説明

光ディスク装置

【課題】再生パワーによる記録品質の劣化を抑制しながら、必要な品質の再生信号を取得する光ディスク装置を提供する。
【解決手段】光ディスクに記録または再生を行う光ディスク装置であって、レーザを出射するレーザ光源と、前記レーザ光源を駆動する駆動部と、前記レーザの発光パワーを検出する検出部と前記レーザを光ディスクに集光する手段と備え、記録パワーに基づいて変更された再生パワーで情報の再生を行う光ディスク装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の記録層を有する光ディスクを再生する光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、例えば、特許文献1(特開2006−244658号公報)及び特許文献2(特開2008−84504号公報)がある。
【0003】
【特許文献1】特開2006−244658号公報
【特許文献2】特開2008−84504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、大容量のデジタルデータを記録可能な媒体として、ブルーレイディスク(以降、BDと称す)が注目されている。BDは波長405nmの青色レーザと開口数0.85のレンズを用いて、一層あたり25GBの記録容量を達成している。ディスク上のレーザのスポット径はレーザ波長に比例するため、従来は用いるレーザの短波長化及び開口数の増加によって大容量化を図ってきた。しかし、今後の大容量化の手段としてレーザの更なる短波長化は困難とされている。これは、紫外領域の光が光ディスクの主な材料の一つであるポリカーボネートを劣化させるためである。
【0005】
したがって、一枚あたりの記録容量を増加させる手段として記録層を増加させる技術が提案され、既に二層ディスクが実用化されている。今後、更なる大容量化を目的として三層や四層以上の記録層を有する多層ディスクの標準化が予想される。
【0006】
上記特許文献1では3層以上の記録層を有する光ディスクに安定した記録品質で記録を行う手段が開示されている。
【0007】
また特許文献2では、再生時のレーザパワーによって記録品質を劣化させる課題に対して、多層光ディスクの層切り換えにおいて、再生レーザ光に重畳する高周波の振幅及び周波数を切り替える手段が開示されている。
【0008】
複数の記録層を有する光ディスク再生の課題の一つは、記録層の反射率低下による再生品質の低下である。この課題に対しては、再生パワーを増加させ、再生信号の振幅を増加させることで解決する手段がある。しかし、記録型の光ディスクの場合、再生パワーを単純に増加させてしまうと、記録されているデータを劣化させるという課題がある。
【0009】
本発明の目的は、再生パワーによる記録品質の劣化を抑制しながら、必要な品質の再生信号を取得する光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では例えば以下の実施態様により課題を解決できるが、この実施態様に限られることはない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録されたデータの品質を劣化させることなく、必要な品質の再生信号を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【0013】
なお、以降「再生パワー」及び「記録パワー」とは、それぞれ再生時及び記録時に光ディスク上に集光するレーザのパワーを示す。また、「発光パワー」とは、レーザダイオードが発光するレーザのパワーのことを示す。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明に従う光ディスク装置の一実施例を示すブロック構成図である。なお、本発明に直接関与しないブロックに関しては記載を省略した。
【0015】
マイコン101は、図示しないATAPIなどのインターフェースを通じて、PCなどのホスト装置と通信を行う。また、マイコン101は、レーザドライバ102に対し発光制御を行い、レーザドライバ102はマイコン101の制御に応じてレーザダイオード103を駆動する電流を出力する。レーザダイオード103はレーザドライバ102の駆動電流に応じた発光パワーで発光する。パワーモニタ105はビームスプリッタ104を介してレーザダイオード103の発光パワーを検出し、検出したパワーを電圧値に変換してマイコン101に出力する。1/4波長板106はビームスプリッタ104を透過したレーザの位相を1/4波長ずらし、偏光方向を変化させる。対物レンズ107はレーザを光ディスク108に集光させる。図1の例では、点線で示した枠内のブロック102〜107、109、110が光ピックアップに搭載されているものとする。また、図1ではレーザダイオード103とパワーモニタ105を分離して搭載した例を示したが、パワーモニタをパッケージングし、検出したパワーをマイコン101に出力するレーザダイオードを用いても良い。ピックアップの設計上、省スペースや制御が容易になる場合もあるからである。
【0016】
光ディスク108にて反射したレーザは、ディスクの情報を光の強度変化として保持している。再生を行う際には、光ディスク108にて反射したレーザを1/4波長板106にて偏光方向を変化させる。偏光ビームスプリッタ109にてレーザを反射させ、ディテクタ110に集光する。ディテクタ110は集光したレーザを検出し、レーザの強度に応じた信号を波形等化器111に出力する。波形等化器111は、ディテクタ110によって検出された信号波形に対して等化、増幅などの処理を行い、信号処理器112に出力する。信号処理器112は、波形等化器111によって出力された信号波形に対し、アナログ/デジタル変換、等化、デコードなどの信号処理を行い、デコードしたデータをマイコン101に出力する。
【0017】
記録を行う際には、マイコン101によって定められたデータパターンをレーザドライバ102に出力し、レーザドライバ102はデータパターンに応じた駆動電流をレーザダイオード103に出力する。レーザダイオード103は駆動電流に応じた発光波形でレーザを出力し、対物レンズ107にてレーザを光ディスク108に集光することで記録を行う。なお、レーザダイオード103を駆動する電流はマイコン101が出力しても良い。
【0018】
図2は、光ディスクを再生した時の再生パワーに対するジッタの変化を示した図である。ジッタは再生品質を特徴付ける指標であり、低いほど再生品質が良いことを示す。図2によれば、再生パワーが高いほどジッタが低下していることが分かる。特に、複数の記録層を有する光ディスクでは、再生信号の振幅が小さいためこの傾向が顕著となる。しかし、記録型の光ディスクの場合、再生パワーを増加させることで記録されているデータを劣化させるという問題が発生する。このデータの劣化は記録層の特性に依存するものであり、記録層によって異なる。
【0019】
本実施形態では、記録層によって再生パワーを変化させ、記録されているデータを劣化させない領域内で最大の再生パワーにすることで、再生性能を向上することが出来る。再生パワーは実施例2で述べる方法により決定しても良いし、予め決められた値を用いても良い。
【0020】
また光ディスクの種類ごとにそれぞれ決めておいても良い。
【0021】
つぎに、記録パワーに基づいて再生パワーを決定する方法について説明する。
【0022】
図3は本発明による光ディスク装置が、光ディスクをローディングしてから再生を開始するまでの例を示したフローチャートである。なお、本発明に直接関与しない動作については記載を省略した。
【0023】
ステップ301にてディスクをローディングする。フォーカスサーボやトラッキングサーボなどの制御を開始した後、ステップ302にて光ディスク上の所定の位置でOPC(Optimum Power Control)を実施する。これは光ディスクの最適な記録パワーを決定するための試し書き動作であり、κ−OPCやβ−OPCなどが知られている。OPCでは、記録条件(記録パワーや記録パルス幅など)を変更しながら試し書きを実行し、試し書きデータを再生して最適な記録条件を求める。試し書きデータを再生する際の再生パワーは、記録再生装置で予め設定されている再生パワーを用いても良いし、光ディスクに記録されている推奨の再生パワーを用いても良い。ステップ303にて記録パワーを決定した後、ステップ304にて記録パワーに基づいて再生パワーを決定する。決定した再生パワーを用いてステップ305にて再生を開始する。このようにして求められた再生パワーは、記録再生装置や光ディスクに記録しておいても良い。次のOPCで試し書きデータを再生する際の再生パワーとして用いることもできる。
【0024】
記録パワーに基づいて再生パワーを決定する方法について述べる。図4は記録パワーと再生パワーの関係式のグラフ例であり、この図のように示される関係式に基づいて再生パワーが決定される。一般に、最適な記録パワーが低い領域にある光ディスクは、レーザのパワーに対する感度が高い。このような光ディスクは、記録されたデータがレーザによって劣化しやすい傾向にあるため、再生パワーも低い値を用いる必要がある。一方、記録パワーが高い領域にある光ディスクは、レーザのパワーに対する感度が低いため、再生パワーを高くしS/N比を上げることで再生性能を向上することが出来る。
【0025】
ここでは、図4に示すように、記録パワーと再生パワーが1次関数で表される例としたが、記録パワーと再生パワーの関係式が2次関数または3次以上の関数で表されるような場合にも適用することができる。
【0026】
なお、OPCによって求められた記録パワーに基づいて再生パワーを決定する方法について説明したが、光ディスクに予め記録されている推奨記録パワーや推奨再生パワーなどに基づいて再生パワーを決定しても良い。すなわち、図4に示すような記録パワーと再生パワーの関係が成り立つ場合に、図4で示されるような関係式に基づいて、光ディスクに記録されている推奨記録パワーから再生パワーを求め、この再生パワーで再生を実行しても良い。この場合は、OPCを実施する必要が無いため、光ディスクが挿入されてから再生可能となるまでの時間の短縮が図れる。この方式は、記録を行わない場合に特に有効である。
【0027】
また、例えば、ディスクに予め記録されている推奨記録パワーと、OPCにより求められた最適記録パワーとが既に光ディスクに記録されている場合は、推奨記録パワーと最適記録パワーとの比に基づいて、光ディスクに記録されている推奨再生パワーから再生パワーを算出しても良い。
【0028】
また上記例ではOPC可能な記録再生装置において、記録パワーから再生パワーを決定する場合について説明したが、再生専用の光ディスク装置で再生パワーを決定する場合にも適用することができる。この場合、再生専用光ディスク装置は、再生専用の光ディスクを再生する際には記録パワーに基づいて再生パワーを決定せず、所定の再生パワーに基づいて再生を実行する。
一方、記録再生装置で情報が記録された記録型光ディスクを再生する際には、光ディスクに記録されている記録パワーに基づいて再生パワーを決定する。ここで、記録型光ディスクには、記録パワーとして、推奨記録パワー、及び、記録再生装置でOPCが実行されることにより得られる最適記録パワーの少なくとも一方が記録されているものとする。また、再生専用の光ディスク装置には、記録パワーと再生パワーの関係を式やテーブルとして記憶部に記録しておく。再生専用の光ディスク装置は、記録可能型の光ディスクから推奨記録パワーとOPCによる最適記録パワーを読み出し、記憶部に記録されている記録パワーと再生パワーの関係から再生パワーを求めればよい。
【0029】
また、3層又は4層以上の記録層を有する多層光ディスクの場合に、各記録層に対して、記録パワーと再生パワーの関係を記憶部に記憶していても良いし、ある記録層に対する記録パワーと再生パワーの関係を基準データとして記憶部に記憶しておき、他の記録層を再生する際には、この基準データに基づいて再生パワーを決定するようにしても良い。
【0030】
また,記録層の状態によって光ディスク上の位置に応じて記録パワーが変更された場合にも,予め設定されている記録パワーと再生パワーの関係に基づいて,光ディスク上の位置に応じた再生パワーを求めても良い。なお、レーザの温度変化などを考慮すると、記録パワーが変化した場合に、それに応じて必ずリードパワーを変化させる必要は無く、リードパワーの上限値を設定しておき、それを超えない範囲で調整することもできる。
【0031】
以上のように、記録パワーに基づいて再生パワーを決定することで、記録されているデータの品質を劣化させない領域で最大の再生パワーを用いることが出来るため、良好な再生を行うことが出来る。
【0032】
かかる方式によれば、1記録層あたりの記録密度が更に高くなった光ディスクや、記録層の数が現状の2層から更に増えて3層、4層、5層以上の記録層を有する光ディスクであっても、記録型の光ディスクに記録されているデータの品質を劣化させることなく、良好な再生品質でデータを再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による光ディスク装置の一実施例を示す図
【図2】再生パワーとジッタの関係を示す図
【図3】本発明による光ディスク装置がディスクをローディングしてから再生を開始するまでのフローチャート
【図4】記録パワーと再生パワーの関係を示す図
【符号の説明】
【0034】
101…マイコン、102…レーザドライバ、103…レーザダイオード、104…ビームスプリッタ、105…パワーモニタ、106…1/4波長板、107…対物レンズ、108…光ディスク、109…偏光ビームスプリッタ、110…ディテクタ、111…波形等化器、112…信号処理器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに記録または再生を行う光ディスク装置であって、
レーザを出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源を駆動する駆動部と、
前記レーザの発光パワーを検出する検出部と
前記レーザを光ディスクに集光する手段と
を備え、
記録パワーに基づいて変更された再生パワーで情報の再生を行う光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
記録パワーに対応する再生パワーの関係を規定する情報を記憶する記憶部を有し、前記記録パワーを前記情報に適用して再生パワーを決定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光ディスク装置であって、
前記再生パワーを光ディスクに記録された情報に基づいて変化させることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の光ディスク装置であって、
前記記録パワーは、最適パワー制御を実行することにより決定されることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光ディスク装置であって、
前記光ディスクから推奨記録パワーと推奨再生パワーを読み出し、最適パワー制御を実行することにより決定された最適記録パワーと、前記推奨記録パワーとの比に基づいて、前記推奨再生パワーから再生パワーを算出することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の光ディスク装置であって、
前記最適パワー制御を実行する際に、所定の再生パワーにて再生を行うことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光ディスク装置であって、
前記最適パワー制御を実行する際の再生パワーは、光ディスク装置に予め設定されている再生パワー、または光ディスクに記録されている推奨の再生パワーであることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項8】
光ディスクの再生方法であって、
記録パワーに対応する再生パワーの関係を規定する情報に基づいて、最適パワー制御を実行することにより決定された記録パワー、又は、前記光ディスクに記録されている推奨の記録パワーから再生パワーを求め、求められた再生パワーを用いて情報を再生する再生方法。
【請求項9】
光ディスクに記録されている情報を再生する再生方法であって、
最適パワー制御を実行することにより決定された記録パワー、又は、前記光ディスクに記録されている推奨の記録パワーが、記録再生装置に設定されている値と異なる場合に、記録再生装置に設定されている再生パワーを、前記最適パワー制御による記録パワー又は前記推奨の記録パワーに応じて変更して再生を実行する再生方法。
【請求項10】
請求項8記載の再生方法であって、
最適パワー制御を実行することにより決定された記録パワー、又は、前記光ディスクに記録されている推奨の記録パワーが、記録再生装置に設定されている値よりも低い場合には、再生パワーを記録再生装置に設定されている値よりも低くして再生を実行し、
最適パワー制御を実行することにより決定された記録パワー、又は、前記光ディスクに記録されている推奨の記録パワーが、記録再生装置に設定されている値よりも高い場合には、再生パワーを記録再生装置に設定されている値よりも高くして再生を実行する再生方法。
【請求項11】
請求項8から10のいずれかに記載の再生方法であって、
前記最適パワー制御を実行する際に、所定の再生パワーにて再生を行うことを特徴とする光ディスク再生方法。
【請求項12】
請求項11に記載の再生方法であって、
前記最適パワー制御を実行する際の再生パワーは、記録再生装置に予め設定されている再生パワー、または光ディスクに記録されている推奨の再生パワーであることを特徴とする光ディスク再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−186508(P2010−186508A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29299(P2009−29299)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】