説明

光スイッチ装置

【課題】角度操作器の負荷の増大や特性の低下が抑制された光スイッチ装置を提供すること。
【解決手段】複数のポートが所定の配列方向に沿って配列した光入出力ポートと、光入出力ポートのいずれかのポートから入力した光の光路を切り換えて光入出力ポートの他のいずれかのポートに向けて出力する角度操作器と、光入出力ポートと角度操作器との間に配置され、光入出力ポートと角度操作器とを光学的に結合させる集光レンズ系と、光入出力ポートと集光レンズ系との間に配置され、光入出力ポート側から入力された光のビーム形状を光入出力ポートのポート配列方向に対して縮小し、該光の光路を集光レンズ系の光軸に近づけるように変位させて、光入出力ポートにおけるポートの配列間隔よりも、集光レンズ系の角度操作器側の直後での光軸に垂直の平面を通過する光のビームの配列間隔が小さくするアナモルフィック光学系と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光スイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の光通信システムは、その形態がpoint−to−point型から、リング型またはメッシュ型のネットワークへと発展しつつある。このような形態のネットワークのノードには、任意の信号光を任意のポートに入出力させて、信号光の経路を任意に変更するための光スイッチ装置が必要とされる。
【0003】
特に、互いに異なる波長の信号光が波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing)されたWDM信号光を用いる場合は、任意の波長の信号光に対して任意に経路を変更できる波長選択光スイッチ装置が必要とされる(たとえば、非特許文献1参照)。
【0004】
光スイッチ装置には、信号光の経路を切り替えるために、反射ミラーを用いたもの(たとえば非特許文献1参照)や、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)を用いたものがある(たとえば特許文献1、2参照)。LCOSは、入射された光の位相を液晶によって変調し、回折させることができる空間光変調器である。したがって、LCOSを用いた光スイッチ装置では、或る経路から入力された信号光を、LCOSによって回折させて、特定の経路に出力することにより、光スイッチ動作を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0067611号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0276537号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Dan M. Marom “Wavelength Selective 1xK Switching Systems”, Optical MEMS 2003 P.43-44 TuA1(Invited).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、光スイッチ装置において、光の光路を切り換える角度を所望の値に操作する角度操作器である反射ミラーやLCOSで切り換える光路の角度は小さいことが好ましい。たとえば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems、微少電気機械システム)を用いた反射ミラーを用いる場合は、光路の切り換えの角度、すなわち反射ミラーによる反射角度を大きくしようとすると、反射ミラーの駆動電圧を高くしなければならない場合や、反射ミラーがこれを可動させるための機構にあたらないようにするために機構が大型化する場合がある。一方、LCOSを用いる場合は、その回折角度を大きくしようとすると、LCOSの画素ピッチを小さくしなければならない場合や、回折効率が悪くなる場合がある。このように、光路の切り換え角度が大きいと角度操作器の負荷が大きくなったり、特性の低下が起こったりする場合がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、角度操作器の負荷の増大や特性の低下が抑制された光スイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光スイッチ装置は、外部から光が入力される、または外部に光を出力する複数のポートが所定の配列方向に沿って配列した光入出力ポートと、前記光入出力ポートのいずれかのポートから入力した光の光路を切り換えて前記光入出力ポートの他のいずれかのポートに向けて出力する角度操作器と、前記光入出力ポートと前記角度操作器との間に配置され、前記光入出力ポートと前記角度操作器とを光学的に結合させる集光レンズ系と、前記光入出力ポートと前記集光レンズ系との間に配置され、前記光入出力ポート側から入力された光のビーム形状を前記光入出力ポートのポート配列方向に対して縮小し、かつ該光の光路を前記集光レンズ系の光軸に近づけるように変位させて、前記光入出力ポートにおけるポートの配列間隔よりも、前記集光レンズ系の前記角度操作器側の直後での前記光軸に垂直の平面を通過する前記光のビームの配列間隔を小さくするアナモルフィック光学系と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る光スイッチ装置は、上記の発明において、前記集光レンズ系は単レンズ系であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る光スイッチ装置は、上記の発明において、前記集光レンズ系は複合レンズ系であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る光スイッチ装置は、上記の発明において、前記集光レンズ系の口径が、前記光入出力ポートにおけるポートの配列幅よりも小さいことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る光スイッチ装置は、上記の発明において、前記アナモルフィック光学系はシリンドリカルレンズで構成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る光スイッチ装置は、上記の発明において、前記アナモルフィック光学系はアナモルフィックプリズムペアで構成されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る光スイッチ装置は、上記の発明において、前記角度操作器は反射ミラーで構成されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る光スイッチ装置は、上記の発明において、前記角度操作器はLCOSで構成されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る光スイッチ装置は、上記の発明において、前記光入出力ポートと前記集光レンズ系の最も前記角度操作器側に配置されたレンズとの間に設けられた光分散素子を備え、波長選択光スイッチとして機能することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る光スイッチ装置は、上記の発明において、前記光分散素子は透過型の回折格子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光路の切り換え角度が小さい光スイッチ装置を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、実施の形態1に係る光スイッチ装置の模式的な構成図である。
【図2】図2は、図1のA−A線、B−B線断面を通過する各信号光のビーム形状を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態2に係る光スイッチ装置の模式的な構成図である。
【図4】図4は、図3に示す光スイッチ装置をx軸方向正の向きから見た図である。
【図5】図5は、実施の形態3に係る光スイッチ装置の模式的な構成図である。
【図6】図6は、図5に示す光スイッチ装置において角度操作器を構成するLCOSに入射する信号光のビーム形状の好ましい一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本発明に係る光スイッチ装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各層の厚みと幅との関係、各層の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、図中、適宜xyz座標系を用いて方向を説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る光スイッチ装置の模式的な構成図である。図1は、xyz座標系でx軸方向正の向きから見たものである。図1に示すように、この光スイッチ装置10は、光入出力ポート11と、角度操作器12と、集光レンズ系13と、アナモルフィック光学系14とを備えている。なお、実際にはアナモルフィック光学系14において光路がz方向にシフトすることがあるが、簡略化のために直列に配置して示している。
【0023】
光入出力ポート11は、光ファイバポート111、112、113、114、115と、複数のコリメータレンズからなるコリメータレンズ群116と、光ファイバポート111〜115とコリメータレンズ群116とを支持する支持部117とを備えている。光ファイバポート111〜115は、所定の配列方向(図中z軸方向)に沿って、等間隔Dでアレイ状に配列されている。また、光ファイバポート111と光ファイバポート113との間隔をLとすると、L=2Dである。光ファイバポート111〜115は、外部から光が入力される、または外部に光を出力するものである。なお、光スイッチ装置10に入力または出力される光は特に限定されないが、たとえば波長1520〜1620nmの光通信用の信号光である。
【0024】
コリメータレンズ群116は、各光ファイバポート111〜115に対応して配置されるコリメータレンズから構成されている。コリメータレンズ群116は、各光ファイバポート111〜115から出力した光を平行光にする、または、入力された平行光を各光ファイバポート111〜115に集光して結合させる機能を有する。
【0025】
角度操作器12は、反射ミラーがx軸に平行な回転軸の周りに所定の角度だけ回転するように構成されている。角度操作器12は、光入出力ポート11のいずれかの光ファイバポートから入力した光を反射して光入出力ポート11の他のいずれかの光ファイバポートに向けて出力する機能を有する。
【0026】
集光レンズ系13は、光入出力ポート11と角度操作器12とを光学的に結合するものである。集光レンズ系13は、単レンズ系であり、光入出力ポート11と角度操作器12との間に配置される。角度操作器12の位置は、ほぼ集光レンズ系13の焦点の位置である。図1、2では集光レンズ系13の光軸を光軸131で示している。
【0027】
アナモルフィック光学系14は、光入出力ポート11と集光レンズ系13との間に配置されている。アナモルフィック光学系14は、光入出力ポート11側から入力された光のビーム形状を光入出力ポート11のポート配列方向(すなわちz方向)に対して縮小するとともに、この光の光路を集光レンズ系13の光軸131に近づけるように変位させる機能を有する。また、アナモルフィック光学系14は、光相反性を有するため、角度操作器12側から入力された光のビーム形状をz方向に対して拡大するともに、この光の光路を集光レンズ系13の光軸131から遠ざけるように変位させる機能を有する。アナモルフィック光学系14はアナモルフィックプリズムペアで構成されているが、たとえばシリンドリカルレンズなどの他のアナモルフィック光学系で構成してもよい。
【0028】
この光スイッチ装置10では、集光レンズ系13の光軸131と一致するように配置された光ファイバポート113が、外部から光が入力される共通の光ファイバポート(Comポート)として設定されており、その他の4つの光ファイバポート111、112、114、115が、外部に光を出力する光ファイバポートとして設定されている。すなわち、この光スイッチ装置10は1×4の光スイッチとして機能する。
【0029】
つぎに、この光スイッチ装置10の動作について、図1をもとに説明する。まず、光ファイバポート113は、外部から或る波長の信号光L1が入力されると、コリメータレンズ群116が、入力された信号光L1を、ビーム形状が略円形の略平行光にする。アナモルフィック光学系14は、略平行光にされた信号光L1のビーム形状をz方向に対して縮小し、楕円形にする。集光レンズ系13は、ビーム形状が縮小された、光軸131を通過する信号光L1を角度操作器12に集光させる。角度操作器12は、回転角度が調整されて、集光された信号光L1を信号光L2として反射角θ1で反射させる。集光レンズ系13は、反射された信号光L2を略平行光にするとともに、光路を信号光L1の光路と略平行にする。
【0030】
つぎに、アナモルフィック光学系14は、光相反性によって、信号光L2のビーム形状をz方向に対して拡大して略円形に戻すとともに、信号光L2の光路を集光レンズ系13の光軸131から遠ざけるように変位させる。その後、信号光L2はコリメータレンズ群116のうち光ファイバポート111に対応するコリメータレンズに入力する。この対応するコリメータレンズは、信号光L2を集光し、光ファイバポート111に結合させる。光ファイバポート111は結合された光を外部に出力する。以上のようにして、この光スイッチ装置10は、Comポートである光ファイバポート113から入力された信号光の経路を光ファイバポート111に切り換えることができる。
【0031】
また、光ファイバポート113から入力された信号光の経路を他の光ファイバポート112、114、115にそれぞれ切り換える場合には、光スイッチ装置10は上記の動作において、角度操作器12が、その回転角度が調整されて信号光L1を所定の方向に、それぞれ信号光L3、L4、L5として反射させることによって、所望の経路の切り換えを実現することができる。
【0032】
上記動作において、図1のA−A線断面、B−B線断面を通過する各信号光L1、L2、L3、L4、L5のビーム形状は図2に示すようになる。なお、A−A線断面、B−B線断面はいずれも集光レンズ系13の光軸131に垂直な平面である。A−A線断面は光入出力ポート11の直後に位置する。B−B線断面は集光レンズ系13の角度操作器12側の直後に位置する。
【0033】
図2に示すように、A−A線断面において、信号光L1、L2、L3、L4、L5のビームの配列間隔は、略等間隔であり光入出力ポート11における光ファイバポート111〜115の配列間隔と略同じDである。一方、B−B線断面においても、信号光L1、L2、L3、L4、L5のビームの配列間隔は略等間隔であるが、アナモルフィック光学系14の作用によりDよりも小さいdとなる。
【0034】
このように、本実施の形態1に係る光スイッチ装置10では、アナモルフィック光学系14の作用によって、少なくともアナモルフィック光学系14の透過直後、および集光レンズ系13の角度操作器12側の直後(すなわち角度操作器12に光を集光させるべきレンズ系の直後)での信号光L1、L2、L3、L4、L5のビームの配列間隔が、光入出力ポート11における光ファイバポート111〜115の配列間隔よりも小さくなるようにしている。その結果、信号光L1、L2、L3、L4、L5のビームは集光レンズ系13の光軸131の近傍に集まることになるので、角度操作器12が光を反射させるべき角度(たとえば図1の反射角θ1)は小さくなる。したがって、角度操作器12で反射ミラーを回転させるべき角度が小さくなり、その回転をさせるために必要な機構も小型化でき、その駆動電圧も低くなる。これによって、角度操作器12の負荷が軽減される。
【0035】
さらには、信号光L1、L2、L3、L4、L5のビームが集光レンズ系13の光軸131の近傍に集まることによって、信号光L1、L2、L3、L4、L5が集光レンズ系13から受ける収差の影響を抑制できる。その結果、光スイッチ装置10は良好な光学特性を有するものになる。また、集光レンズ系13の口径を光ファイバポート111〜115の配列幅(図1における2L=4d)よりも小さくできるので、集光レンズ系13を小型化できる。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態1に係る光スイッチ装置10は、角度操作器12の負荷の増大や特性の低下が抑制され、かつ良好な光学特性を有するものとなる。
【0037】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係る光スイッチ装置の模式的な構成図である。図3は、xyz座標系でz軸方向正の向きから見たものである。図4は、図3に示す光スイッチ装置をx軸方向正の向きから見た図である。図3、4に示すように、この光スイッチ装置20は、光入出力ポート11と、角度操作器22と、集光レンズ系13と、アナモルフィック光学系14と、光分散素子である回折格子25を備えている。なお、実際にはアナモルフィック光学系14によって光路がz方向にシフトすることがある、また、回折格子25によって光路は少し曲げられるので、各構成素子はxy平面内で角度を持って配置されるが、簡略化のために直列に配置して示している。
【0038】
光入出力ポート11、集光レンズ系13、およびアナモルフィック光学系14は図1に示す光スイッチ装置10が備えるものと同様のものである。
【0039】
角度操作器22は、x軸方向に沿って配列された4つの反射ミラー221、222、223、224がx軸に平行な回転軸の周りに所定の角度だけ回転するように構成されている。角度操作器22は、光入出力ポート11のいずれかのポートから入力した光を反射して光入出力ポート11の他のいずれかのポートに向けて出力する機能を有する。
【0040】
回折格子25は透過型の回折格子であり、光入出力ポート11と集光レンズ系13との間に設けられている。
【0041】
この光スイッチ装置20では、集光レンズ系13の光軸131と一致するように配置された光ファイバポート113が、外部から光が入力される共通の光ファイバポート(Comポート)として設定されており、その他の4つの光ファイバポート111、112、114、115が、外部に光を出力する光ファイバポートとして設定されている。また、回折格子25を備えることによって、光ファイバポート113から所定の波長の信号光が入力された場合に、光ファイバポート111、112、114、115のうちその波長を割り当てられた光ファイバポートからその信号光を出力するように動作できる。また、ファイバポート113から入力された信号光が互いに波長が異なる4つの信号光を含む4チャネルのWDM信号光である場合は、光ファイバポート111、112、114、115のうち各チャネルを割り当てられた光ファイバポートから、WDM信号光に含まれる各チャンネルの信号光を出力するように動作できる。すなわち、この光スイッチ装置20は1×4の波長選択光スイッチとして機能する。
【0042】
つぎに、この光スイッチ装置20の動作について、図3、4をもとに説明する。まず、光ファイバポート113は、外部から波長λ1の信号光L6が入力されると、コリメータレンズ群116が、入力された信号光L6を、ビーム形状が略円形の略平行光にする。つぎに、回折格子25は、略平行光にされた信号光L6をその波長に応じた回折角で回折する。アナモルフィック光学系14は、回折された信号光L6のビーム形状をz方向に対して縮小し、楕円形にする。集光レンズ系13は、ビーム形状が縮小された信号光L6を角度操作器22に集光させる。角度操作器22を構成する反射ミラー221は、その回転角度が調整されて、集光された信号光L6を信号光L7として反射角θ2で反射させる。集光レンズ系13は、反射された信号光L7を略平行光にするとともに、光路を信号光L6の光路と略平行にする。なお、図3上では反射前後の信号光L6と信号光L7との光路は略重なっている。
【0043】
つぎに、アナモルフィック光学系14は、光相反性によって、信号光L7のビーム形状をz方向に対して拡大して略円形に戻すとともに、信号光L7の光路を集光レンズ系13の光軸131から遠ざけるように変位させる。その後、信号光L7は回折格子25によって再び回折される。そして、コリメータレンズ群116のうち、波長λ1に割り当てられた光ファイバポート111に対応するコリメータレンズに入力する。この対応するコリメータレンズは、信号光L7を集光し、光ファイバポート111に結合させる。光ファイバポート111は結合された光を外部に出力する。
【0044】
以上のようにして、この光スイッチ装置20は、Comポートである光ファイバポート113から入力された信号光の経路をその波長λ1に割り当てられた光ファイバポート111に切り換えることができる。
【0045】
また、光スイッチ装置20の光ファイバポート113から入力された信号光L6の波長がλ2、λ3、またはλ4(但し、λ1、λ2、λ3、λ4は互いに異なる)である場合は、信号光L6は、回折格子25によって互いに異なる所定の回折角で回折されて、それぞれ信号光L8、L9、または信号光L10のようになる。その後は信号光L6と同様にアナモルフィック光学系14、集光レンズ系13と順次通過し、角度操作器22の対応する反射ミラー222、223、224のそれぞれによって所定の反射角で反射され、信号光L7と同様に再び集光レンズ系13、アナモルフィック光学系14、回折格子25を順次通過し、各波長λ2、λ3、またはλ4に割り当てられた光ファイバポート112、114、または光ファイバポート115から外部に出力する。
【0046】
さらには、光スイッチ装置20の光ファイバポート113から入力された信号光L6が波長λ1、λ2、λ3、λ4の信号光を含む4チャネルのWDM信号光である場合は、このWDM信号光に含まれる各波長の信号光は、各波長λ1、λ2、λ3、λ4に割り当てられた光ファイバポート111、112、114、115のそれぞれから外部に出力する。上記のようにして、光スイッチ装置20は、波長ごとに選択された所望の経路の切り換えを実現することができる。
【0047】
この光スイッチ装置20でも、実施の形態1に係る光スイッチ装置10と同様に、アナモルフィック光学系14の作用によって、少なくともアナモルフィック光学系14の透過直後、および集光レンズ系13の角度操作器12側の直後での、光軸131に垂直な面を通過する5つの信号光L6、L7、L8、L9、L10のビームの配列間隔が、光入出力ポート11における光ファイバポート111〜115の配列間隔よりも小さくなるようにしている。その結果、角度操作器22で反射ミラー221、222、223、224を回転させるべき角度が小さくなり、その回転をさせるために必要な機構も小型化でき、その駆動電圧も低くなる。これによって、角度操作器22の負荷が軽減される。
【0048】
さらには、信号光L6、L7、L8、L9、L10が集光レンズ系13から受ける収差の影響を抑制できる。その結果、光スイッチ装置20は良好な光学特性を有するものになる。また、集光レンズ系13の口径を光ファイバポート111〜115の配列幅よりも小さくできるので、集光レンズ系13を小型化できる。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態2に係る光スイッチ装置20は、角度操作器22の負荷の増大や特性の低下が抑制され、かつ良好な光学特性を有するものとなる。
【0050】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係る光スイッチ装置の模式的な構成図である。図3は、xyz座標系でx軸方向正の向きから見たものである。図5に示すように、この光スイッチ装置30は、図3、4に示す実施の形態2に係る光スイッチ装置20において、集光レンズ系13を集光レンズ系33に置き換え、角度操作器22を角度操作器32に置き換えた構成を有する。
【0051】
集光レンズ系33は、光入出力ポート11と角度操作器32とを光学的に結合するものである。集光レンズ系33は、2つのレンズを含む複合レンズ系であり、光入出力ポート11と角度操作器32との間に配置される。角度操作器32の位置は、ほぼ集光レンズ系33の焦点の位置である。図5では、集光レンズ系33の光軸を光軸331で示している。
【0052】
角度操作器32は、x軸方向に沿って配列された4つのLCOS321、322、323、324で構成されている。各LCOS321、322、323、324は、光入出力ポート11のいずれかのポートから入力した光を回折して光入出力ポート11の他のいずれかのポートに向けて出力する機能を有する。
【0053】
この光スイッチ装置30も、光スイッチ装置20と同様に動作する。すなわち、光ファイバポート113から入力された信号光L6は、コリメータレンズ群116、回折格子25、アナモルフィック光学系14、集光レンズ系33、および角度操作器32の作用によって、信号光L7、L8、L9、L10の少なくともいずれか一つとして、割り当てられた光ファイバポート111、112、114、115の少なくともいずれか一つから外部に出力する。
【0054】
この光スイッチ装置30でも、実施の形態2に係る光スイッチ装置20と同様に、アナモルフィック光学系14の作用によって、少なくともアナモルフィック光学系14の透過直後、および集光レンズ系33の角度操作器12側の直後、すなわちレンズ332の直後での、光軸331に垂直な面を通過する5つの信号光L6、L7、L8、L9、L10のビームの配列間隔が、光入出力ポート11における光ファイバポート111〜115の配列間隔よりも小さくなるようにしている。その結果、角度操作器22のLCOS321、322、323、324で信号光を回折させるべき回折角(たとえば図5の回折角θ3)が小さくなり、回折効率も良好に維持され、その駆動電圧も低くなる。これによって、角度操作器32の負荷が軽減される。
【0055】
さらには、信号光L6、L7、L8、L9、L10が集光レンズ系33から受ける収差の影響を抑制できる。その結果、光スイッチ装置20は良好な光学特性を有するものになる。また、集光レンズ系13の口径を光ファイバポート111〜115の配列幅よりも小さくできるので、集光レンズ系33を小型化できる。
【0056】
以上説明したように、LCOSを用いた本実施の形態3に係る光スイッチ装置30も、角度操作器32の負荷の増大や特性の低下が抑制され、かつ良好な光学特性を有するものとなる。
【0057】
なお、図6は、図5に示す光スイッチ装置30において角度操作器32を構成するLCOS324に入射する信号光L6のビーム形状の好ましい一例を示す図である。LCOS324は、たとえば公知のように、液晶駆動回路が形成されたシリコン基板上に、反射率がほぼ100%の反射層である画素電極群と、空間光変調層である液晶層と、配向膜と、ITO(Indium Tin Oxide)電極と、カバーガラスとが順次積層した構成を有している。図6に模式的に示すように、画素電極群324aは、光入出力ポート11における光ファイバポート111〜115の配列方向であるz軸方向に多数の画素電極が配列して構成されている。したがって、LCOS324に信号光L6を入射させる場合には、図6に示すように信号光L6のビーム形状がz軸方向に長くなる形状で入射するように集光レンズ系33と角度操作器32との位置関係を設定することが好ましい。これによって、信号光L6の回折に寄与する画素電極の数をより多くできるので、より回折効率を大きくすることができ、また、回折角の広がりを抑制することができる。
【0058】
なお、上記実施の形態2、3では、回折格子が光入出力ポートとアナモルフィック光学系との間に設けられているが、アナモルフィック光学系と集光レンズ系との間に設けても良い。また、集光レンズ系が複合レンズ系である場合は、回折格子は、集光レンズ系の最も角度操作器側に配置されたレンズ(図5ではレンズ332)よりも光入出力ポート側であれば、複合レンズ系の間に設けても良い。また、複合レンズ系を構成するレンズの数や種類は特に限定されない。
【0059】
上記実施の形態では回折格子を透過型としたが、本発明はこれに限らず、反射型の回折格子を用いても良い。なお、透過型の回折格子の場合は、光路を大きく屈曲させる必要が無いため、光スイッチ装置を構成する各素子を光路と干渉すること無く配置することが容易である。また、透過型の回折格子の場合は、収差が比較的大きなレンズの周縁付近の部分に光を透過させること無く各素子を配置することが容易である。したがって、より簡便な構成で装置の小型化および高性能化ができるためより好ましい。また、回折格子の代わりにたとえば分散プリズムなどの他の光分散素子を用いても良い。
【0060】
また、上記実施の形態では、光スイッチ装置は1×4光スイッチであるが、本発明では光が入出力するポートの数は特に限定されず、N×M光スイッチ(N、Mは任意の整数)であればよい。また、たとえば図1に示した光スイッチ装置10の構成において、光ファイバポート111、112、114、115のいずれかから信号光を入力させて、Comポートである光ファイバポート113から出力させるように光スイッチ装置10を動作させてもよい。これによって、光スイッチ装置10を4×1光スイッチとして使用することができる。
【0061】
また、たとえば上記実施の形態では、光入出力ポートのうち常に光が入力または出力されるComポートを集光レンズ系の光軸上に配置されている。このようにすると、角度操作器で光を回折または反射させる際の角度を小さくすることができるためより好ましい。また、Comポートを集光レンズ系の光軸上に配置すると、光スイッチ装置を組み立てる際のアライメントをしやすく、かつ角度操作器における光の入射角または出射角を略ゼロとできるために角度操作器の制御がより容易になるので、特に好ましい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、Comポートを光軸の近傍に配置しても良いし、光入出力ポートのうち最も光軸から離れたポートをComポートとしてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態1〜3では、光ファイバポート111〜115を等間隔に配置したが、必ずしも等間隔である必要はない。
【0063】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上記各実施形態の各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。たとえば、実施の形態3に係る光スイッチ装置を構成する複合レンズ系またはLCOSを実施の形態1の光スイッチ装置に適用してもよい。その他、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
10、20、30 光スイッチ装置
11 光入出力ポート
12、22、32 角度操作器
13、33 集光レンズ系
14 アナモルフィック光学系
25 回折格子
111、112、113、114、115 光ファイバポート
116 コリメータレンズ群
117 支持部
131、331 光軸
221、222、223、224 反射ミラー
321、322、323、324 LCOS
324a 画素電極群
332 レンズ
L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8、L9、L10 信号光
θ1、θ2 反射角
θ3 回折角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から光が入力される、または外部に光を出力する複数のポートが所定の配列方向に沿って配列した光入出力ポートと、
前記光入出力ポートのいずれかのポートから入力した光の光路を切り換えて前記光入出力ポートの他のいずれかのポートに向けて出力する角度操作器と、
前記光入出力ポートと前記角度操作器との間に配置され、前記光入出力ポートと前記角度操作器とを光学的に結合させる集光レンズ系と、
前記光入出力ポートと前記集光レンズ系との間に配置され、前記光入出力ポート側から入力された光のビーム形状を前記光入出力ポートのポート配列方向に対して縮小し、かつ該光の光路を前記集光レンズ系の光軸に近づけるように変位させて、前記光入出力ポートにおけるポートの配列間隔よりも、前記集光レンズ系の前記角度操作器側の直後での前記光軸に垂直の平面を通過する前記光のビームの配列間隔を小さくするアナモルフィック光学系と、
を備えることを特徴とする光スイッチ装置。
【請求項2】
前記集光レンズ系は単レンズ系であることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ装置。
【請求項3】
前記集光レンズ系は複合レンズ系であることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ装置。
【請求項4】
前記集光レンズ系の口径が、前記光入出力ポートにおけるポートの配列幅よりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光スイッチ装置。
【請求項5】
前記アナモルフィック光学系はシリンドリカルレンズで構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の光スイッチ装置。
【請求項6】
前記アナモルフィック光学系はアナモルフィックプリズムペアで構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の光スイッチ装置。
【請求項7】
前記角度操作器は反射ミラーで構成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の光スイッチ装置。
【請求項8】
前記角度操作器はLCOSで構成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の光スイッチ装置。
【請求項9】
前記光入出力ポートと前記集光レンズ系の最も前記角度操作器側に配置されたレンズとの間に設けられた光分散素子を備え、波長選択光スイッチとして機能することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の光スイッチ装置。
【請求項10】
前記光分散素子は透過型の回折格子であることを特徴とする請求項9に記載の光スイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−185312(P2012−185312A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48162(P2011−48162)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】