説明

光ピックアップ装置

【課題】 レーザー光の入射面からの距離が異なる位置に信号記録層が設けられている第1光ディスク及び第2光ディスクに記録されている信号の読み取り動作を対物レンズの開口数を変更することによって行うことが出来るようにする。
【解決手段】 使用する光ディスクに応じて対物レンズ7の開口数を変更する開口制限素子8と、レーザーダイオード1から放射されるレーザー光の光路内に設けられているとともに前記対物レンズ7に入射されるレーザー光の入射角度を変更するべく設けられているレーザー光路制御素子4とを設け、前記開口制限素子8及びレーザー光路制御素子4による開口数変更動作及び入射角度変更動作により各光ディスクに設けられている信号記録層への合焦動作を行うとともにチルトコイル13の駆動制御動作によりコマ収差を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録されている信号の読み出し動作や光ディスクに信号の記録動作をレーザー光によって行う光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置から照射されるレーザー光を光ディスクの信号記録層に照射することによって信号の読み出し動作や信号の記録動作を行うことが出来る光ディスク装置が普及している。
【0003】
光ディスク装置としては、CDやDVDと呼ばれる光ディスクを使用するものが一般に普及しているが、最近では記録密度を向上させた光ディスク、即ちBlu−ray規格やHD−DVD(High Density Digital Versatile Disk)規格の光ディスクを使用するものが開発されている。
【0004】
CD規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行うレーザー光としては、波長が780nmである赤外光が使用され、DVD規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作行うレーザー光としては、波長が650nmの赤色光が使用されている。
【0005】
斯かるCD規格及びDVD規格の光ディスクに対して、Blu−ray規格やHD−DVD規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行うレーザー光としては、波長が短いレーザー光、例えば波長が405nmの青色光が使用されている。
【0006】
Blu−ray規格の光ディスクにおける信号記録層の上面に設けられている保護層の厚さは、0.1mmであり、この信号記録層から信号の読み出し動作を行うために使用される対物レンズの開口数は、0.85と設定されている。
【0007】
一方、HD−DVD規格の光ディスクにおける信号記録層の上面に設けられている保護層の厚さは、0.6mmであり、この信号記録層から信号の読み出し動作を行うために使用される対物レンズの開口数は、0.65と設定されている。
【0008】
前述したようにBlu−ray規格やHD−DVD規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行うためのレーザー光としては、波長が405nmの青色光を使用することが出来るので、レーザーダイオードを兼用することによって両規格の光ディスクから信号の読み出し動作を行うことが出来る光ピックアップ装置を作ることが出来る。
【0009】
しかしながら、両光ディスクは、レーザー光の入射面からの距離が互いに異なる位置に信号記録層が設けられているので、対物レンズから信号記録層までの距離が大きく相違することになる。そして、対物レンズの必要とする開口数は前述したように大きく異なるため、両光ディスクから信号を読み出すためには、各光ディスクに対応させて開口数を切り換える必要があり、斯かる動作を行うことが出来る光ピックアップ装置が開発されている。(特許文献1参照。)
また、このような記録密度の向上が図られた光ディスク規格に対応する光ピックアップ装置は、記録密度の向上に伴って信号記録品質を高めるために要求される光学特性も厳しくなっている。
【0010】
光ピックアップ装置は、光ディスクに記録されている信号を読み出すために適したレー
ザー出力や光ディスクに信号を記録するために適したレーザー出力が得られるようにレーザーダイオードへ供給される駆動電流を制御することが出来るように構成されている。
【0011】
また、光ピックアップ装置から照射されるレーザー光のスポットを光ディスク上の信号記録層に合焦させる制御動作、即ちフォーカシング制御動作や信号トラックにレーザー光のスポットを追従させる制御動作、即ちトラッキング制御動作を行うことが出来るように構成されている。
【0012】
そして、光ディスク装置において、光ディスクはスピンドルモーターによって回転駆動されるターンテーブル上に載置されて回転駆動されるが、光ディスク自体の反りやターンテーブルへの載置状態及び機械的な誤差に起因して光ディスクに傾きが発生する。光ディスクが傾くと光ディスクの信号面に対するレーザー光の光軸の傾きが最適な状態からずれることになる。
【0013】
光ディスクに記録されている信号の高密度化に伴い前述した光ディスクの信号面に対するレーザー光の光軸のずれが大きな問題になるため、最近の光ピックアップ装置では光ディスクの信号面に対するレーザー光の光軸の傾きを調整する動作、所謂チルト制御動作を行うことが出来るチルトコイルを備えたものが開発されている。
【0014】
また、前述した特許文献1に記載された技術によってBlu−ray規格やHD−DVD規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行うための光ピックアップ装置を製造することは出来る。しかしながら、光ピックアップ装置では、光ディスクのレーザー光の入射面と信号記録層との間にあるカバー層の厚み等から発生する球面収差やコマ収差と呼ばれる収差が発生し、信号の再生動作や記録動作が正常に行えないという問題があり、斯かる問題を解決する技術が開発されている。(特許文献2参照。)
【特許文献1】特開2006−172605号公報
【特許文献2】特開2006−147069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献2に記載されている技術によれば、球面収差やコマ収差を補正することが出来るものの斯かる技術では両収差を補正する収差補正素子をレーザーダイオードから放射されるレーザー光を対物レンズに導く光路内に設け、しかもコマ収差を補正するためには前記収差補正素子を2軸方向へ変位させように構成する必要があるので、光学系構造の複雑化を避けることが困難になり、精度が要求される光ピックアップ装置には適していないという問題がある。
【0016】
本発明は、斯かる問題を解決することが出来る光ピックアップ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の光ピックアップ装置は、対物レンズを光ディスクの面方向へ変位せしめるフォーカスコイル、対物レンズを光ディスクの径方向へ変位せしめるトラッキングコイル及び光ディスクの面に対する光軸の傾きを補正するチルトコイルと、使用する光ディスクに応じて対物レンズの開口数を変更する開口制限素子と、レーザーダイオードから放射されるレーザー光の光路内に設けられているとともに前記対物レンズに入射されるレーザー光の入射角度を変更するべく設けられているレーザー光路制御素子とを設け、前記開口制限素子及びレーザー光路制御素子による開口数変更動作及び入射角度変更動作により各光ディスクに設けられている信号記録層への合焦動作を行うとともにチルトコイルの駆動制御動作によりコマ収差を補正するように構成されている。
【0018】
また、本発明は、レーザー光路制御素子を光軸方向へ変位させることにより球面収差を補正するように構成されている。
【0019】
そして、本発明は、チルトコイルへ供給される駆動信号を対物レンズの変位量に応じて生成するように構成されている。
【0020】
また、本発明は、対物レンズの変位量をトラッキングコイルに供給される駆動信号から検出するように構成されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、光ディスクの信号面に対する光軸の傾きを補正するべく設けられているチルトコイルを利用してコマ収差を補正するようにしたので、レーザー光の入射面からの距離が異なる位置に信号記録層が設けられている規格が異なる光ディスクに記録されている信号の読み取り動作を対物レンズの開口数を変更することによって行うように構成された光ピックアップ装置の光学構成を簡素化することが出来る。
【0022】
それ故、本発明によれば、光ピックアップ装置の信号再生特性や信号記録特性を向上させることが出来るだけでなく、安価にて光ピックアップ装置を製造することが出来る。
【実施例】
【0023】
図1は本発明に係る光ピックアップ装置の動作を説明するための図、図2は本発明に係る光ピックアップ装置におけるレーザー光と光ディスクとの関係を示す図、図3は本発明に係る光ピックアップ装置におけるレーザー光と光ディスクとの関係を示す図である。
【0024】
図1には、本発明の動作に必要な光学部品のみを記載しており、メインビームである0次光、サブビームである+1次光及び−1次光を生成する回折格子やレーザー光の位相を変更する1/4波長板等は省略した。
【0025】
同図において、1は波長が405nmの青色光であるレーザー光を放射するレーザーダイオード、2は該レーザーダイオード1から放射される発散光であるレーザー光が入射されるコリメータレンズであり、入射される発散光を平行光に変更する作用を成すものである。3は前記コリメータレンズ2から出射される平行光であるレーザー光が入射される偏向ビームスプリッタであり、前記コリメータレンズ2側から入射されるレーザー光を透過させるとともに後述するように光ディスクDから反射されて戻ってくる戻り光を反射させる反射膜3aが形成されている。
【0026】
4は前記偏光ビームスプリッタ3の反射膜3aを透過したレーザー光の光路内に設けられているとともにディスク切換動作によりレーザー光の光軸方向、即ち図において矢印A及びB方向に変位し、入射される平行光であるレーザー光の後述する対物レンズへの入射角度を変更する作用を成すレーザー光路制御素子であり、光ディスクDのカバー層によって生成される球面収差を補正する作用を有するとともにディスク切換兼収差補正用コイル5によって光軸方向へ変位せしめられるように構成されている。
【0027】
6は前記レーザー光路制御素子4を透過したレーザー光が入射される位置に設けられているとともに該入射されるレーザー光を対物レンズ方向に反射させる立ち上げミラー、7は前記立ち上げミラー6から反射されたレーザー光が入射される対物レンズであり、光ディスクDの信号記録層にレーザー光をスポットとして合焦させる作用を成すものである。
【0028】
8は前記立ち上げミラー6から反射されて前記対物レンズ7に入射されるレーザー光の
光路内に配置されているとともに該対物レンズの開口数を使用される光ディスクDに対応させて変更する開口制限素子であり、液晶を利用することによって容易に構成することは出来る。斯かる液晶を利用した開口制限素子は周知であり、その説明は省略する。
【0029】
斯かる構成において、レーザーダイオード1から放射されたレーザー光は、コリメータレンズ2、偏光ビームスプリッタ3、レーザー光路制御素子4、立ち上げミラー6及び開口制限素子8を介して対物レンズ7に入射された後、該対物レンズ7の合焦動作によって光ディスクDの信号記録層にスポットとして照射されるが、該信号記録層に照射されたレーザー光は戻り光として反射されることになる。
【0030】
光ディスクDの信号記録層から反射された戻り光は、対物レンズ7、開口制限素子8、立ち上げミラー6及びレーザー光路制御素子4を介して偏光ビームスプリッタ3の反射膜3aに入射される。このようにして偏光ビームスプリッタ3の反射膜3aに入射される戻り光は、1/4波長板による位相変更動作によって偏光されたレーザー光に変更されている。従って、前記反射膜3aを透過することはなく、制御用レーザー光Lcとして反射される。
【0031】
9は前記偏光ビームスプリッタ3の反射膜3aにて反射された制御用レーザー光Lcが入射されるセンサーレンズであり、PDICと呼ばれる光検出器10に設けられている受光部に制御用レーザー光Lcを集光させて照射させる作用を成すものである。前記検出器10には、周知の4分割センサー等が設けられており、メインビームの照射動作によって光ディスクDの信号記録層に記録されている信号の読み取り動作に伴う信号生成動作及び非点収差法によるフォーカシング制御動作を行うための信号生成動作、そして2つのサブビームの照射動作によってトラッキング制御動作を行うための信号生成動作を行うように構成されている。斯かる各種の信号生成のための制御動作は、周知であるので、その説明は省略する。
【0032】
前述したように本発明に係る光ピックアップ装置は構成されているが、斯かる構成において、前記対物レンズ7は、光ピックアップ装置の基台に4本の支持ワイヤーによって光ディスクDの信号面に対して垂直方向への変位及び光ディスクDの径方向への変位を可能に支持されているレンズ保持枠(図示せず)に固定されている。
【0033】
11は前記対物レンズ7が固定されているレンズ保持枠に設けられているフォーカスコイルであり、基台に固定されている磁石との協働によって対物レンズ7を光ディスクDの信号面に対して垂直方向へ変位させる作用を有している。12は前記対物レンズ7が固定されている支持枠に設けられているトラッキングコイルであり、基台に固定されている磁石との協働によって対物レンズ7を光ディスクDの径方向へ変位させる作用を有している。
【0034】
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、対物レンズ7の光軸の光ディスクDの信号面に対する角度を調整することが出来るチルト調整機能が組み込まれており、13は斯かるチルトを調整するチルトコイルである。
【0035】
前述したフォーカスコイル11、トラッキングコイル12及びチルトコイル13が組み込まれた光ピックアップ装置の構成及び各コイルの駆動動作によるフォーカシング制御動作、トラッキング制御動作及びチルト制御動作は周知であり、その説明は省略する。
【0036】
14は前記光検出器10を構成するメインビームを受光するセンサーから光ディスクDの信号記録層に記録されている信号の読み取り動作に対応して得られる信号であるRF信号を生成するRF信号生成回路、15はメインビームを受光するセンサーからレーザー光
の合焦動作に応じて得られる信号であるフォーカスエラー信号を生成するフォーカスエラー信号生成回路、16はサブビームを受光するセンサーからレーザー光のトラッキング動作に応じて得られる信号であるトラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成回路である。
【0037】
17は前記RF信号生成回路14、フォーカスエラー信号生成回路15及びトラッキングエラー信号生成回路16等から得られる信号に基づいて光ピックアップ装置の各種の制御動作を行う制御回路である。18は前記フォーカスエラー信号生成回路15から生成されて入力されるフォーカスエラー信号に基づいて前記制御回路17から出力されるフォーカス制御信号が入力されるフォーカスコイル駆動回路であり、前記フォーカスコイル11に駆動信号を供給するように構成されている。19は前記トラッキングエラー信号生成回路16から生成されて入力されるトラッキングエラー信号に基づいて前記制御回路17から出力されるトラッキング制御信号が入力されるトラッキングコイル駆動回路であり、前記トラッキングコイル12に駆動信号を供給するように構成されている。
【0038】
20は光ディスクDがターンテーブル(図示せず)に載置されたとき、光ディスクDの基準面に対する傾きを検出するディスク傾き検出回路である。斯かるディスク傾き検出回路20による検出動作としては、例えば光ピックアップ装置を光ディスクDの内周側から外周側へ移動させ、その間に行われるフォーカス制御動作に伴って変化するフォーカスコイル11へ供給される直流電圧の変化を利用することが出来る。即ち、光ディスクDが傾斜している場合には、光ピックアップ装置が内周側から外周側へ移動するに伴って対物レンズ7と光ディスクDの信号記録層との間の距離が変化し、その変化を補正するべく対物レンズ7を光ディスクDの信号面方向に対して垂直方向へ変位させるための直流駆動信号の変化度を測定することによって光ディスクDの傾きの度合いを認識することが出来る。
【0039】
また、光ディスクDの信号面に光を照射させるための傾き検出用の発光ダイオードを設け、該発光ダイオードから光ディスクDの信号面に照射された光の反射角の変化等を利用して光ディスクDの傾きを検出するようにすることも出来る。斯かる技術は、周知であるので、その説明は省略する。
【0040】
21は使用する光ディスクDの種類に応じて前記レーザー光路制御素子4を各光ディスクDに適した位置に変位させるべく前記ディスク切換兼収差補正用コイル5に駆動信号を供給するディスク切換兼収差補正用コイル駆動回路であり、前記制御回路17から出力さる駆動制御信号に基づいて駆動信号を出力するように構成されている。22は使用する光ディスクDの種類に応じて前記開口制限素子8を各光ディスクDに適した開口数にする状態に切り換えるべく駆動信号を供給する開口制限素子駆動回路であり、前記制御回路17から出力さる駆動制御信号に基づいて駆動信号を出力するように構成されている。
【0041】
前述したように前記ディスク切換兼収差補正用コイル駆動回路21及び開口制限素子駆動回路22は、使用する光ディスクDに応じて各光ディスクDに適した状態になるように切り換えられる。例えば、光ディスクDがBlu−ray規格の光ディスクである第1光ディスクの場合には、図2に示すように信号記録層L1の上面に設けられている保護層であるカバー層C1の厚さは0.1mmと薄く、前記レーザー光路制御素子4はレーザー光Lbが対物レンズ8に対して平行光として入射される位置に前記ディスク切換兼収差補正用コイル5の駆動動作によって変位保持される。また、前記開口制限素子8は、対物レンズ7の開口数が0.85になるように開口制限素子駆動回路22の駆動動作によって保持される。
【0042】
そして、光ディスクDがHD−DVD規格の光ディスクである第2光ディスクの場合には、図3に示すように信号記録層L2の上面に設けられている保護層であるカバー層C2
の厚さは0.6mmと厚く、前記レーザー光路制御素子4はレーザー光Lhが対物レンズ8に対して発散光として入射される位置に前記ディスク切換兼収差補正用コイル5の駆動動作によって変位保持される。また、前記開口制限素子8は、対物レンズ7の開口数が0.65になるように開口制限素子駆動回路22の駆動動作によって保持される。
【0043】
前記レーザー光路制御素子4及び開口制限素子8を光ディスクDの種類に応じて切り換え制御することによって図2及び図3に示すように各光ディスクDの信号記録層L1及びL2にレーザー光を合焦させることが出来る。尚、使用される光ディスクDの種類を判別する方法としては、例えば対物レンズ7を光ディスクDの信号面方向へ変位させる場合にフォーカスエラー信号生成回路15から得られるフォーカスエラー信号を利用する方法があるが、斯かる方法は周知であり、その説明は省略する。
【0044】
23は前記トラッキングコイル駆動回路19から前記トラッキングコイル12へ供給される駆動信号から対物レンズ7の変位量、即ち光ピックアップ装置を構成する基台に対する対物レンズ7の変位量を検出する対物レンズ変位量検出回路である。光ディスクDの信号記録層に設けられている信号トラックは渦巻き状に形成されており、レーザースポットを前記信号トラックに追従させるためには、対物レンズ7を光ディスクDの径方向へ変位させる必要がある。
【0045】
前記対物レンズ7を光ディスクDの径方向である外周方向へ変位させる動作は、トラキングコイル駆動回路19からトラッキングコイル12に供給される駆動信号の直流電圧を次第に大きくすることによって行われる。従って、この直流電圧の大きさを検出することによって対物レンズ7の基台に対する変位量を認識することが出来る。
【0046】
光ディスクDに記録されている信号の読み出し動作を行う場合に発生するコマ収差は、対物レンズ7の変位量と比例する関係にあることが知られている。本発明は、斯かる点に着目して成されたものであり、24は前記対物レンズ変位量検出回路23にて検出された対物レンズ7の変位量に応じてコマ収差を補正するために適した補正データが記憶されているコマ収差補正データメモリー回路である。即ち、前記コマ収差補正データメモリー回路24には、対物レンズ7の変位に起因して発生するコマ収差を補正するために適したチルト補正動作を行うデータが記憶されている。
【0047】
25は前記ディスク傾き検出回路20から得られる信号とコマ収差補正データメモリー回路24から得られる信号に基づいて制御回路17から出力される制御信号が入力されるチルト制御信号生成回路であり、チルト制御動作を行うためのチルト制御信号を出力するように構成されている。26は前記チルト制御信号生成回路25から出力されるチルト制御信号が入力されるチルトコイル駆動回路であり、前記チルトコイル13に駆動信号を供給するように構成されている。
【0048】
光ディスクDがターンテーブル上に載置されると、光ディスクDの種類を認識するための動作が行われる。光ディスクDが第1光ディスクであると認識されると、制御回路17からディスク切換兼収差補正用コイル駆動回路21に該第1光ディスクの信号記録層L1に記録されている信号の読み出し動作を行うための状態にするための信号が出力される。
【0049】
斯かる信号が前記ディスク切換兼収差補正用コイル駆動回路21に入力されると、該ディスク切換兼収差補正用コイル駆動回路21からディスク切換兼収差補正用コイル5に対して駆動信号が出力される。その結果、レーザー光路制御素子4が矢印B方向である第1光ディスク用動作位置に変位せしめられる。図2は斯かる第1光ディスク用動作位置にレーザー光路制御素子4が移動せしめられた状態を示すものであり、レーザー光Lbが対物レンズ7に対して平行光として入射される。
【0050】
光ディスクDが第1光ディスクであると認識されると、前述したように前記制御回路17からディスク切換兼収差補正用コイル駆動回路21に該第1光ディスクの信号記録層L1に記録されている信号の読み出し動作を行うための状態にするための信号が出力されるが、このとき開口制限素子駆動回路22に対しても第1光ディスクの信号記録層L1に記録されている信号の読み出し動作を行うための状態にするための信号が出力される。
【0051】
斯かる信号が前記開口制限素子駆動回路22に入力されると、該開口制限素子駆動回路22から開口制限素子8に対して駆動信号が出力される。その結果、前記開口制限素子8は、対物レンズ7の開口数を0.85に制限する状態になる。
【0052】
図2に示した状態は、レーザー光路制御素子4及び開口制限素子8が第1光ディスクの信号記録層L1に記録されている信号の読み出し動作を行うために適した第1光ディスク用動作位置及び開口制限位置にある状態を示すものであり、レーザー光のスポットを信号記録層L1に合焦させることが出来る。斯かる状態にあるとき、光検出器10から得られる信号に基づいてフォーカスエラー信号生成回路15から生成されるフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号生成回路16から生成されるトラッキングエラー信号が制御回路17に入力されるので、フォーカスコイル11による対物レンズ7の光ディスクDの信号面方向への変位動作及びトラッキングコイル12による対物レンズ7の光ディスクDの径方向への変位動作が行われる。
【0053】
従って、光ピックアップ装置のフォーカス制御動作及びトラッキング制御動作が行われて光ディスクDの信号記録層L1に記録されている信号の再生動作を行うことが出来る。斯かる再生信号は、RF信号生成回路14から生成されるRF信号を復調することによって情報データとして得られる。
【0054】
前述したように信号記録層L1に記録されている信号を読み出すために適した第1光ディスク用動作位置にレーザー光路制御素子4は、移動せしめられるが、斯かる第1光ディスク用動作位置は球面収差が最も少なくなる位置になるように設定されている。斯かる位置の設定動作は、再生信号に含まれるジッタ値が最適な値になる位置、RF信号のレベルが最大になる位置、またはトラッキングエラー信号のレベルが最大になる位置になるように設定すれば良い。
【0055】
前述した調整動作を行うことによって対物レンズ7に入射されて光ディスクDの信号記録層L1に照射されるレーザー光のスポットに現れる球面収差を最も抑えることが出来るが、対物レンズ7が径方向に変位することによってコマ収差が発生することになる。対物レンズ7が径方向へ変位すると、トラッキングコイル駆動回路19からトラッキングコイル12に供給される駆動信号に含まれる直流電圧の値が変化するので、対物レンズ変位量検出回路23がその直流電圧値を検出することによって対物レンズ7の変位量を検出する動作が行われる。
【0056】
前記対物レンズ変位量検出回路23による検出動作が行われると、その検出出力がコマ収差補正データメモリー回路24に入力される。その結果、前記コマ収差補正データメモリー回路24に記憶されているデータに基づいて、対物レンズの変位量に適したコマ収差を補正するためのコマ収差補正用チルト制御信号が制御回路17に対して出力される。
【0057】
前記制御回路17に前記コマ収差補正データメモリー回路24からのコマ収差補正用チルト制御信号が入力されると、ディスク傾き検出回路20によって前もって検出されていたディスクの傾きに対応してチルト調整を行うために設定された信号と前記コマ収差補正用チルト制御信号とを加算した制御信号が、チルト制御信号生成回路25に入力される。
【0058】
斯かる制御信号がチルト制御信号生成回路25に入力されると、該チルト制御信号生成回路25からチルトコイル駆動回路26に対してチルト制御信号が出力される。斯かるチルト制御信号が前記チルトコイル駆動回路26に入力されると、該チルトコイル駆動回路26からチルトコイル13に対して駆動信号が供給される。斯かる駆動信号がチルトコイル13に供給されると、該チルトコイル13によって対物レンズ7の光ディスクDの信号面に対する光軸を変更するための動作、即ちチルト調整動作が行われる。斯かるチルト制御動作を行うことによってコマ収差を抑えることが出来る。
【0059】
前述した動作は、光ディスクDが第1光ディスクの場合の説明であるが、次に第2光ディスクの場合の動作について説明する。
【0060】
光ディスクDが第2光ディスクであると認識されると、制御回路17からディスク切換兼収差補正用コイル駆動回路21に該第2光ディスクの信号記録層L2に記録されている信号の読み出し動作を行うための状態にするための信号が出力される。
【0061】
斯かる信号が前記ディスク切換兼収差補正用コイル駆動回路21に入力されると、該ディスク切換兼収差補正用コイル駆動回路21からディスク切換兼収差補正用コイル5に対して駆動信号が出力される。その結果、レーザー光路制御素子4が矢印A方向である第2光ディスク用の第2光ディスク用動作位置に変位せしめられる。図3は斯かる第2光ディスク用動作位置にレーザー光路制御素子4が移動せしめられた状態を示すものであり、レーザー光Lhが対物レンズ8に対して発散光として入射される。
【0062】
光ディスクDが第2光ディスクであると認識されると、前述したように前記制御回路17からディスク切換兼収差補正用コイル駆動回路21に該第2光ディスクの信号記録層L2に記録されている信号の読み出し動作を行うための状態にするための信号が出力されるが、このとき開口制限素子駆動回路22に対しても第2光ディスクの信号記録層L2に記録されている信号の読み出し動作を行うための状態にするための信号が出力される。
【0063】
斯かる信号が前記開口制限素子駆動回路22に入力されると、該開口制限素子駆動回路22から開口制限素子8に対して駆動信号が出力される。その結果、前記開口制限素子8は、対物レンズ7の開口数を0.65に制限する状態になる。
【0064】
図3に示した状態は、レーザー光路制御素子4及び開口制限素子8が第2光ディスクの信号記録層L2に記録されている信号の読み出し動作を行うために適した第2光ディスク用動作位置及び開口制限位置にある状態を示すものであり、レーザー光のスポットを信号記録層L2に合焦させることが出来る。斯かる状態にあるとき、光検出器10から得られる信号に基づいてフォーカスエラー信号生成回路15から生成されるフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号生成回路16から生成されるトラッキングエラー信号が制御回路17に入力されるので、フォーカスコイル11による対物レンズ7の光ディスクDの信号面方向への変位動作及びトラッキングコイル12による対物レンズ7の光ディスクDの径方向への変位動作が行われる。
【0065】
従って、光ピックアップ装置のフォーカス制御動作及びトラッキング制御動作が行われて光ディスクDの信号記録層L2に記録されている信号の再生動作を行うことが出来る。斯かる再生信号は、RF信号生成回路14から生成されるRF信号を復調することによって情報データとして得られる。
【0066】
前述したように信号記録層L2に記録されている信号を読み出すために適した第2光ディスク用動作位置にレーザー光路制御素子4は、移動せしめられるが、斯かる第2光ディ
スク用動作位置は球面収差が最も少なくなる位置になるように設定されている。斯かる位置の設定動作は、再生信号に含まれるジッタ値が最適な値になる位置、RF信号のレベルが最大になる位置、またはトラッキングエラー信号のレベルが最大になる位置になるように設定すれば良い。
【0067】
前述した調整動作を行うことによって対物レンズ7に入射されて光ディスクDの信号記録層L2に照射されるレーザー光のスポットに現れる球面収差を最も抑えることが出来るが、対物レンズ7が径方向に変位することによってコマ収差が発生することになる。対物レンズ7が径方向へ変位すると、トラッキングコイル駆動回路19からトラッキングコイル12に供給される駆動信号に含まれる直流電圧の値が変化するので、対物レンズ変位量検出回路23がその直流電圧値を検出することによって対物レンズ7の変位量を検出する動作が行われる。
【0068】
前記対物レンズ変位量検出回路23による検出動作が行われると、その検出出力がコマ収差補正データメモリー回路24に入力される。その結果、前記コマ収差補正データメモリー回路24に記憶されているデータに基づいて、対物レンズの変位量に適したコマ収差を補正するためのコマ収差補正用チルト制御信号が制御回路17に対して出力される。
【0069】
前記制御回路17に前記コマ収差補正データメモリー回路24からのコマ収差補正用チルト制御信号が入力されると、ディスク傾き検出回路20によって前もって検出されていたディスクの傾きに対応してチルト調整を行うために設定された信号と前記コマ収差補正用チルト制御信号とを加算した制御信号が、チルト制御信号生成回路25に入力される。
【0070】
斯かる制御信号がチルト制御信号生成回路25に入力されると、該チルト制御信号生成回路25からチルトコイル駆動回路26に対してチルト制御信号が出力される。斯かるチルト制御信号が前記チルトコイル駆動回路26に入力されると、該チルトコイル駆動回路26からチルトコイル13に対して駆動信号が供給される。斯かる駆動信号がチルトコイル13に供給されると、該チルトコイル13によって対物レンズ7の光ディスクDの信号面に対する光軸を変更するための動作、即ちチルト調整動作が行われる。斯かるチルト制御動作を行うことによってコマ収差を抑えることが出来る。
【0071】
尚、第1光ディスク及び第2光ディスクにおいて発生するコマ収差の大きさと対物レンズの変位量との関係が両光ディスクとの間で相違するので、各光ディスクのコマ収差を補正するために適した補正データがコマ収差補正データメモリー回路24に記憶されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る光ピックアップ装置の動作を説明するための図である。
【図2】本発明に係る光ピックアップ装置におけるレーザー光と光ディスクとの関係を示す図である。
【図3】本発明に係る光ピックアップ装置におけるレーザー光と光ディスクとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1 レーザーダイオード
3 偏光ビームスプリッタ
4 レーザー光路制御素子
7 対物レンズ
8 開口制限素子
10 光検出器
13 チルトコイル
17 制御回路
20 ディスク傾き検出回路
21 ディスク切換兼収差補正用コイル駆動回路
22 開口制限素子駆動回路
23 対物レンズ変位量検出回路
24 コマ収差補正データメモリー回路
25 チルト制御信号生成回路
26 チルトコイル駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光の入射面からの距離が異なる位置に信号記録層が設けられている第1光ディスク及び第2光ディスクに記録されている信号の読み取り動作を対物レンズの開口数を変更することによって行うことが出来るように構成されているとともに対物レンズを光ディスクの面方向へ変位せしめるフォーカスコイル、対物レンズを光ディスクの径方向へ変位せしめるトラッキングコイル及び光ディスクの面に対する光軸の傾きを補正するチルトコイルを備えた光ピックアップ装置であり、使用する光ディスクに応じて対物レンズの開口数を変更する開口制限素子と、レーザーダイオードから放射されるレーザー光の光路内に設けられているとともに前記対物レンズに入射されるレーザー光の入射角度を変更するべく設けられているレーザー光路制御素子とを設け、前記開口制限素子及びレーザー光路制御素子による開口数変更動作及び入射角度変更動作により各光ディスクに設けられている信号記録層への合焦動作を行うとともにチルトコイルの駆動制御動作によりコマ収差を補正するようにしたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
レーザー光路制御素子を光軸方向へ変位させることにより球面収差を補正するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
チルトコイルへ供給される駆動信号を対物レンズの変位量に応じて生成するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
対物レンズの変位量をトラッキングコイルに供給される駆動信号から検出するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−97661(P2008−97661A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274768(P2006−274768)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】