説明

光ファイバケーブル及び情報配線システム

【課題】本発明の課題は、余剰スペースのない場所での光ファイバケーブルの配線を容易に行うことが可能となる光ファイバケーブル及び情報配線システムを提供することにある。
【解決手段】本発明は、テンションメンバ11の周囲に設けられた柔軟な材料よりなる充填材12と、前記充填材12の周囲に配置された光ファイバ素線13及びダミー部材14と、前記光ファイバ素線13及びダミー部材14の周囲に被覆された動摩擦係数が低いケーブル外被16とを具備することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばオフィスビルやマンションビル等の複数階よりなる建物において光ファイバを用いた情報通信のための配線に利用する光ファイバケーブル及び情報配線システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスビルやマンションビルの構内の情報通信においては、電話会社などの収容局から配線された光ファイバを用いた情報通信をオフィスビルやマンションビル内の主配電盤や中間配電盤においてメディアコンバータを利用して、光信号を電気信号に変換し、その電気信号をオフィスビルやマンションビルの構内に既に配線されているメタリック線を利用して各加入者部屋へ情報通信するVDSL(Very high−bit−rate Digital Subscriber Line)形式(例えば、非特許文献1参照。)が広く利用されてきたが、近年、高度情報社会の高まりを受けて、オフィスビルやマンションビルの構内の情報通信に対して、メディアコンバータとメタリック線を併用するのではなく、光ファイバケーブルを直接配線することが実施されはじめている。
【0003】
特にオフィスビルやマンションビルの構内の縦系配線に対しては、光ファイバケーブルを直接配線するために、主にSM(Single Mode Fiber)型構内光ファイバケーブル(例えば、特許文献1参照。)やSM(Single Mode Fiber)型インドア光ケーブル(例えば、特許文献2参照。)が現在利用されている。
【0004】
【特許文献1】実開平5-30817号公報
【特許文献2】特開2003-161867号公報
【特許文献3】特開2007-121398号公報
【特許文献4】特開平8-184728号公報
【特許文献5】特開平6-148464号公報
【非特許文献1】[新版]「やさしい光ファイバ通信」オーム社出版 平成18年11月1日 p.242−243
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、オフィスビルやマンションビルの構内の光ファイバケーブルの配線に利用する縦系の配管はその内径が様々であり、小さいものでは14mm径のものも存在し、径の大きな50mm径の配管であっても、既にその配管内に電気ケーブルやメタリックケーブル、同軸ケーブルが配線されているため、常に配管内の余剰スペースが狭く縦系の配管内における光ファイバケーブルの配線の制約が大きい。
【0006】
また、オフィスビルやマンションビルの形状は様々であり、縦系の配管を設置するため、その配管そのものを蛇行させたりしてオフィスビルやマンションビル内に設置することがある。そのため、例えばSM型構内光ファイバケーブルではスロットロッド及びテンションメンバが硬質であり、またそれらの径が大きく(例えば、SM型構内光ファイバケーブルのテンションメンバは1.4〜2.8mm、SM型インドア光ケーブルのテンションメンバは0.4mmであるがインドア光ケーブルの両端に2本入っており、全方向に曲げにくい)ケーブル外径が10mm径以上と配管に対して大きいことから、柔軟性に欠き、配線時に配管内の余剰スペースや蛇行が原因で配管内を通過しないなどの問題がある。
【0007】
一方、SM型インドア光ケーブルは、SM型構内光ファイバケーブルと比較してその外径が2×3.7mm程度と細径のため、縦系の配管径や既に配線されているケーブル類による余剰スペースの問題はSM型構内光ファイバケーブルと比較して少なくなるが、その断面長方形という形状から、配管内に配線する時に撚りが発生し、光ファイバケーブル内部の光ファイバを破壊する可能性があるため、配管内に配線する作業に注意が必要となる。
【0008】
そのため、現在利用されている光ファイバケーブルにおいて縦系の配管内での配線作業には、一定の経験や知識といった特定の技術が必要となってくる。
【0009】
これら既存の光ファイバケーブルは、オフィスビルやマンションビルの構内の主配電盤や各階の中間配電盤において、光ファイバケーブルの外被を除去し、その内部から光ファイバ素線を取り出す。光ファイバケーブルから取り出した光ファイバ素線の余長処理や分岐やスプリッタ接続のためのメカニカルスプライス、コネクタ、融着接続作業のためにオフィスビルやマンションビルの主配電盤や各階の中間配電盤の内部にキャビネットを設置する。そのキャビネットへ光ファイバケーブルから取り出した光ファイバ素線を収納し、各階の加入者部屋へ情報通信するためにオフィスビルやマンションビルの主配電盤や各階の中間配電盤から加入者部屋へ横系の配管を通じて配線した光ファイバケーブルをメカニカルスプライスや光コネクタ、融着接続により接続することが必要となってくるため、これら接続作業に関しても一定の経験や知識といった特定の技術が必要となっている。
【0010】
そのため、オフィスビルやマンションビルの構内の光ファイバケーブルの配線作業においてはこれら特定の技術を有した作業者しか実施することができず、実施した際にも多くの作業時間が必要となる問題を抱えている。
【0011】
このほかにも、既存の2つの光ファイバケーブルをオフィスビルやマンションビルに合わせて併用したり工作したりして使用するため、オフィスビルやマンションビルの構内における情報通信のための配線手段は一定ではないため、それに対応する技術が必要となり、特定の技術を有した作業者に依存する結果となり、高度情報社会のための情報配線システムの構築を阻害している問題がある。
【0012】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、スロットロッドを用いずに細径化し、且つ動摩擦係数の低いケーブル外被を用いることにより、余剰スペースのない場所での光ファイバケーブルの配線を容易に行うことが可能となり、さらに、コネクタ付光ファイバケーブルとすることにより、配線作業の作業性を向上することが可能となる光ファイバケーブル及び情報配線システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の光ファイバケーブルは、テンションメンバの周囲に設けられた柔軟な材料よりなる充填材と、前記充填材の周囲に配置された光ファイバ素線及びダミー部材と、前記光ファイバ素線及びダミー部材の周囲に被覆された動摩擦係数が低いケーブル外被とを具備することを特徴とするものである。
【0014】
また本発明は、前記光ファイバケーブルにおいて、充填材として、ケイ素樹脂の充填材を用いることを特徴とするものである。
【0015】
また本発明は、前記光ファイバケーブルにおいて、ケーブル外被として、フッ素樹脂もしくはケイ素樹脂のケーブル外被を用いることを特徴とするものである。
【0016】
また本発明は、前記光ファイバケーブルにおいて、ケーブル外被として、表面に凹凸形状を有するケーブル外被を用いることを特徴とするものである。
【0017】
また本発明は、前記光ファイバケーブルにおいて、ダミー部材として、鋼線もしくは樹脂よりなるダミー部材を用いることを特徴とするものである。
【0018】
また本発明は、前記光ファイバケーブルにおいて、光ファイバ素線として、ホーリーファイバ構造よりなる光ファイバ素線を用いることを特徴とするものである。
【0019】
また本発明は、前記光ファイバケーブルにおいて、光ファイバ素線の両端に光コネクタが設けられたことを特徴とするものである。
【0020】
また本発明は、前記光ファイバケーブルにおいて、少なくとも一方の光コネクタとして、多芯光コネクタを用いることを特徴とするものである。
【0021】
また本発明の情報配線システムは、前記光ファイバケーブルを用い、複数階よりなる建物の縦系の配管内を通して、主配電盤や各階の中間配電盤に配線することを特徴とするものである。
【0022】
また本発明の情報配線システムは、主配電盤及び各階の中間配電盤において設置されるスプリッタモジュール側の光コネクタもしくはキャビネット側の光コネクタと、光ファイバケーブルの光コネクタとがアダプタを介して接続されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の光ファイバケーブル及び情報配線システムは、スロットロッドを用いずに細径化し、且つ動摩擦係数の低いケーブル外被を用いることにより、余剰スペースのない場所での光ファイバケーブルの配線を容易に行うことが可能となり、さらに、コネクタ付光ファイバケーブルとすることにより、配線作業の作業性を向上することが可能となる。また、複数階建物内の縦系の配管内への光ファイバケーブルの配線や主配電盤や各階の中間配電盤における接続作業が特定の技術を利用せずに、作業することが可能であるため、特定の技術を有した作業者以外の作業者にも作業が可能になり、その結果として複数階建物内における光ファイバケーブルを利用した情報システムの構築の作業時間も短縮することが可能になる。
【0024】
また、複数階建物において情報配線システムの構築が一定の手段に固定されることとなり、複数階建物内における光ファイバケーブルを利用した情報システムの構築が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態例に係る光ファイバケーブルを示す構成説明図である。図1に示すように、光ファイバケーブル1の一端には多芯光コネクタ2が設けられると共に、光ファイバケーブル1の他端には分岐部3で分岐された複数のコード部4のそれぞれ先端に単芯光コネクタ5が設けられる。前記多芯光コネクタ2及び前記単芯光コネクタ5は光ファイバケーブル1及びコード部4中に通線された複数の光ファイバ素線の両端に接続される。この場合、分岐部3やコード部4に関しては、本発明の実施形態の機能を損なわないならば、利用しなくともよいし、どちらか一方のみ利用しても構わない。
【0026】
図2は本発明の他の実施形態例に係る光ファイバケーブルを示す構成説明図である。図2に示すように、光ファイバケーブル1の両端にはそれぞれ多芯光コネクタ2,2が設けられ、多芯光コネクタ2,2は光ファイバケーブル1中に通線された複数の光ファイバ素線の両端に接続される。
【0027】
尚、光ファイバケーブル1の両端にそれぞれ単芯光コネクタ5,5を設け、光ファイバケーブル1中に通線された複数の光ファイバ素線の両端に接続するようにしてもよい。
【0028】
図3(a)〜(e)は本発明の実施形態に係る光ファイバケーブルを示す断面図である。図3(a)に示すように、テンションメンバ11を中心軸とするようにしてテンションメンバ11の周囲には柔軟材よりなる充填材12が設けられる。前記テンションメンバ11としては例えば0.4mm径の鋼線が1本以上設けられ、また前記充填材12としては軟性のケイ素樹脂、例えばシリコーンゴム(ヤング率:2〜100MPa)とすると既存の光ファイバケーブルに用いられているポリエチレン(ヤング率:0.4〜1.3GPa)やポリオレフィン(ヤング率:約370MPa)、PVC(ポリ塩化ビニル、ヤング率:2.4〜3.4GPa)と比較して軟性であり、最小曲げ半径5mmで柔軟に曲がることが可能となっている。前記充填材12の周囲には光ファイバ素線13及びダミー部材14がそれぞれ交互に8本ずつスパイラル状に配置され、前記光ファイバ素線13とダミー部材14は押さえ巻き部材15により把持されている。前記光ファイバ素線13及びダミー部材14の周囲には動摩擦係数の低い物質よりなるケーブル外被16が被覆して設けられる。前記動摩擦係数の低い物質としてはフッ素樹脂の1種であるテフロン(登録商標)のPTFE、フッ素系PTE(熱可塑性エラストマー)又はカーボン等があり、軟性のある樹脂としてはケイ素樹脂、例えばケイ素樹脂の1種であるシリコーンゴムなどがある。
【0029】
尚、光ファイバ素線13とダミー部材14は本発明の実施形態の機能を満たすならば、スパイラル状に配置しなくとも押さえ巻きを利用しなくともかまわない。
【0030】
また、前記光ファイバケーブル1は既存インドア光ケーブルと異なり、円筒状であるため、配管内を配線する際の撚りが発生しない。そのため、前記光ファイバケーブル1は既存の光ファイバケーブルと比較して、複数階建物の蛇行した縦系配管の形状に対して容易に配線することが可能である。
【0031】
また、前記充填材12はテンションメンバ11を内部に含めて、0.9mm径であり、その外周には円状に光ファイバ素線13及びダミー部材14が交互に設けられ、光ファイバ素線13としてコアの周囲に空孔を備えた0.25mm径のホーリーファイバ構造よりなる光ファイバ素線を用いることにより、光ファイバケーブル1を曲げたときなどに損失増加を発生させないため、光ファイバケーブル1の取り回しが容易になる。
【0032】
また、充填材12の外周にある光ファイバ素線13やダミー部材14を押さえ巻き部材15やケーブル外被16及び充填材12で把持することで光ファイバケーブル1を操作したときに光ファイバ素線13同士が、光ファイバケーブル1内での移動により互いに絡まることや交差することを防ぐことができる。
また、例えば図3(b)のように充填材12を一部光ファイバ素線13とダミー部材14の隙間を埋めるように光ファイバケーブル1内に充填させることで前記効果を高めることができる。
【0033】
図4は本発明の実施形態に係るダミー部材を示す断面図である。図4に示すように、ダミー部材14はその外径が0.25mmの光ファイバ素線13と同じような形状をしており、内部に4本のダミー鋼線17が撚り合わされ、ダミー鋼線17の周囲をダミー外被18、例えば軟性のフッ素樹脂やナイロン等で被覆されている。
また、図3(c)のようにダミー部材14の径を光ファイバ素線13の径である0.25mmよりも大きな径にすることで光ファイバケーブル1は側圧を受けたとき、このダミー部材14がその側圧を受け止めることにより、ダミー部材14の径と光ファイバ素線13の径が同じ場合と比較して、より大きな側圧から耐えることができる。
このとき、例えばダミー部材14を0.35mm径とすると光ファイバケーブル1の径はダミー部材14と光ファイバ素線13が同じ径の時よりも0.2mm大きくなる。
しかし、例えばダミー部材14の径を0.27mmのように小数点第2位程度の数値で大きくすることや、図3(d)のようにダミー部材14を収納する充填材12の部分に凹部10を設けて光ファイバ素線13よりもわずか高くなるようにダミー部材14の位置を調整することにより、光ファイバケーブル1の径がより大きくなることを回避することができる。
また、ダミー部材14を断面が長方形や正方形、例えば図3(e)のように長方形であるとすると、光ファイバケーブル1の径をダミー部材14が断面円形のときよりも小さくすることが可能になる。
【0034】
このダミー部材14を光ファイバ素線13と交互に備えることによって、光ファイバ素線13同士が接触することがなくなるため、光ファイバケーブル1の縦系配管への配線時にも光ファイバ素線13同士の接触による損傷や温度変化による接触による損傷を防ぐことが可能になる。
また、前記押さえ巻き部材15やケーブル外被16及び充填材12により把持することも含めると、このダミー部材14を光ファイバ素線13と交互に備えることによって、光ファイバ素線13同士が絡まることや交差することを防ぐ効果も得ることができる。
【0035】
これら光ファイバ素線13及びダミー部材14は0.1mm厚の押さえ巻き部材15によって保持され、光ファイバケーブル1からのズレを防いでいる。
【0036】
このため、例えば配管径22mmにおいては、既存の光ファイバケーブルでは光ファイバ素線が1〜12本程度のところを、本発明の実施形態では光ファイバ素線13が16本以上配線することが可能となるため、複数階建物の縦系の配管の余剰スペースに対して十分細くなり、配管の狭窄や既に他のケーブル類が配線されている配管に対して配線することが容易になっている。
【0037】
ケーブル外被16は被覆厚みが0.2mmのフッ素樹脂を利用しており、例えばテフロン(登録商標)のPTFEで動摩擦係数が0.04となり、例えば既存の光ケーブルの外被に用いられている物質であるPVC(ポリ塩化ビニル、動摩擦係数:0.40)や高密度ポリエチレン(動摩擦係数:0.11)、低密度ポリエチレン(動摩擦係数:0.33)と比較しても十分小さいため、複数階建物の縦系配管の内壁や配管内に配線された他のケーブル類との動摩擦力が小さくなる。
【0038】
図5は本発明の実施形態に係るケーブル外被を示す構成説明図である。図5に示すように、ケーブル外被16の動摩擦力を減少させる方法として、ケーブル外被16の表面に楕円状の凹凸形状部19を設けることで配管の内壁に対する設置面積が少なくなり、そのため動摩擦力を低減させることが可能である。
【0039】
尚、ケーブル外被16はフッ素樹脂のみや凹凸形状部も設けることのみのどちらかの方法を用いてもよいし、これらを組み合せてもよい。
【0040】
このように、ケーブル外被16の動摩擦力を減少させることにより、複数階建物の縦系配管への光ファイバケーブル1の配線が容易になる。また、ダミー部材14は内部が鋼線ではなくてもよいし、樹脂で構成してもよいため、ダミー部材14を含めて柔軟な樹脂で構成できるため、既存の光ファイバケーブルと比較して、蛇行といった複数階建物の縦系配管の形状に対して容易に配線することが可能である。
【0041】
以上のように、光ファイバケーブル1は充填材12及びケーブル外被16ともに軟性樹脂が利用されているため、柔軟性があり、かつ、ケーブル外被16が動摩擦係数の低い樹脂を利用しているため、配管の内壁や他のケーブル類との摩擦力が少なくなるため、光ファイバケーブル1を配線することが容易になる。その上、光ファイバケーブル1は両端に光コネクタを備えているため、主配電盤や各階の中間配電盤における接続作業を排除することが出来るため、作業が容易になる。
【0042】
尚、光ファイバケーブル1の両端に光コネクタを備えるため、配管内に配線する際に光コネクタの大きさが問題となるが、MT(Mechanically Transferable Splicing Connector)コネクタのような小型多芯光コネクタを配管に応じて、多芯光コネクタ2として利用することによって、この問題を解決することが可能である。
【0043】
本発明の実施形態に係る光ファイバケーブルは細径にできるため、同一の配管に従来の光ケーブル、例えばインドアケーブル(2×3.7mm)の3倍程度の本数の光ファイバケーブルを配線することができるが、光コネクタ付光ファイバケーブル、例えば多心光コネクタであるMPOコネクタ(5.5×9×10mm)を備えた光コネクタ付光ファイバケーブルとした場合は、光コネクタ部が太いので2倍程度となるが、この場合は、光コネクタ付光ファイバケーブルを用いることにより、現場での光コネクタを組み立てる必要がなくなり、作業性が向上する。
図10は本発明の実施形態に係る光ファイバケーブルを従来の光ケーブルと比較した説明図であり、16mm径のCD管へ1本づつ2種類の光ファイバケーブルを通線した場合の実験データである。
【0044】
図6は本発明の第1の実施形態に係る情報配線システムを示す構成説明図である。図6に示すように、4階の建物21において、1階には主配電盤(MDF)22が設置され、2階、3階、及び4階にはそれぞれ中間配電盤(IDF)23が設置される。前記主配電盤22と2階の中間配電盤23との間、2階の中間配電盤23と3階の中間配電盤23との間、3階の中間配電盤23と4階の中間配電盤23との間にはそれぞれ縦系配管24が設けられると共に、前記主配電盤22と各階の中間配電盤23にはそれぞれ横系配管25が設けられる。前記各階の中間配電盤23にはスプリッタモジュール26が設けられる。前記横系配管25には横系配線光ファイバケーブル27が通線され、前記横系配線光ファイバケーブル27の中間配電盤23側の端部にはスプリッタモジュール26を介して単芯光コネクタ28が設けられる。
【0045】
前記縦系配管24には4階の中間配電盤23から1階の主配電盤22まで光ファイバケーブル1が多芯光コネクタ2から挿入され、分岐部3及び単芯光コネクタ5は4階の中間配電盤23側に残される。4階の中間配電盤23において、単芯光コネクタ5は前記単芯光コネクタ28とアダプタ29を介して互いに差し込むことで接続される。
【0046】
このようにして、縦系配線の光ファイバケーブル1を横系配線光ファイバケーブル27に接続することができる。
【0047】
これは従来の配線システムと比較して、中間配電盤23での接続処理が不要になり、縦系配管24に光ファイバケーブル1を配線し、容易な光コネクタ接続のみで構築できるため、従来のように配管に合わせて光ファイバケーブルを選択し、各階の中間配電盤などで光ファイバ素線の分岐処理を行い、それをキャビネットやスプリッタモジュールなどで光ファイバ心線の被覆を除去し、メカニカルスプライスや融着などの一定の経験や技術の必要な接続処理を行う必要がない。
【0048】
そのため、情報配線システムの構築手段が一定になり、かつ容易になるため一定の技術を有した作業者以外でも、情報配線システムの構築が可能になる。
【0049】
図7は本発明の第2の実施形態に係る情報配線システムを示す構成説明図である。図7中、図6と同一部分は同一符号を付してその説明を省略する。図7は主配電盤22にスプリッタモジュール26を備え、各階の中間配電盤23にスプリッタモジュールを備えない場合であり、横系配線光ファイバケーブル27の中間配電盤23のキャビネット側の端部には単芯光コネクタ28が設けられる。
【0050】
4階の中間配電盤23において、単芯光コネクタ5は前記単芯光コネクタ28とアダプタ29を介して互いに差し込むことで接続される。
【0051】
このようにして、縦系配線の光ファイバケーブル1を横系配線光ファイバケーブル27に接続することができる。
【0052】
図7では1階の主配電盤22において、多芯光コネクタ2が多芯/単芯変換アダプタ31及びアダプタ29を介してスプリッタモジュール26側の単芯光コネクタ32に接続される。
【0053】
図8は本発明の第3の実施形態に係る情報配線システムを示す構成説明図である。図8中、図6と同一部分は同一符号を付してその説明を省略する。図8は主配電盤22及び各階の中間配電盤23にスプリッタモジュールを備えない場合であり、横系配線光ファイバケーブル27の中間配電盤23のキャビネット側の端部には単芯光コネクタ28が設けられる。
【0054】
4階の中間配電盤23において、単芯光コネクタ5は前記単芯光コネクタ28とアダプタ29を介して互いに差し込むことで接続される。
【0055】
このようにして、縦系配線の光ファイバケーブル1を横系配線光ファイバケーブル27に接続することができる。
【0056】
図8では1階の主配電盤22において、多芯光コネクタ2が多芯/単芯変換アダプタ31及びアダプタ29を介して、専用線やダークファイバなどのスプリッタモジュールを介さずにピグテイルコード30側の単芯光コネクタ32に接続されている。
【0057】
図9は本発明の第4の実施形態に係る情報配線システムを示す構成説明図である。図9中、図6と同一部分は同一符号を付してその説明を省略する。図9は主配電盤22及び各階の中間配電盤23にスプリッタモジュールを備えた場合であり、横系配線光ファイバケーブル27の中間配電盤23側の端部にはスプリッタモジュール26を介して単芯光コネクタ28が設けられる。
【0058】
4階の中間配電盤23において、単芯光コネクタ5は前記単芯光コネクタ28とアダプタ29を介して互いに差し込むことで接続される。
【0059】
このようにして、縦系配線の光ファイバケーブル1を横系配線光ファイバケーブル27に接続することができる。
【0060】
図9では1階の主配電盤22において、多芯光コネクタ2がスプリッタモジュール26に接続される。
【0061】
以上のように、ケーブル外被にフッ素樹脂を利用することやケーブル外被に配管内壁との設置面積を減少させるために凹凸形状をつけることによって、ケーブル外被表面の動摩擦係数を低減することが可能となり、他の既存ケーブル類へ重ねて配線する際に、それらのケーブル類のケーブル被覆や縦系の配管内壁に対する動摩擦力を低減することが可能になるため、余剰スペースのない場合や既に配管内に他のケーブル類が配線されている場合でも、動摩擦力による抵抗力を低減できるため引張力が少なくなり、光ファイバケーブルを容易に配管内へ配線することが可能となっている。
【0062】
また、細径のテンションメンバを利用することにより、テンションメンバ周囲に設けられた充填材自体が柔軟な素材であり、充填材の周囲に円状に備えた光ファイバ素線が単芯であり、従来のスロットロッド型光ケーブルのようにスロットロッドを用いないことやそのスロットロッドに備える光ファイバ心線がテープ形状であることから、従来のスロットロッドと比較して細径にすることが可能であり、ケーブル外被も薄くて丈夫な素材を用いていることから、本発明のケーブル外径を細径化することが可能になり、ビル内の縦系の配管内に多数配線することや既に配管内に配線されたケーブル類へ重ねて配線することが従来の光ケーブルと比較して容易になっている。
【0063】
一方、光ファイバケーブルの両端に光コネクタを備えた場合には、複数階建物の構内の主配電盤や各階の中間配電盤における接続作業は備えられた光コネクタを容易に接続できるスプリッタモジュールや光コネクタのアダプタ等へ差し込むのみになるため、接続作業を簡易にすることが可能となっている。
【0064】
これらの点からも、特定の技術を利用せずに複数階建物の構内への光ファイバケーブルを配線することが可能であるため、特定の技術を有した作業者以外の作業者でも複数階建物の構内への光ファイバケーブルの配線が可能になり、かつ、作業が容易になるため、従来の光ファイバケーブルの配線工事と比較して作業時間を短縮することも可能になる。
【0065】
また、どのような複数階建物においても情報配線システムの構築が一定の手段になり、作業が容易になることから、複数階建物の構内における光ファイバケーブルを利用した情報システムの構築が容易となる。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態例に係る光ファイバケーブルを示す構成説明図である。
【図2】本発明の他の実施形態例に係る光ファイバケーブルを示す構成説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るダミー部材を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るケーブル外被を示す構成説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る情報配線システムを示す構成説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る情報配線システムを示す構成説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る情報配線システムを示す構成説明図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る情報配線システムを示す構成説明図である。
【図10】本発明の実施形態に係る光ファイバケーブルを従来の光ケーブルと比較した説明図である。
【符号の説明】
【0068】
1…光ファイバケーブル、2…多芯光コネクタ、3…分岐部、4…コード部、5…単芯光コネクタ、11…テンションメンバ、12…充填材、13…光ファイバ素線、14…ダミー部材、15…押さえ巻き部材、16…ケーブル外被、17…ダミー鋼線、18…ダミー外被、19…凹凸形状部、21…4階の建物、22…主配電盤、23…中間配電盤、24…縦系配管、25…横系配管、26…スプリッタモジュール、27…横系配線光ファイバケーブル、28…単芯光コネクタ、29…アダプタ、30…ピグテイルコード、31…多芯/単芯変換アダプタ、32…単芯光コネクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンションメンバの周囲に設けられた柔軟な材料よりなる充填材と、
前記充填材の周囲に配置された光ファイバ素線及びダミー部材と、
前記光ファイバ素線及びダミー部材の周囲に被覆された動摩擦係数が低いケーブル外被と
を具備することを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
充填材として、ケイ素樹脂の充填材を用いることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
ケーブル外被として、フッ素樹脂もしくはケイ素樹脂のケーブル外被を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
ケーブル外被として、表面に凹凸形状を有するケーブル外被を用いることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
ダミー部材として、鋼線もしくは樹脂よりなるダミー部材を用いることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
光ファイバ素線として、ホーリーファイバ構造よりなる光ファイバ素線を用いることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
光ファイバ素線の両端に光コネクタが設けられたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項8】
少なくとも一方の光コネクタとして、多芯光コネクタを用いることを特徴とする請求項7に記載の光ファイバケーブル。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の光ファイバケーブルを用い、複数階よりなる建物の縦系の配管内を通して、主配電盤や各階の中間配電盤に配線することを特徴とする情報配線システム。
【請求項10】
主配電盤及び各階の中間配電盤において設置されるスプリッタモジュール側の光コネクタもしくはキャビネット側の光コネクタと、光ファイバケーブルの光コネクタとがアダプタを介して接続されることを特徴とする請求項9に記載の情報配線システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−128382(P2009−128382A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299700(P2007−299700)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】