説明

光ディスク記録装置およびその最適記録パワー決定方法

【課題】光ディスクの感度ムラの影響を低減して、記録パワー制御の精度を向上させる。
【解決手段】光ディスクの記録感度ムラの周期に関する情報を取得し、取得した周期に関する情報をもとにテスト記録の第1の開始位置と、周期の長さをθtとして、第1の開始位置からθt/2×k(kは奇数)だけ離れた位置である第2の開始位置を算出する。また、大きさの順に隣り合う記録パワーを、第1の開始位置からのテスト記録と第2の開始位置からのテスト記録とにそれぞれ割り振った記録パワー系列を用いて、光ディスクにテスト記録を行い、テスト記録が行われた位置の記録特性値を測定し、測定された記録特性値をもとに最適記録パワーの算出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクにレーザーによって記録を行う光ディスク記録装置に係り、特に光ディスクに対して最適な記録パワーを設定して記録を行う光ディスク記録装置およびその最適記録パワー決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に光ディスク記録の最適記録発光パワー(以下Po:Optimum Write Power)を決定し制御する手法(以下OPC:Optimum Power Control)では、Poを得るのに適した記録パワー(以下Pm)の近傍の数点を選び、これらのパワーでテスト記録を行うことによって得られる記録特性値(例えば、記録時の反射率の変化、記録後のアシンメトリ、振幅、変調度、ジッター等)を演算処理することでPoを算出していた(この演算処理を以下Po演算と記述する)。
【0003】
しかし、OPCを行う前の段階ではPmの正確な値は不明なので、予想される広範囲の記録パワーでテスト記録を行い、得られた記録特性値からPmを選択し、その近傍の記録特性値を用いてPo演算を行っていた。
【0004】
OPCでは光ディスクを回転させ、その連続した記録トラックにテスト記録を行う。テスト記録は記録パワーの大きさを変えながら行うが、従来はこの順番を単にパワーの低い方から高い方、またはその逆の方向へと変えながらテスト記録を行っていた。このため、記録パワーの大きさは光ディスクの位置に依存性を持ってしまう欠点があった。
【0005】
従来のOPC手法の模式図を図1に示す。光ディスク1のほぼ同心円上に並べた円弧状の矢印は、光ディスク1にスパイラル状に刻まれた記録トラックをテスト記録する様子を表している。また、その内周側の数字は光ディスク1上の位置を示している。P(i)は記録パワーで、対応する円弧状の矢印で示した各々の区間をこのパワーでテスト記録する。この図では説明を簡略化するために記録パワー系列のパワー個数(N)を8としたが、実際には様々な個数が用いられる。また同じく簡略化するために記録パワーP(i)はiが増えるに従ってパワーが高くなるとする。
【0006】
【数1】

【0007】
【数2】

図2はOPCで得られるディスク位置と記録パワーおよび記録特性値との関係を示す図である。ここで、E(i)は記録パワーP(i)でテスト記録した時の記録特性値である。前述のようにOPCではPoを得るのに適したパワーPmを選択し、その近傍の数点を選んでPo演算を行う。図2の例ではPmとしてP(3)が選択され、その近傍の記録パワーP(2)、P(3)、P(4)とその記録特性値E(2)、E(3)、E(4)が選ばれた様子を示している。
【0008】
さて、光ディスクに感度ムラが発生する要因は記録膜自体の特性ムラの他、カバー膜や反射膜の特性ムラ、指紋による汚れ等が挙げられるが、OPCに影響を与えるという点では光ディスクの反りや取り付け誤差による光学レンズとの相対位置、角度のズレ等によって生じる見かけ上のムラも含まれる。
【0009】
これらのムラの多くは光ディスク上の位置に依存している。このため、従来の記録パワーを単純に大きい方から小さい方、またはその逆に変化させるテスト記録では、Pm近傍のパワーで記録する領域も近接するので、感度ムラの位置との組み合わせによって、その影響を受ける測定点の数が大きく変動してしまうという問題があった。
【0010】
図3は光ディスクの感度ムラの分布の例を示す図、また図4は図3に示す感度ムラ分布を有する光ディスクに対するOPCで得られるディスク位置と記録パワーおよび記録特性値との関係を示す図である。図3において、11は感度ムラが存在する領域を表している。このような場合では、Po演算に使う記録特性値E(2)、E(3)、E(4)の全てが感度ムラの影響を受けてしまい、この値を用いて算出されるPoの精度は著しく低下する。
【0011】
これまで、このような感度ムラの影響を補償する手段として様々な方法が提案されている。しかしこれらの方法は予めテスト記録を行うエリアの記録特性を測定して補償演算を行ったり(例えば特許文献1、特許文献2を参照)、予めエリアの記録特性を整えたりする方法(例えば特許文献3を参照)であった。このような手法は記録と諸特性の測定という一連の動作を繰り返す必要があり、OPC全体の処理が煩雑になる欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−253016号公報
【特許文献2】特開2002−319135号公報
【特許文献3】特開2000−251254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のように、従来のOPCでは、記録パワーの大きさを順列に並べた記録パワー系列を用いてテスト記録を行っているため、感度ムラの影響を受けてPoの算出精度が低下するという問題があった。また、予めテスト記録を行うエリアの記録特性を測定して補償演算を行ったり、予めエリアの記録特性を整えたりする方法では、記録と諸特性の測定という一連の動作を繰り返す必要があり、OPC全体の処理が煩雑になるという課題があった。
【0014】
本発明はこのようなことを鑑み、光ディスクの感度ムラの影響を低減して、記録パワー制御の精度を向上させることのできる光ディスク記録装置およびその最適記録パワー決定方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の光ディスク記録装置の最適記録パワー決定方法は、大きさの順に並べられた記録パワーの系列を、大きさが隣り合う記録パワーが不連続となるように並び替えた記録パワー系列を用いて光ディスクにテスト記録を行うテスト記録ステップと、テスト記録が行われた位置の記録特性値を測定するステップと、測定された記録特性値をもとに最適記録パワーの算出を行うステップとを具備する。
【0016】
この発明によれば、記録特性値のディスク位置に対する依存性が低減し、光ディスクの感度ムラによる記録パワー制御の精度低下を防止することができる。
【0017】
なお、本発明で言う記録パワーとは、例えば光学ピックアップにおけるレーザーの記録発光パワーであるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明は、大きさの順に並べられた記録パワーの系列から、乱数を用いて、大きさが隣り合う記録パワーが不連続となるように並び替えた記録パワー系列を作成するステップを含むものであってもよい。この際、偶然、隣り合う記録パワーが並んでしまった場合には、これを解消するために、一方を他の記録パワーに入れ替えたり、再度順番の入れ替えをやり直すようにすればよい。
【0019】
また、テスト記録ステップでは、大きさの順に並べられた記録パワーの系列を、光ディスクの感度ムラの周期性を考慮しつつ、大きさが隣り合う記録パワーが不連続となるように並び替えた記録パワー系列を用いて、光ディスクにテスト記録を行うようにしてもよい。
【0020】
光ディスクの感度ムラには、光ディスクの回転周期などによる依存性があることから、このように光ディスクの感度ムラの周期性をも考慮しつつ記録パワー系列の並びを決めることによって、光ディスクの感度ムラによる影響をより一層低減することができ、記録パワー制御の精度をより高めることができる。
【0021】
光ディスクの感度ムラの周期性を考慮しつつ、大きさが隣り合う記録パワーが不連続となるように並び替えてテスト記録を行う方法としては、光ディスクの記録感度の周期に関する情報を取得し、取得した周期に関する情報をもとにテスト記録の第1の開始位置と次の第2の開始位置を算出し、大きさの順で隣り合う記録パワーを、第1の開始位置からのテスト記録と第2の開始位置からのテスト記録とにそれぞれ割り振った記録パワー系列を用いて、光ディスクにテスト記録を行う方法などがある。それぞれの開始位置からのテスト記録に用いられる記録パワー系列の並びを、さらに乱数を用いて入れ替えるようにしてもよい。
【0022】
また、光ディスクの記録感度の周期を算出し、この算出された周期をもとにテスト記録の第1の開始位置と次の第2の開始位置を算出するようにしてもよい。
【0023】
さらに、テスト記録ステップでは、大きさの順に並べられた記録パワーの系列を、光ディスクの内周側のトラックと外周側のトラックでの記録感度の違いを考慮しつつ、大きさが隣り合う記録パワーが不連続となるように並び替えた記録パワー系列を用いて、光ディスクにテスト記録を行うようにしてもよい。
【0024】
すなわち、光ディスクはその内周側のトラックと外周側のトラックでも記録感度に差があることがある。このような場合には、光ディスクの内周側のトラックと外周側のトラックでの記録感度の違いを考慮しつつ、大きさが隣り合う記録パワーが不連続となるように並び替えた記録パワー系列を用いてテスト記録を行うことが有効である。
【0025】
光ディスクの内周側のトラックと外周側のトラックでの記録感度の違いを考慮しつつ、大きさが隣り合う記録パワーが不連続となるように並び替えてテスト記録を行う具体的な方法としては、大きさの順で隣り合う記録パワーを、内周側のトラックと外周側のトラックとにそれぞれ割り振った記録パワー系列を用いてテスト記録を行う方法などがある。
【0026】
また、光ディスクの内周側と外周側でのテスト記録に用いられる記録パワー系列の並びを、さらに乱数を用いて入れ替えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、記録型光ディスクにおける最適記録パワーを決定する手法において、光ディスクの感度ムラの影響を低減して、記録パワー制御の精度向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来のOPC手法について説明するための図である。
【図2】OPCで得られるディスク位置と記録パワーおよび記録特性値との関係を示す図である。
【図3】光ディスクの記録感度のムラの分布の例を示す図である。
【図4】図3に示す感度ムラ分布を有する光ディスクに対するOPCで得られるディスク位置と記録パワーおよび記録特性値との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる光ディスク記録装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の最適記録パワー決定方法におけるディスク位置と記録パワーおよび記録特性値との関係を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法の手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法の手順を示すフローチャートである。
【図10】第3の実施形態の最適記録パワー決定方法におけるディスク位置、記録パワー、および記録特性値の関係を示す図である。
【図11】本発明の第4の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法の手順を示すフローチャートである。
【図12】第4の実施形態の最適記録パワー決定方法におけるディスク位置、記録パワー、および記録特性値の関係を示す図である。
【図13】本発明の第5の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法の手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第6の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法の手順を示すフローチャートである。
【図15】第6の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法に関して光ディスクの内周側と外周側の記録パワーの順番を示す図である。
【図16】本発明の第7の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法の手順を示すフローチャートである。
【図17】第7の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法に関して光ディスクの内周側と外周側の記録パワーの順番を示す図である。
【図18】本発明の第8の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0030】
図5は本発明の実施の形態にかかる光ディスク記録装置の構成を示すブロック図である。同図において、1は光ディスク、2は光ディスク1を回転させるスピンドルモーターである。3は例えば半導体レーザーとその駆動回路、およびレンズ等の光学部品やアクチュエーターで構成される光学ピックアップである。4は光学ピックアップ3を光ディスク1の接線方向へ動かすスレッドモーターである。7は光学ピックアップ3から得られる信号から光ディスク1に記録されているデータ、位置情報、同期タイミング等を再生する再生装置である。5は光学ピックアップ3でモニターされる各種エラー情報や再生装置7から得られる同期タイミング等をもとにスピンドルモーター2、スレッドモーター4、および光学ピックアップ3のアクチュエーターを制御し、光ディスク1の回転数、光学ピックアップ3の位置および光学ピックアップ3から出力されるレーザー光の位置、光軸、チルト、フォーカス等を所望の状態に制御するサーボ装置である。6は光学ピックアップ3でモニターされる情報をもとに例えばレーザーの発光パワーなどを所望の値に制御するAPC(Automatic Power Control)装置である。8は光学ピックアップ3の情報から変調度、アシンメトリ、β値、ジッター等の記録特性値を測定する記録特性測定装置である。9は記録する情報をもとに光学ピックアップ3のレーザーの発光パワーを適切に変調する記録変調装置である。10は各装置の制御装置で、シーケンサーや中央演算処理装置、メモリ等で構成される。
【0031】
光ディスク1からデータを再生する際は、光学ピックアップ3から適切な光スポットを光ディスク1に照射し、サーボ装置5が光ディスク1を適切に回転させ、光学ピックアップ3を所望の位置に移動し、さらにアクチュエーター等を制御し、光スポットを光ディスク1上の記録トラックに走査させる。この状態で再生装置7が光ディスク1に記録されているデータを再生する。
【0032】
光ディスク1にデータを記録する際は、前述のデータを再生している状態から記録変調装置9が光学ピックアップ3の発光波形を適切に変調して光ディスク1にデータを記録する。この時に必要な発光パワー情報は、この前にOPCを行うことによって取得される。
【0033】
本発明は、多くの感度ムラがディスク位置に依存する点に着目し、記録パワーを大きさの順に並べた記録パワー系列でテスト記録を行うのではなく、その順番を適当な方法で入れ替えて、大きさが隣り合う記録パワーが不連続となるように並び替えた記録パワー系列でテスト記録を行うことで、ディスク位置に対する依存性を解消し、感度ムラの影響を低減するものである。
【0034】
図6は本発明の原理を示す図である。これは図4に示したような感度ムラがあった場合に本発明を適用した例で、ディスク位置に対する記録パワーP(i)の順番を、大きさが隣り合う記録パワーが不連続となるように入れ替えている。このような記録パワー系列でテスト記録を行うと、記録特性値E(i)のディスク位置に対する依存性が低減される。すなわち、図4で示した従来の方式ではPo演算に使う記録特性値E(2),E(3),E(4)の全てが感度ムラの影響を受けてしまうが、本発明の原理に基づく図6の例では、感度ムラの影響を受けるのはE(2)だけである。したがって、得られるPoの精度は大きく向上する。
【0035】
ここまで説明を分かり易くするために局所的に感度ムラが発生している例を示した。しかし実際には感度ムラが光ディスク1上の広範囲に分布していることが多く、OPCで得られるPoはその平均的な感度での値が望ましい。本発明はPo演算に用いる記録特性値をディスク位置に対して離散的に分散させる効果があるので、従来の方式より平均値に近いPoが得られるという利点も挙げられる。
【0036】
以下に、本発明の実施形態をより具体的に説明する。
【0037】
図7は本発明の第1の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法の手順を示すフローチャートである。本実施形態は、記録パワー系列における記録パワーP(i)の順番を乱数によって入れ替える方式を採用したものである。
【0038】
(ステップS101)まず、制御装置10は、予め与えられている記録パワー系列から、乱数を用いて、記録パワーP(i)の順番を、大きさが隣り合う記録パワーが不連続となるように入れ替えた記録パワー系列を作成し、これを制御装置10の中のメモリに格納する。なお、予め与えられている記録パワー系列とは、記録パワーが大きさの順に並べられた系列である。乱数を用いた入れ替え処理によって、偶然、隣り合う記録パワーが並んでしまった場合には、これを解消するために、一方を他の記録パワーに入れ替えたり、再度順番の入れ替えをやり直すようにする。
【0039】
(ステップS102)制御装置10は、メモリに格納された記録パワー系列を用いて光ディスク1へのテスト記録を実行するように制御を行う。
【0040】
(ステップS103)次に、制御装置10は、テスト記録が行われた位置の記録特性値を記録特性測定装置8により測定する。
【0041】
(ステップS104)次に、制御装置10は、記録特性測定装置8により測定された記録特性値を用いてPo演算を実行する。
【0042】
(ステップS105)これまでの手順によって感度ムラの影響が低減されたPoが得られる。
【0043】
本発明の主旨は、テスト記録のために用いられる記録パワーの順番と光ディスクの感度ムラの依存性を低減させることであるので、予め、乱数を用いて、大きさが隣り合う記録パワーが不連続となるように並び替えた記録パワー系列の情報をメモリに格納しておき、OPCでは毎回その記録パワー系列を用いてテスト記録を行うようにしてもよい。このようにすると、ある記録パワーP(i)とその近傍の記録パワーP(h)がある程度の距離をもって光ディスク上に一様に分布するような最適な配置を毎回実現できるというメリットがある。
【0044】
図8は、この手法を採用した本発明の第2の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法の手順を示すフローチャートである。
【0045】
(ステップS201)まず、制御装置10は、予めメモリに格納された、大きさが隣り合う記録パワーが不連続となるように並び替えた記録パワー系列の情報を用いてテスト記録を実行するように制御を行う。記録パワー系列は1種類でもよいが、記録パワーの並びが異なる複数の記録パワー系列をメモリに格納しておき、その中から適当な記録パワー系列を選択してテスト記録を行ってもよい。以降の動作は第1の実施形態のステップS103〜S105と同じである。
【0046】
OPCに影響を与える感度ムラとしては、光ディスクの反りや取り付け誤差による光学レンズとの相対位置、角度のズレ等によって生じる見かけ上の感度ムラもある。この類の感度ムラは光ディスクを回転させて記録トラック上を走査すると光ディスクの回転周期、またはその整数分の1の周期の感度変動として観測される。記録パワーの順番を入れ替える時にこの感度の周期性も考慮すると更にPo精度を高めることができる。
【0047】
図9は、この手法を採用した本発明の第3の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法の手順を示すフローチャートである。また、図10はこの方式を採用した場合のディスク位置、記録パワーP(i)、記録特性値E(i)の関係を示す図である。
【0048】
ここでは説明を簡単にするために、記録パワー系列のデータ個数Nを10とし、感度変動は周期θtの正弦波状であるとする。図10はPmとして{P(5)+P(6)}/2が選択され、Po演算に使う記録特性値がE(4),E(5),E(6),E(7)である状態を示している。
【0049】
正弦波の性質から、ある位置θaと、そこからθt/2×k(kは奇数)だけ離れた位置θbの感度との平均は全体の感度の平均にほぼ等しい。従って大きさの順で隣り合う記録パワーP(i)と記録パワーP(i+1)を、それぞれ位置θaと位置θbに配置することによって、より平均感度に近いPoの値が得られる。
【0050】
図10の例では、位置θaからテスト記録Aを行い、位置θaからθt/2だけ離れた位置θbから次のテスト記録Bを行っている。テスト記録Aではiが偶数となるP(i)の記録パワーでテスト記録し、テスト記録Bでは、対応するテスト記録Aでのiに1を加算したP(i+1)、即ちiが奇数となる記録パワーでテスト記録を行っている。このようにしてテスト記録を行うことによって、記録パワーP(i)での記録位置と記録パワーP(i+1)での記録位置との距離は常にθt/2となる。
【0051】
以下に、この性質を利用した第3の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法の手順を図9により説明する。
【0052】
(ステップS301)光ディスクの回転数、光軸からの傾き等の情報はサーボ装置5から得られるので、制御装置10はこれを観測し、記録感度周期θtを算出する。ここで数周期分の測定を行ってθtを測定してもよいが、十分な精度が得られるなら1/4周期程度の観測結果から算出してもかまわない。
【0053】
(ステップS302)次に、制御装置10は、テスト記録の開始位置θaから次の開始位置θbを次式により算出する。
【0054】
【数3】

ここで、テスト記録に使う記録トラック長の面ではkは小さい方が効率的であるから、値として1を用いるのが望ましい。しかし位置θaから始まるテスト記録が位置θbに重なってしまう場合は適切に大きな値でもかまわない。
【0055】
(ステップS303)次に、制御装置10は、位置θaからiが偶数の記録パワーP(i)でテスト記録を行うように制御を行う。記録パワー系列における記録パワーの順番は次式を適用する。
【0056】
【数4】

(ステップS304)次に、制御装置10は、位置θbからiが奇数のP(i)でテスト記録を行うように制御を行う。記録パワー系列における記録パワーの順番は次式を適用する。
【0057】
【数5】

なお、ステップS303とステップS304は一連の記録動作であってかまわない。
【0058】
以降の動作は第1の実施形態のステップS103〜S105と同じである。
【0059】
上記の第3の実施形態では、位置θaや位置θbからテスト記録される記録パワーP(i)がその大きさの順に並んでいるが、第1の実施形態と同様にこれを乱数によって入れ替えてもかまわない。
【0060】
図11は、この手法を採用した本発明の第4の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法の手順を示すフローチャートである。また、図12はこの方式を採用した場合のディスク位置、記録パワーP(i)、および記録特性値E(i)の関係を示す図である。
【0061】
(ステップS401)光ディスクの回転数、光軸からの傾き等の情報はサーボ装置5から得られるので、制御装置10はこれを観測し、記録感度周期θtを算出する。ここで数周期分の測定を行ってθtを測定してもよいが、十分な精度が得られるなら1/4周期程度の観測結果から算出してもかまわない。
【0062】
(ステップS402)制御装置10は、テスト記録の開始位置θaから次の開始位置θbを式(3)により算出する。
【0063】
ここで、テスト記録に使う記録トラック長の面ではkは小さい方が効率的であるから、値として1を用いるのが望ましい。しかし位置θaから始まるテスト記録が位置θbに重なってしまう場合は適切に大きな値でもかまわない。
【0064】
(ステップS403)制御装置10は、0,1,2、・・・,N/2−1の異なる要素を持つ配列Mjを作成し、その要素の順番を入れ替える。
【0065】
【数6】

(j=0,1,2,…,N/2−1)
(ステップS404)次に、制御装置10は、位置θaからテスト記録を実行するように制御を行う。このとき用いられる記録パワー系列における記録パワーP(i)の順番は次式を適用する。
【0066】
【数7】

(ステップS405)次に、制御装置10は、位置θbからテスト記録を実行するように制御を行う。このとき用いられる記録パワー系列における記録パワーP(i)の順番は次式を適用する。
【0067】
【数8】

以降の動作は第1の実施形態のステップS103〜S105と同じである。
【0068】
本発明は概算の周期情報でも効果が得られるので、予め光ディスクの形状や特性から感度周期θtを算出し、これに配慮した記録パワーの順番を決めておいてもかまわない。例えば図12に示したような、大きさが隣り合う記録パワーが不連続となるように並び替えた記録パワーの順番を予め制御装置10のメモリに保存しておき、OPCでは毎回この順番でテスト記録を行う方法である。この方法では第2の実施形態と同様に記録パワーの順番を常に最適化できる利点がある。
【0069】
図13は、上記の手法を用いた本発明の第5の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法の手順を示すフローチャートである。
【0070】
(ステップS501)まず、制御装置10は、メモリから予め想定した光ディスクの感度周期θtの情報を呼び出す。
【0071】
(ステップS502)次に、制御装置10は、テスト記録を最初に開始する位置をθaとし、式(3)から次の位置θbを算出する。
【0072】
(ステップS503)次に、制御装置10は、メモリから、位置θaからのテスト記録用の記録パワーの順番を呼び出し、位置θaからのテスト記録Aを実行する。ここで、記録パワーの順番は1種類でもよいが、数種類をメモリに格納しておき、その中から適当な順番を選択してもかまわない。
【0073】
(ステップS504)次に、制御装置10は、位置θbからのテスト記録用の記録パワーの順番を呼び出し、位置θbからテスト記録Bを実行する。この場合においても、記録パワーの順番を数種類メモリに格納しておき、その中から適当な順番を選択してもかまわない。
【0074】
以降の動作は第1の実施形態のステップS103〜S105と同じである。
【0075】
なお、説明の便宜上ステップS501、S502、S503、S504を分けて説明したが、実用上はこれらの手順を一つにまとめて一連のテスト記録としてもかまわない。
【0076】
光ディスクはその内周側のトラックと外周側のトラックでも記録感度に差がある。このような場合は、光ディスク1の内周側のトラックと外周側のトラックでの記録感度の違いを考慮しつつ、大きさが隣り合う記録パワーが不連続となるように並び替えた記録パワー系列を用いてテスト記録を行うことが有効である。
【0077】
図14は上記の手法を採用した本発明の第6の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法の手順を示すフローチャートである。図15は光ディスクの内周側と外周側の記録パワーP(i)の順番を示す図である。図15に示すように、本実施形態は光ディスクの内周側でiが偶数の記録パワーP(i)でのテスト記録を行い、外周側でiが奇数の記録パワーP(i)でのテスト記録を行う。
【0078】
以下、図14のフローチャートに従って本実施形態の動作を説明する。
【0079】
(ステップS601)まず、制御装置10は、光ディスク1の内周側で、iが偶数のP(i)でのテスト記録を実行するように制御を行う。
【0080】
(ステップS602)次に、制御装置10は、テスト記録が行われた内周側の記録特性値を記録特性測定装置8により測定する。
【0081】
(ステップS603)次に、制御装置10は、光ディスク1の外周側でiが奇数のP(i)でのテスト記録を実行する。
【0082】
(ステップS604)次に、制御装置10は、テスト記録が行われた外周側の記録特性値を記録特性測定装置8により測定する。
【0083】
以降の動作は第1の実施形態のステップS104、S105と同じである。
【0084】
内周側と外周側のテスト記録のパワーの順番は、第2の実施形態と同様に乱数を用いて入れ替えてもよい。
【0085】
図16は上記の手法を採用した本発明の第7の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法の手順を示すフローチャートである。図17は光ディスクの内周側と外周側の記録パワーP(i)の順番を示す図である。
【0086】
(ステップS701)まず制御装置10は、式(6)で定義される、0,1,2,・・・,N/2−1の異なる要素を持つ配列Mjを作成し、その要素の順番を入れ替える。
【0087】
(ステップS702)次に、制御装置10は、光ディスク1の内周側にてテスト記録を実行するように制御を行う。このとき記録パワーの順番は式(7)を適用する。
【0088】
(ステップS703)次に、制御装置10は、記録した内周側の記録特性値を記録特性測定装置8により測定する。
【0089】
(ステップS704)次に、制御装置10は、光ディスクの外周側にてテスト記録を実行するように制御を行う。このとき記録パワーの順番は式(8)を適用する。
【0090】
(ステップS705)次に、制御装置10は、記録した外周側の記録特性値を記録特性測定装置8により測定する。
【0091】
以降の動作は第1の実施形態のステップS104、S105と同じである。
【0092】
第2の実施形態と同様に、光ディスクの内周、外周で行うテスト記録のパワーの順番を予め決めて制御装置10のメモリに保存しておいてもよい。
【0093】
図18はこの手法を採用した本発明の第8の実施形態にかかる最適記録パワー決定方法の手順を示すフローチャートである。
【0094】
(ステップS801)まず、制御装置10は、予めメモリに格納された内周側用の記録パワー系列で、光ディスクの内周側にテスト記録を実行する。記録パワー系列の並びは1種類でもよいが、記録パワーの順番をメモリに数種類格納しておき、その中から適当なものを選択してもかまわない。
【0095】
(ステップS802)次に、制御装置10は、光ディスクの内周側の記録特性値を記録特性測定装置8により測定する。
【0096】
(ステップS803)次に、制御装置10は、予めメモリに格納された記録パワーの順番で、光ディスク1の外周側にテスト記録を実行する。記録パワーの順番は1種類でもよいが、記録パワーの順番をメモリに数種類格納しておき、その中から適当なものを選択してもかまわない。
【0097】
(ステップS804)次に、制御装置10は、光ディスクの外周側の記録特性値を記録特性測定装置8により測定する。
【0098】
以降の動作は第1の実施形態のステップS104、S105と同じである。
【0099】
以上、大きさが隣り合う記録パワーが不連続となるように並び替えた記録パワー系列を用いてテスト記録を行い、Poを算出する方法に関する幾つかの実施形態を示したが、本発明は、これらの実施形態に示されるものに限定されるものではなく、光ディスクの位置に対する記録パワーの大きさの依存性を解消できれば、他の方法を用いてもかまわない。 以上説明した実施形態によれば、OPCにおける感度ムラの影響を容易に低減できる。OPC精度が向上すると、記録パワー誤差に対して性能余裕の少ない光ディスクでも所望の記録性能を得ることが可能となる。
【0100】
従来は感度ムラを軽減するために、テスト記録前の前処理を行う、OPCを複数回繰り返す、またはテスト記録の物理長を長くする等の対応が必要であったが、本実施形態はテスト記録法自体に感度ムラを低減させる効果があるので、前処理やOPCを複数回繰り返す必要な無くOPC実行時間を短縮できる。同様にテスト記録長も短くできるので光ディスクの記録領域の節約にも繋がる。
【0101】
また、本発明は、従来の手法との併用も容易で、更なる感度ムラの影響を低減させる効果が期待できる。
【符号の説明】
【0102】
1 光ディスク
2 スピンドルモーター
3 光学ピックアップ
4 スレッドモーター
5 サーボ装置
6 APC装置
7 再生装置
8 記録特性測定装置
9 記録変調装置
10 制御装置
11 感度ムラの領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクの記録感度ムラの周期に関する情報を取得するステップと、
前記取得した周期に関する情報をもとにテスト記録の第1の開始位置と、前記周期の長さをθtとして、前記第1の開始位置からθt/2×k(kは奇数)だけ離れた位置である第2の開始位置を算出するステップと、
大きさの順に隣り合う記録パワーを、前記第1の開始位置からのテスト記録と前記第2の開始位置からのテスト記録とにそれぞれ割り振った記録パワー系列を用いて、前記光ディスクにテスト記録を行うステップと、
前記テスト記録が行われた位置の記録特性値を測定するステップと、
前記測定された記録特性値をもとに最適記録パワーの算出を行うステップと
を具備することを特徴とする光ディスク記録装置の最適記録パワー決定方法。
【請求項2】
光ディスクの記録感度ムラの周期を算出するステップと、
前記算出された周期をもとにテスト記録の第1の開始位置と、前記周期の長さをθtとして、前記第1の開始位置からθt/2×k(kは奇数)だけ離れた位置である第2の開始位置を算出するステップと、
大きさの順に隣り合う記録パワーを、前記第1の開始位置からのテスト記録と前記第2の開始位置からのテスト記録とに割り振った記録パワー系列を用いて、前記光ディスクにテスト記録を行うステップと、
前記テスト記録が行われた位置の記録特性値を測定するステップと、
前記測定された記録特性値をもとに最適記録パワーの算出を行うステップと
を具備することを特徴とする光ディスク記録装置の最適記録パワー決定方法。
【請求項3】
大きさの順に並べられた記録パワーの系列を、光ディスクの内周側のトラックと外周側のトラックでの記録感度の違いを考慮しつつ、大きさが隣り合う記録パワーが不連続となるように並び替えた記録パワー系列を用いて、光ディスクにテスト記録を行うテスト記録ステップと、
前記テスト記録が行われた位置の記録特性値を測定するステップと、
前記測定された記録特性値をもとに最適記録パワーの算出を行うステップと
を具備することを特徴とする光ディスク記録装置の最適記録パワー決定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の光ディスク記録装置の最適記録パワー決定方法であって、
前記テスト記録ステップは、大きさの順に隣り合う記録パワーを、内周側のトラックと外周側のトラックとにそれぞれ割り振った記録パワー系列を用いて、前記光ディスクにテスト記録を行うことを特徴とする光ディスク記録装置の最適記録パワー決定方法。
【請求項5】
記録パワーを変更可能な光ピックアップと、
前記光ピックアップの情報から記録特性を測定する記録特性測定部と、
光ディスクの記録感度ムラの周期に関する情報をもとにテスト記録の第1の開始位置と、前記周期の長さをθtとして、前記第1の開始位置からθt/2×k(kは奇数)だけ離れた位置である第2の開始位置を算出し、大きさの順に隣り合う記録パワーを、前記第1の開始位置からのテスト記録と前記第2の開始位置からのテスト記録とにそれぞれ割り振った記録パワー系列を用いて、前記光ディスクにテスト記録を行い、前記テスト記録が行われた位置の記録特性値を前記記録特性測定部より取得し、この取得した記録特性値をもとに最適記録パワーを求める制御部と
を具備することを特徴とする光ディスク記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−267381(P2010−267381A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192593(P2010−192593)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【分割の表示】特願2006−117366(P2006−117366)の分割
【原出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】