説明

光スキャナーおよび画像形成装置

【課題】光反射面(全反射ミラー)を安定して自在に回動させるための制御が容易である、光スキャナーを提供する。
【解決手段】光スキャナー1は、光反射面3aを有する反射板3と、反射板3を支持する支持部材41と、支持部材41を介して反射板3を保持する可動部2と、可動部2から光反射面3aと平行にそれぞれ延出し、中間部分に屈曲部7,8を有する一対の可動梁5,6と、可動梁5,6に直結し可動梁5,6を介して可動部2へ変位を付与する変位部21,31を有し、可動梁5,6の延出方向の端部にそれぞれ設けられた第1駆動装置20,30と、変位部21,31から延出し、光反射面3aと平行し且つ可動梁5,6の延出方向と直交している一対の駆動梁9,10と、駆動梁9,10を固定するための支持枠15と、可動部2へ、第1駆動装置20,30とは異なる変位を、直接付与する第2駆動装置40と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査により描画等を行うための光スキャナー、およびこの光スキャナーを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、光スキャナーとしての機能を有する電磁アクチュエーターが知られている。この電磁アクチュエーターは、一対の永久磁石が設けられた絶縁基板と、一対の永久磁石の間に位置し絶縁基板に支持されたスキャナー本体と、を備えていて、スキャナー本体は、枠状の支持部と、支持部の内側に設けられた枠状の外側可動板と、外側可動板の内側に設けられ全反射ミラーを有する内側可動板と、を有した、いわゆるジンバル構造となっている。また、外側可動板は、一対の第1トーションバーを介して支持部に連結されており、内側可動板は、第1トーションバーと直交する、一対の第2トーションバーを介して外側可動板に連結している。そして、外側可動板および内側可動板には、それぞれ平面コイルが設けられている。
【0003】
このような構成の電磁アクチュエーターでは、通電により各平面コイルから発生する磁界と、一対の永久磁石の間における磁界と、を作用させることにより、外側可動板が内側可動板とともに第1トーションバーを中心軸として回動し、内側可動板が第2トーションバーを中心軸として回動することになる。これにより、電磁アクチュエーターは、全反射ミラーに入射する光の反射方向を制御することが可能であり、光スキャナーとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−322227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の技術において、電磁アクチュエーターは、第1トーションバーの回動に連動して、第2トーションバーの中心軸の延在方向も回動して移動する。そのため、第1トーションバーと第2トーションバーとをそれぞれ回動させて、全反射ミラーを所定方向へ向けるための制御が煩雑なものになっていた。また、電磁アクチュエーターの外側可動板に設けられた平面コイルから発生する磁場と、内側可動板に設けられた平面コイルから発生する磁場と、が干渉しやすく、その場合、全反射ミラーは、第1トーションバーまたは第2トーションバーの中心軸まわりにおける回動が意図する回動と異なってしまうことがある。従って、従来の電磁アクチュエーターのような構成の光スキャナーでは、内側可動板の全反射ミラーを安定して自在に回動させることが難しく、容易には行えない、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る光スキャナーは、光反射面を有する光反射部材と、前記光反射部材を支持する支持部材と、前記支持部材を介して前記光反射部材を保持する可動部と、前記可動部から前記光反射面と平行にそれぞれ延出し、中間部分に屈曲部を有する一対の可動梁と、前記可動梁に直結し前記可動梁を介して前記可動部へ変位を付与する変位部を有し、前記可動梁の延出方向の端部にそれぞれ設けられた第1駆動装置と、前記変位部から延出し、前記光反射面と平行し且つ前記可動梁の延出方向と直交している一対の駆動梁と、前記駆動梁を固定するための支持枠と、前記可動部へ、前記第1駆動装置とは異なる変位を、直接付与する第2駆動装置と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
この光スキャナーによれば、光反射面は、可動部と連動して変位し、入射した光を任意の方向へ反射する。可動部は、第1駆動装置の変位部に駆動される可動梁の作動に追随して変位する。ここで、可動梁は、非駆動状態では、光反射面と平行な面上において、変位部と共に1つの軸である第1の軸に沿って延出した形態をなしていて、変位部は、光反射面と平行な面上で可動梁に対して直交方向へ延出する駆動梁に支持されている。つまり、駆動梁を中心にして変位部が回動することによって、可動部を挟む一対の可動梁がそれぞれ回動し、可動部を変位させている。そして、可動部に設けられている屈曲部は、可動梁のそれぞれの回動に応じて柔軟に屈曲し、可動部を該第1の軸に沿って確実に変位させる機能を有している。さらに、光スキャナーは、第2駆動装置を備えていて、この第2駆動装置は、第1駆動装置の変位部の機能を、可動部自体に持たせた構成により、該第1の軸とは異なる方向の第2の軸に沿って可動部を変位させている。即ち、第2駆動装置では、可動梁および駆動梁を介することなく、可動部を直接的に変位させることが可能である。この時、可動梁および屈曲部は、第2駆動部よって可動部へ付与される変位の影響が、第1駆動装置の変位部へ及ぶことを回避する、機能を果たす。同様に、可動梁および屈曲部は、第1駆動部による変位の影響が、第2駆動装置へ及ぶことを回避する、機能を果たす。これにより、光スキャナーは、第1駆動装置または第2駆動装置の個々の変位付与に対し、可動部が第1の軸または第2の軸に沿ってそれぞれ個別に且つ確実に対応でき、安定して自在に変位することが可能である。また、第2駆動装置が可動梁および駆動梁を有しない構成であるため、光スキャナーを小型化することも可能である。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る光スキャナーにおいて、前記第1駆動装置は、前記変位部に設けられた第1永久磁石と、前記第1永久磁石に作用する磁界を発生させるコイルを有する第1駆動部と、を有し、前記第2駆動装置は、前記可動部に設けられた第2永久磁石と、前記第2永久磁石に作用する磁界を発生させるコイルを有する第2駆動部と、を有していることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、第1駆動装置は、変位部に設けられた第1永久磁石に対し、第1駆動部のコイルから磁界を発生させて、第1永久磁石のいずれかの極側をコイルに引きつけることにより、変位部を回動させる構成となっている。変位部の回動により可動梁も回動し、可動部が第1の軸方向に沿って変位する。一方、第2駆動装置は、可動部に設けられた第2永久磁石に対し、第2駆動部のコイルから磁界を発生させて、第2永久磁石のいずれかの極側をコイルに引きつけることにより、可動部を、梁等を介さずに、直接変位させる構成となっている。このように、光スキャナーは、コイルの極性を変化させる簡便な構成により、可動部を自在に変位させることが可能である。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る光スキャナーにおいて、前記第1永久磁石は、前記光反射面と直交する方向に両極が対向するように前記変位部へ設けられ、前記光反射面の側に位置するそれぞれの極が互いに異なる極性となっていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第1永久磁石は、非駆動状態の光反射面に対して直交方向に延在し、延在する端部側の極がN極またはS極である。この場合、可動梁の両端の各変位部において、一方の側の変位部に設けられた第1永久磁石は、光反射面の向いている方向と同じ側に位置する端部側の極がN極であれば、他方の側の変位部に設けられた第1永久磁石は、光反射面の向いている方向と同じ側に位置する端部側の極がS極となるように配置されている。即ち、光反射面の側に位置するそれぞれの極が互いに異なる極性となっている。ここで、光スキャナーにおける可動部を傾ける変位は、可動部を挟む一対の可動梁がそれぞれ同じ方向へ回動することにより、可能となる。このように可動梁を回動させるには、各第1永久磁石に対向するコイル側をS極として、第1永久磁石のN極側端部をコイルへ引きつければ良い。あるいは、各第1永久磁石に対向するコイル側をN極として、第1永久磁石のS極側端部をコイルへ引きつければ良い。つまり、変位部を同じ方向へ回動させている。この場合、可動梁の両端に位置する第1駆動装置のコイルは、可動部に向いた側が同じ極性となって、互いに反発する状態であり、第1駆動装置のコイルによる磁界は、第2駆動装置のコイルに対してほとんど影響を与えることがない。従って、第2駆動装置は、第1駆動装置の磁界の影響を受けずに、可動部を、個別に、変位させることが可能である。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係る光スキャナーにおいて、前記第2永久磁石は、両極間の長さが前記可動部の外形長さと近似し、前記光反射面に沿い且つ前記可動梁の延出方向と直交する方向に両極が対向するように前記可動部へ設けられていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、光反射面と平行な面上において可動梁の延出方向と直角に交叉する方向に、第2永久磁石の両極が対向するように配置することにより、第2駆動装置は、第1駆動装置が付与する変位と直交する方向の変位を、可動部へ付与することが可能である。このように、第1駆動装置および第2駆動装置が付与する変位が互いに直交していれば、可動部の変位を容易に特定でき、可動部が反射する光の方向を容易に制御することが可能である。また、第2永久磁石の長さが、可動部の外形長さと同等程度に近似しており、可動部を回動させるモーメントが確保しやすく、可動部を確実に変位させることが可能である。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係る光スキャナーにおいて、前記第2永久磁石は、前記光反射部材を支持した状態で前記可動部に設けられていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、第2永久磁石は、第2駆動装置としての機能に加え、光反射面を有する光反射部材を支持する支持部材としての機能も合わせて有している。第2永久磁石が支持部材として光反射部材を支持することにより、光反射部材を支持するだけの支持部材を削減することができ、可動部の重量軽減による変位に要する磁界強度の低減、および部品点数削減等が図れる。
【0017】
[適用例6]上記適用例に係る光スキャナーにおいて、前記光反射面は、前記可動部より大きな面積を有していることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、光反射面は、可動部より大きく設定することができ、例えば、可動部位置から可動梁の屈曲部を越える位置にまで広げることも可能であり、より多くの光束を反射することが可能である。これが可能な理由は、支持部材によって、光反射面を有する光反射部材と可動部との間に隙を有する構成であることにより、光反射部材は、可動部が傾いた場合でも、この隙の分だけ可動梁と接触することを回避可能であることによる。
【0019】
[適用例7]本適用例に係る画像形成装置は、光反射面を有する光反射部材と、前記光反射部材を支持する支持部材と、前記支持部材を介して前記光反射部材を保持する可動部と、前記可動部から前記光反射面と平行にそれぞれ延出し、中間部分に屈曲部を有する一対の可動梁と、前記可動梁に直結し前記可動梁を介して前記可動部へ変位を付与する変位部を有し、前記可動梁の延出方向の端部にそれぞれ設けられた第1駆動装置と、前記変位部から延出し、前記光反射面と平行し且つ前記可動梁の延出方向と直交している一対の駆動梁と、前記駆動梁を固定するための支持枠と、前記可動部へ、前記第1駆動装置とは異なる変位を、直接付与する第2駆動装置と、を有する光スキャナーを備えていることを特徴とする。
【0020】
この画像形成装置によれば、光スキャナーを備えていて、この光スキャナーによれば、光反射面は、可動部と連動して変位し、入射した光を任意の方向へ反射する。可動部は、第1駆動装置の変位部に駆動される可動梁の作動に追随して変位する。ここで、可動梁は、非駆動状態では、光反射面と平行な面上において変位部と共に第1の軸に沿って延出した形態をなしていて、変位部は、光反射面と平行な面上で可動梁に対して直交方向へ延出する駆動梁に支持されている。つまり、駆動梁を中心にして変位部が回動することによって、可動部を挟む一対の可動梁がそれぞれ回動し、可動部を変位させている。そして、可動部に設けられている屈曲部は、可動梁のそれぞれの回動に応じて柔軟に屈曲し、可動部を該第1の軸に沿って確実に変位させる機能を有している。さらに、光スキャナーは、第2駆動装置を備えていて、この第2駆動装置は、第1駆動装置の変位部の機能を可動部に持たせる等の構成により、該第1の軸とは異なる方向の第2の軸に沿って可動部を変位させている。即ち、第2駆動装置では、可動梁および駆動梁を介することなく、可動部を変位させることが可能である。この時、可動梁および屈曲部は、第1駆動部または第2駆動装置の変位の影響が他駆動部へ及ぶことを回避する、機能を果たす。これにより、光スキャナーは、第1駆動装置または第2駆動装置の個々の変位付与に対し、可動部が第1の軸または第2の軸に沿って確実に対応でき、安定して自在に変位することが可能である。また、第2駆動装置が可動梁および駆動梁を有しない構成であるため、光スキャナーを小型化することが可能である。このような光スキャナーを備えた画像形成装置は、自在な画像を安定して形成でき、小型化を図ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る光スキャナーの構成を示す平面図。
【図2】光スキャナーの構成を示す断面図。
【図3】反射板を変位させるための可動梁および駆動装置を示す斜視図。
【図4】(a)光スキャナーの第1駆動装置の駆動を示す断面図、(b)第1駆動装置の駆動を示す断面図。
【図5】(a)光スキャナーの第2駆動装置の駆動を示す断面図、(b)第2駆動装置の駆動を示す断面図。
【図6】本発明の画像形成装置の概要を示す模式図。
【図7】(a)光スキャナーの変形例を示す断面図、(b)変形例における第1駆動装置の駆動を示す断面図。
【図8】光スキャナーの変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の光スキャナーおよび画像形成装置の好適な実施形態の一例について、添付図面を参照して説明する。
(実施形態)
【0023】
図1は、本発明に係る光スキャナーの構成を示す平面図である。また、図2は、光スキャナーの構成を示す断面図であり、図1に示す光スキャナーのA−A’断面を示している。そして、図3は、反射板を変位させるための可動梁および駆動装置を示す斜視図である。図1および図2に示すように、光スキャナー1は、可動部2と、可動部2と連結する2つの連結部11,12と、連結部11,12の可動部2と反対側端部に設けられ、連結部11,12を介して可動部2を変位させるための第1駆動装置20,30と、第1駆動装置20,30を支持している支持枠15と、支持枠15を支持している基台16と、第1駆動装置20,30とは異なる変位を可動部2へ直接付与するための第2駆動装置40と、を有している。これら可動部2、連結部11,12、第1駆動装置20,30および支持枠15は、振動基板4を構成している。また、可動部2は、光反射面3aを有する反射板(光反射部材)3を支持部材41を介して支持している。なお、以下では、光スキャナー1を平面視した図1に示すように、連結部11,12の延出する振動基板4の長手方向をX軸(課題を解決するための手段における第1の軸)とし、X軸およびY軸(課題を解決するための手段における第2の軸)で形成される平面は、非駆動状態の光反射面3aと平行であり、該平面と直交するZ軸は、光反射面3aを有する反射板3の厚さ方向と一致する。
【0024】
最初に、振動基板4について説明する。振動基板4の支持枠15は、可動部2を支持するために、枠状をなしており、可動部2の周囲を囲むように設けられている。支持枠15の内側に連結部11,12で連結されている可動部2は、円形の平板状をなし、可動部2が支持している反射板3は、可動部2の直径(外形長さ)とほぼ同じ大きさ(近似)の直径D1の円形であって、光反射面3aが基台16と反対方向に向いて設けられている。光反射面3aは、例えば、金、銀、アルミニウム等の金属膜などを蒸着等により形成することにより得られ、この場合、アルミニウムで形成されている。
【0025】
また、連結部11,12は、可動部2に対し、X軸方向に沿って対称的に形成されており、連結部11は、変位部21と、変位部21と支持枠15とを連結する一対の駆動梁9と、変位部21と可動部2とを連結し中間部分に屈曲部7を有する可動梁5と、を有している。また、連結部12は、変位部31と、変位部31と支持枠15とを連結する一対の駆動梁10と、変位部31と可動部2とを連結し中間部分に屈曲部8を有する可動梁6と、を有している。
【0026】
ここで、連結部11,12の詳細な構成について、連結部11を例にし、図3を参照して説明する。連結部12も、連結部11と同様な構成である。図3に示すように、一対の駆動梁9は、変位部21を介してY軸(図1)方向に対向配置されており、変位部21を両持ち支持している。また、駆動梁9は、それぞれ、Y軸方向に延在する棒状をなしていて、Y軸方向を軸として捩じり変形が可能な形態になっている。このような駆動梁9は、同軸的に設けられており、この軸を中心として、それぞれが捩じり変形することにより、変位部21が回動(変位)する。
【0027】
この変位部21は、可動部2に対してX軸方向(図1)に離間して設けられていて、変位部21の変位体211が一対の駆動梁9によって両持ち支持されている。また、変位体211には、貫通孔212が形成されており、この貫通孔212に第1永久磁石213が挿通され、嵌合(圧入)あるいは接着剤によって固定されている。さらに、変位部21の平面視形状は、Y軸方向を長手とする長方形であり、第1永久磁石213を固定するスペースを確保しつつ、変位体211の幅(X軸方向の長さ)を抑えることができる。変位体211の幅を抑えることにより、変位体211がY軸方向を軸として回動する際に発生する慣性モーメントを抑えることができ、変位部21の反応性が高まり、より高速な回動が可能となる。また、変位部21の反応性が高まると、変位部21の回動によって、不本意な振動が発生するのを抑えることができ、特に回動方向が切り替わる切り返しの時に効果的である。そのため、光スキャナー1を安定して駆動することができる。
【0028】
そして、変位部21は、可動梁5によって可動部2と連結している。可動梁5は、X軸方向に延出するように設けられていて、既述した屈曲部7と、屈曲部7と可動部2とを連結する可動部側梁5aと、屈曲部7と変位部21の変位体211とを連結する変位部側梁5bと、を有している。可動部側梁5aおよび変位部側梁5bは、それぞれ、X軸方向に延出する棒状をなしていて、同軸的に設けられている。
【0029】
可動梁5のうちの変位部側梁5bは、光スキャナー1の駆動時に大きな変形が起こらない硬さに設定されているのが好ましく、実質的に変形しない硬さに設定されているのがより好ましい。これに対して可動部側梁5aは、X軸方向に延出する梁を軸とする軸まわりに、捩じり変形が可能な形態となっている。このように、可動梁5が実質的に変形しない硬い部位である変位部側梁5b、および捩じり変形可能な部位である可動部側梁5aを有することにより、可動部2をX軸およびY軸のそれぞれの軸まわりに安定して回動させることができる。ここで、「変形しない」とは、Z軸方向への屈曲または湾曲および梁を軸とする軸まわりの捩じり変形が実質的に起きないことを言う。このような可動部側梁5aおよび変位部側梁5bは、屈曲部7を介して連結していて、屈曲部7は、可動梁5が屈曲変形する際の節となる機能と、可動部側梁5aの捩じり変形により発生するトルクを緩和(吸収)し、該トルクが変位部側梁5bに伝わるのを防止または抑制する機能と、を果たしている。
【0030】
屈曲部7は、非変形部71と、応力緩和部72と、を有している。応力緩和部72は、非変形部71の可動部側梁5aの側および変位部側梁5bの側のそれぞれに設けられた一対の変形部721と、変形部721のそれぞれを非変形部71に接続するための接続部722と、を有している。そして、非変形部71は、Y軸方向に延在する棒状をなしていて、光スキャナー1の駆動時に実質的に変形しない硬さに設定されている。この構成により、非変形部71を中心にして可動梁5を屈曲させることができる。即ち、応力緩和部72に節としての機能を確実に発揮させて、光スキャナー1を安定駆動させることができる。
【0031】
また、一対の変形部721は、非変形部71に対して対称的にそれぞれ配置され、Y軸方向に延在する棒状をなして、互いにX軸方向に離間して並設されている。これら変形部721は、それぞれの中心軸まわりに捩じり変形が可能な形態となっている。そして、可動部2の側に位置する変形部721は、その長手方向のほぼ中央にて可動部側梁5aの一端と連結していると共に、その両端部にて一対の接続部722を介して非変形部71に連結している。同様に、変位部21の側に位置する変形部721は、その長手方向のほぼ中央にて変位部側梁5bの一端と連結していると共に、その両端部にて一対の接続部722を介して非変形部71に連結している。これら接続部722は、X軸方向に延在する棒状をなしていて、Z軸方向に湾曲が可能であって、且つその中心軸まわりに捩じり変形も可能な形態となっている。このような構成の連結部11により、可動部2は、X軸方向またはY軸方向を中心軸として、よりスムーズに回動することが可能である。
【0032】
一方、連結部12も、連結部11と同様な機能を有していて、可動梁6(可動部側梁6aおよび変位部側梁6b)と、屈曲部8と、変位部31(変位体311、貫通孔312、第1永久磁石313)と、駆動梁10と、から構成されている。
【0033】
このような構成の光スキャナー1において、振動基板4は、SOI基板をエッチング等することにより一体的に形成されている。SOI基板は、第1のSi層と、SiO2層と、第2のSi層とがこの順に積層した基板である。振動基板4には、積極的に変形させる部位と、変形させない(変形させたくない)部位とが混在している。そこで、変形させない部位を前記3つの層の全てで構成するとともに、積極的に変形させる部位を第2のSi層のみ、あるいは、第2のSi層とSiO2層の2層で構成する。つまり、SOI基板の厚さを異ならせることにより、変形させる部位と変形させない部位が混在する振動基板4を簡単に形成することができる。
【0034】
光スキャナー1における振動基板4は、図2に示すように、基台16により支持されている。基台16は、箱状(枡状)をなしていて、平板状の基部161と、基部161の縁部に沿って立設された枠部162と、X軸方向の両端部に設けられ後述するコイル部(第1駆動部)22,32を載置する載置部163と、を有している。このような基台16は、枠部162が振動基板4の支持枠15と接合されて、振動基板4を支持する。基台16は、ガラスやシリコンを主材料として構成され、この場合、シリコンで形成されている。基台16と支持枠15との接合は、接着剤を用いて接合しているが、これに限定されることなく、陽極接合等の各種接合方法を用いることも可能である。
【0035】
次に、変位部21,31の変位により可動部2および反射板3を変位させる構成と、変位部21,31による変位とは異なる変位を可動部2および反射板3に付与する構成と、について説明する。まず、変位部21,31の変位について説明する。
【0036】
図1および図2に示すように、変位部21を有する第1駆動装置20は、変位部21に対し可動部2と反対側に対向して設けられているコイル部(第1駆動部)22を有し、変位部31を有する第1駆動装置30は、変位部31に対し可動部2と反対側に対向して設けられているコイル部(第1駆動部)32を有している。第1駆動装置20は、連結部11に連結して設けられており、第1駆動装置30は、連結部12に連結して設けられている。第1駆動装置20,30は、共に同構成、同機能を有しているため、第1駆動装置20の場合について説明する。
【0037】
第1駆動装置20において、変位部21の第1永久磁石213は、棒状をなしており、その長手方向に磁化している。つまり、第1永久磁石213は、その長手方向の一端側がS極となっており、他端側がN極となっていて、この場合、光反射面3aの向く方向と同方向側がS極である。そして、第1永久磁石213は、変位体211の貫通孔212へZ軸方向に挿通され、その長手方向のほぼ中央位置で変位体211に接着固定されている。この第1永久磁石213しては、ネオジウム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、ボンド磁石などの、硬磁性体を着磁したもの等を用いることができ、この場合、ネオジウム磁石を用いている。
【0038】
コイル部22は、基台16の載置部163へ載置されたコイル固定部222と、コイル固定部222のX軸方向に突出した部位に巻き付けられたコイル221と、からなっている。突出した部位は、鉄等の軟磁性体を磁心として構成することにより、磁界をより効率的に発生させることができるようになっている。また、コイル221は、第1永久磁石213に作用するX軸方向の磁界を発生させ、コイル部22の第1永久磁石213側がN極となりその反対側がS極となる状態と、コイル部22の第1永久磁石213側がS極となりその反対側がN極となる状態と、を発生させることができる。
【0039】
磁界の発生は、図示していない電源がコイル221と電気的に接続されていて、この電源からコイル221に電圧を印加することにより、可能である。ここでは、電源として、交番電圧および直流電圧を選択して印加できるようになっており、交番電圧を印加する際には、その強さ、周波数を変更できるようになっている。さらに、オフセット電圧(直流電圧)を重畳させることもできるようになっている。
【0040】
そして、第1駆動装置30においても、変位部31の第1永久磁石313と、コイル部(第1駆動部)32のコイル321およびコイル固定部322と、が第1駆動装置20と同様な作用効果を有している。この場合、第1永久磁石313は、光反射面3aの向く方向と同方向側がN極である配置となっていて、第1駆動装置20の第1永久磁石213とは、異なる極性配置になっている。即ち、第1永久磁石213と第1永久磁石313とは、光反射面3aの側に位置するそれぞれの極が互いに異なる極性、である。
【0041】
変位部21,31の変位に続いて、第1駆動装置20,30による可動部2の回動について説明する。この場合、可動部2は、Y軸方向を軸とした軸まわりに回動する。図4(a)は、光スキャナーの第1駆動装置の駆動を示す断面図である。図4(b)は、第1駆動装置の駆動を示す断面図であって、図4(a)とは異なる方向への駆動を示している。図4は、図1におけるA−A’断面に対応する断面図である。まず、コイル部22の第1永久磁石213側がS極、コイル部32の第1永久磁石313側が同じくS極となる第1の状態と、コイル部22の第1永久磁石213側がN極、コイル部32の第1永久磁石313側が同じくN極となる第2の状態と、が交互にかつ周期的に切り替わるように、電源からコイル部22,32のコイル221,321(図2)へ交番電圧を印加する。光スキャナー1では、この交番電圧が、互いに同じ波形、つまり強さおよび周波数が同じであることが好ましい。
【0042】
図4(a)に示す第1の状態では、第1永久磁石213のN極がコイル部22に引き付けられると共にS極がコイル部22から遠ざかるため、変位体211は、一対の駆動梁9を捩じり変形させつつ、第1永久磁石213のS極側の面を可動部2の側に向けるように回動して傾斜する。これと同時に、第1永久磁石313のN極がコイル部32に引き付けられると共にS極がコイル部32から遠ざかるため、変位体311は、一対の駆動梁10を捩じり変形させつつ、第1永久磁石313のS極側の面を可動部2の側に向けるように回動して傾斜する。つまり、変位部21,31が共に、図4(a)において、時計回りに回動する。
【0043】
この変位部21,31の回動と共に、変位部側梁5bが可動部2側の端を基台16側に向けるように傾斜し、変位部側梁6bが可動部2側の端を基台16と反対側に向けるように傾斜し、変位部21,31の可動部2側の端同士がZ軸方向にずれた状態となる。これにより、屈曲部7の変形部721は、その中心軸まわりに捩じり変形するとともに、接続部722は、湾曲変形する。屈曲部8も同様に捩じり変形および湾曲変形し、可動部側梁5a,6aおよび可動部2が、図4(a)において、一体的に反時計回りに回動する。
【0044】
一方、図4(b)に示す第2の状態では、前述した第1の状態と逆の変形が起こる。すなわち、第1永久磁石213のS極がN極となっているコイル部22に引き付けられると共に、第1永久磁石313のS極がN極になっているコイル部32に引き付けられることになり、可動部2は、図4(b)において、時計回りに回動する。このようにして、第1の状態と、第2の状態とを交互にかつ周期的に切り替えることによって、可動部2をY軸方向を軸とした軸まわりに、自在に回動させることができる。
【0045】
次に、変位部21,31による変位とは異なる変位を可動部2および反射板3に付与する構成について説明する。図5(a)は、光スキャナーの第2駆動装置の駆動を示す断面図である。図5(b)は、第2駆動装置の駆動を示す断面図であって、図5(a)とは異なる方向への駆動を示している。図5は、図1におけるB−B’断面に対応する断面図であり、以下では、図5に加え、図1、図2および図3も参照して説明する。この場合、可動部2および反射板3は、X軸方向を軸とした軸まわりに回動し、可動部2のこの回動は、第2駆動装置40によってなされる。
【0046】
第2駆動装置40は、可動部2に設けられ反射板3を支持する第2永久磁石である支持部材41と、可動部2と対向して基台16の基部161に設けられているコイル部(第2駆動部)42と、を有している。第2永久磁石である支持部材41は、可動部2の直径とほぼ同等長さの棒状であって、非駆動状態において、反射板3のY軸方向に沿って配置されている。可動部2には、支持部材41を正確な位置に配置するための溝であるアライメントガイド2aが設けられていて、支持部材41の実装を容易に行えるようになっている。
【0047】
コイル部42は、基部161へ載置されたコイル固定部422と、コイル固定部422のZ軸方向に突出した部位に巻き付けられたコイル421と、からなっている。突出した部位は、鉄等の軟磁性体を磁心にしており、磁界をより効率的に発生させることができる。また、コイル421は、図示していない電源に電気的に接続されていて、第2永久磁石である支持部材41に作用するZ軸方向の磁界を発生させ、コイル部42において、支持部材41の側がN極となりその反対側がS極となる状態と、その反対の極性配置になる状態と、を交互にかつ周期的に切り替えことができるようになっている。
【0048】
図5(a)に示すように、コイル部42において、第2永久磁石である支持部材41の側がN極である場合、支持部材41のS極がコイル部42に引き付けられると共にN極がコイル部42から遠ざかるため、可動部2は、可動部側梁5a,6aを捩じり変形させつつ、反時計回りに回動して傾斜する。これに対し、図5(b)に示すように、コイル部42において、第2永久磁石である支持部材41の側がS極である場合、支持部材41のN極がコイル部42に引き付けられると共にS極がコイル部42から遠ざかるため、可動部2は、可動部側梁5a,6aを捩じり変形させつつ、時計回りに回動して傾斜する。そして、可動部2の反時計回りの回動あるいは時計回りの回動は、可動部側梁5a,6aの捩れにより吸収されることになり、第1駆動装置20,30による可動部2の回動に影響を与えることがない。
【0049】
さらに、第1駆動装置20,30においては、第1永久磁石213,313の光反射面3a側の極が互いに異なった極性であることにより、コイル部22とコイル部32とは、可動部2に対向する側の極が互いに同じ極性となった状態である。つまり、コイル部22とコイル部32とは、常に反発しあう状態になっている。これにより、可動部2に近接して基部161に設けられている第2駆動装置40のコイル部42は、コイル部22およびコイル部32からの磁界がキャンセルされ、これら磁界の影響をほとんど受けないことになる。
【0050】
従って、光スキャナー1では、可動部2のY軸方向の軸まわりの回動と、可動部2のX軸方向の軸まわりの回動と、をそれぞれ個別に独立して行うことができる。即ち、第1駆動装置20,30による可動部2の回動は、第2駆動装置40による可動部2の回動による影響を受けず、逆に、第2駆動装置40による可動部2の回動は、第1駆動装置20,30による可動部2の回動による影響を受けない。そのため、光スキャナー1は、Y軸方向およびX軸方向のそれぞれの軸まわりに可動部2を安定して回動させることができる。
【0051】
以上説明したような光スキャナー1は、例えば、プロジェクター、レーザープリンター、イメージング用ディスプレイ、バーコードリーダー、走査型共焦点顕微鏡などの画像形成装置に好適に適用することができる。図6は、本発明の画像形成装置の概要を示す模式図である。図6には、画像形成装置としてのプロジェクター100が示されている。ここでは、スクリーン180の長手方向を「横方向」といい、長手方向に直角な方向を「縦方向」という。プロジェクター100は、レーザーなどの光を射出する光源装置110と、複数のダイクロイックミラー120と、光スキャナー1とを有している。
【0052】
光源装置110は、赤色光を射出する赤色光源装置111と、青色光を射出する青色光源装置112と、緑色光を射出する緑色光源装置113とを備えている。各ダイクロイックミラー120は、赤色光源装置111、青色光源装置112、緑色光源装置113のそれぞれから射出された光を合成する光学素子である。このようなプロジェクター100は、図示しないホストコンピューターからの画像情報に基づいて、光源装置110から射出された光をダイクロイックミラー120で合成し、この合成された光が光スキャナー1によって2次元走査され、固定ミラー150を介してスクリーン180上にカラー画像を形成するよう構成されている。
【0053】
2次元走査の際、光スキャナー1の可動部2が、Y軸方向の軸まわりに回動し、反射板3の光反射面3aで反射した光がスクリーン180の横方向に走査(主走査)される。一方、光スキャナー1の可動部2が、X軸方向の軸まわりに回動し、光反射面3aで反射した光がスクリーン180の縦方向に走査(副走査)される。光スキャナー1による光の走査は、いわゆるラスタースキャンによって行ってもよしい、いわゆるベクタースキャンによって行ってもよい。特に、光スキャナー1においては、その構成上、ベクタースキャンに適しているため、ベクタースキャンによって光を走査するのが好ましい。
【0054】
光スキャナー1にとって好ましいベクタースキャンとは、光源装置110から射出された光を、スクリーン180に対し、該スクリーン180上の異なる2点を結ぶ線分を順次形成するように走査する手法である。すなわち、微少な直線を集合させることにより、スクリーン180に所望の画像を形成する手法である。光スキャナー1では、可動部2を、Y軸方向の軸まわりおよびX軸方向の軸まわりに、不規則に且つ連続的に変位させることが可能であるため、ベクタースキャンに特に適している。
【0055】
具体的に説明すれば、図6に示すような文字(aおよびb)をベクタースキャンにて描画する場合には、光源装置110から射出された光をそれぞれの文字を書くように走査する。この際、光スキャナー1が有する可動部2のX軸方向の軸まわりの姿勢(回動)とY軸方向の軸まわりの姿勢(回動)とをそれぞれ制御して、走査軌跡130に沿って不規則に光を走査することができ、aおよびbの文字を一筆書きのように描画することができる。このようなベクタースキャンによれば、ラスタースキャンのように、スクリーン180の全面に光を走査させなくてよいため、効率的に画像を描画することができる。なお、図6では、ダイクロイックミラー120で合成された光を光スキャナー1によって2次元的に走査した後、その光を固定ミラー150で反射させてからスクリーン180に画像を形成するように構成されているが、固定ミラー150を省略し、光スキャナー1によって2次元的に走査された光を直接スクリーン180に照射してもよい。
【0056】
以上説明した実施形態における光スキャナー1の主要な効果を記載する。
【0057】
(1)光スキャナー1は、第1駆動装置20,30および第2駆動装置40が互いの影響を受けることなく可動部2へ変位を付与する機能を有する。これにより、光スキャナー1は、可動部2がX軸方向またはY軸方向の軸を中心にして、個別に安定して回動することができ、任意の方向へ光を反射することができる。さらに、第2駆動装置40が可動梁および駆動梁を有しない構成であるため、光スキャナー1をより小型化することも可能である。
【0058】
(2)光スキャナー1の第1駆動装置20,30は、第1永久磁石213,313とコイル221,321とを有し、第2駆動装置40は、第2永久磁石である支持部材41とコイル421とを有している。そして、第1永久磁石213,313または支持部材41に対し、コイル221,321またはコイル421から磁界を発生させて、第1永久磁石213,313または支持部材41のいずれかの極側をコイルに引きつけることにより、可動部2を回動させている。このように、光スキャナー1は、電圧の印加によりコイル221,321,421の極性を簡便に変化させる構成により、可動部2を自在に変位させることが容易にできる。
【0059】
(3)光スキャナー1において、第1永久磁石213,313は、光反射面3aの側に位置するそれぞれの極が互いに異なる極性となっており、可動梁5,6の両端にそれぞれ位置する第1駆動装置20,30のコイル221,321は、第1永久磁石213,313と対向する側のそれぞれの極が同じ極性となるように電圧が印加されるようになっている。つまり、コイル221,321は、互いに反発する状態となっている。従って、コイル221,321による磁界は、第2駆動装置40のコイル421に対してほとんど影響を与えることがない。これにより、第2駆動装置40は、第1駆動装置20,30の磁界の影響をほとんど受けずに、可動部2を、X軸方向を中心軸として、個別に回動することができる。
【0060】
(4)光スキャナー1は、支持部材41が反射板3を支持することに加え、第2永久磁石としても機能している。これにより、光スキャナー1は、反射板3を支持するだけの支持部材を削減することができ、可動部2の重量軽減が可能となり変位に要する磁界強度の低減や、部品点数削減等が図れる。
【0061】
また、光スキャナー1および画像形成装置としてのプロジェクター100は、上記の実施形態に限定されるものではなく、次に挙げる変形例のような形態であっても、実施形態と同様な効果が得られる。
【0062】
(変形例1)光スキャナー1の反射板3は、可動部2と近似の大きさの直径D1の円形をなしているが、この構成に限定されるものではなく、可動梁5,6が機能する範囲であれば、可動部2より大きな直径D2の円形であっても良い。図7(a)は、光スキャナーの変形例を示す断面図であり、図7(b)は、変形例における第1駆動装置の駆動を示す断面図である。図7(a)に示すように、可動部2に支持部材41によって支持されている反射板(光反射部材)50は、可動部2に対して反対方向に光反射面50aを有し、その円周端部が屈曲部7,8を超えて変位部側梁5b,6bにまで達する大きさである。このような大きさの反射板50であっても、光反射面50aが支持部材41によって可動部2から離間しているため、図7(b)に示すように、第1駆動装置20,30が駆動して反射板50が回動して傾斜した状態でも、可動梁5,6および屈曲部7,8に当接しない。つまり、反射板50は、反射板3と同様な回動ができることに加え、さらに、より多くの光束を一度に反射することができる。なお、これとは逆に、反射板は、可動部2より小さな円形であっても良い。
【0063】
(変形例2)支持部材41は、反射板3を可動部2へ支持する機能と、第2駆動装置40の第2永久磁石として可動部2を変位させる機能と、を有しているが、これら機能を別々に有していても良い。図8は、光スキャナーの変形例を示す断面図である。図8に示すように、反射板3は、円柱状のシリコン等で形成した支持部材3bで可動部2へ支持され、第2永久磁石である支持部材41は、可動部2のコイル部42側の面に形成したアライメントガイド2bの溝に取り付けられ、磁石として可動部2を変位させる構成であっても良い。即ち、支持部材41は、第2永久磁石としての機能に特化している。これにより、第2駆動装置40は、永久磁石である支持部材41とコイル部42とが直接対峙し、より確実、迅速に変位を生じさせることができる。
【0064】
(変形例3)光スキャナー1において、可動部2および反射板3の平面視形状は、円形であるが、これに限定されず、例えば長方形、正方形等の多角形、円形、楕円形等であっても良い。また、可動部2と反射板3とが同形状でなくても良い。
【0065】
(変形例4)変位部21,31の変位体211,311 の平面視形状は、特に限定されるものではなく、例えば、正方形や五角形以上の多角形であっても良く、円形等であっても良い。
【0066】
(変形例5)変位部21,31における第1永久磁石213,313は、棒状をなしているが、これに限定されず、例えば、板状等をなしていても良い。板状の場合には、これら永久磁石を面方向に磁化して変位体211,311に固定する。これにより、該永久磁石のX軸方向長さを短くすることができ、変位体211,311の回動に伴って発生する慣性モーメントを抑えることができる。
【0067】
(変形例6)光スキャナー1は、第1永久磁石213と第1永久磁石313とが光反射面3aの側に位置するそれぞれの極の極性を互いに異ならせた状態で、可動部2をX軸方向あるいはY軸方向の軸まわりに回動させる構成であるが、磁石の配置や電圧の印加方法を変えて回動以外の変位を付与しても良い。例えば、可動部2を傾斜させずにZ軸方向へ振動あるいは静止させたりすることも可能であり、より多彩な光の反射を行うことができる。
【0068】
(変形例7)第1駆動装置20,30および第2駆動装置40は、第1永久磁石213,313または第2永久磁石である支持部材41と、コイル部22,32またはコイル部42と、を有する構成であるが、例えば、コイル部22,32,42に替えて、回転可能に設置された永久磁石を有する構成等であっても良い。該永久磁石をすばやく回転させることにより、コイル部22,32,42のように、第1永久磁石213,313または第2永久磁石である支持部材41に対向する側の極性を変化させることができる。
【0069】
(変形例8)光スキャナー1では、振動基板4における振動形態について特に規定していないが、例えば、第1駆動装置20,30により連結部11,12を介して可動部2を回動させる場合には、それぞれが共振して駆動することが好ましく、共振駆動では、可動部2を正弦波駆動させるため同じ回動を繰り返して行う駆動となるが、大きな回動でも低消費電力で駆動することが可能である。一方、梁等を介さず、第2駆動装置40により、可動部2を直接回動させる場合には、第2駆動装置40と可動部2の回動を支持する可動部側梁5a,6aとが非共振で駆動することが好ましく、非共振駆動では、消費電力が増えるが、可動部2を小さな回動で自在に駆動することが可能である。共振駆動と非共振駆動とを選択することにより、光スキャナー1を最適に駆動することができ、プロジェクター100をはじめ、各種の画像形成装置に搭載可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…光スキャナー、2…可動部、3…光反射部材としての反射板、4…振動基板、5,6…可動梁、7,8…屈曲部、9,10…駆動梁、11,12…連結部、20…第1駆動装置、21…変位部、22…第1駆動部としてのコイル部、30…第1駆動装置、31…変位部、32…第1駆動部としてのコイル部、40…第2駆動装置、41…第2永久磁石としての支持部材、42…第2駆動部としてのコイル部、100…画像形成装置としてのプロジェクター、213…第1永久磁石、313…第1永久磁石。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射面を有する光反射部材と、
前記光反射部材を支持する支持部材と、
前記支持部材を介して前記光反射部材を保持する可動部と、
前記可動部から前記光反射面と平行にそれぞれ延出し、中間部分に屈曲部を有する一対の可動梁と、
前記可動梁に直結し前記可動梁を介して前記可動部へ変位を付与する変位部を有し、前記可動梁の延出方向の端部にそれぞれ設けられた第1駆動装置と、
前記変位部から延出し、前記光反射面と平行し且つ前記可動梁の延出方向と直交している一対の駆動梁と、
前記駆動梁を固定するための支持枠と、
前記可動部へ、前記第1駆動装置とは異なる変位を、直接付与する第2駆動装置と、を備えていることを特徴とする光スキャナー。
【請求項2】
請求項1に記載の光スキャナーにおいて、
前記第1駆動装置は、前記変位部に設けられた第1永久磁石と、前記第1永久磁石に作用する磁界を発生させるコイルを有する第1駆動部と、を有し、
前記第2駆動装置は、前記可動部に設けられた第2永久磁石と、前記第2永久磁石に作用する磁界を発生させるコイルを有する第2駆動部と、を有していることを特徴とする光スキャナー。
【請求項3】
請求項2に記載の光スキャナーにおいて、
前記第1永久磁石は、前記光反射面と直交する方向に両極が対向するように前記変位部へ設けられ、前記光反射面の側に位置するそれぞれの極が互いに異なる極性となっていることを特徴とする光スキャナー。
【請求項4】
請求項2または3に記載の光スキャナーにおいて、
前記第2永久磁石は、両極間の長さが前記可動部の外形長さと近似し、前記光反射面に沿い且つ前記可動梁の延出方向と直交する方向に両極が対向するように前記可動部へ設けられていることを特徴とする光スキャナー。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載の光スキャナーにおいて、
前記第2永久磁石は、前記光反射部材を支持した状態で前記可動部に設けられていることを特徴とする光スキャナー。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の光スキャナーにおいて、
前記光反射面は、前記可動部より大きな面積を有していることを特徴とする光スキャナー。
【請求項7】
光反射面を有する光反射部材と、
前記光反射部材を支持する支持部材と、
前記支持部材を介して前記光反射部材を保持する可動部と、
前記可動部から前記光反射面と平行にそれぞれ延出し、中間部分に屈曲部を有する一対の可動梁と、
前記可動梁に直結し前記可動梁を介して前記可動部へ変位を付与する変位部を有し、前記可動梁の延出方向の端部にそれぞれ設けられた第1駆動装置と、
前記変位部から延出し、前記光反射面と平行し且つ前記可動梁の延出方向と直交している一対の駆動梁と、
前記駆動梁を固定するための支持枠と、
前記可動部へ、前記第1駆動装置とは異なる変位を、直接付与する第2駆動装置と、を有する光スキャナーを備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−42493(P2012−42493A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180759(P2010−180759)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】