説明

光ディスクドライブ記憶システム、光リードヘッドの動きを制御する方法およびスライディングモードコントローラ

【課題】パラメータの変化に対する感度がそれほど高くはなく、遷移をよりよく制御可能であり、しかも複雑な適応線形コントローラの実施コストを削除できる光ディスクドライブサーボ制御システムを提供する。
【解決手段】光ディスク記憶システムは、フォーカスキャプチャ、フォーカストラッキング、トラックシークおよびセンタライントラッキングのあいだ光リードヘッドアセンブリを光ディスク上でアクチュエートするスライディングモードコントローラを備えている。このスライディングモードコントローラは、ある位相状態(例えば、リードヘッドの位置誤差および速度)を当てはめることにより所定の位相状態軌跡に追従するために正および負のフィードバックを切り替えて動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学記憶システムに関する。より具体的には、本発明は、光ディスクドライブにおけるリードヘッドアクチュエータの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
CD−ROMのような光ディスクドライブは、通常、大量のディジタルデータを一枚のディスク上に格納して、オーディオ/ビデオまたはコンピュータなどに応用するために用いられている。光ディスク上のデータは、典型的には、複数のトラックをなして配列された一連の「ピット」として記録される。トラック上では、それぞれのピットの長さにより、2値の「0」ビットが存在するのか、あるいは「1」ビットが存在するのかが決定される。このように記録されたデータを読み出すために、サーボシステムは、ディスクの表面にレーザビームをフォカシングし、そこから反射されたビームの特性によってデータピットを検出できるようにする。
【0003】
この目的を達成するために、サーボシステムは以下の4つの動作をおこなう。すなわち、(1)初期フォーカス位置を「引き込む」ためのキャプチャ動作と、(2)ビームを所望のトラックに移動させるためのシーク動作と、(3)記録されたデータを読み出しながら、選択されたトラックのセンタライン上にビームを保持するためのセンタライントラッキング動作と、(4)ディスクがビーム上を旋回する時に適正な焦点を維持するためのフォーカストラッキング動作と、の4つである。
【0004】
従来の光ディスクドライブは、対物レンズを通して光ディスクの表面上にフォーカシングされるレーザビームを発生するレーザダイオードを含むヘッドアセンブリを用いる。図1は、典型的な3ビーム光ヘッドアセンブリを図示している。このようなヘッドアセンブリの動作は、当業者には公知である。レーザダイオード1は、光ビームを生成し、生成された光ビームは、メインビームを3本の別々のビーム2(すなわち、1本のセンタビームと2本のサイドビームと)に分割する回折格子(不図示)を通過する。その後、3本のビーム2は、偏光ビームスプリッタ3と、コリメータレンズ(不図示)とを通過する。そして、光ビーム2は、プリズム4に反射され、対物レンズ(OL)5を通った後、光ディスク(不図示)の表面に入射する。ビーム2は、光ディスクにより反射され、再びOL5を通った後、プリズム4により偏光プリズム3へと逆方向に反射される。偏光プリズム3は、センタビームを4分割光検出器6へと偏向させ、2本のサイドビームを2つのトラッキングフォトダイオード(7A、7B)へと偏向させる。4分割光検出器6は、OL5をフォーカシングするためのフォーカス誤差信号(FES)を発生し、記録されたデータを読み出すためのRFリード信号を発生する。トラッキングフォトダイオード(7A、7B)は、ディスクからデータを読み出しながら、OL5の位置を選択されたトラックのセンタライン上に維持するのに用いられるトラッキング誤差信号(TES)を発生する。
【0005】
シーク動作時にリードヘッドを選択されたトラック上に位置づけるために、リードヘッドが所望のトラックの近くに位置づけられるまで、スレッドアセンブリ8の全体が、光ディスクの下でリードスクリュー9に沿って半径方向にスライドする。この粗い位置づけ(または、粗いシーク)は、リードスクリュー9を時計回り方向または反時計回り方向に回転させることにより実現される。いったん選択されたトラックの近くに到達すると、「微細なシーク」動作では、OL5が所望のトラックの真上に位置づけられるまで、OL音声コイルモータ(OLVCM)(10A、10B)が、OLキャリジユニット11をプラスチックのヒンジ12の周
囲に回転させる。そして、ディスクが回転し、トラックがリードヘッドの下を通過する時に、「トラッキング」動作では、OLVCM(10A、10
B)は、情報がディスクから読み出される間、OL5の位置を選択されたトラックのセンタライン上に維持するための微調整をおこなう。
【0006】
OL VCM(10A、10B)は、その中央の位置のいずれかの側におけるおよそ200本のトラックにわたる範囲で、OLキャリジユニット11を(したがってOL5そのものも)プラスチックのヒンジ12の周囲に回転させることができる。よって、もしシーク動作時に、選択されたトラックが、現在のトラックの200本のトラックの中にあれば、OLキャリジユニット11は、スレッドアセンブリ8をリードスクリュー9に沿ってスライドさせるまでもなく、全シーク動作をおこなうことができる。短いシーク動作の最後に、選択されたトラックのセンタラインをトラッキングしながら、リードスクリュー9は、OLキャリジユニット11が再びその中央位置に戻るまで、スレッドアセンブリ8を選択されたトラックに向かってゆっくりとスライドさせる。
【0007】
OL VCM(10A、10B)は、また、OL5の焦点位置を「キャプチャ」し、か
つ「トラッキング」するために、OLキャリジユニット11を図示されている上下の方向に動かすことができる。焦点のキャプチャおよび焦点のトラッキングのために、4分割光検出器6は、OL5と光ディスクとの間の距離を示す非点較差フォーカス誤差信号を発生する。キャプチャ動作のはじめに、OLキャリジユニット11は、まずディスクから十分に離れた位置に位置づけられる。したがって、このとき、ユニット11に焦点は合っていない。その後、OLVC
M(10A、10B)は、OL5がその焦点引き込み範囲内にあることを4分割光検出器6が示すまで、フォーカスサーボループを開にしたままで、OLキャリジユニット11をゆっくりとディスクに向かって移動させる。いったん引き込み範囲内に入ると、フォーカスサーボループは閉じられ、初期フォーカス位置がキャプチャされる。その後、OL V
CM(10A、10B)は、リードヘッドが選択されたトラックへとシークし、ディスクからデータを読み出す間に、非点較差フォーカス誤差信号(FES)に応答して、インフォーカス位置をトラッキングする。
【0008】
図2は、4分割光検出器6上の変化していくイメージが、どのようにしてフォーカス誤差信号(FES)を発生するかを図示している。ディスク表面が、まさにOL5の焦点にあるときには、円形のスポットが、4分割光検出器6の中心に当たる。ディスクとOL5との間の距離が小さくなると、反射されたイメージは楕円形になる。同様に、ディスクとOL5との間の距離が大きくなっても、楕円形のパターンが再び得られるが、そのパターンは、最初の楕円形のパターンからは90度回転したものになる。よって、図3に示すように、4分割光検出器6は、(A+C)−(B+D)に従ってフォーカス誤差信号(FES)を発生し、(A+B+C+D)に従ってRFリード信号を発生する。図4は、フォーカス誤差信号(FES)と、OL5および光ディスク間の距離との関係をプロットしている。図4のプロットにおいて、直線領域は、フォーカスキャプチャ動作に対応する焦点「引き込み」範囲を規定している。
【0009】
4分割光検出器6と同様に、トラッキングフォトダイオード(7A、7B)もまた、サーボ制御システムにより用いられるトラッキング誤差信号(TES)を発生することによって、ディスクがビーム上を旋回している間に、OL5を、選択されたトラックのセンタライン上に維持する。図5は、トラッキングフォトダイオード(7A、7B)が、サイドビームの強度に応じてトラッキング誤差信号(TES)を発生するようすを示している。まさにトラックのセンタライン上に位置づけられている時には、トラッキング誤差信号はゼロである。一方、センタラインの左または右に位置づけられている時には、トラッキング誤差信号(TES)は、それぞれ正または負になる。よって、トラッキング誤差信号(TES)は、図6に図示されているように、(E−F)として発生される。図7は、トラッキング誤差信号(TES)とミストラッキングとの間の関係を示すプロットである。図7のプロットにおいて、直線領域は、トラッキング動作に対応する引き込み領域を示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光ディスクドライブのリードヘッドアクチュエータを、フォーカスキャプチャ、フォーカストラッキング、トラックシークおよびセンタライントラッキングについて制御する際には、多くの固有の問題点がある。有意な局面としては、例えば、ディスクドライブ間のサーボシステムにおけるパラメータの変化と同様に、温度やボルトドリフトのようなさまざまな内在要因が原因で発生するパラメータの変化もその範囲が広いことが挙げられる。サーボシステムは、常にデータレートおよび密度を高めていきながら適正に動作するためには、このようなパラメータの変化を補償できるものでなければならない。
【0011】
別の問題点としては、上述したキャプチャ動作が必ずしも上首尾に終了できるわけではないことが挙げられる。それどころか、図4に示されているフォーカス誤差信号(FES)の直線領域により規定される引き込み範囲のオーバシュートが原因で失敗に終わることもある。つまり、フォーカスサーボループ(図28を参照のこと)を閉じる際には、ディスク/ヘッドの相対的な速度変化、表面の汚れ、およびフォーカスVCMの駆動力といった要因に伴って変動する、有意なキャプチャ遷移が伴う。このことが原因で、光学記憶装置は、通常、キャプチャ動作を何回も反復できるように設計されている。
【0012】
さらに別の問題点としては、シーク動作時に焦点を維持すると、フォーカスサーボループに対して大きな外乱を与えることになることが挙げられる。もしシーク中に焦点が失われると、記憶システムは一時停止した後、あらためてフォーカスキャプチャ動作をおこなわなければならない。その結果、シーク時間は大幅に長くなってしまう。
【0013】
光ディスクサーボシステムに関わるまた別の問題点としては、フォーカストラッキングとセンタライントラッキングループとの間に起こる光結合現象またはフィードスルー現象がある。米国特許第5,367,513号は、光フィードスルーの問題に対する解決案の一例を開示しているが、この特許には、本発明によれば克服可能ないくつかの欠点(主に、実施の際のコストに関わる)もある。
【0014】
光学記憶システム内に見受けられる従来のサーボシステムは、典型的には、比例・積分・微分(PID)フィードバックおよび/または状態推定器を用いて、線形のコントローラを実施している。しかし、従来の線形コントローラに伴う問題点としては、そのようなコントローラが、サーボシステムにおけるパラメータの変化と、外部負荷による外乱に対して過剰に感度が高いことが挙げられる。従来の適応線形コントローラは、複雑な較正ルーチンを実行することによって、または、コントローラを連続的に再プログラミングすることによって、このようなパラメータの変化および外乱を補償して、この感度の問題を克服しようとしている。しかし、適応線形コントローラは複雑であり、機械的共振をフィルタリングするためにノッチフィルタを必要とすることもある。さらに、従来の線形コントローラは、光ディスクドライブ用のアクチュエータを制御する際に存在する上述した固有の問題点を解決するには適していない。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、パラメータの変化に対する感度がそれほど高くはなく、遷移をよりよく制御可能であり、しかも複雑な適応線形コントローラの実施コストを削除できる光ディスクドライブサーボ制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による光ディスクドライブ記憶システムは、ディジタルデータを記録する光ディスクドライブ記憶システムであって、(a)複数のデータトラックがその上に記録されている、少なくとも1つの回転する光ディスクと、(b)該光ディスク上に位置づけられ、該光ディスクから該ディジタルデータを読み出す光リードヘッドと、(c)該リードヘッドに接続されており、該リードヘッドを該光ディスクの上に位置づけるアクチュエータと、(d)該アクチュエータに接続されており、モータ制御信号を受け取る入力を有するモータであって、該アクチュエータの動きを制御するモータと、(e)少なくとも1つの位相状態信号を発生する位相状態発生器と、(f)該少なくとも1つの位相状態信号に応答して、該モータ制御信号を発生するスライディングモードコントローラと、を備えており、そのことにより上記目的が達成される。
【0017】
ある実施形態では、前記位相状態発生器が状態推定器を備えている。
【0018】
ある実施形態では、前記スライディングモードコントローラがシークモードで動作することによって、前記リードヘッドを現在のトラックから選択されたトラックへと移動させる。
【0019】
ある実施形態では、前記スライディングモードコントローラがトラッキングモードで動作することによって、前記リードヘッドを、選択されたトラックのセンタライン上に維持する。
【0020】
ある実施形態では、前記スライディングモードコントローラがフォーカスモードで動作することによって、前記リードヘッドを前記ディスク上のフォーカス位置に維持する。
【0021】
ある実施形態では、前記少なくとも1つの位相状態信号が、所望のアクチュエータ位置と、推定されたアクチュエータ位置との間の差に比例するアクチュエータ位置誤差信号を含んでいる。
【0022】
ある実施形態では、前記少なくとも1つの位相状態信号が、アクチュエータの位置の誤差の導関数に比例するアクチュエータ位置誤差速度信号を含んでいる。
【0023】
ある実施形態では、前記少なくとも1つの位相状態信号が、基準アクチュエータ速度と、推定されたアクチュエータ速度との間の差に比例するアクチュエータ速度誤差信号を含んでいる。
【0024】
ある実施形態では、前記少なくとも1つの位相状態信号が、アクチュエータの速度の導関数に比例するアクチュエータ加速信号を含んでいる。
【0025】
ある実施形態では、(a)前記光ディスクドライブ記憶システムが少なくとも2つの位相状態を有しており、(b)前記スライディングモードコントローラが、第1の構造と第2の構造との間でスイッチングし、(c)該第1の構造が、ある位相平面に関して該2つの位相状態を変化させることにより、第1の位相軌跡に追従し、(d)該第2の構造が、該位相平面に関して該2つの位相状態を変化させることにより、第2の位相軌跡に追従し、(e)該第1および該第2の位相軌跡が、該位相平面の少なくとも1部分において反対方向で交差し、かつ(f)該第1および該第2の構造の間でスイッチングすることによって、該スライディングモードコントローラが、該2つの位相状態を該位相平面について変化させ、それにより所定の第3の位相軌跡に実質的に追従する。
【0026】
ある実施形態では、(a)前記第1の構造が、正の利得項に前記少なくとも1つの位相状態信号を掛け合わせる第1乗算器を備えており、かつ(b)前記第2の構造が、負の利得項に該少なくとも1つの位相状態信号を掛け合わせる第2乗算器を備えている。
【0027】
ある実施形態では、前記正の利得項および前記負の利得項が、2nの集合(ここで、n
は整数である)から選択される。
【0028】
ある実施形態では、(a)前記第3の位相軌跡が、始端と、第1の実質的に直線状の部分の始端に接続されている終端と、を有する第1の実質的に放物線状の部分を含んでおり、(b)該第1の実質的に直線状の部分が、第2の実質的に放物線状の部分の始端に接続されている終端を有しており、(c)該第2の実質的に放物線状の部分が、第2の実質的に直線状の部分の始端に接続されている終端を有しており、かつ(d)該第2の実質的に直線状の部分の一部が、前記位相平面の原点に近くにある。
【0029】
ある実施形態では、(a)前記サーボコントローラが、シークモードでは、前記リードヘッドを現在のトラックから選択されたトラックへと移動させるように動作し、トラッキングモードでは、前記ディスク上に記録された前記データを読み出しながら、該リードヘッドを、該選択されたトラックのセンタライン上に実質的に一致させ続けるように動作し、(b)該サーボコントローラが、該リードヘッドを該選択されたトラックへと移動させるためにシークモードにスイッチした時には、前記スライディングモードコントローラが、第1のスイッチングアルゴリズムに従って前記第1の構造と前記第2の構造との間で反復的にスイッチングすることにより、前記2つの位相状態が前記第1の実質的に放物線状の部分に追従するようにし、それによって該リードヘッドを該選択されたトラックへと加速し、(c)該2つの位相状態が、前記第1の実質的に直線状の部分の前記始端に実質的に到達した時には、該スライディングモードコントローラが、第2のスイッチングアルゴリズムに従って該第1の構造と該第2の構造との間で反復的にスイッチングすることにより、該2つの位相状態が該第1の実質的に直線状の部分に追従するようにし、それによって該リードヘッドを該選択されたトラックへと実質的に一定の速度で移動させ、(d)該2つの位相状態が、前記第2の実質的に放物線状の部分の前記始端に実質的に到達した時には、該スライディングモードコントローラが、第3のスイッチングアルゴリズムに従って該第1の構造と該第2の構造との間で反復的にスイッチングすることにより、該2つの位相状態が該第2の実質的に放物線状の部分に追従するようにし、それによって該リードヘッドを該選択されたトラックへ減速させ、(e)該2つの位相状態が、前記第2の実質的に直線状の部分の前記始端に実質的に到達した時には、該スライディングモードコントローラが、第4のスイッチングアルゴリズムに従って該第1の構造と該第2の構造との間で反復的にスイッチングすることにより、該2つの位相状態が該第2の実質的に直線状の部分に追従するようにし、それによって該リードヘッドを該選択されたトラックへと減速させ、かつ(f)該2つの位相状態が、前記位相平面の前記原点の近傍の、該第2の実質的に直線状の部分の前記一部から所定の最小の距離内にある時には、該サーボコントローラが該トラッキングモードにスイッチングし、該スライディングモードコントローラが、該第2つの構造の間で反復的に連続してスイッチングすることにより、該2つの位相状態を該位相平面の該原点の近傍に維持し、それによって該リードヘッドを該選択されたトラックの該センタラインの近傍に維持する。
【0030】
ある実施形態では、前記少なくとも1つの位相状態信号に応答して、前記第1の構造と前記第2の構造との間でのスイッチングを制御するスイッチングロジックをさらに備えている。
【0031】
本発明による回転する光ディスク記憶媒体の上に位置づけられた光リードヘッドの動きを制御する方法は、該光ディスクが、該ディスク上に記録された複数のデータトラックと
、該光ディスク上で該リードヘッドをアクチュエートするモータと、を備えている、方法であって、(a)該モータの位相誤差を表す少なくとも1つの位相状態信号を発生するステップと、(b)該位相状態信号を、所定の位相軌跡に対する位相状態値と比較するステップと、(c)該ステップ(b)における該比較の第1の結果に応じて、該位相状態信号に第1の利得値を掛け合わせ、かつ、該ステップ(b)における該比較の第2の結果に応じて、該位相状態信号に第2の利得値を掛け合わせることにより、モータ制御信号を発生するステップと、(d)該モータ制御信号を該モータに与えることによって、該リードヘッドを該ディスク上でアクチュエートするステップと、を含んでおり、そのことにより上記目的が達成される。
【0032】
本発明による光ディスクドライブ記憶システムは、ディジタルデータを記録する光ディスクドライブ記憶システムであって、(a)複数のデータトラックがその上に記録されている、少なくとも1つの回転する光ディスクと、(b)該光ディスク上に位置づけられ、該光ディスクから該ディジタルデータを読み出す光リードヘッドと、(c)該リードヘッドに接続されており、該リードヘッドを該光ディスクの上に位置づけるアクチュエータと、(d)該アクチュエータに接続されており、モータ制御信号を受け取る入力を有するモータであって、該アクチュエータの動きを制御するモータと、(e)少なくとも1つの位相状態信号を発生する位相状態発生器と、(f)該少なくとも1つの位相状態信号に応答して、該モータ制御信号を発生するスライディングモードコントローラであって、(a’)推定されたアクチュエータ位置と、所望のアクチュエータ位置との間の差を示すアクチュエータ位置誤差信号X1を受け取るように接続された第1の入力、(b’)該アクチュエータ位置誤差信号X1に比例する第1の位相状態信号に、該第1の位相状態信号と第1の位相状態軌跡との間の第1の所定の関係に従って、第1の利得、または第2の利得を選択的に掛け合わせることにより、第1の比例位相状態信号を発生する、第1のスイッチング利得ブロック、(c’)該アクチュエータ位置誤差信号X1に応答して、積分された位相状態信号を発生する積分器、および(d’)第1の比例位相状態信号に該積分された位相状態信号を加算することによって、該モータに印加されるモータ制御信号を発生する加算器、を含むスライディングモードコントローラと、を備えており、そのことにより上記目的が達成される。
【0033】
ある実施形態では、前記スライディングモードコントローラが、(a)アクチュエータ位置誤差速度信号X2を受け取るように接続された第2の入力と、(b)該アクチュエータ位置誤差速度信号X2に比例する第2の位相状態信号に、該第2の位相状態信号と前記第1の位相状態軌跡との間の第2の所定の関係に従って、第3の利得、または第4の利得を選択的に掛け合わせることにより、前記第1の比例位相状態信号および前記積分された位相状態信号に加算される第2の比例位相状態信号を発生し、それにより前記モータ制御信号を発生する、第2のスイッチング利得ブロックと、をさらに含んでいる。
【0034】
ある実施形態では、(a)前記第1の位相状態軌跡が、第1および第2の軌跡部分を有しており、かつ(b)前記第1および前記第2の利得が、該第1および該第2の軌跡部分に対応するそれぞれ異なる値にプログラム可能に調整される。
【0035】
ある実施形態では、(a)前記スライディングモードコントローラが、前方シークモードおよび後方シークモードで動作することによって、前記リードヘッドを現在のトラックから選択されたトラックへと移動させ、かつ(b)前記第1および前記第2の利得が、該前方シークモードおよび該後方シークモードに対応するそれぞれ異なる値にプログラム可能に調整される。
【0036】
ある実施形態では、前記スライディングモードコントローラが、(a)アクチュエータ速度誤差信号Xvを受け取るように接続された第2の入力と、(b)該アクチュエータ速
度誤差信号Xvに比例する第2の位相状態信号に、該第2の位相状態信号と第2の位相状態軌跡との間の第2の所定の関係に従って、第3の利得、または第4の利得を選択的に掛け合わせることにより、第2の比例位相状態信号を発生する、第2のスイッチング利得ブロックと、(c)アクチュエータ加速信号Xαを受け取るように接続された第3の入力と、(d)該アクチュエータ加速信号Xαに比例する第3の位相状態信号に、該第3の位相状態信号と該第2の位相状態軌跡との間の第3の所定の関係に従って、第5の利得、または第6の利得を選択的に掛け合わせることにより、前記第1の比例位相状態信号、該第2の比例位相状態信号、および前記積分された位相状態信号に加算される第3の比例位相状態信号を発生し、それにより前記モータ制御信号を発生する、第3のスイッチング利得ブロックと、をさらに備えている。
【0037】
本発明による光ディスクドライブ記憶システムは、ディジタルデータを記録する光ディスクドライブ記憶システムであって、(a)複数のデータトラックがその上に記録されている、少なくとも1つの回転する光ディスクと、(b)該光ディスク上に位置づけられ、該光ディスクから該ディジタルデータを読み出す光リードヘッドと、(c)該リードヘッドに接続されており、該リードヘッドを該光ディスクの上に位置づけるアクチュエータと、(d)該アクチュエータに接続されており、モータ制御信号を受け取る入力を有するモータであって、該アクチュエータの動きを制御するモータと、(e)少なくとも1つの位相状態信号を発生する位相状態発生器と、(f)該少なくとも1つの位相状態信号に応答して、該モータ制御信号を発生するスライディングモードコントローラであって、(a’)第1のアクチュエータ位相状態信号を受け取るように接続され、第1および第2の利得値を有する第1のスイッチング利得ブロック、(b’)アクチュエータ位置誤差信号X1を受け取るように接続され、第3および第4の利得値を有する第2のスイッチング利得ブロック、および(c’)第2のシークモードの少なくとも一部の間は該第2のスイッチング利得ブロックの効果を減衰させる手段、を含むスライディングモードコントローラと、を備えており、そのことにより上記目的が達成される。
【0038】
本発明によるディジタルデータを記録する光ディスクドライブ記憶システムは、(a)複数のデータトラックがその上に記録されている、少なくとも1つの回転する光ディスクと、(b)該光ディスク上に位置づけられ、該光ディスクから該ディジタルデータを読み出す光リードヘッドと、(c)該リードヘッドに接続されており、該リードヘッドを該光ディスクの上に位置づけるアクチュエータと、(d)該アクチュエータに接続されており、モータ制御信号を受け取る入力を有するモータであって、該アクチュエータの動きを制御するモータと、(e)少なくとも1つの位相状態信号を発生する位相状態発生器と、(f)該少なくとも1つの位相状態信号に応答して、該モータ制御信号を発生するスライディングモードコントローラであって、(a’)推定されたアクチュエータ位置と、所望のアクチュエータ位置との間の差を示すアクチュエータ位置誤差信号X1を受け取るように接続された第1の入力、(b’)該アクチュエータ位置誤差信号X1に応答する第1の位相状態信号に、該第1の位相状態信号と第1の位相状態軌跡との間の第1の所定の関係σに従って、第1の利得、または第2の利得を選択的に掛け合わせることにより、第1の比例位相状態信号を発生する、第1のスイッチング利得ブロック、および(c’)該第1の比例位相状態信号に応答して計算された制御信号に、該第1の所定の関係σに応じて位相状態軌跡信号を掛け合わせることにより、該モータに印加されるモータ制御信号を発生する、乗算器、を含むスライディングモードコントローラと、を備えており、そのことにより上記目的が達成される。
【0039】
ある実施形態では、前記所定の関係σの符号が積分されることによって、前記位相状態軌跡信号を発生する。
【0040】
ある実施形態では、前記スライディングモードコントローラが、(a)アクチュエータ
位置誤差速度信号X2を受け取るように接続された第2の入力と、(b)該アクチュエータ位置誤差速度信号X2に比例する第2の位相状態信号に、該第2の位相状態信号と前記第1の位相状態軌跡との間の第2の所定の関係σに従って、第3の利得、または第4の利得を選択的に掛け合わせることにより、第2の比例位相状態信号を発生する、第2のスイッチング利得ブロックと、(c)前記第1の比例位相状態信号を該第2の比例位相状態信号に加算することによって、前記計算された制御信号を発生する加算器と、をさらに含んでいる。
【0041】
ある実施形態では、(a)前記第1の位相状態軌跡が、第1および第2の軌跡部分を有しており、かつ(b)前記第1および前記第2の利得が、該第1および該第2の軌跡部分に対応するそれぞれ異なる値にプログラム可能に調整される。
【0042】
ある実施形態では、(a)前記スライディングモードコントローラが、前方シークモードと後方シークモードでは、前記リードヘッドを現在のトラックから選択されたトラックへと移動させるように動作し、トラッキングモードでは、該リードヘッドを、該選択されたトラックのセンタライン上に実質的に一致させ続けるように動作し、かつ(b)前記第1および前記第2の利得が、該前方シークモードおよび該後方シークモードに対応するそれぞれ異なる値にプログラム可能に調整される。
【0043】
ある実施形態では、前記スライディングモードコントローラが、(a)アクチュエータ速度誤差信号Xvを受け取るように接続された第2の入力と、(b)該アクチュエータ速度誤差信号Xvに比例する第2の位相状態信号に、該第2の位相状態信号と第2の位相状態軌跡との間の第2の所定の関係σに従って、第3の利得、または第4の利得を選択的に掛け合わせることにより、第2の比例位相状態信号を発生する、第2のスイッチング利得ブロックと、(c)アクチュエータ加速信号Xαを受け取るように接続された第3の入力と、(d)該アクチュエータ加速信号Xαに比例する第3の位相状態信号に、該第3の位相状態信号と該第2の位相状態軌跡との間の第3の所定の関係σに従って、第5の利得、または第6の利得を選択的に掛け合わせることにより、前記第1の比例位相状態信号および該第2の比例位相状態信号に加算される第3の比例位相状態信号を発生し、それにより前記計算された制御信号を発生する、第3のスイッチング利得ブロックと、をさらに含んでいる。
【0044】
ある実施形態では、前記スライディングモードコントローラが、前記アクチュエータ位置誤差信号X1を積分することによって、前記第1の比例位相状態信号に加算される積分された信号を発生し、それにより前記計算された制御信号を発生する積分器をさらに備えている。
【0045】
ある実施形態では、(a)前記第1の位相状態軌跡が所定の境界層を有しており、かつ(b)前記第1の所定の関係σが、該境界層に対して計算される。
【0046】
ある実施形態では、前記第1の位相状態信号が位相平面の原点に収束する時に、前記境界層が、該位相平面の該原点に収束する。
【0047】
ある実施形態では、前記境界層が、前記位相状態軌跡に加算される所定の定数である。
【0048】
ある実施形態では、前記境界層が、前記位相状態信号を用いて計算される。
【0049】
本発明による回転するディスク記憶媒体上にリードヘッドを位置づけるスライディングモードコントローラは、(a)位相状態を受け取るように接続された入力と、(b)該位相状態に、該位相状態と位相状態軌跡との間の所定の関係に従って、第1の利得値、また
は第2の利得値を選択的に掛け合わせるスイッチング乗算器であって、該第1および該第2の利得値が、2nの集合(ここで、nは整数である)から選択される、スイッチング乗
算器と、(c)アクチュエータ制御信号を該スイッチング乗算器から出力することによって、該リードヘッドの位置を制御する出力と、を備えており、そのことにより上記目的が達成される。
【0050】
以下に作用を説明する。本発明の光ディスク記憶システムは、フォーカスキャプチャ、フォーカストラッキング、トラックシークおよびセンタライントラッキングのあいだ光リードヘッドアセンブリを光ディスク上でアクチュエートするスライディングモードコントローラを備えている。このスライディングモードコントローラは、ある位相状態(例えば、リードヘッドの位置誤差および速度)を当てはめることにより所定の位相状態軌跡に追従するために正および負のフィードバックを切り替えて動作する非線形制御システムである。この正および負のフィードバックの利得は、所定の範囲内にありさえすればよいので、2nの利得値が実現される。これにより、利得乗算器の複雑さおよびコストを大幅に低
減することができる。
【0051】
このようにして得られたサーボ制御システムは、従来の適応線形コントローラよりもずっと低いコストで、光リードヘッドをアクチュエートする際に伴う固有の問題点の多くを克服することができる。具体的には、温度やボルトドリフトのようなさまざまな要因により発生するパラメータの変化、および個々のディスクドライブ間に起こるパラメータの変化をロバストな補償手段を提供することができる。さらには、スライディングモード制御により、フォーカスキャプチャのあいだにサーボループを閉じる際に伴う遷移と同様に、外部負荷による外乱によりもたらされる遷移をもよりよく補償することができる。また、スライディングモード制御は、フォーカストラッキングとセンタライントラッキングサーボループとの間の上述した光結合問題に対して従来ほど複雑ではない解決策を提供することができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、少なくとも以下の効果が得られる。すなわち、スライディングモード制御により、パラメータの変化や、外部負荷による外乱や、その他の遷移(例えば、フォーカスキャプチャ遷移)などを改善されたかたちで補償することができる。さらに、スライディングモードにおける正および負のフィードバック利得は、所定の範囲内にありさえすればよいので、2nの利得値を得ることができる。その結果、利得乗算器の複雑さおよびコストを大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
本発明の上記局面および利点、ならびにその他の局面および利点は、添付の図面を参照しながら以下に述べる本発明の詳細な説明を読めば、よりよく理解することができるであろう。
【0054】
(システムの概観)
図8は、粗いシーク動作を実現する本発明の光ディスクドライブサーボ制御システムの概観である。スピンモータ13は、光リードヘッドアセンブリ8上で、その上にコンピュータデータが記録された光ディスク14を回転させる。リードヘッドアセンブリ8は、図1を参照して説明したように、レーザビームをディスク上にフォーカシングする対物レンズ(OL)5を備えている。粗シーク動作のあいだ、リードヘッドアセンブリ8は、ディスク14の下をリードスクリュー9に沿って、選択されたトラックの下に位置するまで半径方向にスライドする。DCモータ(DCM)15は、粗シーク動作を達成するためにリードスクリュー9を回転させる。RFリード信号17をリードヘッド8から受け取るように接続されたトラックカウンタ16は、トラックの横断を検出し、推定されたリードヘッドトラック位置18Aを発生する。トラックカウンタ16の代わりに、リードヘッドトラック位置を検出するための他のよく知られた方法、例えばシャフトエンコーダまたはホールセンサのようなものを用いてもよい。状態推定器19は、推定されたトラック位置18AおよびDCMモータ制御信号24を処理することによって、より正確な推定された位置(Est.POS)18Bを発生する。このEst.POS 18Bは、基準位置(Ref.POS)20およびOLキャリッジユニットVCM制御信号26(ローパスフィルタ25の後)から加算器21で引かれることによって、位置誤差信号X122を発生する。基準位置(Ref.POS)20は、データが読み出されるべき選択されたトラックを示す。スライディングモードコントローラ23は、位置誤差X122に応答して、DCM 15に与えられるモータ制御信号U 24を計算し、それによりリードヘッド8を選択されたトラックへとスライドさせる。
【0055】
光ディスク記憶システムに用いられるトラックカウンタ16は、当業者にはよく知られており、そのようなカウンタは、例えば、米国特許第5,406,535号に開示されている。この特許の開示内容をここでは参考として援用する。
【0056】
状態推定器19は、記録チャネルにおけるノイズによって生じたトラック位置情報の誤差、およびトラック位置トランスデューサ(トラックカウンタ16)によって発生された誤差をフィルタリングする。図17に示されるスライディングモードコントローラの実施形態で、位置誤差速度位相状態X2を発生するためには、微分器102の代わりに、この状態推定器19を用いることもできる。状態推定器は当業者にはよく知られており、米国特許第4,679,103号に記載された一例がある。その開示をここでは参考として援用する。状態推定器に加え、本発明の範囲からはずれることなく、他のよく知られた技術を用いて、アクチュエータ位相状態を発生させることができる。
【0057】
次に図9を参照すれば、フォーカスキャプチャ、フォーカストラッキング、微細なシークおよびセンタライントラッキングのために用いられる本発明のスライディングモード制御システムが示されている。図1を参照して上で説明したように、リードヘッドアセンブリ8は、レーザビームをディスク14上にフォーカシングする対物レンズ(OL)5と、RFリード信号17および非点較差フォーカス誤差信号27を発生する4分割光検出器6と、およびトラッキング誤差信号(28A、28B)を発生する2つのフォトダイオード(7A、7B)とを有する。
【0058】
FES発生器29は、4分割光検出器6からのフォーカス誤差信号27に応答して、OL VCM(10A、10B)に与えられるモータ制御信号32を発生するスライディン
グモードコントローラ31に与えられるフォーカス誤差信号30を発生する。上述のように、RFリード信号は(A+B+C+D)として計算され、フォーカス誤差信号(FES)30は、(A+C)−(B+D)として計算される。TES発生器33は、トラッキング誤差信号(28A、28B)に応答して、上述のように(F−E)として計算されるセンタライントラッキング誤差信号(TES)34を発生する。
【0059】
初期フォーカス位置をキャプチャするために、スライディングモードコントローラ31は、ディアクティベートされて(つまりフォーカスサーボループが開けられて)、OL
VCM(10A、10B)は、フォーカスがずれるまでOLキャリッジユニット11をディスク14から離すように動かす。それからループが開いたままで、OL VCM(10A、10B)は、図4の直線領域によって規定されるその引き込み範囲内にOL 5が入っていることをFES 30が示すまで、OL 5をディスクに向かってゆっくりと動かす。フォーカスサーボループは、それから閉じられて、スライディングモードコントローラ31は、インフォーカス位置をトラッキングし始める。
【0060】
シーク距離が50トラックより短い、微細なシーク動作については、OLキャリッジユニット11は、スレッドアセンブリ8全体を動かす必要なしに全体のシークをおこなうことができる。トラックカウンタ16および状態推定器19は、粗いシーク動作の場合と同じように動作し、位置誤差X135は、加算器36
においてEst.POS 18BおよびTES 34を基準位置(Ref.POS)20から引くことによって発生される。スライディングモードコントローラ37は、位置誤差X1 35に応答して、OL VCM(10A、10B)に与えられるモータ制御信号26を発生し、これによりOLキャリッジユニット11を選択されたトラックの向きに回転する。微細なシーク動作の終わりに、OL VCM制御信号26は、加算器21において図8のスレッドサーボ制御システムに与えられ、これによってOLキャリッジユニット11が再びその中央位置に存在するまでスレッドアセンブリ8を選択されたトラックに向けて移動させる。
【0061】
(動作原理)
スライディングモードコントローラの動作は、図10を参照すれば理解されよう。示されているのは、必ずしも大きさが等しくない正の利得47および負の利得48の間で切り替える(46)例示的なスライディングモードコントローラ45によって制御される2次のシステム44の例である。位置誤差X149は、加算器50の出力において、制御されるシステムの推定された位置51を所望の位置基準位置52から引くことによって発生される。位置誤差X149は、スイッチ46の状態に依存して正の利得47または負の利得48により乗算されることによって、制御されるシステム44への入力として加速コマンド53を発生する。積分器54の出力は、制御されるシステム44の速度であり、これは、位置誤差速度−X2 55の負でもある。スイッチ46が正の利得47を選択するとき、負帰還システムであり、スイッチ46が負の利得48を選択するとき、正帰還システムである。その個別の構成において、システムは不安定である。しかしシステムは、2つの構成間で繰り返しスイッチングすることによって安定にすることができる。
【0062】
負帰還における状態空間方程式は、
dX1/dt=X2、dX2/dt=−KX1 (1)
となる。方程式1の一般解は、
X1=Asin(Kt+φ) (2)
X2=√KAcos(Kt+φ) (3)
となる。方程式2および3を合わせれば、
X12/A2+X22/KA2=1 (4)
となる。方程式4の位相平面プロットは、図11に示すように離心率Aおよび√(KA)をもつ楕円の組である。
【0063】
正帰還における状態空間方程式は、
dX1/dt=X2、dX2/dt=+KX1 (5)
となる。方程式5の解は、
X1=B1e√K・t+B2e-√K・t
X2=√K・B1e√K・t−KB2e-√K・t (6)
のようになる。方程式5および6を合わせれば、
X12/4B1B2−X22/4KB1B2=1 (7)
のようになる。方程式7の位相平面プロットは、図11に示すように2つの漸近線をもつ双曲線の組である。
【0064】
方程式4および7の2つの個々の位相平面の軌跡は、不安定なシステムになる。なぜな
ら位相状態は原点に決して到達しないからである。しかし負および正帰還の軌跡の交点において規定される第3の位相軌跡(third phase trajectory)に沿って位相状態を駆動することによって原点に到達することも可能である。これは、位相状態が所定の第3位相軌跡に従うように、現在の位相状態値に応答して正および負の利得の間をスイッチングすることによって実現できる。
【0065】
スイッチング動作は、図12を参照すれば理解される。ここで所定の第3の位相軌跡は、直線部分60として示されている。新しいトラックが選択されると、初期ヘッド位置誤差は点Aにあり、制御システムは、最初は、正の利得を選択するようにスイッチングされている(つまり負帰還である)。ヘッドが選択されたトラックに向かって加速し始めると、位相状態は、負帰還モードの円弧状の軌跡64に従う。位相状態が交点Bにおいて第3の位相軌跡60の始点に達するとき、スライディングモードコントローラは負の利得に切り替わり、位相状態は正帰還モードの双曲線の軌跡66に従うようになる。位相状態が点Cにおいて第3の位相軌跡60を横切るとき、コントローラは、正の利得に再び切り替わり、位相状態を円弧68に沿って、第3の位相軌跡60に向かって戻るように駆動される。このスイッチング動作は、位相状態が直線部分60に沿って、位相平面の原点に向かってスライドするように繰り返される。位相状態が位相平面の原点から所定の最小距離内にあるとき、システムは、トラッキングモードに切り替わる。このモードでは、位相状態が位相平面の原点近くにあるようにするために、スライディングモードコントローラが正および負帰還の間を繰り返しスイッチングし、それによりリードヘッド8が選択されたトラックのセンタライン上に一致させ続ける。
【0066】
位相状態が図12のスライディングラインに従うとき、制御システムの時間領域応答は、
X1(t)=X1(t1)e-C(t-t1) (8)
のようになる。ここでt1は、位相状態がスライディングラインに点Bにおいて到達する時刻である。方程式8は、スライディングラインに沿ったシステムの平均応答であり、これはパラメータKの変化によって、または外部負荷による外乱によって実質的に影響を受けない。その結果、Kの値を決定するために、システムの正確なパラメータを知る必要はない。方程式8は、以下の存在方程式(existence equation)11と併せて、スライディングモード領域内でシステムが大局的に安定であることを証明する。
【0067】
スライディングモードコントローラは、位相状態値を観察することによって正および負の利得間でいつスイッチングすべきかを決定する。図12の直線位相軌跡は、
X2=−C・X1 (9)
となり、ここで定数Cは、直線部分60の傾きである。位相状態を観察することによって、スライディングモードコントローラは、利得を
σ=X2+C・X1=0 (10)
となるように切り替える。スライディングモードコントローラは、位相状態を直線軌跡に向かって駆動するために、σ・X1>0のときには正の利得に切り替え、σ・X1<0のときには負の利得に切り替える。
【0068】
システムの全体の応答は、スライディングラインの傾きを増す(つまりCを増す)ことによって速くなる。しかしスライディングモード制御において重要な制限は、第3の位相軌跡が、正および負のフィードバック位相軌跡が反対の向きで交差する位相平面における領域に制約を受けることである。図12から、スライディングラインの傾きは、0<C<√Kに制約を受けなければならないことになる。この制約から導出されるさらなる関係は、
limσ→0σ・(dσ/dt)<0 (11)
となる。方程式11は存在方程式として知られており、正および負の利得の値を決定する
ために用いられる。
【0069】
図12の直線スライディングモード軌跡60は、最初は、線形フィードバックモードで動作し、初期円弧軌跡64がパラメータの変化および外部負荷による外乱のためにドリフトするおそれがあるというデメリットを有する。この問題は、動作のスライディングモード領域を拡大することによって抑制することができる。例えば、位相軌跡調整器は、図13に示す直線部分の傾きを連続的に調整できる。位相状態が第1のスライディングライン65に到達し、所定量の時間のあいだそれに従ったあと、位相軌跡調整器は、定数Cを増すことによってスライディングライン67の傾きを増す。システムは、部分間の遷移のあいだだけ線形モード(非スライディングモード)で動作する。結局、傾きはスライディングライン69における所定の最大値に増加され、この点において位相状態はライン69に沿って位相平面の原点に向かってスライドする。
【0070】
よりロバストな実現方法は、振幅の全範囲をカバーするように位相軌跡を定義することである。これは図14に示されている。ここで位相軌跡は、3つの直線部分σ1 72、
σ2 74およびσ376を備えており、
σ1=X2−C1・(X1−XI)、
σ2=X2−X2I、および
σ3=X2+C2・X1 (12)
であり、ここで、
X1=アクチュエータ位置誤差位相状態、
X2=アクチュエータ位置誤差速度位相状態、
C1=第1の部分の傾き、
C2=第3の部分の傾き、
XI=初期アクチュエータ位置誤差、および
X2I=所定の一定位置誤差速度
である。第1の直線部分σ1 72は、アクチュエータ8の加速を表現し、第2の直線部
分σ2 74は、アクチュエータ8の一定速度を表現し、第3の部分σ3 76は、選択されたトラックに向かうアクチュエータ8の減速を表現する。
【0071】
上述のように、C2は0<C2<√Kに制約されるが、これら3つの部分のすべても、やはりアクチュエータの最大加速、一定速度および減速限界によって制約を受ける。いったん位相軌跡が選択され、アクチュエータの物理的な制限内に収まっていれば、コントローラは、パラメータの変化および外部負荷による外乱から実質的に独立に動作する。
【0072】
最適位相平面軌跡、および本発明の好ましい実施の形態は、図15に示されている。この軌跡は、実質的に放物線の加速部分σ180、直線定速度部分σ2
82、第2の実質的に放物線の減速部分σ384、および直線減速部分σ4
86を含み、
σ1=C1・X22+X1−X1I (13)
σ2=X2−X2I (14)
σ3=−C2・X22+X1 (15)
σ4=X2+C3・X1 (16)
であり、ここで
X1=アクチュエータ位置誤差位相状態、
X2=アクチュエータ位置誤差速度位相状態、
C1=所定の加速定数、
X1I=初期アクチュエータ位置誤差、
X2I=所定の定位置誤差速度、
C2=所定の減速定数、および
C3=直線減速部分の所定の傾き
である。放物線減速部分σ3 84の傾きは、スライディングモードをサポートするには
原点近傍で急すぎる(減速が大きすぎる)ので、直線減速部分σ48
6は必要である。もしトラック間のシーク距離が十分に短いなら、直線定速度部分σ2
82は必要ではない(すなわち、もし初期位置誤差が所定の閾値よりも小さいなら、位相状態がσ1から直接、σ3に遷移する)。
【0073】
図16は、2次の制御対象としてモデル化される光ディスクサーボ制御システムを示す。スライディングモードコントローラの出力U60は、増幅器62に
よって増幅され、リードスクリュー9またはOLキャリッジユニット11をそれぞれアクチュエートするDCM 15またはVCM(10A、10B)に入力される。DCM/V
CMのパラメータは、
Kt=トルク定数、
Kv=粘性制動の係数、
Ks=クーロン摩擦の係数、および
J=慣性
である。
【0074】
位置誤差位相状態X1 66は、加算器68の出力において観察され、位置誤差速度位
相状態X2は、DCM/VCM速度92に負号をつけたものとして観察される。代替手段として、位置誤差速度位相状態X2は、位置誤差信号X1 66を微分することによって発生されてもよく、または状態推定器19によって発生されてもよい。図16から、位相状態方程式は、
dX1/dt=X2、および
dX2/dt=−(Kv/J)・X2−(Ks/J)・X1
−(Kt・Kpa/J)・U (17)
となる。もしU=±K・X1なら、位相状態方程式は、方程式1および5と同様になり、位相プロットは図11に示すのと同様になる。
【0075】
位置誤差X1だけでもスライディングモードを実現するのに十分だが、位置誤差速度X2がフィードバックループに加えられれば、さらなる制御を達成することができる。実際、本発明のディスクドライブ制御システムは、シークのあいだ、唯一の制御信号としての位置誤差速度X2があれば最適に動作する。なぜなら位置誤差X1は、最初は位置誤差速度X2よりもずっと大きいからである。シークのあいだ、位置誤差X1をフィードバックループから取り除くことによって、スイッチングノイズの量を低減することができる。位相状態が位相軌跡上の所定の点に到達すると、システムは、位置誤差X1の位相状態を制御ループに戻すように切り替える。
【0076】
(ハードウェアの説明)
図17は、本発明のスライディングモードコントローラのある実施の形態を示す。位置誤差X1 22は、スライディングモードコントローラに入力され、微分器102は、位
置誤差X1 22を微分することによって、位置誤差速度信号X2 100を発生する。図示されない代替の実施の形態においては、状態推定器19が、位置誤差速度X2 100
を発生する。2つのスイッチング利得回路104および106は、位置誤差〜X1 13
0および誤差速度〜X2 132の制御信号をそれぞれ乗算する。乗算器108および1
10は、位相状態〜X1およびX2と、現在の軌跡部分σiとに応答して、利得回路のスイッチング動作を制御する。結果として生じる乗算の符号は、スイッチの状態を決定し、それにより位相状態X1およびX2を図15に示された所定のスライディングライン軌跡に動かす。σ処理ブロック112は、位相状態X1およびX2に応答して、軌跡部分スイッチング論理を実現することによって、位相軌跡のどの部分σiに位相状態が従うべきかを決定する。σ処理ブロック112、積分器116、基準誤差速度発生器114、ならびにマルチプレクサ118、120および122の動作については、後で詳しく述べる。
【0077】
スイッチング利得ブロック104および106の利得値αi、βi、γiおよびζiは、位相状態によって追従されている現在の軌跡部分にしたがって適切な値にプログラム可能に設定されている。また利得値は、コントローラが前方または後方シークのどちらを実行しているかどうかに依存して、所定の値にプログラムされる。存在方程式11および位相軌跡方程式13、14、15および16を用いれば、図15に示される位相軌跡のそれぞれの部分についての利得値に関する適切な制約条件が、こんどはスライディングモードを確実にするために計算されうる。
【0078】
σ=σ1(シーク加速)については、方程式13を時間について微分し、方程式13により乗算することによって、
σ1・dσ1/dt=σ1・[2・C1・X2・dX2/dt]+σ1・X2を得る。方程式17から、またσ1・X2を因数分解すると、
σ1・dσ1/dt=σ1・[2・C1・X2・[−(Kv/J)・X2−(Kt・Kpa/J)・U+1/(2・C1)]] (18)
を得る。図16および図17から、またΨ3の項はシークのあいだ、重要ではないぐらいに小さいとして無視すれば、
U=Ψ1・X1+Ψ2・X2 (19)
となり、ここで
Ψ1=αi(σi・X1>0)、βi(σi・X1<0) (20)
Ψ2=γi(σi・X2>0)、ζi(σi・X2<0) (21)
である。方程式18および19から、また1/(2・C1)の項は重要ではないぐらいに小さいとして無視すれば、
σ1・dσ1/dt=2・C1・X2・σ1・[−(Kv/J)・X2−(Kt・Kpa/J)・(Ψ1・X1+Ψ2・X2)]
σ1・dσ1/dt=2・C1・X2・[[−(Kv/J)−(Kt・Kpa/J)・Ψ2]σ1・X2−[(Kt・Kpa/J)・Ψ1]σ1・X1] (22)
となる。存在方程式11を満たす(すなわち方程式22がどんなX1およびX2についても負である)ためには、利得定数は、次の表1に示す不等式を満たさなければならない。
【0079】
【表1】

【0080】
σ=σ2(定速シーク)については、方程式14を時間について微分し、方程式14によって乗算することによって、
σ2・dσ2/dt=σ2・dX2/dt
を得る。方程式17から、
σ2・dσ2/dt=σ2・[−(Kv/J)・X2−(Kt・Kpa/J)・U]
である。方程式19から、
σ2・dσ2/dt=σ2・[−(Kv/J)・X2−(Kt・Kpa/J)・(Ψ1・X1+Ψ2・X2)]
σ2・dσ2/dt=[−(Kv/J)−(Kt・Kpa/J)・Ψ2]σ2・X2−[(Kt・Kpa/J)・Ψ1]σ2・X1 (23)
である。存在方程式11を満たす(すなわち方程式23がどんなX1およびX2についても負である)ためには、利得定数は、次の表2に示す不等式を満たさなければならない。
【0081】
【表2】

【0082】
σ=σ3(シーク減速)については、方程式15を時間について微分し、方程式15によって乗算することによって、
σ3・dσ3/dt=σ3・[−2・C2・X2・dX2/dt]+σ3・X2
を得る。方程式17から、またσ1・X2を因数分解すると、
σ3・dσ3/dt=σ3・[−2・C2・X2・[−(Kv/J)・X2−(Kt・Kpa/J)・U+1/(2・C2)]] (24)
を得る。方程式18および19から、また1/(2・C2)の項は重要ではないぐらいに小さいとして無視すれば、
σ3・dσ3/dt=−2・C2・X2・σ3・[−(Kv/J)・X2−(Kt・Kpa/J)・(Ψ1・X1+Ψ2・X2)]
σ3・dσ3/dt=−2・C2・X2・[[−(Kv/J)−(Kt・Kpa/J)・Ψ2]σ3・X2−[(Kt・Kpa/J)・Ψ1]σ3・X1]
(25)
となる。存在方程式11を満たす(すなわち方程式25がどんなX1およびX2についても負である)ためには、利得定数は、次の表3に示す不等式を満たさなければならない。
【0083】
【表3】

【0084】
σ=σ4(トラッキング)については、方程式16を時間について微分し、方程式16によって乗算することによって、
σ4・dσ4/dt=σ4・dX2/dt+σ4・C3・dX1/dt
を得る。方程式17から、
σ4・dσ4/dt=σ4・[−(Kv/J)・X2−(Kt・Kpa/J)・U+C3・X2]
である。方程式19から、
σ4・dσ4/dt=σ4・[−(Kv/J)・X2−(Kt・Kpa/J)・(Ψ1・X1+Ψ2・X2)+C3・X2]
σ4・dσ4/dt=[C3−(Kv/J)−(Kt・Kpa/J)・Ψ2]σ4・X2−[(Kt・Kpa/J)・Ψ1]σ4・X1 (26)
である。存在方程式11を満たす(すなわち方程式26がどんなX1およびX2についても負である)ためには、利得定数は、次の表4に示す不等式を満たさなければならない。
【0085】
【表4】

【0086】
(フローチャートの説明)
図17に示されるスライディングモードコントローラの動作について、粗いシーク動作およびセンターライントラッキングのコンテクストで、図8および図9をそれぞれ参照して以下にさらに説明する。しかし以下の説明はまた、フォーカスサーボループにも適用できる。つまり図18〜図20のフローチャートは、図8および図9のスライディングモードコントローラ23、31および37の動作を説明している。
【0087】
サーボ制御システムが初期では図18のトラッキングモード200にあるとすると、リードヘッド8は、現在、選択されたトラックを前方シークまたは後方シークコマンドが受け取られるまで追従する(204)。前方シークが開始されるとき、シークかどうか?(206)は、イエスであり、ヘッド基準位置Ref.POS 20は、新しく選択されたトラックにアップデートされる。図8の加算器21の出力における初期ヘッド位置誤差X122は、状態推定器19から出
力される現在のトラック18Bと、新しく選択されたトラック(すなわちRef.POS
20)との間の差である。この初期位置誤差は、また、図15において、X1Iにおけ
る軌跡部分σ=σ1 80の始点としても示される。部分σ=σ1 80は、リードヘッ
ド8の選択されたトラックへの所望の加速を規定する放物線軌跡である。
【0088】
こんどは図19を参照すれば、「シーク加速(σ=σ1)」208のはじめにおいて、スライディングモードコントローラ23は、さまざまなパラメータ210を初期化する。図17のブロック104および106の利得定数は、加速軌跡σ=σ1 80に対応する
値にアップデートされる。シーク動作のあいだのスイッチングノイズを減少させるためには、位置誤差位相状態X122は、スライディングモード制御からはずれるようにスイッチングされる。σ処理ブロック112は、ライン126上で、グラウンド面をマルチプレクサ122の出力として選択する。その結果、〜X1 130は、乗算器110のスイッチング動作をディセーブルし、加算器103の出力におけるモータコマンドU24の計算からのΨ1の寄与を除去するために、ゼロに設定される。位置誤差位相状態〜X1130がディセーブルされる前に、速度位相状態〜X2132は、アクチュエータが所望の向きに動き始める(すなわち選択されたトラックに向かって反対に動く)ことを確実にするために、所定の値に初期化される。これを達成するために、σ処理ブロック112は、ライン124上において、X2Ref114をマルチプレクサ120の出力として選択する。σ処理ブロック112はまた、ライン126上において、所定の定数C 134をマルチプレクサ118の出力(加算器103への第3入力Ψ3 109)として選択する。所定の定数C 134および積分器116の機能は、後に詳しく述べられる。
【0089】
加速軌跡σ=σ1 80についての制御パラメータが初期化されたあとで、スライディ
ングモードコントローラ23は、モータコマンド信号U24を計算し、加算器103の出力において連続的に出力する。フローチャート212を参照すると、σ1は、方程式13にしたがってアップデートされ、σi128は、σ1に割り当てられる。乗算器108(これはオペランドの符号ビットの単純なXORとして実現できる)は、σiをX2によって乗算し、もしその結果が正であるなら利得ブロック104をγiに切り換え、もしその結果が負であるならζiに切り換える。利得ブロック104は、〜X2132(X2Ref 114)を選択された利得によって乗算することによってΨ2を発生する。加算器103は、Ψ1、Ψ2およびΨ3を加算することによって、モータコマンドU24を
発生する。Ψ1は、加速のあいだ、ゼロであり、Ψ3は、重要でないくらいに小さいので、モータコマンド信号U 24は、ほとんどΨ2に等しい。
【0090】
リードヘッド8が、選択されたトラックに向かって逆に加速し始めると、トラックカウンタ16は、現在のトラック位置をアップデートする。状態推定器19は、トラックカウント18Aおよび現在のモータコマンド24を処理することによって、推定された位置信号18Bをアップデートする。加算器21は、新しい位置誤差X1 22を出力し、微分
器102は、新しい速度位相状態X2 100をX1(N)−X1(N−1)として計算
する。
【0091】
σ処理ブロック112は、いつリードヘッドの速度が所定の値に到達するかを決定するために連続的にチェックをする。もしX2≦X2Ref?214がノーであるなら、スライディングモードコントローラはループを繰り返し、フローチャート212にしたがって次のモータコマンドU24を計算する。もしX2≦X2Ref? 214がイエスであるなら、σ処理ブロック112は、ライン124上でX2 100をマルチプレクサ120の出力として選択する(〜X2=X2と設定する、216)。換言すれば、いったんリードヘッド8の速度(X2 100)が所定の速度(X2Ref 114)に到達すれば、スライディングモードコントローラ23は、モータコマンド信号U24をフローチャート218において速度位相状態X2 100の関数として発生する。
【0092】
図19に示すフローチャート218にこんどは続いて、σ処理ブロック112は、σ1、σ2およびσ3をそれぞれ方程式13、14および15にしたがってアップデートする。σ処理ブロック112の出力σi128は、σ1に割り当てられる。σiおよびX2に応答して、乗算器108は、X1およびX2を図15のσ1 80の位相軌跡に向かって動かすためにスイッチング利得ブロック104の状態を設定する。次のコマンドU 24が発生され、リードヘッド8は、選択されたトラックへ向かって動き続ける。
【0093】
σ処理ブロック112は、いつ次の軌跡部分に切り換えるべきかを決定するために、加速軌跡σ1 80に対して位相状態の位置を続けてチェックする。次の軌跡部分は、定速
部分σ2 82、または、もしシーク距離が十分に短いなら、減速部分σ3 84のいずれかである。σの値を比較することによって、σ処理ブロック112は、いつ次の軌跡にスイッチすべきかを決定する。もしσ1≦σ3? 220がイエスなら、σ処理ブロック1
12は、減速軌跡σ3 84に切り換える。そうではなく、もしσ1≦σ2?222がイ
エスであるなら、σ処理ブロック112は、定速軌跡σ2 82に切り換える。もし220および222がともにノーなら、スライディングモードコントローラ23は、ループを繰り返し、次のモータコマンドU 24をフローチャート218にしたがって計算する。
【0094】
次は図20に示す定速フローチャート226を参照すれば、まず利得ブロック104および106を切り換える利得定数が図15の定速軌跡σ282に対応する値にアップデートされる(228)。それからフローチャート230において、σ処理ブロック112は、それぞれ方程式14および15にしたがってσ2およびσ3をアップデートする。σ処理ブロック112の出力σi128は、σ2に割り当てられる。再び、σiおよびX2に応答して、乗算器108は、X1およびX2をσ2 82位相軌跡に向かって動かすために、スイッチング利得ブロック104の状態を設定する。次のコマンドU24が発生され、リードヘッド8は、選択されたトラックに向かって動き続ける。
【0095】
σ処理ブロック112は、いつ減速軌跡部分σ384に切り換えるべきかを決定するために、定速軌跡σ2 82に対して位相状態の位置を続けてチェックする。もしσ2≦σ3? 232がイエスなら、σ処理ブロック112は、減速軌跡σ3 84に切り換える。そうではないなら、スライディングモードコントローラ23は、ループを繰り返し、次のコマンドU24をフローチャート230にしたがって計算する。
【0096】
こんどは減速フローチャート234を参照すれば、まず利得ブロック104および106を切り換える利得定数が、図15の減速軌跡σ384に対応する値にアップデートされる(236)。それからフローチャート238において、σ処理ブロック112は、それぞれ方程式15および16にしたがってσ3およびσ4をアップデートする。σ処理ブロック112の出力σi128は、σ3に割り当てられる。再び、σiおよびX2に応答して、乗算器108は、X1およびX2をσ3 84位相軌跡に向かって動かすために、スイッチング利得ブロック104の状態を設定する。次のコマンドU24が発生されることによって、リードヘッド8は、選択されたトラックに向かって減速される。
【0097】
σ処理ブロック112は、いつトラッキング軌跡部分σ486に切り換えるべきかを決定するために、減速軌跡σ3 84に対して位相状態の位置を続けてチェックする。もしσ4≦σ3? 240がイエスなら、σ処理ブロック112は、トラッキング軌跡σ4 86に切り換える。そうではないなら、スライディングモードコントローラ23は、ループを繰り返し、次のコマンドU24をフローチャート238にしたがって計算する。
【0098】
図15のトラッキング軌跡σ4 86は、リードヘッドアセンブリ8が所望のトラック
上に位置することを維持するために、図8のスライディングモードコントローラ23によって実行され、またOLキャリッジユニット11を選択されたトラックのセンターライン上に一致させ続けるために、図9のスライディングモードコントローラ37によって実行される。短いシーク(微細なシーク)については、図9のスライディングモードコントローラ37は、OLキャリッジユニット11を図15の位相状態軌跡にしたがって回転させることによって、リードヘッドアセンブリ8をリードスクリュー9に沿ってスライドさせる代わりに全体のシークを実施する。
【0099】
再び図18のフローチャート200を参照すると、トラッキング動作の始めにおいて、利得ブロック104および106を切り換える利得定数は、図15のトラッキング軌跡σ4 86に対応する値にアップデートされる(202)。σ処理ブロック112は、ライ
ン126を介して積分器116の出力をマルチプレクサ118(すなわちΨ3)の出力として選択する。σ処理ブロック112はまた、ライン126を介してマルチプレクサ12
2の出力として、乗算器110への入力としての位置誤差位相状態X1 22を選択する
ことによって、位置誤差位相状態X1 22をスライディングモード計算に戻すように切
り換える。再び位置誤差位相状態X1 22は、スイッチングノイズを減らすためにシー
クのあいだは用いられない。
【0100】
こんどはフローチャート204を参照すれば、σ処理ブロック112は、方程式16にしたがってσ4をアップデートする。σ処理ブロック112の出力σi128は、σ4に割り当てられる。σi、X1およびX2に応答して、乗算器108および110は、X1およびX2をσ486位相軌跡に向かって動かすために、それぞれスイッチング利得ブロック104および108の状態を設定する。次のコマンドU 26が発生され、OL VCM(10A、10B)に与えられることによって、選択されたトラックのセンターラインをトラッキングし続ける。
【0101】
選択されたトラックに到達したあと、いくつかのバイアスフォースによって、OLキャリッジユニット11がセンターラインから定常状態のDCオフセットをもつようにはたらきうる。典型的なバイアスフォースは、回転するディスクによって生じる偏流の半径方向成分、ディスクスタックの傾き、フレキシブルケーブルにおけるバイアス、および電気的なオフセットを含む。これらのバイアスフォースを補償して、定常状態の位置誤差をゼロにもっていくために、積分器116は位置誤差位相状態X1 22を積分し、その出力1
09の和がとられ(103)て、スライディングモードコントローラ37の出力26になる。
【0102】
しかしバイアスフォースは、時間にしたがって変化せず、OLキャリッジユニット11の半径方向の位置によって変化する。よってそれぞれのトラックについてのバイアスフォースに対応する定常状態の積分値109が、メモリに格納される。選択された新しいトラックをシークするとき、積分器116はディセーブルされ、選択された新しいトラックに対応するメモリに格納された定常状態積分値は、定数134として制御信号26に加算される(103)。OLキャリッジユニット11が、選択された新しいトラックに到達し、ヘッドが十分に整定したとき、積分器116が再びイネーブルされ、その出力は制御信号26に加算される(103)。
【0103】
後方シークについては、スライディングモードコントローラ(23、37)は、図18、19および20のフローチャートにおいて説明したように動作する。ただし、不等号の向きが逆になる点だけが異なる。σ処理ブロック112はまた、図13に示す直線位相軌跡部分の傾きを調整することができる。σ処理ブロック112の代替物は、位置誤差および速度位相状態を、ルックアップテーブルに格納された値と比較することになる。このルックアップテーブルにおいては、格納された値が、図15に示す位相平面軌跡を表現する。
【0104】
(加速の実施形態)
本発明のスライディングモードコントローラの代替の実施の形態は、図21に示されている。スライディングモード動作は、定速シークモード(σ=σ2)およびトラッキングモード(σ=σ4)では、図17と同じである。しかしシーク加速(σ=σ1)およびシーク減速(σ=σ3)では、状態空間は、平面(Xv、Xα)において定義される。ここでXvは、アクチュエータ速度誤差位相状態であり、Xαは、アクチュエータ加速位相状態である。
【0105】
シーク加速およびシーク減速のあいだ、基準速度Vrefは、図15に示す速度プロファイルσ1 80およびσ3 84に対応する位置誤差X1の関数として発生される。基準速度発生器は、ルックアップテーブルまたは多項方程式で実現できる。アクチュエータ速度誤差位相状態Xvは、推定されたアクチュエータ速度−X2を基準速度Vrefから減算することによって発生される。アクチュエータ加速位相状態Xαは、位置誤差X1の2次導関数をとることによって発生される。位相状態XvおよびXαは、それぞれのスイッチング利得ブロックにより乗算されることによって、制御信号Ψ2およびΨ4を発生する。図17〜図20を参照して説明したように、制御信号Ψ1は、シークのあいだにディセーブルされ、Ψ3は、重要ではないくらいに小さい。よってモータ制御信号Uは、シーク加速およびシーク減速のあいだはΨ2およびΨ4の関数である。定速(σ=σ2)およびトラッキング(σ=σ4)におけるシークのあいだ、Vrefは、Xv=X2であるようにゼロに設定され、Ψ4は、スイッチング利得ブロックにおける利得δおよびθをゼロに設定することによってディセーブルされる。このようにして、図21のスライディングモードコントローラは、図17〜図20で説明したように、シーク時には、一定の速度およびトラッキングで動作する。
【0106】
図21のσ処理ブロックによって用いられる軌跡部分σiは、
σ1=[Xv−C1・Xα]、
σ2=X2−X2I、
σ3=−[Xv−C2・Xα]、
σ4=X2+C3・X1、であり、ここで
C1=所定の加速定数、
X1I=初期アクチュエータ位置誤差、
X2I=所定の定位置誤差速度、
C2=所定の減速定数、および
C3=直線減速部分の所定の傾き、である。
【0107】
σ処理ブロックは、次の不等式にしたがって軌跡部分間で切り換える。
【0108】
|X2|>X2Iのとき、σ1からσ2に、
|Vref(k)|<|Vref(k−1)|のとき、σ2からσ3に、
|X1|<所定のトラック獲得閾値のとき、σ3からσ4に、
(X1*Xv<0)かつ(|X2|≦|V2I|)のとき、σ1からσ3に、切り換えられる。
【0109】
(境界層)
本発明のスライディングモードコントローラは、スライディング軌跡σの周辺に境界層を規定することによってチャタリングの減少においてさらなる改良を実現する。このことは、図22において示されている。この図は、σに加えられたオフセット±εとして規定される境界層を有するスライディング軌跡σについての直線部分を示す。境界層は、システムにおけるスイッチングの量を減少させることによってチャタリングを減らす。境界層がなければ、図17のスイッチング利得ブロック104および106は、位相状態がスライディングラインを交差するたびに(すなわちσの符号が変化するたびに)スイッチングする。境界層は、利得ブロックが、位相状態が境界線を越えたあとになって初めてスイッチングするようにさせるヒステリシスを生む。
【0110】
スライディングラインσに加えられた境界層オフセット±εは、位相状態が所定の値(X1C、X2C)に到達するまでは、所定の定数である。その値に到達すると、オフセット±εは、原点近傍における振動を防ぐために、図22に示すように境界層が位相平面の原点へと収束するように位相状態X1およびX2の和として計算される。図17のσ処理ブロック112は、σiを以下のように計算する。
【0111】
もしスイッチング利得ブロック(104、106)が利得(γi,αi)選択するよう
に設定されるなら、
σi=σ+ε
であり、そうではない場合であって、もしスイッチング利得ブロック(104、106)が利得(ζi,βi)を選択するように設定されるなら、
σi=σ−ε
である。ここで
σ=X2+C・X1、
ε=定数(ただしX1>X1CかつX2>X2Cである)、
ε=|X1|+|X2|(ただしX1≦X1CかつX2≦X2Cである)
とする。
【0112】
代替の実施の形態においては、X1≦X1CかつX2≦X2CであるときにεをX1およびX2の和として計算するのではなく、スライディングラインの傾きが変更される(すなわちσ=X2+C1・X1、またはσ=X2+C2・X1であり、スイッチング利得ブロック(104、106)の現在の状態に依存する)。
【0113】
(平滑化関数)
本発明のスライディングモードコントローラは、sgn(σ)の積分に比例する制御信号Uを発生することによって、よりよいチャタリング低減を達成することができる。実際、制御信号は、電磁および/または音響輻射を発生しうる高い周波数成分を減衰させるために平滑化される。
【0114】
本発明のある実施形態では、図23に示すように、σ処理ブロック112からのσiは、以下の関数を計算する積分ブロック101に入力される。
【0115】
sat[∫K・sgn(σi)dt]
ここで、sat(x)=−1(x<−1のとき)、x(−1≦x≦1のとき)または+1(x>1のとき)
である。積分ブロック101の出力128は、スイッチング利得ブロック(104、106)の状態を制御し、絶対値関数111にも入力される。その後、加算器103の出力における制御信号は、積分されたsgn(σi)の絶対値により乗算器113を介して減衰され、平滑化された制御信号Uを発生する。
【0116】
本発明の平滑化関数は、図17のコントローラを改変したものとして説明されたが、同様の改変は、図21のコントローラにも同様に適用可能である。
【0117】
(ルックアップテーブル)
本発明のσ処理ブロック112は、軌跡部分を切り替えるのではなく、ルックアップテーブルを用いることによっても実現可能である。前述したように、位相状態軌跡σを実現するためには、位相状態をルックアップテーブルへのインデックスとして用いることができる。テーブルのサイズを小さくするためには、位相状態軌跡は、以下の微分に従って再定義される。
【0118】
距離=1/2・Acc・t2である、よって、
X1−X1I=1/2・Acc・t2 (27)
ここで、
X1I=初期アクチュエータ位置誤差、
Acc=所定の加速/減速定数、および
t=時間、である。
【0119】
方程式27のtを解くと、
t=(2・(X1−X1I)/Acc)1/2 (28)
となる。速度=−X2=Acc・tであるので、方程式28からtを除算すると、
X2(Ideal)=−(2・(X1−X1I)・Acc)1/2 (29)
となる。シーク時には、位相状態軌跡σは、
σ=X2+(2・(X1−X1I)・Acc)1/2=0 (30)
のように定義される。方程式29におけるX2(Ideal)は、理想のアクチュエータ速度であり、方程式30におけるX2は、推定されたアクチュエータ速度である。方程式29の理想の速度は、ある位相状態X1によりインデックスの付けられたルックアップテーブルを用いることにより計算されうる。これにより、ルックアップテーブルのサイズを小さくすることができ、スライディングモードコントローラの全体的なコストを下げることができる。図24は、σ処理ブロック112にルックアップテーブルを用いた実施形態を図示している。
【0120】
(2進係数)
既に詳しく説明したように、図17のスイッチング利得ブロック104および106のさまざまな利得値は、位相状態の追従している軌跡部分に従い、かつ、コントローラが前方シークを実行しているのか、あるいは後方シークを実行しているのかに従って、適切な値にプログラム可能に設定される。利得値の適切な範囲は、存在方程式11と、位相状態軌跡方程式13、14、15および16とを用いて、図15に示す位相状態軌跡のそれぞれの部分について決定された。
【0121】
本発明の別の実施形態では、フォーカス、シークおよびトラッキング用のスライディングコントローラは、2進係数を用いて実現される。すなわち、スイッチング利得ブロック104および106におけるさまざまな利得値は、2nの集合から選択される。ここで、
nは正または負の整数である。2進係数は、利得の切り替えに用いることができる。なぜなら、既に述べたように、利得は所定の範囲内にありさえすればよいからである。したがって、係数を格納するためのメモリに対する要求が緩和され、複雑なハードウェア乗算器は必要なくなる。すなわち、2進係数による乗算は、シフトレジスタを用いるだけで実現可能である。
【0122】
(実験結果)
動作可能性をベリファイするために、本発明を、光ディスクドライブおよびスライディングモードコントローラのコンピュータ生成モデルに従ってシミュレートした。フォーカスの局面については、光学搬送機械(optical transport mechanical)伝達関数は、図25および図26に示されている周波数および位相応答を特徴とするものであった。そして、図27に示されている定格フォーカス基準を用いて、フォーカス制御ループがシミュレートされた。図29は、図28に示されている典型的な線形コントローラの場合よりもはるかに優れたキャプチャ遷移に対する、本発明によるスライディングモードコントローラの応答を図示している。また、図31は、フォーカストラッキング時のフォーカス誤差信号のヒストグラムを示している。図30に示されている従来の線形コントローラと比べてみると、本発明によるスライディングモード制御は、必要とされる5ミクロンの偏差内で動作している。とはいうものの、このスライディングモード制御によれば、パラメータの変化や外部負荷による外乱をよりよく補償することが可能になる。図32に示されているワーストケースのフォーカス基準状態でも、本発明を用いた光ディスクドライブシステムは、図33に示されているように、対象に改変を加えるまでもなくインフォーカス状態を維持した。これに対して、従来の線形制御を用いたシステムは、必要とされる5ミクロンの偏差を維持できなかった。
【0123】
上述したのと同様の制御利得を用いたシミュレーションが、非定格特性をもつ力学を用
いてさらにおこなわれた。図34は、フォーカスアクチュエータの力の定数(図16におけるKt)が25%だけ増やされた時の定常状態のフォーカスヒストグラムを示している。図35は、力の定数が50%だけ減らされた時の定常状態のフォーカスヒストグラムを示している。図36は、10kHzにおける共振ピークを10dBだけ増加させた時の定常状態のフォーカスヒストグラムを示している。これらの図に示されているように、2進係数を用いた場合でも、本発明は、多種多様なパラメータ変化および基準に対しても許容範囲内で動作する。
【0124】
センタライントラッキングの場合、機械伝達関数は、図37および図38に示されている周波数および位相応答を特徴とするものであった。図39に示されている定格トラッキング基準を用いて、本発明のトラッキング局面をシミュレートした。スライディングモード制御を用いたセンタライントラッキング誤差(TES)の場合に得られたヒストグラムは、図41に示されている。ここでも、図40に示されている従来の線形制御システムの場合のヒストグラムと比べてみれば、本発明によるスライディングモード制御は、パラメータの変化および外部負荷による外乱を良好に補償しながら、トラッキング誤差を0.2ミクロンの偏差内に維持できることがわかる。
【0125】
なお、形式および詳細については、本発明の範囲から外れることなく、さまざまな変更を加えることができる。つまり、以上に開示した特定の実施形態は、本発明がそれらに限定されることを意図しているものではない。例えば、本発明のスライディングコントローラは、ハードウェアあるいはソフトウェアのいずれのかたちでも実現可能であり、連続的にも離散した時刻にも実現可能である。また、以上に開示した特定の位相状態に代わって(またはそれに加えて)、より高次の位相状態を用いることもできる。以上に開示した実施形態により導き出されるこのような改変およびその他の改変は、添付の請求の範囲により正しく解釈されれば、いずれも本発明の意図した範囲内にあるものである。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】フォーカスキャプチャ、フォーカストラッキングおよびセンタライントラッキングに用いられるサーボ光学感知回路を含む、従来の3ビーム光リードヘッドを示す図である。
【図2】レーザビームのフォーカス状態に基づいて4分割光検出器に発生されうるさまざまなパターンを示す図である。
【図3】フォーカス誤差信号(FES)およびRFリード信号をどのようにして4分割光検出器から発生するかを示す図である。
【図4】フォーカス誤差信号(FES)と、ディスクの表面に対する対物レンズの位置との関係をプロットした図である。
【図5】3ビームシステムに存在しうるさまざまなトラッキング状態を示す図である。
【図6】3ビームシステムがどのようにしてセンタライントラッキング誤差信号(TES)を発生するかを示す図である。
【図7】トラッキング誤差信号(TES)と、選択されたトラックのセンタラインに対する対物レンズのミストラッキング位置との間の関係をプロットした図である。
【図8】本発明によるディスクドライブ制御システムの一例を示すブロック図である。
【図9】本発明によるディスクドライブ制御システムの別の例を示すブロック図である。
【図10】本実施例のスライディングモードコントローラにより制御される2次システムを示すブロック図である。
【図11】図10の制御システムの正および負のフィードバックモードについて、位置誤差および誤差速度の位相状態に対応する位相平面を示す図である。
【図12】新しいトラックへの前方シーク時に位相状態を所定の直線位相軌跡に向かって動かす際のスライディングモードコントローラの動作を示す図である。
【図13】スライディングモードを延長するために、図12の直線位相軌跡の傾きを変化させることの効果を示す図である。
【図14】振幅の全範囲をカバーすることによって、パラメータの変化に対して感度を有するすべての線形モード動作を排除する位相平面軌跡を示す図である。
【図15】本発明による好ましい位相平面軌跡を示す図である。
【図16】位置誤差および位置誤差速度の位相状態を有する2次システムとしてモデリングされた典型的なサーボアクチュエータを示す図である。
【図17】スライディングモードコントローラが、位置誤差と位置誤差速度の位相状態とに応答する、本発明によるディスクドライブ制御システムを示すブロック図である。
【図18】図17のスライディングモードコントローラの動作を説明するフローチャートである。
【図19】図17のスライディングモードコントローラの動作を説明するフローチャートである。
【図20】図17のスライディングモードコントローラの動作を説明するフローチャートである。
【図21】スライディングモードコントローラが、アクチュエータの位置誤差と、速度誤差と、アクチュエータの位相状態とに応答する、本発明による別の実施形態を示す詳細ブロック図である。
【図22】スライディングモードの位相状態軌跡の周囲の収束境界層を示す図である。
【図23】モータ制御信号を平滑化するためにsgn(σ)を積分する積分器を示す図である。
【図24】スライディングモードコントローラにおけるσ処理ブロックにルックアップテーブルを用いた好ましい実施形態を示す図である。
【図25】光ディスクドライブにおける典型的なフォーカスサーボループのシミュレートされた周波数および位相応答を示す図である。
【図26】光ディスクドライブにおける典型的なフォーカスサーボループのシミュレートされた周波数および位相応答を示す図である。
【図27】本発明によるスライディングモード制御のパフォーマンスを従来の線形制御と比較して実証するために、図25および図26のシミュレートされたフォーカスサーボループに注入された定格フォーカス基準を示す図である。
【図28】図27の定格基準について、従来の線形コントローラのフォーカスキャプチャ遷移に対する応答を示す図である。
【図29】図27の定格基準について、本発明によるスライディングモードコントローラのフォーカスキャプチャ遷移に対する応答を示す図である。
【図30】図27の定格基準信号と、従来の線形コントローラとを用いてフォーカスサーボループをシミュレートした時に得られる、フォーカストラッキング時のフォーカス誤差信号のヒストグラムである。
【図31】図27の定格基準信号と、本発明のスライディングモードコントローラとを用いてフォーカスサーボループをシミュレートした時に得られる、フォーカストラッキング時のフォーカス誤差信号のヒストグラムである。
【図32】図25および図26のシミュレートされたフォーカスサーボループに注入されたワーストケースのフォーカス基準信号を示す図である。
【図33】図32のワーストケースの基準信号と、本発明のスライディングモードコントローラとを用いてフォーカスサーボループをシミュレートした時に得られる、フォーカストラッキング時のフォーカス誤差信号のヒストグラムである。
【図34】スライディングモード制御について、力の定数を25%だけ増加させた時のフォーカストラッキング時のフォーカス誤差のヒストグラムを示す図である。
【図35】スライディングモード制御について、力の定数を50%だけ減少させた時のフォーカストラッキング時のフォーカス誤差のヒストグラムを示す図である。
【図36】スライディングモード制御について、10kHzにおける共振ピークを10dBだけ増加させた時のフォーカストラッキング時のフォーカス誤差のヒストグラムを示す図である。
【図37】本発明による動作をシミュレートするのに用いられる光ディスクドライブにおける典型的なセンタラインサーボトラッキングシステムの周波数および位相応答を示す図である。
【図38】本発明による動作をシミュレートするのに用いられる光ディスクドライブにおける典型的なセンタラインサーボトラッキングシステムの周波数および位相応答を示す図である。
【図39】本発明によるスライディングモード制御のパフォーマンスを従来の線形制御と比較して実証するために、図37および図38のシミュレートされたセンタラインサーボトラッキングシステムに注入された定格の半径方向基準を示す図である。
【図40】図39の定格基準信号と、従来の線形コントローラとを用いてトラッキングサーボループをシミュレートした時に得られる、センタライントラッキング時のトラッキング誤差信号のヒストグラムである。
【図41】図39の定格基準信号と、本発明のスライディングモードコントローラとを用いてトラッキングサーボループをシミュレートした時に得られる、センタライントラッキング時のトラッキング誤差信号のヒストグラムである。
【符号の説明】
【0127】
8 スレッドアセンブリ
9 リードスクリュー
11 OLキャリジユニット
13 スピンモータ
14 光ディスク
15 DCモータ
16 トラックカウンタ
17 RFリード信号
18A リードヘッドトラック位置
18B 推定された位置
19 状態推定器
20 基準位置
21 加算器
22 位置誤差信号
23 スライディングモードコントローラ
24 モータ制御信号
25 ローパスフィルタ
26 OLキャリッジユニットVCM制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディジタルデータを記録する光ディスクドライブ記憶システムであって、本願明細書に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2009−4095(P2009−4095A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256797(P2008−256797)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【分割の表示】特願2006−307240(P2006−307240)の分割
【原出願日】平成9年3月24日(1997.3.24)
【出願人】(595158337)シーラス ロジック,インコーポレイテッド (44)
【氏名又は名称原語表記】Cirrus Logic,Inc.
【Fターム(参考)】