説明

光ピックアップ

【課題】
半導体レーザの温度変化によって発生する光ビームの光軸角度の変化に対しては、なんら考察されておらず、前記光軸角度の変化に対しては光ビームの光量を一定に保つことが出来ず、APCが正常に動作しないという課題が残っていた。
【解決手段】
対物レンズ出射光量に対してフロントモニタ検出光量の比率が略一定となるように、フロントモニタを、ビームスプリッタを透過した光ビームの光軸上であって、かつ半導体レーザの発光点と所定の距離となるように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップに係り、特にフロントモニタ方式に適用して光記録媒体に照射する光ビームの光量検出精度を向上することができる光ピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置は、非接触、大容量、高速アクセス、低コストメディアへの記録/再生を実現する情報記録再生装置であり、これらの特徴を生かしてディジタル映像/デジタルオーディオ信号の記録再生装置として、あるいはコンピュータの外部記憶装置として利用されている。情報の記録容量の違いや対応波長の違いによって様々な種類の光ディスクが存在しており、例えばCD−ROMやCD−Rなどでは12cmの光ディスクに780nm帯のレーザ光を用いることにより記憶容量は約650MBであり、DVD−ROMやDVD−Rなどでは650nm帯のレーザ光を用いることにより記憶容量は約4.7GBである。
また、CD−RやDVD−Rディスクは、記憶容量が大きいうえ、メディアのコストが安いために近年急速に普及している。CD−Rディスク、あるいはDVD−Rディスクに記録を行う場合、それぞれの光ディスクに対して最適な記録パワーの条件で記録を行う必要がある。そのため、これら光ディスクの記録に対応した光ディスク装置に搭載されている光ピックアップにおいては、最適な記録パワーで記録を行うために、半導体レーザの前方にて光ビームの一部を受光することにより対物レンズ出射光量を正確にモニタするフロントモニタを配置する構成が一般的となっている。
すなわち、半導体レーザから射出する光ビームの光量をモニタして、この光ビームの光量を一定値に保持するようになっている。このうち光ビームの一部を分離して光量をモニタするフロントモニタ方式においては、光ビームの光路上にビームスプリッタを配置し、これにより光ビームの一部を一定の比率で分離する。
さらにこのフロントモニタ方式においては、この分離した光ビーム(以下モニタ光と呼ぶ)を受光素子で光量を検出する。これによりフロントモニタ方式においては、モニタ光の受光光量が規定値になるように制御され、その結果、対物レンズから出射される記録および再生光量が正確に規定光量に制御されるようになっている。これをフロントモニタ式のAuto Power Control(以下、APC)という。
近年、これらの高容量光ディスクであるCD−RやDVD−Rディスクを記録するために、少しでも記録に要する時間を短縮するために記録速度の高速化が重要な課題となっている。記録速度の高速化を実現するには、光ディスクを高速回転させると同時に、より短い時間で光ディスク上に記録に必要な光ビームを集光して記録ピットを形成する必要があるため、記録に必要な半導体レーザの出射パワーを増大させる必要がある。そのため、年々光ピックアップに搭載される半導体レーザの出力はより大きなものとなっている。
ここで、高出力用の半導体レーザにおいては、レーザの発光パワーを変化させた場合にレーザの強度分布が変化する性質がある。レーザの強度分布が変化すると、対物レンズで取り込める光ビームの強度分布が変化するために、対物レンズを出射して光ディスク上に集光する光ビームのパワーが変化する。一方、フロントモニタにおいても、レーザの強度分布が変化すると取り込める光ビームの強度分布が変化するため、フロントモニタで検出される光量も変化する。そのため、レーザの発光パワーが変化すると、フロントモニタ検出光量に対する対物レンズ出射光量の比率が変化し、フロントモニタ検出光量から推定する
対物レンズ出射光量に誤差が発生することとなる。この対物レンズ出射光量の誤差は、光ディスクに対して最適なパワーでの記録動作が行えないために、記録性能が劣化する要因となる。
また、前述のように、レーザの発光パワーを変化させた場合、発光パワーを強くするとレーザ光の放射角が広がる傾向がある。この発光パワーの変化に伴う放射角の広がりによるレーザ光の強度分布変化に対して、光ビームの光量を一定に保つ技術が特許文献1に記載されている。図8を用いて、特許文献1に記載の技術について説明を行う。
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図8は、フロントモニタと光ビーム中心軸との位置関係を示したものである。図8(a)は、半導体レーザ2から照射される光ビームの広がり角と、光ビームを受光するフロントモニタ10の配置構成を示している。光検出面18は、光ビーム14の光軸17に対して中心に配置するのが一般的であり、また、光検出面18の受光部の面積は、光ピックアップが有する周波数特性によって制限されており、半導体レーザ2より出射された光ビームすべてを受光することは出来ず、常に光ビームの照射スポットの一部を受光するようなされている。
半導体レーザ2より出射された光ビーム14の光軸17に対して、フロントモニタ10の光検出面18の中心が所定の距離だけ離れた位置に配置する。そのため、図8(b)に示すように、フロントモニタ10の光検出面18では、半導体レーザ2を出射した光ビーム14の強度分布15の中腹付近のように、光ビーム強度の変化量が大きいポイントにおいて光ビームを検出する。このようにフロントモニタ10の光検出面18を配置することで、限られた受光面積の光検出面18で、広がり角の変化による光ビーム強度を検出することが可能となり、対物レンズ出射光量に対してフロンタモニタ検出光量の比率が略一定であるような光ビームの光量を一定に保つことが可能となる。
【特許文献1】特開2003−317296
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、半導体レーザの発光パワーによる広がり角の変化に対しては、対物レンズ出射光量に対してフロントモニタ検出光量の比率が略一定であるような光ビームの光量を一定に保つことは可能であるが、半導体レーザの温度変化によって発生する光ビームの光軸角度のズレに対しては、なんら考察されておらず、前記光軸角度のズレに対しては光ビームの光量を一定に保つことが出来ず、APCが正常に動作しないという課題が残っていた。
本発明では、前記の問題点を解決すべく種々検討を行った結果、光ピックアップを構成する光学部品の配置に着目し、フロントモニタの配置を考慮することによって、前記の問題点を解決するに至ったものである。
そこで本発明は、半導体レーザの温度変化によって発生する光ビームの光軸角度のズレに対しても、そのズレによる対物レンズへの光量変化を確実に検出し、光ビームの光量を規定値に保つことを可能とする光ピックアップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、光ピックアップにおいて、光ビームを出射するための半導体レーザと、前記半導体レーザより出射された光ビームを透過光と反射光とに分光するビームスプリッタと、前記反射光を平行化するためのコリメートレンズと、前記平行化された
光ビームを光ディスク面に集光するための対物レンズと、前記対物レンズに入射する光ビームの光束を制限するためのアパーチャと、前記透過光を受光することにより前記対物レンズから出射される光ビームの光量を検出するフロントモニタとを備え、前記対物レンズ出射光量に対して前記フロントモニタ検出光量の比率が略一定となるように構成され、前記アパーチャの開口面積をS、前記半導体レーザの発光点と前記コリメートレンズまでの光学的距離をf、前記フロントモニタの受光部面積をs、前記半導体レーザの発光点から前記フロントモニタの受光部までの光学的距離をLとしたとき、1≦(S×L)/(s×f)≦6.8となるように、前記フロントモニタを、前記透過光の光軸上に近接して配置することを特徴とする。
光ピックアップにおいて、光ビームを出射するための半導体レーザと、前記半導体レーザより出射された光ビームを透過光と反射光とに分光するビームスプリッタと、前記反射光を平行化するためのコリメートレンズと、前記平行化された光ビームを光ディスク面に集光するための対物レンズと、前記対物レンズに入射する光ビームの光束を制限するためのアパーチャと、前記透過光を受光することにより前記対物レンズから出射される光ビームの光量を検出するフロントモニタとを備え、前記対物レンズ出射光量に対して前記フロントモニタ検出光量の比率が略一定となるように構成され、前記アパーチャの開口面積をS、前記半導体レーザの発光点と前記コリメートレンズまでの光学的距離をf、前記フロントモニタの受光部面積をs、前記半導体レーザの発光点から前記フロントモニタの受光部までの光学的距離をLとしたとき、1≦(S×L)/(s×f)≦6.8となるように、前記フロントモニタを、前記透過光の光軸上に近接して配置し、前記フロントモニタは、前記ハーフミラーを透過した光ビームを集光するためのセンサレンズを、該フロントモニタの受光部前方に一体、または個別に配置し、前記センサーレンズの開口面積をsと規定することを特徴とする。
前述のように構成することにより、半導体レーザの光軸変化が発生しても、対物レンズに対して一定の光量を照射するように作用する。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明によれば、前記アパーチャの開口面積をS、前記半導体レーザの発光点と前記コリメートレンズまでの光学的距離をf、前記フロントモニタの受光部面積をs、前記半導体レーザの発光点から前記フロントモニタの受光部までの光学的距離をLとしたとき、1≦(D×L)÷(f×d)≦6.8の関係を満たすように、Lを調整してフロントモニタを配置することによって、半導体レーザの発光パワー変化によって、光ビームの光軸が変化した場合においても、フロントモニタの受光量の変化を正確に把握して、光ディスクに記録を行うための最適なレーザパワーを制御し、対物レンズから出射される光量を制御することが可能となる。また、前記関係を満たすことで、光軸変化に最大限追従することが出来ると共に、フロントモニタの配置に関する設計余裕度を持たせることが可能となる。、また、前記関係を満たしつつ、前記フロントモニタを、前記ビームスプリッタを透過した透過光の光軸上に配置することによって、対物レンズが出射する光ビームの単位面積あたりの光量と、前記フロントモニタの受光部が受光する単位面積あたりの光量の誤差を限定することが可能となり、半導体レーザの発光パワー変化によって、光ビームの光軸がずれた場合においてもフロントモニタの受光量の変化に追従して、光ディスクに記録を行うための最適なレーザパワーを制御し、対物レンズから出射される光量を制御することが可能となる。
請求項2に記載の発明によれば、センサレンズをフロントモニタの受光部前面に設けることによって、放射された光ビームを集光してフロントモニタに受光させることが可能となる。すなわち、センサレンズの開口面積がsとなり、大きくすることが出来るので、Lを長く設定することが可能となる。半導体レーザの発光点からフロントモニタの受光部まで
の光学的距離をLが大きくなればなるほど、光ビームの放射角度は大きくなって広がり、フロントモニタで受光する光ビームは光密度が小さくなり、受光感度は小さくなるが、センサレンズを用いて放射した光ビームを集光することによって、フロントモニタの感度を向上すると共に、集光が可能となる分、半導体レーザの発光点からフロントモニタの受光部までの光学的距離Lを大きくすることが可能となり、フロントモニタの配置に関する設計余裕度を持たせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態としての光ピックアップの構成ならびに動作について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態における光ピックアップを採用した光ディスク装置を示すブロック図である。図1に示すように、本発明にかかる光ディスク装置は、光ディスク101を回転させるためのスピンドルモータ102と、レーザ光を出力する光ピックアップ103と、位置ずれが無い場合の情報光の量を基準として光ビームスポットとトラック(ここでは、グルーブ)との位置ずれを情報光の量の変化によって内周外周方向へ補正するプッシュプル法などにより検出してトラッキングエラー信号(以下、TE信号)を生成するトラッキングエラー信号生成手段104と、トラッキングエラー信号生成手段104から出力されたTE信号に応じて光ビームスポットがトラックに追従するように光ビームスポットの位置を制御するトラッキング制御手段105と、レーザ光によるビームスポットとディスクの位置ずれを検出するフォーカスエラー信号生成手段106と、光ピックアップ103の出力信号からウォブル信号を検出するウォブル信号検出手段107と、ウォブル信号を二値化する二値化手段108と、フォーカス外れをフォーカスエラー信号検出手段からの出力に基づいて修正するためのフォーカス制御手段109と、スピンドルモータ102の回転制御のための基準クロック発生手段110と、二値化手段108から出力されるウォブル信号の周波数および基準クロック発生手段110の出力をもとにスピンドルモータ102を回転制御するモータ制御手段111と、二値化ウォブル信号から記録時のビットクロックを生成するクロック生成手段112と、このクロック生成手段112から出力されるビットクロックに基づいて、映像データや音声データなどの記録データを所定のフォーマットに変換する記録処理手段113と、この記録処理手段113から出力されるフォーマット変換信号に基づいて、所定の記録波形に変換する記録信号変換手段114と、各制御に関するパラメータを記憶するための記憶手段115と、各手段を制御するためのCPU116と、光ピックアップ103が出射するレーザ光の強度を検出するフロントモニタ出力検出回路117と、光ピックアップ103に設けられた図示しない半導体レーザを点灯させ、フロントモニタ出力検出回路117で検出された受光量に従ってレーザ光の強度を調整するレーザ点灯手段118とを有している。
また、トラッキング制御手段105の出力信号によって光ピックアップ103のディスクの内周外周方向の動きを制御し、フォーカス制御手段109の出力信号によって、光ピックアップ103の上下方向の動きを制御している。また記録手段114から出力される記録波形信号に従って、光ピックアップ103がディスク101に映像データや音声データなどの記録データを記録する。
次に、図2は本発明に係る光ピックアップの構成を示す。図2において、半導体レーザ201は650nm帯もしくは780nmの波長で発振するものであり、半導体レーザ201は点灯した状態を示している。半導体レーザ201より出射した光ビームは、回折格子202を透過してビームスプリッタ203に至る。ここで、回折格子202を透過した光ビームは、格子上に形成された回折溝によりそのまま透過する0次光及び所定の回折角で0次光から分離進行する±1次回折光の少なくとも3つの光ビームとなる構成である。ビームスプリッタ203は光ビームの光軸204に対して、45°の角度をなすように配置されており、その表面に形成された反射膜で650nm帯の波長のレーザ光を約80%反射すると同時に約20%透過させる光学素子である。そのため、光ビームの約20%はビ
ームスプリッタ203を透過しフロントモニタ205に至り、残りの約80%の光ビームは、ビームスプリッタ203の反射膜において反射した後、コリメートレンズ206によって平行な光ビームに変換され対物レンズ207に達する。ここで、対物レンズ207はアクチュエータ208に一体に保持されており、駆動コイル209に通電することにより、対物レンズ207を透過した光ビームを光ディスク101の情報記録面上に合焦し0次光及び±1次回折光の3つの光スポットを形成することが可能な構成となっている。また、アパーチャ210は、コリメートレンズ206から出射されたレーザ光の光量を制限し、迷光による光ピックアップ103の内部における乱反射を防ぐために設けられる。
また、対物レンズ207を透過する光ビームの光量、あるいは光ディスク101上に集光する光スポットの光量は、フロントモニタ205にて検出した光量を基にして推定可能な構成となっている。光ディスク101を反射した光ビームは、往路光と同様の光路を逆にたどって対物レンズ207、コリメートレンズ206を経て、ビームスプリッタ203に到達し、光ビームの戻り光量の約20%はビームスプリッタ203を透過する。ビームスプリッタ203を透過する光ビームはコリメートレンズ206によりすでに収束光となっているため、光ビームの進行方向に対して45°方向に傾斜しているビームスプリッタ203を透過する際に光ビームには非点収差が与えられ、その後、光ビームは光検出器211の所定の位置に集光されるようになっている。これら光学部品により光ピックアップ103が構成されている。
図3は、フロントモニタと光ビーム中心軸との位置関係を示したものである。フロントモニタ205は、半導体レーザ201より出射された光ビームの光軸である実線で表す204がフロントモニタ205の光検出面301の中心に入射するよう配置される。しかし、半導体レーザ201に電力が供給されて点灯すると、その電力消費によって半導体レーザの温度が上昇し、この温度上昇によって光ビームの出射角度が変化し、光ビームの光軸204にズレ角θが発生する。ズレ角は、半導体レーザ個々が有する特性によって、フロントモニタ205の光検出面301の中心から上下左右に発生する。図3において、θ1は、フロントモニタ205の光検出面301の中心と、半導体レーザ201の発光点を結ぶ実線(ズレ角θ=ゼロ)と、半導体レーザ201の温度上昇によって光検出面301に向かって左方向にズレ角が発生した光ビームの光軸である破線302とのなす角であり、また、θ2は、フロントモニタ205の光検出面301の中心と、半導体レーザ201の発光点を結ぶ実線と、半導体レーザ201の温度上昇によって光検出面301に向かって右方向にズレ角が発生した光ビームの光軸である一点鎖線で表す303とのなす角である。
次に図4は、フロントモニタ205が検出する光ビームの強度分布の関係を示す。光ビームの光軸が204であるとき、フロントモニタ205が検出する光ビームの強度は、実線の401で示すとおり、横軸で表すズレ角θがゼロのときに最大となり、θがゼロから離れるに従って光ビームの強度は小さくなっていく。一方、温度上昇によって光ビームにθ1のズレ角が発生した光ビームにおいては、破線の402で表すとおり、実線で示すズレ角がゼロの場合と同様に波形を示すが、光ビーム強度の最大値が中心(ズレ角=ゼロ)から右方向に外れている。また、θ2のズレ角が発生した光ビームにおいても、一点鎖線の403で表すとおり、実線で示すズレ角がゼロの場合と同様に波形を示すが、光ビーム強度の最大値が中心(ズレ角=ゼロ)から左方向に外れている。
このように、半導体レーザの温度上昇によって、光ビームの光軸にズレが発生した場合、フロントモニタ205で検出する受光量が変化し、光軸が光検出面301の中心からずれた場合には、半導体レーザから出射される光ビームの強度は変わっていないにも関わらず、光検出器205の受光量が減少し、発光パワーを増加するようにレーザ点灯手段118が動作して、APCが正常に動作せずに過度の強度の光ビームが対物レンズ207から出射され、光ディスク101に対する記録に失敗するという可能性がある。
次に図5は、本発明の第一の実施形態に係る光ピックアップを構成する光学部品の配置距離を示す。光学部品の配置構成および光ビームの光路に関しては、図2において説明したので省略し、ここでは本発明に係る光学部品の配置距離について説明する。フロントモニタ205の受光部501の面積をs、アパーチャ210の開口面積をS、半導体レーザ201の発光点からフロントモニタ205の受光部までの光学的距離をL、半導体レーザ201の発光点からコリメートレンズ主平面までの光学的距離をfとする。フロントモニタ205の受光部501は、受光する光ビームのビーム径に対して受光面積を十分に大きくとることにより光ビームのビーム径が変化した場合でも確実に受光できるようになっている。しかし、受光面積を大きくとりすぎると、静電容量が大きくなることから、その分光検出結果の周波数特性が悪くなり、APCの周波数特性が劣化してしまうという問題がある。さらに受光部501の入射面で反射した反射光ビームが迷光となって光ディスク101からの反射光を受光する受光系に入射し、これにより再生信号のSN比が劣化するという問題もある。また、受光部501を大きくすることは、光ピックアップの小型化を阻害する要因ともなる。
このような理由から、フロントモニタ205の受光部501の面積sを大きくとることは現実的ではないため、受光部501の面積sの大きさは制限される。従って、受光部501を小さく設計されるが、小さい受光部に確実に光ビームを受光させるために、受光部501を光ビームに近づける必要がある。また、受光部501を半導体レーザ201の発光点に近づければ近づけるほど、温度上昇によって発生する光ビームの光軸変化に追従することが可能となる。そのために、次式の関係を成り立つようにフロントモニタ205を配置するよう構成する。
1≦(S×L)÷(f×s)≦6.8
上記式を成立するように、半導体レーザ201の発光点からフロントモニタ205の受光部までの距離Lを調整してフロントモニタ205を配置することで、温度上昇による光軸のズレ角が発生しても、受光量の変化を確実に検出し、発光パワー変化による光ビームの光軸ズレに最大限追従することが出来るように、フロントモニタ205の配置に関する設計余裕度を持たせることが可能となる。
次に、本発明による第二の実施形態について、図6を参照しながら説明する。図6は、第一の実施形態における構成に対して、光ビームを集光するためのセンサレンズ601をフロントモニタ205の受光部501の前面に設けている。これによって、放射された光ビームを集光して受光部501に受光させることが可能である。第二の実施形態においては、半導体レーザ201の発光点からセンサレンズ601の主平面602までの光学的距離をLとする。第一の実施形態においては、半導体レーザ201の発光点からフロントモニタ205の受光部501までの光学的距離Lが大きくなればなるほど、光ビームは放射状に広がり、フロントモニタ501で受光する光ビームは小さくなり、受光感度は小さくなる。しかし、第二の実施形態においては、センサレンズ601を用いて放射した光ビームを集光することによって、フロントモニタ205の感度を向上すると共に、集光が可能となる分、半導体レーザ201の発光点から受光部501までの光学的距離Lを大きくすることが可能となる。すなわち、受光部501の面積sを大きくとることが出来るので、(S×L)÷(f×s)の上限値を小さくして、半導体レーザ201の発光点からフロントモニタ205の受光部までの光学的距離Lを大きくとることが可能となり、フロントモニタ205の配置に関する設計余裕度を持たせることが可能となる。
次に図7は、本発明の実施形態にかかる(S×L)÷(f×s)の値とAPCのパワー変動率との関係を示す。APCのパワー変動がゼロパーセントのときが、APCが完全な制御を行って、対物レンズ207の出射光量とフロントモニタ205の受光量との比率を一定に保っている状態であり、変動率のパーセントが上がるにつれて、APCの制御が不安
定であることを表す。本実施形態においては、APCのパワー変動率を5.0%未満で制御を行うことを目標として、半導体レーザ201の発光点からフロントモニタ205の受光部までの距離Lの値を設定した。図が示すとおり、APCパワー変動率が5.0%に近づくところで、(S×L)÷(f×s)は6.8をとっている。このように、(S×L)÷(f×s)の値を、1以上6.8未満に設定することで、APCのパワー変動の少ない5.0%内で制御することが可能となり、最適な光ビーム強度で、光ディスクに記録を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0007】
本発明は、光ピックアップを採用する光ディスク装置に好適であり、特に、CD−RやDVD−Rなどの高容量光ディスクに対して記録を行うことが可能な光ピックアップを採用する光ディスク装置に対して好適である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態における光ピックアップを採用した光ディスク装置のブロック図を示す。
【図2】本発明に係る光ピックアップの構成を示す。
【図3】本発明に係るフロントモニタと光ビーム中心軸との位置関係を示す。
【図4】本発明に係るフロントモニタが検出する光ビームの強度分布の関係を示す。
【図5】本発明に係る第一の実施形態における光ピックアップを構成する光学部品の配置を示す。
【図6】本発明に係る第二の実施形態における光ピックアップを構成する光学部品の配置を示す。
【図7】本発明に係る(S×L)÷(f×s)の値とAPCのパワー変動率との関係を示す。
【図8】従来技術にかかるフロントモニタと光ビーム中心軸との位置関係を示す。
【符号の説明】
【0009】
201 半導体レーザ
203 ビームスプリッタ
205 フロントモニタ
206 コリメートレンズ
207 対物レンズ
210 アパーチャ
601 センサレンズ
602 センサレンズ主平面
s フロントモニタの受光部面積
S アパーチャの開口面積
L 半導体レーザの発光点からフロントモニタの受光部までの光学的距離、または、半導体レーザの発光点からセンサレンズ主平面までの光学的距離
f 半導体レーザの発光点と前記コリメートレンズの焦点までの光学的距離










【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを出射するための半導体レーザと、前記半導体レーザより出射された光ビームを透過光と反射光とに分光するビームスプリッタと、前記反射光を平行化するためのコリメートレンズと、前記平行化された光ビームを光ディスク面に集光するための対物レンズと、前記対物レンズに入射する光ビームの光束を制限するためのアパーチャと、前記透過光を受光することにより前記対物レンズから出射される光ビームの光量を検出するフロントモニタとを備え、前記対物レンズ出射光量に対して前記フロントモニタ検出光量の比率が略一定となるように構成された光ピックアップにおいて、
前記アパーチャの開口面積をS、前記半導体レーザの発光点と前記コリメートレンズまでの光学的距離をf、前記フロントモニタの受光部面積をs、前記半導体レーザの発光点から前記フロントモニタの受光部までの光学的距離をLとしたとき、
1≦(S×L)/(s×f)≦6.8
となるように、前記フロントモニタを、前記透過光の光軸上に近接して配置することを特徴とした光ピックアップ。
【請求項2】
前記フロントモニタは、前記ハーフミラーを透過した光ビームを集光するためのセンサレンズを、該フロントモニタの受光部前方に一体、または個別に配置し、前記センサーレンズの開口面積をsと規定した請求項1に記載の光ピックアップ。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−123253(P2009−123253A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292941(P2007−292941)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】