説明

光ファイバモジュール

【課題】光ファイバの巻き崩れを防止するとともにパッケージのコンパクト化を実現する光ファイバモジュールを提供すること。
【解決手段】光ファイバと、前記光ファイバが巻かれるボビンと、を備え、前記ボビンに巻かれる前記光ファイバ長をL(m)、前記ボビンの両鍔間の内幅をW(mm)、前記ボビンの内径をd2(mm)、前記光ファイバの被覆径をdf(μm)とするとき、前記ボビンの鍔径d1が、√{(L・df2/650W+d22)}+2(mm)以上、√{(L・df2/650W+d22)}+10(mm)以下であり、前記ボビンの内径が10mm以上、40mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高非線形光ファイバ及び高非線形光ファイバモジュールに関し、より詳しくは、非線形係数が大きく非線形現象を利用した光信号処理を行う際に用いられ、特にコイル状に巻かれて高非線形デバイスとして使用される高非線形光ファイバ及に関するものである。また、コイル状に巻かれた高非線形光ファイバを収納した高非線形デバイスである高非線形光ファイバモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在実用化されている光ファイバ通信の波長チャンネルあたりの伝送速度は10Gbit/sであるが、大容量波長分割多重(WDM:wavelength division multiplexing)伝送においてシステムを過度に複雑化すること無く総伝送容量を増やすためには、チャネルあたりの伝送速度をより高速にすることが望ましい。このような背景のもとで、チャネルあたり40Gbit/s、或いはそれ以上の超高速の光ファイバ伝送に関する研究が活発に進められている。
【0003】
光ファイバ中の非線形現象(自己位相変調、相互位相変調、四波混合等)は、チャンネルあたりの伝送速度が速くなり、これに応じて信号のピーク電力が上昇するほど、大きく現れる。このような非線形現象は、伝送特性劣化をもたらす一方で、その高速応答性を超高速光信号処理に応用することができるという利点もある。
【0004】
近年、高い非線形性をもつ高非線形光ファイバ(HNLF:high nonlinear optical fiber)の開発が進んでおり、それに伴って高非線形光ファイバを利用した光信号処理が行われている。
【0005】
高非線形光ファイバは、非線形現象を利用した光信号処理を行う際に用いられ、線路としては使用されず、パッケージにされて伝送装置や光源に組み込まれて使用される。光ファイバをパッケージにする場合には、高非線形光ファイバをボビンに巻回されるか、或いはボビンを使用せずに環状に巻回されて使用される。
【0006】
このようにしてコイル状に巻かれた光ファイバがパッケージ内で占有する体積は、光ファイバの体積と空隙率に依存する。この空隙率は、図6に示すボビンにおいて次式(1)で表される光ファイバが巻かれる部分の体積Vのうち、光ファイバ自体が占有する体積が占める割合であり、光ファイバの断面積、即ち光ファイバの外径(以下、被覆径という)が太いほど大きくなる。
【0007】
[数1]
V=W×{((d1)/2)2−(d2/2)2}×π (1)
【0008】
パッケージを小型化する目的で、光ファイバの巻径(ボビンの内径)を小さくすると、光ファイバにかかる巻き歪みが大きくなる。この巻き歪みは、光ファイバのクラッドの直径(以下、クラッド径という)に比例する。そのため、巻き歪みを小さくするためには、クラッド径を小さくする必要がある。
【0009】
従来、細径化された高非線形光ファイバとして、クラッド径を110μm、被覆径を150μmとした光ファイバや、クラッド径を89μm、被覆径を115μmとした光ファイバが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
しかし、高非線形光ファイバのクラッド径を細くするとその巻径は小さくなるが、例えば、検査機器接続用の光ファイバ等の一般的なクラッド径を有する光ファイバとの接続が難しくなる。なお、光ファイバの最も一般的なクラッド径は約125μmであり、被覆径は約250μmである。
【0011】
ところで、光ファイバは、品質を保証するため、製造後に、伝送損失、分散特性等、5〜10程度の項目について検査が行われる。高非線形光ファイバに関しても同様である。
【0012】
検査機器として例えば伝送損失を測定するOTDR(Optical Time Domain Reflectmeter)を用いる場合には、検査対象の光ファイバは、検査機器接続用の光ファイバを介してOTDRに接続される。
【0013】
ところで、光ファイバ同士を接続する方法としては、融着接続法と突合接続法とがある。融着接続法は、検査対象の光ファイバと検査機器接続用の光ファイバの接続端の被覆を除去した状態で、互いの光軸を合わせながら双方のファイバ端面を加熱して融着する。この方法を用いることにより、接続損失を下げることが可能である。しかしながら、融着には時間と手間がかかる。
【0014】
これに対して突合接続法は、双方の光ファイバの接続端の被覆を除去してガラス部を露出させ、ガラス部の端面同士をV溝上で突き合わせて接続する。この突合接続法は、接続を短時間で行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002−207136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
細径の高非線形光ファイバと一般的な太さの検査機器接続用の光ファイバとは、クラッド径の違いによりV溝上で接続する際、容易ではない。
【0017】
本発明の課題は、コンパクトにコイル化できるともに、例えば、検査機器接続用の光ファイバである一般的な太さの光ファイバとの接続性を向上させた高非線形光ファイバを提供することを目的とする。また、この高非線形光ファイバを用いた高非線形光ファイバモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、この発明にかかる高非線形光ファイバは、コアと該コアを取り囲むクラッドと該クラッドを覆う被覆とを有して、コイル状に巻かれて用いられる高非線形光ファイバにおいて、直径20mmにて曲げたときの波長1550nmにおける曲げ損失が、0.01dB/m以下であり、波長1550nmにおける非線形係数γが、10W-1km-1以上であり、カットオフ波長λcが、1530nm以下であり、零分散波長が、1400nm以上、1650nm以下であり、前記被覆の径が、125μm±5%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
このように、被覆の径を125μm±5%とすることで、コイル状に巻かれた際、コンパクトとすることができるとともに、例えば、被覆を剥いでクラッドを露呈させた径が125μmの検査機器接続用の光ファイバとの接続性を向上させることができる高非線形光ファイバを提供することができる。また、この高非線形光ファイバを用いた高非線形光ファイバモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施形態の高非線形ファイバの一例を示す断面図と屈折率プロファイルである。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る高非線形ファイバの特性を測定するシステムを示す構成図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る高非線形ファイバの特性を測定する際に用いられるV溝装置を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係る高非線形ファイバとダミーファイバとをV溝装置を用いて接続している状態を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態に係る高非線形ファイバと一般的な光ファイバとの接続ロスと光ファイバ径比率との関係を示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係る高非線形ファイバを巻くために用いられるボビンを示す側面図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態に係る高非線形ファイバをボビンに巻いて筐体に収めた高非線形ファイバモジュールを示す構成図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態に係る高非線形ファイバをボビンを用いずに巻いて筐体に収めた高非線形ファイバモジュールを示す構成図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態に係る高非線形ファイバの他の例を示す断面図と屈折率プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
高非線形ファイバの非線形特性を示すパラメータである非線形係数γは、(2)式で表される。但し、λは光の波長、n2は光ファイバの非線形屈折率、Aeffは有効断面積である。
【0022】
[数2]
γ=(2π/λ)×(n2/Aeff ) (2)
【0023】
非線形係数γを大きくすることにより効率よく非線形現象を起こすことが可能になる。高非線形ファイバとして好適に機能するためには、γは10W-1km-1以上であることが好ましい。γを大きくするには、(2)式から、n2を大きくし、Aeffを小さくすればよい。しかし、そのような方法でγを大きくすると、カットオフ波長が長波長側にシフトしてしまう。ここでカットオフ波長とは、ITU−T(国際電気通信連合)G.650.1で定義されるファイバカットオフ波長λcをいう。
【0024】
効率よく非線形現象を起こすためには、カットオフ波長は、EDFA(Er−Doped Fiber Amplifier)の増幅帯域よりも短波長とすることが重要である。従って、1530nm以下とすることが好ましい。また、非線形現象を利用して波長変換を行おうとすると励起光の波長を光ファイバの零分散波長付近とする必要があるため、高非線形ファイバの零分散波長が1400nm〜1650nmの範囲にすることが好ましい。
【0025】
十分な非線形性を確保しつつ、カットオフ波長を短く抑えることのできる高非線形ファイバを次に説明する。なお、以下の記載において特に定義しない用語についてはITU−T G.650における定義及び測定方法に従うものとする。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る高非線形ファイバの断面図と、その高非線形ファイバの径方向の屈折率プロファイルを模式的に示す図である。高非線形ファイバの断面図は、中心軸に対して垂直な断面構造であり、また、屈折率プロファイルの横軸は、スケールは異なるが光ファイバの断面図のI−I線に沿った位置に対応している。
【0027】
図1において、高非線形ファイバ10は、光軸中心を含んで直径がaμmの第1コア1と、第1コア1の周囲を取り囲む直径がbμmの第2コア2と、第2コア2の周囲を取り囲み直径がcμmの第3コア3と、第3コア3の周囲を取り囲むクラッド4を有し、これら第1〜第3コア1,2,3及びクラッド4は、例えばシリカ(SiO2)をベースとする材料から構成されている。ここで、クラッド4の直径、即ちクラッド径dは、高非線形ファイバ10が巻かれるボビンの小径化を図るために例えば40、50、60、70、80μmと小さく作成されている。
【0028】
第1コア1は、SiO2に添加物としてGeO2が所定量添加されて最大屈折率がnc1となるように形成されている。また、第2コア2は、屈折率がクラッド4より低く、例えばSiO2にFが所定量添加されて最小屈折率がnc2となる材料から形成されている。さらに、第3コア3は、屈折率がクラッド4より高く且つ第1コア1より低く、例えばSiO2にGeO2が所定量添加されて最大屈折率がnc3となるように形成されている。なお、第1コア1はセンターコア部、第2コア2はディプレスト層、第3コア3はサイドコア層とも呼ばれる。
【0029】
クラッド4は、その屈折率がncであり、一般的には実質的に純SiO2から形成されているが、Fが添加されていてもよい。
【0030】
なお、第1コア1、第2コア2、第3コア3及びクラッド4のそれぞれの屈折率nc1、nc2、nc3、ncは、nc1>nc3>nc>nc2の関係となっている。このような高非線形ファイバ10の屈折率プロファイルはW−セグメント型と呼ばれている。
【0031】
図1に示したプロファイルにおける比屈折率差は次のように表される。クラッド4の屈折率ncを基準にすると、第1コア1の比屈折率差Δ1は(3)式で求められ、また、第2コア2の比屈折率差Δ2は(4)式で求められ、第3コア3の比屈折率差Δ3は(5)式で求められる。
【0032】
[数3] Δ1={(nc1−nc)/nc1}×100% (3)
Δ2={(nc2−nc)/nc2}×100% (4)
Δ3={(nc3−nc)/nc3}×100% (5)
【0033】
高非線形ファイバとして十分な特性を確保するためにはΔ1=2.0%以上、Δ2=−0.3%以下であることが望ましい。
【0034】
一方、クラッド4の外周には、二層構造の被覆5として紫外線硬化樹脂層が形成され、内側の第1被覆5aが外側の第2被覆5bよりもヤング率が低くなる材料から形成されている。その被覆5の外周の直径、即ち被覆径は、例えば125μm±5%と細径になっている。
【0035】
次に、高非線形ファイバが収められるパッケージを小型化するために、高非線形ファイバのクラッド径、被覆径の最適化と、高非線形ファイバについての検査を行う際の処理効率の最適化について説明する。
【0036】
まず、高非線形ファイバを収めるパッケージを小型化するためには、高非線形ファイバ10をより小さなボビンに巻いてコイル状とするか、若しくは高非線形ファイバ10をボビンを使用せずにより小さな径の環にコイル状に巻く必要がある。高非線形ファイバ10をより小さな巻径に巻くためには、高非線形ファイバ10の被覆径を小さくする必要がある。
【0037】
1つのパッケージに対する高非線形ファイバの長さは、高非線形ファイバ10の特性とアプリケーションの設計できまる。つまり、非線形係数γが大きければ短く、非線形係数γが小さければ長い。そして、例えば、非線形係数γが高いタイプの高非線形ファイバの長さは最長で400m程度である。
【0038】
これをモジュール化してパッケージに収めるためには、高非線形ファイバ10を例えばボビンに巻いて使用する。この時のボビンの寸法は高非線形ファイバ10の体積と空隙率に依存する。例えば、高非線形ファイバ10の被覆5の径を100μm〜250μmとした場合の空隙率はほぼ一定の65%である。そのため、ボビン寸法は高非線形ファイバ10の体積に依存する。さらに、高非線形ファイバ10の長さが一定とすれば、ボビン寸法は高非線形ファイバ10の被覆径に依存することになる。従って、ボビンサイズを小さくするには、高非線形ファイバ10の被覆径を小さくすればよい。
【0039】
また、高非線形ファイバ10をボビンを使用せずにリングコイル状にする場合でも同じであって、高非線形ファイバ10の被覆径を小さくすることはリングコイルの体積を小さくすることにつながる。
【0040】
高非線形ファイバ10の被覆径を小さくするためには、高非線形ファイバ10の被覆5を施す効果について考慮しなければならない。
【0041】
被覆の目的は、第1に、第1〜第3コア1,2,3やクラッド4を構成するガラスに傷がついて強度が劣化することを防止することであり、第2に、高非線形ファイバ10に加わる応力により生じる歪みにより伝送特性が劣化することを防止することである。
【0042】
従って、第1の目的に対してはガラスに異物が接触するのを防ぐ厚みが被覆5に要求される。この厚みは、第2の目的である高非線形ファイバ10の応力を緩和するための被覆5の厚さより薄くても十分効果が発揮できる。
【0043】
従って、被覆5の厚みは、主に、第2の目的を発揮するための厚さによって決められる。第1〜第3コア1,2,3やクラッド4の歪みによる伝送特性の劣化を防止するためには、図1に示したように被覆5を二重構造とし、内側の第1被覆5aを構成する樹脂のヤング率を低くし、外側の第2被覆5bを構成する樹脂のヤング率を高くすることにより、いわゆるシェル効果が生じて外力が第1〜第3コア1,2,3やクラッド4に伝搬することを防ぐ構造が好ましい。
【0044】
一般的な光ファイバは、ケーブル化されて様々なフィールドにて使用されるために被覆5の外径が250μm程度になされている。これに対して、高非線形ファイバ10は、上述のようにコイル状に加工されて機器内で使用されるため、加わる応力がケーブル化された光ファイバと比較すると小さく、その被覆5の厚みを一般的な光ファイバより薄く設計することができる。
【0045】
また、高非線形ファイバ10の被覆径を小さくするためには、外力による歪み防止の観点の他に、コア径、クラッド径を小さくすることが考えられる。
【0046】
高非線形ファイバ10のモードフィールド径(MFD)は、1550nmの波長帯において通常4μm以下である。一般に、光の伝播が問題なく行われるためには、モードフィールド径に対して10倍程度のクラッド径が必要である。
【0047】
従って、高非線形ファイバ10の場合には、少なくとも約40μmのクラッド径があれば、それ以上のクラッド径を持つ光ファイバと同様に光の伝播を行うことができる。
【0048】
このように、高非線形ファイバ10のクラッド4を細径化すると、被覆5の径方向の厚みを変えることなく被覆径を小さくできるので、被覆5の機能を従来と同じレベルに保っても、高非線形ファイバ10の細径化を行うことができる。
【0049】
以上のことから、高非線形ファイバ10の被覆5の薄肉化を図ることに加えて、クラッド4の細径化により被覆径を更に小さくすることが可能であり、これら2つの観点からパッケージの小型化に有利になる。
【0050】
一方、高非線形ファイバ10の信頼性において、高非線形ファイバ10にかかる歪みを小さく抑えることは重要である。即ち、高非線形ファイバ10の巻き歪みはクラッド径に比例するため、高非線形ファイバ10のクラッド径を小さくすることにより、高非線形ファイバ10にかかる巻き歪みの増加を抑えつつ高非線形ファイバ10を小さな巻き径にすることが可能になり、コイルのコンパクト化に有利になる。
【0051】
次に、高非線形ファイバ10の検査について説明する。図2は、OTDR装置を用いて光伝送損失特性等を検査するため測定状態を示す構成図である。
【0052】
図2において、OTDR装置11には、コネクタ付光ファイバ12のコネクタ12aが接続されている。また、コネクタ付光ファイバ12のうちコネクタの無い側の端部には、図2の破線で囲んだ部分に示すように、検査機器接続用のダミーファイバ13の一端が融着接続されている。
【0053】
コネクタ付光ファイバ12とダミーファイバ13は、それぞれ、クラッド径が125μm、被覆径が250μmであるシングルモードの光ファイバから構成されている。ダミーファイバ13は、コネクタ付光ファイバ12の長さを補うためのものであって、ボビン17に多重に巻かれ、また、種々の光ファイバと接続するために一般的な太さの光ファイバが使用されている。
【0054】
また、ダミーファイバ13の他端は、ボビン16に巻かれた測定対象である高非線形ファイバ10の一端にV溝装置15により接続されている。
【0055】
なお、以下の説明では、被覆径125μmの高非線形ファイバ10を使用するものとして説明する。
【0056】
V溝装置15は、図3に示すように、V溝15aを有する金属製のV溝座金15bと、V溝15aに対向する部分に凸部15cを持つアクリル製の押さえ板15dとを有している。なお、図3は、ダミーファイバ13の端部の被覆を除去して露出されたクラッド13a及びコア13cをV溝15aと押さえ板15dの間に挟んだ状態を示している。
【0057】
ところで、V溝座金15bのV溝15aは同一幅、および同一深さで直線状に形成されているために、通常行われているようにダミーファイバ13と細径の高非線形ファイバ10のそれぞれの端部の被覆を除去した後に、V溝15a上でそれらの端面を突合接続法により突き合わせると、それらのクラッド4,13aの径が大きく異なるために互いの第1コア1,13cの位置がずれ、接続損失が大きくなり測定精度が低下する。
【0058】
そこで、ダミーファイバ13の端部の被覆を除去してクラッド13aの端面を露出させる一方、高非線形ファイバ10の端部では被覆5を付けたままでその端面を露出させる。
【0059】
その後に、図4に示すように、測定対象である高非線形ファイバ10の被覆のある端面とダミーファイバ13のガラス部分の端面とをV溝15a上で突き合わせると、ダミーファイバ13のコア13cと高非線形ファイバ10の第1コア1の位置がほぼ同じ位置になり、第1コア1,13aは良好に接続される。なお、図4は、図3のII−II線に沿う断面図であるが、図3とは縮尺が異なって表されている。
【0060】
次に、クラッド径が125μmの通常のシングルモード光ファイバをダミーファイバ13とし、さらに、高非線形ファイバ10として被覆径の異なる複数の細径の高非線形ファイバを用意して、図4に示した接続状態にして、高非線形ファイバの被覆径の値に対する接続損失を測定したところ、図5に示す結果が得られた。
【0061】
図5では、横軸として、ダミーファイバ13の125μmのクラッド径に対する高非線形ファイバの被覆径の比であるファイバ径比率を示し、また、縦軸として、ダミーファイバ13と高非線形ファイバ10の接続損失を示している。
【0062】
図5によれば、ファイバ径比率が±5%以上になると、接続損失が急激に上がることがわかる。
【0063】
従って、図4に示したようにV溝装置15を用いて、細径の高非線形ファイバ10とダミーファイバ13とを接続する突合接続法を採用すれば、ダミーファイバ13のクラッド径に対して95〜105%の被覆径を持つ高非線形ファイバ10を使用すると良好な接続が得られる。
【0064】
細径の高非線形ファイバ10の主な特性を表1〜表3に示す。これらの特性の測定を行うにあたっては、図3、図4に示すように、測定対象である細径の高非線形ファイバ10の被覆を剥がさずにそのままV溝15aと押さえ板15dによって把持することにより、汎用品であるクラッド径125μmのダミーファイバ13を用いて問題なく測定することができた。なお、表における曲げロスでのΦは曲げ直径を示している。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
ところで、高非線形ファイバ10のモードフィールド径は、通常4μm前後であって通常のシングルモード光ファイバと比べて非常に小さい。そこで、接続性等を考慮して、パッケージ内で多重に巻かれる高非線形ファイバの端とシングルモード光ファイバの端とを融着接続法により接続し、そのシングルモード光ファイバを介してパッケージ外部の一般的な光ファイバと接続するのが一般的である。
【0069】
そこで、クラッド径を細径化したシングルモードの光ファイバを作製し、細径の高非線形ファイバとの融着接続を行って、以下の例に示す高非線形ファイバの小型モジュールを作成した。
【0070】
小型モジュールは、図6に示すボビン20を用いて図7に示す構造に作製され、または、ボビンを使用しない場合には図8に示す構造に作製される。
【0071】
(第1例)
まず、高非線形ファイバとして、図1に示した構造を有するクラッド径80μm、被覆径125μmの高非線形ファイバ10を長さ400mで図6に示すボビン20に巻付けてモジュールを作製した。この場合、ボビン20での巻付け径、即ちボビン20の内径d2については、高非線形ファイバ10にかかる巻き歪みを考慮して45mmとした。なお、ボビンの内径d2は、ボビン20の胴部20aの外径を指す。
【0072】
この場合、高非線形ファイバ10の被覆径を125μmとしたことにより、250μmの被覆径の光ファイバに比べて体積を1/4に減らせるため、ボビンの小型化につながる。
【0073】
これらを考慮して、ボビン20は、内径d2を45mm、鍔部20bの外径d1を65mm、2つの鍔部20b間の内幅Wを5mm、鍔部20bの厚みW1を1mmとした形状を有する。
【0074】
そして、図7に示すように、コイル化した高非線形ファイバ10の両端にクラッド径80μmのシングルモード光ファイバ21を融着接続し、シングルモード光ファイバ21の他端にフェルール(コネクタ)22をつけた状態でコイルを筐体23に収納する。
【0075】
これにより、シングルモード光ファイバのフェルール出しの高非線形モジュール(HNLM)が作製された。
【0076】
このように、クラッド径80μmのシングルモード光ファイバ21を使用することにより、クラッド径80μmの高非線形ファイバ10との融着接続での接続損失を0.1dB以下に抑えることができた。
【0077】
また、光ファイバの使い易さを考慮し、クラッド径105μmのシングルモード光ファイバ21と細径の高非線形ファイバ10との融着接続を試みた。ここで、クラッド径80μmの高非線形ファイバを使用した場合、そのシングルモード光ファイバ21との接続損失を0.1dB以下に抑えることができた。このモジュールにコネクタ付きのクラッド径125μmのシングルモードファイバを接続して使用する事が可能である。
【0078】
以上のようにボビン20を小型化したため、モジュールのサイズを縦70mm×横100mm×高さ10mmまで小型化することができた。
なお、ボビンの内径を20〜60mmとし、内幅を5〜20mmとしてもよい。
【0079】
(第2例)
次に、高非線形ファイバ10として、クラッド径60μmの光ファイバを用いて長さ400mで図6に示したボビン20に巻付けてモジュールを作製した。この場合、巻付け径、即ちボビン内径d2は高非線形ファイバ10にかかる巻き歪みを考慮して30mmとした。また、ボビン20での鍔部20bの外径d1を55mm、鍔部20b間の内幅Wを5mm、鍔部20bの厚みW1を1mmとした形状を有する。
【0080】
このコイル化した高非線形ファイバ10の両端に、図7に示したように、クラッド径80μmのシングルモード光ファイバ21を融着接続し、シングルモード光ファイバ21の他端にフェルール22をつけた状態でコイルを筐体23に収納する。
【0081】
これにより、シングルモード光ファイバのフェルール出しの高非線形モジュール(HNLM)が作製された。
【0082】
このように、クラッド径80μmのシングルモード光ファイバ21を使用することにより、クラッド径60μmの高非線形ファイバ10との融着接続での接続損失は0.1dB以下に抑えることができた。
【0083】
また、光ファイバの使い易さを考慮し、クラッド径105μmのシングルモード光ファイバ21とクラッド径60μmの高非線形ファイバ10との融着接続での接続損失を0.2dB以下に抑えることができた。このモジュールにコネクタ付きのクラッド径125μmのシングルモードファイバを接続して使用することが可能である。なお、ボビンの内径を20〜40mmとし、内幅を5〜10mmとしてもよい。
【0084】
以上のようにボビン20を小型化したため、モジュールのサイズを縦60mm×横90mm×高さ10mmまで小型化することができた。
【0085】
上述した第1例、第2例において、高非線形ファイバ10を巻き付けるボビン20のサイズはモジュールの用途によって鍔径d1と内幅Wのバランスを変え、サイズを変更することができる。
【0086】
図6に示したボビン20の寸法は光ファイバの体積と空隙率に依存する。ここで検討している光ファイバの被覆径を100μm〜250μmとした場合での空隙率はほぼ一定の65%であるので、ボビン寸法はファイバ体積に依存する。
【0087】
ファイバ体積(ファイバ長、被覆径)とボビンサイズの関係は(6)式で表される。但し、式(6)において、Lはファイバ長、dfは被覆径である。
【0088】
[数4]
L=650W×(d12−d22)/df2 (6)
【0089】
(6)式を整理すると(7)式が得られる。
【0090】
[数5]
1=√{(L・df2/650W+d22)} (7)
【0091】
なお、鍔径d1と同じ径まで光ファイバが巻かれていると巻き崩れが生じるため、鍔径d1とファイバが巻かれる径には多少差が必要である。この径の差をマージンdsとする。マージンdsは光ファイバの巻き崩れを防止するとともに、パッケージのコンパクト化を実現するために2〜10mmが好ましい。したがって、マージンdsを考慮すると鍔径d1は以下の式を満たすことが好ましい。
【0092】
[数6]
√{(L・df2/650W+d22)}+2≦d1
1≦√{(L・df2/650W+d22)}+10 (8)
【0093】
小型ボビンは、(8)式を用いると次に例示する大きさとなる。
例えば、L=400m、d2=30mm、W=5mm、df=125μmの場合、55.1≧d1≧63.1mmとなり、d1が60mmより小さいボビンとすることが可能となる。また、L=400m、d2=30mm、W=10mm、df=125μmの場合、45.1≧d1≧53.1mmとなり、d1が50mmより小さいボビンとすることが可能となる。さらに、L=400m、d2=30mm、W=20mm、df=125μmの場合、39.2≧d1≧47.2mmとなり、d1が45mmより小さいボビンとすることが可能となる。
【0094】
また、被覆径が125μmの光ファイバを400mの長さで巻き付ける場合、内径45mmのボビンでは前記のサイズに対し内幅を15mmにし、鍔径を5mmに小型化することが可能である。また、内径30mmのボビンでは、前記のサイズに対し内幅を15mmにし、鍔径を45mmに小型化することが可能である。
【0095】
ところで、高非線形ファイバを使用したモジュールでは、光ファイバのパラメータやモジュールのアプリケーションに応じて使用するファイバ長を設定する。光ファイバを安定して固定する目的から、所定の長さの光ファイバを使用した場合は光ファイバをボビンに巻回して使用するが、光ファイバが短い場合は必ずしもボビンを使用する必要はない。そこで、ボビンを使用せずにリングコイル状に光ファイバを巻いて作製したモジュールを次に説明する。
【0096】
(第3例)
図8は、ボビンを用いずに高非線形ファイバをリングコイル状に巻いて形成されたモジュールの構成図である。
【0097】
まず、高非線形ファイバとして、図1に示したクラッド径80μmの高非線形ファイバ10を長さ100mで用いてリングコイル状に巻いてモジュールを作製した。リングコイル30の内径は信頼性を考慮して45mmとした。なお、リングコイル30は結束具31によりばらつきが防止されている。
【0098】
そして、リングコイル状に巻いた高非線形ファイバ10の両端にクラッド径80μmのシングルモード光ファイバ32の一端を融着接続法にて接続し、シングルモード光ファイバ32の他端にフェルール(コネクタ)33を付けた状態で環状に巻回して筐体34に収納する。これにより、シングルモード光ファイバ32のフェルール出しの高非線形モジュールを作製した。
【0099】
クラッド径80μmのシングルモード光ファイバ32を使用することにより、クラッド径60μmの高非線形ファイバ10との接続損失は0.1dB以下に抑えることができた。また、クラッド径80μmの高非線形ファイバ10はクラッド径105μmのシングルモード光ファイバ32にも良好に接続できるので、ここでクラッド径105μmのシングルモード光ファイバ32を使用しても良い。このモジュールに、コネクタ付きのクラッド径125μmのシングルモード光ファイバを接続して使用することが可能である。なお、環の内径を20〜60mmとしてもよい。
【0100】
(第4例)
まず、高非線形ファイバとして、図1に示したクラッド径60μmの高非線形ファイバ10を用いて、これを長さ100mでリングコイル状に巻いてモジュールを作製した。リングコイルの内径は信頼性を考慮してから30mmとした。
【0101】
リングコイル状に巻いた高非線形ファイバ10の両端にクラッド径80μmのシングルモード光ファイバ32の一端を融着接続し、シングルモード光ファイバ32の他端にフェルール33をつけた状態でコイルを筐体に収納する事により、シングルモード光ファイバのフェルール出しの高非線形モジュールを作製した。
【0102】
クラッド径80μmのシングルモード光ファイバ32を使用することによりクラッド60μmの高非線形ファイバ10との接続損失は0.1dB以下に抑えることができた。また、このモジュールにコネクタ付きのシングルモード光ファイバを接続して使用することが可能である。なお、環の内径を20〜40mmとしてもよい。
【0103】
(第5例)
高非線形ファイバ10として、クラッド径60μmの光ファイバを用いて長さ400mで図6に示したボビン20に巻付けてモジュールを作製した。巻付け径即ちボビン内径d2は15mmとした。また、ボビン20での鍔部20bの外径d1を50mm、鍔部20b間の内幅Wを4.5mm、鍔部20bの厚みW1を0.5mmとした形状を有する。
【0104】
このコイル化した高非線形ファイバ10の両端に、クラッド径125μmのシングルモード光ファイバを融着接続し、シングルモード光ファイバの他端にコネクタをつけた状態でコイルを筐体に収納する。これにより、コネクタ付きシングルモード光ファイバが接続された高非線形モジュール(HNLM)が作製された。
【0105】
高非線形ファイバ10のクラッド径が、通常のシングルモード光ファイバのクラッド径である125μmに比べて差が大きくなると、融着接続における接続損失を下げるのが非常に困難になる。
【0106】
融着接続する際には、光ファイバ端面同士を突き合わせた状態でそれらの端面を加熱し、光ファイバを溶かして接続する。ここで、光ファイバのクラッド径が大きく違うと、それぞれの光ファイバの単位体積当たりに加わる熱量が違うため、光ファイバに加える熱をクラッド径の太い光ファイバに合わせるとクラッド径の細い光ファイバが完全に溶けて蒸発してしまう。これに対し、その熱を細い光ファイバの方に合わせると、太い光ファイバにかかる熱量が足りなくなりうまく溶けない。この結果、それらの光ファイバはうまく接続されなくなってしまう。
【0107】
(第5例)に示したクラッド径60μmの高非線形ファイバと125μmのシングルモードファイバではガラス体積が大きく違う為、通常の条件ではうまく接続できない。ここでは接続する際に60μmの光ファイバが蒸発しないように融着接続条件を以下のように調整して125μmのシングルモードファイバとの接続を可能にしている。
【0108】
1)放電強度を低くする。
2)放電開始から光ファイバ同士が突き合うまでの時間を短くする。
3)光ファイバ同士が突き合った後の光ファイバの押し込み量を多くし、クラッド径60μmの光ファイバがくびれてしまうことを防ぐ。
4)放電時間を短くする。
【0109】
この融着接続において、(第5例)では接続損失を0.3dB以下に抑えることができた。このようにボビン20を小型化したため、モジュールのサイズを縦55mm×横85mm×高さ7.5mmまで小型化することができた。
【0110】
(第6例)
高非線形ファイバとして、クラッド径60μmの高非線形ファイバ10を用いて、これを長さ100mでリングコイル状に巻いてモジュールを作製した。環の内径は15mmとした。
【0111】
リングコイル状に巻いた高非線形ファイバ10の両端にクラッド径125μmのシングルモード光ファイバの一端を融着接続し、シングルモード光ファイバの他端にコネクタをつけた状態でコイルを筐体に収納する事により、シングルモード光ファイバのコネクタ出しの高非線形モジュールを作製した。
【0112】
(第5例)に示した融着接続条件を用い、クラッド径125μmのシングルモード光ファイバとクラッド60μmの高非線形ファイバ10との接続損失を0.3dB以下に抑えることができた。
【0113】
次に、光ファイバの巻き付け径について説明する。光ファイバのコイルの小型化には光ファイバの巻き付け径が、大きく影響を与えることは既に説明した。即ち、光ファイバにかかる巻き歪みはクラッド径に比例するために、クラッド径を小さくすることにより巻き歪みの増加を抑えつつ、光ファイバを小さな巻径にすることが可能になり、コイルのコンパクト化に有利になる。一般的に使用されるクラッド径125μmの光ファイバを内径60mmに巻いたときの破断確率は約0.25%/20年である。この破断確率は以下の(11)式で与えられる。
【0114】
[数7]
λ=α×Np×{(Bp/E2)/(B/E2)β}×{(εn×t)β/(εpnp×tp)}
・・・・・・(11)
ただし、
p :スクリーニング環境での光ファイバの疲労係数
n :使用環境での光ファイバの疲労
εp :スクリーニング試験時の印加応力
ε :使用環境での印加応力
p :印加応力εpが付加される時間
t :印加応力εが付加される時間
p :スクリーニング試験時の単位長さあたりの破断回数
m :ワイブル分布係数
α :m/(np−2)
β :(np−2)/(n−2)
(Bp/E2)/(B/E2)β :環境によって決定される定数
E :光ファイバの弾性率
B :定数
p :スクリーニング試験雰囲気中でのB
λ :光ファイバの破断率
である。
【0115】
この式に用いられる光ファイバの特性に関する主なパラメータはmとnPである。ここでは、nPは国際的に認知されているテルコーディアGR−20−COREに記載されている最低規格である“20”を用いて、mは3〜6程度である事が一般的である為“3”を用いて、εPは光ファイバが1%伸びる応力レベルを用いて算出した。
【0116】
これと同じパラメータを用いて計算すると、クラッド径60μmの光ファイバの場合には、内径30mmに巻いたときの破断率が約0.25%/20年であるため、上記した(第2例)、(第4例)ではこの径を採用している。ここで、(第2例)で使用したクラッド径60μmの高非線形ファイバのmとnPを測定した結果それぞれ“1.2”と“27”であった。εPを光ファイバが1%伸びる応力レベルとすると、この光ファイバは上記の信頼性を確保しつつ、内径20mmに巻くことが可能である。また、εPを光ファイバが2%伸びる応力レベルとすると内径12mmに、さらにεPを2.1%の応力レベルとすると内径10mmに巻く事が可能である。この結果をもとに、(第5例)、(第6例)では内径15mmを採用した。
【0117】
ところで、上述した実施形態では、高非線形ファイバとして図1に示すようなW−セグメント型プロファイルを有する光ファイバを使用しているが、これに限定されるものではない。その他に、図9に示すような屈折率がW型プロファイルを有する構造の光ファイバを用いてもよい。
【0118】
図9において、高非線形ファイバ40は、光軸中心を含んで直径がa1μmの第1コア41と、第1コア41の周囲を取り囲む直径がb1μmの第2コア42と、第2コア42の周囲を取り囲むクラッド43を有し、これら第1、第2コア41,42及びクラッド43は、例えばシリカ(SiO2)をベースとする材料から構成されている。ここで、クラッド43の直径、即ちクラッド径は、例えば40〜70μm、又は40〜80μmと小径である。
【0119】
第1コア41は、SiO2に添加物としてGeO2が所定量添加されて最大屈折率がnc11となるように形成されている。また、第2コア42は、屈折率をクラッド43より低くする材料として、例えばSiO2にFが所定量添加されて最小屈折率がnc22となる材料から形成されている。
【0120】
クラッド43は、その屈折率がnc0であり、一般的には実質的に純SiO2から形成されているが、Fが添加されていてもよい。
【0121】
なお、第1コア41、第2コア42及びクラッド43のそれぞれの屈折率nc11、nc22、nc0は、nc11>nc0>nc22の関係となっている。このような光ファイバ40の屈折率プロファイルはW型と呼ばれている。
【0122】
図9に示した比屈折率差は次のように表される。クラッド4の屈折率nc0を基準にすると、第1コア41の比屈折率差Δ11は(9)式で求められ、また、第2コア42の比屈折率差Δ22は(10)式で求められる。
【0123】
[数8]
Δ11={(nc11−nc0)/nc11}×100% (9)
Δ22={(nc22−nc0)/nc22}×100% (10)
【0124】
なお、図9に示した光ファイバを高非線形ファイバとして作製した場合の主な特性を表4〜表6に示す。
【0125】
【表4】

【0126】
【表5】

【0127】
【表6】

【符号の説明】
【0128】
1、41:第1コア
2、42:第2コア
3:第3コア
4、43:クラッド
5、44:被覆
10,40:高非線形ファイバ
11:OTDR装置
12:コネクタ付光ファイバ
13:ダミーファイバ
15:V溝装置
16、17、20:ボビン
23、32:筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと、
前記光ファイバが巻かれるボビンと、を備え、
前記ボビンに巻かれる前記光ファイバ長をL(m)、
前記ボビンの両鍔間の内幅をW(mm)、
前記ボビンの内径をd2(mm)、
前記光ファイバの被覆径をdf(μm)とするとき、
前記ボビンの鍔径d1が、
√{(L・df2/650W+d22)}+2(mm)以上、√{(L・df2/650W+d22)}+10(mm)以下であり、
前記ボビンの内径が10mm以上、40mm以下である
ことを特徴とする光ファイバモジュール。
【請求項2】
前記ボビンの両鍔間の内幅が5mm以上、20mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバモジュール。
【請求項3】
前記ボビンの両鍔間の内幅が5mm以上、10mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバモジュール。
【請求項4】
前記光ファイバは、コアと該コアを取り囲むクラッドと該クラッドを覆う被覆とを有し、
非線形現象を利用した光信号処理を行う際に用いられる高非線形光ファイバであり、
直径20mmにて曲げたときの波長1550nmにおける曲げ損失が、0.01dB/m以下であり、
波長1550nmにおける非線形係数γが、10W-1km-1以上であり、
カットオフ波長λcが、1530nm以下であり、
零分散波長が、1400nm以上、1650nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光ファイバモジュール。
【請求項5】
前記光ファイバの前記クラッドの径が、40μm以上、80μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の光ファイバモジュール。
【請求項6】
前記光ファイバの前記クラッドの径が、40μm以上、70μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の光ファイバモジュール。
【請求項7】
前記光ファイバの前記コアは、第1コアと前記第1コアを取り囲む第2コアを含み、
前記クラッドの屈折率は、前記第1コアの屈折率より低く、前記第2コアの屈折率より高く、且つ前記第2コアの前記クラッドに対する比屈折率差が−0.3%以下であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一つに記載の光ファイバモジュール。
【請求項8】
前記光ファイバの前記コアは、前記第2コアと前記クラッドの間に、前記第1コアの屈折率より低く、且つ前記クラッドの屈折率より高い屈折率を有する第3コアをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の光ファイバモジュール。
【請求項9】
前記光ファイバの両端に、80μm以上、105μm以下のクラッド径のシングルモードファイバが接続されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の光ファイバモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−61170(P2010−61170A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284469(P2009−284469)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【分割の表示】特願2005−192877(P2005−192877)の分割
【原出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】