができる。
【0012】
キャビティの前壁は、キャビティの内壁を構成するキャビティ内壁部と、キャビティ内壁部の前面側に配置された弾性部材と、キャビティ内壁部との間に弾性部材を保持する保持キャップとを備えて構成してもよい。
このような構成によると、弾性部材をキャビティ内壁部と保持キャップとの間に配置したから、車両側端子の挿抜によって弾性部材が外れてしまうことを規制できる。
【0013】
保持キャップは、キャビティ内壁部に対して圧入により固定されている構成としてもよい。
このような構成によると、圧入によって保持キャップを固定できるため、保持キャップの構成を簡素化することができる。
【0014】
保持キャップは、キャビティ内壁部に対してねじ止めにより固定されている構成としてもよい。
このような構成によると、ねじ止めによって保持キャップを固定できるため、保持キャップをキャビティ内壁部に対して強固に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、キャビティに異物が侵入することを規制することができることに加えてキャビティの前壁が破損することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1において車両側コネクタと充電用コネクタを嵌合させる前の状態を示した断面図および弾性部材の周辺部を拡大して示した一部拡大断面図
【図2】車両側コネクタと充電用コネクタを嵌合させた状態を示した断面図および弾性部材の周辺部を拡大して示した一部拡大断面図
【図3】実施形態2における弾性部材の周辺部を拡大して示した一部拡大断面図
【図4】実施形態3におけるシールリングの周辺部を拡大して示した一部拡大断面図
【図5】実施形態4におけるシールリングの周辺部を拡大して示した一部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1および図2の図面を参照しながら説明する。本実施形態における充電用コネクタ10は全体としてピストル形状をなしており、図1に示すように、略前半部分を構成するコネクタ本体11と、このコネクタ本体11の後部から斜め下方に延びるグリップ12とが形成されている。コネクタ本体11とグリップ12は、いずれも合成樹脂製とされており、一体に成形されている。コネクタ本体11の前面には、円筒状をなして前方に突出するフード部13が装着されている。また、コネクタ本体11の内部における上側には、レバー14が収容されており、レバー14の前端部がコネクタ本体11の上面前縁から外部に露出している。
【0018】
フード部13は、図1に示すように、コネクタ本体11とは別部材として形成されており、図示しない係止手段によってコネクタ本体11に固定されている。フード部13の内部には、円筒状をなす複数の端子収容部15が設けられている。これらの端子収容部15は、フード部13の奥壁16から前方に突出して設けられており、フード部13の開口縁から外部に露出しない態様で設けられている。このため、充電用コネクタ10を誤って落とした場合であっても、端子収容部15が地面に直撃することはなく、フード部13によって端子収容部15を保護することができる。
【0019】
端子収容部15の内部には、端子金具20を収容するキャビティ17が形成されている。キャビティ17は、フード部13の奥壁16において後方に開口する形態をなしている。
【0020】
フード部13の内部には、円筒状をなすゴムリング18がフード部13の内周面に沿って嵌着されており、ゴムリング18の前方には、ゴムリング18の抜け止めを行うホルダ19が装着されている。ホルダ19は、ゴムリング18と同じ円筒状をなし、フード部13の内面側に係止可能な係止部19Aを有している。この係止部19Aによりホルダ19がフード部13の内周面に沿って嵌着されている。
【0021】
フード部13の内周面におけるホルダ19の装着部は、ホルダ19の奥側よりも大径とされており、ホルダ19が装着されることで、ホルダ19の内周面とゴムリング18の奥側におけるフード部13の内周面とがほぼ面一をなして揃うようになっている。ゴムリング18のリップ部は、ホルダ19の内周面よりも径方向内側に突出している。一方、車両側コネクタ50は、充電用コネクタ10と嵌合可能な車両側ハウジング51を有している。車両側ハウジング51は合成樹脂製であって、図2に示すように、フード部13の内部に嵌合可能なハウジング本体51Aを有している。これにより、ハウジング本体51Aがフード部13の内部に嵌合したときに、ハウジング本体51Aの外周面がゴムリング18のリップ部に密着することで、両コネクタ10,50間が防水される。
【0022】
ハウジング本体51Aの内部には、車両側端子60を収容する車両側キャビティ52が形成されている。車両側ハウジング51は、車体側に設けられた取付開口部53に装着されている。車両側ハウジング51の外周には、取付プレート54が張り出し形成されており、この取付プレート54を取付開口部53の開口縁部に宛って図示しないボルト止めをすることにより、車両側ハウジング51が取付開口部53に取り付け固定されている。
【0023】
ハウジング本体51Aの外周には、嵌合筒部55が周設されている。この嵌合筒部55は、取付プレート54から前方に突出しており、ハウジング本体51Aと嵌合筒部55との間にフード部13が嵌合可能とされている。嵌合筒部55の上面には、ロック突部56が設けられている。このロック突部56は、レバー14の先端下面に突出して設けられたレバー側突起14Aに対して嵌合方向に係止可能とされている。したがって、両コネクタ10,50を嵌合させると、レバー側突起14Aがロック突部56に係止することにより、両コネクタ10,50が嵌合状態に保持される。なお、取付開口部53の後部には蛇腹状をなして後方に延びるグロメット57が取り付けられている。
【0024】
車両側端子60は、ピン状をなす雄側本体部61を有し、この雄側本体部61の外周面から張り出す形態で雄側フランジ部62が周設されている。雄側フランジ部62は、車両側キャビティ52の後壁52Aに対して後方から当接しており、この後壁52Aを貫通して雄側本体部61が車両側キャビティ52に収容されている。なお、車両側キャビティ52には、充電用コネクタ10の端子収容部15が収容可能とされている。
【0025】
雄側本体部61の後端部には、円筒状をなす雄側バレル部63が形成されており、この雄側バレル部63の内部に電線Wの芯線がかしめ圧着されている。また、雄側バレル部63の圧着部分を覆う形態で熱収縮チューブ58が装着されている。この熱収縮チューブ58により雄側バレル部63の圧着部分が防水されている。なお、車両側ハウジング51の後部には、車両側端子60の雄側フランジ部62に対して後方から係止することにより、車両側端子60の後方への抜け止めを行う車両側リテーナ59が装着されている。
【0026】
次に、充電用コネクタ10の端子金具20の周辺構造について説明する。端子金具20は、複数の接触片23を備えた雌側本体部21を有している。複数の接触片23は、前方に開口する形態をなす雌側本体部21の前端開口縁から後方に向けて切り欠くことで形成されるスリットを周方向に間欠的に複数本設けることによって形成されている。この種の端子は、すり割り端子などの名称で呼ばれる場合がある。
【0027】
端子金具20の各接触片23は、車両側端子60と嵌合する前の自然状態では、基端部から先端部に向けて軸心側に緩やかに近づいた後に、先端部にて軸心から遠ざかる形態とされている。換言すると、接触片23は、雌側本体部21の軸心側を頂点とする略山形に形成されており、頂点の位置が雌側本体部21の先端部に配置された構成とされている。すなわち、複数の接触片23の頂点によって端子金具20の接点部が構成されており、この接点部における内径は、車両側端子60の雄側本体部61の外径よりも小さめとされている。このため、車両側端子60を端子金具20に嵌合させると、車両側端子60の雄側本体部61と各接触片23とが接点部にて摺動し、各接触片23を径方向外側に撓み変形させた状態で車両側端子60と端子金具20とが導通可能に接続される。
【0028】
雌側本体部21の外周における後方には、雌側フランジ部22が周設されている。この雌側フランジ部22は、キャビティ17の後端開口縁部に当接可能とされており、この当接によって端子金具20が前止まりされるようになっている。一方、フード部13の後部には、端子金具20の雌側フランジ部22に対して後方から係止することにより、端子金具20の後方への抜け止めを行うバックリテーナ25が装着されている。すなわち、雌側フランジ部22がキャビティ17の後端開口縁部とバックリテーナ25との間に挟まれた状態で保持されているため、端子金具20の前後方向の移動が規制されている。
【0029】
雌側本体部21の後方には、電線Wの端末に露出した芯線を固着するバレル部24が形成されている。このバレル部24は、バックリテーナ25に貫通して形成された挿通孔を通って後方に突出している。バレル部24は、円筒状をなして後方に開口しており、電線Wの芯線を内部に収容した状態でかしめることにより電線Wと導通可能に接続されている。電線Wは、バレル部24から後方に延出されており、コネクタ本体11とグリップ12の内部を通って外部に引き出されている。
【0030】
コネクタ本体11の内部では、複数の端子金具20に対応して複数の電線Wが後方に延出されており、これらの電線Wは、グリップ12の内部で外部被覆に覆われて一本の電線W1に集約されている。電線W1は、グリップ12の内部で電線把持リング(図示せず)などによって固定されており、さらにグリップ12の後端部でブッシュ40によって固定されている。ブッシュ40は、グリップ12の後端開口部の内周面と電線W1の外周面とに密着しているため、グリップ12の後端からグリップ12の内部に水が浸入することを規制している。なお、コネクタ本体11およびグリップ12の下面側には、複数の水抜き孔26が形成されているため、コネクタ本体11およびグリップ12の内部に水が浸入した場合でも、これらの水抜き孔26から外部に水を逃がすことができるようになっている。
【0031】
さて、キャビティ17の前壁は、図1および図2の拡大断面図に示すように、弾性部材30によって構成されている。弾性部材30は、二色成形により端子収容部15と一体成形されている。すなわち、弾性部材30は、端子収容部15の一部として構成されている。弾性部材30の中心部には、車両側端子60の雄側本体部61が挿入される挿通孔31が貫通して形成されている。挿通孔31を構成する内周面は、雄側本体部61の外周面に対して全周に亘って密着している。すなわち、挿通孔31を構成する内周面は、雄側本体部61の進入方向に延びて形成されており、雄側本体部61の外周面に対して全面で密着している。
【0032】
また、挿通孔31の前端開口縁部は、すり鉢状をなす案内面32として形成されているため、弾性部材30の成形誤差などにより雄側本体部61の軸心と挿通孔31の軸心とがずれている場合であっても、雄側本体部61の先端を案内面32に摺接させることで雄側本体部61を挿通孔31に案内することができる。
【0033】
弾性部材30において案内面32よりも径方向外側には、車両側キャビティ52の後壁52Aに当接する当接面33が形成されている。この当接面33は、車両側キャビティ52の後壁52Aに対して前方から接触している。また、当接面33が車両側キャビティ52の後壁52Aに接触した状態では、両コネクタ10,50の嵌合状態におけるガタツキが抑制されるとともに、両コネクタ10,50を嵌合させた際における衝撃を吸収することもできる。なお、雌側本体部21の前端と弾性部材30は、端子金具20がキャビティ17に収容された状態では、所定の間隔を空けて対向状態で配置されている。
【0034】
弾性部材30において当接面33よりも径方向外側には、角部が切り落とされることによってテーパ状に形成された誘導面34が周設されている。この誘導面34は、端子収容部15を車両側キャビティ52に挿入する際における誘い込みをしている。すなわち、誘導面34が車両側キャビティ52の前端開口縁部に摺接することで端子収容部15が車両側キャビティ52に案内されるようになっている。
【0035】
このような構成によると、両コネクタ10,50の嵌合に伴って雄側本体部61が弾性部材30の挿通孔31に進入する。このとき、雄側本体部61の外周面が挿通孔31の内周面に摺接することにより、雄側本体部61の表面に付着した泥水などの異物が取り除かれ、キャビティ17に異物が侵入することを規制できる。また、弾性部材30によって除去された異物は、案内面32と車両側キャビティ52の後壁52Aとの間に一時的に集められるものの、両コネクタ10,50の離脱に伴って案内面32と車両側キャビティ52の後壁52Aとが相対的に離間し、異物が下方に落下することにより、異物が両コネクタ10,50の外部に排出される。
【0036】
また、誤って充電用コネクタ10を落としてしまい、突起物が弾性部材30に衝突した場合でも、弾性部材30によって衝撃を吸収することができるため、端子収容部15が破損することを規制できる。さらに、二色成形によって弾性部材30を端子収容部15と一体成形したから、弾性部材30と端子収容部15とは別部材として形成し、この弾性部材30を別途組み付ける場合と比較して、キャビティ17の前壁を容易に形成することができる。
【0037】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図3を参照しながら説明する。実施形態2は、実施形態1におけるキャビティ17の前壁の構成を変更したものであって、他の構成、作用、および効果については同様であるため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については実施形態1と同一の符号を用いるものとする。本実施形態におけるキャビティ17の前壁は、図3に示すように、弾性部材70で構成されている。弾性部材70は、実施形態1と同様、二色成形により端子収容部15と一体成形されており、端子収容部15の一部として構成されている。
【0038】
弾性部材70の中心部には、車両側端子60の雄側本体部61が挿入される挿通孔71が貫通して形成されている。挿通孔71の内周面における前縁には、雄側本体部61の外周面に対して全周に亘って密着するリング状のシール突部72が径方向内側に突出して形成されている。このシール突部72は、雄側本体部61の外周面に対してリング状に密着している。
【0039】
また、本実施形態では、実施形態1のように挿通孔31の内周面が雄側本体部61に面接触する構成ではなく、挿通孔71の内周面の一部においてシール突部72が雄側本体部61に線接触する構成とされているため、雄側本体部61とシール突部72の摺接に伴う摩擦力が小さくなり、雄側本体部61を挿通孔71に挿入する際における挿入抵抗が小さくなる。
【0040】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図4を参照しながら説明する。実施形態3は、実施形態1におけるキャビティ17の前壁の構成を変更したものであって、これに伴って端子収容部15の構成も一部変更されている。なお、他の構成、作用、および効果については同様であるため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については実施形態1と同一の符号を用いるものとする。
【0041】
本実施形態における端子収容部82は、キャビティ17の内壁における前壁を構成する前壁部82Aと、同側壁を構成する側壁部82Bとを備えて構成され、これら前壁部82Aと側壁部82Bは一体に成形されている。さらに、本実施形態では、前壁部82Aと、この前壁部82Aの前面側に取り付けられた保持キャップ81との間に、リング状をなすシールリング80が挟持されている。すなわち、本実施形態におけるキャビティ17の前壁は、前壁部82Aと、シールリング80と、保持キャップ81とを備えて構成されている。
【0042】
前壁部82Aにおける保持キャップ81との対向面には、シールリング80を受ける台座部82Cが突出して形成されている。台座部82Cは、側壁部82Bよりも小径とされており、台座部82Cの前面と側壁部82Bの外側面との間に、段部82Dが段差状に形成されている。また、前壁部82Aの中心部には、車両側端子60の雄側本体部61が挿通される挿通孔82Eが貫通して形成されている。
【0043】
保持キャップ81は合成樹脂製であって、保持キャップ81における台座部82Cとの対向面には、シールリング80を収容する収容凹部81Aが凹設されている。保持キャップ81における段部82Dとの対向面には、段部82Dに圧入される外周フランジ部81Bが周設されている。また、保持キャップ81の中心部には、雄側本体部61が挿通される挿通孔81Cが貫通して形成されている。外周フランジ部81Bを段部82Dに圧入すると、シールリング80が収容凹部81Aと台座部82Cとの間に挟持される。これにより、シールリング80が前後方向から圧縮されて径方向に撓み変形し、シールリング80の内周面が縮径されて雄側本体部61の外周面に密着する構成とされている。
【0044】
このような構成によると、圧入によって保持キャップ81を固定できるため、保持キャップ81の構成を簡素化することができる。また、収容凹部81Aと台座部82Cとの間にシールリング80を挟持しているため、雄側本体部61の挿抜によってシールリング80が外れることはない。さらに、充電用コネクタ10を誤って落としてしまい、端子収容部82が突起物にぶつかったとしても、キャビティ17の前壁を構成するシールリング80によって落下時の衝撃を吸収することができ、端子収容部82の破損を防ぐことができる。
【0045】
例えば、シールリング80の材質と端子収容部82の材質との組み合わせによっては成形時になじみにくく、二色成形できない場合もありうる。本実施形態では、このような場合であっても、保持キャップ81を用いてシールリング80を物理的に挟み込む構成を採用しているため、材質の組み合わせを問うことなく、弾性部材を備えたキャビティ17の前壁を構成することができる。
【0046】
<実施形態4>
次に、本発明の実施形態4を図5を参照しながら説明する。実施形態4は、実施形態3における保持キャップ81と前壁部82Aの固定方法を一部変更したものであって、他の構成、作用、および効果については同様であるため、その説明を省略する。また、実施形態3と同じ構成については実施形態3と同一の符号を用いるものとする。
【0047】
外周フランジ部81Bの内周面には雌ねじが切られ、台座部82Cの外周面には雄ねじが切られており、外周フランジ部81Bの内側に台座部82Cを嵌め込んで保持キャップ81を締め込むことにより、保持キャップ81が前壁部82Aにねじ止めされるようになっている。したがって、保持キャップ81を前壁部82Aに対して強固に取り付けることができる。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では弾性部材に挿通孔が形成されているものの、本発明によると、挿通孔を形成することなく、弾性部材に車両側端子を突き刺す構成としてもよい。
【0049】
(2)実施形態1および2では弾性部材30を二色成形により端子収容部15と一体成形しているものの、本発明によると、弾性部材30を接着剤により端子収容部15に固定してもよい。
【0050】
(3)実施形態3および4では圧入およびねじ止めにより保持キャップを固定しているものの、本発明によると、爪嵌合などの係止構造を用いて保持キャップを固定してもよい。
【0051】
(4)実施形態3および4では収容凹部81Aと台座部82Cとの間にシールリング80を挟持してシールリング80を撓み変形させているものの、本発明によると、シールリング80を撓み変形させない態様で、収容凹部81Aと台座部82Cとの間にシールリング80を配置してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…充電用コネクタ
15…端子収容部
17…キャビティ
20…端子金具
30…弾性部材
50…車両側コネクタ
60…車両側端子
70…弾性部材
80…シールリング(弾性部材)
81…保持キャップ
82…端子収容部
82A…前壁部(キャビティ内壁部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた車両側コネクタに嵌合可能な充電用コネクタであって、
前記車両側コネクタに設けられた車両側端子と導通可能に接続される端子金具と、
前記端子金具を収容するキャビティが内部に形成された端子収容部とを備え、
前記キャビティの前壁は、前記車両側端子の全周に密着した状態で前記車両側端子を前記キャビティに進入させる弾性部材を備えて構成されていることを特徴とする充電用コネクタ。
【請求項2】
前記キャビティの前壁は、二色成形によって前記端子収容部と一体成形されていることを特徴とする充電用コネクタ。
【請求項3】
前記キャビティの前壁における前記車両側端子との接触部は、前記車両側端子の進入方向に延びて形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の充電用コネクタ。
【請求項4】
前記キャビティの前壁は、前記キャビティの内壁を構成するキャビティ内壁部と、前記キャビティ内壁部の前面側に配置された前記弾性部材と、前記キャビティ内壁部との間に前記弾性部材を保持する保持キャップとを備えて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の充電用コネクタ。
【請求項5】
前記保持部材は、前記キャビティ内壁部に対して圧入により固定されていることを特徴とする請求項4に記載の充電用コネクタ。
【請求項6】
前記保持部材は、前記キャビティ内壁部に対してねじ止めにより固定されていることを特徴とする請求項4に記載の充電用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−198566(P2011−198566A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62798(P2010−62798)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】