説明

光ファイバ用ソケット

【課題】光ファイバ用ソケットにおいて、光ファイバと光電変換素子の光軸合わせ作業を簡単化し、しかも光軸合わせ精度を向上し、光電変換素子の信頼性向上と長寿命化を図る。
【解決手段】ソケット1は、同時成形された回路基板31及びスリーブブロック受け部材32と、スリーブブロック4とを備える。スリーブブロック4の嵌合突起42をスリーブブロック受け部材32の嵌合穴32bに嵌合することにより、光電変換素子2は中空封止され、光ファイバ10と光電変換素子2の光軸は一致する。スリーブブロック4と、それを囲むスリーブブロック受け部材32の枠32cの隙間には封止部材6が入る。それにより、嵌合と挿入だけで光軸合わせができる。また、成形技術による最高成形精度は寸法誤差が1μm以下であるので、嵌合突起42及び嵌合穴32bの寸法及び位置の各精度を同程度にすることで光軸合わせ精度を向上できる。また、封止空間の気密性が高まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの先端部を保持するフェルールが嵌挿され、光ファイバと光電変換素子とを光学的に結合する光ファイバ用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光電変換素子が実装された基板と、その基板に取り付けられるスリーブとを備え、その取付け後にフェルールがスリーブに嵌挿されると、光ファイバと光電変換素子とが集光レンズを介して光結合される光ファイバ用ソケットが知られている。このソケットにおいては、基板に2つの嵌合穴が穿設されており、また、スリーブの基板との対向面に2本の嵌合軸が設けられており、それら2本の嵌合軸がそれぞれ上記2つの嵌合穴に嵌め込まれる。そして、この嵌込みにより、スリーブが基板に当接する。その当接状態で、光電変換素子がスリーブにより中空封止され、かつ光ファイバの光軸と光電変換素子の光軸とが一致するように、嵌合穴と嵌合軸とは位置決めされている。このソケットによれば、嵌合軸を嵌合穴に合わせてスリーブを基板に嵌合するだけで、光ファイバと光電変換素子の光軸を合わせることができ、光軸合わせの作業が簡単になる。また、上記嵌合により、光電変換素子を中空封止でき、その結果、光電変換素子を外部の異物から保護したり、外気の光電変換素子への影響を抑制したりすることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−5872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記ソケットにおいて、基板に嵌合穴を穿設する方法としては各種の方法があるが、例えば、パンチングにより基板の一部を抜いて嵌合穴を形成する場合、その加工精度は40μm程度である。従って、その加工誤差に、光電変換素子の位置決め誤差が重なると、たとえスリーブが光学部品に要求される寸法精度を有していたとしても、光ファイバと光電変換素子の光軸合わせの精度が50μm程度になってしまう。そのため、光軸合わせの精度向上が望まれていた。
【0005】
また、スリーブが基板に当接された状態で、寸法誤差等に起因してスリーブと基板との間に隙間が生じ、スリーブブロックによる封止空間の気密性が低くなる虞がある。従って、封止空間内に外部から異物又は外気が入り込み、その結果、封止空間内の光電変換素子が、それらの影響を受けて故障したり、寿命が短くなったりすることがある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、光ファイバと光電変換素子の光軸合わせ作業を簡単化でき、しかも光軸合わせ精度を向上でき、光電変換素子の信頼性向上と長寿命化を図ることができる光ファイバ用ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の光ファイバ用ソケットは、光電変換素子と、前記光電変換素子が実装された回路基板、及び該回路基板と同時成形され複数の位置決め用の嵌合穴が形成された樹脂製のスリーブブロック受け部材を有する回路ブロックと、前記スリーブブロック受け部材と対向する面に設けられ前記複数の嵌合穴にそれぞれ嵌合される複数の位置決め用の嵌合突起と、光ファイバの先端部を保持するフェルールが嵌挿されるスリーブと、前記スリーブに前記フェルールが嵌挿された状態で前記光ファイバと前記光電変換素子とを光学的に結合させる集光機能を有したレンズとが一体的に形成されており、前記嵌合突起が前記嵌合穴に嵌合されることにより前記回路ブロックに当接するスリーブブロックと、前記スリーブブロックと前記回路ブロックとの当接部分の隙間を封止する封止部材と、を備え、前記スリーブブロックが前記回路ブロックに当接した状態で、前記光電変換素子が該スリーブブロックにより中空封止され、かつ前記光ファイバの光軸と該光電変換素子の光軸とが一致するように、前記嵌合突起及び前記嵌合穴の位置決めがなされており、前記スリーブブロック受け部材は、前記スリーブブロックが前記回路ブロックに当接した状態で該スリーブブロックの外周を囲むように該回路ブロックの表面に突設された枠を有し、前記封止部材は、前記枠の内周面と前記スリーブブロックの外周面との隙間に入れられることを特徴とする。
【0008】
この発明において、前記封止部材は、弾性を有し前記隙間に圧入される環状体により構成されることが望ましい。
【0009】
この発明において、前記枠の内周面と前記スリーブブロックの外周面の少なくともいずれかにおける、前記隙間を形成する部分に、前記環状体を嵌めるための溝が設けられていることが望ましい。
【0010】
この発明において、前記環状体は、前記隙間を塞ぐ蓋体で構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スリーブブロックの嵌合突起をスリーブブロック受け部材の嵌合穴に嵌合させ、スリーブブロックにフェルールを嵌合するだけで、フェルール内の光ファイバと回路基板上の光電変換素子との光軸合わせを行うことができる。従って、光軸合わせの作業が簡単になる。
また、スリーブブロック受け部材の嵌合穴は、当該部材と回路基板との同時成形時に形成することができ、成形技術で実現可能な最高成形精度は、寸法誤差が1μm以下の精度であることから、嵌合穴の寸法及び位置の各精度を同程度とすることができる。従って、従来のように回路基板をパンチング加工して嵌合穴を形成する場合と比べ、嵌合穴の寸法及び位置精度を高くすることができ、それにより、嵌合穴と嵌合突起との嵌合精度を向上することができ、結果として、光軸合わせの精度向上を図ることができる。
さらに、たとえスリーブブロックと回路ブロックとの当接部分に隙間が生じていたとしても、その隙間を封止部材によって封止することができ、従って、スリーブブロックによる封止空間の気密性が高くなる。そのため、封止空間に異物及び外気が入り込み難くなり、封止空間内の光電変換素子を異物から保護し、かつ外気の影響を受け難くすることができる。その結果、光電変換素子の故障を減らすことができて、信頼性の向上を図ることができ、また、光電変換素子の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ファイバ用ソケットの分解斜視図。
【図2】(a)は上記ソケットの分解断面図、(b)はその組立て完成後の断面図。
【図3】(a)(b)は上記ソケットにフェルールを嵌挿する前と後の様子を示す断面図。
【図4】上記実施形態の第1の変形例に係る光ファイバ用ソケットの分解斜視図。
【図5】(a)〜(c)は上記ソケットが組み立てられる様子をその組立て順に示す断面図。
【図6】(a)〜(c)は上記実施形態の第2の変形例に係る光ファイバ用ソケットが組み立てられる様子をその組立て順に示す断面図。
【図7】(a)(b)は上記実施形態の第3の変形例に係る光ファイバ用ソケットが組み立てられる様子をその組立て順に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る光ファイバ用ソケット(以下、単にソケットという)について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態のソケットの構成を示す。そのソケット1は、光電変換素子2と、光電変換素子2が実装された回路ブロック3と、回路ブロック3に取り付けられるスリーブブロック4と、スリーブブロック4と回路ブロック3との当接部分の隙間を封止する封止部材(同図では不図示)とを備える。スリーブブロック4には、光ファイバ10の先端部を保持するフェルール11が嵌挿され、それにより、光ファイバ10と光電変換素子2とが光学的に結合される。
【0014】
光電変換素子2は、発光素子と受光素子のいずれであってもよい。回路ブロック3は、光電変換素子2が実装された回路基板31と、回路基板31と同時成形された樹脂製のスリーブブロック受け部材(以下、受け部材という)32とを有する。
【0015】
回路基板31は、平面視で一部が突出した凸形状であり、その突出部分に、光電変換素子2が実装されている。以下、回路基板31において光電変換素子2が実装された面を素子実装面31aという。素子実装面31aには、制御IC5がさらに実装されている。制御IC5は、光電変換素子2が発光素子である場合、光電変換素子2の発光制御を行い、光電変換素子2が受光素子である場合、光電変換素子2により受信され光電変換された信号の増幅等の信号処理を実行する。
【0016】
受け部材32は、例えばインサート成形により回路基板31と同時成形されており、光電変換素子2とその周囲の素子実装面31aとが露出するように形成されている。受け部材32は、その露出した素子実装面31aと同一平面を構成する表面32aを有し、表面32aには、2つの位置決め用の嵌合穴32bが成形により設けられている。嵌合穴32bは、上記の数に限定されず、複数であればよい。嵌合穴32bは、円柱状の貫通孔であるが、一端が閉塞された穴であってもよい。光電変換素子2の実装位置は、2つの嵌合穴32bの各々の中心を結ぶ線分の中点である。表面32aと素子実装面31aとの間に、誤差により高低差があったとしても、それは1mm以内であることが好ましく、0.5mm以内であることが特に望ましい。
【0017】
受け部材32は、スリーブブロック4が受け部材32に嵌合され当接した状態で、スリーブブロック4の外周を囲むように回路ブロック3の表面に一体的に突設された枠32cを有する。枠32c及びスリーブブロック4は、枠32cの内周面とスリーブブロック4の外周面との間に隙間が生じる寸法とされている。枠32cの穴は、スリーブブロック4の外周に沿う形状であり、例えば、スリーブブロック4が円筒状である場合、枠32cの穴は円状である。光電変換素子2及び嵌合穴32bは、枠32c内に収められている。
【0018】
受け部材32の基材は、例えばアクリル等の熱可塑性樹脂又はエポキシ等の熱硬化性樹脂であり、強度を高めるため、例えばガラス繊維を含むことが望ましい。このような材料により作製される光学部品は、非常に高精度に成形することができ、最も高精度なものは、いわゆるサブミクロンの精度、すなわち寸法誤差が1μm以下の精度であり、受け部材32はその成形精度で形成されている。
【0019】
スリーブブロック4は、スリーブ41と、後述のレンズ(図1では不図示)と、位置決め用の嵌合突起42とが一体的に形成されている。スリーブ41には、使用時に、フェルール11が嵌挿される。嵌合突起42は、嵌合穴32bに嵌合される位置決め用のピンで構成される。
【0020】
嵌合突起42は、嵌合穴32bと同数であり、これらの嵌合突起42は、スリーブ41において受け部材32と対向する面41aに設けられている。嵌合突起42は、嵌合穴32bに嵌合可能な形状であって、例えば円柱状であり、その先端は、嵌合穴32bに挿入し易いように丸みを帯びていることが望ましい。2つの嵌合突起42は、2つの嵌合穴32bにそれぞれ嵌合される。嵌合突起42は、その長さが枠32cの厚みよりも長い。従って、スリーブブロック4を回路ブロック3に取り付けるとき、最初に嵌合突起42を嵌合穴32bに挿入でき、次いでスリーブブロック4を枠32cに挿入できるようにされている。
【0021】
スリーブブロック4は、例えば熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を材料とする光学材料により形成されており、その光学材料は、特定波長、例えば850nmのレーザ光を透過させるものである。スリーブブロック4の成形精度は、受け部材32と同程度とする。
【0022】
図2(a)(b)は、ソケット1の内部構造を示す。これらの図において、フェルール及び光ファイバの図示は省略する。回路基板31は、両面に配線パターン31bが形成された基板であり、その基板は、配線パターン31bを表面に形成しても配線パターンが剥離し難い材料から成る。配線パターン31bは、光電変換素子2への信号送信又は光電変換素子2からの信号受信のための信号ライン等を含む。素子実装面31aの配線パターン31bは、信号を伝送する信号ラインとし、素子実装面31aの裏面31cの配線パターン31bはグランドラインとする。
【0023】
スリーブブロック4のレンズ43は、スリーブ41の回路ブロック3側の開口端よりも内方に設けられており、スリーブ41にフェルールが嵌挿されるとき、その嵌挿状態で光ファイバと光電変換素子2とを光学的に結合させる集光機能を有する。
【0024】
嵌合突起42が嵌合穴32bに嵌合された状態で、スリーブブロック4の面41aは、回路ブロック3の素子実装面31a及び表面32aに当接する。その当接によって、光電変換素子2及び制御IC5がレンズ43とスリーブ41の内壁41bとにより中空封止されるように、各嵌合突起42及び各嵌合穴32bは、予め位置決めがなされている。
【0025】
封止部材6は、スリーブブロック4の外周面と枠32cの内周面との隙間に入れられる。封止部材6は、例えばシリコン系のシーリング材で構成され、組立て工程において、粘性及び流動性の有る状態で上記隙間に充填され、その後、硬化する。上記シーリング材は、1液タイプの湿気硬化型であってもよいし、2液タイプの反応硬化型であっても構わない。封止部材6は、熱硬化性樹脂であってもよい。
【0026】
図3(a)(b)は、フェルール11がスリーブ41に嵌挿される前と後の様子を示す。嵌合突起42が嵌合穴32bに嵌合された状態で、スリーブ41にフェルール11が嵌挿されたとき、光ファイバ10の光軸と光電変換素子2の光軸とが一致するように、各嵌合突起42と各嵌合穴32bとは、予め位置決めがなされている。従って、スリーブ41にフェルール11が嵌挿されると、光ファイバ10と光電変換素子2との光軸合わせが行われ、それにより、パッシブアライメントが実行され、結果として、両者の光軸(図3(b)の破線で示す)が一致する。
【0027】
次に、図1及び図2を参照して、ソケット1の組立て方法を説明する。本実施形態では、測定装置で光信号のレベルをモニタしながら光ファイバと光電変換素子の光軸合わせを行うアクティブアラインメントを実行せず、各部品の寸法精度と位置決め精度だけで所定の組立て精度を確保する。
【0028】
まず、2つの嵌合穴32bの各々の開口周縁形状と位置とが測定される。この測定は、例えば、チップマウンタの撮像装置を用いて、回路ブロック3の嵌合穴32bを含む領域を撮像し、その撮像された領域の画像を基に、周知の画像特徴抽出技術を用いて各嵌合穴32bの開口周縁形状と位置とを抽出することより行われる。ここで、各部の寸法を例示する。光電変換素子2の平面寸法は□0.3(0.3mm×0.3mm)程度であり、また、2つの嵌合穴32bの間隔は4mm程度である。従って、チップマウンタの撮像装置は微小領域を撮像すればよいので、レンズの撮像倍率を高くすることにより、各嵌合穴32bの開口周縁形状及び位置の測定精度を高くすることができる。例えば、10μm程度の精度まで位置決め精度を上げることができ、本実施形態ではそのようにする。
【0029】
各嵌合穴32bの開口周縁形状及び位置の測定後、その測定された開口周縁形状及び位置を基に、画像特徴抽出技術を用いて各嵌合穴32bの中心位置が求められる。そして、それらの中心位置を基準として、光電変換素子2の位置決めがなされる。この位置決めにおいては、例えば、各嵌合穴32bの中心を結ぶ線分が求められ、その線分の中点が光電変換素子2の実装位置に決められる。その後、回路基板31におけるその決められた実装位置に光電変換素子2が実装される。
【0030】
光電変換素子2の実装後、素子実装面31aと受け部材32の表面32aとに接着剤が塗布される。接着剤の塗布位置は、接着剤が光電変換素子2等に付かないようにするため、スリーブ41の面41aと接する部分の隅付近とされる。接着剤の塗布後、嵌合突起42が嵌合穴32bに嵌合され、スリーブ41が枠32cに挿入される。そして、スリーブブロック4の外周面と枠32cの内周面との隙間に封止部材6が充填され、その後、硬化する。なお、スリーブブロック4及びフェルール11は、光学部品として要求されるレベルの嵌合精度を満たしている。
【0031】
上記のように構成された本実施形態のソケット1では、スリーブブロック4の嵌合突起42を受け部材32の嵌合穴32bに嵌合させ、フェルール11をスリーブブロック4に嵌合するだけで、光電変換素子2と光ファイバ10の光軸合わせを行うことができる。従って、光軸合わせ作業が簡単になる。
【0032】
また、受け部材32の嵌合穴32bは、受け部材32と回路基板31との同時成形時に形成することができ、成形技術で実現可能な最高成形精度は、寸法誤差が1μm以下の精度であることから、嵌合穴32bの寸法及び位置の各精度を同程度とすることができる。従って、従来のように回路基板をパンチング加工して嵌合穴を形成する場合と比べ、嵌合穴32bの寸法及び位置精度を高くすることができ、それにより、嵌合穴32bと嵌合突起42との嵌合精度を向上することができる。その結果、光軸合わせの精度向上を図ることができる。
【0033】
また、光電変換素子2の実装位置を決めるのに、撮像装置が用いられ、その撮像装置による撮像範囲は回路基板31全体ではなく、位置決めの基準となる各嵌合穴32bを含む微小範囲で済む。そのため、撮像装置のレンズの撮像倍率を高くすることにより、各嵌合穴32bの測定精度を高くすることができ、従って、位置決め精度は、寸法誤差が10μm程度の精度にまで上げることができる。さらに、スリーブブロック4は光学部品に要求される成形精度を有することから、嵌合突起42と嵌合穴32bとの嵌合精度を数μm程度にすることができる。従って、スリーブブロック4とフェルール11とが、光学部品として要求されるレベルの嵌合精度を有していれば、上記各種精度から、光電変換素子2と光ファイバ10を十数μm程度の精度で光結合させることができる。そのため、光軸合わせの精度をさらに向上することができる。
【0034】
また、光軸合わせにおいて、光信号の測定装置の接続及びスリーブブロックの位置の微調整が必要なアクティブアライメントと比べ、それらが不要なので、光軸合わせに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0035】
また、各嵌合穴32bが撮像され、その撮像された各嵌合穴32bの画像を基に、画像特徴抽出技術により各嵌合穴32bの中心位置が求められるので、各嵌合穴32bの開口周縁形状に係らず、高精度に各嵌合穴32bの中心位置を求めることができる。従って、その求められた各嵌合穴32bの中心位置を基準にして、光電変換素子2の位置を高精度に決めることができる。
【0036】
また、素子実装面31aと受け部材32の表面32aとが同一平面に在るので、撮像装置によって撮像したそれらの平面視画像を基に、各嵌合穴32b間、及び各嵌合穴32bと光電変換素子2の実装位置との間の距離を正確に測定することができる。従って、光電変換素子2の位置決め精度がさらに高まる。
【0037】
また、スリーブブロック4の外周面と回路ブロック3の枠32cの内周面との隙間に封止部材6が入れられるので、たとえスリーブブロック4と回路ブロック3との当接部分に隙間が生じていたとしても、当接部分の隙間を封止部材6により封止することができる。従って、スリーブブロック4による封止空間の気密性が高くなる。そのため、封止空間に異物及び外気が入り込み難くなり、封止空間内に在る光電変換素子2を異物から保護し、かつ外気の影響を受け難くすることができる。その結果、光電変換素子2の故障を減らすことができて、信頼性の向上を図ることができ、また、光電変換素子2の長寿命化を図ることができる。
【0038】
また、上記封止空間の気密性を高めるための作業は、スリーブブロック4の外周面と枠32cの内周面との隙間に封止部材6を入れるだけで済むので、作業が簡単になる。
【0039】
また、回路基板31の配線は、高周波信号を伝送することから、その配線については、信号の反射等を防ぐためインピーダンス整合を取ることが重要である。その点で、回路基板31は、両面配線基板であることから、配線自由度が高く、インピーダンス整合の設計自由度が高いので、インピーダンス整合を高精度に行うことができる。従って、高周波信号の反射等を防いで通信品質の向上を図ることできる。しかも、高精度なインピーダンス整合に必要とされるグランドライン等の配線は、回路基板31とは別に用意しなくて済み、従って、ソケット1の小型化を図ることができる。
【0040】
また、制御IC5を封止するのに、別途、封止部材及び封止工程を設ける必要はないので、部品点数及び組立て工程数の削減によりコスト低減を図ることができ、また、組立て工程数の削減により製造に必要な期間を短縮することができる。
【0041】
ところで、嵌合突起42の長さが枠32cの厚みよりも短い場合、スリーブブロック4を回路ブロック3に取り付ける際に、嵌合突起42を嵌合穴32bに挿入しようとしても、まずスリーブブロック4を枠32cに挿入する必要が生じる。そのため、挿入時に嵌合突起42の位置がずれてしまい、結果として、嵌合突起42を嵌合穴32bに挿入し難くなって組立てに時間が掛かったりする虞がある。
【0042】
それに対して、本実施形態では、嵌合突起42が枠32cの厚みよりも長いことから、スリーブブロック4を回路ブロック3に取り付けるとき、最初に嵌合突起42を嵌合穴32bに嵌合でき、次いでスリーブブロック4を枠32cに挿入できる。従って、スムーズな取付けが可能になり、組立て時間を短縮できる。
【0043】
(第1の変形例)
図4及ぶ図5は、上記実施形態の第1の変形例に係るソケットの構成を示す。これらの図において、上記実施形態と同一の部材には、同一の符号を付す(以下、同様)。本変形例のソケット1は、上記実施形態と比べ、封止部材6の構成が相違している。本変形例の封止部材6は、弾性を有するゴム製の環状体により構成される。その環状体の環内径は、スリーブブロック4の外径よりも僅かに小さい寸法であり、環状体の環外径は、枠32cの内径よりも僅かに小さい寸法であり、環状体は、スリーブブロック4の外周面と枠32cとの隙間に圧入される。上記環状体は、例えば縦断面形状が円であるOリングにより構成される。
【0044】
本変形例においては、スリーブブロック4の外周面と枠32cの内周面との隙間に封止部材6を圧入することにより、その隙間を封止でき、結果として、スリーブブロック4による封止空間の気密性を向上することができる。従って、気密性向上のための作業は、封止部材6の圧入だけで済み、封止部材が例えば熱硬化性樹脂で構成される場合のように封止部材を加熱して冷却する工程は不要になり、従って、作業が簡単で、かつ時間的に短くなる。
【0045】
また、封止部材6はOリングにより構成されるので、封止部材6を上記隙間に入れる際、封止部材6が隙間の開口縁に引っ掛かり難くなる。また、封止部材6が上記隙間に入り込んだ状態で、封止部材6がスリーブブロック4の外周面及び枠32cの内周面と接触する面積が狭くなることから、封止部材6を隙間に圧入するときの摩擦抵抗を減らすことができる。従って、封止部材6の圧入作業をスムーズに行うことができる。
【0046】
(第2の変形例)
図6は、上記実施形態の第2の変形例に係るソケットの構成を示す。このソケット1においては、封止部材6が上記第1の変形例と同じ構成の環状体であり、枠32cの内周面とスリーブブロック4の外周面とにおける隙間を形成する部分に、封止部材6を嵌めるための溝32d、4aがそれぞれ設けられている。溝は、枠32cとスリーブブロック4のいずれか一方にだけ形成されていてもよい。
【0047】
溝32d、4aは、それぞれ、枠32cの内周面とスリーブブロック4の外周面とに、周方向に沿って形成されており、互いに対向する位置に在る。溝32dには、封止部材6の内周部分が嵌まり、溝4aには、封止部材6の外周部分が嵌まる。溝32d、4aは、嵌まる封止部材6と密着できるように、封止部材6の形状に合わせて、断面が円弧状とされていることが望ましい。
【0048】
本変形例のソケット1の組立て工程においては、例えば、封止部材6が溝4aに嵌め込まれ、その後、嵌合突起42が嵌合穴32bに挿入され、スリーブブロック4が枠32cに挿入され、封止部材6の外周部が溝32dに嵌まり込む。スリーブブロック4の挿入の際、封止部材6が枠32cの開口周縁に当接して溝4aから外れることを防ぐため、溝4aの深さを封止部材6の断面半径程度の寸法として、封止部材6の内周部分全体が溝4aに嵌まり込むようにしていることが望ましい。溝4aへの封止部材6の嵌込みは、スリーブブロック4を回路ブロック3に取り付けた後に、スリーブ41と枠32cとの隙間に圧入することにより、行われてもよい。
【0049】
本変形例においては、上記第1の変形例と同様に、スリーブブロック4による封止空間の気密性を向上できる、という効果が得られる。また、封止部材6が溝32d、4aに引っ掛かることから、封止部材6が外れ難くなり、上記の気密性を確実に高くすることができる。また、封止部材6が、溝32d、4aに嵌まることにより、スリーブブロック4の外周面及び回路ブロック3の内周面と接触する面積が増えるので、上記外周面と上記内周面との隙間を確実に封止でき、そのため、上記の気密性をさらに高くすることができる。
【0050】
(第3の変形例)
図7は、上記実施形態の第3の変形例に係るソケットの構成を示す。このソケット1は、上記実施形態と比べ、封止部材6の構成が相違している。本変形例の封止部材6は、弾性を有するゴム製の環状体であって、スリーブブロック4の外周面と枠32cの内周面との隙間に圧入されてその隙間を塞ぐ蓋体により構成される。
【0051】
封止部材6は、上記隙間に圧入される圧入部61と、圧入部61の上部から側方に延びた鍔部62とを有する。圧入部61の環内径は、スリーブブロック4の外径よりも僅かに小さい寸法であり、圧入部61の環外径は、枠32cの内径よりも僅かに小さい寸法である。
【0052】
本変形例のソケット1の組立て工程においては、スリーブブロック4が回路ブロック3に嵌合された後、スリーブブロック4の外周面と枠32cの内周面との隙間に、封止部材6が挿入される。この挿入により、圧入部61は上記隙間に圧入され、鍔部62は上記隙間の開口縁に引っ掛かって載り、このようにして、上記隙間が塞がれる。
【0053】
本変形例においては、上記第1の変形例と同様に、スリーブブロック4による封止空間の気密性を向上できる、という効果が得られる。また、鍔部62は、スリーブブロック4の外周面と枠32cの内周面との隙間に入り込まないので、その隙間が封止部材6により封止されているか否かを視認し易くなる。従って、組立て作業の効率を向上させることができる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態及び各変形例の構成に限定されるものでなく、使用目的に応じ、様々な変形が可能である。例えば、回路基板31は、配線パターン31bが積層された多層配線基板であってもよい。また、そのような場合に、回路基板31の裏面31cに実装された電子部品と、その電子部品が接続された配線パターン31bとを、受け部材32と回路基板31との同時成形により封止しても構わない。この構成によれば、裏面31cにおいて、実装された電子部品と配線との間、電子部品間、及び配線間が異物及び結露等により短絡することを防ぐことができ、回路の故障を防止することができる。
【0055】
また、嵌合穴32bの形状が四角柱状であり、これに対応して、嵌合突起42が四角柱状のピンであってもよい。このような場合の組立て工程における光電変換素子2の位置決めは、平面視で各嵌合穴32bの中心又は所定の1点の頂点を基準としてなされる。頂点を用いる場合、各嵌合穴32bにおいて他方の嵌合穴32bに対向する辺が選ばれ、その選ばれた各辺につき、その辺の一端を他方の辺の他端と結ぶ対角線が求められ、求められた2本の対角線の交点が光電変換素子2の位置とされる。
【符号の説明】
【0056】
1 光ファイバ用ソケット
2 光電変換素子
3 回路ブロック
31 回路基板
32 スリーブブロック受け部材
32b 嵌合穴
32c 枠
32d 溝
4 スリーブブロック
4a 溝
41 スリーブ
41a スリーブブロック受け部材と対向する面
42 嵌合突起
43 レンズ
6 封止部材
10 光ファイバ
11 フェルール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子と、
前記光電変換素子が実装された回路基板、及び該回路基板と同時成形され複数の位置決め用の嵌合穴が形成された樹脂製のスリーブブロック受け部材を有する回路ブロックと、
前記スリーブブロック受け部材と対向する面に設けられ前記複数の嵌合穴にそれぞれ嵌合される複数の位置決め用の嵌合突起と、光ファイバの先端部を保持するフェルールが嵌挿されるスリーブと、前記スリーブに前記フェルールが嵌挿された状態で前記光ファイバと前記光電変換素子とを光学的に結合させる集光機能を有したレンズとが一体的に形成されており、前記嵌合突起が前記嵌合穴に嵌合されることにより前記回路ブロックに当接するスリーブブロックと、
前記スリーブブロックと前記回路ブロックとの当接部分の隙間を封止する封止部材と、を備え、
前記スリーブブロックが前記回路ブロックに当接した状態で、前記光電変換素子が該スリーブブロックにより中空封止され、かつ前記光ファイバの光軸と該光電変換素子の光軸とが一致するように、前記嵌合突起及び前記嵌合穴の位置決めがなされており、
前記スリーブブロック受け部材は、前記スリーブブロックが前記回路ブロックに当接した状態で該スリーブブロックの外周を囲むように該回路ブロックの表面に突設された枠を有し、
前記封止部材は、前記枠の内周面と前記スリーブブロックの外周面との隙間に入れられることを特徴とする光ファイバ用ソケット。
【請求項2】
前記封止部材は、弾性を有し前記隙間に圧入される環状体により構成されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ用ソケット。
【請求項3】
前記枠の内周面と前記スリーブブロックの外周面の少なくともいずれかにおける、前記隙間を形成する部分に、前記環状体を嵌めるための溝が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ用ソケット。
【請求項4】
前記環状体は、前記隙間を塞ぐ蓋体で構成されることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−242661(P2012−242661A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113652(P2011−113652)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】