説明

光による人間の組織又は動物の組織の治療のための装置及び方法

光による人間の組織又は動物の組織の治療のための装置であって、使用時に組織に対して光を照射する光源と、組織に面した表面を有する適用部と、使用時に当該組織に面した表面と組織との近接度を検出する検出器と、使用時に前記組織に面した表面が組織から離れたときにのみ、光を照射して組織に入射させるべく光源を制御するために当該検出器に応答する制御手段を有する装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光による人間の組織又は動物の組織の治療に関するものであって、限定するものではないが、特に脱毛に関する。
【背景技術】
【0002】
「光」という言葉は、本明細書において、電磁スペクトル並びに連続波及びパルス形式の両方の、コヒーレント光及び非コヒーレント光を意味して用いられる。
【0003】
皮膚から毛を取り除くために、光治療を採用することは公知である。脱毛(hair removal)という言葉は、毛を瞬時に取り除く方法を包含して使用されており、更に一般的に、毛包のライフサイクルを遮り、後に毛を抜き落とす方法も包含して使用されている。公知の脱毛工程において、放射光が優先的に毛包内のメラニンに吸収されるように選択された特定の帯域内の又は特定の波長の光放射又はレーザー放射が、毛の成長を止める温度になるまで、毛の局所加熱を生じさせる。レーザー放射は一部皮膚にも吸収されるが、加熱効果はより低い。しかしながら、加熱効果の副作用を確実に回避するために皮膚から放熱させることも重要である。従って、こうした多くの治療において、適用部ヘッドは、皮膚に適用され、皮膚に当接される硬い光学導波部によって光が皮膚に照射される。導波部は、皮膚から伝導放熱するのに適した熱伝導特性を有する材質で作られた導波部を有する単純に受動的な冷却効果、及び/又は、導波部が積極的に冷却される冷却効果を提供する。どちらの方法も、光治療中に導波部が皮膚に当接し続ける。
【0004】
この方法には多くの問題がある。要求される光学的特性及び熱伝導特性を有する導波部を設けるために、サファイアのような特別な材質を、多額の費用で使用しなければならない。導波部との接触は、包接された治療部がうまく放熱できないことになり、且つ、実際には生じるはずの対流のような熱伝達メカニズムが抑制されることを意味する。更に、先行技術にかかる装置の治療メカニズムは、熱エネルギーを毛や毛包に貯蓄するために使用されているため、その領域は、使用前に毛を剃らなければならず、そうしなければ、導波部が通過し且つ熱吸収体として機能するため、皮膚から飛び出た毛の長さは、皮膚に対して平坦にされ、それによって皮膚を焼いてしまう。導波部を皮膚に当接させると、毛が焼けた後に、導波部に残留物が形成され、焦がしてしまう可能性がある。焦げは、皮膚表面で更に熱を生じてしまい、これは望ましくなく、治療のために多くのエネルギーを浪費する。これは、製品の故障につながり、危険な製品となりかねない。
【0005】
更に、装置が完全当接されると、脇の下の腋窩領域又は一箇所若しくは小さなターゲットのような困難な領域の治療が難しくなる。同様に、導波部をあて、治療光を駆動させ且つ移動させながら隣接した領域で連続的に治療するのも難しい。更に、前述した装置は、皮膚に対して圧接されるとき、皮膚に対する装置の圧接又は当接は、皮膚の毛細血管を通る血流を抑制し、それによって体自身の冷却メカニズムの作用を抑制する。
【0006】
我々の研究は、皮膚で生じた熱を逃がすために、治療装置及び皮膚間の空隙が維持された装置を提供することにより、多くの困難性を解決又は少なくとも緩和できることを示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本国特許出願公開2005102931号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、放射線ビーム又は血管拡張効果を生じる波長のビームを皮膚に放射するためのレーザー要素を開示している。この装置において、皮膚は、毛包のメラニンによる優先的吸収というよりはむしろ、皮膚全体としてエネルギー吸収のターゲットとなってしまい、トラウマ、皮膚潰瘍等の外傷を生じるように装置が設計されてしまっており、これは、治療部との当接は避けなければならないことを意味し、装置は治療部上に離したほうがよい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
皮膚に対するヘッドの距離及び角度が、制御装置の入力として計算及び使用されることを可能とする距離センサを有する装置は、適切な治療エネルギー密度が維持されること及び装置がある程度以上傾いて放射光が使用者の目に入らないことを確実とするために、距離及び角度が事前に設定した範囲内のときにレーザービームの動作を可能とする。その装置は、治療において、皮膚を全体として加熱する必要があり且つ皮膚の過度の加熱を能動的に回避するために十分なエネルギー消散を確保するという問題に取り組まなくてもよい行程における、十分なエネルギー密度レベルの維持に関するものであり、その治療において、光又は放射線が毛包のメラニンによって優先的に吸収される。
【0010】
従って、一つの態様において、本発明は、光によって人間の皮膚又は動物の皮膚の毛を取り除く治療のための装置であって、皮膚に面した表面を有する適用部と、使用時に皮膚に対して光を照射する光源と、使用時に前記皮膚に面した表面の、皮膚への近接度を検出する検出器と、前記皮膚に面した表面が皮膚から離れたときにのみ前記光源から皮膚に入射される光を生じるために前記検出器に応答する制御手段とを有する装置を提供する。
【0011】
制御手段は、発生器が皮膚から離れたときに光を照射できるように許容することができ、又は、発生器が皮膚に当接しているときに動作を抑制するように予防することができる。
【0012】
このように、光源が動作可能なとき、空隙は、皮膚に面した表面と、皮膚との間で維持される。これは、温度制御のための通常の体のメカニズムと同様に、対流、放射によって皮膚組織の任意の加熱が放熱され得ることを意味する。
【0013】
制御手段が、皮膚と、皮膚に面した表面との間の最小距離の監視のみ行うことも可能だが、好適には、前記皮膚に面した表面の皮膚からの距離が、事前に設定した範囲内にあるときにのみ前記光源の動作を可能とする。事前に設定した距離の範囲は、0.1mmから5mmの間だと好都合であり、好ましくは、1mmから4mmの間、理想的には、2mmから3mmの間がよい。このように、範囲の上限は、好ましくは、3mmから5mmの間である。下限は、好ましくは、0.1mmから3mmの間である。更に、距離は、対流が生じない時に、その改善を確実にするように選択されてもよい。対流による熱伝達を最大にする距離が存在する。この距離を短くすると、熱の伝達を低減させてしまうが、この距離を長くしてもわずかな効果しかなく又はほとんど効果がなく、その代わりに妥協的安全を得る。
【0014】
装置は、好ましくは、皮膚に面した表面及び皮膚の近接度の聴覚的指示又は視覚的指示を提供するための指示器を有する。これは、装置が範囲内にあるときに指示するための様々な周波数のトーンの形式、及び/又は、連続的なトーンから間欠的なトーンに変化する形式又はその逆に変化する形式であってもよい。
【0015】
好ましくは、近接度検出器が非接触式センサであり、温度センサ、静電容量センサ、光学センサ、音響式センサ及び超音波式センサ、マイクロ波センサ、物理センサから成る群から選択されると好都合であるが、装置の隣接面が皮膚に接触しないようにされた接触式センサでもよい。
【0016】
別の態様において、本発明は、光による人間の組織又は動物の組織の治療のための装置であって、組織に面した表面を有する適用部と、光源と、前記組織に面した表面と前期組織との間の実質的に包囲されていない空隙を維持する手段とを有する装置を提供する。
【0017】
維持手段は、一つ又はそれ以上の離間要素を有してもよい。空隙を0.1mmから5mmの間で維持すると好都合であり、好ましくは1mmから4mmの間、理想的には2mmから3mmの間がよい。維持する手段は、一つ又はそれ以上の離間要素が皮膚に当接していないときに装置の動作を抑制する接触式センサを有してもよい。
【0018】
装置は、いずれかの態様において、治療前に、皮膚の種類/色、髪の種類/色等のように、組織の特性を検出する手段及び/又は分類する手段を有すると好都合である。これは、皮膚と装置間の距離を検出するために動作可能でもあるセンサであってもよい。
【0019】
本発明にかかる装置は、任意の、美容形式又は非美容形式の組織の治療であって、限定するものではないが、脱毛、毛髪刺激器、タトゥーの除去のような皮膚の色素沈着の治療、ポートワイン母斑、ストロベリーニーガス(strawberry negus)、酒さ、乾癬の治療、拡張した毛細血管の治療、しわの除去、セルライトの治療に使用することができる。
【0020】
別の態様において、本発明は、光による人間の組織又は動物の組織の、美容目的の治療又は非美容目的の治療方法であって、実質的に包囲されていない空隙によって組織に隣接しつつも組織から離して治療装置を運ぶ工程と、治療装置と、治療部を露出させて前記装置によって光を照射する工程とを有する治療方法を提供する。
【0021】
その空隙は、0.5mmから5mmの間だと好都合であり、好ましくは、1mmから4mmの間であり、理想的には、2mmから3mmの間である。
【0022】
ここまで本発明を説明してきたが、本発明は、前述した構成又は以下の説明又は請求項の任意の発明的組合せに拡張することができる。
【0023】
本発明は様々な方法で実施することができるが、ここで、例示にすぎないが、その実施形態を、添付図面を参考にしながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかる光治療装置の第一実施形態の略図である。
【図2】本発明にかかる光治療装置の第二実施形態の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
最初に図1について説明すると、光治療器10は、供給コード12(umbilical cord)によって、リモートコンソール(図示せず)に接続されている。その治療器は、皮膚に面した下部の平壁16を有するハウジング14を具備する。ハウジング14は、例えば、概して20に表示された視覚部(optics)を通してビームを照射する高輝度閃光電球18等の光源と、皮膚に面する透明窓22とを有する。
【0026】
閃光電球18は、約600nmから1000nmの範囲の光を照射する広帯域照射器である。別の実施形態において、閃光電球18は、レーザー放射又は750nmから850nmの波長、好ましくは約808nmの波長を照射するレーザーダイオードと置き換えることができる。広帯域及びレーザーの両方の実装において、放射光は、メラニンに吸収されるように選択されており、よって、毛包の加熱を引き起こす。
【0027】
皮膚から壁までの空間を検出し、これを信号入力として光源18の動作を制御する制御装置26へ提供する二つの非接触式の近接センサ24も、下部壁16に取り付けられている。更に制御装置26は、治療器の上面で発射ボタン28にも接続されており、且つ、表示LED若しくは表示LEDセット又はその他の視覚的若しくは聴覚的な指示器30とも接続されている。
【0028】
制御装置は、近接検出器24からの出力を監視し、下部壁16と皮膚との間に空隙が検出されない限り、光源18の動作を抑制する。更に制御装置は、空間が事前に設定した値より大きい場合にも光源の動作を抑制してもよい。光源動作の抑制に加え、空隙が事前に設定した最小値より小さい場合又は事前に設定した最大値よりも大きい場合に、制御装置が、表示器30を介して視覚的な又は聴覚的なフィードバックを提供してもよい。使用時、治療器は、皮膚の表面の真上に置かれ、その状態のまま発射ボタン28を押され、提供された壁16と皮膚との間の空隙が範囲内であれば、制御装置は、皮膚に対して光のビームを照射するため、光源を駆動させる。治療器が皮膚の上を移動したとき、壁があらかじめ決定された範囲を越えて移動した場合、壁が範囲内に戻るまで光源18は、スイッチが切られる。この方法において、治療器は、皮膚と壁16との間の空隙を維持しながら皮膚の上で停止(hover)させてもよく、それによって、放射及び対流により熱が伝達される。練習によって、使用者は、治療器を皮膚の上で停止することができ、表示器30を監視しながらあらかじめ決定された範囲内に高さを維持するように調整することができる。必要であれば、下部壁16は、空隙の維持を支援するための離間脚を有してもよい。
【0029】
発明の修正実施形態において、検出器24は、皮膚から治療器までの距離を検出するために動作しても、皮膚に対する治療器の速度又はポジションの変化を指示する信号を提供するために動作してもよい。制御回路は、装置が事前に設定した時間よりも長く固定されたとき、又は、移動速度が事前に設定した閾値以下であるときに、速度信号に応答し、光源の動作を抑制するように設計されてもよい。こうして制御回路は、毛包ではなく、望みもしない皮膚組織の局所の露光過多及び/又は加熱の危険性を防ぎ又は低減するために動作することができる。検出器は、皮膚に垂直な方向(すなわち高さの変化)及び/又は他の二つの直交方向の一方又は両方における速度を検出することができる。検出器は、水平成分及び垂直成分の任意の動作の検出を可能とするために、光ビームに対し、平行方向の一つ又はそれ以上の他のドップラー検出器を備える光ビームの軸線に対して、45°の方向の一つ又はそれ以上のドップラー検出器を具備すると好都合である。
【0030】
図2は、下部壁16が、概して矩形の下部壁16の四隅に配置された離間脚32を有する装置を示す。この装置において、脚32は、下部壁16を、皮膚表面からあらかじめ決定された距離だけ離すが、皮膚に平行な平面における下部壁16と、皮膚表面との間の空気の流れを著しく妨げたりはしない。更に、図2の装置は、一つ又はそれ以上の機能を提供するために使用される光学センサ34を有する。光学センサ34は、治療する皮膚の皮膚質及び/又は髪質を検出することができ、皮膚の温度又は距離を検出することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光によって人間の皮膚又は動物の皮膚の毛を取り除く治療のための装置であって、
皮膚に面した表面を有する適用部と、
使用時に皮膚に対して光を照射する光源と、
使用時に前記皮膚に面した表面の、皮膚への近接度を検出する検出器と、
前記皮膚に面した表面が皮膚から離れたときにのみ前記光源から皮膚に入射される光を生じるために前記検出器に応答する制御手段とを有する装置。
【請求項2】
前記皮膚に面した表面の皮膚からの距離が、事前に設定した範囲内にあるときにのみ、前記制御手段が、前記光源の動作を可能とするために応答する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
距離の前記事前に設定した範囲が、0.1mmから10mmの間である請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記事前に設定した範囲が、1mmから4mmの間である請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記事前に設定した範囲が、2mmから3mmの間である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記皮膚に面した表面と皮膚との前記近接度の、聴覚的指示又は視覚的指示を提供する指示器を有する請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
前記近接検出器が、非接触式センサを有する請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の装置。
【請求項8】
前記非接触式センサが、温度センサ、静電容量センサ、光学センサ、超音波センサ及び音響センサ、マイクロ波センサ、物理センサから成る群から選択される請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記皮膚に面した表面と皮膚との間の相対運動を検出するための動作検出器を有し、前記制御手段が、前記皮膚に面した表面と皮膚との間の相対運動が検出されたときにのみ、前記光源から皮膚に入射する光を生じさせるために前記動作検出器に応答する請求項1から請求項8のいずれか一つに記載の装置。
【請求項10】
検出した動作の大きさが、事前に設定した閾値を越えたときにのみ、前記光源から皮膚に入射する光を生じさせるために前記制御手段が前記動作検出器に応答する請求項9に記載の装置。
【請求項11】
光による人間の組織又は動物の組織の治療のための装置であって、光源と、事前に設定した前記装置と前記組織との間の距離よりも大きな実質的に包囲されていない空隙を維持する手段とを有する装置。
【請求項12】
前記維持する手段が、一つ又はそれ以上の離間要素を有する請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記維持する手段が、0.1mmから10mmの空隙を維持する請求項11又は請求項12のいずれか一つに記載の装置。
【請求項14】
前記維持する手段が、0.1mmから10mmの空隙を維持する請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記維持する手段が、0.1mmから10mmの空隙を維持する請求項14に記載の装置。
【請求項16】
治療前に組織の特性を検出及び/又は分類する手段を更に有する請求項1から請求項15のいずれか一つに記載の装置。
【請求項17】
光による人間の組織又は動物の組織の治療のための装置であって、
組織に面した表面を有する適用部と、
使用時に組織に対して光を照射する光源と、
使用時に前記組織に面した表面の、組織への近接度を検出する検出器と、
使用時に前記組織に面した表面が組織から離れたときにのみ、光を照射して組織に入射させるために前記光源を制御する制御手段とを有する装置。
【請求項18】
光による人間の組織又は動物の組織の、美容目的の治療方法又は非美容目的の治療方法であって、実質的に包囲されていない空隙によって皮膚に隣接しつつも皮膚から離して治療のための装置を運ぶ工程と、治療部を露出させ前記装置によって光を照射する工程とを有する治療方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−509222(P2013−509222A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535938(P2012−535938)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051827
【国際公開番号】WO2011/051730
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512110684)ザ デザック グループ リミティド (1)
【Fターム(参考)】