説明

光ファイバケーブル支持具及びワイヤハーネス

【課題】電線とともに束ねられる光ファイバケーブルが、過度な曲率で曲がることを防止でき、さらに、容易な作業によって光ファイバケーブルを正規の部位で曲げた状態で支持できる光ファイバケーブル支持具及びそれを備えたワイヤハーネスを提供すること。
【解決手段】光ファイバケーブル支持具10は、ベルト式固定部2とケーブル支持部3とを備える。ベルト式固定部2は、ベルト21及び電線9に巻かれたベルト21を環状に保持するベルト保持部22を有する。ケーブル支持部3は、ベルト式固定部2に対して起立して形成された起立部32を有し、その起立部32に引っ掛けられた光ファイバケーブル8を起立部32の周囲に沿って湾曲した状態で支持する。さらにケーブル支持部3は、光ファイバケーブル8の位置ずれを制限する第一規制部33及び第二規制部34を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線とともに束ねられる光ファイバケーブルを曲がった状態で支持する光ファイバケーブル支持具及びそれを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車などの車両における通信システムにおいて、音楽及び映像などに関するデータサイズの大きなデジタルデータの伝送に適した光ファイバが採用されつつある。しかしながら、光ファイバケーブルは、電線に比べ、性能を維持するために許容される曲率が小さい。そのため、光ファイバケーブルが、電線とともに束ねられる場合、光ファイバケーブルの曲げ規制が重要となる。
【0003】
例えば、ワイヤハーネスの電線束が、幹線から支線へ分岐する分岐部を有し、光ファイバケーブルが、幹線の電線と支線の電線とに束ねられる場合、光ファイバケーブルは、電線束の分岐部において曲がった状態で保持される。また、光ファイバケーブルが、曲がった経路に沿って配線される電線とともに束ねられる場合も、光ファイバケーブルは、電線の曲げ部に沿って曲がった状態で保持される。
【0004】
例えば、特許文献1には、光ファイバケーブルが、曲がった形状のガイド部材の溝に嵌め入れられることにより、光ファイバケーブルの曲げが制限されることについて示されている。この場合、ガイド部材は、まず、光ファイバケーブルに取り付けられた後に、粘着テープで電線束における予め定められた固定位置に固定される。即ち、特許文献1に示されるガイド部材は、光ファイバケーブルが電線束に沿って配線される前に、電線束におけるガイド部材の固定位置を通るであろう光ファイバケーブルの曲げ部に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−279755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示されるガイド部材が採用された場合、ガイド部材を粘着テープの巻き付けによって電線束に固定する作業が手間である。
【0007】
また、特許文献1に示されるガイド部材の取り付け作業においては、光ファイバケーブルが電線束に沿って配線される前に、光ファイバケーブルの曲げ部、即ち、電線束におけるガイド部材の固定位置を通る光ファイバケーブルの部位が特定されなければならない。
【0008】
しかしながら、光ファイバケーブルが電線束に沿って配線される前に、光ファイバケーブルの正規の曲げ部、即ち、光ファイバケーブルにおけるガイド部材の正規の取り付け位置を特定することは難しい。即ち、特許文献1に示されるガイド部材が採用された場合、電線束におけるガイド部材の正規の固定位置と、光ファイバケーブルにおける正規の曲げ部との位置合わせが難しい。その結果、ガイド部材を光ファイバケーブルの正規の曲げ部に取り付けるための作業性が悪い。
【0009】
本発明は、電線とともに束ねられる光ファイバケーブルが、過度な曲率で曲がることを防止でき、さらに、容易な作業によって光ファイバケーブルを正規の部位で曲げた状態で支持できる光ファイバケーブル支持具及びそれを備えたワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る光ファイバケーブル支持具は、電線とともに束ねられる光ファイバケーブルを曲がった状態で支持する用具であり、以下に示す各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、ベルト及び電線に巻かれたベルトを環状に保持する機構を有するベルト式固定部である。
(2)第2の構成要素は、ベルト式固定部と連結されるとともにベルト式固定部に対して起立して形成された起立部を有し、その起立部に引っ掛けられた光ファイバケーブルを起立部の周囲に沿って湾曲した状態で支持するケーブル支持部である。
【0011】
第2発明に係る光ファイバケーブル支持具は、第1発明に係る光ファイバケーブル支持具の一態様であり、さらに、起立部を回転可能に支持する回転支持部を備える。
【0012】
第3発明に係る光ファイバケーブル支持具は、第1発明又は第2発明に係る光ファイバケーブル支持具の一態様である。第3発明に係る光ファイバケーブル支持具において、起立部の周囲の面は外側に膨らんだ湾曲面を含む。
【0013】
第4発明に係る光ファイバケーブル支持具は、第3発明に係る光ファイバケーブル支持具の一態様である。第4発明に係る光ファイバケーブル支持具において、起立部の周囲の面全体が外側に膨らんだ環状の湾曲面である。
【0014】
第5発明に係る光ファイバケーブル支持具は、第1発明又は第2発明に係る光ファイバケーブル支持具の一態様である。第5発明に係る光ファイバケーブル支持具において、起立部の周囲の面がコルゲートチューブの外側表面の凹凸と噛み合う凹凸面を含む。
【0015】
第6発明に係る光ファイバケーブル支持具は、第1発明から第5発明のいずれかに係る光ファイバケーブル支持具の一態様である。第6発明に係る光ファイバケーブル支持具において、ケーブル支持部は複数の起立部を備える。
【0016】
第7発明に係る光ファイバケーブル支持具は、第1発明から第6発明のいずれかに係る光ファイバケーブル支持具の一態様である。第7発明に係る光ファイバケーブル支持具において、ケーブル支持部は、起立部から張り出して形成され起立部の先端側への光ファイバケーブルの位置ずれを制限する第一規制部をさらに備える。
【0017】
第8発明に係る光ファイバケーブル支持具は、第1発明から第7発明のいずれかに係る光ファイバケーブル支持具の一態様である。第8発明に係る光ファイバケーブル支持具において、ケーブル支持部は、起立部の周囲の面に対して光ファイバケーブルを挟んで対向する可撓性を有する部分であり、起立部の周囲の面から離れる方向への光ファイバケーブルの位置ずれを制限する第二規制部をさらに備える。
【0018】
また、本発明は、電線と、その電線とともに束ねられた光ファイバケーブルと、本発明に係る光ファイバケーブル支持具とを備えたワイヤハーネスの発明としても捉えられる。
【発明の効果】
【0019】
第1発明に係る光ファイバケーブル支持具は、電線束に対する固定が可能なベルト式固定部を備えるため、当該光ファイバケーブル支持具を電線束に固定するための粘着テープの巻き付け作業を必要とせず、電線束への固定が簡単である。以下、光ファイバケーブル支持具とファイバ支持具とは同じ意味を表す用語として用いられる。
【0020】
また、第1発明に係る光ファイバケーブル支持具が採用された場合、電線とともに束ねられる光ファイバケーブルは、ファイバ支持具の起立部の周囲に沿って湾曲した状態で支持される。そのため、光ファイバケーブルが、起立部の周囲の面の曲率を超えて過度な曲率で曲がることが防止される。
【0021】
また、第1発明に係る光ファイバケーブル支持具が採用された場合、まず、当該ファイバ支持具が、ベルト式固定部により電線束における予め定められた固定位置に固定された後に、光ファイバケーブルが、当該ファイバ支持具の起立部の周囲に引っ掛けられた状態で、電線束に対する光ファイバケーブルの位置合わせが可能である。そのため、電線束における当該ファイバ支持具の正規の固定位置と、光ファイバケーブルにおける正規の曲げ部との位置合わせは容易である。従って、第1発明に係る光ファイバケーブル支持具は、容易な作業によって光ファイバケーブルを正規の部位で曲げた状態で支持できる。
【0022】
また、第2発明によれば、起立部が回転可能に支持されるため、当該ファイバ支持具が、ベルト式固定部により電線束に固定された状態で、起立部の周囲の面における光ファイバケーブルを沿わせるべき領域の向きを変更できる。そのため、当該ファイバ支持具に光ファイバケーブルを支持させる作業が容易となる。また、1種類の当該ファイバ支持具を、光ファイバケーブルの曲げ方向が異なる様々なワイヤハーネスに兼用することが可能となる。
【0023】
また、第3発明によれば、光ファイバケーブルは、起立部の周囲の湾曲面に引っ掛けられることにより、その湾曲面に沿って緩やかに曲がった状態で支持される。そのため、光ファイバケーブルが、起立部の湾曲面の曲率を超えて過度な曲率で曲がることが防止される。当該ファイバ支持具は、光ファイバケーブルが、コルゲートチューブなどの外装部材で覆われない状態で起立部に引っ掛けられる場合に好適である。
【0024】
また、第4発明によれば、起立部の周囲の面全体が外側に膨らんだ環状の湾曲面であるため、1種類の当該ファイバ支持具を、光ファイバケーブルの曲げ方向が異なる様々なワイヤハーネスに兼用することが可能となる。
【0025】
また、第5発明によれば、光ファイバケーブルの周囲がコルゲートチューブで覆われている場合に、起立部の周囲の凹凸面が、そのコルゲートチューブの外側表面の凹凸と噛み合う。これにより、起立部に対するコルゲートチューブの位置ずれが防止される。当該ファイバ支持具は、光ファイバケーブルが、コルゲートチューブで覆われた状態で起立部に引っ掛けられる場合に好適である。
【0026】
また、第6発明によれば、1つのファイバ支持具が、複数の光ファイバケーブルの曲げ部を支持できる。第6発明に係る光ファイバケーブル支持具は、複数の光ファイバケーブルが、電線束における1つの部位においてそれぞれ異なる経路に沿って曲げられた状態で保持される場合に、部品点数を少なくできる点で好適である。
【0027】
また、第7発明によれば、第一規制部の作用により、光ファイバケーブルが、起立部からその先端側へ外れることが防止される。
【0028】
また、第8発明によれば、起立部に引っ掛けられた光ファイバケーブルに加わる張力が緩んだ際に、第二規制部の作用により、光ファイバケーブルが、起立部から離れて外れることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス1の平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る光ファイバケーブル支持具10の斜視図である。
【図3】光ファイバケーブル支持具10の主要部の平面図である。
【図4】光ファイバケーブルを支持する光ファイバケーブル支持具10の主要部の斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る光ファイバケーブル支持具10Aの主要部の平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る光ファイバケーブル支持具10Bの主要部の平面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る光ファイバケーブル支持具10Cの主要部の平面図である。
【図8】光ファイバケーブル支持具10Cを備えたワイヤハーネス1Cの平面図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る光ファイバケーブル支持具10Dの主要部の平断面図である。
【図10】光ファイバケーブル支持具10Dを備えたワイヤハーネス1Dの主要部の平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。本発明の実施形態に係る光ファイバケーブル支持具10,10A,10B,10C,10D及びワイヤハーネス1,1C,1Dは、自動車などの車両に搭載され、各種の電装機器相互間を接続するワイヤハーネスに適用される。
【0031】
<第1実施形態>
<ケーブル支持具及びワイヤハーネスの構成>
まず、図1から図4を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る光ファイバケーブル支持具10及びそれを備えたワイヤハーネス1の構成について説明する。図1に示されるように、ワイヤハーネス1は、複数の電線9と、その電線9とともに束ねられた光ファイバケーブル8と、その光ファイバケーブル8を曲がった状態で支持する光ファイバケーブル支持具10とを備える。複数の電線9は、束ねられることにより電線束7を構成している。
【0032】
電線束7は、光ファイバケーブル8と束ねられ、その端部にはコネクタ6が接続されている。図1に示されるように、電線束7は、電線9及び光ファイバケーブル8を含む幹線から電線9及び光ファイバケーブル8を含む支線へ分岐する分岐部を有する。以下、幹線及び支線各々の電線束を区別する場合、幹線の電線束71及び支線の電線束72と称する。なお、図1に示される例では、電線束7を構成する複数の電線9は、粘着テープ5が巻き付けられることによって束ねられている。
【0033】
光ファイバケーブル支持具10は、コルゲートチューブ81は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの合成樹脂からなる部材である。図1及び図2に示されるように、光ファイバケーブル支持具10は、ベルト式固定部2とケーブル支持部3とを備える。
【0034】
ベルト式固定部2は、可撓性を有するベルト21と、電線束7に巻かれたベルト21を環状に保持する機構を構成するベルト保持部22とを備えている。ベルト21が、電線束7に対して密着して巻かれた状態でベルト保持部22によって環状に保持されることにより、ベルト式固定部2は、電線束7における一定の位置に固定される。
【0035】
図1に示される例では、光ファイバケーブル支持具10は、ワイヤハーネス1における幹線の電線束71と支線の電線束72との分岐部に固定されている。この位置が、光ファイバケーブル支持具10の正規の固定位置である。また、光ファイバケーブル支持具10が正規の固定位置に固定された状態におけるケーブル支持部3の位置が、電線束7に沿って配線される光ファイバケーブル8の正規の曲げ部の位置である。
【0036】
ベルト保持部22は、ベルト21が通される貫通孔221が形成された部分である。また、ベルト保持部22における貫通孔221の縁部には、ベルト21に形成された凹み部211に嵌り込む突起部222が形成されている。
【0037】
ベルト保持部22において、突起部222は、貫通孔221に通されたベルト21の凹み部211に嵌り込むことにより、貫通孔221から抜ける方向へのベルト21の移動を止める。即ち、突起部222及びベルト21の凹み部211は、ベルト21が貫通孔221から抜けるのを防ぐ抜け止め機構を構成している。この抜け止め機構により、ベルト21は、ベルト保持部22の貫通孔221に通された状態で環状に保持される。
【0038】
また、ベルト21には、複数の凹み部211が、ベルト21の長手方向における複数の箇所に形成されている。そのため、ベルト21が、電線束7の周囲に密着する状態となるように、ベルト21におけるベルト保持部22の貫通孔221に貫通する部分の長さが調節されることにより、ベルト式固定部2は、電線束7における一定の位置に固定される。
【0039】
一方、図3に示されるように、ケーブル支持部3は、基部31、起立部32、第一規制部33及び第二規制部34を有している。
【0040】
ケーブル支持部3の基部31は、ベルト式固定部2と起立部32とを連結する部分である。また、起立部32は、ベルト式固定部2に対して起立して形成された部分である。本実施形態において、起立部32の周囲の面全体が外側に膨らんだ環状の湾曲面で形成されている。例えば、起立部32の周囲の面は、円柱面を形成している。起立部32は、例えば、中空部を囲う湾曲した壁により形成されている。また、起立部32は、周囲が湾曲面で形成された棒状の部分であってもよい。
【0041】
なお、起立部32の周囲の面全体とは、起立部32を基準にして360°の方向に亘る面のことを意味する。
【0042】
図4に示されるように、ケーブル支持部3は、起立部32に引っ掛けられた光ファイバケーブル8を起立部32の周囲に沿って湾曲した状態で支持する部分である。
【0043】
また、ケーブル支持部3の第一規制部33は、起立部32から張り出して形成され、起立部32の先端側への光ファイバケーブル8の位置ずれを制限する部分である。
【0044】
本実施形態において、第一規制部33は、起立部32の先端にフランジ状に形成されている。しかしながら、第一規制部33は、起立部32の周方向における1箇所又は複数箇所において起立部32から外側へ片持ち梁状に張り出して形成されてもよい。
【0045】
また、ケーブル支持部3の第二規制部34は、起立部32の周囲の面に対して光ファイバケーブル8を挟んで対向する可撓性を有する部分である。第二規制部34は、起立部32との間のスペースに光ファイバケーブル8が嵌め入れられる際に、光ファイバ8から受ける圧力によって撓む。
【0046】
また、第二規制部34は、起立部32との間に光ファイバケーブル8が嵌め入れられた後には、起立部32の周囲の面から離れる方向への光ファイバケーブル8の位置ずれを制限する。
【0047】
本実施形態において、第二規制部34は、基部31から起立部32の周囲の面に対向する位置へ、即ち、図2において下側から上側へ突起して形成されている。しかしながら、第二規制部34は、第一規制部33から起立部32の周囲の面に対向する位置へ、即ち、図2において上側から下側へ突起して形成されてもよい。
【0048】
なお、本実施形態においては、第二規制部34は、起立部32の周囲における2箇所に形成されている。しかしながら、第二規制部34が、より多くの箇所に形成されること、又は起立部32の周囲の全方向に亘って一連に形成されること、なども考えられる。
【0049】
<効果>
光ファイバケーブル支持具10は、電線束7に対する固定が可能なベルト式固定部2を備えるため、電線束7への固定が簡単である。即ち、当該光ファイバケーブル支持具10を電線束7に固定するための粘着テープの巻き付け作業は不要である。
【0050】
また、光ファイバケーブル支持具10が採用された場合、電線9とともに束ねられる光ファイバケーブル8は、ケーブル支持部3の起立部32の周囲の湾曲面に引っ掛けられることにより、その湾曲面に沿って緩やかに曲がった状態で支持される。そのため、起立部32の周囲の面が、光ファイバケーブル8の性能維持のために許容される曲率で形成されていれば、光ファイバケーブル8が、過度な曲率で曲がることが防止される。光ファイバケーブル支持具10は、光ファイバケーブル8が、コルゲートチューブなどの外装部材で覆われない状態で起立部32に引っ掛けられる場合に好適である。
【0051】
また、光ファイバケーブル支持具10の起立部32は、その周囲の面全体が外側に膨らんだ環状の湾曲面であるため、1種類の光ファイバケーブル支持具10を、光ファイバケーブル8の曲げ方向が異なる様々なワイヤハーネスに兼用することが可能となる。
【0052】
また、光ファイバケーブル支持具10が採用された場合、まず、当該光ファイバケーブル支持具10が、ベルト式固定部2により電線束7における予め定められた固定位置に固定される。その後、光ファイバケーブル8が、光ファイバケーブル支持具10の起立部32の周囲に引っ掛けられた状態で、光ファイバケーブル8を起立部32に対して滑らせつつ電線束7に対する光ファイバケーブル8の位置合わせを行うことが可能である。
【0053】
そのため、光ファイバケーブル支持具10が採用された場合、電線束7における光ファイバケーブル支持具10の正規の固定位置と、光ファイバケーブル8における正規の曲げ部との位置合わせは容易である。従って、光ファイバケーブル支持具10は、容易な作業によって光ファイバケーブル8を正規の部位で曲げた状態で支持できる。
【0054】
また、光ファイバケーブル支持具10が採用された場合、第一規制部33の作用により、光ファイバケーブル8が、起立部32からその先端側へ外れることが防止される。さらに、起立部32に引っ掛けられた光ファイバケーブル8に加わる張力が緩んだ際に、第二規制部34の作用により、光ファイバケーブル8が、起立部32から離れて外れることも防止される。
【0055】
<第2実施形態>
次に、図5を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る光ファイバケーブル支持具10Aについて説明する。光ファイバケーブル支持具10Aは、図1から図4に示された光ファイバケーブル支持具10と比較して、ケーブル支持部の形状のみが異なる。図5において、図1から図4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、光ファイバケーブル支持具10Aにおける光ファイバケーブル支持具10と異なる点についてのみ説明する。
【0056】
図5は、光ファイバケーブル支持具10Aの主要部の平面図である。なお、図5において、光ファイバケーブル8が、仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0057】
光ファイバケーブル支持具10Aのケーブル支持部3Aは、ベルト式固定部2とつながった基部31Aと、ベルト式固定部2に対して起立して形成された起立部32Aと、起立部32Aから張り出して形成された第一規制部33Aと、第二規制部34とを備える。
【0058】
光ファイバケーブル支持具10Aの起立部32Aは、その周囲の面のうち一部の方向の面のみが、外側に膨らんだ湾曲面で形成されている。図5に示される例では、起立部32Aの湾曲面は、起立部32Aを基準にして180°の範囲の方向に亘って形成されている。また、起立部32Aの周囲の面は、湾曲面以外の部分は平坦に形成されている。より具体的には、起立部32Aの周囲の面は、半円柱の周囲の面の形状で形成されている。
【0059】
また、光ファイバケーブル支持具10Aにおいて、基部31A及び第一規制部33Aも、起立部32Aの形状に合わせて、それらの一部が、起立部32Aの周囲の平坦な面と面一となるように平坦に形成されている。
【0060】
ワイヤハーネス1に光ファイバケーブル支持具10Aが採用された場合も、光ファイバケーブル支持具10が採用された場合と同様の効果が得られる。但し、光ファイバケーブル支持具10Aは、光ファイバケーブル支持具10に比べ、光ファイバケーブル8の曲げ方向の自由度が小さい。しかしながら、光ファイバケーブル支持具10Aは、光ファイバケーブル支持具10よりも軽量化及び小型化できる点で優れている。
【0061】
<第3実施形態>
次に、図6を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係る光ファイバケーブル支持具10Bについて説明する。光ファイバケーブル支持具10Bは、図5に示された光ファイバケーブル支持具10Aと比較して、起立部の支持構造のみが異なる。図6において、図1から図5に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、光ファイバケーブル支持具10Bにおける光ファイバケーブル支持具10Aと異なる点についてのみ説明する。
【0062】
図6は、光ファイバケーブル支持具10Bの主要部の平面図である。なお、図6において、光ファイバケーブル8が、仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0063】
光ファイバケーブル支持具10Bのケーブル支持部3Bは、ベルト式固定部2とつながった基部31Bと、ベルト式固定部2に対して起立して形成された起立部32Bと、起立部32Bから張り出して形成された第一規制部33Bと、第二規制部34とを備える。
【0064】
また、基部31B、起立部32B及び第一規制部33Bの形状は、それぞれ光ファイバケーブル支持具10Aにおける基部31A、起立部32A及び第一規制部33Aの形状と同じである。
【0065】
しかしながら、光ファイバケーブル支持具10Bは、起立部32Bを回転可能に支持する回転支持部35を備える。回転支持部35は、基部31Bから起立して形成され、起立部32Bに形成された貫通孔に通された回転軸である。図6において、回転により向きが変わったときの起立部32Bが、仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0066】
ワイヤハーネス1に光ファイバケーブル支持具10Bが採用された場合も、光ファイバケーブル支持具10が採用された場合と同様の効果が得られる。また、光ファイバケーブル支持具10Bは、光ファイバケーブル支持具10Aと同様に、光ファイバケーブル支持具10よりも軽量化できる点で優れている。
【0067】
また、光ファイバケーブル支持具10Bにおいて、起立部32Bが回転可能に支持されているため、光ファイバケーブル支持具10Bが、ベルト式固定部2により電線束7に固定された状態で、起立部32Bの周囲の面における光ファイバケーブル8を沿わせるべき領域(湾曲面)の向きを変更できる。そのため、光ファイバケーブル支持具10Bに光ファイバケーブル8を支持させる作業が容易となる。
【0068】
さらに、1種類の光ファイバケーブル支持具10Bを、光ファイバケーブル8の曲げ方向が異なる様々なワイヤハーネスに兼用することが可能である。即ち、光ファイバケーブル支持具10Bが採用された場合、起立部32Bの湾曲面が一部の方向にしか形成されていないにも関わらず、光ファイバケーブル8の曲げ方向の自由度は損なわれない。
【0069】
<第4実施形態>
次に、図7及び図8を参照しつつ、本発明の第4実施形態に係る光ファイバケーブル支持具10C及びそれを備えたワイヤハーネス1Cについて説明する。光ファイバケーブル支持具10Cは、図1から図4に示された光ファイバケーブル支持具10と比較して、ケーブル支持部における起立部32及びそれに対応する第一規制部33並びに第二規制部34の数のみが異なる。図7及び図8において、図1から図4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、光ファイバケーブル支持具10Cにおける光ファイバケーブル支持具10と異なる点についてのみ説明する。
【0070】
図7は、光ファイバケーブル支持具10Cの主要部の平面図である。また、図8は、光ファイバケーブル支持具10Cを備えたワイヤハーネス1Cの平面図である。
【0071】
図7に示されるように、光ファイバケーブル支持具10Cのケーブル支持部3Cは、ベルト式固定部2とつながった基部31と、ベルト式固定部2に対して起立して形成された複数の起立部32と、起立部32各々から張り出して形成された第一規制部33と、複数の起立部32各々に対応する第二規制部34とを備える。従って、1つの光ファイバケーブル支持具10Cが、複数の光ファイバケーブル8の曲げ部を支持できる。図7に示される例では、ケーブル支持部3Cは、2つの起立部32を備えているが、3つ以上の起立部32が設けられることも考えられる。
【0072】
図8に示されるように、光ファイバケーブル支持具10Cが採用されたワイヤハーネス1Cにおいては、1つの光ファイバケーブル支持具10Cが、複数の光ファイバケーブル8を、電線束7における1つの部位においてそれぞれ異なる経路に沿って曲げられた状態で保持できる。
【0073】
従って、光ファイバケーブル支持具10Cは、複数の光ファイバケーブル8が、電線束7における1つの部位においてそれぞれ異なる経路に沿って曲げられた状態で保持される場合に、部品点数を少なくできる点で好適である。
【0074】
<第5実施形態>
次に、図9及び図10を参照しつつ、本発明の第5実施形態に係る光ファイバケーブル支持具10D及びそれを備えたワイヤハーネス1Dについて説明する。光ファイバケーブル支持具10Dは、図1から図4に示された光ファイバケーブル支持具10と比較して、ケーブル支持部における起立部の周囲の面の形状のみが異なる。図9及び図10において、図1から図4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、光ファイバケーブル支持具10Dにおける光ファイバケーブル支持具10と異なる点についてのみ説明する。
【0075】
図9は、光ファイバケーブル支持具10Dの主要部の平断面図である。また、図10は、光ファイバケーブル支持具10Dを備えたワイヤハーネス1Dの主要部の平断面図である。図9及び図10において斜線の網掛けが付された断面は、起立部の断面である。また、図9及び図10において、第一規制部33は仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0076】
図9に示されるように、光ファイバケーブル支持具10Dのケーブル支持部3Dは、ベルト式固定部2とつながった基部31と、ベルト式固定部2に対して起立して形成された起立部32Dと、起立部32Dから張り出して形成された第一規制部33と、第二規制部34とを備える。
【0077】
また、光ファイバケーブル支持具10Dの起立部32Dは、その周囲の面が、コルゲートチューブ81の外側表面の凹凸と噛み合う凹凸面で形成されている。ワイヤハーネス1Dにおいて、光ファイバケーブル8は、その周囲がコルゲートチューブ81で覆われた状態で、ケーブル支持部3Dの起立部32Dに引っ掛けられる。
【0078】
コルゲートチューブ81は、いわゆる蛇腹構造を有することによって長手方向における柔軟性を有する筒状の部材である。より具体的には、図10に示されるように、コルゲートチューブ81は、外周面に周方向に沿う複数の凹部811と凸部812とが長手方向において交互に並んで形成された構造を有する。コルゲートチューブ81は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの合成樹脂からなる一体成形部材である。
【0079】
図10に示されるように、コルゲートチューブ81で覆われた光ファイバケーブル8が起立部32Dに引っ掛けられた状態において、起立部32Dの周囲の面における凹み部321は、光ファイバケーブル8を保護するコルゲートチューブ81の外側表面の凸部812が嵌り込む。また、起立部32Dの周囲の面における突出部322は、光ファイバケーブル8を保護するコルゲートチューブ81の外側表面の凹部811に嵌り込む。
【0080】
光ファイバケーブル8の周囲がコルゲートチューブ81で覆われている場合に、光ファイバケーブル支持具10Dが採用されることにより、起立部32Dに対するコルゲートチューブ81の位置ずれが防止される。光ファイバケーブル支持具10Dは、光ファイバケーブル8が、コルゲートチューブ81で覆われている場合に好適である。
【0081】
<その他>
以上に示された各実施形態におけるケーブル支持部の構造が組み合わされることも考えられる。例えば、図7に示される光ファイバケーブル支持具10Cにおいて、複数組の起立部32及び第一規制部33のセットの代わりに、複数組の起立部32A及び第一規制部33Aのセット、複数組の起立部32B、第一規制部33B及び回転支持部35のセット、又は複数組の起立部32D、第一規制部33及び第一規制部34のセットが採用されることが考えられる。また、図6に示される光ファイバケーブル支持具10Cにおいて、起立部32Bの代わりに、図9及び図10に示される起立部32Dが採用されることも考えられる。
【0082】
また、起立部32,32A,33Bにおける湾曲面の断面形状は、円もしくは円弧の他、楕円又は多角形の角部が面取りされた形状など、他の形状であることも考えられる。
【符号の説明】
【0083】
1,1C,1D ワイヤハーネス
2 ベルト式固定部
3,3A,3B,3C,3D ケーブル支持部
5 粘着テープ
6 コネクタ
7 電線束
8 光ファイバケーブル
9 電線
10,10A,10B,10C,10D 光ファイバケーブル支持具
21 ベルト
22 ベルト保持部
31,31A,31B ケーブル支持部の基部
32,32A,32B,32D ケーブル支持部の起立部
33,33A,33B 第一規制部
34 第二規制部
35 回転支持部
71 幹線の電線束
72 支線の電線束
81 コルゲートチューブ
211 ベルトの凹み部
221 ベルト保持部の貫通孔
222 ベルト保持部の突起部
321 起立部の凹み部
322 起立部の突出部
811 コルゲートチューブの凹部
812 コルゲートチューブの凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線とともに束ねられる光ファイバケーブルを曲がった状態で支持する光ファイバケーブル支持具であって、
ベルト及び前記電線に巻かれた前記ベルトを環状に保持する機構を有するベルト式固定部と、
前記ベルト式固定部と連結されるとともに前記ベルト式固定部に対して起立して形成された起立部を有し、該起立部に引っ掛けられた前記光ファイバケーブルを前記起立部の周囲に沿って湾曲した状態で支持するケーブル支持部と、を備えることを特徴とする光ファイバケーブル支持具。
【請求項2】
前記起立部を回転可能に支持する回転支持部をさらに備える、請求項1に記載の光ファイバケーブル支持具。
【請求項3】
前記起立部の周囲の面が外側に膨らんだ湾曲面を含む、請求項1又は請求項2に記載の光ファイバケーブル支持具。
【請求項4】
前記起立部の周囲の面全体が外側に膨らんだ環状の湾曲面である、請求項3に記載の光ファイバケーブル支持具。
【請求項5】
前記起立部の周囲の面がコルゲートチューブの外側表面の凹凸と噛み合う凹凸面を含む、請求項1又は請求項2に記載の光ファイバケーブル支持具。
【請求項6】
前記ケーブル支持部は複数の前記起立部を備える、請求項1から請求項5のいずれかに記載の光ファイバケーブル支持具。
【請求項7】
前記ケーブル支持部は、前記起立部から張り出して形成され前記起立部の先端側への前記光ファイバケーブルの位置ずれを制限する第一規制部をさらに備える、請求項1から請求項6のいずれかに記載の光ファイバケーブル支持具。
【請求項8】
前記ケーブル支持部は、前記起立部の周囲の面に対して前記光ファイバケーブルを挟んで対向する可撓性を有する部分であり、前記起立部の周囲の面から離れる方向への前記光ファイバケーブルの位置ずれを制限する第二規制部をさらに備える、請求項1から請求項7のいずれかに記載の光ファイバケーブル支持具。
【請求項9】
電線と、該電線とともに束ねられた光ファイバケーブルと、該光ファイバケーブルを曲がった状態で支持する光ファイバケーブル支持具とを備えるワイヤハーネスであって、
前記光ファイバケーブル支持具は、
前記電線に巻かれたベルト及び該ベルトを環状に保持する機構を有するベルト式固定部と、
前記ベルト式固定部と連結されるとともに前記ベルト式固定部に対して起立して形成された起立部を有し、該起立部に引っ掛けられた前記光ファイバケーブルを前記起立部の周囲に沿って湾曲した状態で支持するケーブル支持部と、を備えることを特徴とするワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−223013(P2012−223013A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88252(P2011−88252)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】