光ドーピング用材料を含むワニスおよびこれを用いてなる光導波路アンプ
【課題】本発明は、希土類金属が高濃度で添加されたフッ素化ポリイミド前駆体のワニス、およびこれを用いた光導波路アンプを提供することを目的とする。
【解決手段】希土類金属の塩と金属アルコキシドを反応させて得られる複合体と、カルボン酸化合物と、を有機溶媒中にて混合してなる光ドーピング用材料、およびフッ素化ポリイミド前駆体、を含むワニス。
【解決手段】希土類金属の塩と金属アルコキシドを反応させて得られる複合体と、カルボン酸化合物と、を有機溶媒中にて混合してなる光ドーピング用材料、およびフッ素化ポリイミド前駆体、を含むワニス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路アンプの光導波路用材料として好適なワニス、およびこれを用いてなる光導波路アンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光信号の長距離伝送を可能にする技術として、伝送過程で減衰する光信号の強度を中継増幅する光導波路アンプ(光増幅器)が知られている。この光導波路アンプは、一般的に、希土類金属が添加(ドープ)された石英ガラスやポリマーからなる光導波路(コア部)を有するものであり、強度が減衰した信号光は、当該光導波路を通る際に、信号光よりも大きいエネルギーを有する励起光(ポンプ光)により励起された希土類金属から放出される信号光波長相当の光により増幅されることになる。上記希土類金属は、増幅させる光信号の波長に応じて、プラセオジム(Pr、1.3μm帯)、エルビウム(Er、1.55〜1.61μm帯)、ツリウム(Tm、1.45及び1.65μm帯)などが用いられている。
【0003】
近年では、上記光導波路アンプを小型、軽量化するための開発が活発に行われており、例えば、有機化合物が希土類金属に配位した錯体(複合体)をポリマー中に高濃度で添加することで、信号光の増幅効果を向上させ、増幅に必要な光導波路長を短縮することなどが行われている(特許文献1〜5参照)。
【特許文献1】特開2000−208851号公報
【特許文献2】特開2003−258340号公報
【特許文献3】特開2005−064025号公報
【特許文献4】国際公開第06/004187号パンフレット
【特許文献5】特開2006−222403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光導波路用材料として、耐熱性、耐湿性に優れ、かつ光通信波長帯(1.3〜1.6μm)において非常に高い透明性を有するフッ素化ポリイミドが知られている。
【0005】
しかし、フッ素化ポリイミドの前駆体中に、従来から知られている希土類金属の複合体を分散させると直ちにゲル化してしまい、薄膜形成が困難となるため、フッ素化ポリイミドを光導波路アンプの光導波路用材料として用いることはできなかった。
【0006】
上記を鑑みて、本発明は、希土類金属が高濃度で添加されたフッ素化ポリイミド前駆体のワニス、およびこれを用いた光導波路アンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、出願人は、希土類金属の複合体を予めカルボン酸化合物で処理し、これをフッ素化ポリイミド前駆体に添加することで、希土類金属が高濃度で添加され、かつ透明な薄膜が得られるワニスを作製することに成功し、本発明を為すに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下(1)〜(13)に記載の事項をその特徴とするものである。
【0009】
(1)希土類金属の塩と金属アルコキシドを反応させて得られる複合体と、カルボン酸化合物と、を有機溶媒中にて混合してなる光ドーピング用材料、およびフッ素化ポリイミド前駆体、を含むワニス。
【0010】
(2)前記希土類金属が、ランタニド類である上記(1)に記載のワニス。
【0011】
(3)前記希土類金属が、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)からなる群から選択される1種以上である上記(1)に記載のワニス。
【0012】
(4)前記カルボン酸化合物のpKa値(水中、25℃)が1.5以下である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のワニス。
【0013】
(5)前記カルボン酸化合物の沸点が300℃未満である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のワニス。
【0014】
(6)前記カルボン酸化合物の沸点が前記有機溶媒の沸点以下である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のワニス。
【0015】
(7)前記カルボン酸化合物が構造中に脂肪族C−H結合を含まないものである上記(1)〜(6)のいずれかに記載のワニス。
【0016】
(8)前記カルボン酸化合物がハロゲン化物である上記(1)〜(7)のいずれかに記載のワニス。
【0017】
(9)前記カルボン酸化合物が、下記一般式(I)
【化1】
(式中、Xは0〜5の整数)
で表されるカルボン酸化合物である上記(1)〜(8)のいずれかに記載のワニス。
【0018】
(10)前記光ドーピング用材料は、前記カルボン酸化合物を前記希土類金属1モルに対して50〜400モル配合してなる上記(1)〜(9)のいずれかに記載のワニス。
【0019】
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載のワニスを用いて形成された光導波路を少なくとも備える、光導波路アンプ。
【0020】
(12)前記光導波路のコア部における希土類金属の濃度が0.01重量%から20重量%である上記(11)に記載の光導波路アンプ。
【0021】
(13)希土類金属の塩と金属アルコキシドを反応させて得られる複合体と、カルボン酸化合物と、を有機溶媒中にて混合してなる光導波路アンプ用光ドーピング用材料。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、希土類金属が高濃度で添加され、透明薄膜を作製することが可能なフッ素化ポリイミド前駆体のワニスを提供することが可能となり、その結果、従来よりも小型、軽量で、増幅効率に優れた光導波路アンプを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のワニスは、希土類金属の塩と金属アルコキシドを反応させて得られる複合体と、カルボン酸化合物とを有機溶媒中にて混合してなる光ドーピング用材料、およびフッ素化ポリイミド前駆体を含むワニスをその特徴とするものであり、これによれば、希土類金属をフッ素化ポリイミド前駆体中に均一かつ高濃度で分散させることが可能となる。
【0024】
以下、各成分について詳細に説明する。
【0025】
<複合体>
上記複合体は、希土類金属に対して金属アルコキシドの酸素が配位した構造を有するものであり、例えば、溶媒中に上記希土類金属の塩と金属アルコキシドを配合し、還流させることで得ることができる。
【0026】
また、上記希土類金属の塩としては、特に限定されないが、例えば、希土類金属の硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、塩化物、ギ酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩などを用いることができ、希土類金属の酢酸塩であることが好ましい。なお、希土類金属とは、ランタニド類(ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu))、スカンジウムおよびイットリウムを指し、本発明においては、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)が有用であり、好ましい。また、上記希土類金属の塩は、110〜120℃で1〜2時間程度脱水したものであることが好ましい。
【0027】
また、上記金属アルコキシドは、特に限定されないが、好ましくは、周期表上の3B族(バリウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム)、4A族(チタン、ジルコニウム、ハフニウム)または5A族(バナジウム、ニオブ、タンタル)の金属に、炭素数1〜5のアルコキシドが1以上結合したものであり、より好ましくは、アルミニウム、ガリウム、チタン、ジルコニウム、ニオブまたはタンタルに、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド等のアルコキシド基が1以上結合したものである。また、上記金属アルコキシドは、単独でも2種以上併用してもよい。
【0028】
また、上記希土類金属の塩と上記金属アルコキシドを反応させる際のそれぞれの配合比は、希土類金属の価数に応じて適宜決定すればよく、特に限定されないが、例えば、エルビウム塩とアルミニウムアルコキシドを用いる場合には、3価であるエルビウム1モルに対してアルミニウムが3モルとなるようにそれぞれを配合する。また、希土類金属の塩と金属アルコキシドを反応させる際に用いる溶媒や反応条件などは、両者の反応が完結するように適宜決定すればよく、特に限定されない。
【0029】
<光ドーピング用材料>
上記光ドーピング用材料は、上記複合体と、カルボン酸化合物とを有機溶媒中にて混合することで作製することができ、もちろん有機溶媒中に上記複合体を含む溶液と有機溶媒中にカルボン酸化合物を含む溶液とを混合して作製してもよい。このようにして上記複合体をカルボン酸化合物により予め処理しておくことで、複合体を直接フッ素化ポリイミド前駆体に添加した場合に生じるゲル化を抑制することが可能となる。なお、複合体とカルボン酸化合物を混合する方法や条件は特に限定されない。
【0030】
上記カルボン酸化合物としては、特に限定されないが、そのpKa値(水中、25℃における酸解離定数)が1.5以下であるものが好ましく、1.0以下であるものがより好ましい。このpKa値が1.5を超えるカルボン酸化合物を用いた場合には、ワニスがゲル化してしまう傾向にある。
【0031】
また、上記カルボン酸化合物は、その沸点が300℃未満のものであることが好ましく、また、上記有機溶媒の沸点以下のものであることが好ましい。上記カルボン酸化合物の沸点が300℃を超えるもしくは有機溶媒の沸点を超えるものであると、本発明のワニスからなる膜中に余剰のカルボン酸化合物が残存し易くなる。
【0032】
また、上記カルボン酸化合物は、その構造中に脂肪族C−H結合を含まないものであることが好ましい。光導波路用材料中に脂肪族C−H結合が含まれると、励起された希土類金属、特にエルビウムから放出される光を当該結合が振動エネルギーとして吸収してしまうため、所望の増幅効果を得ることができない(振動失活)。従って、脂肪族C−H結合を含むカルボン酸化合物は、ハロゲン等によりC−H結合の水素を置換しておくことが好ましい。具体的には、上記カルボン酸化合物として、下記一般式(I)
【化2】
(式中、Xは0〜5の整数)
で表されるカルボン酸化合物を用いることが好ましく、具体的には、トリフルオロ酢酸(TFA)、ペンタフルオロプロパン酸(FPA)、ヘプタフルオロブタン酸(FBA)、トリデカフルオロヘプタン酸(FHA)等が挙げられる。より好ましくは、一般式のXが0〜2のカルボン酸化合物である。
【0033】
また、上記カルボン酸化合物は、複合体中の希土類金属1モルに対して50〜400モルの範囲となるように配合することが好ましく、100〜300モルの範囲となるように配合することがより好ましい。上記カルボン酸化合物の配合量を上記範囲とすることで、ワニスのゲル化を効果的に抑制することが可能となる。また、カルボン酸化合物として、トリフルオロ酢酸のように、pKa値が比較的小さいもの(2未満程度)を用いる場合には、その配合量を50〜100モルの範囲とすることで十分にゲル化を抑制することができる。一方、pKa値が少し大きめ(2〜4程度)のカルボン酸化合物を用いる場合には、その配合量を300〜400モルとすることが好ましく、これによりワニスのゲル化を効果的に抑制することが可能となる。
【0034】
また、上記有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γーブチロラクトン、プロピレングルコールモノメチルエーテル、プロピレングルコールモノエチルエーテル、プロピレングルコールモノプロピルエーテル、プロピレングルコールモノブチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル、ブチレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノプロピルエーテル、ブチレングリコールモノブチルエーテルなどを挙げることができる。
【0035】
<本発明のワニス>
本発明のワニスは、上記光ドーピング用材料とフッ素化ポリイミド前駆体を含むことをその特徴とするものであり、例えば、上記光ドーピング用材料とフッ素化ポリイミド前駆体を混合することによって得ることができ、また、上記光ドーピング用材料中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを重合させてフッ素化ポリイミド前駆体を合成することによって得ることもできる。なお、前者の場合、フッ素化ポリイミド前駆体の合成で使用した溶媒と上記光ドーピング用材料の溶媒が同一のものであることが好ましく、また、後者の場合、本発明の光ドーピング用材料の溶媒は、フッ素化ポリイミド前駆体の合成で使用される公知の溶媒であることが好ましい。このような本発明のワニスは、製膜性に優れ、なおかつ希土類金属を高濃度に含ませることも可能であるため、光導波路アンプの光導波路(コア部)用材料として好適であり、これを塗布、硬化させてなる膜は、フッ素化ポリイミドの膜と同様、優れた強度や透明性を示す。
【0036】
また、上記光ドーピング用材料とフッ素化ポリイミド前駆体の配合比は、所望するフッ素化ポリイミド膜中の希土類金属濃度を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、ワニスのゲル化抑制や製膜性、光増幅効果等を考慮すると、上記光ドーピング用材料中の希土類金属1モルに対して、フッ素化ポリイミド前駆体を0.01重量%〜20重量%配合することが好ましく、0.1重量%〜10重量%配合することがより好ましい。
【0037】
また、本発明のワニスは、特に、上記複合体を含有するフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを調整する際にゲル化等の不均化を生じさせること無く均一に上記複合体が分散した状態を実現することができることに特徴がある。したがって、本発明のワニスを成膜することによって、上記複合体を均一に分散させた樹脂膜を得ることができる。均一分散を実現するために、上記複合体の調整ならびに光ドーピング用材料に特段の特徴を有している。その意味で、本発明の光ドーピング用材料は、フッ素化ポリイミド前駆体をマトリックスとするワニスに好適に利用されるが、フッ素化ポリイミド系以外の樹脂をマトリックスとするワニスにも利用可能であることは言うまでも無い。すなわち、本発明のワニスは、本発明の光ドーピング用材料と、マトリックスとしてフッ素化ポリイミド系以外の樹脂もしくはその前駆体とを混合したものをも包含する。
【0038】
上記フッ素化ポリイミド系以外の樹脂(以下、マトリックス用樹脂)としては、光学用途として一般的に用いられ、その成形物が透明性を有するものであれば特に制限はない。具体的には、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスチレン、ポリカーボナート、ポリシクロオレフィン、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1、2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1、3−ブタジエン、ポリ−2−t−ブチル−1、3−ブタジエン、ポリ−1、3−ブタジエン等の(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテル、ポリビニルブチルエーテル等のポリエーテル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルホン、ポリスルフィド等が好ましく挙げられ、これらは単独又は2種以上併用して用いることもできる。
【0039】
上記の他にも、ポリイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体変性物、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸塩共重合体、アクリル酸エステル系ゴム、ポリイソブチレン、アタクチックポリプロピレン、ポリビニルブチラール、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、エチレンセルロース、ポリアミド、シリコーン系ゴム、ポリクロロプレン等の合成ゴム類、シリコーン、ポリビニルエーテル等が適用可能であり、これらは単独又は2種以上併用して用いることもできる。
【0040】
また、シリコーン樹脂や、ポリシラン、ポリシラザン、ゾルゲル法による有機無機ハイブリッド樹脂などを用いることもできる。
【0041】
上記マトリックス用樹脂は、用途に応じて適切に選択されることが必要である。本発明の光導波路アンプ用途にあっては、使用される波長域における透明性が考慮される必要がある。ここで、使用される波長域とは、励起光に使用する波長域と信号光として使用される波長域との両者について考慮されるべきである。
【0042】
光導波路アンプの製造工程や使用環境などで耐熱性を要求される用途では、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリキノリン系樹脂等が好ましい。ポリイミド系樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリ(イミド・イソインドロキナゾリンジオンイミド)樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂,ポリエステルイミド樹脂などが挙げられる。
【0043】
光導波路アンプで用いられる励起光は、信号光に比べて光強度が大きい光源が使用されるため、励起光源に対する耐性、長期信頼性なども考慮して、マトリックス樹脂が選択されるべきである。この観点でも、励起光による温度上昇などを考慮して、上述のような耐熱性の高い樹脂を選定することが好ましい。
【0044】
光導波路アンプに用いられる光源の波長が近赤外線領域の場合には、透明性の観点からフッ素を含む樹脂を用いることが好ましい。フッ素を含む樹脂としては、非晶質のフッ素樹脂を好適に用いることができる、例えば、デュポン社製のテフロンAFや、旭硝子社製のサイトップなどが挙げられる。そして、透明性と耐熱性とを兼ね備えるという観点からは、やはりフッ素化ポリイミドが最も好ましい。なお、本発明において、「フッ素化ポリイミド」とは、フッ素を構造中に有するポリイミド系樹脂のことであり、例えば、フッ素を有するポリイミド樹脂、フッ素を有するポリ(イミド・イソインドロキナゾリンジオンイミド)樹脂、フッ素を有するポリエーテルイミド樹脂、フッ素を有するポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。
【0045】
また、光導波路アンプを製造するにあたっては、光導波路としてのコア層とクラッド層を積層しなければならないことを考慮してマトリックス用樹脂を選択することが必要である。すなわち、コア層とクラッド層を成膜によって積層する場合にあっては、上層を成膜する際に下層が溶解するもしくは、下層とインターミキシングを起こすなどの問題を回避できる樹脂ならびに製造方法を選択する必要がある。この観点では、成膜時もしくは成膜後の適切な処理によって下層が架橋などして不溶化する樹脂や成膜時もしくは成膜後の反応によって溶剤に対する溶解性が変化して不溶化する樹脂を選定することが好ましい。前者の例としては、狭義での熱硬化性樹脂、すなわち、ネットワーク構造を構成する樹脂や分子間架橋を生じる樹脂が挙げられる。また、後者の例としては、ポリアミド酸などのポリイミド前駆体ワニスを挙げることができ、当該前駆体ワニスは、200〜400℃の熱処理でポリアミド酸骨格構造がポリイミド骨格構造に変化し、溶剤に対して不溶となる。このポリアミド酸としては、特に限定されないが、脂肪族C−H結合の水素がフッ素により置換されたフッ素化ポリアミド酸が好ましく、下記一般式(II)
【化3】
(式中、nは1である)
で表されるフッ素化ポリアミド酸であることがより好ましい。
【0046】
ポリイミド前駆体ワニスは、通常、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシドなどの極性溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの反応により得られ、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの少なくとも一方がフッ素を有するものであれば、フッ素化ポリイミド前駆体となる。ジアミン成分とカルボン酸二無水物成分とはほぼ等モルとして反応させることが好ましく、反応温度は、通常0〜40℃とされ、反応時間は、通常30分〜50時間の範囲とされる。なお、本発明では、特に断らない限り、全フッ素化ポリイミドも部分フッ素化ポリイミドもフッ素化ポリイミドとして表現する。
【0047】
フッ素を有するテトラカルボン酸二無水物の例としては、(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(ヘプタフルオロプロピル)ピロメリット酸二無水物、ペンタフルオロエチルピロメリット酸二無水物、ビス{3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ}ピロメリット酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−3,3′,4,4′−テトラカルボキシビフェニル二無水物、2,2′,5,5′−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3′,4,4′−テトラカルボキシビフェニル二無水物、5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−3,3′,4,4′−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−3,3′,4,4′−テトラカルボキシベンゾフェノン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ベンゼン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、2,2−ビス{(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ジフェニルエーテル二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、などが挙げられ、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0048】
フッ素を有しないテトラカルボン酸二無水物の例としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジフエニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ジフエニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ジフエニルテトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3″,4″−テトラカルボン酸二無水物、m−ターフェニル−3,4,3″,4″−テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロルナフタレン−1,4,5,8,テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸 二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ベンゾフエノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ベンゾフエノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、4,4′−スルホニルジフタル酸二無水物、3,3′,4,4′−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3′−4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、1−(2,3−ジカルボキシフェニル)−3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフエニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフエニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフエニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)スルホン二無水物、フエナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフエン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)メチルフエニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)ジフエニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフエニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フエニルビス(トリメリツト酸モノエステル酸無水物)エチレングリコールビス(トリメリツト酸無水物)、プロパンジオールビス(トリメリツト酸無水物)、ブタンジオールビス(トリメリツト酸無水物)、ペンタンジオールビス(トリメリツト酸無水物)、ヘキサンジオールビス(トリメリツト酸無水物)、オクタンジオールビス(トリメリツト酸無水物)、デカンジオールビス(トリメリツト酸無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物)スルホンビシクロ−(2,2,2)−オクト(7)−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフエノキシ)ジフエニルスルフイド二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、などが挙げられ、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0049】
フッ素を有するジアミンの例としては、4−(1H,1H,11H−エイコサフルオロウンデカノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,1H−パ−フルオロ−1−ブタノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,1H−パーフルオロ−1−ヘプタノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,1H−パーフルオロ−1−オクタノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−ペンタフルオロフェノキシ−1,3−ジアミノベンゼン、4−(2,3,5,6−テトラフルオロフェノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(4−フルオロフェノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−ヘキサノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−ドデカノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、(2,5−)ジアミノベンゾトリフルオライド、ビス(トリフルオロメチル)フェニレンジアミン、ジアミノテトラ(トリフルオロメチル)ベンゼン、ジアミノ(ペンタフルオロエチル)ベンゼン、2,5−ジアミノ(パーフルオロヘキシル)ベンゼン、2,5−ジアミノ(パーフルオロブチル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、p−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス{2−〔(アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロイソプロピル}ベンゼン2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノビフェニル、オクタフルオロベンジジン、ビス{(トリフルオロメチル)アミノフェノキシ}ビフェニル、4,4′−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(4−アミノ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(アニリノ)オクタフルオロブタン、1,5−ビス(アニリノ)デカフルオロペンタン、1,7−ビス(アニリノ)テトラデカフルオロヘプタン、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトラキス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジ(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラキス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′,5,5′−テトラフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′,5,5′−テトラ(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′,5,5′−テトラフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′,5,5′−テトラキス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4′−ビス(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラキス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラフロオロ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラ(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノ−p−テルフェニル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′−ジブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′,5,5′−テトラメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′,5,5′−テトラエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′,5,5′−テトラフロオロ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′,5,5′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′,5,5′−テトラキス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−(2−アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジトリフルオロメチルフェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−(4−アミノ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、ビス〔{(トリフルオロメチル)アミノフェノキシ}フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、1,3−ジアミノ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−メチル−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−メトキシ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−クロロ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−ブロモ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−メチル−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−メトキシ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−3,4,6−トリフルオロ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−クロロ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−ブロモ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−3−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2−メチル−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2−メトキシ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,6−トリフルオロ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2−クロロ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2−ブロモ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−メチル−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−メトキシ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−クロロ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−ブロモ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−メチル−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−メトキシ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−3,4,6−トリフルオロ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−クロロ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−ブロモ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−3−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2−メチル−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2−メトキシ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,6−トリフルオロ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2−クロロ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2−ブロモ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼンなどが挙げられ、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0050】
フッ素を有しないジアミンの例としては、p−フエニレンジアミン、m−フエニレンジアミン、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、ベンジジン、3,3′−ジメチルベンジジン、3,3′−ジメトキシベンジジン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジブロモ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラメトキシ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラエトキシ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフエニルエーテル、3,3′−ジアミノジフエニルエーテル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジイソプロピル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトラエチル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトラメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトラエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジイソプロピル−5,5′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジイソプロピル−5,5′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフエニルメタン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトライソプロピル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトライソプロピル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジイソプロピル−5,5′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジイソプロピル−5,5′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′,5,5′−テトラメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′,5,5′−テトラエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′,5,5′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジイソプロピル−5,5′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジイソプロピル−5,5′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′,5,5′−テトラメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′,5,5′−テトラエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′,5,5′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジイソプロピル−5,5′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジイソプロピル−5,5′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス−(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス−(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス−(4−アミノフェノキシフェニル)スルフィド、ビス−(4−アミノフェノキシフェニル)ビフェニル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル−3−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル−4−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル−3′−スルホンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル−4−スルホンアミド、4,4′−ジアミノジフェニルメタン−3−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルメタン−4−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルメタン−3′−スルホンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルメタン−4−スルホンアミド、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン−3−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルスルホン−4−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルスルホン−3′−スルホンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン−4−スルホンアミド、4,4′−ジアミノジフェニルサルファイド−3−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルサルファイド−4−スルホンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルサルファイド−4−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルサルファイド−3′−スルホンアミド、1,4−ジアミノベンゼン−2−スルホンアミド、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル−3−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル−4−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル−3′−カルボンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル−4−カルボンアミド、4,4′−ジアミノジフェニルメタン−3−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルメタン−4−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルメタン−3′−カルボンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルメタン−4−カルボンアミド、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン−3−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルスルホン−4−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルスルホン−3′−カルボンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン−4−カルボンアミド、4,4′−ジアミノジフェニルサルファイド−3−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルサルファイド−4−カルボンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルサルファイド−4−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルサルファイド−3′−カルボンアミド、1,4−ジアミノベンゼン−2−カルボンアミド、4−アミノフエニル−3−アミノ安息香酸、2,2−ビス(4−アミノフエニル)プロパン、ビス−(4−アミノフエニル)ジエチルシラン、ビス−(4−アミノフエニル)ジフエニルシラン、ビス−(4−アミノフエニル)エチルホスフインオキサイド、ビス−(4−アミノフエニル)−N−ブチルアミン、ビス−(4−アミノフエニル)−N−メチルアミン、N−(3−アミノフエニル)−4−アミノベンズアミド、2,4−ビス−(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス−(p−β−アミノ−t−ブチル−フエニル)エーテル、ビス−(p−β−メチル−γ−アミノ−ペンチル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノペンチル)ベンゼン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、プロピレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4′−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−(3−アミノプロポキシ)エタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシ−ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノアイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、などが挙げられ、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0051】
また、ジアミンの一部として、シリコンジアミンを使用してもよい。シリコンジアミンとしては、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,1−テトラフェニルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,1−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)−1,1,1−テトラメチルジシロキサンなどがある。シリコンジアミンを使用するときは、これらは、ジアミンの総量に対して、0.1〜10モル%使用するのが好ましい。上記のテトラカルボン酸二無水物およびジアミンは二種以上を併用してもよい。ポリイミド系樹脂の前駆体溶液として、感光性を有するものを使用することもできる。
【0052】
また、ジアミン成分またはテトラカルボン酸二無水物成分を反応させる場合、極性溶媒中の水が多いと両者が反応しにくく、所定の粘度が得られなくなるが、光導波路アンプなど光導波路用材料、光増幅機能を利用する光学材料、電子部品材料への適用に適したフッ素化ポリイミド前駆体ワニスの粘度は、塗膜強度、塗膜厚などから、1ポイズ以上が好ましく、より好ましくは5ポイズ以上、特に10ポイズ以上であることが好ましい。粘度が1ポイズ以上のフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを得るには、反応時における極性溶媒中の水含有量を0.05重量%以下にすることが好ましく、より好ましくは水含有量を0.03重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下とされる。水含有量の少ない極性溶媒は、モレキュラーシーブなどの脱水剤を極性溶媒中に添加して保管することにより得られる。
【0053】
また、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分を反応させて得られるフッ素化ポリイミド前駆体ワニスは、40℃〜80℃に加熱して所望の粘度に調整するが、この加熱調整前に水分を添加すると、低温で保存したときに粘度安定性の優れたフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを得ることができる。水の添加量は、粘度安定性の点から、フッ素化ポリイミド前駆体ワニス中の水含有量が0.13重量%以上1.0重量%以下になるよう添加することが好ましく、0.20重量%以上1.0重量%以下になるよう添加することがより好ましく、0.25重量%以上1.0重量%以下になるよう添加することが特に好ましい。なお、当該水含有量は、極性溶媒に含まれる水の量も考慮する。フッ素化ポリイミド前駆体ワニス中の水含有量が0.13重量%未満の場合、低温でフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを保存すると、増粘を生じる傾向にある。一方、フッ素化ポリイミド前駆体ワニス中の水含有量が1.0重量%を超えると、ポリイミド塗膜を形成した時に塗膜が白化しやすくなる。
【0054】
上記複合体は、溶媒中に水が存在することでゲル化、析出など不均化が生じる虞があるが、本発明の上記光ドーピング用材料を用いることで、水を含有する溶液中においても上記複合体を均一に分散させることができる。すなわち、本発明の光ドーピング用材料は、水を含有するフッ素化ポリイミド前駆体ワニスに対しても好適に混合させることができるように、鋭意検討した結果、完成に至ったものである。したがって、本発明のワニスは、上記光ドーピング用材料とフッ素化ポリイミド前駆体と上記所定範囲の水とを含有するワニスであることが好ましい。また、フッ素化ポリイミド前駆体ワニスの保存温度は、粘度安定性の点から、0℃以下が好ましく、より好ましくは−10℃以下、特に−20℃以下にするのが好ましい。保存温度が0℃より高いと、フッ素化ポリイミド前駆体ワニスの粘度が低下する。
【0055】
また、本発明のワニス中における上記複合体の含有量は、当該ワニスを用いて作製される硬化物(膜)の透明性、誘導放出による増幅率、屈折率等を使用形態に応じて適宜決定すればよく、特に制限はないが、0.01〜50重量%の範囲であることが好ましく、0.1〜40重量%の範囲であることがより好ましい。さらに好ましくは、0.1〜20重量%、より好ましくは、1〜10重量%である。光導波路アンプの光導波路を構成する場合には、光導波路の長さ、すなわち、光信号の増幅に寄与する長さが長ければ、本発明のワニス(コア層)中の複合体の含有量が少量でも光アンプとしての効果を得ることができる。この場合には、複合体を含有することによる透明性の低下、すなわち、光損失の増大を最小限にとどめることができる上、複合体含有による屈折率の増大をも少なくすることができるので、コアとクラッドの屈折率差を小さくとった光導波路アンプを実現することができ、その結果、通常の光ファイバとの接続における結合損失を低減することができる。従来の希土類添加光ファイバでは、コアとクラッドとの比屈折率差が大きくなるため、光ファイバとの接続での損失が大きくなる問題があった。これを回避するためには、接続部をTEC処理など特殊な処理を施すなど工程を追加する必要があり、製造コストの増大を招いていた。
【0056】
一方、本発明のワニス(コア層)中の複合体の含有量を多くすると、従来は、濃度消光やマルチフォノン緩和によって、蛍光が失活してしまい、励起希土類イオンが発光過程以外の形でエネルギーを失ってしまい増幅効果が得られないという問題点があったが、本発明では、後述の実施例に示すとおり、ワニス(コア層)中に複合体が高濃度に含まれていても失活することなく、蛍光を観測することができる。このように、高濃度に複合体を含有することができるのは、本発明の効果のひとつであり、また、複合体が高濃度に含まれていると、単位長さあたりの増幅率を高めることができ、短尺でも所定の光増幅率を得ることができる。つまり、高濃度に複合体を含有する本発明のワニスを用いて光導波路アンプの光導波路を構成すれば、光導波路アンプを小型化でき、なおかつ製造コストを大幅に低減することが可能となる。なお、上記複合体の含有量は、本発明のワニスもしくはその硬化物を窒素雰囲気下、900℃まで昇温速度10〜50℃/分で加熱し、熱分解して得られる残渣より正確に測定できる。
【0057】
また、本発明のワニスを熱や光などで硬化させて得られる硬化物の形状は、使用形態に応じて適宜決定すればよく、特に限定されないが、本発明における光導波路アンプとして用いる場合には、薄膜状であることが望ましい。また、空間結合タイプや微小光学素子として光アンプやレーザを構成する場合には、バルク状もしくはブロック状の形状に加工して用いることもできる。また、本発明の光ドーピング用材料もしくは本発明のワニスを液状のままで、励起レーザと組合わせて光アンプやレーザを構成することもできる。
【0058】
<光導波路アンプ>
本発明の光導波路アンプは、上記本発明のワニスを用いて形成された光導波路(コア部)を少なくとも備えることをその特徴とするものであり、希土類金属を高濃度に含む本発明のワニスを用いることで、前述のとおり、光導波路アンプの小型、軽量化を実現することが可能となる。また、信号光は、励起光と共に本発明の光導波路アンプのコア層内部を通過させることで増幅させることができ、この際に用いる励起光の波長は、コア層に含まれる希土類金属の種類や信号光の波長等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。具体的には、使用する信号光の波長域に蛍光が観測される、励起スペクトルのピーク波長近傍を励起波長として、選択することが好ましい。
【0059】
図1に、基板1、当該基板1上に形成された下部クラッド層2、当該下部クラッド層2上に本発明のワニスを用いて形成されたコア層3および当該コア層3上に形成された上部クラッド層4を備える本発明の光導波路アンプの一実施形態を示す。
【0060】
本発明の光導波路アンプの構成を得るためには、少なくとも、本発明のワニスを、塗布法、成型法、ラミネート法など公知の方法により塗布し、200〜400℃で熱処理してこれを硬化させ、コア層を形成する。通常のシングルモード光ファイバを入出力として用いた光導波路アンプを構成する場合には、光導波路アンプ部の光モードフィールドと光ファイバ部の光モードフィールドを合致させるためにコア層の厚さ、幅を小さくすることが好ましいため、スピンコートなど薄膜の膜厚を正確に制御できる方法が好ましい。また、本発明のワニスからなる被膜を公知の方法により、エッチングあるいは光を含む電磁波や電子線を含む粒子線の照射によって光回路パターンを有する光導波路を形成することもできる。
【0061】
また、上記基板としては、石英、シリコン、ガリウムヒ素、インジウムリンなどからなるものを用いることができ、特に限定されない。なお、図1では、上記基板と下部クラッド層とを異なる層として記載してあるが、基板自身を下部クラッド層として機能させることも可能である。すなわち、図1の下部クラッド層を省略した構成とすることができる。この場合には、光導波路コア層の屈折率が基板の屈折率よりも大きく選択されるべきであることは、言うまでも無い。また、例えば、シリコン基板を用い、当該基板表面の酸化膜層をクラッド層として用いることもできる。このようにすると、安価に得られるシリコンウエハの平坦性を有効に活用することができ、好ましい。
【0062】
また、上記クラッド層は、本発明のワニスにより形成されたコア層よりも屈折率の小さな層であればよく、例えば、前述のマトリックス用樹脂や、硬化物の屈折率がコア層よりも小さくなる本発明のワニスを用いて形成することができる。
【0063】
前者の場合、すなわち、コア層のみに本発明のワニスを採用した場合には、高Δ(比屈折率差)の光導波路を実現することが容易となるという利点がある。高Δとすることで、特に、励起光を同軸で入射する場合においては、コア領域への光の閉じ込めを強くすることができるため、増幅効率を大きくとることが可能となり、好ましい。また、後述するように、チャネル型光導波路を構成する場合などに、高Δな光導波路とすることで、曲げ損失の増加を低減することが可能となるため、曲率半径の小さな曲げ光導波路を採用することもでき、光導波路アンプのサイズを小型化することが可能である。一方、閉じ込めが強すぎる、すなわち、コアとクラッドとの比屈折率差が大きくなりすぎると、通常の光ファイバを信号光の入出力として使用した場合に、接続損失が大きくなってしまうので、コア層、クラッド層の構成は、光アンプ全体としての要求増幅率、寸法、コストなどを総合的に加味して決定すべきである。コアとクラッドとの比屈折率差が大きくなりすぎる場合には、例えば、クラッド層を構成する樹脂として、コア層を構成するマトリックス樹脂(フッ素化ポリイミド)よりも屈折率が大きいものを採用して調整することが好ましく、温度依存性、偏波依存性、波長依存性などを考慮すると、さらにコア層を構成するマトリックス樹脂と同種で構造が異なるものを採用して調整するのが好ましい。共重合組成を連続的に変化させられるポリイミド樹脂の場合には、好適にクラッドとコアを選択することが可能である。
【0064】
また、後者の場合、すなわち、コア層とクラッド層の双方を本発明のワニスを用いて形成する場合、両者を形成する本発明のワニスの複合体の含有量は、同一であっても異なっていてもよく、屈折率とコアサイズ、励起波長、信号波長の設計にあわせて適宜選択すればよい。また、この場合、コア層及びクラッド層の各マトリックス樹脂を複合体比添加の場合の屈折率差を基礎として、光導波路設計を実施することが可能なので容易に低Δ光導波路を構成することができる。したがって、通常の光ファイバを入出力手段として用いた場合に、接続損失を小さく抑えることができ、好都合である。また、コア層、クラッド層共に同濃度に複合体を添加した樹脂を採用することで、特に耐熱性が低いマトリックス樹脂を採用した場合などに、複合体の拡散による、光増幅性能の長期的劣化を免れることができる。
【0065】
また、コア層やクラッド層には、公知の透明高分子組成物、各種ガラス、金属酸化物、半導体酸化物などの無機材料が含まれていてもよく、用途に応じた選択をすることができる。
【0066】
また、本発明のワニス中の複合体含有量が十分大きい場合には、単位長さあたりの増幅率を大きくとることができるので、必ずしも、図1のような光導波路構成をとる必要はなく、例えば、入出力2本の光ファイバの間隙に本発明のワニス硬化物を配置する構成とすることも可能となる。この構成の場合、単位長さあたりの増幅率と光アンプとしての要求増幅率とによって2本の光ファイバ間のギャップが決まることとなるが、単位長さあたりの増幅率が大きい場合には、両光ファイバには、コリメータなどの集光手段を設ける必要がないため、部品点数が低減でき、製造コストが下がるので好ましい。集光手段を必要としないギャップ幅は、例えば、100μm以下であり、さらに好ましくは、50μm以下である。100μmを超える場合には、上記コリメータやレンズなどの集光手段を設けることが望ましい。また、スラブ光導波路型で光導波路アンプの光導波路部分を提供する場合には、上下方向は伝搬光が閉じ込められるが、横方向(基板面に水平で、信号光の伝搬方向に垂直な方向)には伝搬光が閉じ込められないので、長尺で設計する場合には、コリメータなどを併用することが望ましい。
【0067】
また、上記光ファイバ2本を入出力とする場合と同様の構成であるが、ギャップ部分に通常の光導波路(増幅作用を有しない)を採用し、その光導波路の光路を横切るように溝を形成して、その溝部に本発明のワニス硬化物を挿入する(例えば、図17)、もしくは、本発明のワニスを溝に流し込んで硬化させるなどの方法によって、溝部を充填した光導波路アンプを実現することもできる。この場合は、溝部の寸法を正確に製造することができ、好ましい。
【0068】
また、光導波路アンプの光導波路部分として、3次元光導波路を構成することもできる。この構成では、スラブ型光導波路の場合と異なり、横方向にも光の閉じ込めを実現することができるので、長尺にわたっても、伝搬光の漏れもしくは回折広がりを防ぐことができ、好ましい。また、この場合、励起光を同軸照射する構成の場合に必要となる、励起光と信号光との合分波機能を合分波光導波路として、上記光導波路アンプの3次元光導波路部分と集積化することが容易なため、光アンプ全体としての小型化にとって好ましい。
【0069】
また、本発明の光導波路アンプ、図15に示すように、コア層3上もしくは光導波路アンプ10上に、コア層3に光を入射するための光入射手段たる光入射用プリズム6と、コア層3から光を取り出すための光出射手段たる光出射用プリズム7を備えていてもよい。光の入射角度は、コア層3内で光が全反射し光が導波する範囲内の角度とする。なお、入射させる光は、励起光ならびに信号光の両者もしくは、いずれか一方である。励起光ならびに信号光の両者をプリズム介して入射する場合には、それぞれの波長に応じて、入射角度を設定する必要がある。励起光ならびに信号光の両者もしくは、いずれか一方の光をプリズムから入出力させる場合では、他方は、光導波路端部から入出力することができる。また、コアに光を入射するための光入射手段、光出射手段の両者もしくは、一方に光ファイバを備えていてもよい。コア層は、フォトリソグラフィ、成型など公知の方法によって、パターン形成された3次元光導波路を構成していてもよい。光ファイバを備えた光導波路アンプを構成する場合には、光導波路アンプを設ける部分と一体の基板上に光ファイバ実装用のガイド溝を配置することが、光ファイバの実装を容易にできる(パッシブ実装)ため、好ましい(例えば、図17)。
【0070】
本発明の光導波路アンプは、前述のとおり、光導波路の少なくともコア層が本発明のワニスからなり、励起光の照射により、中心希土類元素(イオン)の電子が励起され、増幅始準位に緩和したのち、信号光による誘導放出によって信号光強度を増幅するものである。したがって、光導波路アンプを構成するためには、本発明のワニスからなる光導波路部分と光導波路へ光信号を入出力するための光ファイバもしくは光導波路が接続されるとともに、光増幅機能部位に励起光を照射する手段をもって構成される。励起光照射手段は、光導波路に対して横から照射することもできるし(例えば、図16)、光導波路を共通の導波路として、同軸的に照射することもできる。従来の希土類添加光ファイバアンプでは、同軸励起が通例採られていたのは、希土類元素の添加濃度を高濃度化することが困難であったこともその一因である。本発明では、高濃度に希土類元素を添加することができるので、励起光照射方法は適宜決定することができる。
【0071】
また、本発明の光導波路アンプの光導波路コア層の厚みは、特に限定されないが、1〜50μmであることが好ましく、2〜20μmであることがより好ましく、2〜10μmであることがさらに好ましく、2〜7μmであることがさらに好ましい。コア層の厚みが50μmを超えると、光導波路アンプの厚みが大となり、また、基板との膨張係数の差に基づく応力によるそりが発生しやすくなる。また、コア層全体の厚みの均一性が達成されにくくなる。なお、コア層の厚さは、樹脂溶液の濃度、粘度、スピナの回転数などを変えることにより所定の厚さに制御する。
【0072】
また、コア層の厚みは、検出光の入射、出射手段をも考慮して決定すべきであり、例えば、シングルモード光ファイバを入射及び出射、入射もしくは出射手段のいずれかに用いる場合では、一般には伝送路である光ファイバとの整合性を考慮し、コア層の厚みを5μm前後とすることが多い。また、例えば、マルチモード光ファイバを入射及び出射、入射もしくは出射手段のいずれかに用いる場合では、一般には伝送路である光ファイバとの整合性を考慮し、コア層の厚みを50μm前後とすることが多い。
【0073】
また、光導波路コア層の厚さは、コア層とクラッド層との比屈折率差、使用波長などによっても適宜選択されるものであるが、信号光を入出力する光ファイバもしくは光導波路との結合損失を低減するように設計されることが好ましい。例えば、FTTHに用いられる波長域、すなわち、1.3μm帯、1.49μm帯、1.55μm帯などの信号光に対する光アンプを構成する場合、光導波路のコア層の厚さが4〜10μmの範囲にあるときの光導波路アンプ部の比屈折率差は、0.3%〜3%程度であることが好ましく、0.3%〜1%であることがより好ましく、さらに好ましくは、0.3%〜0.5%である。このように設計することによって、通常の光ファイバを信号入出力に好適に用いることができ、接続部での結合損失を小さく抑えることができる。なお、この屈折率は、複合体の会合状態や配合量などにより制御することができる。また、コア層の厚みが1〜50μmの範囲にあるときの、励起光照射前の光導波路部分の、波長1200〜1600nmにおける光伝搬損失は、5dB/cm以下であることが好ましく、3dB/cmであることがより好ましく、さらに好ましくは、1dB/cm以下である。なお、上記では、光導波路のコア層の厚みについて説明したが、3次元光導波路コアを採用する場合には、これらの記述は、コアの横方向の幅にも同様に適用できることは、言うまでも無い。
【0074】
また、光導波路アンプの光導波路部分は、透明性、すなわち、伝搬損失が小さいことを兼ね備えている必要がある。光導波路の伝搬損失は、通例dB/cmの単位で示される。すなわち、伝搬距離が長いほど光導波路としての伝搬損失は大きくなる。一方で、光導波路アンプの増幅率もまた、通例dB/cmの単位で示される。光導波路の伝搬損失と増幅率とは、符号が異なるため、打ち消しあう。増幅率の絶対値が伝搬損失の絶対値を上回ることが好ましい。このため、光導波路アンプの大きさと共に光増幅率とによって要求される光導波路としての透明性は異なるが、全長でのトータルの伝搬損失が10dB以下であることが好ましい。更に好ましくは、全長でのトータルの伝搬損失が3dB以下である。特に好ましくは、全長でのトータルの伝搬損失が1dB以下である。すなわち、光導波路アンプの光導波路部の全長が、1cmである場合には、コア層に用いる複合体含有樹脂の伝搬損失(励起光を照射していない状況の伝搬損失)は、10dB/cm以下であることが好ましく、3dB/cm以下であることがより好ましく、1dB/cm以下であることが特に好ましい。また、光導波路アンプの光導波路部の全長が、10cmである場合の伝搬損失は、1dB/cm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これら記載に限定されるものではない。
【0076】
<複合体の合成>
(合成例1)
前述の特許文献4の明細書に記載された実施例1における<無機分散相の作製>に従い、エルビウム/アルミニウム複合体を合成した。すなわち、約1.9gの酢酸エルビウム水和物を120℃/8mmHgの条件下で約2時間乾燥、脱水して得られた酢酸エルビウムを乾燥アルゴンガス気流下で1.36g秤量し、これを乾燥プロピレングリコールモノメチルエーテル13.6g中に加え、分散させた。ついで、この混合物をアルゴン気流下で攪拌しながらオイルバスにて約119℃に昇温した後、別途に調製したアルミニウムトリ−s−ブトキシドのプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液(濃度34.9重量%)を8.47g加えた。ついで、同温度を維持しながら2時間攪拌した後、室温まで冷却してエルビウム/アルミニウム複合体を得た(Er/Al=1/3モル)。さらに、当該複合体を含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液に、15gのジメチルアセトアミドを加え、密閉した後、40℃に昇温し、約10mmHgの減圧下でプロピレングリコールモノメチルエーテルを優先的に除去し、同条件下で溶媒の留去が認められなくなった時点で室温まで冷却し、アルゴンガスを吹き込みながら常圧に戻した。以上の方法によりエルビウム/アルミニウム複合体を含む桃色のジメチルアセトアミド溶液を得た(ErとAlの合計酸化物換算濃度約5重量%)。なお、酸化物換算濃度は、希土類金属化合物及び他の金属化合物から当該金属酸化物のモル量を算出し、そのモル量に相当する重量から酸化物換算濃度を算出した値である。
【0077】
(合成例2)
酢酸エルビウムの代わりに酢酸プラセオジウムを用いた以外は、合成例1と同様にして、プラセオジウム/アルミニウム複合体を含む緑色のジメチルアセトアミド溶液を得た(Pr/Al=1/3モル、PrとAlの合計酸化物換算濃度約5重量%)。
【0078】
<光ドーピング用材料の調製>
上記合成例で得た複合体のジメチルアセトアミド溶液約2gに、表1に示す各カルボン酸化合物を含むジメチルアセトアミド溶液を混合することで、光ドーピング用材料A〜Mを調製した。
【表1】
※1 複合体中の希土類金属1モルに対するカルボン酸化合物のモル数
※2 トリフルオロ酢酸(沸点:72.4℃/760mmHg)
※3 ペンタフルオロプロパン酸(沸点:96℃/760mmHg)
※4 ヘプタフルオロブタン酸(沸点:120℃/755mmHg)
※5 トリデカフルオロヘプタン酸(沸点:175℃/742mmHg)
【0079】
<フッ素化ポリイミド前駆体の合成>
(合成例1)
1リットルのガラス製の4つ口フラスコを用い、30ml/分の流量で乾燥窒素を通しながら、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン89.23g、および、モレキュラーシーブ(和光純薬工業(株)製商品名モレキュラーシーブス4A1/8)を添加して保管した、水含有量が0.008重量%(平沼産業株式会社製自動水分測定装置AQV−5SPで測定)のN,N−ジメチルアセトアミド850gを仕込み、溶解した後に、ピロメリット酸二無水物60.77gを添加し、室温で10時間撹拌して粘度1000ポイズの含フッ素ポリイミド系前駆体溶液を得た。この溶液に水2.0gを添加した後、70℃で4時間撹拌し、粘度50ポイズのフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを得た。この溶液の水含有量は0.3重量%であった。
【0080】
(合成例2)
1リットルのガラス製の4つ口フラスコを用い、30ml/分の流量で乾燥窒素を通しながら、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル46.6g、および水含有量が0.01重量%のN−メチル−2−ピロリドン850gを仕込み、溶解した後に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物103.4gを添加し、室温で15時間撹拌して粘度800ポイズの含フッ素ポリイミド系前駆体溶液を得た。この溶液に水3.0gを添加した後、65℃で3時間撹拌し、粘度100ポイズのフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを得た。この溶液の水含有量は0.4重量%であった。
【0081】
(合成例3)
1リットルのガラス製の4つ口フラスコを用い、30ml/分の流量で乾燥窒素を通しながら、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル62.8g、および水含有量が0.008重量%のN,N−ジメチルアセトアミド850gを仕込み、溶解した後に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物87.2gを添加し、室温で15時間撹拌して粘度800ポイズの含フッ素ポリイミド系前駆体溶液を得た。この溶液に水3.0gを添加した後、65℃で3時間撹拌し、粘度50ポイズのフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを得た。この溶液の水含有量は0.4重量%であった。
【0082】
(合成例4)
1リットルのガラス製の4つ口フラスコを用い、30ml/分の流量で乾燥窒素を通しながら、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル57.4g、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル4.0g、および水含有量が0.008重量%のN,N−ジメチルアセトアミド850gを仕込み、溶解した後に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物88.6gを添加し、室温で15時間撹拌して粘度800ポイズの含フッ素ポリイミド系前駆体溶液を得た。この溶液に水3.0gを添加した後、65℃で3時間撹拌し、粘度50ポイズのフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを得た。この溶液の水含有量は0.4重量%であった。
【0083】
<本発明のワニスの作製と評価>
(実施例1〜9)
上記で得た光ドーピング用材料A〜I約1gをそれぞれ、上記合成例4で得たフッ素化ポリイミド前駆体ワニス約5gに添加し、室温で30分攪拌した後、約12時間静置することでワニスA〜I(実施例1〜9)を作製した。なお、各ワニスともゲル化が生じることはなかった。
【0084】
次いで、各ワニスA〜Iを、スピンコータを用いて1μmの酸化膜付シリコン基板上に塗布し、100℃で1時間、200℃で1時間、350℃で2時間の条件で硬化させ、所定厚みの膜A〜Iを作製した。その後、得られた膜の外観、強度、波長1300nm及び1550nmにおける屈折率、波長1550nmにおける透過損失を評価した。結果を表2に示す。なお、強度はクロスカット法により測定し、膜厚、屈折率及び透過損失は、プリズムカプラ法(メトリコン社製プリズムカプラ2010)により測定した。
【表2】
【0085】
(参考例1〜4)
上記で得た光ドーピング用材料J〜M約1gをそれぞれ、上記合成例4で得たフッ素化ポリイミド前駆体ワニス約5gに添加し、室温で30分攪拌した後、約12時間静置することでワニスJ〜Mを作製したが、全てのワニスがゲル化し、その後の成膜や評価を行うことができなかった。
【0086】
(実施例10)
光ドーピング用材料B5gに対して、上記合成例4で得たフッ素化ポリイミド前駆体ワニス0.09gを添加し、室温で30分攪拌した後、約12時間静置することで実施例10のワニスを作製した。このワニスの、エルビウム/アルミニウム複合体の酸化物換算濃度は約0.074重量%であった。
【0087】
(実施例11〜16)
光ドーピング材料B5gに対して添加する上記合成例4で得たフッ素化ポリイミド前駆体ワニスの添加量を変えること以外は、実施例10と全く同様にして実施例11〜16のワニスを作製した。各ワニスの、エルビウム/アルミニウム複合体の酸化物換算濃度は、0.213重量%(実施例11)、0.226重量%(実施例12)、0.702重量%(実施例13)、0.748重量%(実施例14)、1.099重量%(実施例15)、2.319重量%(実施例16)であった。
【0088】
<光導波路アンプの作製と評価>
次に、本発明の光導波路アンプの作製例について説明する。まず、シリコン基板上に、下記式
【化4】
で表されるポリイミド(x=0.1)の前駆体であるポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(15wt%)をスピンコートにより塗布し、加熱によってイミド化を行い、下部クラッド層(厚さ10μm)を形成した(波長1550nmにおけるTE偏波の屈折率:1.521)。ついで、下部クラッド層上に、上記一般式で表されるポリイミド(x=0.1)の前駆体であるポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(15wt%)と上記光ドーピング用材料Bとを混合したワニスNを塗布・加熱してコア層(厚さ6.5μm)を設け(波長1550nmにおけるTE偏波の屈折率:1.532)、ホトリソグラフィとO2 ガス系のドライエッチングを用いてコア層の不要部分を除去した。エッチングに用いたマスクを除去した後、上記コア層上に、上記下部クラッド層と同様にして上部クラッド層(平坦部における厚さ15μm)を設けることで、シリコン基板上に光導波路アンプの光導波路を形成した。なお、上記一般式で表されるフッ素化ポリイミドは、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFDB)又は4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)とから合成されるフッ素化ポリイミドであり、DDEの比率、すなわち、一般式における(x)を大きくすることによりその屈折率を大きくできる。ここでは、一般式における(x)を上記の値に設定することにより、コア層とクラッド層との比屈折率差を0.7%に調整した。また、導波路幅は6.5μmとした。
【0089】
次に、シリコン基板をダイシングにより切断し、長さ6cmの光導波路の両端面をシングルモードファイバで光結合して光導波路アンプを作製し、その特性を評価した。その結果、測定波長1.55μmにおいてファイバ間の挿入損失は5.0dBと小さな値であった。
【0090】
<光導波の観察>
波長632.8nm(HeNeレーザ)のビームを、プリズムカプラ法でプリズムを介して、上記で作製した光導波路に結合させたところ、光波が良好なストリークを示し直線的に伝搬している様子が観察された。また、出射プリズムを通して、良好なm−lineが観測された。このことから、上記合成例1で得た複合体は、上記ワニスN中においてフッ素化ポリイミドをマトリックスとして均一に分散されていることが確認できた。
【0091】
<蛍光強度測定>
上記で作製した膜Bについて、島津製作所製NIR−PLシステム装置を用いて、400nmおよび520nmの波長で励起した場合の室温での蛍光強度スペクトルを測定した。結果を図2および図3に示す。
【0092】
また、同じ装置を用いて、合成例1で得た複合体の溶液および光ドーピング材料Bの蛍光強度スペクトルを測定した(励起波長520nm)。結果を図4および図5に示す。いずれのスペクトルでも同様の蛍光スペクトルが得られていることから、カルボン酸化合物の添加によって、複合体の中心希土類金属の状態に大きな差異が生じていないことが確認できた。また、図6、図7には、上記図3および図4で得られた蛍光強度スペクトルのピーク値(1550nm)における、蛍光励起スペクトルを示した。いずれのスペクトルでも同様の蛍光励起スペクトルが得られていることから、カルボン酸化合物の添加によって、複合体の中心希土類金属の状態に大きな差異が生じていないことが確認できた。
【0093】
また、同じ装置を用いて、実施例10〜16の各ワニスについて、励起波長490,525,650,980nmのそれぞれにおける蛍光強度スペクトルを測定し、各励起波長における1550nmの蛍光ピークの発光強度を、各ワニスの複合体酸化物換算濃度に対してプロットした。結果を図14に示す。この結果から、Erが高濃度に分散された状態であっても濃度消光が生じないことが確認された。
【0094】
以上より、複合体溶液、光ドーピング材料、光ドーピング材料とフッ素化ポリイミド前駆体ワニスとを混合したワニス(本発明のワニス)、その成膜サンプルのいずれにおいても、光導波路アンプとして用いる場合の信号光波長となる1550nm付近に蛍光ピークが観測されたことが分かる。つまり、本発明の光ドーピング材料、本発明のワニス、本発明の複合体含有フッ素化ポリイミド光導波路は、光導波路アンプとして良好にかつ高性能に機能することが確認できた。
【0095】
また、図12、図13には、中心希土類金属をプラセオジムとしたワニスI(実施例9)の、励起波長450nmおよび590nmにおける蛍光強度スペクトル測定結果を示す。この場合においても蛍光の発光が観測されていることから、中心希土類金属をEr以外のランタニド系列金属に置換した場合にも、本発明の光ドーピング材料、本発明のワニス、本発明の複合体含有フッ素化ポリイミド光導波路は、光導波路アンプとして良好にかつ高性能に機能することが確認できた。
【0096】
<吸収スペクトル測定>
上記で作製した光ドーピング用材料A〜Iについて、島津製作所製UV−3600を用いて、400nmから2000nmの波長における吸収スペクトルを測定した結果、いずれの場合にも同様のスペクトルが得られた。図10には、光ドーピング用材料Bの測定結果を透過率表示で示した。図11には、近赤外領域における光ドーピング用材料Bの測定結果を吸光度表示で示した。いずれの図においてもエルビウムイオンに特徴的な吸収スペクトルが得られていることが分かる。
【0097】
<小角X線散乱測定>
上記で作製した膜B、D、Eについて、株式会社リガク製の薄膜構造評価用X線回折装置(ATX−G)を用い、50kV、300mAのCuKα線を線源として、反射測定を行い、小角X線散乱測定を行った。0°≦2θ/ω≦10°の測定範囲に対して、1°/min(サンプリングステップ:0.02°)で走査した。アッテネータをオープンとし、オフセットを0.1°とした。また、スリット条件は、S1:10mm×0.2mm、S2:10mm×0.1mm、RS:10mm×0.2mm、GS:10mm×0.2mmとした。また、解析には、株式会社リガク製の粒径・空孔径解析ソフトウェア「NANO−Solver(Ver.3.1)」を用いて、形状因子として球形モデルを採用し、構造因子は1としてフィッティング解析を行った。
【0098】
図8には、膜Bの測定データと計算データ(フィッティング解析結果)をあわせて示す。また、この計算データから得られた粒径分布を図9に示す。良好なフィッティングが得られたこと、粒径分布の幅が狭いことから、合成例1で作製した複合体は、膜Bにおいてフッ素化ポリイミドをマトリックスとして均一に分散されていることが確認できた。同様にして得られた膜B、D、Eの平均粒子径と規格化分散を表3にまとめて示した。
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の光導波路アンプの一構造形態を示す断面概略図。
【図2】実施例で作製した膜Bの蛍光強度スペクトル(励起波長400nm)
【図3】実施例で作製した膜Bの蛍光強度スペクトル(励起波長520nm)
【図4】合成例1で得た複合体溶液の蛍光強度スペクトル(励起波長520nm)
【図5】光ドーピング用材料Bの蛍光強度スペクトル(励起波長520nm)
【図6】合成例1で得た複合体溶液の蛍光励起スペクトル(蛍光波長1550nm)
【図7】光ドーピング用材料Bの蛍光励起スペクトル(蛍光波長1550nm)
【図8】実施例で作製した膜Bの小角X線散乱強度
【図9】実施例で作製した膜Bの粒径分布解析結果
【図10】光ドーピング用材料Bの吸収スペクトル(透過率表示)
【図11】光ドーピング用材料Bの吸収スペクトル(吸光度表示)
【図12】ワニスIの蛍光強度スペクトル(励起波長450nm)
【図13】ワニスIの蛍光強度スペクトル(励起波長590nm)
【図14】実施例10〜16の各ワニスの蛍光強度のEr濃度依存性を示すグラフ(励起波長490,525,650,980nm)
【図15】本発明の光導波路アンプの一構造形態を示す断面概略図。
【図16】本発明の光導波路アンプの一構造形態を示す断面概略図。
【図17】本発明の光導波路アンプの一構造形態を示す断面概略図。
【符号の説明】
【0100】
1 基板
2 下部クラッド層
3 コア層
4 上部クラッド層
5 光導波路
6 光入射用プリズム
7 光出射用プリズム
10 光導波路アンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路アンプの光導波路用材料として好適なワニス、およびこれを用いてなる光導波路アンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光信号の長距離伝送を可能にする技術として、伝送過程で減衰する光信号の強度を中継増幅する光導波路アンプ(光増幅器)が知られている。この光導波路アンプは、一般的に、希土類金属が添加(ドープ)された石英ガラスやポリマーからなる光導波路(コア部)を有するものであり、強度が減衰した信号光は、当該光導波路を通る際に、信号光よりも大きいエネルギーを有する励起光(ポンプ光)により励起された希土類金属から放出される信号光波長相当の光により増幅されることになる。上記希土類金属は、増幅させる光信号の波長に応じて、プラセオジム(Pr、1.3μm帯)、エルビウム(Er、1.55〜1.61μm帯)、ツリウム(Tm、1.45及び1.65μm帯)などが用いられている。
【0003】
近年では、上記光導波路アンプを小型、軽量化するための開発が活発に行われており、例えば、有機化合物が希土類金属に配位した錯体(複合体)をポリマー中に高濃度で添加することで、信号光の増幅効果を向上させ、増幅に必要な光導波路長を短縮することなどが行われている(特許文献1〜5参照)。
【特許文献1】特開2000−208851号公報
【特許文献2】特開2003−258340号公報
【特許文献3】特開2005−064025号公報
【特許文献4】国際公開第06/004187号パンフレット
【特許文献5】特開2006−222403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光導波路用材料として、耐熱性、耐湿性に優れ、かつ光通信波長帯(1.3〜1.6μm)において非常に高い透明性を有するフッ素化ポリイミドが知られている。
【0005】
しかし、フッ素化ポリイミドの前駆体中に、従来から知られている希土類金属の複合体を分散させると直ちにゲル化してしまい、薄膜形成が困難となるため、フッ素化ポリイミドを光導波路アンプの光導波路用材料として用いることはできなかった。
【0006】
上記を鑑みて、本発明は、希土類金属が高濃度で添加されたフッ素化ポリイミド前駆体のワニス、およびこれを用いた光導波路アンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、出願人は、希土類金属の複合体を予めカルボン酸化合物で処理し、これをフッ素化ポリイミド前駆体に添加することで、希土類金属が高濃度で添加され、かつ透明な薄膜が得られるワニスを作製することに成功し、本発明を為すに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下(1)〜(13)に記載の事項をその特徴とするものである。
【0009】
(1)希土類金属の塩と金属アルコキシドを反応させて得られる複合体と、カルボン酸化合物と、を有機溶媒中にて混合してなる光ドーピング用材料、およびフッ素化ポリイミド前駆体、を含むワニス。
【0010】
(2)前記希土類金属が、ランタニド類である上記(1)に記載のワニス。
【0011】
(3)前記希土類金属が、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)からなる群から選択される1種以上である上記(1)に記載のワニス。
【0012】
(4)前記カルボン酸化合物のpKa値(水中、25℃)が1.5以下である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のワニス。
【0013】
(5)前記カルボン酸化合物の沸点が300℃未満である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のワニス。
【0014】
(6)前記カルボン酸化合物の沸点が前記有機溶媒の沸点以下である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のワニス。
【0015】
(7)前記カルボン酸化合物が構造中に脂肪族C−H結合を含まないものである上記(1)〜(6)のいずれかに記載のワニス。
【0016】
(8)前記カルボン酸化合物がハロゲン化物である上記(1)〜(7)のいずれかに記載のワニス。
【0017】
(9)前記カルボン酸化合物が、下記一般式(I)
【化1】
(式中、Xは0〜5の整数)
で表されるカルボン酸化合物である上記(1)〜(8)のいずれかに記載のワニス。
【0018】
(10)前記光ドーピング用材料は、前記カルボン酸化合物を前記希土類金属1モルに対して50〜400モル配合してなる上記(1)〜(9)のいずれかに記載のワニス。
【0019】
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載のワニスを用いて形成された光導波路を少なくとも備える、光導波路アンプ。
【0020】
(12)前記光導波路のコア部における希土類金属の濃度が0.01重量%から20重量%である上記(11)に記載の光導波路アンプ。
【0021】
(13)希土類金属の塩と金属アルコキシドを反応させて得られる複合体と、カルボン酸化合物と、を有機溶媒中にて混合してなる光導波路アンプ用光ドーピング用材料。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、希土類金属が高濃度で添加され、透明薄膜を作製することが可能なフッ素化ポリイミド前駆体のワニスを提供することが可能となり、その結果、従来よりも小型、軽量で、増幅効率に優れた光導波路アンプを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のワニスは、希土類金属の塩と金属アルコキシドを反応させて得られる複合体と、カルボン酸化合物とを有機溶媒中にて混合してなる光ドーピング用材料、およびフッ素化ポリイミド前駆体を含むワニスをその特徴とするものであり、これによれば、希土類金属をフッ素化ポリイミド前駆体中に均一かつ高濃度で分散させることが可能となる。
【0024】
以下、各成分について詳細に説明する。
【0025】
<複合体>
上記複合体は、希土類金属に対して金属アルコキシドの酸素が配位した構造を有するものであり、例えば、溶媒中に上記希土類金属の塩と金属アルコキシドを配合し、還流させることで得ることができる。
【0026】
また、上記希土類金属の塩としては、特に限定されないが、例えば、希土類金属の硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、塩化物、ギ酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩などを用いることができ、希土類金属の酢酸塩であることが好ましい。なお、希土類金属とは、ランタニド類(ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu))、スカンジウムおよびイットリウムを指し、本発明においては、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)が有用であり、好ましい。また、上記希土類金属の塩は、110〜120℃で1〜2時間程度脱水したものであることが好ましい。
【0027】
また、上記金属アルコキシドは、特に限定されないが、好ましくは、周期表上の3B族(バリウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム)、4A族(チタン、ジルコニウム、ハフニウム)または5A族(バナジウム、ニオブ、タンタル)の金属に、炭素数1〜5のアルコキシドが1以上結合したものであり、より好ましくは、アルミニウム、ガリウム、チタン、ジルコニウム、ニオブまたはタンタルに、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド等のアルコキシド基が1以上結合したものである。また、上記金属アルコキシドは、単独でも2種以上併用してもよい。
【0028】
また、上記希土類金属の塩と上記金属アルコキシドを反応させる際のそれぞれの配合比は、希土類金属の価数に応じて適宜決定すればよく、特に限定されないが、例えば、エルビウム塩とアルミニウムアルコキシドを用いる場合には、3価であるエルビウム1モルに対してアルミニウムが3モルとなるようにそれぞれを配合する。また、希土類金属の塩と金属アルコキシドを反応させる際に用いる溶媒や反応条件などは、両者の反応が完結するように適宜決定すればよく、特に限定されない。
【0029】
<光ドーピング用材料>
上記光ドーピング用材料は、上記複合体と、カルボン酸化合物とを有機溶媒中にて混合することで作製することができ、もちろん有機溶媒中に上記複合体を含む溶液と有機溶媒中にカルボン酸化合物を含む溶液とを混合して作製してもよい。このようにして上記複合体をカルボン酸化合物により予め処理しておくことで、複合体を直接フッ素化ポリイミド前駆体に添加した場合に生じるゲル化を抑制することが可能となる。なお、複合体とカルボン酸化合物を混合する方法や条件は特に限定されない。
【0030】
上記カルボン酸化合物としては、特に限定されないが、そのpKa値(水中、25℃における酸解離定数)が1.5以下であるものが好ましく、1.0以下であるものがより好ましい。このpKa値が1.5を超えるカルボン酸化合物を用いた場合には、ワニスがゲル化してしまう傾向にある。
【0031】
また、上記カルボン酸化合物は、その沸点が300℃未満のものであることが好ましく、また、上記有機溶媒の沸点以下のものであることが好ましい。上記カルボン酸化合物の沸点が300℃を超えるもしくは有機溶媒の沸点を超えるものであると、本発明のワニスからなる膜中に余剰のカルボン酸化合物が残存し易くなる。
【0032】
また、上記カルボン酸化合物は、その構造中に脂肪族C−H結合を含まないものであることが好ましい。光導波路用材料中に脂肪族C−H結合が含まれると、励起された希土類金属、特にエルビウムから放出される光を当該結合が振動エネルギーとして吸収してしまうため、所望の増幅効果を得ることができない(振動失活)。従って、脂肪族C−H結合を含むカルボン酸化合物は、ハロゲン等によりC−H結合の水素を置換しておくことが好ましい。具体的には、上記カルボン酸化合物として、下記一般式(I)
【化2】
(式中、Xは0〜5の整数)
で表されるカルボン酸化合物を用いることが好ましく、具体的には、トリフルオロ酢酸(TFA)、ペンタフルオロプロパン酸(FPA)、ヘプタフルオロブタン酸(FBA)、トリデカフルオロヘプタン酸(FHA)等が挙げられる。より好ましくは、一般式のXが0〜2のカルボン酸化合物である。
【0033】
また、上記カルボン酸化合物は、複合体中の希土類金属1モルに対して50〜400モルの範囲となるように配合することが好ましく、100〜300モルの範囲となるように配合することがより好ましい。上記カルボン酸化合物の配合量を上記範囲とすることで、ワニスのゲル化を効果的に抑制することが可能となる。また、カルボン酸化合物として、トリフルオロ酢酸のように、pKa値が比較的小さいもの(2未満程度)を用いる場合には、その配合量を50〜100モルの範囲とすることで十分にゲル化を抑制することができる。一方、pKa値が少し大きめ(2〜4程度)のカルボン酸化合物を用いる場合には、その配合量を300〜400モルとすることが好ましく、これによりワニスのゲル化を効果的に抑制することが可能となる。
【0034】
また、上記有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γーブチロラクトン、プロピレングルコールモノメチルエーテル、プロピレングルコールモノエチルエーテル、プロピレングルコールモノプロピルエーテル、プロピレングルコールモノブチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル、ブチレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノプロピルエーテル、ブチレングリコールモノブチルエーテルなどを挙げることができる。
【0035】
<本発明のワニス>
本発明のワニスは、上記光ドーピング用材料とフッ素化ポリイミド前駆体を含むことをその特徴とするものであり、例えば、上記光ドーピング用材料とフッ素化ポリイミド前駆体を混合することによって得ることができ、また、上記光ドーピング用材料中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを重合させてフッ素化ポリイミド前駆体を合成することによって得ることもできる。なお、前者の場合、フッ素化ポリイミド前駆体の合成で使用した溶媒と上記光ドーピング用材料の溶媒が同一のものであることが好ましく、また、後者の場合、本発明の光ドーピング用材料の溶媒は、フッ素化ポリイミド前駆体の合成で使用される公知の溶媒であることが好ましい。このような本発明のワニスは、製膜性に優れ、なおかつ希土類金属を高濃度に含ませることも可能であるため、光導波路アンプの光導波路(コア部)用材料として好適であり、これを塗布、硬化させてなる膜は、フッ素化ポリイミドの膜と同様、優れた強度や透明性を示す。
【0036】
また、上記光ドーピング用材料とフッ素化ポリイミド前駆体の配合比は、所望するフッ素化ポリイミド膜中の希土類金属濃度を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、ワニスのゲル化抑制や製膜性、光増幅効果等を考慮すると、上記光ドーピング用材料中の希土類金属1モルに対して、フッ素化ポリイミド前駆体を0.01重量%〜20重量%配合することが好ましく、0.1重量%〜10重量%配合することがより好ましい。
【0037】
また、本発明のワニスは、特に、上記複合体を含有するフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを調整する際にゲル化等の不均化を生じさせること無く均一に上記複合体が分散した状態を実現することができることに特徴がある。したがって、本発明のワニスを成膜することによって、上記複合体を均一に分散させた樹脂膜を得ることができる。均一分散を実現するために、上記複合体の調整ならびに光ドーピング用材料に特段の特徴を有している。その意味で、本発明の光ドーピング用材料は、フッ素化ポリイミド前駆体をマトリックスとするワニスに好適に利用されるが、フッ素化ポリイミド系以外の樹脂をマトリックスとするワニスにも利用可能であることは言うまでも無い。すなわち、本発明のワニスは、本発明の光ドーピング用材料と、マトリックスとしてフッ素化ポリイミド系以外の樹脂もしくはその前駆体とを混合したものをも包含する。
【0038】
上記フッ素化ポリイミド系以外の樹脂(以下、マトリックス用樹脂)としては、光学用途として一般的に用いられ、その成形物が透明性を有するものであれば特に制限はない。具体的には、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスチレン、ポリカーボナート、ポリシクロオレフィン、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1、2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1、3−ブタジエン、ポリ−2−t−ブチル−1、3−ブタジエン、ポリ−1、3−ブタジエン等の(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテル、ポリビニルブチルエーテル等のポリエーテル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルホン、ポリスルフィド等が好ましく挙げられ、これらは単独又は2種以上併用して用いることもできる。
【0039】
上記の他にも、ポリイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体変性物、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸塩共重合体、アクリル酸エステル系ゴム、ポリイソブチレン、アタクチックポリプロピレン、ポリビニルブチラール、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、エチレンセルロース、ポリアミド、シリコーン系ゴム、ポリクロロプレン等の合成ゴム類、シリコーン、ポリビニルエーテル等が適用可能であり、これらは単独又は2種以上併用して用いることもできる。
【0040】
また、シリコーン樹脂や、ポリシラン、ポリシラザン、ゾルゲル法による有機無機ハイブリッド樹脂などを用いることもできる。
【0041】
上記マトリックス用樹脂は、用途に応じて適切に選択されることが必要である。本発明の光導波路アンプ用途にあっては、使用される波長域における透明性が考慮される必要がある。ここで、使用される波長域とは、励起光に使用する波長域と信号光として使用される波長域との両者について考慮されるべきである。
【0042】
光導波路アンプの製造工程や使用環境などで耐熱性を要求される用途では、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリキノリン系樹脂等が好ましい。ポリイミド系樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリ(イミド・イソインドロキナゾリンジオンイミド)樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂,ポリエステルイミド樹脂などが挙げられる。
【0043】
光導波路アンプで用いられる励起光は、信号光に比べて光強度が大きい光源が使用されるため、励起光源に対する耐性、長期信頼性なども考慮して、マトリックス樹脂が選択されるべきである。この観点でも、励起光による温度上昇などを考慮して、上述のような耐熱性の高い樹脂を選定することが好ましい。
【0044】
光導波路アンプに用いられる光源の波長が近赤外線領域の場合には、透明性の観点からフッ素を含む樹脂を用いることが好ましい。フッ素を含む樹脂としては、非晶質のフッ素樹脂を好適に用いることができる、例えば、デュポン社製のテフロンAFや、旭硝子社製のサイトップなどが挙げられる。そして、透明性と耐熱性とを兼ね備えるという観点からは、やはりフッ素化ポリイミドが最も好ましい。なお、本発明において、「フッ素化ポリイミド」とは、フッ素を構造中に有するポリイミド系樹脂のことであり、例えば、フッ素を有するポリイミド樹脂、フッ素を有するポリ(イミド・イソインドロキナゾリンジオンイミド)樹脂、フッ素を有するポリエーテルイミド樹脂、フッ素を有するポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。
【0045】
また、光導波路アンプを製造するにあたっては、光導波路としてのコア層とクラッド層を積層しなければならないことを考慮してマトリックス用樹脂を選択することが必要である。すなわち、コア層とクラッド層を成膜によって積層する場合にあっては、上層を成膜する際に下層が溶解するもしくは、下層とインターミキシングを起こすなどの問題を回避できる樹脂ならびに製造方法を選択する必要がある。この観点では、成膜時もしくは成膜後の適切な処理によって下層が架橋などして不溶化する樹脂や成膜時もしくは成膜後の反応によって溶剤に対する溶解性が変化して不溶化する樹脂を選定することが好ましい。前者の例としては、狭義での熱硬化性樹脂、すなわち、ネットワーク構造を構成する樹脂や分子間架橋を生じる樹脂が挙げられる。また、後者の例としては、ポリアミド酸などのポリイミド前駆体ワニスを挙げることができ、当該前駆体ワニスは、200〜400℃の熱処理でポリアミド酸骨格構造がポリイミド骨格構造に変化し、溶剤に対して不溶となる。このポリアミド酸としては、特に限定されないが、脂肪族C−H結合の水素がフッ素により置換されたフッ素化ポリアミド酸が好ましく、下記一般式(II)
【化3】
(式中、nは1である)
で表されるフッ素化ポリアミド酸であることがより好ましい。
【0046】
ポリイミド前駆体ワニスは、通常、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシドなどの極性溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの反応により得られ、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの少なくとも一方がフッ素を有するものであれば、フッ素化ポリイミド前駆体となる。ジアミン成分とカルボン酸二無水物成分とはほぼ等モルとして反応させることが好ましく、反応温度は、通常0〜40℃とされ、反応時間は、通常30分〜50時間の範囲とされる。なお、本発明では、特に断らない限り、全フッ素化ポリイミドも部分フッ素化ポリイミドもフッ素化ポリイミドとして表現する。
【0047】
フッ素を有するテトラカルボン酸二無水物の例としては、(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(ヘプタフルオロプロピル)ピロメリット酸二無水物、ペンタフルオロエチルピロメリット酸二無水物、ビス{3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ}ピロメリット酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−3,3′,4,4′−テトラカルボキシビフェニル二無水物、2,2′,5,5′−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3′,4,4′−テトラカルボキシビフェニル二無水物、5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−3,3′,4,4′−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−3,3′,4,4′−テトラカルボキシベンゾフェノン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ベンゼン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、2,2−ビス{(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ジフェニルエーテル二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、などが挙げられ、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0048】
フッ素を有しないテトラカルボン酸二無水物の例としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジフエニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ジフエニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ジフエニルテトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3″,4″−テトラカルボン酸二無水物、m−ターフェニル−3,4,3″,4″−テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロルナフタレン−1,4,5,8,テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸 二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ベンゾフエノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ベンゾフエノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、4,4′−スルホニルジフタル酸二無水物、3,3′,4,4′−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3′−4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、1−(2,3−ジカルボキシフェニル)−3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフエニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフエニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフエニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)スルホン二無水物、フエナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフエン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)メチルフエニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)ジフエニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフエニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フエニルビス(トリメリツト酸モノエステル酸無水物)エチレングリコールビス(トリメリツト酸無水物)、プロパンジオールビス(トリメリツト酸無水物)、ブタンジオールビス(トリメリツト酸無水物)、ペンタンジオールビス(トリメリツト酸無水物)、ヘキサンジオールビス(トリメリツト酸無水物)、オクタンジオールビス(トリメリツト酸無水物)、デカンジオールビス(トリメリツト酸無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物)スルホンビシクロ−(2,2,2)−オクト(7)−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフエノキシ)ジフエニルスルフイド二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、などが挙げられ、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0049】
フッ素を有するジアミンの例としては、4−(1H,1H,11H−エイコサフルオロウンデカノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,1H−パ−フルオロ−1−ブタノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,1H−パーフルオロ−1−ヘプタノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,1H−パーフルオロ−1−オクタノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−ペンタフルオロフェノキシ−1,3−ジアミノベンゼン、4−(2,3,5,6−テトラフルオロフェノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(4−フルオロフェノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−ヘキサノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−ドデカノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、(2,5−)ジアミノベンゾトリフルオライド、ビス(トリフルオロメチル)フェニレンジアミン、ジアミノテトラ(トリフルオロメチル)ベンゼン、ジアミノ(ペンタフルオロエチル)ベンゼン、2,5−ジアミノ(パーフルオロヘキシル)ベンゼン、2,5−ジアミノ(パーフルオロブチル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、p−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス{2−〔(アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロイソプロピル}ベンゼン2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノビフェニル、オクタフルオロベンジジン、ビス{(トリフルオロメチル)アミノフェノキシ}ビフェニル、4,4′−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(4−アミノ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(アニリノ)オクタフルオロブタン、1,5−ビス(アニリノ)デカフルオロペンタン、1,7−ビス(アニリノ)テトラデカフルオロヘプタン、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトラキス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジ(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラキス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′,5,5′−テトラフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′,5,5′−テトラ(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′,5,5′−テトラフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′,5,5′−テトラキス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4′−ビス(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラキス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラフロオロ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラ(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノ−p−テルフェニル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′−ジブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′,5,5′−テトラメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′,5,5′−テトラエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′,5,5′−テトラフロオロ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′,5,5′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′,5,5′−テトラキス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−(2−アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジトリフルオロメチルフェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−(4−アミノ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、ビス〔{(トリフルオロメチル)アミノフェノキシ}フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、1,3−ジアミノ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−メチル−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−メトキシ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−クロロ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−ブロモ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−メチル−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−メトキシ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−3,4,6−トリフルオロ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−クロロ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−ブロモ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−3−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2−メチル−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2−メトキシ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,6−トリフルオロ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2−クロロ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2−ブロモ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−メチル−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−メトキシ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−クロロ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−ブロモ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−メチル−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−メトキシ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−3,4,6−トリフルオロ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−クロロ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,2−ジアミノ−4−ブロモ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−3−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2−メチル−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2−メトキシ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,6−トリフルオロ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2−クロロ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2−ブロモ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)ベンゼンなどが挙げられ、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0050】
フッ素を有しないジアミンの例としては、p−フエニレンジアミン、m−フエニレンジアミン、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、ベンジジン、3,3′−ジメチルベンジジン、3,3′−ジメトキシベンジジン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジブロモ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラメトキシ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラエトキシ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフエニルエーテル、3,3′−ジアミノジフエニルエーテル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジイソプロピル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトラエチル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトラメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトラエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジイソプロピル−5,5′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジイソプロピル−5,5′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフエニルメタン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトライソプロピル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトライソプロピル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジイソプロピル−5,5′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジイソプロピル−5,5′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′,5,5′−テトラメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′,5,5′−テトラエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′,5,5′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジイソプロピル−5,5′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジイソプロピル−5,5′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′,5,5′−テトラメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′,5,5′−テトラエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′,5,5′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジイソプロピル−5,5′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジイソプロピル−5,5′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラメトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラエトキシ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス−(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス−(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス−(4−アミノフェノキシフェニル)スルフィド、ビス−(4−アミノフェノキシフェニル)ビフェニル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル−3−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル−4−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル−3′−スルホンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル−4−スルホンアミド、4,4′−ジアミノジフェニルメタン−3−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルメタン−4−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルメタン−3′−スルホンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルメタン−4−スルホンアミド、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン−3−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルスルホン−4−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルスルホン−3′−スルホンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン−4−スルホンアミド、4,4′−ジアミノジフェニルサルファイド−3−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルサルファイド−4−スルホンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルサルファイド−4−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルサルファイド−3′−スルホンアミド、1,4−ジアミノベンゼン−2−スルホンアミド、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル−3−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル−4−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル−3′−カルボンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル−4−カルボンアミド、4,4′−ジアミノジフェニルメタン−3−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルメタン−4−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルメタン−3′−カルボンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルメタン−4−カルボンアミド、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン−3−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルスルホン−4−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルスルホン−3′−カルボンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン−4−カルボンアミド、4,4′−ジアミノジフェニルサルファイド−3−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルサルファイド−4−カルボンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルサルファイド−4−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルサルファイド−3′−カルボンアミド、1,4−ジアミノベンゼン−2−カルボンアミド、4−アミノフエニル−3−アミノ安息香酸、2,2−ビス(4−アミノフエニル)プロパン、ビス−(4−アミノフエニル)ジエチルシラン、ビス−(4−アミノフエニル)ジフエニルシラン、ビス−(4−アミノフエニル)エチルホスフインオキサイド、ビス−(4−アミノフエニル)−N−ブチルアミン、ビス−(4−アミノフエニル)−N−メチルアミン、N−(3−アミノフエニル)−4−アミノベンズアミド、2,4−ビス−(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス−(p−β−アミノ−t−ブチル−フエニル)エーテル、ビス−(p−β−メチル−γ−アミノ−ペンチル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノペンチル)ベンゼン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、プロピレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4′−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−(3−アミノプロポキシ)エタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシ−ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノアイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、などが挙げられ、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0051】
また、ジアミンの一部として、シリコンジアミンを使用してもよい。シリコンジアミンとしては、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,1−テトラフェニルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,1−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)−1,1,1−テトラメチルジシロキサンなどがある。シリコンジアミンを使用するときは、これらは、ジアミンの総量に対して、0.1〜10モル%使用するのが好ましい。上記のテトラカルボン酸二無水物およびジアミンは二種以上を併用してもよい。ポリイミド系樹脂の前駆体溶液として、感光性を有するものを使用することもできる。
【0052】
また、ジアミン成分またはテトラカルボン酸二無水物成分を反応させる場合、極性溶媒中の水が多いと両者が反応しにくく、所定の粘度が得られなくなるが、光導波路アンプなど光導波路用材料、光増幅機能を利用する光学材料、電子部品材料への適用に適したフッ素化ポリイミド前駆体ワニスの粘度は、塗膜強度、塗膜厚などから、1ポイズ以上が好ましく、より好ましくは5ポイズ以上、特に10ポイズ以上であることが好ましい。粘度が1ポイズ以上のフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを得るには、反応時における極性溶媒中の水含有量を0.05重量%以下にすることが好ましく、より好ましくは水含有量を0.03重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下とされる。水含有量の少ない極性溶媒は、モレキュラーシーブなどの脱水剤を極性溶媒中に添加して保管することにより得られる。
【0053】
また、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分を反応させて得られるフッ素化ポリイミド前駆体ワニスは、40℃〜80℃に加熱して所望の粘度に調整するが、この加熱調整前に水分を添加すると、低温で保存したときに粘度安定性の優れたフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを得ることができる。水の添加量は、粘度安定性の点から、フッ素化ポリイミド前駆体ワニス中の水含有量が0.13重量%以上1.0重量%以下になるよう添加することが好ましく、0.20重量%以上1.0重量%以下になるよう添加することがより好ましく、0.25重量%以上1.0重量%以下になるよう添加することが特に好ましい。なお、当該水含有量は、極性溶媒に含まれる水の量も考慮する。フッ素化ポリイミド前駆体ワニス中の水含有量が0.13重量%未満の場合、低温でフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを保存すると、増粘を生じる傾向にある。一方、フッ素化ポリイミド前駆体ワニス中の水含有量が1.0重量%を超えると、ポリイミド塗膜を形成した時に塗膜が白化しやすくなる。
【0054】
上記複合体は、溶媒中に水が存在することでゲル化、析出など不均化が生じる虞があるが、本発明の上記光ドーピング用材料を用いることで、水を含有する溶液中においても上記複合体を均一に分散させることができる。すなわち、本発明の光ドーピング用材料は、水を含有するフッ素化ポリイミド前駆体ワニスに対しても好適に混合させることができるように、鋭意検討した結果、完成に至ったものである。したがって、本発明のワニスは、上記光ドーピング用材料とフッ素化ポリイミド前駆体と上記所定範囲の水とを含有するワニスであることが好ましい。また、フッ素化ポリイミド前駆体ワニスの保存温度は、粘度安定性の点から、0℃以下が好ましく、より好ましくは−10℃以下、特に−20℃以下にするのが好ましい。保存温度が0℃より高いと、フッ素化ポリイミド前駆体ワニスの粘度が低下する。
【0055】
また、本発明のワニス中における上記複合体の含有量は、当該ワニスを用いて作製される硬化物(膜)の透明性、誘導放出による増幅率、屈折率等を使用形態に応じて適宜決定すればよく、特に制限はないが、0.01〜50重量%の範囲であることが好ましく、0.1〜40重量%の範囲であることがより好ましい。さらに好ましくは、0.1〜20重量%、より好ましくは、1〜10重量%である。光導波路アンプの光導波路を構成する場合には、光導波路の長さ、すなわち、光信号の増幅に寄与する長さが長ければ、本発明のワニス(コア層)中の複合体の含有量が少量でも光アンプとしての効果を得ることができる。この場合には、複合体を含有することによる透明性の低下、すなわち、光損失の増大を最小限にとどめることができる上、複合体含有による屈折率の増大をも少なくすることができるので、コアとクラッドの屈折率差を小さくとった光導波路アンプを実現することができ、その結果、通常の光ファイバとの接続における結合損失を低減することができる。従来の希土類添加光ファイバでは、コアとクラッドとの比屈折率差が大きくなるため、光ファイバとの接続での損失が大きくなる問題があった。これを回避するためには、接続部をTEC処理など特殊な処理を施すなど工程を追加する必要があり、製造コストの増大を招いていた。
【0056】
一方、本発明のワニス(コア層)中の複合体の含有量を多くすると、従来は、濃度消光やマルチフォノン緩和によって、蛍光が失活してしまい、励起希土類イオンが発光過程以外の形でエネルギーを失ってしまい増幅効果が得られないという問題点があったが、本発明では、後述の実施例に示すとおり、ワニス(コア層)中に複合体が高濃度に含まれていても失活することなく、蛍光を観測することができる。このように、高濃度に複合体を含有することができるのは、本発明の効果のひとつであり、また、複合体が高濃度に含まれていると、単位長さあたりの増幅率を高めることができ、短尺でも所定の光増幅率を得ることができる。つまり、高濃度に複合体を含有する本発明のワニスを用いて光導波路アンプの光導波路を構成すれば、光導波路アンプを小型化でき、なおかつ製造コストを大幅に低減することが可能となる。なお、上記複合体の含有量は、本発明のワニスもしくはその硬化物を窒素雰囲気下、900℃まで昇温速度10〜50℃/分で加熱し、熱分解して得られる残渣より正確に測定できる。
【0057】
また、本発明のワニスを熱や光などで硬化させて得られる硬化物の形状は、使用形態に応じて適宜決定すればよく、特に限定されないが、本発明における光導波路アンプとして用いる場合には、薄膜状であることが望ましい。また、空間結合タイプや微小光学素子として光アンプやレーザを構成する場合には、バルク状もしくはブロック状の形状に加工して用いることもできる。また、本発明の光ドーピング用材料もしくは本発明のワニスを液状のままで、励起レーザと組合わせて光アンプやレーザを構成することもできる。
【0058】
<光導波路アンプ>
本発明の光導波路アンプは、上記本発明のワニスを用いて形成された光導波路(コア部)を少なくとも備えることをその特徴とするものであり、希土類金属を高濃度に含む本発明のワニスを用いることで、前述のとおり、光導波路アンプの小型、軽量化を実現することが可能となる。また、信号光は、励起光と共に本発明の光導波路アンプのコア層内部を通過させることで増幅させることができ、この際に用いる励起光の波長は、コア層に含まれる希土類金属の種類や信号光の波長等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。具体的には、使用する信号光の波長域に蛍光が観測される、励起スペクトルのピーク波長近傍を励起波長として、選択することが好ましい。
【0059】
図1に、基板1、当該基板1上に形成された下部クラッド層2、当該下部クラッド層2上に本発明のワニスを用いて形成されたコア層3および当該コア層3上に形成された上部クラッド層4を備える本発明の光導波路アンプの一実施形態を示す。
【0060】
本発明の光導波路アンプの構成を得るためには、少なくとも、本発明のワニスを、塗布法、成型法、ラミネート法など公知の方法により塗布し、200〜400℃で熱処理してこれを硬化させ、コア層を形成する。通常のシングルモード光ファイバを入出力として用いた光導波路アンプを構成する場合には、光導波路アンプ部の光モードフィールドと光ファイバ部の光モードフィールドを合致させるためにコア層の厚さ、幅を小さくすることが好ましいため、スピンコートなど薄膜の膜厚を正確に制御できる方法が好ましい。また、本発明のワニスからなる被膜を公知の方法により、エッチングあるいは光を含む電磁波や電子線を含む粒子線の照射によって光回路パターンを有する光導波路を形成することもできる。
【0061】
また、上記基板としては、石英、シリコン、ガリウムヒ素、インジウムリンなどからなるものを用いることができ、特に限定されない。なお、図1では、上記基板と下部クラッド層とを異なる層として記載してあるが、基板自身を下部クラッド層として機能させることも可能である。すなわち、図1の下部クラッド層を省略した構成とすることができる。この場合には、光導波路コア層の屈折率が基板の屈折率よりも大きく選択されるべきであることは、言うまでも無い。また、例えば、シリコン基板を用い、当該基板表面の酸化膜層をクラッド層として用いることもできる。このようにすると、安価に得られるシリコンウエハの平坦性を有効に活用することができ、好ましい。
【0062】
また、上記クラッド層は、本発明のワニスにより形成されたコア層よりも屈折率の小さな層であればよく、例えば、前述のマトリックス用樹脂や、硬化物の屈折率がコア層よりも小さくなる本発明のワニスを用いて形成することができる。
【0063】
前者の場合、すなわち、コア層のみに本発明のワニスを採用した場合には、高Δ(比屈折率差)の光導波路を実現することが容易となるという利点がある。高Δとすることで、特に、励起光を同軸で入射する場合においては、コア領域への光の閉じ込めを強くすることができるため、増幅効率を大きくとることが可能となり、好ましい。また、後述するように、チャネル型光導波路を構成する場合などに、高Δな光導波路とすることで、曲げ損失の増加を低減することが可能となるため、曲率半径の小さな曲げ光導波路を採用することもでき、光導波路アンプのサイズを小型化することが可能である。一方、閉じ込めが強すぎる、すなわち、コアとクラッドとの比屈折率差が大きくなりすぎると、通常の光ファイバを信号光の入出力として使用した場合に、接続損失が大きくなってしまうので、コア層、クラッド層の構成は、光アンプ全体としての要求増幅率、寸法、コストなどを総合的に加味して決定すべきである。コアとクラッドとの比屈折率差が大きくなりすぎる場合には、例えば、クラッド層を構成する樹脂として、コア層を構成するマトリックス樹脂(フッ素化ポリイミド)よりも屈折率が大きいものを採用して調整することが好ましく、温度依存性、偏波依存性、波長依存性などを考慮すると、さらにコア層を構成するマトリックス樹脂と同種で構造が異なるものを採用して調整するのが好ましい。共重合組成を連続的に変化させられるポリイミド樹脂の場合には、好適にクラッドとコアを選択することが可能である。
【0064】
また、後者の場合、すなわち、コア層とクラッド層の双方を本発明のワニスを用いて形成する場合、両者を形成する本発明のワニスの複合体の含有量は、同一であっても異なっていてもよく、屈折率とコアサイズ、励起波長、信号波長の設計にあわせて適宜選択すればよい。また、この場合、コア層及びクラッド層の各マトリックス樹脂を複合体比添加の場合の屈折率差を基礎として、光導波路設計を実施することが可能なので容易に低Δ光導波路を構成することができる。したがって、通常の光ファイバを入出力手段として用いた場合に、接続損失を小さく抑えることができ、好都合である。また、コア層、クラッド層共に同濃度に複合体を添加した樹脂を採用することで、特に耐熱性が低いマトリックス樹脂を採用した場合などに、複合体の拡散による、光増幅性能の長期的劣化を免れることができる。
【0065】
また、コア層やクラッド層には、公知の透明高分子組成物、各種ガラス、金属酸化物、半導体酸化物などの無機材料が含まれていてもよく、用途に応じた選択をすることができる。
【0066】
また、本発明のワニス中の複合体含有量が十分大きい場合には、単位長さあたりの増幅率を大きくとることができるので、必ずしも、図1のような光導波路構成をとる必要はなく、例えば、入出力2本の光ファイバの間隙に本発明のワニス硬化物を配置する構成とすることも可能となる。この構成の場合、単位長さあたりの増幅率と光アンプとしての要求増幅率とによって2本の光ファイバ間のギャップが決まることとなるが、単位長さあたりの増幅率が大きい場合には、両光ファイバには、コリメータなどの集光手段を設ける必要がないため、部品点数が低減でき、製造コストが下がるので好ましい。集光手段を必要としないギャップ幅は、例えば、100μm以下であり、さらに好ましくは、50μm以下である。100μmを超える場合には、上記コリメータやレンズなどの集光手段を設けることが望ましい。また、スラブ光導波路型で光導波路アンプの光導波路部分を提供する場合には、上下方向は伝搬光が閉じ込められるが、横方向(基板面に水平で、信号光の伝搬方向に垂直な方向)には伝搬光が閉じ込められないので、長尺で設計する場合には、コリメータなどを併用することが望ましい。
【0067】
また、上記光ファイバ2本を入出力とする場合と同様の構成であるが、ギャップ部分に通常の光導波路(増幅作用を有しない)を採用し、その光導波路の光路を横切るように溝を形成して、その溝部に本発明のワニス硬化物を挿入する(例えば、図17)、もしくは、本発明のワニスを溝に流し込んで硬化させるなどの方法によって、溝部を充填した光導波路アンプを実現することもできる。この場合は、溝部の寸法を正確に製造することができ、好ましい。
【0068】
また、光導波路アンプの光導波路部分として、3次元光導波路を構成することもできる。この構成では、スラブ型光導波路の場合と異なり、横方向にも光の閉じ込めを実現することができるので、長尺にわたっても、伝搬光の漏れもしくは回折広がりを防ぐことができ、好ましい。また、この場合、励起光を同軸照射する構成の場合に必要となる、励起光と信号光との合分波機能を合分波光導波路として、上記光導波路アンプの3次元光導波路部分と集積化することが容易なため、光アンプ全体としての小型化にとって好ましい。
【0069】
また、本発明の光導波路アンプ、図15に示すように、コア層3上もしくは光導波路アンプ10上に、コア層3に光を入射するための光入射手段たる光入射用プリズム6と、コア層3から光を取り出すための光出射手段たる光出射用プリズム7を備えていてもよい。光の入射角度は、コア層3内で光が全反射し光が導波する範囲内の角度とする。なお、入射させる光は、励起光ならびに信号光の両者もしくは、いずれか一方である。励起光ならびに信号光の両者をプリズム介して入射する場合には、それぞれの波長に応じて、入射角度を設定する必要がある。励起光ならびに信号光の両者もしくは、いずれか一方の光をプリズムから入出力させる場合では、他方は、光導波路端部から入出力することができる。また、コアに光を入射するための光入射手段、光出射手段の両者もしくは、一方に光ファイバを備えていてもよい。コア層は、フォトリソグラフィ、成型など公知の方法によって、パターン形成された3次元光導波路を構成していてもよい。光ファイバを備えた光導波路アンプを構成する場合には、光導波路アンプを設ける部分と一体の基板上に光ファイバ実装用のガイド溝を配置することが、光ファイバの実装を容易にできる(パッシブ実装)ため、好ましい(例えば、図17)。
【0070】
本発明の光導波路アンプは、前述のとおり、光導波路の少なくともコア層が本発明のワニスからなり、励起光の照射により、中心希土類元素(イオン)の電子が励起され、増幅始準位に緩和したのち、信号光による誘導放出によって信号光強度を増幅するものである。したがって、光導波路アンプを構成するためには、本発明のワニスからなる光導波路部分と光導波路へ光信号を入出力するための光ファイバもしくは光導波路が接続されるとともに、光増幅機能部位に励起光を照射する手段をもって構成される。励起光照射手段は、光導波路に対して横から照射することもできるし(例えば、図16)、光導波路を共通の導波路として、同軸的に照射することもできる。従来の希土類添加光ファイバアンプでは、同軸励起が通例採られていたのは、希土類元素の添加濃度を高濃度化することが困難であったこともその一因である。本発明では、高濃度に希土類元素を添加することができるので、励起光照射方法は適宜決定することができる。
【0071】
また、本発明の光導波路アンプの光導波路コア層の厚みは、特に限定されないが、1〜50μmであることが好ましく、2〜20μmであることがより好ましく、2〜10μmであることがさらに好ましく、2〜7μmであることがさらに好ましい。コア層の厚みが50μmを超えると、光導波路アンプの厚みが大となり、また、基板との膨張係数の差に基づく応力によるそりが発生しやすくなる。また、コア層全体の厚みの均一性が達成されにくくなる。なお、コア層の厚さは、樹脂溶液の濃度、粘度、スピナの回転数などを変えることにより所定の厚さに制御する。
【0072】
また、コア層の厚みは、検出光の入射、出射手段をも考慮して決定すべきであり、例えば、シングルモード光ファイバを入射及び出射、入射もしくは出射手段のいずれかに用いる場合では、一般には伝送路である光ファイバとの整合性を考慮し、コア層の厚みを5μm前後とすることが多い。また、例えば、マルチモード光ファイバを入射及び出射、入射もしくは出射手段のいずれかに用いる場合では、一般には伝送路である光ファイバとの整合性を考慮し、コア層の厚みを50μm前後とすることが多い。
【0073】
また、光導波路コア層の厚さは、コア層とクラッド層との比屈折率差、使用波長などによっても適宜選択されるものであるが、信号光を入出力する光ファイバもしくは光導波路との結合損失を低減するように設計されることが好ましい。例えば、FTTHに用いられる波長域、すなわち、1.3μm帯、1.49μm帯、1.55μm帯などの信号光に対する光アンプを構成する場合、光導波路のコア層の厚さが4〜10μmの範囲にあるときの光導波路アンプ部の比屈折率差は、0.3%〜3%程度であることが好ましく、0.3%〜1%であることがより好ましく、さらに好ましくは、0.3%〜0.5%である。このように設計することによって、通常の光ファイバを信号入出力に好適に用いることができ、接続部での結合損失を小さく抑えることができる。なお、この屈折率は、複合体の会合状態や配合量などにより制御することができる。また、コア層の厚みが1〜50μmの範囲にあるときの、励起光照射前の光導波路部分の、波長1200〜1600nmにおける光伝搬損失は、5dB/cm以下であることが好ましく、3dB/cmであることがより好ましく、さらに好ましくは、1dB/cm以下である。なお、上記では、光導波路のコア層の厚みについて説明したが、3次元光導波路コアを採用する場合には、これらの記述は、コアの横方向の幅にも同様に適用できることは、言うまでも無い。
【0074】
また、光導波路アンプの光導波路部分は、透明性、すなわち、伝搬損失が小さいことを兼ね備えている必要がある。光導波路の伝搬損失は、通例dB/cmの単位で示される。すなわち、伝搬距離が長いほど光導波路としての伝搬損失は大きくなる。一方で、光導波路アンプの増幅率もまた、通例dB/cmの単位で示される。光導波路の伝搬損失と増幅率とは、符号が異なるため、打ち消しあう。増幅率の絶対値が伝搬損失の絶対値を上回ることが好ましい。このため、光導波路アンプの大きさと共に光増幅率とによって要求される光導波路としての透明性は異なるが、全長でのトータルの伝搬損失が10dB以下であることが好ましい。更に好ましくは、全長でのトータルの伝搬損失が3dB以下である。特に好ましくは、全長でのトータルの伝搬損失が1dB以下である。すなわち、光導波路アンプの光導波路部の全長が、1cmである場合には、コア層に用いる複合体含有樹脂の伝搬損失(励起光を照射していない状況の伝搬損失)は、10dB/cm以下であることが好ましく、3dB/cm以下であることがより好ましく、1dB/cm以下であることが特に好ましい。また、光導波路アンプの光導波路部の全長が、10cmである場合の伝搬損失は、1dB/cm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これら記載に限定されるものではない。
【0076】
<複合体の合成>
(合成例1)
前述の特許文献4の明細書に記載された実施例1における<無機分散相の作製>に従い、エルビウム/アルミニウム複合体を合成した。すなわち、約1.9gの酢酸エルビウム水和物を120℃/8mmHgの条件下で約2時間乾燥、脱水して得られた酢酸エルビウムを乾燥アルゴンガス気流下で1.36g秤量し、これを乾燥プロピレングリコールモノメチルエーテル13.6g中に加え、分散させた。ついで、この混合物をアルゴン気流下で攪拌しながらオイルバスにて約119℃に昇温した後、別途に調製したアルミニウムトリ−s−ブトキシドのプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液(濃度34.9重量%)を8.47g加えた。ついで、同温度を維持しながら2時間攪拌した後、室温まで冷却してエルビウム/アルミニウム複合体を得た(Er/Al=1/3モル)。さらに、当該複合体を含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液に、15gのジメチルアセトアミドを加え、密閉した後、40℃に昇温し、約10mmHgの減圧下でプロピレングリコールモノメチルエーテルを優先的に除去し、同条件下で溶媒の留去が認められなくなった時点で室温まで冷却し、アルゴンガスを吹き込みながら常圧に戻した。以上の方法によりエルビウム/アルミニウム複合体を含む桃色のジメチルアセトアミド溶液を得た(ErとAlの合計酸化物換算濃度約5重量%)。なお、酸化物換算濃度は、希土類金属化合物及び他の金属化合物から当該金属酸化物のモル量を算出し、そのモル量に相当する重量から酸化物換算濃度を算出した値である。
【0077】
(合成例2)
酢酸エルビウムの代わりに酢酸プラセオジウムを用いた以外は、合成例1と同様にして、プラセオジウム/アルミニウム複合体を含む緑色のジメチルアセトアミド溶液を得た(Pr/Al=1/3モル、PrとAlの合計酸化物換算濃度約5重量%)。
【0078】
<光ドーピング用材料の調製>
上記合成例で得た複合体のジメチルアセトアミド溶液約2gに、表1に示す各カルボン酸化合物を含むジメチルアセトアミド溶液を混合することで、光ドーピング用材料A〜Mを調製した。
【表1】
※1 複合体中の希土類金属1モルに対するカルボン酸化合物のモル数
※2 トリフルオロ酢酸(沸点:72.4℃/760mmHg)
※3 ペンタフルオロプロパン酸(沸点:96℃/760mmHg)
※4 ヘプタフルオロブタン酸(沸点:120℃/755mmHg)
※5 トリデカフルオロヘプタン酸(沸点:175℃/742mmHg)
【0079】
<フッ素化ポリイミド前駆体の合成>
(合成例1)
1リットルのガラス製の4つ口フラスコを用い、30ml/分の流量で乾燥窒素を通しながら、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン89.23g、および、モレキュラーシーブ(和光純薬工業(株)製商品名モレキュラーシーブス4A1/8)を添加して保管した、水含有量が0.008重量%(平沼産業株式会社製自動水分測定装置AQV−5SPで測定)のN,N−ジメチルアセトアミド850gを仕込み、溶解した後に、ピロメリット酸二無水物60.77gを添加し、室温で10時間撹拌して粘度1000ポイズの含フッ素ポリイミド系前駆体溶液を得た。この溶液に水2.0gを添加した後、70℃で4時間撹拌し、粘度50ポイズのフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを得た。この溶液の水含有量は0.3重量%であった。
【0080】
(合成例2)
1リットルのガラス製の4つ口フラスコを用い、30ml/分の流量で乾燥窒素を通しながら、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル46.6g、および水含有量が0.01重量%のN−メチル−2−ピロリドン850gを仕込み、溶解した後に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物103.4gを添加し、室温で15時間撹拌して粘度800ポイズの含フッ素ポリイミド系前駆体溶液を得た。この溶液に水3.0gを添加した後、65℃で3時間撹拌し、粘度100ポイズのフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを得た。この溶液の水含有量は0.4重量%であった。
【0081】
(合成例3)
1リットルのガラス製の4つ口フラスコを用い、30ml/分の流量で乾燥窒素を通しながら、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル62.8g、および水含有量が0.008重量%のN,N−ジメチルアセトアミド850gを仕込み、溶解した後に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物87.2gを添加し、室温で15時間撹拌して粘度800ポイズの含フッ素ポリイミド系前駆体溶液を得た。この溶液に水3.0gを添加した後、65℃で3時間撹拌し、粘度50ポイズのフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを得た。この溶液の水含有量は0.4重量%であった。
【0082】
(合成例4)
1リットルのガラス製の4つ口フラスコを用い、30ml/分の流量で乾燥窒素を通しながら、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル57.4g、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル4.0g、および水含有量が0.008重量%のN,N−ジメチルアセトアミド850gを仕込み、溶解した後に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物88.6gを添加し、室温で15時間撹拌して粘度800ポイズの含フッ素ポリイミド系前駆体溶液を得た。この溶液に水3.0gを添加した後、65℃で3時間撹拌し、粘度50ポイズのフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを得た。この溶液の水含有量は0.4重量%であった。
【0083】
<本発明のワニスの作製と評価>
(実施例1〜9)
上記で得た光ドーピング用材料A〜I約1gをそれぞれ、上記合成例4で得たフッ素化ポリイミド前駆体ワニス約5gに添加し、室温で30分攪拌した後、約12時間静置することでワニスA〜I(実施例1〜9)を作製した。なお、各ワニスともゲル化が生じることはなかった。
【0084】
次いで、各ワニスA〜Iを、スピンコータを用いて1μmの酸化膜付シリコン基板上に塗布し、100℃で1時間、200℃で1時間、350℃で2時間の条件で硬化させ、所定厚みの膜A〜Iを作製した。その後、得られた膜の外観、強度、波長1300nm及び1550nmにおける屈折率、波長1550nmにおける透過損失を評価した。結果を表2に示す。なお、強度はクロスカット法により測定し、膜厚、屈折率及び透過損失は、プリズムカプラ法(メトリコン社製プリズムカプラ2010)により測定した。
【表2】
【0085】
(参考例1〜4)
上記で得た光ドーピング用材料J〜M約1gをそれぞれ、上記合成例4で得たフッ素化ポリイミド前駆体ワニス約5gに添加し、室温で30分攪拌した後、約12時間静置することでワニスJ〜Mを作製したが、全てのワニスがゲル化し、その後の成膜や評価を行うことができなかった。
【0086】
(実施例10)
光ドーピング用材料B5gに対して、上記合成例4で得たフッ素化ポリイミド前駆体ワニス0.09gを添加し、室温で30分攪拌した後、約12時間静置することで実施例10のワニスを作製した。このワニスの、エルビウム/アルミニウム複合体の酸化物換算濃度は約0.074重量%であった。
【0087】
(実施例11〜16)
光ドーピング材料B5gに対して添加する上記合成例4で得たフッ素化ポリイミド前駆体ワニスの添加量を変えること以外は、実施例10と全く同様にして実施例11〜16のワニスを作製した。各ワニスの、エルビウム/アルミニウム複合体の酸化物換算濃度は、0.213重量%(実施例11)、0.226重量%(実施例12)、0.702重量%(実施例13)、0.748重量%(実施例14)、1.099重量%(実施例15)、2.319重量%(実施例16)であった。
【0088】
<光導波路アンプの作製と評価>
次に、本発明の光導波路アンプの作製例について説明する。まず、シリコン基板上に、下記式
【化4】
で表されるポリイミド(x=0.1)の前駆体であるポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(15wt%)をスピンコートにより塗布し、加熱によってイミド化を行い、下部クラッド層(厚さ10μm)を形成した(波長1550nmにおけるTE偏波の屈折率:1.521)。ついで、下部クラッド層上に、上記一般式で表されるポリイミド(x=0.1)の前駆体であるポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(15wt%)と上記光ドーピング用材料Bとを混合したワニスNを塗布・加熱してコア層(厚さ6.5μm)を設け(波長1550nmにおけるTE偏波の屈折率:1.532)、ホトリソグラフィとO2 ガス系のドライエッチングを用いてコア層の不要部分を除去した。エッチングに用いたマスクを除去した後、上記コア層上に、上記下部クラッド層と同様にして上部クラッド層(平坦部における厚さ15μm)を設けることで、シリコン基板上に光導波路アンプの光導波路を形成した。なお、上記一般式で表されるフッ素化ポリイミドは、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFDB)又は4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)とから合成されるフッ素化ポリイミドであり、DDEの比率、すなわち、一般式における(x)を大きくすることによりその屈折率を大きくできる。ここでは、一般式における(x)を上記の値に設定することにより、コア層とクラッド層との比屈折率差を0.7%に調整した。また、導波路幅は6.5μmとした。
【0089】
次に、シリコン基板をダイシングにより切断し、長さ6cmの光導波路の両端面をシングルモードファイバで光結合して光導波路アンプを作製し、その特性を評価した。その結果、測定波長1.55μmにおいてファイバ間の挿入損失は5.0dBと小さな値であった。
【0090】
<光導波の観察>
波長632.8nm(HeNeレーザ)のビームを、プリズムカプラ法でプリズムを介して、上記で作製した光導波路に結合させたところ、光波が良好なストリークを示し直線的に伝搬している様子が観察された。また、出射プリズムを通して、良好なm−lineが観測された。このことから、上記合成例1で得た複合体は、上記ワニスN中においてフッ素化ポリイミドをマトリックスとして均一に分散されていることが確認できた。
【0091】
<蛍光強度測定>
上記で作製した膜Bについて、島津製作所製NIR−PLシステム装置を用いて、400nmおよび520nmの波長で励起した場合の室温での蛍光強度スペクトルを測定した。結果を図2および図3に示す。
【0092】
また、同じ装置を用いて、合成例1で得た複合体の溶液および光ドーピング材料Bの蛍光強度スペクトルを測定した(励起波長520nm)。結果を図4および図5に示す。いずれのスペクトルでも同様の蛍光スペクトルが得られていることから、カルボン酸化合物の添加によって、複合体の中心希土類金属の状態に大きな差異が生じていないことが確認できた。また、図6、図7には、上記図3および図4で得られた蛍光強度スペクトルのピーク値(1550nm)における、蛍光励起スペクトルを示した。いずれのスペクトルでも同様の蛍光励起スペクトルが得られていることから、カルボン酸化合物の添加によって、複合体の中心希土類金属の状態に大きな差異が生じていないことが確認できた。
【0093】
また、同じ装置を用いて、実施例10〜16の各ワニスについて、励起波長490,525,650,980nmのそれぞれにおける蛍光強度スペクトルを測定し、各励起波長における1550nmの蛍光ピークの発光強度を、各ワニスの複合体酸化物換算濃度に対してプロットした。結果を図14に示す。この結果から、Erが高濃度に分散された状態であっても濃度消光が生じないことが確認された。
【0094】
以上より、複合体溶液、光ドーピング材料、光ドーピング材料とフッ素化ポリイミド前駆体ワニスとを混合したワニス(本発明のワニス)、その成膜サンプルのいずれにおいても、光導波路アンプとして用いる場合の信号光波長となる1550nm付近に蛍光ピークが観測されたことが分かる。つまり、本発明の光ドーピング材料、本発明のワニス、本発明の複合体含有フッ素化ポリイミド光導波路は、光導波路アンプとして良好にかつ高性能に機能することが確認できた。
【0095】
また、図12、図13には、中心希土類金属をプラセオジムとしたワニスI(実施例9)の、励起波長450nmおよび590nmにおける蛍光強度スペクトル測定結果を示す。この場合においても蛍光の発光が観測されていることから、中心希土類金属をEr以外のランタニド系列金属に置換した場合にも、本発明の光ドーピング材料、本発明のワニス、本発明の複合体含有フッ素化ポリイミド光導波路は、光導波路アンプとして良好にかつ高性能に機能することが確認できた。
【0096】
<吸収スペクトル測定>
上記で作製した光ドーピング用材料A〜Iについて、島津製作所製UV−3600を用いて、400nmから2000nmの波長における吸収スペクトルを測定した結果、いずれの場合にも同様のスペクトルが得られた。図10には、光ドーピング用材料Bの測定結果を透過率表示で示した。図11には、近赤外領域における光ドーピング用材料Bの測定結果を吸光度表示で示した。いずれの図においてもエルビウムイオンに特徴的な吸収スペクトルが得られていることが分かる。
【0097】
<小角X線散乱測定>
上記で作製した膜B、D、Eについて、株式会社リガク製の薄膜構造評価用X線回折装置(ATX−G)を用い、50kV、300mAのCuKα線を線源として、反射測定を行い、小角X線散乱測定を行った。0°≦2θ/ω≦10°の測定範囲に対して、1°/min(サンプリングステップ:0.02°)で走査した。アッテネータをオープンとし、オフセットを0.1°とした。また、スリット条件は、S1:10mm×0.2mm、S2:10mm×0.1mm、RS:10mm×0.2mm、GS:10mm×0.2mmとした。また、解析には、株式会社リガク製の粒径・空孔径解析ソフトウェア「NANO−Solver(Ver.3.1)」を用いて、形状因子として球形モデルを採用し、構造因子は1としてフィッティング解析を行った。
【0098】
図8には、膜Bの測定データと計算データ(フィッティング解析結果)をあわせて示す。また、この計算データから得られた粒径分布を図9に示す。良好なフィッティングが得られたこと、粒径分布の幅が狭いことから、合成例1で作製した複合体は、膜Bにおいてフッ素化ポリイミドをマトリックスとして均一に分散されていることが確認できた。同様にして得られた膜B、D、Eの平均粒子径と規格化分散を表3にまとめて示した。
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の光導波路アンプの一構造形態を示す断面概略図。
【図2】実施例で作製した膜Bの蛍光強度スペクトル(励起波長400nm)
【図3】実施例で作製した膜Bの蛍光強度スペクトル(励起波長520nm)
【図4】合成例1で得た複合体溶液の蛍光強度スペクトル(励起波長520nm)
【図5】光ドーピング用材料Bの蛍光強度スペクトル(励起波長520nm)
【図6】合成例1で得た複合体溶液の蛍光励起スペクトル(蛍光波長1550nm)
【図7】光ドーピング用材料Bの蛍光励起スペクトル(蛍光波長1550nm)
【図8】実施例で作製した膜Bの小角X線散乱強度
【図9】実施例で作製した膜Bの粒径分布解析結果
【図10】光ドーピング用材料Bの吸収スペクトル(透過率表示)
【図11】光ドーピング用材料Bの吸収スペクトル(吸光度表示)
【図12】ワニスIの蛍光強度スペクトル(励起波長450nm)
【図13】ワニスIの蛍光強度スペクトル(励起波長590nm)
【図14】実施例10〜16の各ワニスの蛍光強度のEr濃度依存性を示すグラフ(励起波長490,525,650,980nm)
【図15】本発明の光導波路アンプの一構造形態を示す断面概略図。
【図16】本発明の光導波路アンプの一構造形態を示す断面概略図。
【図17】本発明の光導波路アンプの一構造形態を示す断面概略図。
【符号の説明】
【0100】
1 基板
2 下部クラッド層
3 コア層
4 上部クラッド層
5 光導波路
6 光入射用プリズム
7 光出射用プリズム
10 光導波路アンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類金属の塩と金属アルコキシドを反応させて得られる複合体と、カルボン酸化合物と、を有機溶媒中にて混合してなる光ドーピング用材料、および
フッ素化ポリイミド前駆体、
を含むワニス。
【請求項2】
前記希土類金属が、ランタニド類である請求項1に記載のワニス。
【請求項3】
前記希土類金属が、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)からなる群から選択される1種以上である請求項1に記載のワニス。
【請求項4】
前記カルボン酸化合物のpKa値(水中、25℃)が1.5以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項5】
前記カルボン酸化合物の沸点が300℃未満である請求項1〜4のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項6】
前記カルボン酸化合物の沸点が前記有機溶媒の沸点以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項7】
前記カルボン酸化合物が構造中に脂肪族C−H結合を含まないものである請求項1〜6のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項8】
前記カルボン酸化合物がハロゲン化物である請求項1〜7のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項9】
前記カルボン酸化合物が、下記一般式(I)
【化1】
(式中、Xは0〜5の整数)
で表されるカルボン酸化合物である請求項1〜8のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項10】
前記光ドーピング用材料は、前記カルボン酸化合物を前記希土類金属1モルに対して50〜400モル配合してなる請求項1〜9のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のワニスを用いて形成された光導波路を少なくとも備える、光導波路アンプ。
【請求項12】
前記光導波路のコア部における希土類金属の濃度が0.01重量%から20重量%である請求項11に記載の光導波路アンプ。
【請求項13】
希土類金属の塩と金属アルコキシドを反応させて得られる複合体と、カルボン酸化合物と、を有機溶媒中にて混合してなる光導波路アンプ用光ドーピング用材料。
【請求項1】
希土類金属の塩と金属アルコキシドを反応させて得られる複合体と、カルボン酸化合物と、を有機溶媒中にて混合してなる光ドーピング用材料、および
フッ素化ポリイミド前駆体、
を含むワニス。
【請求項2】
前記希土類金属が、ランタニド類である請求項1に記載のワニス。
【請求項3】
前記希土類金属が、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)からなる群から選択される1種以上である請求項1に記載のワニス。
【請求項4】
前記カルボン酸化合物のpKa値(水中、25℃)が1.5以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項5】
前記カルボン酸化合物の沸点が300℃未満である請求項1〜4のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項6】
前記カルボン酸化合物の沸点が前記有機溶媒の沸点以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項7】
前記カルボン酸化合物が構造中に脂肪族C−H結合を含まないものである請求項1〜6のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項8】
前記カルボン酸化合物がハロゲン化物である請求項1〜7のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項9】
前記カルボン酸化合物が、下記一般式(I)
【化1】
(式中、Xは0〜5の整数)
で表されるカルボン酸化合物である請求項1〜8のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項10】
前記光ドーピング用材料は、前記カルボン酸化合物を前記希土類金属1モルに対して50〜400モル配合してなる請求項1〜9のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のワニスを用いて形成された光導波路を少なくとも備える、光導波路アンプ。
【請求項12】
前記光導波路のコア部における希土類金属の濃度が0.01重量%から20重量%である請求項11に記載の光導波路アンプ。
【請求項13】
希土類金属の塩と金属アルコキシドを反応させて得られる複合体と、カルボン酸化合物と、を有機溶媒中にて混合してなる光導波路アンプ用光ドーピング用材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−260904(P2008−260904A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106500(P2007−106500)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
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