説明

先行待機ポンプ

【課題】水面変動によるハンチングが生じ難いように改善された先行待機ポンプを提供する。
【解決手段】ポンプケーシング3の羽根車11を収容する部分よりも流体流れ方向で上流側に一端21aが開口され、かつ、他端21bが吸込水槽2内に開放される気水混合用の通気路21を有する先行待機ポンプにおいて、通気路21は、吸込水槽2に設定される最高水位HWLより高い位置にて折り返される折返し部21cを一端21aと他端21bとの間に形成される全体として略逆U字状の流路に形成されるとともに、折返し部21cと他端21bとの上下間における通気路21に一端23aが接続され、かつ、他端23bが大気開放されるU字管23を有する吸込み構造部Aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行待機ポンプの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水機場の吸込水槽等に設置される先行待機ポンプは、吸込水槽の水位が上昇する前段階で運転を開始すること、即ち、待機運転されることが可能なポンプである。この待機運転が可能であることにより、頻繁な始動・停止が解消され、自己流量調整機能によって低水位運転が可能であるとともに、ゲリラ豪雨等による急激に流入する水の排水にも迅速に対応することができるという優れた利点を持ち、近年では多用されてきている。
【0003】
このような先行待機ポンプの従来例としては、特許文献1において開示される立軸ポンプ構造の先行待機型ポンプや、特許文献2において開示される立軸ポンプ等が知られている。いずれのポンプでも、羽根車よりも下方のポンプケーシングに内部連通して上方に突設される通気路(空気管)を持つことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−228980号公報
【特許文献2】特開2004−239215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通気路の他端が吸込水槽内に単に開放されている形態の場合には、水面の波立ちによって通気路先端面の開閉が繰り返されることによるハンチング現象が発生し易いという不都合な面があり、改善の余地が残されているものであった。
【0006】
本発明の目的は、水面変動によるハンチングが生じ難いように改善された先行待機ポンプを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、ポンプケーシング3の羽根車11を収容する部分よりも流体流れ方向で上流側に一端21aが開口され、かつ、他端21bが吸込水槽2内に開放される気水混合用の通気路21を有する先行待機ポンプにおいて、
前記通気路21は、前記吸込水槽2に設定される最高水位HWLより高い位置にて折り返される折返し部21cが前記一端21aと前記他端21bとの間に形成される全体として略逆U字状の管によって形成されるとともに、前記折返し部21cと前記他端21bとの上下間における前記通気路21に一端23aが接続され、かつ、他端23bが水位変動に伴い大気開放されるU字状の流路23を有する吸込み構造部Aが設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の先行待機ポンプにおいて、前記吸込み構造部Aの他端23bが、気水混合用空気を導入する水位と略同じか上側位置で開口しており、前記通気路21の他端21bが前記空気を導入する水位より下側位置で開口していることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の先行待機ポンプにおいて、前記通気路21の折返し部21cの位置が、前記ポンプケーシング3内に発生する最大負圧による吸込み揚程よりも高い位置に設定されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の先行待機ポンプにおいて、前記吸込水槽2の水位が、前記吸込水槽2における前記気水混合用の通気路21からポンプケーシング3内に吸込まれる空気を導入しながら揚水する気水混合運転を行う水位より低い水位になると、前記ポンプケーシング3の前記羽根車11より下方の部分に空気を導入することで揚水を遮断するための気水切替用の通気路22が配備されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の先行待機ポンプにおいて、前記気水切替用の通気路22は、吸込水槽2に設定される最高水位HWLより高い位置にて折り返される折返し部22cが前記一端22aと前記他端22bとの間に形成される全体として略逆U字状の管によって形成されるとともに、前記折返し部22cと前記他端22bとの上下間における前記通気路22に一端30aが接続され、かつ、他端30bが大気開放されるU字状の流路管30を有する吸込み構造部Bが設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて説明するが、U字状の流路を有する吸込み構造部を有することにより、水面開閉に水位差ができて気水混合用の通気路でハンチングし難くなる。その結果、水面変動によるハンチングが生じ難いように改善される先行待機ポンプを提供することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、吸込み構造部の他端が気水混合用空気を導入する水位と略同じか上側位置で開口しており、通気路の他端が前記空気を導入する水位より下側位置で開口することにより、気水混合用空気導入水位においてハンチングが生じ難いように改善される先行待機ポンプを提供することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、折返し部がポンプケーシング内に発生する最大負圧による吸込み揚程よりも高い位置に設定されることより、逆U字状の通気路の折返し部を越えて水が吸い上げられることがないので、通気路から吸込まれたゴミが折返し部に詰まる可能性を少なくすることができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、揚水遮断に十分な空気量を揚水遮断時にのみ導入することができるとともに、気水混合運転時に導入する空気量の適正化を容易に図ることができ、気水混合用給気口だけで空気を導入する場合よりも渦の発生や振動を抑えることができる。この結果、ポンプの強度を上げる必要がなくポンプを軽量化することができ、排水機場の床強度も上げる必要がなくなる場合もある。
【0016】
請求項5発明によれば、気水切替用の通気路の揚水遮断水位近傍での水面変動による揚水状態と待機状態とのハンチングを防止できるので、振動の発生等を効果的に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1による先行待機ポンプの構造を示す断面図
【図2】実施例2による先行待機ポンプの構造を示す断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明による先行待機ポンプの実施の形態を、図面を参照しながら説明する。実施例1は気水混合用空気管のみ有する先行待機ポンプであり、実施例2は気水混合用空気管と気水切替用空気管との双方を有する先行待機ポンプである。
【0019】
〔実施例1〕
実施例1による先行待機ポンプ1は、図1に示すように、排水機場の吸込水槽2内に流入する雨水等の水を下流側に排水する立軸ポンプとして構成されている。上下方向(鉛直方向)に延びるポンプケーシング3は、直管状の揚水管4と、揚水管4の下端に連結されるポンプケース5と、ポンプケース5の下端に連結される吸込管(ベルマウス)6と、揚水管4の上端に連結されて上下方向から水平方向に湾曲する吐出エルボ7とを有して構成されている。吸込管6の下端(ポンプケーシング3の下端)には吸込口8を有し、吐出エルボ7の吐出口9(ポンプケーシング3の上端)には吐出管(排水管)10が連結されている。
【0020】
主軸13を介してポンプケース5内に回転自在に配設される羽根車11は、主軸13に一体回転状態に嵌装される羽根基部11Aと、その羽根基部11Aから延びる複数の羽根部11Bとによって構成されている。羽根車11より上方(水の流れ方向の下流側)のポンプケース5内には、複数の案内羽根12が配設されている。上下方向に延びる主軸13は、ポンプケーシング3の中心に複数の軸受14、15、16を介して回転自在に支持され、主軸13の下端に羽根車11が一体回転状態に取付けられている。
【0021】
中間軸受14,15の各外面はそれぞれ支持板14a、15aによって揚水管4の内面に固定されている。主軸13の上端部は、吐出エルボ7に対して回転自在、かつ、水密に貫通してポンプケーシング3の外部に突出されており、エンジン、電動機等の駆動源及び減速機構等を有して成る回転駆動機構17に連動連結されている。
【0022】
ポンプケーシング3の上部には据え付け用のフランジ18が設けられ、吸込水槽2の上面を覆っている排水機場のコンクリート製の床19にはフランジ18より下側の先行待機ポンプ1を挿通可能な挿通孔20が設けられている。先行待機ポンプ1は、フランジ18より下側の部分が挿通孔20を介して吸込水槽2内に吊り下げられた状態で、環状板29にフランジ18を介して据え付けられている。
【0023】
そして、先行待機ポンプ1は、吸込水槽2の水位WLが後述する最低水位(渦の生じないポンピングが可能な最低水位の一例であり、気水混合運転を行うための水位の最上位でもある)LWL以下の状態において、羽根車11より下方のポンプケーシング3内に空気を導入しながら揚水することで排水量を低下させるための気水混合用空気管(気水混合用の通気路の一例)21を備えている。そして、気水混合用空気管21の基端(一端)21aは、吸込管6における羽根車11より下方の管壁に取付けられて吸込管6の内部に連通する開口25を有している。尚、2aは吸込水槽2の底壁である。
【0024】
気水混合用空気管21は、上端に折返し部を有して逆U字形に曲げ形成されており、上端の折返し部が床19より上側に配置されて環状板29に支持されている。そして、両端部が挿通孔20を介して吸込水槽2内に延ばされ、基端21aは下方に延ばされて前述のように吸込管6に接続され、他端も下方に延ばされて開口25より若干低い高さ位置にて開放される下端(他端)21bを有するとともに、途中から分岐されて側面視でU字状を呈する吸込み構造部Aが装備されている。気水混合用空気管21の先端21bは、最低水位LWLの下方に設定される揚水遮断水位SWLより下方に位置している。
【0025】
吸込み構造部Aは、気水混合用空気管21上端の折返し部21cと下端21bとの上下間から分岐される分岐管27と、その分岐管27に続くU字管(U字状の流路の一例)23とを有して構成されている。U字管23は、その両端(上端)の水平(又は略水平)な分岐管27の終端でもある始端23aと上端(開口)23bとが、最低水位LWLより若干上の高さ位置となるように設けられている。U字管23下端の水平(又は略水平)な折返し部23cは、本実施例ではその上面が最低水位LWLに略等しい水位に沿うように設けられている。つまり、気水混合用空気管21は高低差のある2つの給気口、即ち、U字管23の折返し部23cの下面より下方に配置される下側の吸気口である下端21bと、上側の吸気口である上端23bとを備えている。
【0026】
気水混合用空気管21に吸込み構造部Aを設けたことにより、水面開閉に水位差ができ、吸込水槽2の僅かな水位変動による気水混合用空気管21のハンチング現象(水位の上昇による最低水位LWLより上での空気を含まない揚水と空気を含まない揚水によって水位が最低水位LWLより低下して気水混合運転を交互に繰り返す現象)が発生し難くなるという優れた効果が発揮される。尚、本実施例では、下側の吸気口である気水混合用空気管21の下端21bを揚水遮断水位SWLよりも下方にすることで、下端21bが常に没水状態となり、この部分からゴミを吸込むおそれを低減することができるが、必ずしもこのように設定する必要はなく、U字管23の折返し部23cの上端より下であればよい。
【0027】
図1を参照して、先行待機ポンプ1の高さ方向の構造と水位WLとの関係を説明する。まず、吸込水槽2にはその許容水位として、吸込水槽2に固有の最高水位HWLが設定されている。最高水位HWLより下方にはポンプ(ここでのポンプは、気水混合用空気管21を備えていない立軸ポンプをいう。)に固有の最低水位LWL(第一の所定水位の一例)が設定されている。最低水位LWLはそれ以下では吸込口8から渦、即ち、空気を吸い込み、振動や騒音が発生し、運転が継続できなくなる水位WLに相当する。
【0028】
そして、待機運転ポンプ1は、気水混合用としての気水混合用空気管21を通して羽根車11より下方のポンプケーシング3内に空気を導入しながら揚水することで排水量を自動的に調節しながら(低下させながら)運転することが可能である。これにより、最低水位LWLより低い水位WLでの始動及び連続運転を可能にしたものであり、気水混合用空気管21としての開口である上端23bは、少なくとも水位WLが最低水位LWLより低下したときに大気中に開放される位置に設けておけば良い。
【0029】
気水混合用空気管21は、上端に折返し部を有する逆U字形に曲げられて折返し部21cに形成されており、折返し部21cが床19より上側に配置されている。そして、両端部が挿通孔20を介して吸込水槽2内に延ばされ、一端21aが第一の開口25に接続されている。尚、折返し部21cは揚水に伴って第一の開口25に発生する最大負圧による吸込み揚程よりも高い位置に設定されておれば、逆U字状の空気管の折返し部21cを越えて水が吸い上げられることがないので、空気管からのゴミなどが折返し部に詰まる可能性を少なくすることができる。
【0030】
本実施例では、略最低水位LWLと同じ水位から揚水遮断水位SWLとの間において気水混合用空気を導入する場合を説明したが、これに限定されるものではなく、最低水位LWLより所定高さ上方から揚水遮断水位SWLとの間において気水混合用空気を導入するように設定してもよい。
【0031】
〔実施例2〕
図2を参照して第2実施例の先行待機ポンプ1を説明する。尚、第1実施例の先行待機ポンプ1と同一部分には同一符号を付し、その説明がなされたものとする。
【0032】
実施例2による先行待機ポンプ1は、図2に示すように、吸込水槽2の水位WLが後述する最低水位LWL以下の状態において、羽根車11より下方のポンプケーシング3内に空気を導入しながら揚水することで排水量を低下させるための気水混合用と、気水混合運転して吸込水槽2の水位が最低水位LWLより低い揚水遮断水位SWL(後述)になったときに、羽根車11より下方のポンプケーシング3内に空気を導入することで揚水を遮断するための揚水遮断用の2系統の空気管、即ち気水混合用空気管21、及び気水切替用としての揚水遮断用空気管(気水切替用の通気路の一例)22とを備えている。
【0033】
羽根車11より下方の吸込管6の管壁には、気水混合用空気管21の取付部となる内外面貫通の第一の開口(気水混合用空気導入口;ケーシング内の開口)25と、揚水遮断用空気管22の取付部となる第二の開口(揚水遮断用空気導入口;ケーシング内の開口)26とが設けられている。
【0034】
第一の開口25は2つ(複数)あり、同じ高さ位置で等間隔に配置されている。第二の開口26は1つであり、第一の開口25に対して高低差を設けて羽根車11の下端より下方で、かつ、第一の開口25より上方に配置されるとともに、第一の開口25に対して上下方向でも重ならないように周方向位置も異ならせて配置されている。しかも、第二の開口26の周方向位置は、隣接する2つの第一の開口25間の略中央に位置するように、第一の開口25に対して周方向に位置ずれされている。従って、実施例2では、気水混合用空気管21は、2本(複数本)備えられている。尚、気水混合用空気管21の数はこれに限定されるものではない。
【0035】
気水混合用空気管21は、上端に折返し部を有する逆U字形に曲げられて折返し部21cに形成されており、折返し部21cが床19より上側に配置されている。そして、両端部が挿通孔20を介して吸込水槽2内に延ばされ、一端21aが第一の開口25に接続されている。尚、折返し部21cは揚水に伴って第一の開口25に発生する最大負圧による吸込み揚程よりも高い位置に設定されておれば、逆U字状の空気管の折返し部を越えて水が吸い上げられることがないので、空気管からのゴミなどが折返し部に詰まる可能性を少なくすることができる。
【0036】
吸込み構造部Aは、気水混合用空気管21上端の折返し部21cと下端21bとの上下間から分岐される分岐管27と、その分岐管27に続くU字管23とを有して構成されている。U字管23は、その両端(上端)の水平(又は略水平)な分岐管27の終端でもある始端23aと上端(開口)23bとが、最低水位LWLと同等の高さ位置となるように設けられている。U字管23下端の水平(又は略水平)な折返し部23cは、その上面が最低水位LWLと揚水開始水位RWLとの上下間に位置するように設けられている。つまり、気水混合用空気管21は高低差のある2つの給気口、即ち、U字管23の折返し部23cの下面より下方に配置される下側の吸気口である下端21bと、上側の吸気口である上端23bとを備えている。
【0037】
一方、揚水遮断用空気管22は、気水混合用空気管21と同様に、上端に折返し部22cを有する逆U字形に曲げ形成されており、折返し部22cが床19より上側に配置されて環状板29に支持されている。そして、両端部が挿通孔20を介して吸込水槽2内に延ばされ、一端22aが第二の開口26に接続されている。尚、折返し部22cは揚水に伴って第二の開口26に発生する最大負圧による吸込み揚程よりも高い位置に設定されておれば、逆U字状の揚水遮断用空気管22の折返し部22cを越えて水が吸い上げられることがない。従って、揚水遮断用空気管22からのゴミ等が折返し部22cに詰まる可能性を少なくすることができる。
【0038】
また、揚水遮断用空気管22の先端22b(他端;第二の給気口の一例)は、水位WLが後述する揚水遮断水位(「気水混合運転を行うための水位LWLより低い水位」の一例)SWL以下に設けられる。従って、揚水遮断用空気管22の先端22bは、水位WLが揚水遮断水位SWLに上昇するまでは大気中で開放され、水位WLが揚水遮断水位SWLにまで上昇したときに吸込水槽2内の水によって塞がれる。即ち、揚水遮断用空気管22の先端22bによって開閉手段24が構成されている。
【0039】
実施例2においては、気水混合用と揚水遮断用とによる2系統の空気管21,22は、2本の気水混合用空気管21から導入する空気量と1本の揚水遮断用空気管22から導入する空気量が略同じになるような管径のものが使用されるのが望ましい。その場合、2本の気水混合用空気管21に対し揚水遮断用空気管22が1本であるから、各気水混合用空気管21の管径は、揚水遮断用空気管22の管径の略1/√2になる。
【0040】
下端軸受16の複数枚(例えば4枚)の支持板16aは、そのうち1枚の支持板16aの外端部が、軸方向から見て、第二の開口26の羽根車回転方向上流側近傍で吸込管6の内面に連結されている。
【0041】
吸込口8と第一の開口25との間の吸込管6の外面には、渦発生防止板28が設けられている。渦発生防止板28は、水位WLが揚水遮断水位SWL付近まで低下したときにその水面と面接触する水平板で構成されている。水平板は、吸込口8より大きく、かつ、床19の挿通孔20よりも小さく形成されている。尚、渦発生防止板28は、第一の開口25より下方の吸込管6の外面に放射状に設ける複数の垂直板で構成しても良い。また、挿通孔20よりも大きな水平板や垂直板を用いても良い。尚、渦発生防止版28は、運転条件によっては省略することが可能である。
【0042】
さて、図2に示すように、揚水遮断用空気管22のハンチング現象〔水位の上昇による揚水遮断水位SWLより上での揚水開始状態(揚水状態)と揚水を開始することで揚水遮断水位SWLより水位が低下して揚水遮断(待機状態)を交互に繰り返す現象〕を防止するために、揚水遮断用空気管22の上端折り返し部と先端22bの間から分岐されたU字管30を有する吸込み構造部B(気水切替用の吸込み構造部B)が装備されている。U字管30は、その両端(上端)の略水平な基端(分岐端)30aの上面と先端(開口)30bが、第二の開口26の上端の水位WLに略等しい閉水位YWLに沿うように設けられるとともに、下端の略水平な折返し部30cの上面が、揚水遮断水位SWLに略等しい開水位XWLに沿うように設けられる。ここで、揚水遮断用空気管22の先端22bは、U字管30の折返し部30cの下面より下方に配置され、揚水遮断用空気管22は、高低差のある2つの給気口、すなわち、上側の給気口であるU字管30の先端30bと下側の給気口である揚水遮断用空気管22の先端22bを第二の開口26に連通させている。
【0043】
揚水遮断水位SWL以下から水位WLが上昇する際は、管内に水がないので、U字管30の先端30bから空気を吸う。そして、閉水位YWLになると、U字管30の先端30bが水没することで閉じられるので、第二の開口26からの空気の吸い込みがなくなり、第一の開口25からのみ空気を吸い込む気水混合運転となる。
【0044】
すなわち、揚水遮断水位SWL以下からの水位WLの上昇局面では、閉水位YWLまでは揚水遮断用空気管22が大気中に開放保持されて、揚水遮断用空気管22を通して第二の開口26から空気が吸い込まれ、閉水位YWL以上では揚水遮断用空気管22が塞がれて、第二の開口26からの空気の吸い込みがなくなる。このように水位WLが上昇する方向のときにはU字環30の先端30bが開閉手段24として機能する。
【0045】
一方、最低水位LWL以上から水位WLが下降する際は、最低水位LWLまで水位WLが下降しても、U字管30の先端30bと揚水遮断用空気管22の先端22bの両方とも水没している。閉水位YWLになると、U字管30の先端30bは大気中に出るが、U字管30の先端30b側に溜まっている水は抜けきらないが、揚水遮断水位SWL以下になれば、管内の水位がより低下し、U字管30の折返し部30cの上部より水面が下がればU字管30の先端30bから空気を吸う。
【0046】
即ち、最低水位LWL以上からの水位WLが下降局面では、揚水遮断水位SWLまでは揚水遮断用空気管22が塞がれて、第二の開口26からの空気の吸い込みがない。揚水遮断水位SWL以下では、揚水遮断用空気管22が大気中に開放保持され、揚水遮断用空気管22を通して第二の開口26から空気が吸い込まれる。このように、水位WLが低下する方向のときは、U字管30の折返し部30cが開閉手段24として機能する。
【0047】
実施例2による先行待機ポンプ1では、水位WLの上昇時と下降時で異なる水位WLで揚水遮断用空気管22が大気に開放される。即ち、水位WLの下降時には揚水遮断水位SWL(開水位XWL)で揚水遮断用空気管22が大気に開放され、水位WLの上昇時には揚水遮断水位SWL(開水位XWL)より高い閉水位YWLで揚水遮断用空気管22が大気に開放される。故に、揚水遮断時にポンプケーシング3内から吸込水槽2への逆流等で水位WLが再揚水開始水位CWLにまで上昇しても、揚水を開始せず、揚水遮断運転を続ける。従って、揚水遮断用空気管22のハンチング現象を防止することができる。
【0048】
ここで、揚水遮断用空気管22から分岐されたU字管30は必須ではなく、運転条件によっては省略することも可能である。また、実施例2では、気水混合用空気管21の開口25が揚水遮断用空気管22の開口26よりも上方にある例を示したが、その逆(開口25を開口26よりも下方に設ける)でもよいし、同じ高さであってもよい。U字状の流路の一例としたU字管30を用いた例で説明を行ったが、中空容器の内部に仕切板を設けてU字状流路を形成したものであってもよい。さらに、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
2 吸込水槽
3 ポンプケーシング
11 羽根車
21 気水混合用の通気路
21a 一端
21b 他端
21c 折返し部
22 気水切替用の通気路
23 U字状の流路
23a 一端
23b 他端(開口)
A 吸込み構造部
HWL 最高水位
LWL 最低水位(最上位)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプケーシングの羽根車を収容する部分よりも流体流れ方向で上流側に一端が開口され、かつ、他端が吸込水槽内に開放される気水混合用の通気路を有する先行待機ポンプであって、
前記通気路は、前記吸込水槽に設定される最高水位より高い位置にて折り返される折返し部が前記一端と前記他端との間に形成される全体として略逆U字状の管によって形成されるとともに、前記折返し部と前記他端との上下間における前記通気路に一端が接続され、かつ、他端が大気開放されるU字状の流路を有する吸込み構造部が設けられている先行待機ポンプ。
【請求項2】
前記吸込み構造部の他端が、気水混合用空気を導入する水位と略同じか上側位置で開口しており、前記通気路の他端が前記空気を導入する水位より下側位置で開口している請求項1に記載の先行待機ポンプ。
【請求項3】
前記通気路の折返し部の位置が、前記ポンプケーシング内に発生する最大負圧による吸込み揚程よりも高い位置に設定されている請求項1又は請求項2に記載の先行待機ポンプ。
【請求項4】
前記吸込水槽の水位が、前記吸込水槽における前記気水混合用の通気路からポンプケーシング内に吸込まれる空気を導入しながら揚水する気水混合運転を行う水位より低い水位になると、前記ポンプケーシングの前記羽根車より下方の部分に空気を導入することで揚水を遮断するための気水切替用の通気路が配備されている請求項1〜3の何れか一項に記載の先行待機ポンプ。
【請求項5】
前記気水切替用の通気路は、吸込水槽に設定される最高水位より高い位置にて折り返される折返し部が前記一端と前記他端との間に形成される全体として略逆U字状の管によって形成されるとともに、前記折返し部と前記他端との上下間における前記通気路に一端が接続され、かつ、他端が大気開放されるU字状の流路管を有する吸込み構造部が設けられている請求項4に記載の先行待機ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−80461(P2011−80461A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193821(P2010−193821)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】