説明

光ファイバコリメータ構造及び光ファイバコリメータアレイ

【課題】入射されるコリメート光の中心軸と、光ファイバコリメータに備えた光ファイバの中心軸とを、容易かつ高精度に一致させる。
【解決手段】相対向する位置に円形の支持穴101a,102aが形成されている2枚の固定板101,102により、外周面が球面状を成すと共に貫通孔111a,111bが形成された回転部品110を回動自在に支持する。シリンダ121と光ファイバ122とコリメートレンズ123とでなる光ファイバコリメータ120を、回転部品110の貫通孔111bに挿入固定する。光ファイバコリメータ120と回転部品110は、固定板101,102に対して傾動調整することができ、斜め入射してくるコリメート光Loをコリメートレンズ123を介して光ファイバ122の中心軸に入射させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光情報通信等で用いられる光ファイバコリメータ構造及び光ファイバコリメータアレイに関する発明であり、光ファイバコリメータに入射されるコリメート光の中心軸と、光ファイバコリメータに備えた光ファイバの中心軸とを、容易かつ高精度に一致させることができるように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
光通信は大容量、超高速性という特長があり、近年では多くの情報通信網で実用化されている。
【0003】
光通信用部品には、光ファイバや半導体レーザ、半導体フォトダイオード、ニオブ酸リチウム、ガラス平面光導波路などがある。これらを導波する光のビーム径は、材料で決まる屈折率、導波路構造などにより様々で、それぞれの光のビームを高効率で結合するためにはレンズ系によるビーム径の調整が必須である。
【0004】
その中でも収束された光ビームを平行光に変換できる光コリメータは、異なる光部品を高効率で接続したり、光部品にコリメート光を入力したりする際に用いられ、光通信用モジュール作製の上で、最も重要な光部品のひとつである。
【0005】
ところで、光部品で複数のチャネルが必要になる場合には、そのチャネル数に応じた光結合点が存在する。これらの光結合点でコリメート光を利用するためにはアレイ化が必要である。そのため、例えばシリコン製のV溝上に複数のファイバを整列させ、コリメートレンズアレイで各々のファイバからの光をコリメートするような、小型の光ファイバコリメータアレイが数多く研究開発されている。
【0006】
図6に、従来の光ファイバコリメータアレイ10を用いた光学系の一例を示す。
この場合、複数のポートから入射されたコリメート光Liは、ハーフミラー1を介して非球面レンズ2で集光され、光反射素子3の一点ですべての入射光が集光される。
光反射素子3で反射した各入射光は、再度、非球面レンズ2でコリメート光Loに変換され、ハーフミラー1を介して入射側とは別の方向に出射され、その先に配置された光ファイバコリメータアレイ10で受光されて、各コリメート光Loは分離して出力される。
【0007】
従来の光ファイバコリメータアレイ10は、複数のコリメートレンズ11と複数の光ファイバ12で構成される。
かかる従来技術では、複数の光ファイバ12をファイバ固定台に精度よく固定した後に、コリメート光Loが最も光ファイバ12に結合するように各コリメートレンズ11の位置を調整してレンズ固定台に固定する。
つまり従来では、先ず光ファイバ12の固定をし、次にコリメートレンズ11の位置調整をし、最後に、最適位置に調整したコリメートレンズ11の固定をしていた。
【0008】
一次元アレイであれば、ファイバ固定台はSi 基板上にV溝加工したものが利用でき、光ファイバ間隔で±1μm程度、傾き±0.1度程度で固定できる。二次元アレイだとSi基板の厚さ誤差および傾きがあるためばらつきが大きくなり、光ファイバ間隔で±10μm程度、傾き誤差±0.5度程度で固定できる。
【0009】
従って、図6に示すように、ハーフミラー1に入射するコリメート光Liどうしが平行で、光反射素子3の位置が非球面レンズ2の焦点に一致し、ハーフミラー1から出射するコリメート光Loどうしも平行な場合には、従来の光ファイバコリメータアレイ10で十分に受光できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4080517号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】A Three-Dimensional MEMS Optical SwitchingModule Having 100 Input and 100 Output Ports Tsuyoshi Yamamoto, Member, IEEE, Johji Yamaguchi, Nobuyuki Takeuchi, Akira Shimizu, Eiji Higurashi,Renshi Sawada, and Yuji Uenishi, Senior Member, IEEE IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, VOL. 15, NO. 10, OCTOBER 2003
【非特許文献2】Ultrafast All-Optical Serial-to-Parallel ConvertersBased on Spin-Polarized Surface-NormalOptical Switches Ryo Takahashi, Takako Yasui, Jae-Kuk Seo, and Hiroyuki Suzuki IEEE JOURNAL OF SELECTED TOPICS IN QUANTUM ELECTRONICS, VOL. 13, NO. 1, JANUARY/FEBRUARY 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら実際には作製上のばらつきが存在するため、ハーフミラー1から出射して光ファイバコリメータアレイ10に入射するコリメート光Loは上記のように最低でも±0.1度はばらつく。
さらに光反射素子3の位置が、非球面レンズ2との距離方向(図6ではZ軸方向)でずれて非球面レンズ2の焦点位置から外れると、図7のように平行光(コリメート光Lo)は傾き角θを持って光ファイバコリメータアレイ10へ入射される。
【0013】
なお図6,図7において、Z軸方向とは、コリメートレンズ11の中心と光ファイバ12の端面の中心とをつなぐ方向(光ファイバ12の長手方向)であり、Y軸とはZ軸に直交する方向(光ファイバ12が隣接していく方向)であり、X軸とはZ軸及びY軸に直交する方向(図6,図7では紙面に直交する方向)であり、傾き角θは図6,図7の例ではY,Z平面内での角度である。
他の図においても、X軸、Y軸、Z軸の方向は、上記と同じ方向であるとして使用する。
【0014】
上記のように、平行光(コリメート光Lo)が傾き角θを持って光ファイバコリメータアレイ10へ入射される場合、従来の光ファイバコリメータアレイ10では下記のような課題がある。ここでは簡単のためY軸方向に傾き角を持つ場合を示す。
光ファイバコリメータアレイ10に入った光は傾き角θの影響で所定の位置よりdYだけずれた位置で収束する。このずれ量dYはコリメートレンズ11と光ファイバ12までの距離fに依存し、
dY=ftanθ
となる。
【0015】
従って、距離fが10mmで傾き角θが0.1度のとき、ずれ量dYは約17μmになる。ここで、シングルモード光ファイバとの結合効率を傾き角θを変数として求めると、図8のように傾き角が0.1度程度であっても、光(コリメート光Lo)は光ファイバ12に全く結合しない。
【0016】
従って、前記のように予め光ファイバ12を固定するような光ファイバコリメータアレイ10では、それ自身の傾き精度を高くし、且つ光反射素子3の位置も精度を上げる必要があるため、製造コストが大幅に上昇してしまう。
【0017】
前記の課題を解決する方法として、光ファイバコリメータアレイにおいて、光ファイバを予め固定せずに傾き角に合わせて調整できる構成にすることも考えられる。しかし、この場合には、各光ファイバを、X軸、Y軸だけでなく、コリメートレンズの焦点位置にくるようにZ軸を含めた3軸で調整しなければならないことから、製造コストが大幅に上昇してしまう。
【0018】
本発明は、上記従来技術に鑑み、光ファイバコリメータに入射されるコリメート光の中心軸と、光ファイバコリメータに備えた光ファイバの中心軸とを、容易かつ高精度に一致させることができる、光ファイバコリメータ構造及び光ファイバコリメータアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決する本発明の光ファイバコリメータ構造の構成は、
予め決めた間隔をとって対面状態で平行に配置されると共に、相対向する位置に円形の支持穴が形成されている2枚の固定板と、
外周面が球面状を成すと共に貫通孔が形成されており、2枚の前記固定板の間の空間に配置されることにより、球面状を成す外周面が2枚の前記固定板のそれぞれの支持穴の周縁に接触した状態で2枚の前記固定板で回動自在に挟持され、しかも前記貫通孔のうち一方の開口面が一方の前記固定板の支持穴に臨み、前記貫通孔のうち他方の開口面が他方の前記固定板の支持穴に臨む回転部品と、
筒状のシリンダと、前記シリンダの内部のうち先端側の部分に配置されたコリメートレンズと、前記シリンダの後端側から前記シリンダに挿入されており前記コリメートレンズの焦点距離だけ前記コリメートレンズから離れた位置にファイバ先端面が位置している光ファイバとで形成されており、前記シリンダの先端部が前記回転部品の前記貫通孔に挿入された状態で前記回転部品に固定されている光ファイバコリメータと、
で構成されていることを特徴とする。
【0020】
また本発明の光ファイバコリメータアレイの構成は、
予め決めた間隔をとって対面状態で平行に配置されると共に、相対向する複数の位置に円形の支持穴が形成されている2枚の固定板と、
外周面が球面状を成すと共に貫通孔が形成されており、2枚の前記固定板の間の空間のうち前記支持穴が形成されている複数の位置に配置されることにより、球面状を成す外周面が2枚の前記固定板のそれぞれの支持穴の周縁に接触した状態で2枚の前記固定板で回動自在に挟持され、しかも前記貫通孔のうち一方の開口面が一方の前記固定板の支持穴に臨み、前記貫通孔のうち他方の開口面が他方の前記固定板の支持穴に臨む複数の回転部品と、
筒状のシリンダと、前記シリンダの内部のうち先端側の部分に配置されたコリメートレンズと、前記シリンダの後端側から前記シリンダに挿入されており前記コリメートレンズの焦点距離だけ前記コリメートレンズから離れた位置にファイバ先端面が位置している光ファイバとで形成されており、前記シリンダの先端部が複数の前記回転部品の前記貫通孔に挿入された状態で前記回転部品に固定されている複数の光ファイバコリメータと、
で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、2枚の固定板の間に回動自在に回転部品を挟持し、且つ、シリンダ内にコリメートレンズを備えると共に光ファイバを挿入して成る光ファイバコリメータの先端を、回転部品に挿入固定したことにより、固定板に対して光ファイバコリメータの角度を容易に調整することができる。
このため、固定板に光ファイバコリメータを固定する際の位置精度も緩和でき、光ファイバコリメータの光軸は傾き角θを調整するだけでよいため、光軸調整コストを大幅に削減でき、かつ高結合効率な光ファイバコリメータ構造及び光ファイバコリメータアレイが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例に係る光ファイバコリメータアレイを示す斜視図。
【図2】本発明の実施例に係る光ファイバコリメータアレイに用いた光ファイバコリメータを示す拡大断面図。
【図3】本発明の実施例に係る光ファイバコリメータアレイに用いた光ファイバコリメータを、ファイバ固定用クリップと共に示す拡大断面図。
【図4】回転部品を示す断面図。
【図5】シリンダを示す断面図。
【図6】従来の光ファイバコリメータアレイを用いた光学系の一例を示す構成図。
【図7】平行光(コリメート光)が傾き角を持って光ファイバコリメータアレイへ入射される状態を示す構成図。
【図8】従来の光ファイバコリメータアレイにおける、傾き角に対する結合効率を示す特性図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき詳細に説明する。
【0024】
[実施例1]
図1に示す実施例1に係る光ファイバコリメータアレイ100は、予め決めた間隔をとって対面状態で平行に配置された2枚の固定板101,102に、回転部品110を介して、複数の光ファイバコリメータ120を傾動自在に取り付けて構成したものである。
つまり、2枚の固定板101,102は、回転部品110を挟みつつ回転部品110を回転自在に支持しており、この回転部品110に光ファイバコリメータ120の先端が挿入固定されている。
【0025】
拡大断面図である図2及び図3を参照して、各部分について説明をする。
【0026】
2枚の固定板101,102は、その間にスペーサ103を挿入して、対面状態で平行に配置されている。
更に、2枚の固定板101,102には、回転部品110を支持する複数の各位置、つまり、光ファイバコリメータ120を取り付ける複数の各位置に、支持穴101a,102aが形成されている。各支持穴101a,102aは相対向する位置に形成されている。
【0027】
回転部品110は、図4にも示すように、外周面が球面状を成すと共に、貫通孔111が形成されている。この貫通孔111は、先端側(図2〜図4では左端側)部分が小径の貫通孔111aとなっており、後端側(図2〜図4では右端側)部分が大径の貫通孔111bとなっており、異径の貫通孔111a,111bが接続している部分に当接段部112が形成されている。
【0028】
複数の回転部品110は、2枚の固定板101,102の間の空間のうち、支持穴101a,102aが形成されている複数の位置にそれぞれ配置されている。そして、回転部品110の球面状を成す外周面が、支持穴101aの周縁(固定板102側の周縁)と支持穴101bの周縁(固定板101側の周縁)に接触している。これにより、各回転部品110は、2枚の固定板101,102により回動自在に挟持されている。
しかも、貫通孔111のうち貫通孔111a側の開口面が、固定板101の支持穴101aに臨み、貫通孔111のうち貫通孔111b側の開口面が、固定板102の支持穴102aに臨んでいる。換言すると、支持穴101aの内周側に貫通孔111aの開口面が位置し、支持穴102aの内周側に貫通孔111bの開口面が位置している。
【0029】
光ファイバコリメータ120は、円筒状のシリンダ121(図5参照)と、光ファイバ122と、コリメートレンズ123により構成された部材である。
シリンダ121の外径寸法は、回転部品110の貫通孔111bに緊密に嵌入することができる寸法になっている。
コリメートレンズ123は、シリンダ121の内部のうち先端側の部分(図2,図3,図5では左側部分)に配置・固定されており、コリメートレンズ123の光軸方向はシリンダ121の軸方向に一致している。
光ファイバ123は、シリンダ121の後端側(図2,図3,図5では右端側)からシリンダ121の内部に挿入されて、このシリンダ121に固定されている。光ファイバ123のファイバ先端面122aは、コリメートレンズ123の配置位置からコリメートレンズ123の焦点距離だけ離れた場所に位置している。
【0030】
複数の光ファイバコリメータ120は、そのシリンダ121の先端部(図2,図3,図5では左端部)が、各回転部品110の貫通孔111bに挿入されて回転部品110に固定されている。シリンダ121を貫通孔111bに挿入する際には、シリンダ121の先端が当接段部112に当接するまで挿入する。シリンダ121の先端が当接段部112に当接した状態において、コリメータレンズ123の中心が、回転部品110の中心に一致するように、当接段部112の形成位置およびコリメートレンズ123の配置位置を設定している。
【0031】
次に、各部分の構成を更に詳しく説明する。
回転部品110の直径をRとすると、2枚の固定板101,102はその間隔が直径Rより小さくなるように平行に配置される。このときの2枚の固定板101,102の固定方法は、例えば、固定板101,102の間隔と同じだけの厚さをもったスペーサ103を、固定板101,102の間の適当な位置に複数個だけ挿入して構成可能である。
固定板101,102には回転部品110の直径Rよりも小さくなるような円形の支持穴101a,102aが2つの固定板101,102の同じ位置(相対向する位置)に開いている。
【0032】
ここで2つの固定板101,102を所定の間隔に配置し、回転部品110を、その支持穴101a,102aの開いている固定板101,102間の空間に、2つの固定板101,102の支持穴101a,102aの周縁に接触するように配置する。すると、回転部品110はXYZ方向へは固定板101,102により固定されているため動くことができない。それに対して、回転部品110は、その球の中心を回転中心として回転することが可能である。
【0033】
ここで、光ファイバコリメータ120は回転部品110に固定されているため、回転部品110は自由に回転して光ファイバコリメータ120の傾きを調整することができるが、固定板101,102で固定されているため位置はずれない。従って、XYZ方向は固定された状態でθ方向のみ変更が可能である。
【0034】
ここで厳密に光ファイバコリメータ120のZ方向を固定するには、球形の回転部品110の中心に光ファイバコリメータ120のコリメートレンズ123が配置される必要があるが、数mm程度のZ方向のずれは平行光の伝搬距離が長くなるだけで結合効率に影響を与えないことは自明であるため、必ずしも厳密に配置する必要はない。
【0035】
また光ファイバコリメータ120のアレイ化は、図1のように上記の構成を繰り返すことで実現できる。光ファイバコリメータ120の調整角度が0.1度程度であれば、適切なファイバ間隔を取ることでファイバ同士が干渉せずに調整することが可能である。
【0036】
近接した光ファイバコリメータ120の影響で傾き調整や固定作業等が困難な場合は、図2で示しているように球形の回転部品110の貫通孔111に当接段部112を形成しておき、中心から同心円状に一本ずつ光ファイバコリメータ120を回転部品110の貫通孔111bに挿入して、調整・固定することも可能である。
【0037】
このようにすると、例えばビーム径が750μmの平行光を伝搬させると仮定して光ファイバコリメータ120の間隔を1.5mmとすれば、1cm2あたり36本程度の高密度なファイバコリメータアレイ化が可能である。
【0038】
また本発明のメリットとして、光ファイバコリメータ120の固定板101,102への取り付け位置精度が大きいことがある。上記の取り付け位置のずれは、光ファイバコリメータ120のシリンダ121と固定板101,102の加工精度に依存する。
通常、コリメート光はビーム径を非常に大きくすることが可能であり、例えばビーム径を750μmとすると、結合効率の劣化が3dBになるのは光ファイバコリメータ120の位置ずれが300μm以上になった場合である。これは、一般の金属加工で十分に作製可能な精度である。
【0039】
次に光ファイバコリメータ120の傾き調整の方法について述べる。先述のように球形の回転部品110を用いることで、XYZ方向の調整は不要となり、傾き角θのみを調整すれば高い結合効率が得られる。
傾き角θを調整するためには、図3のように光ファイバコリメータ120のコリメートレンズ123から所望の距離離れたところ(シリンダ121の部分)を、ファイバ固定用クリップ200のクリップ203で挟み、微動台201の微動により移動させればよい。
ファイバ固定用クリップ200は、XY微動台201と、XY微動台201によりXY方向に移動する可動棒202と、可動棒202に取り付けたクリップ203により構成されている。
【0040】
この際、固定位置をコリメートレンズ123より1cm離しておくだけで、0.1度傾けるには、17.5μm、0.01度傾けるには1.8μm動かせばよいことになる。この値は一般に市販されている微動台201の位置精度の約0.5μmと比べて十分大きいので、精度良く光ファイバコリメータ120を調整することができる。
【0041】
[実施例2]
次に、実施例1の各構成部材の材質や寸法を具体的に特定した光ファイバコリメータアレイ100を、実施例2として、図3を参照して説明する。
【0042】
図3に示すように、まず、ガラス製の非球面コリメートレンズ(平行ビーム径750μm、外径900μm)123を金属製で円筒形のシリンダ(外径1.2mm、内径1.0mm)121内にシリンダ121の中心とコリメートレンズ123の焦点軸が一致するように固定する。
【0043】
次に、コリメートレンズ123の収束点に光ファイバ122のファイバ先端面122aを配置してシリンダ121に固定して光ファイバコリメータ120を作製する。
上記光ファイバコリメータ120はアレイで必要な本数だけ作製する。
【0044】
次に、アレイ数分の支持穴(内径1.3mm)101a,102aが開けられた2枚の金属製の固定板101,102と、固定板101,102の外周部分と同じ形状の金属製のスペーサ103、円筒状の貫通孔111、即ち貫通孔(内径内径1.1mm)111a及び貫通孔(1.2mm)111bが開けられた金属製の球状の回転部品110を作製する。
【0045】
そして、2枚の固定板101,102の間に回転部品110を挟み込んで固定する。
ここで、調整工程で不都合がなければ、回転部品110の貫通孔111bに光ファイバコリメータ120を挿入して固定する。不都合がある場合は、後述する調整工程で1本ずつ挿入していく。
【0046】
次に調整工程の説明を行うが、複数の入射コリメート光がハーフミラーを介して非球面レンズで集光され、光反射素子の一点ですべての入射光が集光され、反射した各入射光が再度、非球面レンズでコリメート光に変換され、ハーフミラーを介して入射側とは別の方向に出射されるところまでは従来技術と同様のため説明は割愛し、複数のコリメート光Loを光ファイバコリメータアレイ100に結合させる調整工程について述べる。
【0047】
まず、光ファイバコリメータアレイ100に入射されるコリメート光Loの入射位置に、上記で作製した固定板101,102等をXY方向に対して±100μmの位置精度で固定する。この際、Z方向は特に位置精度は必要ない。
次に、中心で光ファイバコリメータ120を回転部品110に挿入して固定する。
【0048】
次に、光ファイバコリメータ120を、ファイバ固定用クリップ200のクリップ203で固定し、光ファイバ122の片端にはパワーメータを接続し、ファイバに対応する入力コリメート光Loを入射した状態で、その光強度が最大になるように傾き角θを±0.2度の範囲で調整する。具体的には、XY方向に対して±30μmの範囲で微動台201を移動させる。この際の固定は微動台201で上記移動範囲を動かせる程度の強度で良いため、例えば、ばね式のクリップ203ではさむ程度で良い。光強度が最大になったところで回転部品110と固定板101,102の間をUV接着剤、または金属融着により半永久的に固定する。固定が完了したらファイバ固定用クリップ200との固定を解除する。
【0049】
続いて、上記と同様の手順で、同心円状に光ファイバコリメータ120を所望の数だけ順次、挿入、調整、固定していく。
【0050】
本実施例では、固定板101,102やシリンダ121を金属で作製しているが、プラスチックなどの樹脂製でももちろんよい。また光ファイバ122はシングルモードファイバを想定しているが、マルチモードファイバでももちろんよく、素材もプラスチックなどの樹脂製でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
なお本発明は、上記の実施例のように、一対の固定板に、複数の回転部品と、複数の光ファイバコリメータを備えた光ファイバコリメータアレイのみならず、一対の固定板に、1個の回転部品と、1個の光ファイバコリメータを備えた光ファイバコリメータ構造にも適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
100 光ファイバコリメータアレイ
101,102 固定板
103 スペーサ
110 回転部品
120 光ファイバコリメータ
121 シリンダ
122 光ファイバ
123 コリメートレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決めた間隔をとって対面状態で平行に配置されると共に、相対向する位置に円形の支持穴が形成されている2枚の固定板と、
外周面が球面状を成すと共に貫通孔が形成されており、2枚の前記固定板の間の空間に配置されることにより、球面状を成す外周面が2枚の前記固定板のそれぞれの支持穴の周縁に接触した状態で2枚の前記固定板で回動自在に挟持され、しかも前記貫通孔のうち一方の開口面が一方の前記固定板の支持穴に臨み、前記貫通孔のうち他方の開口面が他方の前記固定板の支持穴に臨む回転部品と、
筒状のシリンダと、前記シリンダの内部のうち先端側の部分に配置されたコリメートレンズと、前記シリンダの後端側から前記シリンダに挿入されており前記コリメートレンズの焦点距離だけ前記コリメートレンズから離れた位置にファイバ先端面が位置している光ファイバとで形成されており、前記シリンダの先端部が前記回転部品の前記貫通孔に挿入された状態で前記回転部品に固定されている光ファイバコリメータと、
で構成されていることを特徴とする光ファイバコリメータ構造。
【請求項2】
予め決めた間隔をとって対面状態で平行に配置されると共に、相対向する複数の位置に円形の支持穴が形成されている2枚の固定板と、
外周面が球面状を成すと共に貫通孔が形成されており、2枚の前記固定板の間の空間のうち前記支持穴が形成されている複数の位置に配置されることにより、球面状を成す外周面が2枚の前記固定板のそれぞれの支持穴の周縁に接触した状態で2枚の前記固定板で回動自在に挟持され、しかも前記貫通孔のうち一方の開口面が一方の前記固定板の支持穴に臨み、前記貫通孔のうち他方の開口面が他方の前記固定板の支持穴に臨む複数の回転部品と、
筒状のシリンダと、前記シリンダの内部のうち先端側の部分に配置されたコリメートレンズと、前記シリンダの後端側から前記シリンダに挿入されており前記コリメートレンズの焦点距離だけ前記コリメートレンズから離れた位置にファイバ先端面が位置している光ファイバとで形成されており、前記シリンダの先端部が複数の前記回転部品の前記貫通孔に挿入された状態で前記回転部品に固定されている複数の光ファイバコリメータと、
で構成されていることを特徴とする光ファイバコリメータアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−97281(P2013−97281A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241867(P2011−241867)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】