光ファイバケーブル
【課題】 製造コストを低く抑えるとともに敷設時等の作業性を向上することができる光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】 本発明の光ファイバケーブル1は、断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝4が形成されたスロット3と、複数本の光ファイバ素線12が互いに平行に配置された状態で、連結樹脂被覆層11によって一体に被覆されてなり、溝4内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線10と、スロット3の周囲を覆うように設けられた押さえ巻き7と、押さえ巻き7の外側に被覆された外被層8とを備え、1つの溝4内に積層されたテープ型光ファイバ心線10の枚数をn、テープ型光ファイバ心線10の厚さをTt、溝4の深さをDs、溝4の幅をWs、スロット3の外径をDとしたときの、溝4の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たしている。
【解決手段】 本発明の光ファイバケーブル1は、断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝4が形成されたスロット3と、複数本の光ファイバ素線12が互いに平行に配置された状態で、連結樹脂被覆層11によって一体に被覆されてなり、溝4内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線10と、スロット3の周囲を覆うように設けられた押さえ巻き7と、押さえ巻き7の外側に被覆された外被層8とを備え、1つの溝4内に積層されたテープ型光ファイバ心線10の枚数をn、テープ型光ファイバ心線10の厚さをTt、溝4の深さをDs、溝4の幅をWs、スロット3の外径をDとしたときの、溝4の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たしている。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ファイバケーブルに関し、さらに詳しくは、螺旋状の溝が形成されたスロットと、溝内に積層された複数のテープ型光ファイバ心線と、スロットの周囲を覆う押さえ巻きと、押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備えた光ファイバケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、光通信システムの需要が増加するにつれ、光伝送路である光ファイバケーブルを管路や屋外ラックに敷設することが多くなっている。一般に、管路や屋外ラック等の通信用基幹ルートに敷設される光ファイバケーブルには、図12に示すようなテープスロット型の光ファイバケーブルが広く用いられている。
【0003】図12に示すように、従来のテープスロット型の光ファイバケーブル50は、中心にテンションメンバ51を有するスロット52の溝53に、複数のテープ型光ファイバ心線60が収納されている。この光ファイバケーブル50は100心型の光ケーブルであり、5つの溝53のそれぞれに、4心のテープ型光ファイバ心線60が5枚づつ積層されている。また、5つの溝53は、長尺方向に沿って互いに平行な状態で、一方向の螺旋状に形成されている。また、テープ型光ファイバ心線60が溝53から外れるのを防ぐために、スロット52の周囲には押さえ巻き54が巻かれている。さらに、押さえ巻き54の外側にはプラスチック製の外被層55が被覆されている。
【0004】テンションメンバ51は、光ファイバケーブル50に張力が付加された場合に、その張力がテープ型光ファイバ心線60に直接伝わらないようにするために設けられた抗張力体であり、例えば直径1.8mmの鋼線が用いられている。また、例えばスロット52の外径は8mmであり、溝53のピッチは500mmである。
【0005】テープ型光ファイバ心線60は、高密度化を図るために通常より薄型のものが用いられている。その外形は、例えば厚さが0.32mm、幅が1.1mmである。1つの溝53内に収納された5枚のテープ型光ファイバ心線60は、互いに厚さ方向に密着した状態で積層されており、最も内側に収納されたテープ型光ファイバ心線60が溝53の底面に接触している。一方、最も外側に収納されたテープ型光ファイバ心線60は、押さえ巻き54に接触しないように溝53の開口端から所望の間隔を有する位置に配置されている。すなわち、溝53の深さは、5枚のテープ型光ファイバ心線60が積層された高さに比べて所望の長さだけ大きくなるように形成されている。例えば、最も外側に収納されたテープ型光ファイバ心線60と押さえ巻き54との間には、テープ型光ファイバ心線60が少なくとも1枚分収容可能な間隔が設けられている。
【0006】このように構成された光ファイバケーブル50は、例えば外径が12mm、重量が114kg/kmである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記の光ファイバケーブル50は、螺旋状の溝が形成されたスロットを用いていることから、その製造に際して製造コストを抑えにくいという状況にある。また、光ファイバケーブル50をボビンに巻き取る場合や管路等に敷設する場合に、径の太さや重量によって良好な作業性が得にくいという実情があった。
【0008】本発明の目的は、製造コストを低く抑えるとともに敷設時等の作業性を向上することができる光ファイバケーブルを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、1つの溝内に積層されたテープ型光ファイバ心線の枚数をn、テープ型光ファイバ心線の厚さをTt、溝の深さをDs、溝の幅をWs、スロットの外径をDとしたときの、溝の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たしている。
【0010】このような構成の光ファイバケーブルによれば、スロットの溝の深さが従来と比べて浅くなる。これにより、スロットの直径を小さくすることができ、光ファイバケーブルを細径化することができる。したがって、光ファイバケーブルの製造コストを低く抑えることが可能になる。また、光ファイバケーブルを軽量化することができるため、この光ファイバケーブルを管路内に敷設するとき等に良好な作業性を得ることができる。さらに、光ファイバケーブルが直線状態にあっても、溝内に積層されたテープ型光ファイバ心線と押さえ巻きとが接触しやすくなる。よって、テープ型光ファイバ心線の摩擦抵抗が増大して、溝内におけるテープ型光ファイバ心線の移動を防止することができる。
【0011】また、上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、スロットの外径をDとしたときの、溝の螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦Pの関係式を満たしている。
【0012】このような構成の光ファイバケーブルによれば、溝の螺旋ピッチが従来に比べて長くなる。そのため、スロットを押出し成形する際や、溝内にテープ型光ファイバ心線を収納する際の線速を速くすることができる。したがって、光ファイバケーブルの製造コストを低く抑えることができる。また、溝の螺旋ピッチが長くなると、スロットの軸線方向における溝の傾斜角度が小さくなるので、スロットの各溝同士の間に設けられている肉厚を、傾斜角度が大きい場合よりも薄くすることが可能になり、スロットの細径化を図ることができる。したがって、光ファイバケーブルを敷設する時等の作業性を向上させることができる。
【0013】また、上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、樹脂により形成されたテープ型光ファイバ心線の積層方向における被覆の厚さが、5〜25μmである。
【0014】このような構成の光ファイバケーブルによれば、テープ型光ファイバ心線の厚さが従来に比べて薄くなるので、スロットの溝の深さを浅くすることができる。これにより、スロットの直径を小さくすることができ、光ファイバケーブルを細径化することができる。したがって、光ファイバケーブルの製造コストを低く抑えることが可能になる。また、スロットの重量とテープ型光ファイバ心線の重量とをそれぞれ軽量化することができるので、敷設時等の作業性を向上させることができる。
【0015】また、上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、1つの溝内に積層されたテープ型光ファイバ心線の枚数をn、テープ型光ファイバ心線の厚さをTt、溝の深さをDs、溝の幅をWs、スロットの外径をDとしたときの、溝の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たし、かつ、溝の螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦Pの関係式を満たしている。
【0016】また、上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、1つの溝内に積層されたテープ型光ファイバ心線の枚数をn、テープ型光ファイバ心線の厚さをTt、溝の深さをDs、溝の幅をWs、スロットの外径をDとしたときの、溝の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たし、かつ、樹脂により形成されたテープ型光ファイバ心線の積層方向における被覆の厚さが、5〜25μmである。
【0017】また、上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、スロットの外径をDとしたときの、溝の螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦Pの関係式を満たし、かつ、樹脂により形成されたテープ型光ファイバ心線の積層方向における被覆の厚さが、5〜25μmである。
【0018】また、上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、1つの溝内に積層されたテープ型光ファイバ心線の枚数をn、テープ型光ファイバ心線の厚さをTt、溝の深さをDs、溝の幅をWs、スロットの外径をDとしたときの、溝の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たし、かつ、溝の螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦Pの関係式を満たし、さらに、樹脂により形成された前記テープ型光ファイバ心線の積層方向における被覆の厚さが、5〜25μmである。
【0019】また、テープ型光ファイバ心線の幅をWtとしたときの、溝の断面形状は、Wt+0.05≦Wsの関係式を満たしていることが望ましい。
【0020】また、光ファイバ素線は、波長1.55μmにおけるピーターマン−I(Petermann−I)の定義によるモードフィールド径が8μm以下であり、ケーブルカットオフ波長が1.26μm以下であり、かつ、ワイヤメッシュボビン法により測定した波長1.55μmにおけるマイクロベンド損失が0.1dB/km以下であることが望ましい。
【0021】また、光ファイバ素線は、波長1.55μmにおけるピーターマン−I(Petermann−I)の定義によるモードフィールド径が8μm以下であり、ケーブルカットオフ波長が1.26μm以下であり、かつ、プルーフレベルが1.5%以上の引張強度試験を経た光ファイバ素線であることが望ましい。
【0022】また、光ファイバ素線は、波長1.55μmにおけるピーターマン−I(Petermann−I)の定義によるモードフィールド径が8μm以下であり、ケーブルカットオフ波長が1.26μm以下であり、かつ、ワイヤメッシュボビン法により測定した波長1.55μmにおけるマイクロベンド損失が0.1dB/km以下であり、さらに、プルーフレベルが1.5%以上の引張強度試験を経た光ファイバ素線であることが望ましい。
【0023】また、光ファイバ素線は、曲げ直径20mmφでの波長1.55μmにおける曲げ損失が0.1dB/m以下であることが望ましい。
【0024】また、光ファイバ素線は、疲労係数nが50以上であることが望ましい。
【0025】また、光ファイバ素線は、クラッド領域の外周に遮水性を有する被覆膜が設けられていることが望ましい。被覆膜の材料は、チタンや炭素を用いることが可能である。
【0026】また、光ファイバ素線は、プルーフレベルが2.0%以上の引張強度試験を経た光ファイバ素線であることが望ましい。
【0027】また、光ファイバ素線は、クラッド領域の外径が60〜100μmであることが望ましい。
【0028】また、光ファイバ素線は、クラッド領域の周囲に設けられた被覆層の厚さが37.5μm以下であることが望ましい。
【0029】また、光ファイバ素線は、クラッド領域の周囲に設けられた着色層以外の被覆層が内層と外層とからなる2層に形成されており、内層のヤング率が2MPa以下であり、外層のヤング率が98MPa以上であることが望ましい。
【0030】また、光ファイバ素線は、クラッド領域の周囲に設けられた着色層以外の被覆層が1層に形成されており、被覆層のヤング率が98MPa以上であることが望ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る光ファイバケーブルの実施の形態を図1〜図6に基づいて説明する。図1は、本実施形態の光ファイバケーブルを示す断面図である。図2は、図1におけるスロットを示す斜視図、図3は、図2に示すスロットの側面図である。また、図4R>4は、図1における溝の最小高さを示す要部断面図、図5R>5は、図1における溝の最大高さを示す要部断面図である。図6は、図1におけるテープ型光ファイバ心線の断面図、図7は、図6における光ファイバ素線の断面図及び屈折率分布を示す図である。
【0032】図1に示すように、本実施形態の光ファイバケーブル1は、ケーブルコアとして一方向撚りの溝を有するスロット3を用いた一方向撚りテープスロット型光ファイバケーブルである。スロット3は、中心部にテンションメンバ2を備えており、外周部分には、5つの溝4がそれぞれ螺旋状に形成されている(図2参照)。各溝4には、4心のテープ型光ファイバ心線10が5枚づつ積層されて収納されている。したがって、光ファイバケーブル1は100心型のケーブルである。1つの溝4内に収納された5枚のテープ型光ファイバ心線10は、互いに厚さ方向に密着した状態で積層されており、最も内側に収納されたテープ型光ファイバ心線10が溝4の底面に接触している。また、テープ型光ファイバ心線10が溝4から外れるのを防ぐために、スロット3の周囲には押さえ巻き7が巻かれている。さらに、押さえ巻き7の外側にはプラスチック製の外被層8が被覆されている。
【0033】図2及び図3に示すように、スロット3の外周部分は、5つの溝4が長尺方向に沿って互いに平行な状態で、軸線に対して一定の傾斜角度θを有する螺旋状に形成されている。ここで、スロット3の外径をDとすると、溝4の螺旋ピッチPは、P=π・D/tanθ ・・・(1)
によって求められる。本実施形態の螺旋ピッチPは、傾斜角度θが2°より小さくなるように形成されている。すなわち、上記式(1)により求められる螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦P ・・・(2)
の関係式を満たしている。この式(2)によって規定される螺旋ピッチPは、従来の溝における螺旋ピッチに比べて長くなる。例えば、スロット3の外径Dは6.6mmであり、溝4の螺旋ピッチPは1000mmである。
【0034】このように、従来の溝より傾斜角度θを小さくして螺旋ピッチPを長くすることにより、スロット3を押し出し成形する際や、溝4内にテープ型光ファイバ心線10を集合させて収納する際の線速を速くすることができる。また、傾斜角度θが小さいと、スロット3を押し出し成形する際に溝4に付加される円周方向の応力が小さくなるので、スロット3の形状が歪んでしまうことを防止できる。このため、スロット3の各溝4同士の間に設けられている肉厚を、傾斜角度θが大きい場合よりも薄くすることが可能になり、スロット3の細径化を図ることができる。さらに、テープ型光ファイバ心線10を溝4内に集合させる際に、溝4との接触によりテープ型光ファイバ心線10に付加される断面方向の応力が小さくなるため、テープ型光ファイバ心線10の外傷を防ぐことができる。
【0035】図4及び図5に示すように、溝4の断面形状は、概ね溝の深さDs(mm)と溝の幅Ws(mm)とによって表される。ここで、1つの溝4内に積層されたテープ型光ファイバ心線10の枚数をn、テープ型光ファイバ心線10の厚さをTt(mm)、スロットの外径をD(mm)としたとき、溝の深さDsは、 n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}] ・・・(3)
の関係式を満たすように設定されている。
【0036】上記式(3)により設定された溝の深さDsが最小であるときの状態を、図4に示す。このとき、溝の深さDsは、積層されたテープ型光ファイバ心線10の高さn・Ttと一致しており、押さえ巻き7と、最も外側に収納されたテープ型光ファイバ心線10とが、広範囲で接触した状態となっている。本実施形態では、溝4の深さDs及びテープ型光ファイバ心線10の高さn・Ttは、ともに1.3mmである。
【0037】また、上記式(3)により設定された溝の深さDsが最大であるときの状態を、図5に示す。このとき、溝の深さDsは、積層されたテープ型光ファイバ心線10の高さn・Ttより(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}](以下Aと表す)だけ深くなっている。なお、この深さAは、押さえ巻き7が溝4内に弛む深さを表した値であり、スロット3の外周線上の円弧3aに対する溝4の開口端4aまでの間隔と一致した値である。そして、押さえ巻き7が溝4内に若干弛んだ状態で、押さえ巻き7と最も外側に収納されたテープ型光ファイバ心線10とが接触した状態となっている。
【0038】また、図4及び図5において、テープ型光ファイバ心線10の幅をWt(mm)としたとき、溝の幅Wsは、Wt+0.05≦Ws ・・・(4)
の関係式を満たすように設定されている。好ましくは、溝4内に収納されたテープ型光ファイバ心線10の幅方向の両側に、0.025mm以上の間隙が設けられていると良い。本実施形態では、テープ型光ファイバ心線10の幅Wtは1.1mm、溝4の幅Wsは1.2mmである。
【0039】溝4の断面形状を上記のように設定することにより、光ファイバケーブル1が直線状態にあっても、溝4内に積層されたテープ型光ファイバ心線10と押さえ巻き7とが常時接触した状態となる。したがって、テープ型光ファイバ心線10と押さえ巻き7との間に摩擦抵抗が発生して、テープ型光ファイバ心線10が溝4内において移動することを防止することができる。また、溝4の深さが従来と比べて浅くなるため、スロット3の直径を小さくして、光ファイバケーブル1を細径化することができる。
【0040】溝4内に収納されているテープ型光ファイバ心線10について、図6を参照して説明する。テープ型光ファイバ心線10は、ガラス体の光ファイバを紫外線硬化樹脂によって被覆した4本の光ファイバ素線12を横一列に接触して配置し、その全体を連結樹脂被覆層11によって被覆してテープ状に形成したものである。通常、連結樹脂被覆層11には、ウレタンアクリレート系の紫外線硬化樹脂が用いられている。この連結樹脂被覆層11により形成されたテープ型光ファイバ心線10の積層方向における被覆の厚さdは、5〜25μmに設定されている。なお、ここでいう被覆の厚さdは、テープ型光ファイバ心線10の厚さTtから光ファイバ素線12の外径を除いた長さの半分の値である。また、テープ型光ファイバ心線10の外形は、厚さTtが0.26mm、幅Wtが1.1mmである。このように、従来に比べて厚さWtが薄いテープ型光ファイバ心線10を用いることにより、溝4の深さを浅くすることができる。また、溝4の深さを浅くする代わりに、多数枚のテープ型光ファイバ心線10を溝4内に積層させて収納させることも可能である。
【0041】上述したように、本実施形態の光ファイバケーブル1は、従来に比べて細径化及び軽量化を図ることができる。例えば光ファイバケーブル1の外径は10.6mm、重量は92kg/kmである。また、スロット3を細径化することによってスロット3の作製に用いられる樹脂の量が少なくなり、光ファイバケーブル1の製造コストを低く抑えることができる。さらに、光ファイバケーブル1を細径化及び軽量化することに伴い、光ファイバケーブル1を管路内に敷設するとき等に良好な作業性を得ることができる。
【0042】次に、光ファイバケーブル1のテープ型光ファイバ心線10に用いられる光ファイバ素線12について、図7を用いて説明する。図7(a)は、光軸に垂直な面で光ファイバ素線12を切断したときの断面図を示し、図7(b)は、光ファイバ素線12の屈折率プロファイルを示す。この光ファイバ素線12は、光軸中心を含む外径d13のコア領域13と、このコア領域13を取り囲む外径d14のクラッド領域14と、このクラッド領域14を取り囲むカーボン層15と、このカーボン層15を取り囲む外径d16の被覆層16とを備えて構成されている。また、被覆層16の周囲には着色層が被覆されていても良い。
【0043】コア領域13及びクラッド領域14は、石英ガラス(SiO2)をホスト材料とするものである。コア領域13及びクラッド領域14の双方または何れか一方には、屈折率調節用の添加物が含有されている。そして、コア領域13の屈折率n1は、クラッド領域14の屈折率n2より高くなっている。好適には、コア領域13は実質的に単峰状の屈折率分布を有して、クラッド領域14は実質的に一定屈折率である。この場合には、屈折率プロファイルが簡易であるので光ファイバ素線12の製造が容易である。
【0044】なお、「実質的に単峰状」のコア領域13の屈折率分布とは、図7(b)に示されるような理想的なステップ形状を含む他、コア中央部に向けて屈折率が高くなる形状、略ステップ形状であるが周辺近傍で屈折率が僅かに高くなっている形状、略ステップ形状であるが周辺近傍で屈折率が漸減している形状、等を含む。
【0045】好適には、例えば、コア領域13は酸化ゲルマニウム(GeO2)が添加された石英ガラスであり、クラッド領域14はフッ素(F)が添加された石英ガラスである。あるいは、コア領域13はGeO2が添加された石英ガラスであり、クラッド領域14は実質的に純石英ガラスである。コア領域13には他の屈折率上昇剤が含有されていても良いし、クラッド領域14には他の屈折率降下剤が含有されていても良い。このような屈折率調節用の添加物が含有されていることにより、光ファイバ素線12は所望の屈折率プロファイルを得ることができる。
【0046】カーボン層15は、クラッド領域14の周囲にコーティングされたアモルファスカーボンの被覆膜であり、その厚さは0.04μm程度である。このコーティング方法としては、線引きされたガラス体の光ファイバ表面に原料ガスを化学反応させて、アモルファスカーボンを析出させるCVD法が、成膜速度及び膜質の点で有利であることが知られている。このようにしてガラス体の周囲にカーボン層がコーティングされた光ファイバは、カーボンコートファイバ(CCF)と呼ばれ、高い遮水性を有している。したがって、クラッド領域14やコア領域13に外部から水が浸入することを防ぐことができ、光ファイバ素線12の光伝送特性を高いレベルで保証することができる。また、CCFは疲労係数nが100以上、場合によっては200以上となるため、曲げなどの応力付加に対して破断寿命の低下を防止することができる。また、このカーボン層15を用いる代わりに、チタンの被覆膜を用いることも可能である。その場合、高い遮水性が得られるとともに、疲労係数nを50以上とすることができる。
【0047】一般には、光ファイバ素線12のクラッド領域14の外径d14は125μmであり、被覆層16の外径d16は250μmである。しかし、好適には、クラッド領域14の外径d14は60〜100μmである。この場合には、この光ファイバ素線12は、小径に曲げられたときに、曲げ歪みによる破断の確率が小さくなり、長期信頼性が向上する。また、好適には、被覆層16の厚さは37.5μm以下である。この場合には、テープ型光ファイバ心線10の外形を小さくすることができるため、光ファイバケーブル1を細径化することができ、あるいは、収納される光ファイバ素線12の本数を増やすことができる。
【0048】また、被覆層16は、内層16aと外層16bとからなる2層に形成されていても良い。その場合、内層16aのヤング率が2MPa以下であり、外層16bのヤング率が98MPa以上であることが望ましい。このような構成により、内層16aが側圧に対する緩衝層となって光ファイバ素線12はマイクロベンドが発生しにくくなるため、高い光伝送特性を保つことができる。
【0049】また、被覆層16が1層である場合、そのヤング率が98MPa以上であることが望ましい。このような構成により、被覆層として用いる樹脂を2種類用意する必要がない。このため、資材管理が容易になり、製造コストを低く抑えることができる。さらに、樹脂を被覆する設備も単純な構造とすることができるため、設備費の面においても製造コストを下げることができる。また、光ファイバ素線12をボビン等に巻きつけた際の被覆層16の変形を小さくすることができ、光ファイバ素線12同士の摩擦抵抗が小さくなる。そのため、ボビンから繰り出す際に光ファイバ素線12同士が絡まってしまうことを防止できる。
【0050】また、この光ファイバ素線12は、波長1.55μmにおけるPetermann−Iの定義によるモードフィールド径(MFD:Mode Field Diameter)が8μm以下である。ここで、Petermann−Iの定義によるモードフィールド径は、
【0051】
【数1】
【0052】なる式で定義される。この式(5)中にある変数rは、光ファイバ素線12の光軸からの径方向の距離である。φ(r)は、径方向の光の電界分布であり、光の波長により異なる。モードフィールド径を小さくすると、マイクロベンド損失や曲げ損失(マクロベンド損失)を小さくすることができる。したがって、例えば光ファイバケーブル1の溝4の螺旋ピッチPを長くした場合等に、光ファイバ素線12に歪が発生しやすい状態となっても、光ファイバ素線12の伝送損失の増加を抑えることができる。
【0053】また、光ファイバ素線12は、波長1.3μmにおけるPetermann−Iの定義によるモードフィールド径が6μm以上であるのが好適である。この場合は、光ファイバ素線12は、波長1.3μm帯に零分散波長を有する標準的なシングルモード光ファイバと融着接続したときに、接続損失が小さい。また、このような光ファイバ素線12同士を融着接続したときにも、軸ずれによる接続損失が小さい。
【0054】また、この光ファイバ素線12のケーブルカットオフ波長は1.26μm以下である。ケーブルカットオフ波長は、22m長でのLP11モードのカットオフ波長であり、2mカットオフ波長より小さい値である。
【0055】また、光ファイバ素線12は、ワイヤメッシュボビン法により測定した波長1.55μmにおけるマイクロベンド損失が0.1dB/km以下である。ワイヤメッシュボビン法は、例えば、胴径約400mmのボビンの胴面全体に、外径50μmの針金をピッチ150μmで格子状に編んだ金網を貼り付け、その外周に、光ファイバ素線を張力約0.8Nで1層だけ巻きつけたときの伝送損失の増加量を測定するものである。これにより、光ファイバケーブル1の敷設環境により光ファイバ素線12にマイクロベンドが発生しやすい状態であっても、伝送損失の増加を抑えることができる。また、スロット3の溝4内で、溝4の内壁や押さえ巻き7がテープ型光ファイバ心線10に接触した状態であっても、伝送損失が増加することを防止できる。
【0056】また、光ファイバ素線12として、プルーフレベルが1.5%以上の引張強度試験を経た光ファイバ素線を用いることが好ましい。ここでいうプルーフとは、製品化する光ファイバ素線の強度の保証であり、線引きした光ファイバ素線をボビン等に巻き取る手前で、その走行ラインに張力印加区間を設けることで引張強度試験を行うものである。すなわち、張力印加区間に印加する張力を任意の値に設定することにより、光ファイバ素線の伸び率(%)をプルーフレベルとして設定することができる。これにより、所望のプルーフレベルに満たない低強度の光ファイバ素線を破断させて、破断しない部分のみをボビン等に巻き取って製品とすることができる。
【0057】また、光ファイバ素線の破断強度は、破断強度(N)と累積破断確率(%)を変数とするワイブル分布(図示せず)によって表すことが可能である。1.5%のプルーフレベルを満たす光ファイバ素線は、50Nの張力が付加された場合でも累積破断確率が極めて低い。光ファイバケーブルの通常の敷設環境において、光ファイバ素線12に付加される張力は50N以下であることが推定されるので、1.5%以上のプルーフレベルを規定した引張強度試験を行うことによって、敷設環境による光ファイバ素線12の機械的強度の低下を防止することができる。したがって、光ファイバケーブル1の引張強度を必要以上に強化する必要がない。例えば、テンションメンバ2として、従来に比べて細径である直径1.2mmの鋼線を用いることができる。
【0058】なお、光ファイバ素線12は、プルーフレベルが2.0%以上の引張強度試験を経た光ファイバ素線を用いることがより好ましい。さらに、このプルーフレベルを3.0%以上、4.0%以上とすると、非常に良好な機械的強度を有する光ファイバ素線12を光ファイバケーブル1に用いることができる。
【0059】また、光ファイバ素線12は、曲げ直径20mmφでの波長1.55μmにおける曲げ損失(マクロベンド損失)が0.1dB/m以下である。したがって、光ファイバケーブル1を管路内等に敷設したときに、光ファイバ素線12の伝送損失の増加量が低減でき、充分実用可能な伝送特性を得ることができる。さらに、光ファイバ素線12は、曲げ直径15mmφでの波長1.55μmにおける曲げ損失が0.1dB/m以下であることが望ましい。また、光ファイバ素線12は、曲げ直径10mmφでの波長1.55μmにおける曲げ損失が0.1dB/m以下であるとなお良い。このように、光ファイバ素線12の曲げ損失特性が良好であれば、光ファイバケーブル1の敷設環境により光ファイバ素線12が小さい曲げ直径で曲がった状態でも曲げ損失を生じにくい。したがって、伝送損失の増加を防止して、光ファイバ素線12の品質を高いレベルで保証することができる。
【0060】上述したように、本実施形態の光ファイバケーブル1に用いられる光ファイバ素線12は、側圧や曲げ、引っ張り等が付加された場合においても良好な光伝送特性を発揮することができる。そのため、光ファイバケーブル1は、スロット3の構造上の特徴によって細径化や軽量化、作業性の向上を図るだけでなく、光ファイバ素線12の特性によって信頼性の高い高品質の光伝送路を効果的に得ることができる。
【0061】なお、本発明に係る光ファイバケーブルは、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、200心型、400心型、1000心型等の高密度実装型の光ファイバケーブルとすることが可能である。
【0062】図8に示すように、上記実施形態の第1変形例である光ファイバケーブル20は、200心型の光ファイバケーブルである。この光ファイバケーブル20は、中心にテンションメンバ21を有するスロット22の10本の溝23に、それぞれ5枚のテープ型光ファイバ心線10が積層されて収納されている。溝23は、上記の溝4(図4参照)と同様の形態をなしている。また、テープ型光ファイバ心線10は、上記の光ファイバケーブル1に用いられるテープ型光ファイバ心線10と同等の構成及び特性である。
【0063】また、4心のテープ型光ファイバ心線10より多心のテープ型光ファイバ心線を用いることもできる。例えば、8心、12心、24心、36心等のテープ型光ファイバ心線を用いることが可能である。図9に示すように、8心のテープ型光ファイバ心線10aは、上述した光ファイバ素線12を8本平行に配置して、連結樹脂被覆層11aにより一体に被覆されたものである。このテープ型光ファイバ心線10aは、上記テープ型光ファイバ心線10と同様、被覆の厚さdが5〜25μmに設定されている。また、テープ型光ファイバ心線10aの外径は、例えば厚さが0.26mm、幅Wtが2.2mmである。
【0064】図10に示すように、8心の上記テープ型光ファイバ心線10aを用いた400心型の光ファイバケーブル30は、中心にテンションメンバ31を有するスロット32の5本の溝33に、それぞれ10枚のテープ型光ファイバ心線10aが積層されて収納されている。溝33は、上記式(2),(3),(4)を満たすように形成されている。
【0065】また、図11に示すように、8心の上記テープ型光ファイバ心線10aを用いた1000心型の光ファイバケーブル40は、中心にテンションメンバ41を有するスロット42の12本の溝43に、それぞれ10枚のテープ型光ファイバ心線10aが積層されて収納されている。さらに、スロット42は、溝43のほぼ半分の深さを有する1本の溝43aが形成されており、この溝43a内には5枚のテープ型光ファイバ心線10aが積層されて収納されている。溝43,43aは、それぞれ上記式(2),(3),(4)を満たすように形成されている。
【0066】上述した各光ファイバケーブル20,30,40は、上記光ファイバケーブル10と同様、もしくはそれ以上に、細径化及び軽量化を図って製造コストを抑えることができる。また、敷設時等の作業性を向上させることも可能である。
【0067】
【発明の効果】以上説明したように本発明の光ファイバケーブルによれば、溝の形状を規定してスロットを細径化することや、溝のピッチを規定して光ファイバケーブルの軽量化を図ること等により、製造コストを低く抑えるとともに敷設時等の作業性を向上することができる。また、スロットの溝内に収納するテープ型光ファイバ心線の厚さを薄くすることにより、光ファイバケーブルを細径化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光ファイバケーブルの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1におけるスロットを示す斜視図である。
【図3】図2に示すスロットの側面図である。
【図4】図1における溝の最小高さを示す要部断面図である。
【図5】図1における溝の最大高さを示す要部断面図である。
【図6】図1におけるテープ型光ファイバ心線の断面図である。
【図7】図6における光ファイバ素線の断面図及び屈折率分布を示す図である。
【図8】図1に示す光ファイバケーブルの第1変形例を示す断面図である。
【図9】図6に示すテープ型光ファイバ心線の変形例を示す断面図である。
【図10】図1に示す光ファイバケーブルの第2変形例を示す断面図である。
【図11】図1に示す光ファイバケーブルの第3変形例を示す断面図である。
【図12】従来の光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 光ファイバケーブル
2 テンションメンバ
3 スロット
4 溝
7 押さえ巻き
8 外被層
10 テープ型光ファイバ心線
11 連結樹脂被覆層(樹脂)
12 光ファイバ素線
13 コア領域
14 クラッド領域
15 カーボン層(被覆膜)
16 被覆層
D スロットの外径
Ds 溝の深さ
n テープ型光ファイバ心線の積層枚数
P 溝の螺旋ピッチ
Tt テープ型光ファイバ心線の厚さ
Ws 溝の幅
Wt テープ型光ファイバ心線の幅
θ 溝の傾斜角度
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ファイバケーブルに関し、さらに詳しくは、螺旋状の溝が形成されたスロットと、溝内に積層された複数のテープ型光ファイバ心線と、スロットの周囲を覆う押さえ巻きと、押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備えた光ファイバケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、光通信システムの需要が増加するにつれ、光伝送路である光ファイバケーブルを管路や屋外ラックに敷設することが多くなっている。一般に、管路や屋外ラック等の通信用基幹ルートに敷設される光ファイバケーブルには、図12に示すようなテープスロット型の光ファイバケーブルが広く用いられている。
【0003】図12に示すように、従来のテープスロット型の光ファイバケーブル50は、中心にテンションメンバ51を有するスロット52の溝53に、複数のテープ型光ファイバ心線60が収納されている。この光ファイバケーブル50は100心型の光ケーブルであり、5つの溝53のそれぞれに、4心のテープ型光ファイバ心線60が5枚づつ積層されている。また、5つの溝53は、長尺方向に沿って互いに平行な状態で、一方向の螺旋状に形成されている。また、テープ型光ファイバ心線60が溝53から外れるのを防ぐために、スロット52の周囲には押さえ巻き54が巻かれている。さらに、押さえ巻き54の外側にはプラスチック製の外被層55が被覆されている。
【0004】テンションメンバ51は、光ファイバケーブル50に張力が付加された場合に、その張力がテープ型光ファイバ心線60に直接伝わらないようにするために設けられた抗張力体であり、例えば直径1.8mmの鋼線が用いられている。また、例えばスロット52の外径は8mmであり、溝53のピッチは500mmである。
【0005】テープ型光ファイバ心線60は、高密度化を図るために通常より薄型のものが用いられている。その外形は、例えば厚さが0.32mm、幅が1.1mmである。1つの溝53内に収納された5枚のテープ型光ファイバ心線60は、互いに厚さ方向に密着した状態で積層されており、最も内側に収納されたテープ型光ファイバ心線60が溝53の底面に接触している。一方、最も外側に収納されたテープ型光ファイバ心線60は、押さえ巻き54に接触しないように溝53の開口端から所望の間隔を有する位置に配置されている。すなわち、溝53の深さは、5枚のテープ型光ファイバ心線60が積層された高さに比べて所望の長さだけ大きくなるように形成されている。例えば、最も外側に収納されたテープ型光ファイバ心線60と押さえ巻き54との間には、テープ型光ファイバ心線60が少なくとも1枚分収容可能な間隔が設けられている。
【0006】このように構成された光ファイバケーブル50は、例えば外径が12mm、重量が114kg/kmである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記の光ファイバケーブル50は、螺旋状の溝が形成されたスロットを用いていることから、その製造に際して製造コストを抑えにくいという状況にある。また、光ファイバケーブル50をボビンに巻き取る場合や管路等に敷設する場合に、径の太さや重量によって良好な作業性が得にくいという実情があった。
【0008】本発明の目的は、製造コストを低く抑えるとともに敷設時等の作業性を向上することができる光ファイバケーブルを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、1つの溝内に積層されたテープ型光ファイバ心線の枚数をn、テープ型光ファイバ心線の厚さをTt、溝の深さをDs、溝の幅をWs、スロットの外径をDとしたときの、溝の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たしている。
【0010】このような構成の光ファイバケーブルによれば、スロットの溝の深さが従来と比べて浅くなる。これにより、スロットの直径を小さくすることができ、光ファイバケーブルを細径化することができる。したがって、光ファイバケーブルの製造コストを低く抑えることが可能になる。また、光ファイバケーブルを軽量化することができるため、この光ファイバケーブルを管路内に敷設するとき等に良好な作業性を得ることができる。さらに、光ファイバケーブルが直線状態にあっても、溝内に積層されたテープ型光ファイバ心線と押さえ巻きとが接触しやすくなる。よって、テープ型光ファイバ心線の摩擦抵抗が増大して、溝内におけるテープ型光ファイバ心線の移動を防止することができる。
【0011】また、上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、スロットの外径をDとしたときの、溝の螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦Pの関係式を満たしている。
【0012】このような構成の光ファイバケーブルによれば、溝の螺旋ピッチが従来に比べて長くなる。そのため、スロットを押出し成形する際や、溝内にテープ型光ファイバ心線を収納する際の線速を速くすることができる。したがって、光ファイバケーブルの製造コストを低く抑えることができる。また、溝の螺旋ピッチが長くなると、スロットの軸線方向における溝の傾斜角度が小さくなるので、スロットの各溝同士の間に設けられている肉厚を、傾斜角度が大きい場合よりも薄くすることが可能になり、スロットの細径化を図ることができる。したがって、光ファイバケーブルを敷設する時等の作業性を向上させることができる。
【0013】また、上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、樹脂により形成されたテープ型光ファイバ心線の積層方向における被覆の厚さが、5〜25μmである。
【0014】このような構成の光ファイバケーブルによれば、テープ型光ファイバ心線の厚さが従来に比べて薄くなるので、スロットの溝の深さを浅くすることができる。これにより、スロットの直径を小さくすることができ、光ファイバケーブルを細径化することができる。したがって、光ファイバケーブルの製造コストを低く抑えることが可能になる。また、スロットの重量とテープ型光ファイバ心線の重量とをそれぞれ軽量化することができるので、敷設時等の作業性を向上させることができる。
【0015】また、上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、1つの溝内に積層されたテープ型光ファイバ心線の枚数をn、テープ型光ファイバ心線の厚さをTt、溝の深さをDs、溝の幅をWs、スロットの外径をDとしたときの、溝の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たし、かつ、溝の螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦Pの関係式を満たしている。
【0016】また、上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、1つの溝内に積層されたテープ型光ファイバ心線の枚数をn、テープ型光ファイバ心線の厚さをTt、溝の深さをDs、溝の幅をWs、スロットの外径をDとしたときの、溝の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たし、かつ、樹脂により形成されたテープ型光ファイバ心線の積層方向における被覆の厚さが、5〜25μmである。
【0017】また、上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、スロットの外径をDとしたときの、溝の螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦Pの関係式を満たし、かつ、樹脂により形成されたテープ型光ファイバ心線の積層方向における被覆の厚さが、5〜25μmである。
【0018】また、上記目的を達成するための本発明に係る光ファイバケーブルは、断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、1つの溝内に積層されたテープ型光ファイバ心線の枚数をn、テープ型光ファイバ心線の厚さをTt、溝の深さをDs、溝の幅をWs、スロットの外径をDとしたときの、溝の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たし、かつ、溝の螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦Pの関係式を満たし、さらに、樹脂により形成された前記テープ型光ファイバ心線の積層方向における被覆の厚さが、5〜25μmである。
【0019】また、テープ型光ファイバ心線の幅をWtとしたときの、溝の断面形状は、Wt+0.05≦Wsの関係式を満たしていることが望ましい。
【0020】また、光ファイバ素線は、波長1.55μmにおけるピーターマン−I(Petermann−I)の定義によるモードフィールド径が8μm以下であり、ケーブルカットオフ波長が1.26μm以下であり、かつ、ワイヤメッシュボビン法により測定した波長1.55μmにおけるマイクロベンド損失が0.1dB/km以下であることが望ましい。
【0021】また、光ファイバ素線は、波長1.55μmにおけるピーターマン−I(Petermann−I)の定義によるモードフィールド径が8μm以下であり、ケーブルカットオフ波長が1.26μm以下であり、かつ、プルーフレベルが1.5%以上の引張強度試験を経た光ファイバ素線であることが望ましい。
【0022】また、光ファイバ素線は、波長1.55μmにおけるピーターマン−I(Petermann−I)の定義によるモードフィールド径が8μm以下であり、ケーブルカットオフ波長が1.26μm以下であり、かつ、ワイヤメッシュボビン法により測定した波長1.55μmにおけるマイクロベンド損失が0.1dB/km以下であり、さらに、プルーフレベルが1.5%以上の引張強度試験を経た光ファイバ素線であることが望ましい。
【0023】また、光ファイバ素線は、曲げ直径20mmφでの波長1.55μmにおける曲げ損失が0.1dB/m以下であることが望ましい。
【0024】また、光ファイバ素線は、疲労係数nが50以上であることが望ましい。
【0025】また、光ファイバ素線は、クラッド領域の外周に遮水性を有する被覆膜が設けられていることが望ましい。被覆膜の材料は、チタンや炭素を用いることが可能である。
【0026】また、光ファイバ素線は、プルーフレベルが2.0%以上の引張強度試験を経た光ファイバ素線であることが望ましい。
【0027】また、光ファイバ素線は、クラッド領域の外径が60〜100μmであることが望ましい。
【0028】また、光ファイバ素線は、クラッド領域の周囲に設けられた被覆層の厚さが37.5μm以下であることが望ましい。
【0029】また、光ファイバ素線は、クラッド領域の周囲に設けられた着色層以外の被覆層が内層と外層とからなる2層に形成されており、内層のヤング率が2MPa以下であり、外層のヤング率が98MPa以上であることが望ましい。
【0030】また、光ファイバ素線は、クラッド領域の周囲に設けられた着色層以外の被覆層が1層に形成されており、被覆層のヤング率が98MPa以上であることが望ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る光ファイバケーブルの実施の形態を図1〜図6に基づいて説明する。図1は、本実施形態の光ファイバケーブルを示す断面図である。図2は、図1におけるスロットを示す斜視図、図3は、図2に示すスロットの側面図である。また、図4R>4は、図1における溝の最小高さを示す要部断面図、図5R>5は、図1における溝の最大高さを示す要部断面図である。図6は、図1におけるテープ型光ファイバ心線の断面図、図7は、図6における光ファイバ素線の断面図及び屈折率分布を示す図である。
【0032】図1に示すように、本実施形態の光ファイバケーブル1は、ケーブルコアとして一方向撚りの溝を有するスロット3を用いた一方向撚りテープスロット型光ファイバケーブルである。スロット3は、中心部にテンションメンバ2を備えており、外周部分には、5つの溝4がそれぞれ螺旋状に形成されている(図2参照)。各溝4には、4心のテープ型光ファイバ心線10が5枚づつ積層されて収納されている。したがって、光ファイバケーブル1は100心型のケーブルである。1つの溝4内に収納された5枚のテープ型光ファイバ心線10は、互いに厚さ方向に密着した状態で積層されており、最も内側に収納されたテープ型光ファイバ心線10が溝4の底面に接触している。また、テープ型光ファイバ心線10が溝4から外れるのを防ぐために、スロット3の周囲には押さえ巻き7が巻かれている。さらに、押さえ巻き7の外側にはプラスチック製の外被層8が被覆されている。
【0033】図2及び図3に示すように、スロット3の外周部分は、5つの溝4が長尺方向に沿って互いに平行な状態で、軸線に対して一定の傾斜角度θを有する螺旋状に形成されている。ここで、スロット3の外径をDとすると、溝4の螺旋ピッチPは、P=π・D/tanθ ・・・(1)
によって求められる。本実施形態の螺旋ピッチPは、傾斜角度θが2°より小さくなるように形成されている。すなわち、上記式(1)により求められる螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦P ・・・(2)
の関係式を満たしている。この式(2)によって規定される螺旋ピッチPは、従来の溝における螺旋ピッチに比べて長くなる。例えば、スロット3の外径Dは6.6mmであり、溝4の螺旋ピッチPは1000mmである。
【0034】このように、従来の溝より傾斜角度θを小さくして螺旋ピッチPを長くすることにより、スロット3を押し出し成形する際や、溝4内にテープ型光ファイバ心線10を集合させて収納する際の線速を速くすることができる。また、傾斜角度θが小さいと、スロット3を押し出し成形する際に溝4に付加される円周方向の応力が小さくなるので、スロット3の形状が歪んでしまうことを防止できる。このため、スロット3の各溝4同士の間に設けられている肉厚を、傾斜角度θが大きい場合よりも薄くすることが可能になり、スロット3の細径化を図ることができる。さらに、テープ型光ファイバ心線10を溝4内に集合させる際に、溝4との接触によりテープ型光ファイバ心線10に付加される断面方向の応力が小さくなるため、テープ型光ファイバ心線10の外傷を防ぐことができる。
【0035】図4及び図5に示すように、溝4の断面形状は、概ね溝の深さDs(mm)と溝の幅Ws(mm)とによって表される。ここで、1つの溝4内に積層されたテープ型光ファイバ心線10の枚数をn、テープ型光ファイバ心線10の厚さをTt(mm)、スロットの外径をD(mm)としたとき、溝の深さDsは、 n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}] ・・・(3)
の関係式を満たすように設定されている。
【0036】上記式(3)により設定された溝の深さDsが最小であるときの状態を、図4に示す。このとき、溝の深さDsは、積層されたテープ型光ファイバ心線10の高さn・Ttと一致しており、押さえ巻き7と、最も外側に収納されたテープ型光ファイバ心線10とが、広範囲で接触した状態となっている。本実施形態では、溝4の深さDs及びテープ型光ファイバ心線10の高さn・Ttは、ともに1.3mmである。
【0037】また、上記式(3)により設定された溝の深さDsが最大であるときの状態を、図5に示す。このとき、溝の深さDsは、積層されたテープ型光ファイバ心線10の高さn・Ttより(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}](以下Aと表す)だけ深くなっている。なお、この深さAは、押さえ巻き7が溝4内に弛む深さを表した値であり、スロット3の外周線上の円弧3aに対する溝4の開口端4aまでの間隔と一致した値である。そして、押さえ巻き7が溝4内に若干弛んだ状態で、押さえ巻き7と最も外側に収納されたテープ型光ファイバ心線10とが接触した状態となっている。
【0038】また、図4及び図5において、テープ型光ファイバ心線10の幅をWt(mm)としたとき、溝の幅Wsは、Wt+0.05≦Ws ・・・(4)
の関係式を満たすように設定されている。好ましくは、溝4内に収納されたテープ型光ファイバ心線10の幅方向の両側に、0.025mm以上の間隙が設けられていると良い。本実施形態では、テープ型光ファイバ心線10の幅Wtは1.1mm、溝4の幅Wsは1.2mmである。
【0039】溝4の断面形状を上記のように設定することにより、光ファイバケーブル1が直線状態にあっても、溝4内に積層されたテープ型光ファイバ心線10と押さえ巻き7とが常時接触した状態となる。したがって、テープ型光ファイバ心線10と押さえ巻き7との間に摩擦抵抗が発生して、テープ型光ファイバ心線10が溝4内において移動することを防止することができる。また、溝4の深さが従来と比べて浅くなるため、スロット3の直径を小さくして、光ファイバケーブル1を細径化することができる。
【0040】溝4内に収納されているテープ型光ファイバ心線10について、図6を参照して説明する。テープ型光ファイバ心線10は、ガラス体の光ファイバを紫外線硬化樹脂によって被覆した4本の光ファイバ素線12を横一列に接触して配置し、その全体を連結樹脂被覆層11によって被覆してテープ状に形成したものである。通常、連結樹脂被覆層11には、ウレタンアクリレート系の紫外線硬化樹脂が用いられている。この連結樹脂被覆層11により形成されたテープ型光ファイバ心線10の積層方向における被覆の厚さdは、5〜25μmに設定されている。なお、ここでいう被覆の厚さdは、テープ型光ファイバ心線10の厚さTtから光ファイバ素線12の外径を除いた長さの半分の値である。また、テープ型光ファイバ心線10の外形は、厚さTtが0.26mm、幅Wtが1.1mmである。このように、従来に比べて厚さWtが薄いテープ型光ファイバ心線10を用いることにより、溝4の深さを浅くすることができる。また、溝4の深さを浅くする代わりに、多数枚のテープ型光ファイバ心線10を溝4内に積層させて収納させることも可能である。
【0041】上述したように、本実施形態の光ファイバケーブル1は、従来に比べて細径化及び軽量化を図ることができる。例えば光ファイバケーブル1の外径は10.6mm、重量は92kg/kmである。また、スロット3を細径化することによってスロット3の作製に用いられる樹脂の量が少なくなり、光ファイバケーブル1の製造コストを低く抑えることができる。さらに、光ファイバケーブル1を細径化及び軽量化することに伴い、光ファイバケーブル1を管路内に敷設するとき等に良好な作業性を得ることができる。
【0042】次に、光ファイバケーブル1のテープ型光ファイバ心線10に用いられる光ファイバ素線12について、図7を用いて説明する。図7(a)は、光軸に垂直な面で光ファイバ素線12を切断したときの断面図を示し、図7(b)は、光ファイバ素線12の屈折率プロファイルを示す。この光ファイバ素線12は、光軸中心を含む外径d13のコア領域13と、このコア領域13を取り囲む外径d14のクラッド領域14と、このクラッド領域14を取り囲むカーボン層15と、このカーボン層15を取り囲む外径d16の被覆層16とを備えて構成されている。また、被覆層16の周囲には着色層が被覆されていても良い。
【0043】コア領域13及びクラッド領域14は、石英ガラス(SiO2)をホスト材料とするものである。コア領域13及びクラッド領域14の双方または何れか一方には、屈折率調節用の添加物が含有されている。そして、コア領域13の屈折率n1は、クラッド領域14の屈折率n2より高くなっている。好適には、コア領域13は実質的に単峰状の屈折率分布を有して、クラッド領域14は実質的に一定屈折率である。この場合には、屈折率プロファイルが簡易であるので光ファイバ素線12の製造が容易である。
【0044】なお、「実質的に単峰状」のコア領域13の屈折率分布とは、図7(b)に示されるような理想的なステップ形状を含む他、コア中央部に向けて屈折率が高くなる形状、略ステップ形状であるが周辺近傍で屈折率が僅かに高くなっている形状、略ステップ形状であるが周辺近傍で屈折率が漸減している形状、等を含む。
【0045】好適には、例えば、コア領域13は酸化ゲルマニウム(GeO2)が添加された石英ガラスであり、クラッド領域14はフッ素(F)が添加された石英ガラスである。あるいは、コア領域13はGeO2が添加された石英ガラスであり、クラッド領域14は実質的に純石英ガラスである。コア領域13には他の屈折率上昇剤が含有されていても良いし、クラッド領域14には他の屈折率降下剤が含有されていても良い。このような屈折率調節用の添加物が含有されていることにより、光ファイバ素線12は所望の屈折率プロファイルを得ることができる。
【0046】カーボン層15は、クラッド領域14の周囲にコーティングされたアモルファスカーボンの被覆膜であり、その厚さは0.04μm程度である。このコーティング方法としては、線引きされたガラス体の光ファイバ表面に原料ガスを化学反応させて、アモルファスカーボンを析出させるCVD法が、成膜速度及び膜質の点で有利であることが知られている。このようにしてガラス体の周囲にカーボン層がコーティングされた光ファイバは、カーボンコートファイバ(CCF)と呼ばれ、高い遮水性を有している。したがって、クラッド領域14やコア領域13に外部から水が浸入することを防ぐことができ、光ファイバ素線12の光伝送特性を高いレベルで保証することができる。また、CCFは疲労係数nが100以上、場合によっては200以上となるため、曲げなどの応力付加に対して破断寿命の低下を防止することができる。また、このカーボン層15を用いる代わりに、チタンの被覆膜を用いることも可能である。その場合、高い遮水性が得られるとともに、疲労係数nを50以上とすることができる。
【0047】一般には、光ファイバ素線12のクラッド領域14の外径d14は125μmであり、被覆層16の外径d16は250μmである。しかし、好適には、クラッド領域14の外径d14は60〜100μmである。この場合には、この光ファイバ素線12は、小径に曲げられたときに、曲げ歪みによる破断の確率が小さくなり、長期信頼性が向上する。また、好適には、被覆層16の厚さは37.5μm以下である。この場合には、テープ型光ファイバ心線10の外形を小さくすることができるため、光ファイバケーブル1を細径化することができ、あるいは、収納される光ファイバ素線12の本数を増やすことができる。
【0048】また、被覆層16は、内層16aと外層16bとからなる2層に形成されていても良い。その場合、内層16aのヤング率が2MPa以下であり、外層16bのヤング率が98MPa以上であることが望ましい。このような構成により、内層16aが側圧に対する緩衝層となって光ファイバ素線12はマイクロベンドが発生しにくくなるため、高い光伝送特性を保つことができる。
【0049】また、被覆層16が1層である場合、そのヤング率が98MPa以上であることが望ましい。このような構成により、被覆層として用いる樹脂を2種類用意する必要がない。このため、資材管理が容易になり、製造コストを低く抑えることができる。さらに、樹脂を被覆する設備も単純な構造とすることができるため、設備費の面においても製造コストを下げることができる。また、光ファイバ素線12をボビン等に巻きつけた際の被覆層16の変形を小さくすることができ、光ファイバ素線12同士の摩擦抵抗が小さくなる。そのため、ボビンから繰り出す際に光ファイバ素線12同士が絡まってしまうことを防止できる。
【0050】また、この光ファイバ素線12は、波長1.55μmにおけるPetermann−Iの定義によるモードフィールド径(MFD:Mode Field Diameter)が8μm以下である。ここで、Petermann−Iの定義によるモードフィールド径は、
【0051】
【数1】
【0052】なる式で定義される。この式(5)中にある変数rは、光ファイバ素線12の光軸からの径方向の距離である。φ(r)は、径方向の光の電界分布であり、光の波長により異なる。モードフィールド径を小さくすると、マイクロベンド損失や曲げ損失(マクロベンド損失)を小さくすることができる。したがって、例えば光ファイバケーブル1の溝4の螺旋ピッチPを長くした場合等に、光ファイバ素線12に歪が発生しやすい状態となっても、光ファイバ素線12の伝送損失の増加を抑えることができる。
【0053】また、光ファイバ素線12は、波長1.3μmにおけるPetermann−Iの定義によるモードフィールド径が6μm以上であるのが好適である。この場合は、光ファイバ素線12は、波長1.3μm帯に零分散波長を有する標準的なシングルモード光ファイバと融着接続したときに、接続損失が小さい。また、このような光ファイバ素線12同士を融着接続したときにも、軸ずれによる接続損失が小さい。
【0054】また、この光ファイバ素線12のケーブルカットオフ波長は1.26μm以下である。ケーブルカットオフ波長は、22m長でのLP11モードのカットオフ波長であり、2mカットオフ波長より小さい値である。
【0055】また、光ファイバ素線12は、ワイヤメッシュボビン法により測定した波長1.55μmにおけるマイクロベンド損失が0.1dB/km以下である。ワイヤメッシュボビン法は、例えば、胴径約400mmのボビンの胴面全体に、外径50μmの針金をピッチ150μmで格子状に編んだ金網を貼り付け、その外周に、光ファイバ素線を張力約0.8Nで1層だけ巻きつけたときの伝送損失の増加量を測定するものである。これにより、光ファイバケーブル1の敷設環境により光ファイバ素線12にマイクロベンドが発生しやすい状態であっても、伝送損失の増加を抑えることができる。また、スロット3の溝4内で、溝4の内壁や押さえ巻き7がテープ型光ファイバ心線10に接触した状態であっても、伝送損失が増加することを防止できる。
【0056】また、光ファイバ素線12として、プルーフレベルが1.5%以上の引張強度試験を経た光ファイバ素線を用いることが好ましい。ここでいうプルーフとは、製品化する光ファイバ素線の強度の保証であり、線引きした光ファイバ素線をボビン等に巻き取る手前で、その走行ラインに張力印加区間を設けることで引張強度試験を行うものである。すなわち、張力印加区間に印加する張力を任意の値に設定することにより、光ファイバ素線の伸び率(%)をプルーフレベルとして設定することができる。これにより、所望のプルーフレベルに満たない低強度の光ファイバ素線を破断させて、破断しない部分のみをボビン等に巻き取って製品とすることができる。
【0057】また、光ファイバ素線の破断強度は、破断強度(N)と累積破断確率(%)を変数とするワイブル分布(図示せず)によって表すことが可能である。1.5%のプルーフレベルを満たす光ファイバ素線は、50Nの張力が付加された場合でも累積破断確率が極めて低い。光ファイバケーブルの通常の敷設環境において、光ファイバ素線12に付加される張力は50N以下であることが推定されるので、1.5%以上のプルーフレベルを規定した引張強度試験を行うことによって、敷設環境による光ファイバ素線12の機械的強度の低下を防止することができる。したがって、光ファイバケーブル1の引張強度を必要以上に強化する必要がない。例えば、テンションメンバ2として、従来に比べて細径である直径1.2mmの鋼線を用いることができる。
【0058】なお、光ファイバ素線12は、プルーフレベルが2.0%以上の引張強度試験を経た光ファイバ素線を用いることがより好ましい。さらに、このプルーフレベルを3.0%以上、4.0%以上とすると、非常に良好な機械的強度を有する光ファイバ素線12を光ファイバケーブル1に用いることができる。
【0059】また、光ファイバ素線12は、曲げ直径20mmφでの波長1.55μmにおける曲げ損失(マクロベンド損失)が0.1dB/m以下である。したがって、光ファイバケーブル1を管路内等に敷設したときに、光ファイバ素線12の伝送損失の増加量が低減でき、充分実用可能な伝送特性を得ることができる。さらに、光ファイバ素線12は、曲げ直径15mmφでの波長1.55μmにおける曲げ損失が0.1dB/m以下であることが望ましい。また、光ファイバ素線12は、曲げ直径10mmφでの波長1.55μmにおける曲げ損失が0.1dB/m以下であるとなお良い。このように、光ファイバ素線12の曲げ損失特性が良好であれば、光ファイバケーブル1の敷設環境により光ファイバ素線12が小さい曲げ直径で曲がった状態でも曲げ損失を生じにくい。したがって、伝送損失の増加を防止して、光ファイバ素線12の品質を高いレベルで保証することができる。
【0060】上述したように、本実施形態の光ファイバケーブル1に用いられる光ファイバ素線12は、側圧や曲げ、引っ張り等が付加された場合においても良好な光伝送特性を発揮することができる。そのため、光ファイバケーブル1は、スロット3の構造上の特徴によって細径化や軽量化、作業性の向上を図るだけでなく、光ファイバ素線12の特性によって信頼性の高い高品質の光伝送路を効果的に得ることができる。
【0061】なお、本発明に係る光ファイバケーブルは、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、200心型、400心型、1000心型等の高密度実装型の光ファイバケーブルとすることが可能である。
【0062】図8に示すように、上記実施形態の第1変形例である光ファイバケーブル20は、200心型の光ファイバケーブルである。この光ファイバケーブル20は、中心にテンションメンバ21を有するスロット22の10本の溝23に、それぞれ5枚のテープ型光ファイバ心線10が積層されて収納されている。溝23は、上記の溝4(図4参照)と同様の形態をなしている。また、テープ型光ファイバ心線10は、上記の光ファイバケーブル1に用いられるテープ型光ファイバ心線10と同等の構成及び特性である。
【0063】また、4心のテープ型光ファイバ心線10より多心のテープ型光ファイバ心線を用いることもできる。例えば、8心、12心、24心、36心等のテープ型光ファイバ心線を用いることが可能である。図9に示すように、8心のテープ型光ファイバ心線10aは、上述した光ファイバ素線12を8本平行に配置して、連結樹脂被覆層11aにより一体に被覆されたものである。このテープ型光ファイバ心線10aは、上記テープ型光ファイバ心線10と同様、被覆の厚さdが5〜25μmに設定されている。また、テープ型光ファイバ心線10aの外径は、例えば厚さが0.26mm、幅Wtが2.2mmである。
【0064】図10に示すように、8心の上記テープ型光ファイバ心線10aを用いた400心型の光ファイバケーブル30は、中心にテンションメンバ31を有するスロット32の5本の溝33に、それぞれ10枚のテープ型光ファイバ心線10aが積層されて収納されている。溝33は、上記式(2),(3),(4)を満たすように形成されている。
【0065】また、図11に示すように、8心の上記テープ型光ファイバ心線10aを用いた1000心型の光ファイバケーブル40は、中心にテンションメンバ41を有するスロット42の12本の溝43に、それぞれ10枚のテープ型光ファイバ心線10aが積層されて収納されている。さらに、スロット42は、溝43のほぼ半分の深さを有する1本の溝43aが形成されており、この溝43a内には5枚のテープ型光ファイバ心線10aが積層されて収納されている。溝43,43aは、それぞれ上記式(2),(3),(4)を満たすように形成されている。
【0066】上述した各光ファイバケーブル20,30,40は、上記光ファイバケーブル10と同様、もしくはそれ以上に、細径化及び軽量化を図って製造コストを抑えることができる。また、敷設時等の作業性を向上させることも可能である。
【0067】
【発明の効果】以上説明したように本発明の光ファイバケーブルによれば、溝の形状を規定してスロットを細径化することや、溝のピッチを規定して光ファイバケーブルの軽量化を図ること等により、製造コストを低く抑えるとともに敷設時等の作業性を向上することができる。また、スロットの溝内に収納するテープ型光ファイバ心線の厚さを薄くすることにより、光ファイバケーブルを細径化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光ファイバケーブルの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1におけるスロットを示す斜視図である。
【図3】図2に示すスロットの側面図である。
【図4】図1における溝の最小高さを示す要部断面図である。
【図5】図1における溝の最大高さを示す要部断面図である。
【図6】図1におけるテープ型光ファイバ心線の断面図である。
【図7】図6における光ファイバ素線の断面図及び屈折率分布を示す図である。
【図8】図1に示す光ファイバケーブルの第1変形例を示す断面図である。
【図9】図6に示すテープ型光ファイバ心線の変形例を示す断面図である。
【図10】図1に示す光ファイバケーブルの第2変形例を示す断面図である。
【図11】図1に示す光ファイバケーブルの第3変形例を示す断面図である。
【図12】従来の光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 光ファイバケーブル
2 テンションメンバ
3 スロット
4 溝
7 押さえ巻き
8 外被層
10 テープ型光ファイバ心線
11 連結樹脂被覆層(樹脂)
12 光ファイバ素線
13 コア領域
14 クラッド領域
15 カーボン層(被覆膜)
16 被覆層
D スロットの外径
Ds 溝の深さ
n テープ型光ファイバ心線の積層枚数
P 溝の螺旋ピッチ
Tt テープ型光ファイバ心線の厚さ
Ws 溝の幅
Wt テープ型光ファイバ心線の幅
θ 溝の傾斜角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】 断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、前記溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、前記スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、前記押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、1つの前記溝内に積層された前記テープ型光ファイバ心線の枚数をn、前記テープ型光ファイバ心線の厚さをTt、前記溝の深さをDs、前記溝の幅をWs、前記スロットの外径をDとしたときの、前記溝の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たしていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】 断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、前記溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、前記スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、前記押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、前記スロットの外径をDとしたときの、前記溝の螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦Pの関係式を満たしていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項3】 断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、前記溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、前記スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、前記押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、前記樹脂により形成された前記テープ型光ファイバ心線の前記積層方向における被覆の厚さが、5〜25μmであることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項4】 断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、前記溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、前記スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、前記押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、1つの前記溝内に積層された前記テープ型光ファイバ心線の枚数をn、前記テープ型光ファイバ心線の厚さをTt、前記溝の深さをDs、前記溝の幅をWs、前記スロットの外径をDとしたときの、前記溝の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たし、かつ、前記溝の螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦Pの関係式を満たしていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項5】 断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、前記溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、前記スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、前記押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、1つの前記溝内に積層された前記テープ型光ファイバ心線の枚数をn、前記テープ型光ファイバ心線の厚さをTt、前記溝の深さをDs、前記溝の幅をWs、前記スロットの外径をDとしたときの、前記溝の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たし、かつ、前記樹脂により形成された前記テープ型光ファイバ心線の前記積層方向における被覆の厚さが、5〜25μmであることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項6】 断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、前記溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、前記スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、前記押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、前記スロットの外径をDとしたときの、前記溝の螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦Pの関係式を満たし、かつ、前記樹脂により形成された前記テープ型光ファイバ心線の前記積層方向における被覆の厚さが、5〜25μmであることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項7】 断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、前記溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、前記スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、前記押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、1つの前記溝内に積層された前記テープ型光ファイバ心線の枚数をn、前記テープ型光ファイバ心線の厚さをTt、前記溝の深さをDs、前記溝の幅をWs、前記スロットの外径をDとしたときの、前記溝の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たし、かつ、前記溝の螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦Pの関係式を満たし、さらに、前記樹脂により形成された前記テープ型光ファイバ心線の前記積層方向における被覆の厚さが、5〜25μmであることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項8】 請求項1,4,5,7のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記テープ型光ファイバ心線の幅をWtとしたときの、前記溝の断面形状は、Wt+0.05≦Wsの関係式を満たしていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項9】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、波長1.55μmにおけるピーターマン−I(Petermann−I)の定義によるモードフィールド径が8μm以下であり、ケーブルカットオフ波長が1.26μm以下であり、かつ、ワイヤメッシュボビン法により測定した波長1.55μmにおけるマイクロベンド損失が0.1dB/km以下であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項10】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、波長1.55μmにおけるピーターマン−I(Petermann−I)の定義によるモードフィールド径が8μm以下であり、ケーブルカットオフ波長が1.26μm以下であり、かつ、プルーフレベルが1.5%以上の引張強度試験を経た光ファイバ素線であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項11】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、波長1.55μmにおけるピーターマン−I(Petermann−I)の定義によるモードフィールド径が8μm以下であり、ケーブルカットオフ波長が1.26μm以下であり、かつ、ワイヤメッシュボビン法により測定した波長1.55μmにおけるマイクロベンド損失が0.1dB/km以下であり、さらに、プルーフレベルが1.5%以上の引張強度試験を経た光ファイバ素線であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項12】 請求項9〜11のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、曲げ直径20mmφでの波長1.55μmにおける曲げ損失が0.1dB/m以下であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項13】 請求項9〜11のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、疲労係数nが50以上であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項14】 請求項13に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、クラッド領域の外周に遮水性を有する被覆膜が設けられていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項15】 請求項14に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記被覆膜は、炭素からなることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項16】 請求項9〜11のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、プルーフレベルが2.0%以上の引張強度試験を経た光ファイバ素線であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項17】 請求項9〜11のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、クラッド領域の外径が60〜100μmであることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項18】 請求項9〜11のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、クラッド領域の周囲に設けられた被覆層の厚さが37.5μm以下であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項19】 請求項9〜11のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、クラッド領域の周囲に設けられた着色層以外の被覆層が内層と外層とからなる2層に形成されており、前記内層のヤング率が2MPa以下であり、前記外層のヤング率が98MPa以上であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項20】 請求項9〜11のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、クラッド領域の周囲に設けられた着色層以外の被覆層が1層に形成されており、前記被覆層のヤング率が98MPa以上であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項1】 断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、前記溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、前記スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、前記押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、1つの前記溝内に積層された前記テープ型光ファイバ心線の枚数をn、前記テープ型光ファイバ心線の厚さをTt、前記溝の深さをDs、前記溝の幅をWs、前記スロットの外径をDとしたときの、前記溝の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たしていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】 断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、前記溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、前記スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、前記押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、前記スロットの外径をDとしたときの、前記溝の螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦Pの関係式を満たしていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項3】 断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、前記溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、前記スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、前記押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、前記樹脂により形成された前記テープ型光ファイバ心線の前記積層方向における被覆の厚さが、5〜25μmであることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項4】 断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、前記溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、前記スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、前記押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、1つの前記溝内に積層された前記テープ型光ファイバ心線の枚数をn、前記テープ型光ファイバ心線の厚さをTt、前記溝の深さをDs、前記溝の幅をWs、前記スロットの外径をDとしたときの、前記溝の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たし、かつ、前記溝の螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦Pの関係式を満たしていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項5】 断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、前記溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、前記スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、前記押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、1つの前記溝内に積層された前記テープ型光ファイバ心線の枚数をn、前記テープ型光ファイバ心線の厚さをTt、前記溝の深さをDs、前記溝の幅をWs、前記スロットの外径をDとしたときの、前記溝の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たし、かつ、前記樹脂により形成された前記テープ型光ファイバ心線の前記積層方向における被覆の厚さが、5〜25μmであることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項6】 断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、前記溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、前記スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、前記押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、前記スロットの外径をDとしたときの、前記溝の螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦Pの関係式を満たし、かつ、前記樹脂により形成された前記テープ型光ファイバ心線の前記積層方向における被覆の厚さが、5〜25μmであることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項7】 断面がほぼ円形の長尺体の外周に螺旋状の溝が形成されたスロットと、複数本の光ファイバ素線が互いに平行に配置された状態で、樹脂によって一体に被覆されてなり、前記溝内に積層されて収納された複数のテープ型光ファイバ心線と、前記スロットの周囲を覆うように設けられた押さえ巻きと、前記押さえ巻きの外側に被覆された外被層とを備え、1つの前記溝内に積層された前記テープ型光ファイバ心線の枚数をn、前記テープ型光ファイバ心線の厚さをTt、前記溝の深さをDs、前記溝の幅をWs、前記スロットの外径をDとしたときの、前記溝の断面形状は、n・Tt≦Ds≦n・Tt+(1/2)D[1−cos{sin-1(Ws/D)}]
の関係式を満たし、かつ、前記溝の螺旋ピッチPは、π・D/tan2°≦Pの関係式を満たし、さらに、前記樹脂により形成された前記テープ型光ファイバ心線の前記積層方向における被覆の厚さが、5〜25μmであることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項8】 請求項1,4,5,7のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記テープ型光ファイバ心線の幅をWtとしたときの、前記溝の断面形状は、Wt+0.05≦Wsの関係式を満たしていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項9】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、波長1.55μmにおけるピーターマン−I(Petermann−I)の定義によるモードフィールド径が8μm以下であり、ケーブルカットオフ波長が1.26μm以下であり、かつ、ワイヤメッシュボビン法により測定した波長1.55μmにおけるマイクロベンド損失が0.1dB/km以下であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項10】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、波長1.55μmにおけるピーターマン−I(Petermann−I)の定義によるモードフィールド径が8μm以下であり、ケーブルカットオフ波長が1.26μm以下であり、かつ、プルーフレベルが1.5%以上の引張強度試験を経た光ファイバ素線であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項11】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、波長1.55μmにおけるピーターマン−I(Petermann−I)の定義によるモードフィールド径が8μm以下であり、ケーブルカットオフ波長が1.26μm以下であり、かつ、ワイヤメッシュボビン法により測定した波長1.55μmにおけるマイクロベンド損失が0.1dB/km以下であり、さらに、プルーフレベルが1.5%以上の引張強度試験を経た光ファイバ素線であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項12】 請求項9〜11のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、曲げ直径20mmφでの波長1.55μmにおける曲げ損失が0.1dB/m以下であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項13】 請求項9〜11のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、疲労係数nが50以上であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項14】 請求項13に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、クラッド領域の外周に遮水性を有する被覆膜が設けられていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項15】 請求項14に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記被覆膜は、炭素からなることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項16】 請求項9〜11のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、プルーフレベルが2.0%以上の引張強度試験を経た光ファイバ素線であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項17】 請求項9〜11のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、クラッド領域の外径が60〜100μmであることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項18】 請求項9〜11のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、クラッド領域の周囲に設けられた被覆層の厚さが37.5μm以下であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項19】 請求項9〜11のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、クラッド領域の周囲に設けられた着色層以外の被覆層が内層と外層とからなる2層に形成されており、前記内層のヤング率が2MPa以下であり、前記外層のヤング率が98MPa以上であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項20】 請求項9〜11のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ素線は、クラッド領域の周囲に設けられた着色層以外の被覆層が1層に形成されており、前記被覆層のヤング率が98MPa以上であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【図3】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
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【図8】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2003−337267(P2003−337267A)
【公開日】平成15年11月28日(2003.11.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−143785(P2002−143785)
【出願日】平成14年5月17日(2002.5.17)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成15年11月28日(2003.11.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成14年5月17日(2002.5.17)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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