説明

先行積層形式の多方向連続繊維積層体を使用して複合構造物を成形する方法

一方向(UD)繊維プリプレグ層12,14が、先行積層形式の多方向連続繊維積層体10に成形され、該積層体が、成形コンパウンドとして3次元構造物40を形成する。この積層体からのカットアウトが、スロットを有し、折曲げ線に沿って折曲げられることで、ニヤ・ネットシェイプの予備成形体が得られる。この予備成形体を圧縮成形によって、複合形状を有する繊維強化複合構造物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、繊維強化複合構造物と、該構造物を作るのに使用される成形材料とに関するものである。より具体的には、本発明は、プリプレグの一方向テープを使用して、ニヤ・ネットシェイプ(near net shape)の予備成形により3次元の繊維強化複合構造物を成形するのに適した先行積層形式(pre−plied)の多方向連続繊維積層体を形成する作業に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合構造物は、通常、2つの主要構成要素として樹脂母材と繊維とを含んでいる。該構造物は、高強度と軽量との組合わせが重要な航空宙分野等の過酷な環境に使用するのに好適である。
【0003】
予め樹脂を含浸させた複合材料(プリプレグ)は、複合部品や複合構造物の製造に広く使用される。プリプレグは、未硬化樹脂母材と繊維強化材との組合わせであり、成形し硬化させて最終複合部品を製作する準備のできた材料である。繊維強化材に樹脂を予め含浸させることにより、製造者は、繊維の網状構造に含浸させる樹脂の量と分配とを注意深く制御し、樹脂を望み通りに網状構造内へ確実に分配できる。プリプレグは、荷重支承構造部品の製造、特に航空機の翼、胴体、隔壁、制御(機能)表面に使用する荷重支承部品の製造に好適な材料である。重要な点は、これらの部品が、十分な強度、損傷許容性、その他該部品に対して慣例として確定している諸要求を満たす特性を有する点である。
【0004】
プリプレグの普通の形式は一方向(UD)テープである。一方向テープ形式の繊維は、互いに平行に延びる連続的な繊維である。これらの繊維は、通常、「トウ」(tows)と呼ばれる多数の個別の繊維またはフィラメントの束の形式にされる。これらの一方向繊維に、注意深く制御された量の未硬化樹脂を含浸させる。UDプリプレグは、通常、保護層と保護層との間に配置され、保管または製造施設への輸送のためにロール状にされた最終UDテープ形式にされる。UDテープの幅は、通常、2.54cm(1インチ)未満から少なくとも30.48cm(1フット)の範囲である。
【0005】
一方向テープは、圧縮成形技術を用いて3次元複合構造物を形成するための成形コンパウンドとして使用するにはあまり好適ではない。UDテープの繊維が連続性で平行に配向されている場合、部品の形状特徴にUDテープを強制的に適合させると、繊維のバンチングまたはブリッジングが生じる。結果として、UDテープを用いた3次元複合部品の製造は、UDテープの個別の層を直接に3次元金型に貼着してから金型をオートクレーブその他の成形装置内で処理する厄介な工法に限定される。UDテープを使用するレイアップ作業は、長時間の、費用を食う工程となる傾向がある。
【0006】
複合部品の圧縮成形に適することが判明した成形コンパウンドには、通常、ランダムな配向の短繊維が用いられる。これは、短繊維のほうが容易に部品の形状特徴に適合できるからである。しかし、このような短繊維を使用した場合、ランダムなマットに集成するさい、局所的な重量変差が生じる。この重量変差は幾つかの問題を生じさせる。例えば、積層設計の複雑さを助長させる。なぜなら、部品の具体的な特定幾何形状ごとに著しい違いのある数層を集成する場合、結果として生じ得る総重量のすべてに設計を適応させねばならないからである。短繊維のランダムなマットの局所的な重量変差は、また成形中の不規則性を助長する。なぜなら、軽量の区域が重い区域で補償されるからである。この補償過程は、一つの成形部品と次の成形部品とで異なるため、予測不可能であり、加えて、形状特徴の異なる所与の部品間でも異なっている。結果として、設計者にとって、成形コンパウンドの設計が所望の部品の形成に好適かどうかの予測および決定が難しくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上述べたことから、比較的複雑な形状の圧縮成形用繊維強化複合構造物に使用するのに適したプリプレグ成形方法を提供することが必要とされる状況が続いていることが分かる。そのような方法は、部品強度を第一に考えねばならない場合、特に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、一方向テープは、成形に適するように加工可能な、先行積層形式の多方向積層体に形成することができる。先行積層形式の積層体は、個別のUDテープを互いに重ねることによって形成され、積層体の複数の層、つまりプライには異なる方向に延びる繊維が含まれている。本発明の先行積層形式の積層体は、著しい重量変差が無く、したがって、3次元の成形構造物の構造上の性能に悪影響を与えるような成形中の変差を生じない。加えて、先行積層形式の積層体の多方向性により、部品設計者は、積層体にスロットを形成して、3次元部品の最終形態に近い形状に積層体を折ることができる。硬化すべき部品のニヤ・ネットシェイプ成形または「予備成形」により、繊維のバンチングおよびブリッジングが防止され、これにより、UDテープを直接に成形コンパウンドとして使用した場合に、これまで存在した問題が除去される。
【0009】
本発明は、繊維強化複合構造物を形成するための方法に関わり、その場合、先行積層形式の多方向積層体を折曲げて予備成形体を形成してから硬化処理し、複合構造物が形成される。先行積層形式の積層体は、少なくとも第1層のプリプレグと第2層のプリプレグとを含み、しかも、プリプレグの各層は、未硬化樹脂母材と一方向繊維とを含んでいる。本発明の一特徴は、2層のプリプレグの一方向繊維の方向が異なっている点である。積層体を折曲げて予備成形体を形成することで、成形中に繊維の配向を制御可能な予備成形体が得られ、それにより、3次元部品が、極めて高い強度を付与され、航空機その他の航空宇宙分野での使用に特に適するものとなる。
【0010】
本発明は、また積層体を使用して製作する繊維強化複合構造物に関するものでもある。加えて、本発明には、積層体からのカットアウトを用いて形成される予備成形体も含まれている。更に、先行積層形式の積層体を用いて製造する繊維強化複合構造物を有する航空宇宙分野の集成体、例えば航空機も、本発明に含まれる。
【0011】
本発明の特徴として、積層体のカットアウトは、3次元部品を形成するために互いに交差する少なくとも2つの折曲げ線に沿って折曲げることができる。加えて、積層体には、折曲げ線の交差個所にスロットを設けて、折曲げ作業を補助し、繊維のブリッジングを防止することができる。スロットを設けることにより、また設計者は、繊維を所望通りに配向させて折曲げた予備成形体を形成し、設計上の強化要求に合わせることができる。
【0012】
本発明の前述の特徴およびその他の特徴や利点は、添付図面と関連させて以下で行う詳細な説明により良く理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一方向(UD)プリプレグまたはテープの複数単一層が、どのように配向されて、本発明による好適積層体の製作に使用するのに適した4層の半等方性積層体が形成されるかを示す略示図。
【図2】図1に示した2組の4層半等方性積層体を組合わせて、本発明により好ましい典型的な対称的8層半等方性積層体を形成した場合に生じる繊維の配向を示す略示図。
【図3】本発明による典型的な対称的8層半等方性積層体を示す図。
【図4】典型的なフランジ支持構造物を形成するように作られた積層体のカットアウトを示す図。
【図5】図4に示したカットアウトを折曲げて組合わせることにより形成された典型的なフランジ支持構造物の予備成形体の図。
【図6】図5の予備成形体を硬化させた時に形成される典型的なフランジ支持構造物を示す図。
【図7】航空機用クリップ構造物の製作に使用する積層体の典型的なカットアウトを示す図。該クリップ構造物は、航空機の2つの主要な構造物を互いに結合する時に用いられる。
【図8】図7に示したカットアウトを折曲げることで形成される典型的な航空機用クリップ構造物の予備成形体を示す図。
【図9】図8の予備成形体を硬化させた場合に形成される典型的な航空機用クリップ構造物の図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、3次元部品を形成する圧縮成形加工に使用される先行積層形式の多方向積層体の形成および使用に係わるものである。本発明は、3次元部品、例えば複合形状を有し、大荷重を支持するように設計される部材を製造するのに、特に好適である。本発明は、主として航空宇宙産業分野で使用されるが、この加工方法は、本発明により、高強度と軽量であることが望まれる広範囲の様々な用途に適する3次元構造物の製造に使用可能である。以下の詳細な説明は、主として、本発明を使用して製造される好適な種類の構造物である航空機部品の製造について行われる。だが、本発明は、また他の種類の高強度部品、例えば自動車、鉄道、造船、エネルギー、スポーツ各分野で使用される複合的な3次元部品の製造にも広く使用できることを理解されたい。
【0015】
図1−図3には、典型的な先行積層形式の8層の対称的半等方性積層体10が、本発明によりどのように作製されるかが示されている。図1には、第1層のプリプレグ12と第2層のプリプレグ14が示されている。プリプレグ層12,14は、各々未硬化樹脂母材と一方向繊維16,18とを含んでいる。プリプレグ12の一方向繊維16は0°に配向されている。プリプレグ14の一方向繊維18は45°に配向されている。更に、図1には第2組の2つのプリプレグ層12a,114aが示されている。2つの層12a,14aは、90°旋回させてある以外は層12,14と等しい。この旋回により、一方向繊維16aは90°に配向され、一方向繊維18aは−45°に配向される。4層12,14,12a,14aは、図1に示すように組合わされ、4層の半等方性積層体20が形成される。
【0016】
図2には、第2の4層半等方性積層体20aが示されている。該積層体は、裏返されて一方向繊維が積層体20の鏡像になっている点以外は積層体20と等しい。2個の4層マット20,20aは、図2と図3に符号30で示すように、組み合わされ、好ましい典型的な8層の対称的な先行積層形式の半等方性積層体を形成している。一方向プリプレグの積層体は8層以上でも以下でもよい。但し、積層体にスロットを設けて折曲げでき、予備成形体の圧縮成形/硬化のさい、繊維がバンチングまたはブリッジングを生じない予備成形体が形成できることが条件である。例えば、積層体は、一方向プリプレグの層数が16層を超えるものでも2層程度のものでも用意できる。
【0017】
ここで用いられている「先行積層形式」(pre−plied)という用語は、ニヤ・ネットシェイプの予備成形体を形成するために、積層体の裁断および/または折曲げ前に、種々のUD繊維層が組合わされて多層積層体が形成されることを意味する。好適積層体10として示されているように、積層体の隣接層は、複数層のうちの少なくとも2層が異なる配向の複数UD繊維を有する限り、等方向であってよい。また、UD繊維の典型的な好適配向は、0°、±45°、90°であることに留意すべきである。図1−図3に示した半等方性配向が好適である。しかし、極めて様々な他のUD繊維配向や層の組合わせも可能である。UD繊維層とUD繊維の配向との具体的組合わせは、必要な場合には積層体にスロットを設け、折曲げて最終部品の3次元形状が成形されることで得られる複合構造物に望ましい繊維配向に応じて、部品の設計者が選択する。
【0018】
一方向(UD)テープは、本発明の先行積層形式の積層体を形成するのに使用される好ましい種類のプリプレグ層である。UDテープは、市販品を入手できるが、公知のプリプレグ形成法を用いて製造することもできる。UDテープの寸法は、3次元複合構造物の形成に要するカットアウトの数や寸法に応じて広範囲で変更可能である。例えば、UDテープの幅(UD繊維に対して直角の寸法)は、所望のカットアウトの寸法と数とに応じて1.27cm(0.5インチ)から少なくとも1m前後(数フィート)の範囲が可能である。UDテープの厚さは、通常、0.01から0.03cm(0.004−0.012インチ)であり、UDテープの長さ(UD繊維と平行の寸法)は、所望のカットアウトの寸法と数とに応じて1.3cm(0.5インチ)から少なくとも1m(数フィート)の範囲で変更できる。
【0019】
UDテープまたはプリプレグは、25−45重量パーセントの未硬化樹脂母材を含んでいる。好ましくは、未硬化樹脂母材の量は30−40重量パーセントだろう。樹脂母材は、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂熱可塑性樹脂のいずれかでよい。代表的な熱可塑性樹脂には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルフォン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)が含まれる。熱可塑性樹脂で強化したエポキシ樹脂は好適な樹脂母材である。好適な樹脂は、通常、航空宇宙産業で使用される種類のUDテープに用いられ樹脂である。UD繊維は、炭素、ガラス、アラミド、その他の、通常、高い応力を受ける環境で使用される複合部品の製造に使用される何らかの繊維材料でよい。繊維は、数100から少なくとも12,000のフィラメント包含することができる。好適なUD繊維は炭素繊維である。
【0020】
好ましい代表的な市販の一方向プリプレグはHexPly(登録商標)8552であり、へクセル・コーポレーション(Hexcel Corporation)(カリフォルニヤ州ダブリン)から入手できる。HexPly(登録商標)8552は、種々の一方向テープ形状で入手可能であり、それらには、アミン硬化剤により硬化され強化されたエポキシ樹脂母材34−38重量パーセントと、3,000−12,000のフィラメントを有するUD炭素繊維またはガラス繊維とが含有されている。これらの繊維は、通常、UDテープの60体積パーセントを占めている。
【0021】
図4−図6には、本発明による航空機用フランジ支持構造物40の形成過程が示されている。このフランジ支持構造物40は、2つの航空機部品を互いに結合するように設計されている。2つの航空機部品42,44は、図6に破線で示されている。航空機部品42,44は、航空機の荷重支承用の主な構造部材である。「荷重支承」という用語は、該部品が不具合なしに所定の応力または荷重を支持するのに十分な強度および剛度を有するように設計されることを意味する。これら部品が支持する通常の荷重は、少なくとも454kg(1000ポンド)程度である。約2720kg(約6000ポンド)を超える荷重も、この材料および加工法で作られる部品の場合、稀ではない。フランジ支持構造物40は、主要航空機部品42,44と等しい荷重またはそれ以上の荷重に耐えられなければならない。そうでなければ、2つの荷重支承部品を互いに結合するフランジ40の損傷は避けられない。航空機部品42,44は、穴46を介したボルト結合または接着剤によりフランジ支持構造物40に取付けることができる。
【0022】
フランジ支持構造物40は、図4に示したように、6個のカットアウト(A−F)を用いて作られる。これらのカットアウトは、好適な対称的半等方性積層体10から切り出したものである。カットアウトAには、符号48で示す直線状のスロットが設けられている。カットアウトAは、破線で示す折曲げ線50,52,54に沿って折曲げられる。スロット48は折曲げ線50,54の交点と、折曲げ線52,54の交点とから発している。スロット48は、カットアウトAの内部からカットアウト縁部へ向かって折曲げ線に沿って延びている。スロット48は、折曲げ線50,52と同一直線上にある。
【0023】
カットアウトBは破線56,58に沿って折曲げられる。これら2つの折曲げ線は交差していないので、スロットは不要である。カットアウトC,Dは、互いに鏡像をなしており、破線で示した折曲げ線を有している。スロットは、カットアウトC,Dの場合、カットアウトAの場合同様に折曲げ線の交点から延びている。カットアウトE,Fも、互いに鏡像をなしており、破線で示した折曲げ線を有している。カットアウトE,Fの場合も、スロットは、カットアウトA同様に折曲げ線の交点から延びている。これらのスロットはリリーフカットとして機能し、これにより、カットアウトの異なる部分を繊維の配向を変形させることなく所定位置に折曲げ、かつ所望通りにカットアウトのブリッジングや樹脂母材の流れを得ることができる。
【0024】
カットアウトA−Fは、図5に示すように、折曲げられ組合わされて予備成形体60が形成される。折曲げ線は、所望とあれば、少し加熱して樹脂の粘度を低減し、カットアウトの折曲げを容易にすることができる。しかし、加熱は最小限にとどめ、不注意でカットアウトの硬化を早めないようにせねばならない。一般に、カットアウト全体の硬化を引起こすことなく樹脂母材の粘度を低減するのに十分なだけ折曲げ線を加熱するのがよい。加熱温度は、使用する樹脂母材の種類に応じて変更する。折曲げ線は、積層体を目標形状に折曲げるのに十分な時間だけ加熱するのがよい。また、折曲げ線は出来るだけ短時間加熱するのがよく、好ましくは数分程度にとどめ、カットアウトの局所的な硬化を避けるべきである。
【0025】
本発明の利点は、予備成形体60を最終部品の形状に近い形状にできる点である。予備成形体は、「ニヤ・ネットシェイプ」が好ましい。ニヤ・ネットシェイプとは、予備成形体の寸法が、硬化済みの繊維強化複合構造物の成形寸法との差が少なくとも3mm以内であることを意味する。硬化済みの繊維強化複合構造物の成形寸法より3mmを超えて下回る寸法の予備成形体も可能である。例えば、予備成形体には、最終硬化部品の寸法、幾何形状、予想構造性能に応じて、硬化済み部品の成形寸法の少なくとも25mm下回る設計が可能である。予備成形体60を部分硬化させて樹脂母材の粘度を増すことで、目標ニヤ・ネットシェイプを確実に保持することができる。樹脂母材は、予備成形体60の形状が保持されるように樹脂粘度を調整することを条件として、公知の部分硬化処理のいずれかを用いて部分硬化(処理の促進)が可能である。通常「B−段階処理」として知られる処理法が、圧縮成形その他の硬化方法で処理する前に、樹脂母材の処理を促進させる好適な処理法である。
【0026】
予備成形体60の硬化は、航空宇宙工業分野で普通に使用されている通常の硬化または成形の実施手順によって実施できる。圧縮成形は、予備成形体60を最終航空機フランジ支持体40に変換する好適な方法である。この方法は、成形機の閉じた金型により予備成形体に加圧する作業を含んでいる。硬化の圧力、温度、時間は、樹脂母材の種類および予備成形体の寸法を含む可変要因の数に応じて変更される。当業者は、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、フェノール樹脂を含む様々な種類の樹脂系の場合の前記硬化上の可変要因を承知している。ニヤ・ネットシェイプの予備成形体は、成形され、必要とあればB段階処理され、繊維および樹脂の流れが制御され、ネットシェイプの3次元部品が形成される。
【0027】
図7−図9には、本発明により航空機用クリップ構造物70を成形する過程が示されている。クリップ構造物70は、航空機の2つの主要な構造部品を互いに結合するように設計されている。航空機の2つの主要な構造部品72,74は、図9に破線で示されている。
クリップ構造物70は、図7に符号78で示した1つ以上のカットアウトを用いて作られる。該カットアウトは、好適な対称的半等方性積層体10から切り出される。カットアウトには直線状のスロットが符号80で示されている。カットアウト78は、破線で示した折曲げ線82,84に沿って折曲げられる。スロット80は、折曲げ線82,84の交点のところから延びている。スロット80は、カットアウトの内方、折曲げ線の交点のところからカットアウトの縁部まで延びている。スロット80は折曲げ線82と同一線上に延びている。
【0028】
カットアウト78は折曲げられ、図8に示すクリップ予備成形体90が形成される。クリップ予備成形体90はニヤ・ネットシェイプなので、最終クリップ70の形状に近い。予備成形体90の繊維の配向は複数の線92で単純化して示してあり、これらの線は、カットアウト78を折曲げて予備成形体を作るさいに変化する繊維の配向を示している。設計者は、折曲げ段階で生じるUD繊維の方向変化を考慮に入れて、予備成形体90および最終クリップ70に目標繊維配向が得られるようにせねばならない。
【0029】
クリップ予備成形体90は、フランジ支持予備成形体60と同様に、部分硬化させて樹脂母材の粘度を高め、予備成形体が目標部品形状の最終硬化寸法に確実に成形されるようにすることができる。「B段階処理」は、圧縮成形またはその他の硬化処理前にクリップ予備成形体90の樹脂母材処理を促進させる好適な処理法である。
クリップ予備成形体90は、フランジ支持体の予備成形体60について既に説明したのと同じように、通常の硬化または成形の複数処理手順のいずれかを用いて硬化できる。圧縮成形法は、予備成形体90を航空機用の最終クリップ70に変換する好適な加工法である。
【0030】
以上、本発明の代表的な実施例を説明したが、ここに開示した例は代表的な例に過ぎず、本発明の範囲内で種々の別の形式、適応例、変更態様が可能なことを、当業者は留意すべきである。したがって、本発明は、既述の実施例に限定されるものではなく、特許請求範囲の記載にのみ制限されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化複合構造物を成形する方法において、該方法が、
内方部分および縁部を含む先行積層形式の多方向積層体を得る段階を含み、前記積層体が、少なくとも第1層のプリプレグと第2層のプリプレグとを含み、しかも、該プリプレグ層の各々が未硬化樹脂母材と一方向繊維とを含み、かつまた前記第1層のプリプレグ内の前記一方向繊維の方向が、前記第2層のプリプレグ内の前記一方向繊維の方向と異なっており、更に前記方法が、
前記積層体を折曲げて予備成形体を形成する段階と、
前記予備成形体を硬化させて前記繊維強化複合構造物を形成する段階とを含む、繊維強化複合構造物を成形する方法。
【請求項2】
前記積層体が、少なくとも2つの折曲げ線を含み、前記予備成形体の成形時に前記折曲げ線に沿って折曲げられ、かつまた前記折曲げ線が互いに交差している、請求項1記載の繊維強化複合構造物を成形する方法。
【請求項3】
前記積層体が、積層体の内方部分から積層体の縁部へ延びる少なくとも1つの直線状スロットを含む、請求項1記載の繊維強化複合構造物を成形する方法。
【請求項4】
前記積層体が、積層体の内方部分から積層体の縁部へ延び少なくとも1つの直線状スロットを含み、前記直線状スロットが前記折曲げ線の少なくとも1つと同一直線上にある、請求項2記載の繊維強化複合構造物を成形する方法。
【請求項5】
前記直線状スロットが前記折曲げ線の交点から前記積層体の縁部まで延びている、請求項4記載の繊維強化複合構造物を成形する方法。
【請求項6】
前記積層体が少なくとも1つの折曲げ線を含み、該折曲げ線が、前記予備成形体を形成するために前記積層体を折曲げる前に加熱される、請求項1記載の繊維強化複合構造物を成形する方法。
【請求項7】
繊維強化複合構造物において、該複合構造物が次の方法、すなわち、内方部分および縁部を含む先行積層形式の多方向積層体を得る段階を含み、前記積層体が、少なくとも第1層のプリプレグと第2層のプリプレグとを含み、しかも、該プリプレグ層の各々が未硬化樹脂母材と一方向繊維とを含み、かつまた前記第1層のプリプレグ内の前記一方向繊維の方向が、前記第2層のプリプレグ内の前記一方向繊維の方向と異なっており、更に、
前記積層体を折曲げて予備成形体を形成する段階と、
前記予備成形体を硬化させて前記繊維強化複合構造物を形成する段階とを含む方法によって製造される、繊維強化複合構造物。
【請求項8】
前記積層体が、少なくとも2つの折曲げ線を含み、前記予備成形体の形成時に該折曲げ線に沿って折曲げられ、かつまた前記折曲げ線が互いに交差している、請求項7記載の繊維強化複合構造物。
【請求項9】
前記積層体が、積層体内方部分から積層体縁部へ延びる少なくとも1つの直線状スロットを含む、請求項7記載の繊維強化複合構造物。
【請求項10】
前記積層体が、積層体内方部分から積層体縁部へ延び少なくとも1つの直線状スロットを含み、前記直線状スロットが前記折曲げ線の少なくとも1つと同一直線上にある、請求項8記載の繊維強化複合構造物。
【請求項11】
前記直線状スロットが前記折曲げ線の交点から前記積層体の縁部まで延びている、請求項10記載の繊維強化複合構造物。
【請求項12】
前記複合積層体が少なくとも1つの折曲げ線を含み、前記折曲げ線が、前記予備成形体の形成のため前記積層体を折曲げる前に加熱される、請求項7記載の繊維強化複合構造物。
【請求項13】
繊維強化複合構造物の形成に使用する予備成形体において、
該予備成形体が、次の方法、すなわち
内方部分および縁部を含む先行積層形式の多方向積層体を得る段階を含み、前記積層体が、少なくとも第1層のプリプレグと第2層のプリプレグとを含み、しかも、該プリプレグ層の各々が未硬化樹脂母材と一方向繊維とを含み、かつまた前記第1層のプリプレグ内の前記一方向繊維の方向が前記第2層のプリプレグ内の前記一方向繊維の方向と異なっており、更に
前記積層体を折曲げて前記予備成形体を形成する段階を含む方法によって製造される、繊維強化複合構造物の形成に使用する予備成形体。
【請求項14】
前記半等方性積層体が少なくとも2つの折曲げ線を含み、前記予備成形体の形成時に該折曲げ線に沿って前記積層体が折曲げられ、かつまた前記折曲げ線が互いに交差している、請求項13記載の予備成形体。
【請求項15】
前記積層体が、積層体内方部分から積層体縁部まで延びる少なくとも1つの直線状スロットを含む、請求項13記載の予備成形体。
【請求項16】
前記積層体が積層体内方部分から積層体縁部まで延びる少なくとも1つの直線状スロットを含み、前記直線状スロットが前記折曲げ線の少なくとも1つと同一直線上にある、請求項14記載の予備成形体。
【請求項17】
前記直線状スロットが、前記折曲げ線の交点から前記積層体の縁部まで延びている、請求項16記載の予備成形体。
【請求項18】
前記複合積層体が少なくとも1つの折曲げ線を含み、前記折曲げ線が、前記予備成形体を成形するために、前記積層体を折曲げる前に加熱される、請求項13記載の予備成形体。
【請求項19】
航空宇宙用の集成体において、
第1航空機部品と、
第2航空機部品と、
前記第1航空機部品を前記第2航空機部品と結合する請求項7記載の繊維強化複合構造物とを含む、航空宇宙用集成体。
【請求項20】
前記第1と第2の航空機部品が、前記航空機の荷重支承部材である、請求項19記載の航空宇宙用集成体。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−505151(P2013−505151A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529772(P2012−529772)
【出願日】平成22年8月21日(2010.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/046253
【国際公開番号】WO2011/034684
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(503308494)ヘクセル コーポレイション (15)
【Fターム(参考)】