説明

光ディスクの初期化装置

【課題】レーザ光源のメンテナンス作業の負担を軽減するとともに、初期化装置の構成を複雑にすることなく安価でありながら、均一な結晶状態を短時間に形成して初期化作業の効率を良好にすることを可能にする。
【解決手段】光ディスクの初期化装置は、断面形状が楕円形状である初期化用レーザ光を出射するレーザ光源21と、光ディスクDKからの反射光を同光ディスクDKに向けて反射する反射ミラー30と、レーザ光源21から出射された初期化用レーザ光および反射ミラー30から導かれた反射光をそれぞれ光ディスクDKの記録層上に集光して、第1の光スポットSPおよび第2の光スポットSPを形成する対物レンズ28とを備える。この場合、反射ミラー30の向きを調整して、第2の光スポットSPが形成される位置を第1の光スポットSPの進行方向における前方であって同第1の光スポットSPの近傍にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を光ディスクの記録層に照射して、同記録層を初期化する光ディスクの初期化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、CD−RW、DVD−RW,DVD−RAM、MD、MOなどの相変化型の記録層を備えた書き換え可能な光ディスク(光磁気ディスクを含む)においては、非結晶状態にある記録層全体を結晶状態に相変化させて反射率の高い状態にする「初期化」が行われている。光ディスクを初期化する装置として、例えば、下記特許文献1に示されているように、光ディスクの記録層上に1つの初期化用の光スポットを形成して同記録層の初期化を行う装置がある。また、下記特許文献2に示されているように、光ディスクの記録層上に2つの初期化用の光スポットを形成して同記録層の初期化を行う装置もある。
【特許文献1】特開2003−22538号公報
【特許文献2】特開2003−272172号公報
【0003】
しかしながら、光ディスクの記録層上に1つの光スポットを形成して同記録層を初期化する装置においては、均一な結晶状態を形成することが難しく反射率にムラが生じやすい。このため、光スポットの光ディスクに対する相対的な移動速度を均一な結晶状態が形成される速度まで下げなければならず、初期化作業の効率が悪いという問題がある。一方、光ディスクの記録層上に2つの光スポットを形成して同記録層を初期化する装置においては、初期化用である高出力のレーザ光源2つと、同2つのレーザ光源に対応する各種光学部品が必要なため初期化装置の構成が複雑かつ高価なものになるとともに、同2つのレーザ光源のメンテナンス作業が煩雑であるという問題がある。
【発明の開示】
【0004】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、1つの初期化用のレーザ光源を用いることにより、レーザ光源のメンテナンス作業の負担を軽減するとともに、初期化装置の構成を複雑にすることなく安価でありながら、均一な結晶状態を短時間に形成して初期化作業の効率を良好にすることが可能な光ディスクの初期化装置を提供することにある。
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、光ディスクに向けてレーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光源から出射されたレーザ光を集光して、光ディスクの記録層上に第1の光スポットを形成する光学レンズと、第1の光スポットによる光ディスクからの反射光を反射し、前記光学レンズを介して光ディスクの記録層上に第1の光スポットとは異なる第2の光スポットを形成する反射ミラーと、記録層上に形成された第1の光スポットおよび第2の光スポットを、光ディスクに対して相対的に移動させる光スポット移動手段とを備え、第1の光スポットの相対移動方向における前方側であって同第1の光スポットの近傍に第2の光スポットを形成して、光ディスクの記録層を初期化するようにしたことにある。この場合、上記光学レンズとしては、入射したレーザ光を集光して光スポットを形成する対物レンズや、入射したレーザ光を長尺の楕円形状の光スポットに形成するシリンドリカルレンズなどを用いることができる。
【0006】
このように構成した本発明の特徴によれば、レーザ光源から出射され光ディスク上に形成された第1の光スポットからの反射光を、反射ミラーによって反射して再び光ディスク上に第2の光スポットとして形成している。この場合、第2の光スポットは、第1の光スポットの移動方向における前側であって同第1の光スポットの近傍に形成される。このため、初期化の対象である記録層は、まず第2の光スポットにより予め熱せられた後、第1の光スポットにより熱せられる。すなわち、第2の光スポットによって初期化の対象である記録層の温度上昇を開始させ、その後第1の光スポットの照射によって同記録層の温度を徐々に上昇させることができるので、1つの初期化用の光スポットを用いて初期化する場合に比べて、適正な光量の光スポットで急激な温度上昇を伴うことなく、前記記録層の温度を結晶化温度に上昇させることができる。また、初期化対象である記録層を第2の光スポットおよび第1の光スポットからなる2段階で熱しているので、結果として、第1の光スポットの光ディスクに対する相対的な移動速度を上げることができ、初期化作業の効率を良好にすることができる。さらに、本発明に係る光ディスクの初期化装置においては、初期化用のレーザ光源を1つとしているため、2つのレーザ光源を用いる場合に比べて、レーザ光源のメンテナンス作業の負担を軽減することができるとともに、初期化装置の構成を複雑にすることなく安価に構成することができる。
【0007】
また、本発明の他の特徴は、上記光ディスクの初期化装置において、さらに、第1の光スポットと第2の光スポットとの間隔を変更する光スポット間隔変更手段を備えたことにある。この場合、前記光スポット間隔変更手段は、例えば、第1の光スポットによる光ディスクからの反射光の光軸に対して前記反射ミラーの向きを変更することにより、第1の光スポットと第2の光スポットとの間隔を変更するようにするとよい。
【0008】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、光スポット間隔変更手段により第1の光スポットと、光ディスクからの反射光による第2の光スポットとの間隔を変更することができる。この結果、レーザ光源から出射されるレーザ光の光量(光強度)や光ディスクの記録層の種類に応じて適宜、両光スポットの間隔を変更することができ、初期化精度を良好に維持することができる。
【0009】
また、本発明の他の特徴によれば、上記光ディスクの初期化装置において、さらに、第1の光スポットによる光ディスクからの反射光の光量を検出する反射光量検出手段と、第2の光スポットを形成する反射光の光路上に設けられ、同反射光の透過光量を調整する反射光量調整器と、反射光量検出手段により検出された反射光の光量に応じて、反射光量調整器を透過する反射光の光量が所定の光量となるように、反射光量調整器を制御する反射光量調整器制御手段とを備えたことにある。この場合、前記反射光量調整器は、回転変位または直線変位により透過光量が変化する光学部品、電気信号の供給により透過光量が変化する素子、および回転により偏光方向が変化する光学部品と偏光方向により透過光量が変化する光学部品とを組み合わせたもののうちのいずれか1つで構成するとよい。これによれば、反射光量調整器における反射光の透過光量を調整することができ、レーザ光源から出射されるレーザ光の光量(光強度)や光ディスクの記録層の種類に応じて適宜、反射光による光スポットの光量を変更することができ、初期化精度を良好に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る光ディスクの初期化装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、DVD−RAMなどの層変化型の光ディスクDKにレーザ光を照射して同光ディスクDKの記録層を初期化する光ディスクの初期化装置の全体概略図である。この初期化装置は、光ディスクDKを回転駆動する回転駆動装置10と、光ディスクDKにレーザ光を照射して同光ディスクDKの記録層を初期化するとともに、光ディスクDKからの反射光を再度光ディスクDKに導く光ピックアップ装置20とを備えている。
【0011】
回転駆動装置10は、スピンドルモータ11およびフィードモータ12を備えている。スピンドルモータ11は、その回転により回転軸11bを回転させてターンテーブル13を回転させる。ターンテーブル13には、その上面に光ディスクDKが着脱可能に組み付けられるようになっている。また、スピンドルモータ11内には、エンコーダ11aが組み込まれており、エンコーダ11aは、スピンドルモータ11の回転を検出して同回転を表す回転検出信号をスピンドルモータ制御回路14に出力する。スピンドルモータ制御回路14は、後述するコントローラ60によって制御されて、前記エンコーダ11aから供給される回転検出信号を用いて、コントローラ60が指示する回転速度で回転するようにスピンドルモータ11の回転を制御する。これにより、光ディスクDKは常に線速度一定で回転するように制御される。フィードモータ12は、その回転によりスクリューロッド15およびナット(図示せず)からなるねじ送り機構を介してスピンドルモータ11、同スピンドルモータ11を固定支持する支持部材16およびターンテーブル13を光ディスクDKの径方向に変位させる。
【0012】
フィードモータ12内にも、エンコーダ12aが組み込まれている。このエンコーダ12aは、前記エンコーダ11aと同様に構成されておりフィードモータ11の回転を検出して同回転を表す回転検出信号をフィードモータ制御回路17に出力する。フィードモータ制御回路17は、コントローラ60からの指示により、エンコーダ12aから出力される回転検出信号を用いてフィードモータ12の回転を制御して、スピンドルモータ11、ターンテーブル13および支持部材16の光ディスクDKの径方向への変位、すなわち、光ディスクDKの最内周と最外周との範囲内における光スポットの移動を制御する。また、フィードモータ制御回路17は、エンコーダ12aから出力される回転検出信号を用いて計算した光スポットの光ディスクDKにおける径方向位置を表す情報をコントローラ60に出力する。
【0013】
この光スポットの径方向の移動においては、コントローラ60は、フィードモータ制御
回路17から入力した光スポットの光ディスクDKにおける径方向位置を表す情報に応じて、光ディスクDKの径方向移動速度を表す信号をフィードモータ制御回路17に出力し、フィードモータ制御回路17は、この径方向移動速度を表す信号に応じた速度でフィードモータ12の回転を制御する。なお、このフィードモータ12およびフィードモータ制御回路17が、本発明に係る光スポット移動手段に相当する。
【0014】
光ピックアップ装置20は、レーザ光源21と対物レンズ28との間にコリメートレンズ22、ダイクロイックミラー23、偏光ビームスプリッタ24、ダイクロイックミラー25、立上ミラー26および1/4波長板27を備えている。レーザ光源21は、半導体レーザで構成されており、主としてS偏光の偏光方向を有するレーザ光であって、光ディスクDKの記録層を初期化するための光強度(例えば、最大発光強度4W程度)および所定の波長(例えば、810nm)のレーザ光を出射する。また、レーザ光源21は、光ディスクDKの記録層上に楕円形状の光スポットを形成するための断面形状が楕円形状の初期化用レーザ光を出射する。ここで、S偏光の偏光方向を有するレーザ光とは、直線偏光のうち入射面に対して垂直方向に振動する光である。
【0015】
コリメートレンズ22は、入射した光を平行光に変換する光学素子であり、具体的には、レーザ光源21から出射された初期化用レーザ光を平行光に変換する。ダイクロイックミラー23は、入射した光を波長に応じて透過または反射させる光学素子である。具体的には、本実施形態においてはレーザ光源21から出射した波長810nmの初期化用レーザ光の95%を透過させるとともに、同初期化用レーザ光の残りの5%を入射方向に直交する方向(図示右側)に反射する。このダイクロイックミラー23によって反射されるレーザ光の光路上には、フォトディテクタ29が配置されている。フォトディテクタ29は、ダイクロイックミラー23によって反射された前記一部の初期化用レーザ光を受光して、同受光量に応じた電気信号を受光信号として初期化用光量制御回路41に出力する。
【0016】
偏光ビームスプリッタ24は、入射した光を偏光方向に応じて透過または反射させる偏光光学素子である。具体的には、ダイクロイックミラー23を透過した初期化用レーザ光(S偏光)を入射方向に直交する方向(図示左側)に反射させてダイクロイックミラー25に導くとともに、光ディスクDKからの反射光(P偏光)を透過させて反射ミラー30に導く。ダイクロイックミラー25は、前記ダイクロイックミラー23と同様に、入射した光を波長に応じて透過または反射させる光学素子である。具体的には、偏光ビームスプリッタ24によって反射された波長810nmの初期化用レーザ光を透過させて立上ミラー26に導くとともに、詳しくは後述するレーザ光源31から出射される波長660nmのレーザ光(P偏光)を入射方向に直交する方向(図示左側)に反射させて立上ミラー26に導く。立上ミラー26は、入射したレーザ光を入射方向に直交する方向(図示上側)に反射する。1/4波長板27は、入射したレーザ光の偏光状態を変化させる光学素子であり、立上ミラー26から導かれたレーザ光を直線偏光(S偏光またはP偏光)から円偏光に変換して対物レンズ28に導くとともに、光ディスクDKからの反射光を円偏光から直線偏光(P偏光またはS偏光)に変換して立上ミラー26に導く。
【0017】
対物レンズ28は、入射したレーザ光を光ディスクDKの記録層上に集光して光スポットを形成する。この場合、対物レンズ28に入射するレーザ光は、レーザ光源21から出射された初期化用レーザ光、後述する反射ミラー30によって反射された反射光およびレーザ光源31から出射されたレーザ光である。したがって、対物レンズ28は、各入射したレーザ光および反射光ごとに光スポットを形成する。この場合、初期化用レーザ光による光スポットの形状は、光ディスクDKの径方向に長軸、接線方向に短軸である楕円形状となる。なお、本実施形態においては、同光スポットにおける長軸方向の長さを70μm、短軸方向の長さを1μmとするが、この大きさに限定されるものでないことは当然である。また、対物レンズ28によって光ディスクDKの記録層上に形成される光スポットのうち、初期化用レーザ光による光スポットが本発明に係る第1の光スポットである。
【0018】
反射ミラー30は、光ディスクDKを反射した反射光のうち、偏光ビームスプリッタ24を透過する反射光、すなわち光ディスクDKを反射した後P偏光に変換された初期化用レーザ光の光路上に配置されている。この反射ミラー30は、光ディスクDKから反射した初期化用レーザ光(P偏光)を再度光ディスクDKに導くために、同反射した初期化用レーザ光を偏光ビームスプリッタ24に向けて反射する。この場合、反射ミラー30は、同反射ミラー30によって反射された反射光によって光ディスクDKの記録層上に形成される楕円形状の光スポットが前記初期化用レーザ光による光スポットの進行方向の前方側に形成されるように、前記反射した初期化用レーザ光の光軸に対して若干傾斜した状態で配置されている。
【0019】
ここで、光スポットの進行方向とは、光ディスクDKがスピンドルモータ11により回転するとともに、フィードモータ12により同光ディスクDKの径方向に移動することにより、光ディスクDKの記録層上に形成される初期化用レーザ光による光スポットが同記録層の未だ初期化されていない領域に移動する方向をいう。また、この反射ミラー30は、同反射ミラー30によって反射された反射光によって光ディスクDK上に形成される楕円形状の光スポットの位置を変化させるために、後述する角度調整装置51によって光ディスクDKからの反射光の光軸に対する反射面の向きが変化するようになっている。なお、この反射ミラー30によって反射された反射光により光ディスクDKの記録層上に形成される光スポットが、本発明に係る第2の光スポットである。
【0020】
レーザ光源31は、半導体レーザで構成されており、主としてP偏光の偏光方向を有するレーザ光であって、詳しくは後述する対物レンズ28のフォーカスサーボ制御用の光強度(例えば、最大発光強度50mW程度)および所定の波長(例えば、660nm)のレーザ光を出射する。ここで、P偏光の偏光方向を有するレーザ光とは、直線偏光のうち入射面に対して平行に振動する光である。また、レーザ光源31から出射されるレーザ光の断面形状は円形である。なお、レーザ光源31は、同レーザ光源31から出射されるフォーカス用レーザ光によって光ディスクDKの記録層上に形成される円形の光スポットが、前記初期化用レーザ光による光スポットの進行方向後ろ側に形成されるように光ピックアップ装置20内に取り付けられている。
【0021】
このレーザ光源31から出射されるフォーカス用レーザ光は、前記ダイクロイックミラー25に向けて出射され、ダイクロイックミラー25、立上ミラー26、1/4波長板27および対物レンズ28を介して光ディスクDKに導かれる。レーザ光源31とダイクロイックミラー25との間には、コリメートレンズ32および偏光ビームスプリッタ33がそれぞれ配置されている。コリメートレンズ32は、前記コリメートレンズ22と同様に、入射した光を平行光に変換、すなわち、レーザ光源31から出射したフォーカス用レーザ光を平行光に変換して偏光ビームスプリッタ33に導く。偏光ビームスプリッタ33は、前記偏光ビームスプリッタ24と同様に、入射した光を偏光方向に応じて透過または反射させる偏光光学素子である。具体的には、コリメートレンズ32を介して入射したフォーカス用レーザ光(P偏光)の一部(本実施形態においては50%)を透過させてダイクロイックミラー25に導くとともに、同フォーカス用レーザ光(P偏光)の他の一部(残りの50%)を入射方向に直交する方向(図示右側)に反射する。
【0022】
この偏光ビームスプリッタ33によって反射されるレーザ光の光路上には、フォトディテクタ34が配置されている。フォトディテクタ34は、偏光ビームスプリッタ33によって反射される前記一部のフォーカス用レーザ光を受光して、同受光量に応じた電気信号を受光信号としてフォーカス用光量制御回路43に出力する。また、偏光ビームスプリッタ33は、ダイクロイックミラー25を介して導かれる光ディスクDKからの反射光(フォーカス用レーザ光による反射光であってS偏光の反射光)の一部(入射した反射光の50%)を入射方向に直交する方向(図示左側)に反射するとともに、同光ディスクDKからの反射光(S偏光)の他の一部(残りの50%)を透過させる。また、この偏光ビームスプリッタ33は、波長810nmの初期化用レーザ光の一部を透過させるとともに、他の一部を入射方向に直交する方向(図示左側)に反射させる。この場合、入射したレーザ光を反射させる割合は、同入射したレーザ光を透過させる割合より大きく設定されている。
【0023】
偏光ビームスプリッタ33により入射方向に直交する方向(図示左側)に反射されるレーザ光の光路上には、ダイクロイックミラー35、集光レンズ36、シリンドリカルレンズ37および4分割フォトディテクタ38がそれぞれ配置されている。ダイクロイックミラー35は、前記ダイクロイックミラー23およびダイクロイックミラー25と同様に、入射した光を波長に応じて透過または反射させる光学素子である。具体的には、偏光ビームスプリッタ33によって反射されたレーザ光のうち、波長660nmのフォーカス用レーザ光による反射光を透過させて集光レンズ36に導くとともに、波長660nmの反射光以外の反射光、具体的には波長810nmの初期化用レーザ光による反射光を入射方向に直交する方向(図示下側)に反射する。
【0024】
集光レンズ36は、入射した波長660nmのフォーカス用レーザ光による反射光をシリンドリカルレンズ37を介して4分割フォトディテクタ38上に集光させる。シリンドリカルレンズ37は、透過した反射光に非点収差を生じさせる光学素子である。4分割フォトディテクタ38は、分割線で区切られた4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子によって構成されており、各受光素子は受光量に比例した電気信号A〜Dをそれぞれ受光信号として出力する。この受光信号は、HF信号増幅回路45に出力され、対物レンズ28のフォーカスサーボ制御に用いられる。なお、この光ピックアップ装置20は、フォーカスアクチュエータ39も備えている。フォーカスアクチュエータ39は、ドライブ回路48によって制御されて対物レンズ28をレーザ光の光軸方向(光ディスクDKの盤面と垂直方向)に駆動する。
【0025】
初期化用光量制御回路41は、コントローラ60に予め設定される初期化基準光量を表す初期化基準光量信号とフォトディテクタ29から出力される受光信号との差電圧を算出して初期化光量フィードバック信号として初期化用レーザ駆動回路42に出力する。ここで初期化基準光量とは、光ディスクDKの記録層を初期化するために必要な光量をいう。初期化用レーザ駆動回路42は、コントローラ60からの指令に応じてレーザ光源21の作動の開始および停止を制御するとともに、初期化用光量制御回路41から出力される初期化光量フィードバック信号に応じてレーザ光源21から出射するレーザ光の光量を変化させる。
【0026】
フォーカス用光量制御回路43は、コントローラ60に予め設定されるフォーカス基準光量を表すフォーカス基準光量信号とフォトディテクタ34から出力される受光信号との差電圧を算出してフォーカス光量フィードバック信号としてフォーカス用レーザ駆動回路44に出力する。ここでフォーカス基準光量とは、4分割フォトディテクタ38から出力される受光信号A〜Dを、対物レンズ28のフォーカスサーボ制御に必要な信号レベルにするために必要なレーザ光源31から出射されるフォーカス用レーザ光の光量をいう。フォーカス用レーザ駆動回路44は、コントローラ60からの指令に応じてレーザ光源31の作動の開始および停止を制御するとともに、フォーカス用光量制御回路43から出力されるフォーカス光量フィードバック信号に応じてレーザ光源31から出射するレーザ光の光量を変化させる。
【0027】
HF信号増幅回路45は、4分割フォトディテクタ38から出力された受光信号A〜Dをそれぞれ増幅して、フォーカスエラー信号生成回路46に出力する。フォーカスエラー信号生成回路46は、HF信号増幅回路45を介して4分割フォトディテクタ38から出力される受光信号A〜Dを用いて非点収差法によりフォーカスエラー信号を生成して、フォーカスサーボ制御回路47に出力する。フォーカスサーボ制御回路47は、フォーカスエラー信号に基づいてフォーカスサーボ信号を生成し、同フォーカスサーボ信号を用いてドライブ回路48を介してフォーカスアクチュエータ39を駆動制御することにより、対物レンズ28を光軸方向に変位させてフォーカスサーボ制御する。これにより、対物レンズ28に入射する初期化用レーザ光、初期化用レーザ光の反射光およびフォーカス用レーザ光による各光スポットが光ディスクDKの記録層上を追従するように制御される。
【0028】
角度調整装置51は、反射ミラー30の反射面の向きを光ディスクからの反射光の光軸に対して変化させる調整機構および同調整機構を駆動するパルスモータを備えており、光スポット間隔調整装置回路52から出力される制御信号に応じて反射ミラー30の反射面の向きを変化させる。光スポット間隔調整回路52は、後述する入力装置61からコントローラ60を介して入力される初期化用レーザ光による光スポットと同初期化用レーザ光の反射光による光スポットとの間隔を表す信号に応じて反射ミラー30を傾ける角度を計算し、同角度に対応するパルス信号からなる制御信号を生成して角度調整装置51に出力する。この光スポット間隔調整回路52には、作業者により前記両光スポットと反射ミラー30の傾き角度との相関関係を表すデータが予め設定されており、光スポット間隔調整回路52は、同相関関係を表すデータに基づいて制御信号を生成する。これら角度調整装置51および光スポット間隔調整回路52が、本発明に係る光スポット間隔変更手段に相当する。
【0029】
コントローラ60は、CPU、ROM、RAM、ハードディスク等からなり、キーボード、マウス等からなる入力装置61からの指示に従って図示しないプログラムを実行することにより、光ディスクDKの初期化を行う。また、コントローラ60には、CRTまたは液晶ディスプレイなどからなる表示装置62が接続されており、光ディスクDKの初期化の実行状態および実行結果が適宜表示される。また、このコントローラ60には、スピンドルモータ制御回路14、フィードモータ制御回路17、初期化用光量制御回路41、初期化用レーザ駆動回路42、フォーカス用光量制御回路43、フォーカス用レーザ駆動回路44および光スポット間隔調整回路52がそれぞれ接続されており、コントローラ60は、これらの各回路の作動を制御する。
【0030】
上記のように構成した本実施形態の作動について説明する。まず、作業者は、初期化を行う光ディスクDKを記録層が対物レンズ28に対向するように初期化装置にセットし、図示しない電源スイッチの投入により、コントローラ60を含む光ディスクの初期化装置の各種回路の作動を開始させる。次に、作業者は、レーザ光源21から出射される初期化用レーザ光によって光ディスクDKの記録層上に形成される楕円形状の光スポットと反射ミラー30によって反射された反射光によって同記録層上に形成される同楕円形状の光スポットとの間隔をコントローラ60に指示する。具体的には、作業者は入力装置61を操作して両光スポット間の間隔をコントローラ60に指示する。この両光スポット間の間隔は、光ディスクDKの種類、レーザ光源21の光強度および記録層上に形成される両光スポットの大きさなどに応じて適宜指示される。本実施形態においては、両光スポットの長軸間の間隔として2〜5μmが適当である。
【0031】
コントローラ60は、作業者によって指示された前記両光スポット間の間隔を表す信号を光スポット間隔調整回路52に出力する。光スポット間隔調整回路52は、コントローラ60から出力された両光スポット間の間隔を表す信号に基づいて、反射ミラー30を傾ける角度を計算し、同角度に対応するパルス信号からなる制御信号を生成して角度調整装置51に出力する。この場合、光スポット間隔調整回路52は、前記両光スポットの間の間隔と反射ミラー30の傾き角度の相関関係を表すデータに基づいて制御信号を生成する。角度調整装置51は、光スポット間隔調整回路52から出力される制御信号に応じてパルスモータを回転駆動させることにより調整機構を介して反射ミラー30の向きを変化させる。これにより、作業者が指示した両光スポット間の間隔に対応した向きに反射ミラー30の向きが調整される。なお、このようにして調整された反射ミラー30の向きは、新たに調整作業が行われるまで維持される。
【0032】
次に、作業者は、入力装置61を操作して光ディスクDKの初期化をコントローラ60に指示する。この初期化の指示に応答してコントローラ60は、図示しないプログラムの実行により、光ディスクDKの初期化を開始する。まず、コントローラ60は、フィードモータ制御回路17を作動させて光ディスクDKを初期化開始位置に移動させる。この初期化開始位置は、レーザ光が光ディスクDKの最外周部に照射される位置である。次に、コントローラ60は、スピンドルモータ制御回路14を作動させてフィードモータ制御回路17から入力する光スポットの光ディスクDKにおける径方向位置を表す情報とコントローラ60によって設定された線速度とから計算した回転速度で光ディスクDKを回転させる。
【0033】
次に、コントローラ60は、対物レンズ28のフォーカスサーボ制御を開始させる。具体的には、コントローラ60は、フォーカス用レーザ駆動回路44を介してレーザ光源31からフォーカス用レーザ光を出射させる。レーザ光源31から出射したフォーカス用レーザ光は、コリメートレンズ32、偏光ビームスプリッタ33、ダイクロイックミラー25、立上ミラー26、1/4波長板27および対物レンズ28を介して光ディスクDKに導かれ、図2に示すように、同光ディスクDKの記録層付近に円形の光スポットSPを形成する。
【0034】
光ディスクDKからの反射光は、対物レンズ28、1/4波長板27、立上ミラー26、ダイクロイックミラー25、偏光ビームスプリッタ33、ダイクロイックミラー35、集光レンズ36およびシリンドリカルレンズ37を介して4分割フォトディテクタ38に導かれ、同4分割フォトディテクタ38により受光量に応じた受光信号A〜Dに変換される。この受光信号A〜Dは、HF信号増幅回路45を介してフォーカスエラー信号生成回路46に供給され、同フォーカスエラー信号生成回路46、フォーカスサーボ制御回路47およびドライブ回路48によりフォーカスアクチュエータ39を駆動制御して対物レンズ28のフォーカスサーボ制御が開始される。なお、この場合、レーザ光源31から出射されたフォーカス用レーザ光の一部は、偏光ビームスプリッタ33を介してフォトディテクタ34により受光量に応じた受光信号に変換され、フォーカス用光量制御回路43およびフォーカス用レーザ駆動回路44による光量制御に用いられる。これにより、レーザ光源31から出射されるフォーカス用レーザ光の光量が、対物レンズ28のフォーカスサーボ制御に必要な一定光量、すなわち、フォーカス基準光量に保たれる。
【0035】
次に、コントローラ60は、初期化用レーザ駆動回路42を介してレーザ光源21から初期化用レーザ光を出射させる。レーザ光源21から出射した初期化用レーザ光は、コリメートレンズ22、ダイクロイックミラー23、偏光ビームスプリッタ24、ダイクロイックミラー25、立上ミラー26、1/4波長板27および対物レンズ28を介して光ディスクDKに導かれ、図2に示すように、光ディスクDKの記録層上に楕円形状の第1の光スポットSPを形成する。この場合、ダイクロイックミラー23に入射した初期化用レーザ光の一部はフォトディテクタ29に導かれ、同フォトディテクタ29により受光量に応じた受光信号に変換されて初期化用光量制御回路41および初期化用レーザ駆動回路42による光量制御に用いられる。これにより、レーザ光源21から出射される初期化用レーザ光の光量が、記録層の初期化に必要な一定光量、すなわち、初期化基準光量に保たれる。
【0036】
第1の光スポットSPの反射光は、対物レンズ28、1/4波長板27、立上ミラー26、ダイクロイックミラー25および偏光ビームスプリッタ24を介して反射ミラー30に導かれる。この場合、初期化用レーザ光の光強度が非常に大きいため、同初期化用レーザ光の反射光の一部がダイクロイックミラー25で反射して偏光ビームスプリッタ33に導かれるが、偏光ビームスプリッタ33およびダイクロイックミラー35によって、同反射光が4分割フォトディテクタ38に導かれることはない。すなわち、偏光ビームスプリッタ33に導かれた初期化用レーザ光の反射光の一部は偏光ビームスプリッタ33により反射されてダイクロイックミラー35に導かれる。そして、ダイクロイックミラー35は、波長810nmのレーザ光を反射するため、同初期化用レーザ光の反射光を入射方向に直交する方向(図示下側)に反射する。
【0037】
反射ミラー30に導かれた第1の光スポットSPの反射光は、同反射ミラー30によって反射されて、再度、偏光ビームスプリッタ24、ダイクロイックミラー25、立上ミラー26、1/4波長板27および対物レンズ28を介して光ディスクDKに導かれ、図2に示すように、同光ディスクDKの記録層上に楕円形状の第2の光スポットSPを形成する。この場合、反射ミラー30は、前記したように、初期化用レーザ光の反射光の光軸に対して所定の角度、すなわち、作業者により指示された間隔に対応する角度で傾斜しているため、記録層上に形成される第2の光スポットSPは、第1の光スポットSPに対して同第1の光スポットSPの移動方向の前方側であって同作業者により指示された間隔を隔てて形成される。
【0038】
なお、フォーカス用レーザ光によって形成される円形状のフォーカス用光スポットSPは、前記したように、第1の光スポットSPの移動方向における後方側に形成される。このように、フォーカス用光スポットSPを第1の光スポットSPの後方側に形成するのは、初期化された記録層、すなわち結晶化した記録層は反射率が高いため、同初期化された記録層にフォーカス用光スポットSPを形成することにより、フォーカス用レーザ光の光強度を小さくできるからである。また、フォーカス用光スポットSPからの反射光(S偏光)の極一部がダイクロイックミラー25を透過して偏光ビームスプリッタ24に導かれるが、同偏光ビームスプリッタ24は、波長660nmの光でもS偏光の偏光方向を有するレーザ光の大部分を反射するため、反射ミラー30に導かれる同反射光は無視できるほど小さい。
【0039】
次に、コントローラ60は、光ディスクDKの記録層の初期化処理を開始する。初期化処理は、楕円形状の第1の光スポットSPおよび第2の光スポットSPを光ディスクDKの記録層に形成した状態で、光ディスクDKの最外周部から最内周部に向かって行われる。具体的には、コントローラ60は、フィードモータ制御回路17にてエンコーダ12aからの回転検出信号によって計算される光ディスクDKにおける第1の光スポットSPの径方向位置を表す情報と、コントローラ60によって設定された線速度および光ディスクDK上における光スポットの長径とから計算される光ディスクDKの径方向移動速度を表す信号をフィードモータ制御回路17に出力し、フィードモータ制御回路17はこの径方向移動速度を表す信号に応じた速度でフィードモータ12の回転を制御する。これにより、記録層上に形成された第1の光スポットSPおよび第2の光スポットSPは、光ディスクDKにおける最外周部から最内周部に向かって移動する。この場合、コントローラ60は、光ディスクDK上に形成される楕円形状の第1の光スポットSPおよび第2の光スポットSPの光ディスクDKの径方向外周側の端部を、既に初期化された記録層の内周側の端部に重なるように移動させる。なお、この重なり量は、作業者により予めコントローラ60に設定される。
【0040】
記録層の初期化においては、初期化されようとしている領域に先ず第2の光スポットSPが照射されて同領域が熱せられた後に、第1の光スポットSPが照射されて初期化が行われる。この場合、第2の光スポットSPの光強度は第1の光スポットSPの光強度の3割程度の光強度であるため、同領域が第2の光スポットSPによって完全に初期化されることはない。一方、第1の光スポットSPにより初期化されようとしている領域は、第2の光スポットSPにより予め熱せられた状態であるため、第1の光スポットSPが照射されることにより同領域は全域に亘って短時間に結晶化温度に達することができる。これにより、第2の光スポットSPおよび第1の光スポットSPが照射された領域が短時間に均一に初期化される。
【0041】
このような初期化処理が、光ディスクDKの最外周部から最内周部に亘って実行されると、コントローラ60は、スピンドルモータ制御回路14、初期化用光量制御回路41、初期化用レーザ駆動回路42、フォーカス用光量制御回路43およびフォーカス用レーザ駆動回路44の作動を停止させるとともに、光ディスクDKを初期化開始位置に復帰させる。これにより、対物レンズ28のフォーカスサーボ制御が停止するとともに、レーザ光源21およびレーザ光源31からのレーザ光の出射がそれぞれ停止する。また、光ディスクDKが初期化開始位置に復帰する。
【0042】
なお、光ディスクDKに対する初期化用レーザ光による第1の光スポットSPおよび第2の光スポットSPの走査においては、光ディスクDKの最内周から最外周まで外側に向かって走査するようにしてもよい。作業者は、表示装置62の表示を確認した後、初期化装置から光ディスクDKを取り外し、新たに初期化する光ディスクDKがある場合には、新たな光ディスクDKを前記と同様に初期化装置にセットして初期化作業を行う。この場合、第1の光スポットSPと第2の光スポットSPとの間隔を調整する必要がなければ、新たな光ディスクDKに対して続けて初期化処理を行えばよい。
【0043】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、レーザ光源21から出射され光ディスクDK上に形成された第1の光スポットSPの反射光を、反射ミラー30によって反射して再び光ディスクDK上に導いて第2の光スポットSPを形成している。この場合、第2の光スポットSPは、第1の光スポットSPの移動方向における前側であって同第1の光スポットSPの近傍に形成される。このため、光ディスクDKの記録層が初期化される際、初期化の対象である記録層は、まず第2の光スポットSPにより予め熱せられた状態で第1の光スポットSPにより初期化される。すなわち、第2の光スポットSPによって初期化の対象である記録層の温度上昇を開始させ、その後第1の光スポットSPの照射によって同記録層の温度を徐々に上昇させることができるので、1つの初期化用の光スポットを用いて初期化する場合に比べて、適正な光量の光スポットで急激な温度上昇を伴うことなく、前記記録層の温度を結晶化温度に上昇させることができる。また、初期化対象である記録層を第2の光スポットSPおよび第1の光スポットSPからなる2段階で熱しているので、結果として、第1の光スポットの光ディスクに対する相対的な移動速度を上げることができ、初期化作業の効率を良好にすることができる。さらに、本発明に係る光ディスクDKの初期化装置においては、1つのレーザ光源21を初期化用のレーザ光源としているため、2つのレーザ光源を用いる場合に比べて、レーザ光源のメンテナンス作業の負担を軽減することができるとともに、初期化装置の構成を複雑にすることなく安価に構成することができる。
【0044】
また、光スポット間隔調整回路52および角度調整装置51により第1の光スポットSPと第2の光スポットSPとの間隔を変更することができる。この結果、レーザ光源21から出射される初期化用レーザ光の光量(光強度)や光ディスクの記録層の種類に応じて適宜、両光スポットの間隔を変更することができ、初期化精度を良好に維持することができる。
【0045】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0046】
上記実施形態においては、反射ミラー30によって反射された反射光の光量を調整することなく光ディスクDKの記録層に導き第2の光スポットSPを形成するように構成したが、同第2の光スポットSPの光量が必要以上に大きい場合には、第2の光スポットSPを形成するための反射光の光量を必要な光量に減じるように構成してもよい。例えば、反射ミラー30によって反射される反射光の光路上、例えば偏光ビームスプリッタ24と反射ミラー30との間に透過光量を減じるNDフィルタまたは偏光子などからなる光量調整器を介装するとよい。
【0047】
また、この場合、図3に示すように、反射ミラー30によって反射され、再度光ディスクDKに導かれる反射光の光量を所定の光量に維持できるように構成にしてもよい。例えば、図3に示す初期化装置は、図1に示す初期化装置に対して光量調整器71、フォトディテクタ72、位置調整装置53および反射光量制御回路54を追加した構成となっている。光量調整器71は、偏光ビームスプリッタ24と反射ミラー30との間に配置され、反射ミラー30によって反射された反射光の光量を減じるNDフィルタにより構成されている。NDフィルタは、入射した光に対して同入射光の光量を減じつつ透過させる光学素子であり、本変形例においては、偏光ビームスプリッタ24を透過して導かれる光ディスクDKからの反射光の光量を減じて反射ミラー30に導くとともに、同反射ミラー30によって反射された反射光の光量も減じて偏光ビームスプリッタ24に導く。この場合、NDフィルタは、入射した光の入射位置によって透過する光の光量が異なる。換言すれば、NDフィルタに入射する光の入射位置によって減じられる光量が異なる。したがって、この光量調整器71は、光ディスクDKからの反射光および反射ミラー30から反射した反射光の光軸に対して直線的に変位(図において上下方向)するように光ピックアップ装置20内に組み付けられている。
【0048】
フォトディテクタ72は、偏光ビームスプリッタ24によって入射方向に直交する方向(図示上側)に反射された反射ミラー30から導かれる反射光の光路上に設けられ、偏光ビームスプリッタ24によって反射された反射光(P偏光)を受光して、同受光量に応じた電気信号を受光信号として反射光量制御回路54に出力する。なお、偏光ビームスプリッタ24は、入射した反射ミラー30からの反射光(P偏光)の一部(例えば5%)をフォトディテクタ72に向けて反射するように構成されている。位置調整装置53は、反射ミラー30から導かれる反射光に対する光量調整器71の入射面の位置を変化させる調整機構および同調整機構を駆動するパルスモータを備えており、反射光量制御回路54から出力される反射光量制御信号に応じて光量調整器71の位置を直線的に変化させる。
【0049】
反射光量制御回路54は、コントローラ60に予め設定される反射基準光量を表す反射基準光量信号とフォトディテクタ72から出力される受光信号(反射ミラー30から導かれる反射光の光量)との差電圧を算出して、同差電圧が表す光量差を補正するための光量調整器71の変位量を計算し、同変位量に対応するパルス信号からなる反射光量制御信号を位置調整装置53に出力する。ここで反射基準光量とは、光ディスクDKの記録層上に形成される第2の光スポットSPの必要とされる光量である。この反射光量制御回路54には、作業者により前記光量差と光量調整器71の変位量との相関関係を表すデータが予め設定されており、反射光量制御回路54は、同相関関係を表すデータに基づいて反射光量制御信号を生成する。
【0050】
このように構成された本変形例に係る光ディスクの初期化装置においては、光ディスクDKの記録層に形成された第1の光スポットSPからの反射光(P偏光)は、対物レンズ28、1/4波長板27、立上ミラー26、ダイクロイックミラー25、偏光ビームスプリッタ24および光量調整器71を介して反射ミラー30に導かれる。そして、反射ミラー30によって反射された反射光は、偏光ビームスプリッタ24にてその一部が反射してフォトディテクタ72に導かれる。フォトディテクタ72は、受光量に応じた受光信号を反射光量制御回路53に出力する。反射光量制御回路54は、フォトディテクタ72から出力される受光信号とコントローラ60から出力される反射基準光量を表す反射基準光量信号とを用いて光量調整器71を変位させるための反射光量制御信号を生成して、位置調整装置53に出力する。位置調整装置53は、同反射光量制御信号に応じて光量調整器71の位置を直線的に変位させる。これにより、反射ミラー30によって反射され光ディスクDKに導かれる反射光の光量が、反射基準光量に保たれる。この結果、レーザ光源21から出射される初期化用レーザ光の光量(光強度)や光ディスクDKの記録層の種類に応じて適宜、第2の光スポットSPの光量を変更することができ、初期化精度を良好に維持することができる。
【0051】
なお、光量調整器71は、反射ミラー30によって反射された反射光の光量を調整できればよいので、NDフィルタに代えて偏光子または液晶素子を用いてもよい。偏光子は、入射する光に対する向きに応じて透過する光量が変化する光学素子である。この偏光子を光量調整器71として用いた場合、位置調整装置53は偏光子を回転させることにより、反射ミラー30によって反射された反射光の光軸に対して偏光子の向きを変化させる。また、液晶素子は、電気信号の供給により透過する光量が変化する素子である。この液晶素子を光量調整器71として用いた場合、反射光量制御回路54は、前記光量差に応じて液晶素子の光透過特性を変化させる電気信号を同液晶素子に供給するように構成する。また、これらのNDフィルタ、偏光子および液晶素子を組み合わせて光量調整器71を構成することもできる。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0052】
また、上記実施形態においては、レーザ光源31から出射されるフォーカス用レーザ光を用いて対物レンズ28のフォーカスサーボ制御を行うように構成したが、レーザ光源21から出射される初期化用レーザ光を用いて同対物レンズ28のフォーカスサーボ制御を行うこともできる。例えば、図4に示すように、SSD法(スポットサイズ法)を用いて対物レンズ28のフォーカスサーボ制御を行うことができる。図4に示す初期化装置は、図1に示す初期化装置におけるレーザ光源31、コリメートレンズ32、偏光ビームスプリッタ33、フォトディテクタ34、ダイクロイックミラー25,35、集光レンズ36、シリンドリカルレンズ37、4分割フォトディテクタ38に代えて、偏光ビームスプリッタ73、集光レンズ74、ビームスプリッタ75、4分割フォトディテクタ76,77により構成されている。偏光ビームスプリッタ73は、入射したレーザ光のうちS偏光の偏光方向を有するレーザ光を透過させるとともに、P偏光の偏光方向を有するレーザ光の一部(例えば5%)を入射方向に直交する方向(図示下側)に反射させる。集光レンズ74は、偏光ビームスプリッタ73にて反射された反射光(P偏光)の光軸上に配置され、同反射光をビームスプリッタ75を介して所定の位置に集光させる。
【0053】
ビームスプリッタ75は、集光レンズ74を介して入射した反射光の一部を透過させて4分割フォトディテクタ76に導くとともに、他の一部を入射方向に直交する方向(図示右側)に反射させて4分割フォトディテクタ77に導く。4分割フォトディテクタ76,77は、対物レンズ28が光ディスクDKに合焦している場合における集光レンズ74の合焦点から光学的に前後等距離の位置にそれぞれ配置されている。この4分割フォトディテクタ76,77は、それぞれ分割線で区切られた互いに等しい受光面積を持つ4つの同一ひし形形状の受光素子からなる4分割受光素子によって構成されおり、各受光素子は受光量に比例した受光信号A1〜D1および受光信号A2〜D2をそれぞれ出力する。これらの受光信号A1〜D1および受光信号A2〜D2は、それぞれHF信号増幅回路55,56によって増幅された後、フォーカスエラー信号生成回路46に供給される。フォーカスエラー信号生成回路46は、4分割フォトディテクタ76,77からそれぞれ出力される受光信号A1〜D1および受光信号A2〜D2を用いてSSD法によりフォーカスエラー信号{(A1+B1−(C1+D1))−(A2+B2−(C2+D2))}を生成して、フォーカスサーボ制御回路47に出力する。これによれば、対物レンズ28のフォーカスサーボ制御のためのレーザ光源31などの構成部品が不要となり、光ピックアップ装置20を構成する部品の点数を少なくすることができ、初期化装置の構成をより簡単かつコンパクトに構成することができる。
【0054】
また、上記実施形態においては、光ディスクDKの記録層に楕円形状の第1の光スポットSPおよび第2の光スポットSPを形成するため、断面形状が楕円形状の初期化用レーザ光を出射するレーザ光源21を用いたが、光ディスクDKの記録層に楕円形状の第1の光スポットSPおよび第2の光スポットSPを形成することができれば、これに限定されるものではない。例えば、断面形状が円形状の初期化用レーザ光を出射するレーザ光源を用いるとともに、同レーザ光源の光軸上にシリンドリカルレンズ等の光学系を配設し、レーザ光源から出射される円形状の初期化用レーザ光の光スポット形状を楕円形状に変形させるようにしてもよい。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0055】
また、上記実施形態においては、断面形状が楕円形状の初期化用レーザ光を出射するレーザ光源21を用いたが、光ディスクDKの記録層を初期化できる光強度を有するレーザ光を出射するレーザ光源であれば、これに限定されるものではない。すなわち、断面形状が楕円形状の初期化用レーザ光を用いたのは、各1つの第1の光スポットSPおよび第2の光スポットSPによって複数のトラックを同時に初期化して光ディスクDKの初期化作業を効率的に行うためである。したがって、光ディスクDKの初期化効率を問題としなければ、例えば、断面形状が円形状の初期化用レーザ光を出射するレーザ光源を用いて円形状の第1の光スポットSPおよび第2の光スポットSPにより初期化を行うようにしてもよい。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0056】
また、上記実施形態においては、角度調整装置51および光スポット間隔調整回路52を用いて、反射ミラー30の向きを自動で変化させるように構成したが、反射ミラー30の向きを手動で調整できる機構を設けて、同反射ミラー30の向きを手動操作により変化させるように構成してもよい。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。なお、反射ミラー30の向きが所定の向きで固定であって調整する必要がない場合には、同反射ミラー30を光ピックアップ装置20に対して同所定の向きで固定的に取り付けるようにしてもよい。これによれば、反射ミラー30の向きを変化させる構成、すなわち位置調整装置53および反射光量調整回路54が不要となり初期化装置の構成を簡単かつコンパクトにすることができる。
【0057】
また、上記実施形態においては、光ディスクDKをスピンドルモータ11により回転させるとともに、同光ディスクDKを径方向に移動させて記録層の初期化を行うように構成したが、光ディスクDKの記録層に対して相対的に第1の光スポットSPおよび第2の光スポットSPを移動させる構成であれば、これに限定されるものではない。例えば、テーブル上に固定された光ディスクDKに対して、同光ディスクDKの直径に対応する長さの第1の光スポットSPおよび第2の光スポットSPを光ディスクDKの一端側から他端側に向けて連続的に移動させることにより記録層を初期化するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスクの初期化装置の全体を概略的に示すブロック図である。
【図2】光ディスク上に形成される光スポットの位置関係を説明するための説明図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る光ディスクの初期化装置の全体を概略的に示すブロック図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る光ディスクの初期化装置の全体を概略的に示すブロック図である。
【符号の説明】
【0059】
DK…光ディスク、10…回転駆動装置、11…スピンドルモータ、12…フィードモータ、20…光ピックアップ装置、21,31…レーザ光源、23,25,35…ダイクロイックミラー、24,33…偏光ビームスプリッタ、28…対物レンズ、30…反射ミラー、41…初期化用光量制御回路、42…初期化用レーザ駆動回路、51…角度調整装置、52…光スポット間隔調整回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに向けてレーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光して、光ディスクの記録層上に第1の光スポットを形成する光学レンズと、
前記第1の光スポットによる光ディスクからの反射光を反射し、前記光学レンズを介して光ディスクの記録層上に前記第1の光スポットとは異なる第2の光スポットを形成する反射ミラーと、
前記記録層上に形成された第1の光スポットおよび第2の光スポットを、光ディスクに対して相対的に移動させる光スポット移動手段とを備え、
前記第1の光スポットの相対移動方向における前方側であって同第1の光スポットの近傍に前記第2の光スポットを形成して、光ディスクの記録層を初期化するようにしたことを特徴とする光ディスクの初期化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスクの初期化装置において、さらに、
前記第1の光スポットと前記第2の光スポットとの間隔を変更する光スポット間隔変更手段を備えた光ディスクの初期化装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光ディスクの初期化装置において、
前記光スポット間隔変更手段は、前記第1の光スポットによる光ディスクからの反射光の光軸に対して前記反射ミラーの向きを変更することにより、前記第1の光スポットと前記第2の光スポットとの間隔を変更する光ディスクの初期化装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載の光ディスクの初期化装置において、さらに、
前記第1の光スポットによる光ディスクからの反射光の光量を検出する反射光量検出手段と、
前記第2の光スポットを形成する反射光の光路上に設けられ、同反射光の透過光量を調整する反射光量調整器と、
前記反射光量検出手段により検出された反射光の光量に応じて、前記反射光量調整器を透過する反射光の光量が所定の光量となるように、前記反射光量調整器を制御する反射光量調整器制御手段とを備えた光ディスクの初期化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−141302(P2007−141302A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331261(P2005−331261)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】