説明

光ファイバセンサー

【課題】低出射光角度を有するとともに、曲げによる光ロスが小さい光ファイバセンサーを得る。
【解決手段】屈折率の高い透明な芯樹脂からなる7本以上10000本以下の芯繊維、各々の該芯繊維の周りを取り囲み該芯樹脂の屈折率よりも低い屈折率を有する透明な第1鞘樹脂からなる第1鞘層、及び各々の該第1鞘層の外側を取り囲み該第1鞘樹脂より屈折率が低い第2鞘樹脂に着色物質を分散させた第2鞘樹脂組成物からなる第2鞘層が一まとめの繊維状になるように複合紡糸法によって製造された長さが50cm以上5m以下である1本以上の多芯プラスチック光ファイバ、発光素子、並びに受光素子からなることを特徴とする光ファイバセンサー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物体の有無や大きさなどを検出する光ファイバ式の光電スイッチなどに使用する光ファイバセンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバセンサーは光ファイバ式の光電スイッチなどに使用されているものであり、発光素子、例えば発光ダイオードと、受光素子、例えばフォトダイオードと、その間の光の通路となる1本以上の光ファイバからなるものである。タイプとしては、発光素子と光ファイバとの間、光ファイバと受光素子の間、または光ファイバと光ファイバの間の光の通路となっている空間において物体が光を遮ることで物体を検知する透過型と物体から反射する光を捕らえて物体を検知する反射型とがある。用途は、FAやOAなどにおける物体検出や位置検出に使用する。
【0003】
従来、光ファイバセンサーに使用する多芯プラスチック光ファイバとしては、屈折率の高い透明な芯樹脂からなる、個々の芯の直径が5ミクロン乃至50ミクロンであり、少なくとも500個以上の芯樹脂の島とそれを取り囲む屈折率の低い鞘樹脂からなる海島構造体、あるいは芯樹脂とそれを取り囲む屈折率の低い鞘樹脂が同心円構造の島とし、その周りを第3の樹脂で充満した海島構造体として一纏めにした、断面が円状の多芯光ファイバが提案されていた(特許文献1参照)。特許文献1記載の発明は、発光素子と光ファイバとの相対位置のずれなどにより出射光の出射角に対する強度分布が変化するために使用範囲が限定されるという問題を解決したものである。
【0004】
また、ファイバNAが小さく高速通信が可能で、かつ曲げによる光ロスが小さいプラスチック多芯光ファイバとしては、透明な芯樹脂からなる複数本の芯樹脂とその各々の芯樹脂を取り囲む芯樹脂のよりも低い屈折率の樹脂からなる第1鞘樹脂と、第1鞘を取り囲む、第1鞘より屈折率の低い樹脂からなる第2鞘からなる光信号伝送用多芯プラスチック光ファイバが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、伝送画像が明るく解像度の優れたプラスチック多芯光ファイバとしては、直径2〜70μの芯−鞘構造を有する100〜30000個のプラスチック製島部が海部に最密充填構造配列に配置されたプラスチック系マルチフィラメント型光ファイバであり、海成分が遮光特性を備えており、鞘部の厚さが1.5μm以下であり、かつファイバ長さ1mにおける漏光画素の最大漏光相対値が10%以下であることを特徴とするプラスチック系マルチ光ファイバが提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平5−40180号公報
【特許文献2】国際公開第98/35247号パンフレット
【特許文献3】特開平4−158307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1記載の発明においては、出射光角度に対する光強度分布が単純な強度分布を持つ光ファイバセンサーを実現するために個々の芯の直径を5ミクロン乃至50ミクロンと非常に小さくした多芯プラスチック光ファイバを使用することが提案されている。しかしながら、レンズでこの光ファイバセンサーの出射光を絞らなくてよいように出射光角度を小さくすることを目的としてファイバNAを小さく設定した場合には、多芯プラスチック光ファイバ部の曲げによる光ロスが無視できなくなるという問題があることが判明した。
本発明は、低出射光角度を有するとともに曲げによる光ロスが少ない光ファイバセンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために特許文献2記載の屈折率が段階的に異なる二重の鞘で囲まれた芯を有する多芯プラスチック光ファイバを利用することを考えたが、うまく行かなかった。
即ち、上記多芯プラスチック光ファイバに入射した光は、ファイバの中を進行するにつれ、最初は、あたかも、芯と第2鞘層からなる光ファイバであるかのごとく、ファイバ軸に対し比較的大きな角度で進行する光もより小さな角度で進行する光も伝播させていくが、ファイバ内の伝搬距離が長くなるにつれ、ついには芯と第1鞘層からなる光ファイバであるかのようにファイバ軸に対してより小さな角度で伝播する光と化していくものと考えられる。
【0008】
即ち、比較的大きな角度で芯に入射した光は、芯と第1鞘層との境界面を貫通して行き、第1鞘層と第2鞘層との境界面で全反射しながら光ファイバ内を進行して行く。しかしながら、通常の多芯プラスチック光ファイバにおいて第1鞘層を構成するフッ素樹脂は芯繊維を構成するポリメチルメタクリレート系樹脂ほどの光透過性はないので、比較的大きな角度で芯に入射した光は、反射の繰り返しのうちに減衰して消失するか、或は何らかの反射角度の変化により、芯と第1鞘層との境界面で全反射して行く有益な光に変換されるものと考えられる。
【0009】
これに対して、光ファイバ部の長さが50cm以上5m以下程度であり、伝搬距離の短い光ファイバセンサーにおいては、比較的大きな角度で芯に入射した光が十分に減衰しないまま残るので出射光角度が大きいまま維持されると考えられる。
そこで、本発明者は、短い伝搬距離であっても比較的大きな角度で芯に入射した光を十分に減衰させることができればよいと考え、第2鞘樹脂に着色物質を分散させた第2鞘樹脂組成物とするとの着想に基づき検討した結果、本発明の多芯プラスチック光ファイバと発光素子と受光素子からなる光ファイバセンサーに想到した。
【0010】
即ち、本発明は、屈折率の高い透明な芯樹脂からなる7本以上10000本以下の芯繊維、各々の該芯繊維の周りを取り囲み該芯樹脂の屈折率よりも低い屈折率を有する透明な第1鞘樹脂からなる第1鞘層、及び各々の各第1鞘層の外側を取り囲み該第1鞘樹脂より屈折率が低い第2鞘樹脂に着色物質を分散させた第2鞘樹脂組成物からなる第2鞘層が一まとめの繊維状になるように複合紡糸法によって製造された長さが50cm以上5m以下である1本以上の多芯プラスチック光ファイバ、発光素子、並びに受光素子からなることを特徴とする光ファイバセンサーである。
【0011】
本発明の光ファイバセンサーは、ナトリウムのD線を用いて20℃で測定した芯樹脂、第1鞘樹脂、及び第2鞘樹脂の屈折率をそれぞれnCORE、nCLAD1、及びnCLAD2とし、ファイバNAを(nC0RE2−nCLAD120.5で定義した時に、多芯プラスチック光ファイバのファイバNAが0.11以上0.45以下であり、かつ、第1鞘樹脂の屈折率と第2鞘樹脂の屈折率とが0.15≧nCLAD1−nCLAD2≧0.02なる関係式を満たすものであることが好ましい。
また、着色物質がカーボンブラックであり、第2鞘樹脂組成物に対するカーボンブラックの含有量が0.1重量%〜2.0重量%であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光ファイバセンサーは、低出射光角度を有するとともに曲げによる光ロスが小さいという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、屈折率の高い透明な芯樹脂からなる7本以上10000本以下の芯繊維、各々の該芯繊維の周りを取り囲み該芯樹脂の屈折率よりも低い屈折率を有する透明な第1鞘樹脂からなる第1鞘層、及び各々の該第1鞘層の外側を取り囲み該第1鞘樹脂より屈折率が低い第2鞘樹脂に着色物質を分散させた第2鞘樹脂組成物からなる第2鞘層が一まとめの繊維状になるように複合紡糸法によって製造された長さが50cm以上5m以下である多芯プラスチック光ファイバ、発光素子、並びに受光素子からなることを特徴とする光ファイバセンサーである。
なお、上記第2鞘層は、第2鞘層同士がくっついて海部になっている構成を含むものとする。すなわち、多芯プラスチック光ファイバの断面において、芯繊維と第1鞘層からなる島部に対して該第2鞘層が海部となる配置であっても、芯繊維と第1鞘層と第2鞘層からなる島部に対して、別の樹脂が海部となる配置であってもよい。
【0014】
本発明において使用される多芯プラスチック光ファイバの断面の直径は、0.1mm〜3mm程度であり、通常は0.3mm〜1.5mm程度である。断面における芯の数としては、最低7個で円形配置が可能となり好ましい。断面における芯の最大数については、多芯プラスチック光ファイバの製造の容易さから10000個以内が好ましい。より好ましくは19個〜1000個である。芯の直径は5μm〜500μmが好ましい。より好ましくは60μm〜200μmである。また、第1鞘層の厚みは0.8〜3.0μmが好ましい。
【0015】
本発明に使用する多芯プラスチック光ファイバの芯樹脂としては、各種の透明樹脂が使用できる。特に好ましい樹脂としてはポリメチルメタクリレート系の樹脂が使用できる。例えばメチルメタクリレート単独重合体や、メチルメタクリレートを50重量%以上含んだ共重合体で、共重合可能な成分として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸エステル類、イソプロピルマレイミドのようなマレイミド類、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンなどがあり、これらの中から一種以上適宜選択して共重合させることができる。その他好ましい樹脂として、スチレン系樹脂が使用できる。例えばスチレン単独重合体やスチレン−メチルメタクリレート共重合体などである。その他好ましい樹脂として、ポリカーボネート系樹脂が使用できる。ポリカーボネート系樹脂は耐熱性が高いこと、及び吸湿性が低いという特徴を有する。
【0016】
次に芯と第1鞘樹脂の関係について述べる。屈折率は、ナトリウムのD線を用いて20℃で測定する。芯樹脂、第1鞘樹脂、及び第2鞘樹脂の屈折率をそれぞれ、nCORE、nCLAD1、及びnCLAD2としたとき、多芯プラスチック光ファイバのファイバNA(開口数)は次式で規定される。
ファイバNA=(nCORE2−nCLAD120.5
【0017】
本発明においてはファイバNAの値としては0.1〜0.65程度を対象としているが、本発明の効果はファイバNAが低ければ低いほど、そして第1鞘層と第2鞘層の屈折率の差が大きいほど大きい。それらが特に顕著になるのはファイバNAが0.11以上0.45以下であり、かつ0.15>nCLAD1−nCLAD2≧0.02の多芯プラスチック光ファイバである。特許文献1記載の単一鞘の多芯プラスチック光ファイバにおいては、ファイバNAが0.2のように低い場合、光ファイバを曲げた時の光量ロスが大きくなるが、本発明の2層鞘構造の多芯プラスチック光ファイバにすれば、曲げた時の光量ロスの抑制に対して著しい効果を上げることができる。
【0018】
さて第1鞘樹脂として具体的に例をあげれば、芯樹脂がポリメチルメタクリレート系の樹脂の場合であれば、フルオロアルキルメタクリレート系樹脂やビニリデンフロライド系樹脂やビニリデンフロライド系樹脂とメタクリレート系樹脂を混合したアロイなどである。特にフルオロアルキルメタクリレート系樹脂は結晶性がなく好ましい。フルオロアルキルメタクリレートとしては次式の化合物である。
【0019】
【化1】

【0020】
上式において、nは1または2、 mは1〜11までの整数、X はHまたはFである。これらで示されるフルオロアルキルメタクリレートの1種類以上と、他の共重合可能なフルオロアルキルアクリレートやアルキルメタクリレートやアルキルアクリレートなどとの共重合体がフルオロアルキルメタクリレート系樹脂として好適である。
【0021】
さらに具体的に例をあげれば、フルオロアルキルメタクリレートとしては、トリフロオロエチルメタクリレート(以下、「3FMA」ともいう。)、テトラフルオロプロピルメタクリレート(以下、「4FMA」ともいう。)、ペンタフルオロプロピルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート(以下、「17FMA」ともいう。)、オクタフルオロペンチルメタクリレートなどがあり、フッ化アクリレートモノマーとしては,トリフルオロエチルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレートなどがある。
【0022】
そしてこれらの低屈折率成分であるフッ素系モノマーの他に、高屈折率成分として、メチルメタクリレート(以下、「MMA」ともいう。)やエチルメタクリレートなどのメタクリレートモノマーやメチルアクリレートやエチルアクリレート、ブチルアクリレートなどのアクリレートモノマー、メタクリル酸やアクリル酸などとのいろいろな組合せによる共重合体が挙げられる。
【0023】
ビニリデンフロライド系樹脂として例を挙げれば、ビニリデンフロライドとヘキサフロロアセトンの共重合体、或いはこれらの2元成分にさらに、トリフロロエチレンやテトラフロロエチレンを加えた3元以上の共重合体。さらに、ビニリデンフロライドとヘキサフロロプロペンの共重合体、或いはこれらの2元成分にさらに、トリフロロエチレンやテトラフロロエチレンを加えた3元以上の共重合体、さらにビニリデンフロライドとテトラフロロエチレンの2元共重合体がある。これらの中でも、特に、ビニリデンフロライド80モル%とテトラフロロエチレン20モル%からなる共重合体が好ましい。その他、ビニリデンフロライドとトリフロロエチレンの2元共重合体などがある。
そしてさらにこれらのビニリデンフロライド系樹脂とメタクリレート系樹脂を混合したアロイを使用すると良い。メタクリレート系の樹脂としては、メチルメタクリレートやエチルメタクリレートの単独重合体や、或いは、これらを主体とする共重合体であり、これらにメチルメタクリレートやブチルアクリレートなどのアルキルアクリレートやアルキルメタクリレートなどを共重合しても良い。
【0024】
また、ファイバNAが0.25よりも低い場合の第1鞘樹脂としては、メチルメタクリレートとブチルアクリレートの共重合体のようにフッ素成分を含まぬ樹脂も可能である。さて第1鞘樹脂は、ファイバNAを調整するために屈折率が調整選択されるが、さらに第1鞘層は、光の反射層というだけではなく、光透過層としての機能もある程度は必要であり、透明性がより高い方が好ましく、その理由からフルオロアルキルメタクリレート系の樹脂やビニリデンフロライド系樹脂とメタクリレート系樹脂の混合体で透明度の高いものがより好ましい。
【0025】
第2鞘樹脂は、第1鞘樹脂より屈折率が低い樹脂である必要がある。この屈折率は低ければ低いほど、本発明には適している。第2鞘樹脂としては、第1鞘樹脂と同様なフルオロアルキルメタクリレート系樹脂やビニリデンフロライド系樹脂が好ましく、より好ましくはビニリデンフロライド系樹脂である。その理由は、ビニリデンフロライド系樹脂は、可撓性があり、機械的に強度があり、さらに第1鞘樹脂がフルオロアルキルメタクリレート系樹脂やビニリデンフロライド系樹脂とメタクリレート系樹脂の混合物の場合には、それらとよく接着して機械的にも強固な多芯プラスチック光ファイバが得られるからである。
【0026】
それらのビニリデンフロライド系樹脂は、ビニリデンフロライドとテトラフロロエチレンの共重合体、ビニリデンフロライドとヘキサフロロプロペンの共重合体、ビニリデンフロライドとヘキサフロロアセトンの共重合体、ビニリデンフロライドとトリフロロエチレンの共重合体、ビニリデンフロライドとトリフロロエチレンとヘキサフロロアセトンの共重合体、ビニリデンフロライドとテトラフロロエチレンとヘキサフロロアセトンの共重合体、ビニリデンフロライドとトリフロロエチレンとヘキサフロロアセトンの共重合体、ビニリデンフロライドとテトラフロロエチレンとヘキサフロロプロペンの共重合体などをあげることができる。
【0027】
第2鞘樹脂組成物においては、第2鞘樹脂に着色物質を含有させる。着色物質の適切な含有量は、後述する出射角が小さくなるように定めるが、ファイバ長が短いほど含有量を大きくすることが好ましい。具体的に着色物質としてカーボンブラックを使用した場合、第2鞘樹脂組成物に占める割合は、第1鞘層と第2鞘層の境界面で一部の光を反射させるために0.1重量%以上2.0重量%以下が好ましく、0.5重量%以上1.5重量%以下がより好ましい。カーボンブラックが2.0重量%以下であると曲げによる光ロスが小さく、0.1重量%以上であると出射光角度が十分に小さくなる。
上述の樹脂を用いて複合紡糸を行うことによって、多芯プラスチック光ファイバを製造することができる。多芯プラスチック光ファイバの外形は、押出延伸によって円になり、また延伸比を変化させることにより外径及び各々の芯径は、細くすることができる。
【0028】
得られた多芯プラスチック光ファイバ断面の一例の模式図を図1に示す。図1において第2鞘樹脂は海部を構成しているが、第2鞘樹脂が第2鞘層を構成し、別の樹脂からなる海部を有するものであってもよい。また、多芯プラスチック光ファイバは、上述のように芯繊維と第1鞘層と第2鞘層または海部からなる多芯プラスチック光ファイバ裸線であってもよいし、該裸線をポリエチレン等の保護層で被覆した多芯プラスチック光ファイバケーブルであってもよい。
本発明の光ファイバセンサーは、上述した多芯プラスチック光ファイバ、発光素子、及び受光素子からなる。発光素子としてはLEDが好ましく、受光素子としてはフォトダイオードが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例と比較例により説明する。
[実施例1]
芯樹脂として、屈折率ncore 1.492のポリメチルメタクリレート樹脂でメルトフローインデックスが230℃、荷重3.8Kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mmの条件で、1. 5g/10分であるものを用いた。なお、実施例及び比較例記載の各樹脂において、メルトフローインデックスは上記と同条件を用いて測定した。
第1鞘樹脂として、17FMA45重量%、4FMA20重量%、及びMMA35重量%をキャスト重合した共重合体であって、メルトフローインデックスが35g/10分、屈折率が1.428の樹脂を用いた。
【0030】
第2鞘樹脂組成物として、ビニリデンフロライド80モル%とテトラフロロエチレン20モル%の共重合体で、メルトフローインデックスが30g/10分、屈折率は1.402の第2鞘樹脂にカーボンブラックを0.7重量%分散させたものを用いた。
複合紡糸ダイとしては、37芯を有し、各々の芯繊維を第1鞘層と第2鞘層とが二層に被覆する構造のダイスを用いた。この複合紡糸ダイに、芯樹脂と第1鞘樹脂と第2鞘樹脂組成物の容積の比率が80対10対10になるように供給し、ダイから排出されるストランドを収束し、2倍に延伸して、直径0.5mmの2鞘多芯プラスチック光ファイバ裸線を製造した。この多芯プラスチック光ファイバのファイバNAは0.43である。さらにこの裸線を黒色ポリエチレンで被覆し、直径1.5mmの2鞘多芯プラスチック光ファイバケーブルを得た。
【0031】
次にこの多芯プラスチック光ファイバケーブルを3mの長さに切り取り、波長が650nmでLNAが0.6以上のLED光(HAKTRONICS社photom205)を入射せしめ、上記多芯プラスチック光ファイバケーブルを通して出射される光量の該ケーブルの曲げによる変化を測定したところ、0.1dBであった。光量変化測定方法は以下のとおりである。
図2のように、photom205と上記多芯プラスチック光ファイバケーブルを接続し、該ケーブルにLED光を入射し、フォトダイオード(PD)で光量を測定する。まずファイバに曲率半径2cm未満の屈曲を与えない状態で測定した時の光量を0dBとし、次にファイバ全長の中央部分を曲率半径2mmで90°折り曲げた光量を測定し、両者の差を曲げによる光量変化とする。
【0032】
次に、上記3m多芯プラスチック光ファイバケーブルに、波長が650nmでLNAが0.6以上のLED光(HAKTRONICS社photom205)を入射せしめ、上記多芯プラスチック光ファイバケーブルを通して出射される出射光角度を測定したところ、52°であった。この値は、(nC0RE2−nCLAD220.5で定義される芯と第2鞘のNA=0.51より計算される出射光角度61°に対して十分小さく、ファイバNA=0.43より計算される出射光角度51°とほぼ同程度になっている。出射光角度の測定方法は以下のとおりである。
図3のように、photom205と上記多芯プラスチック光ファイバケーブルを接続し、該ケーブルにLED光を入射し、ファイバ端から10mm離れたところのスクリーン上に写る光のスポット径を定規を用いて目視で測定し、出射光角度を求める。
【0033】
[比較例1]
実施例1において、第2鞘樹脂組成物としてカーボンブラックを分散させない第2鞘樹脂を使用した以外は同一条件で直径0.5mmの2鞘多芯プラスチック光ファイバ裸線を製造した。この多芯光ファイバのファイバNAは、0.43である。(nC0RE2−nCLAD220.5で定義される芯と第2鞘の屈折率から求めたNAは0.51である。さらにこの裸線に黒色ポリエチレンで被覆し、1.5mmの2重鞘構造多芯プラスチック光ファイバケーブルを得た。
【0034】
次にこの多芯プラスチック光ファイバケーブルを3mの長さに切り取り、波長が650nmでLNAが0.6以上のLED光(HAKTRONICS社photom205)を入射せしめ、曲げによる光量変化と出射光角度を測定した。光量変化は0.1dB、出射光角度は61°、すなわち芯と第2鞘のNA=0.51より計算される出射光角度と同一であった。
【0035】
[実施例2]
芯樹脂として、屈折率ncore1.492のポリメチルメタクリレート樹脂でメルトフローインデックスが1.5g/10分であるものを用いた。
第1鞘樹脂として、17FMA14重量%、4FMA6重量%、3FMA6重量%、及びMMA74重量%をキャスト重合した共重合体であって、メルトフローインデックスが31g/10分、 屈折率が1.47の樹脂を用いた。
第2鞘樹脂組成物として、ビニリデンフロライド80モル%とテトラフロロエチレン20モル%の共重合体であって、メルトフローインデックスが30g/10分、屈折率は1.402の第2鞘樹脂にカーボンブラックを1.2重量%分散させたものを用いた。
【0036】
複合紡糸ダイとしては、37芯を有し、各々の芯繊維を第1鞘層と第2鞘層とが二層に被覆する構造のダイスを用いた。この複合紡糸ダイに、芯樹脂と第1鞘樹脂と第2鞘樹脂組成物の容積の比率が80対10対10になるように供給し、ダイから排出されるストランドを収束し、2倍に延伸して、直径1.2mmの2鞘多芯プラスチック光ファイバ裸線を製造した。この多芯プラスチック光ファイバのファイバNAは、0.26である。さらにこの裸線を黒色ポリエチレンで被覆し、直径2.2mmの2鞘多芯プラスチック光ファイバケーブルを得た。
【0037】
次にこの多芯プラスチック光ファイバケーブルを1mの長さに切り取り波長が650nmでLNAが0.6以上のLED光(HAKTRONICS社photom205)を入射せしめ、曲げによる光量変化と出射光角度を測定した。光量変化は0.2dB、出射光角度は37°であった。
【0038】
[比較例2]
実施例2において、多芯プラスチック光ファイバケーブルを20cmの長さに切り取った以外は同一条件で、波長が650nmでLNAが0.6以上のLED光(HAKTRONICS社photom205)を入射せしめ、曲げによる光量変化と出射光角度を測定した。光量変化は0.6dB、出射光角度は52°であった。
【0039】
[比較例3]
芯樹脂として屈折率ncore1.492のポリメチルメタクリレート樹脂でメルトフローインデックスが1.5g/10分であるものを用いた。
第1鞘樹脂として、17FMA14重量%、4FMA6重量%、3FMA6重量%、MMA74重量%をキャスト重合して、メルトフローインデックスが31g/10分、屈折率が1.47を用いた。
複合紡糸ダイとしては、217芯を有し、各々の芯繊維を第1鞘層が被覆する構造のダイスを用いた。この複合紡糸ダイに、芯樹脂と第1鞘樹脂の容積の比率が80対20になるように供給し、ダイから排出されるストランドを収束し、2倍に延伸して、直径1.0mmの多芯プラスチック光ファイバ裸線を製造した。この多芯プラスチック光ファイバのファイバNAは、0.26である。さらにこの裸線を黒色ポリエチレンで被覆し、直径2.2mmの1鞘多芯プラスチック光ファイバケーブルを得た。
【0040】
次にこの多芯プラスチック光ファイバケーブルを3mの長さに切り取り、波長が650nmでLNAが0.6以上のLED光(HAKTRONICS社photom205)を入射せしめ、曲げによる光量変化と出射光角度を測定した。光量変化は6.6dB、出射光角度は30°であった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の光ファイバセンサーは、光ファイバ式の光電スイッチなどの光センサーとして好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明で使用される多芯プラスチック光ファイバの一例の断面の模式図である。
【図2】曲げによる多芯プラスチック光ファイバの光量変化測定方法を説明する模式図である。
【図3】多芯プラスチック光ファイバの出射光角度の測定方法を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0043】
1 芯繊維
2 第1鞘層
3 海部
4 多芯プラスチック光ファイバ
5 曲率半径2mmの90°曲げ部分
6 スクリーン上のスポット
7 出射光角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率の高い透明な芯樹脂からなる7本以上10000本以下の芯繊維、各々の該芯繊維の周りを取り囲み該芯樹脂の屈折率よりも低い屈折率を有する透明な第1鞘樹脂からなる第1鞘層、及び各々の該第1鞘層の外側を取り囲み該第1鞘樹脂より屈折率が低い第2鞘樹脂に着色物質を分散させた第2鞘樹脂組成物からなる第2鞘層が一まとめの繊維状になるように複合紡糸法によって製造された長さが50cm以上5m以下である1本以上の多芯プラスチック光ファイバ、発光素子、並びに受光素子からなることを特徴とする光ファイバセンサー。
【請求項2】
ナトリウムのD線を用いて20℃で測定した芯樹脂、第1鞘樹脂、及び第2鞘樹脂の屈折率をそれぞれnCORE、nCLAD1、及びnCLAD2とし、ファイバNAを(nC0RE2−nCLAD120.5で定義した時に、多芯プラスチック光ファイバのファイバNAが0.11以上0.45以下であり、かつ、第1鞘樹脂の屈折率と第2鞘樹脂の屈折率とが0.15≧nCLAD1−nCLAD2≧0.02なる関係式を満たす請求項1記載の光ファイバセンサー。
【請求項3】
着色物質がカーボンブラックであり、第2鞘樹脂組成物に対するカーボンブラックの含有量が0.1重量%〜2.0重量%である請求項1〜2のいずれかに記載の光ファイバセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−109300(P2009−109300A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280936(P2007−280936)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】