説明

光コネクタ用ブーツ及び光ケーブルアッセンブリ

【課題】光ケーブルが意図した方向以外の方向に屈曲されることを抑制しつつ、光ケーブル内部の光ファイバ心線を保護する。
【解決手段】光コネクタ用ブーツ16のブーツ本体54には、上面54A及び下面54Bに、ブーツ本体54の長手方向(Y軸方向)に間隔を空けて複数の主溝60が形成されており、側面54C,54Dに、複数の肉抜き溝62が形成されている。各主溝60は、左右方向(X軸方向)に沿って延びると共に、溝長手方向両端部及び溝深さ方向一端部がブーツ本体54の外周面にて開口されており、各肉抜き溝62は、上下方向(Z軸方向)に沿って延びると共に、溝長手方向両端部及び溝深さ方向一端部がブーツ本体の外周面にて開口されている。また、上述の複数の主溝60のうち少なくともブーツ本体54の先端側に位置する主溝60A〜60Dは、溝深さ方向他端部がブーツ本体54の外周面と孔部58との間で終端されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタ用ブーツ及び光ケーブルアッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブーツ本体に互い違いに複数のスリットが形成されると共に、この各スリットがブーツ本体に形成された光ケーブル挿通用の孔部と連通された光コネクタ用ブーツが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、光ケーブルと、この光ケーブルの先端側に接続された光コネクタと、この光コネクタの後端側に固定された光コネクタ用ブーツとを備えた光ケーブルアッセンブリが開示されている。この光ケーブルアッセンブリにおいて、光ケーブルは、光ファイバ心線と、この光ファイバ心線と並列に設けられた一対の抗張力体と、光ファイバ心線及び一対の抗張力体を被覆する被覆材とを有して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3361395号公報
【特許文献2】特許第3884648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の光コネクタブーツでは、各スリットがブーツ本体に形成された光ケーブル挿通用の孔部と連通されており、ブーツ本体のあらゆる方向への曲げ剛性が低減されている。このため、このブーツ本体に挿通された光ケーブルが意図した方向以外の方向に屈曲可能となっている。
【0006】
また、上記特許文献2に記載の光ケーブルアッセンブリのような、光ケーブルが一対の抗張力体を有する構成において、上述の光コネクタブーツのように、ブーツ本体のあらゆる方向への曲げ剛性が低減されていると、この光ケーブルが意図した方向以外の方向、すなわち、一対の抗張力体の並列方向に屈曲された場合に、この一対の抗張力体を含む光ケーブルと光コネクタとの接続部が破損する虞がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、光ケーブルが意図した方向以外の方向に屈曲されることを抑制することができる光コネクタ用ブーツを提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、光ケーブルと光コネクタとの接続部の破損を抑制することができる光ケーブルアッセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の光コネクタ用ブーツは、光ケーブルの先端側に接続された光コネクタの後端側に固定される光コネクタ用ブーツであって、前記光コネクタの後端から前記光コネクタの軸方向に沿って突出される長手状に形成されると共に、前記光ケーブルが挿通される孔部を有して構成され、且つ、可撓性材料により形成されたブーツ本体を有し、前記ブーツ本体には、前記ブーツ本体の長手方向と直交する第一直交方向における前記孔部に対する両側に、前記長手方向及び前記第一直交方向とそれぞれ直交する第二直交方向に沿って延びると共に溝長手方向両端部及び溝深さ方向一端部が前記ブーツ本体の外周面にて開口された主溝が前記長手方向に間隔を空けて複数形成され、前記複数の主溝のうち少なくとも前記ブーツ本体の先端側に位置する主溝は、溝深さ方向他端部が前記外周面と前記孔部との間で終端された構成とされている。
【0010】
この光コネクタ用ブーツによれば、ブーツ本体に形成された複数の主溝によって第一直交方向におけるブーツ本体の曲げ剛性が低減されているので、このブーツ本体に挿通された光ケーブルを第一直交方向に屈曲させることができる。
【0011】
一方、複数の主溝のうち少なくともブーツ本体の先端側に位置する主溝は、溝深さ方向他端部が外周面と孔部との間で終端されている。従って、第二直交方向におけるブーツ本体の曲げ剛性が確保されているので、このブーツ本体に挿通された光ケーブルが第二直交方向に屈曲されることを抑制することができる。
【0012】
このように、この光コネクタ用ブーツによれば、光ケーブルが意図した方向である第一直交方向以外の方向、すなわち、第二直交方向に屈曲されることを抑制することができる。
【0013】
請求項2に記載の光コネクタ用ブーツは、請求項1に記載の光コネクタ用ブーツにおいて、前記ブーツ本体には、少なくとも前記長手方向に隣り合う前記主溝間に、前記第一直交方向に沿って延びると共に溝長手方向両端部及び溝深さ方向一端部が前記ブーツ本体の外周面にて開口された肉抜き溝がそれぞれ形成された構成とされている。
【0014】
この光コネクタ用ブーツによれば、ブーツ本体に形成された複数の肉抜き溝によって、第一直交方向におけるブーツ本体の曲げ剛性がさらに低減されている。従って、このブーツ本体に挿通された光ケーブルを第一直交方向により一層容易に屈曲させることができる。
【0015】
請求項3に記載の光コネクタ用ブーツは、請求項2に記載の光コネクタ用ブーツにおいて、前記各肉抜き溝は、溝深さ方向他端部が前記孔部と連通された構成とされている。
【0016】
この光コネクタ用ブーツによれば、各肉抜き溝は、溝深さ方向他端部が孔部と連通されているので、これにより、第一直交方向におけるブーツ本体の曲げ剛性をより一層低減することができる。
【0017】
また、前記課題を解決するために、請求項4に記載の光ケーブルアッセンブリは、光ファイバ心線及び抗張力体を被覆する被覆材から前記光ファイバ心線が露出されると共に少なくとも前記光ファイバ心線の前記被覆材からの露出範囲において前記抗張力体が複数の抗張力部に分離された露出部を先端側に有する光ケーブルと、前記露出部の先端側と接続された光コネクタと、前記光コネクタの後端側に固定された光コネクタ用ブーツと、を備え、前記光コネクタ用ブーツは、前記光コネクタの後端から前記光コネクタの軸方向に沿って突出された長手状に形成されると共に、前記光ケーブルにおける前記露出部の後端側を少なくとも含む部分が挿通された孔部を有して構成され、且つ、可撓性材料により形成されたブーツ本体を有し、前記ブーツ本体には、前記ブーツ本体の長手方向及び前記一対の抗張力体の並列方向とそれぞれ直交する方向における前記孔部に対する両側に、前記並列方向に沿って延びると共に溝長手方向両端部及び溝深さ方向一端部が前記ブーツ本体の外周面にて開口された主溝が前記長手方向に間隔を空けて複数形成され、前記複数の主溝のうち少なくとも前記露出部の後端側と前記長手方向にオーバーラップする範囲内にある主溝は、溝深さ方向他端部が前記外周面と前記孔部との間で終端された構成とされている。
【0018】
この光ケーブルアッセンブリによれば、光コネクタ用ブーツのブーツ本体に形成された複数の主溝によって上述の直交する方向におけるブーツ本体の曲げ剛性が低減されているので、このブーツ本体に挿通された光ケーブルを上述の直交する方向に屈曲させることができる。
【0019】
一方、複数の主溝のうち少なくとも露出部の後端側とブーツ本体の長手方向にオーバーラップする範囲内にある主溝は、溝深さ方向他端部がブーツ本体の外周面と孔部との間で終端されている。従って、一対の抗張力体の並列方向におけるブーツ本体の曲げ剛性が確保されているので、このブーツ本体に挿通された光ケーブルが一対の抗張力体の並列方向に屈曲されることを抑制することができる。
【0020】
このように、この光ケーブルアッセンブリによれば、光ケーブルが意図した方向(すなわち、ブーツ本体の長手方向及び一対の抗張力体の並列方向とそれぞれ直交する方向)以外の方向(すなわち、一対の抗張力体の並列方向)に屈曲されることを抑制することができる。これにより、この光ケーブルと光コネクタとの接続部が破損することを抑制することができる。
【0021】
また、上述のように、複数の主溝のうち少なくとも露出部の後端側と長手方向にオーバーラップする範囲内にある主溝は、溝深さ方向他端部が外周面と孔部との間で終端されている。従って、この光ファイバ心線が外部に晒されることを防止して、この光ファイバ心線を保護することができる。
【0022】
請求項5に記載の光ケーブルアッセンブリは、請求項4に記載の光ケーブルアッセンブリにおいて、前記ブーツ本体には、少なくとも前記長手方向に隣り合う前記主溝間に、前記直交する方向に沿って延びると共に溝長手方向両端部及び溝深さ方向一端部が前記ブーツ本体の外周面にて開口された肉抜き溝がそれぞれ形成された構成とされている。
【0023】
この光ケーブルアッセンブリによれば、ブーツ本体に形成された複数の肉抜き溝によって、上述の直交する方向におけるブーツ本体の曲げ剛性がさらに低減されている。従って、このブーツ本体に挿通された光ケーブルを上述の直交する方向により一層容易に屈曲させることができる。
【0024】
請求項6に記載の光ケーブルアッセンブリは、請求項5に記載の光ケーブルアッセンブリにおいて、前記露出部は、それぞれ前記抗張力部を被覆すると共に、前記被覆材が前記光ケーブルの先端から軸方向に沿って引き裂かれて形成された一対の被覆部を有し、前記各肉抜き溝は、それぞれ溝深さ方向他端部に前記孔部との連通口を有し、前記各連通口は、前記被覆部によって前記ブーツ本体の内側から塞がれた構成とされている。
【0025】
この光ケーブルアッセンブリによれば、各肉抜き溝は、溝深さ方向他端部が孔部と連通されているので、これにより、上述の直交する方向におけるブーツ本体の曲げ剛性をより一層低減することができる。
【0026】
また、各肉抜き溝は、溝深さ方向他端部が孔部と連通されているが、この各肉抜き溝の孔部との連通口は、被覆部によってブーツ本体の内側から塞がれている。従って、この光ファイバ心線が外部に晒されることを防止して、この光ファイバ心線を保護することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上詳述したように、本発明の光コネクタ用ブーツによれば、光ケーブルが意図した方向以外の方向に屈曲されることを抑制することができる。
【0028】
また、本発明の光ケーブルアッセンブリによれば、光ケーブルと光コネクタとの接続部が破損することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第一実施形態に係る光ケーブルアッセンブリの斜視図である。
【図2】図1に示される光ケーブルアッセンブリからスライダ及びブーツを取り外した状態を示す図である。
【図3】図1に示される光ケーブルの断面図である。
【図4】図1に示される光ケーブルアッセンブリの側面断面図である。
【図5】図1に示される光ケーブルアッセンブリの平面断面図である。
【図6】(A)は図1に示される光コネクタ用ブーツの先端側から見た斜視図、(B)は図1に示される光コネクタ用ブーツの後端側から見た斜視図である。
【図7】(A)は図1に示される光コネクタ用ブーツの平面図、(B)は図1に示される光コネクタ用ブーツの底面図である。
【図8】(A)は図1に示される光コネクタ用ブーツの左側面図、(B)は図1に示される光コネクタ用ブーツの右側面図である。
【図9】(A)は図1に示される光コネクタ用ブーツの側面断面図、(B)は図1に示される光コネクタ用ブーツの平面断面図、(C)は図1に示される光コネクタの正面断面図である。
【図10】図1に示される光ケーブルアッセンブリにおいて光ケーブルを下側に屈曲させた状態を示す図である。
【図11】本発明の第二実施形態に係る光ケーブルアッセンブリの側面断面図である。
【図12】図11に示される光ケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第一実施形態]
はじめに、本発明の第一実施形態に係る光ケーブルアッセンブリ10について説明する。
【0031】
なお、各図において、矢印FR及び矢印RRは光コネクタ14の接続方向の前側及び後側をそれぞれ示しており、矢印X、矢印Y、矢印Zは、光コネクタ14が相手側の光コネクタと水平方向に沿って接続された場合の左右方向、前後方向、上下方向をそれぞれ示している。
【0032】
図1に示されるように、本発明の第一実施形態に係る光ケーブルアッセンブリ10は、光ケーブル12と、光コネクタ14と、光コネクタ用ブーツ16とを主要な構成として備えている。
【0033】
光ケーブル12は、図3に示されるように、支持線18と、光ファイバ心線20と、一対の抗張力体22と、被覆材26(シース)とによって構成されている。支持線18は、鋼線により構成されており、光ファイバ心線20は、単心の光ファイバ又は多心のテープファイバ等により構成されている。
【0034】
一対の抗張力体22は、光ファイバ心線20に対する両側に光ファイバ心線20と並列に設けられている。被覆材26は、可撓性を有する合成樹脂等により構成されており、支持線18、光ファイバ心線20、一対の抗張力体22を一体に被覆している。
【0035】
被覆材26には、一対の抗張力体22の間に光ケーブル12の軸方向に沿って薄肉部28が形成されると共に、支持線18と一方の抗張力体22との間に光ケーブル12の軸方向に沿って薄肉部30が形成されている。そして、この光ケーブル12では、被覆材26を薄肉部28,30に沿ってそれぞれ引き裂くことが可能となっている。
【0036】
また、この光ケーブル12の先端側では、被覆材26が上述の薄肉部28に沿って引き裂かれることにより、図5に示されるように、この被覆材26は、一方の抗張力体22の先端側を構成する抗張力部22Aを被覆する被覆部26Aと、他方の抗張力体22の先端側を構成する抗張力部22Bを被覆する被覆部26Bとに分離されている。
【0037】
さらに、この光ケーブル12の先端側では、上述の如く被覆材26が光ケーブル12の先端から軸方向に沿って引き裂かれることにより、この被覆材26から光ファイバ心線20が露出されている。つまり、この被覆材26から光ファイバ心線20が露出された光ケーブル12の先端側は、露出部36とされている。
【0038】
また、一対の抗張力体22及び被覆材26の先端側は、切断除去されており、光ファイバ心線20の先端側は、この一対の抗張力体22及び被覆材26の先端から突出されている。さらに、この一対の抗張力体22及び被覆材26の先端から突出された光ファイバ心線20の突出部分の先端側は、光ファイバ心線20の被覆が除去されることにより裸ファイバが露出されている。なお、支持線18は、図2に示されるように、光コネクタ14の手前で切断除去されている。
【0039】
光コネクタ14は、例えば、SC形光コネクタとされており、図4,図5に示されるように、フェルール38と、プラグフレーム40と、固定部材42と、スプリング44と、把持部材46と、スライダ48とを有して構成されている。
【0040】
フェルール38は、ファイバ穴を有して構成されており、このファイバ穴には、光ファイバ心線20の先端側の裸ファイバが挿入されている。そして、この裸ファイバは、ファイバ穴の内周面に接着固定されている。
【0041】
プラグフレーム40及び固定部材42は、筒状に形成されており、互いに固定されている。このプラグフレーム40及び固定部材42の内側には、上述のフェルール38が軸方向に移動可能に収容されており、スプリング44は、プラグフレーム40及び固定部材42の内側に収容された状態でフェルール38を固定部材42に対して光コネクタ14の先端側に付勢している。
【0042】
また、固定部材42の後端側には、支持部50が形成されており、把持部材46は、環状に構成されると共に、支持部50の周囲に配置されている。
【0043】
そして、この光ケーブルアッセンブリ10では、一方の抗張力部22Aの先端側と、他方の抗張力部22Bの先端側とが支持部50に対する両側に配置された状態で、この一対の抗張力部22A,22Bの先端側が各被覆部26A,26Bを介して支持部50及び把持部材46によって把持されている。これにより、光ケーブル12の先端側に光コネクタ14が接続されている。
【0044】
また、プラグフレーム40の外側には、スライダ48がスライド可能に設けられている。そして、この光ケーブルアッセンブリ10では、スライダ48のスライドを伴って光コネクタ14が相手側の光コネクタに対して脱着される構成とされている。
【0045】
なお、この光ケーブルアッセンブリ10では、上述の如く露出部36の先端側36Aが光コネクタ14と接続されており、この光コネクタ14と接続された先端側36Aを除く露出部36の後端側36Bは、光コネクタ14の後端から突出されている。
【0046】
また、この光ケーブルアッセンブリ10では、光コネクタ14が相手側の光コネクタと水平方向に沿って接続された場合に、一対の抗張力体22が光コネクタ14の左右方向(X軸方向)に並んで配置されるように、光ケーブル12が光コネクタ14と接続されている。
【0047】
光コネクタ用ブーツ16は、コネクタ固定部52と、ブーツ本体54とを有して構成されており、全体的に可撓性材料により形成されると共に、断面略四角形状に形成されている。コネクタ固定部52は、孔部56を有する筒状に形成されており、この孔部56の内周面は、固定部材42及び把持部材46の各外周面と嵌合されている。そして、これにより、光コネクタ用ブーツ16は、光コネクタ14の後端側に固定されている。
【0048】
ブーツ本体54は、コネクタ固定部52の後端側に一体に形成されている。このブーツ本体54は、光コネクタ14の後端から光コネクタ14の軸方向に沿って突出された長手状に形成されると共に、後端側に向かうに従って縮径するテーパ状に形成されている。
【0049】
また、このブーツ本体54には、上述の孔部56と連通する孔部58が長手方向(Y軸方向)に沿って形成されている。このブーツ本体54の長手方向の長さは、上述の露出部36の後端側36Bの長さよりも長くなっており、ブーツ本体54の孔部58には、この光ケーブル12における露出部36の後端側36Bを含む部分12Aが挿通されている。
【0050】
また、図6〜図9に示されるように、このブーツ本体54には、このブーツ本体54の長手方向(Y軸方向)及び上述の一対の抗張力体22の並列方向(X軸方向)とそれぞれ直交する方向(第一直交方向/Z軸方向)における孔部58に対する両側(上面54A及び下面54B)に、ブーツ本体54の長手方向に間隔を空けて複数の主溝60が形成されている。
【0051】
各主溝60は、一対の抗張力体22の並列方向(第二直交方向/X軸方向)に沿って延びており、溝長手方向両端部がブーツ本体54の外周面(両側の側面54C,54D)にて開口されている。また、この各主溝60は、溝深さ方向一端部がブーツ本体54の外周面(上面54A又は下面54B)にて開口され、溝深さ方向他端部がブーツ本体54の外周面(下面54B又は上面54A)と孔部58との間で終端されている。
【0052】
この複数の主溝60のうちブーツ本体54の先端側に形成された主溝60A〜60Dは、図4に示されるように、上述の露出部36の後端側36Bとブーツ本体54の長手方向にオーバーラップする範囲内に位置されている(つまり、露出部36の後端側36Bの長手方向における範囲内に位置されている)。
【0053】
一方、この複数の主溝60のうちブーツ本体54の後端側に形成された主溝60E〜60Gは、上述の露出部36の後端側36Bとブーツ本体54の長手方向にオーバーラップする範囲外に位置されている(つまり、露出部36の後端側36Bからブーツ本体54の長手方向に外れた位置に位置されている。
【0054】
なお、孔部58に対する一方側(上面54A)に形成された主溝60と、孔部58に対する他方側(下面54B)に形成された主溝60とは、ブーツ本体54の長手方向に整合する位置に形成されている。
【0055】
また、図6〜図9に示されるように、このブーツ本体54の両側の側面54C,54Dには、ブーツ本体54の長手方向に隣り合う主溝60間に肉抜き溝62A〜62Fが形成されると共に、最後部の主溝60Gに対する後端側に肉抜き溝62Gが形成されている。
【0056】
各肉抜き溝62は、ブーツ本体54の長手方向(Y軸方向)及び上述の一対の抗張力体22の並列方向(X軸方向)とそれぞれ直交する方向(Z軸方向)に沿って延びており、溝長手方向両端部がブーツ本体54の外周面(上面54A及び下面54B)にて開口されている。
【0057】
また、各肉抜き溝62は、溝深さ方向一端部がブーツ本体54の外周面(側面54C,54D)にて開口され、溝深さ方向他端部が孔部58と連通されている。なお、各肉抜き溝62における溝深さ方向他端部(底部)は、溝長手方向中央部の一部が連通口64として孔部58と連通されている。
【0058】
そして、この光ケーブルアッセンブリ10では、図5に示されるように、光コネクタ用ブーツ16が光コネクタ14に固定された状態では、各肉抜き溝62における孔部58との連通口64は、上述の一対の被覆部26A,26Bによってブーツ本体54の内側からそれぞれ塞がれている。
【0059】
また、この光ケーブルアッセンブリ10では、図10に示されるように、光コネクタ14に対して光ケーブル12が上下方向(Z軸方向)に略直角に屈曲された状態では、この光ケーブル12が屈曲された側に位置する複数の主溝60が閉じる方向に変形される構成とされている。
【0060】
また、この複数の主溝60のうち少なくともブーツ本体54の先端側に位置する主溝60A〜60Eでは、この主溝60A〜60Eの互いに対向する内壁面が当接されて、光ケーブル12が光コネクタ14に対して略直角以上に屈曲されることが抑制される構成とされている。
【0061】
なお、光コネクタ用ブーツ16は、例えば、曲げ弾性率が100MPa以上で硬度がショア硬度55以上の樹脂材料によって形成されている。
【0062】
次に、本発明の第一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0063】
この光ケーブルアッセンブリ10によれば、光コネクタ用ブーツ16のブーツ本体54には、光コネクタ14が相手側の光コネクタと水平方向に沿って接続された場合の上下方向(Z軸方向)における孔部58に対する両側に、ブーツ本体54の長手方向に間隔を空けて複数の主溝60が形成されている。
【0064】
この各主溝60は、一対の抗張力体22の並列方向(X軸方向)に沿って延びると共に、溝長手方向両端部及び溝深さ方向一端部がブーツ本体54の外周面(両側の側面54C,54D及び上面54A又は下面54B)にて開口されている。
【0065】
従って、この複数の主溝60によって上下方向におけるブーツ本体54の曲げ剛性が低減されているので、このブーツ本体54に挿通された光ケーブル12を上下方向に屈曲させることができる。
【0066】
一方、複数の主溝60は、溝深さ方向他端部がブーツ本体54の外周面(下面54B又は上面54A)と孔部58との間で終端されている。従って、一対の抗張力体22の並列方向(X軸方向)におけるブーツ本体54の曲げ剛性が確保されているので、このブーツ本体54に挿通された光ケーブル12が一対の抗張力体22の並列方向に屈曲されることを抑制することができる。
【0067】
このように、この光ケーブルアッセンブリ10によれば、光ケーブル12が意図した方向である上下方向以外の方向、すなわち、一対の抗張力体22の並列方向(左右方向)に屈曲されることを抑制することができる。これにより、この光ケーブル12と光コネクタ14との接続部(特に、一対の抗張力部22A,22Bが固定部材42及び把持部材46によって把持された部分)が破損することを抑制することができる。
【0068】
また、ブーツ本体54には、複数の肉抜き溝62が形成されており、この複数の肉抜き溝62によって上下方向におけるブーツ本体54の曲げ剛性がさらに低減されている。
【0069】
つまり、上述のように、主溝60の溝深さ方向他端部が外周面と孔部58との間で終端されていると、上下方向における主溝60間の寸法L(図9(C)参照)が大きくなり、その結果、ブーツ本体54の上下方向における曲げ剛性が高くなるが、ブーツ本体54の側面54C,54Dに肉抜き溝62が形成されることにより、ブーツ本体54の上下方向における曲げ剛性が低減されている。従って、このブーツ本体54に挿通された光ケーブル12を上下方向により一層容易に屈曲させることができる。
【0070】
さらに、各肉抜き溝62は、溝深さ方向他端部が孔部58と連通されているので、これにより、ブーツ本体54の上下方向における曲げ剛性をより一層低減することができる。
【0071】
しかも、上述のように、複数の主溝60は、溝深さ方向他端部が外周面と孔部58との間で終端されている。従って、この光ファイバ心線20が外部に晒されることを防止して、この光ファイバ心線20を保護することができる。
【0072】
また、各肉抜き溝62は、溝深さ方向他端部が孔部58と連通されているが、この各肉抜き溝62の孔部58との連通口64は、被覆部26A,26Bによってブーツ本体54の内側から塞がれている。従って、この光ファイバ心線20が外部に晒されることを防止して、この光ファイバ心線20を保護することができる。
【0073】
次に、本発明の第一実施形態の変形例について説明する。
【0074】
上記実施形態において、光コネクタ14は、一例として、SC形光コネクタとされていたが、その他の形式の単心光コネクタ、又は、多心光コネクタとされていても良い。
【0075】
また、光コネクタ用ブーツ16は、断面略四角形状に形成されていたが、断面略円形状に形成されていても良い。
【0076】
また、ブーツ本体54の長手方向の長さは、露出部36の後端側36Bの長さよりも長くなっていたが、露出部36の後端側36Bの長さと同一とされていても良い。
【0077】
また、全ての主溝60の溝深さ方向他端部が外周面と孔部58との間で終端されていたが、複数の主溝60のうち露出部36の後端側36Bとブーツ本体54の長手方向にオーバーラップする範囲内にある主溝60A〜60Dのみ、溝深さ方向他端部が外周面と孔部58との間で終端され、それ以外の主溝60E〜60Gは、溝深さ方向他端部が孔部58と連通されていても良い。
【0078】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る光ケーブルアッセンブリ110について説明する。
【0079】
本発明の第二実施形態に係る光ケーブルアッセンブリ110は、光ケーブル112(光コード)と、光コネクタ14と、光コネクタ用ブーツ16とを主要な構成として備えている。なお、光コネクタ14及び光コネクタ用ブーツ16については、上述の本発明の第一実施形態における構成と同様の構成とされている。
【0080】
光ケーブル112は、図12に示されるように、光ファイバ心線120と、この光ファイバ心線120を収容する被覆材126(シース)と、この光ファイバ心線120と被覆材126との間に設けられた抗張力体122とによって構成されている。
【0081】
この光ケーブル112の先端側では、図11に示されるように、被覆材126が切断除去されることにより、この被覆材126の先端から光ファイバ心線120及び抗張力体122が露出されている。つまり、この被覆材126の先端から光ファイバ心線120及び抗張力体122が露出された光ケーブル112の先端側は、露出部136とされている。
【0082】
また、この被覆材126の先端から露出された光ファイバ心線120の露出部分の先端側では、被覆が除去されることにより裸ファイバが露出されている。この裸ファイバは、フェルール38に形成されたファイバ穴に挿入され、このファイバ穴の内周面に接着固定されている。
【0083】
そして、この光ケーブルアッセンブリ110では、被覆材126の先端から露出された抗張力体122が一対の抗張力部122A,122Bに分離されると共に、この一対の抗張力部122A,122Bが支持部50に対する両側に配置されている。そして、この状態で、この一対の抗張力部122A,122Bが支持部50と把持部材46とによって把持されることにより、光ケーブル112の先端側に光コネクタ14が接続されている。
【0084】
なお、図11においては、理解の容易のために、一対の抗張力部122A,122Bが上下方向(Z軸方向)にずれて配置されているように図示されているが、この光ケーブルアッセンブリ110では、光コネクタ14が相手側の光コネクタと水平方向に沿って接続された場合に、一対の抗張力部122A,122Bが光コネクタ14の左右方向(上述のX軸方向)に並んで配置されるように、光ケーブル112が光コネクタ14と接続されている。
【0085】
また、この光ケーブルアッセンブリ110では、上述の如く露出部136の先端側136Aが光コネクタ14と接続されており、この光コネクタ14と接続された先端側136Aを除く露出部136の後端側136Bは、光コネクタ14の後端から突出されている。そして、この光ケーブル112における露出部136の後端側136Bを含む部分112Aは、ブーツ本体54の孔部58に挿通されている。
【0086】
この光ケーブルアッセンブリ110によっても、上述の本発明の第一実施形態に係る光ケーブルアッセンブリ10と同様に、光コネクタ用ブーツ16を備えているので、光ケーブル112が意図した方向である上下方向以外の方向、すなわち、一対の抗張力部122A,122Bの並列方向(左右方向)に屈曲されることを抑制することができる。これにより、この光ケーブル112と光コネクタ14との接続部(特に、一対の抗張力部122A,122Bが固定部材42及び把持部材46によって把持された部分)が破損することを抑制することができる。
【0087】
また、ブーツ本体54には、複数の肉抜き溝62が形成されており、この複数の肉抜き溝62によって上下方向におけるブーツ本体54の曲げ剛性がさらに低減されている。従って、このブーツ本体54に挿通された光ケーブル112を上下方向により一層容易に屈曲させることができる。
【0088】
なお、各肉抜き溝62は、孔部58と連通する連通口64を有するが、この連通口64については上下方向におけるブーツ本体54の曲げ剛性を低減するために大きく形成する必要が無く小さく形成されている。従って、この連通口64が形成されていても、光ファイバ心線120の保護効果を維持することができる。
【0089】
以上、本発明の一実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0090】
10,110 光ケーブルアッセンブリ
12,112 光ケーブル
14 光コネクタ
16 光コネクタ用ブーツ
18 支持線
20,120 光ファイバ心線
22,122 抗張力体
22A,22B,122A,122B 抗張力部
26,126 被覆材
26A,26B 被覆部
36,136 露出部
36A,136A 露出部の先端側
36B,136B 露出部の後端側
54 ブーツ本体
54A 上面(外周面)
54B 下面(外周面)
54C,54D 側面(外周面)
58 孔部
60 主溝
62 肉抜き溝
64 連通口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ケーブルの先端側に接続された光コネクタの後端側に固定される光コネクタ用ブーツであって、
前記光コネクタの後端から前記光コネクタの軸方向に沿って突出される長手状に形成されると共に、前記光ケーブルが挿通される孔部を有して構成され、且つ、可撓性材料により形成されたブーツ本体を有し、
前記ブーツ本体には、前記ブーツ本体の長手方向と直交する第一直交方向における前記孔部に対する両側に、前記長手方向及び前記第一直交方向とそれぞれ直交する第二直交方向に沿って延びると共に溝長手方向両端部及び溝深さ方向一端部が前記ブーツ本体の外周面にて開口された主溝が前記長手方向に間隔を空けて複数形成され、
前記複数の主溝のうち少なくとも前記ブーツ本体の先端側に位置する主溝は、溝深さ方向他端部が前記外周面と前記孔部との間で終端されている、
光コネクタ用ブーツ。
【請求項2】
前記ブーツ本体には、少なくとも前記長手方向に隣り合う前記主溝間に、前記第一直交方向に沿って延びると共に溝長手方向両端部及び溝深さ方向一端部が前記ブーツ本体の外周面にて開口された肉抜き溝がそれぞれ形成されている、
請求項1に記載の光コネクタ用ブーツ。
【請求項3】
前記各肉抜き溝は、溝深さ方向他端部が前記孔部と連通されている、
請求項2に記載の光コネクタ用ブーツ。
【請求項4】
光ファイバ心線及び抗張力体を被覆する被覆材から前記光ファイバ心線が露出されると共に少なくとも前記光ファイバ心線の前記被覆材からの露出範囲において前記抗張力体が複数の抗張力部に分離された露出部を先端側に有する光ケーブルと、
前記露出部の先端側と接続された光コネクタと、
前記光コネクタの後端側に固定された光コネクタ用ブーツと、
を備え、
前記光コネクタ用ブーツは、前記光コネクタの後端から前記光コネクタの軸方向に沿って突出された長手状に形成されると共に、前記光ケーブルにおける前記露出部の後端側を少なくとも含む部分が挿通された孔部を有して構成され、且つ、可撓性材料により形成されたブーツ本体を有し、
前記ブーツ本体には、前記ブーツ本体の長手方向及び前記一対の抗張力体の並列方向とそれぞれ直交する方向における前記孔部に対する両側に、前記並列方向に沿って延びると共に溝長手方向両端部及び溝深さ方向一端部が前記ブーツ本体の外周面にて開口された主溝が前記長手方向に間隔を空けて複数形成され、
前記複数の主溝のうち少なくとも前記露出部の後端側と前記長手方向にオーバーラップする範囲内にある主溝は、溝深さ方向他端部が前記外周面と前記孔部との間で終端されている、
光ケーブルアッセンブリ。
【請求項5】
前記ブーツ本体には、少なくとも前記長手方向に隣り合う前記主溝間に、前記直交する方向に沿って延びると共に溝長手方向両端部及び溝深さ方向一端部が前記ブーツ本体の外周面にて開口された肉抜き溝がそれぞれ形成されている、
請求項4に記載の光ケーブルアッセンブリ。
【請求項6】
前記露出部は、それぞれ前記抗張力部を被覆すると共に前記被覆材が前記光ケーブルの先端から軸方向に沿って引き裂かれて形成された一対の被覆部を有し、
前記各肉抜き溝は、それぞれ溝深さ方向他端部に前記孔部との連通口を有し、
前記各連通口は、前記被覆部によって前記ブーツ本体の内側から塞がれている、
請求項5に記載の光ケーブルアッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−2705(P2011−2705A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146512(P2009−146512)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】