説明

光ファイバ製造方法

【課題】低線速であっても小型で効率よくガラスファイバの外周面上にカーボンコートを形成することができる光ファイバ製造方法を提供する。
【解決手段】線引炉10において、光ファイバ母材Pの下端部が加熱され軟化されて、該下端部が下方に引かれることでガラスファイバが作製される。このガラスファイバは、ガスシールチャンバ20を経て、カーボンガス供給チャンバ40に導入される。カーボンガス供給チャンバ40内において、ガラスファイバはレーザ光Lの照射により加熱されて、該ガラスファイバの外周面上にカーボンコートが形成される。レーザ光Lの照射によるガラスファイバの外周面の加熱温度は、カーボンガス供給チャンバ40内においてガラスファイバの外周面上にカーボン膜を生成し得る温度に設定される。カーボンガス供給チャンバ40内の温度は、カーボン膜を生成し得る温度より低い温度に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラスファイバの外周面上にカーボンコートが形成された光ファイバが知られている。カーボンコートは、不飽和結合を多く含み、ガラスとの密着性が良く、非常に緻密なコーティングである。カーボンコートは、非常に緻密であることから、水や水素の浸透性が低く、ガラスファイバの機械特性や耐水素特性を向上させることができる。カーボンコートの厚みは通常1μm以下と非常に薄く、その外側に更に樹脂被覆が施される。
【0003】
また、カーボンコートの外側に樹脂被覆として熱硬化性樹脂被覆(例えばポリイミド)が施された光ファイバは、主に耐熱用途として用いられ、例えば油井探索用の光ファイバ温度分布測定等に利用される。このような高温環境下で用いられる場合、機械特性等の光ファイバ特性を悪化させ得るガス(HOやHなど)をカーボンコートにより遮断することができる。
【0004】
耐熱用途の熱硬化性樹脂被覆が施された光ファイバは、光ファイバ母材を線引きして作製されたガラスファイバに液状の樹脂を塗布し、この樹脂をオーブンで加熱し硬化させることで作製される。熱硬化性樹脂を硬化するには、高温で一定時間に亘って保持する必要があるが、線速が速くなると硬化が不十分となり、線引機のローラー等に未硬化樹脂が付着し、膜質が悪化する可能性がある。通常の光ファイバの線引速度は1500m/分以上であるのに対して、熱硬化性樹脂被覆が施された光ファイバの場合の線速は5〜10m/分と非常に遅い。
【0005】
一方で、カーボンコートは、線引炉直下の高温のガラスファイバの外周面でカーボンガス(炭化水素系またはハロゲン化炭化水素系のガス)を熱分解させて設ける手法が一般的である。このとき、線速を速くしないと光ファイバ外周面温度が下がって熱分解反応が起こらない。線速が遅いと、急激に表面温度が低下し、熱分解を行うカーボンガス供給チャンバに導入されたときには既に反応が起こりうる下限温度より低い温度になる。
【0006】
このように、カーボンコートの形成と熱硬化性樹脂被覆の形成とでは、光ファイバの線速に関して相反する要求が存在する。それ故、カーボンコートおよび熱硬化性樹脂被覆の双方が形成された光ファイバを製造することは困難であった。
【0007】
特許文献1には、ランプから出力された赤外光を照射することでガラスファイバの温度を高めてカーボンコートの形成を促進する発明が開示されている。この発明を用いれば、熱硬化性樹脂被覆の形成に合わせて遅い線速に設定された場合であっても、ガラスファイバの外周面にカーボンコートを形成することができると考えられる。
【特許文献1】特公昭61−32270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された発明では、ランプから出力されてガラスファイバに照射される赤外光のパワー密度が低いので、加熱の効率が低く、カーボンコート形成の効率が低い。ランプから発散して出力される赤外光をガラスファイバに効率よく照射するために、特別の形状を有する反射鏡を用いればよいが、その反射鏡の形状が複雑で大型となる。
【0009】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、低線速であっても小型で効率よくガラスファイバの外周面上にカーボンコートを形成することができる光ファイバ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光ファイバ製造方法は、ガラスファイバの外周面上にカーボンコートが形成された光ファイバを製造する方法であって、(1) 光ファイバ母材を線引きしてガラスファイバを作製する線引工程と、(2) この線引工程で作製されたガラスファイバにレーザ光を照射して該ガラスファイバを加熱し、カーボンガス供給チャンバ内において該ガラスファイバの外周面上にカーボンコートを形成するカーボンコート形成工程と、を備えることを特徴とする。さらに、本発明に係る光ファイバ製造方法は、カーボンコート形成工程において、レーザ光照射によるガラスファイバの外周面の加熱温度を、カーボンガス供給チャンバ内においてガラスファイバの外周面上にカーボン膜を生成し得る温度に設定し、カーボンガス供給チャンバ内の温度を、カーボン膜を生成し得る温度より低い温度に設定することを特徴とする。また、本発明に係る光ファイバ製造方法は、カーボンコート形成工程の後にカーボンコートの外側にポリイミド樹脂被覆を形成する樹脂被覆形成工程を更に備えるのが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低線速であっても小型で効率よくガラスファイバの外周面上にカーボンコートを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
【0014】
図1は、第1実施形態に係る光ファイバ製造方法を説明する図である。第1実施形態に係る光ファイバ製造方法で用いられる光ファイバ製造装置1は、光ファイバ母材Pを線引して、外周面上にカーボンコードが形成された光ファイバFを製造するものである。光ファイバ製造装置1は、線引炉10,ガスシールチャンバ20,カーボンガス供給チャンバ40およびガスシールチャンバ50を備える。
【0015】
線引炉10は、光ファイバ母材Pの下端部を加熱し軟化させて、その下端部が下方に引かれることでガラスファイバを作製する。そのガラスファイバの進行経路に沿って順にガスシールチャンバ20,カーボンガス供給チャンバ40およびガスシールチャンバ50が設けられている。
【0016】
ガスシールチャンバ20は、線引炉10の下方に設けられ、線引炉10で作製されたガラスファイバが上から下へ通過することが可能である。ガスシールチャンバ20の側面にガス供給管21が接続されていて、このガス供給管21からガスシールチャンバ20の内部へ不活性ガスGが供給される。この不活性ガスGの供給によりガスシールチャンバ20の内部が陽圧とされて、ガスシールチャンバ20におけるガラスファイバの入口から外気がガスシールチャンバ20の内部に入り込まないようにされる。
【0017】
ガス排気管22は、ガスシールチャンバ20とカーボンガス供給チャンバ40との間に設けられている。このガス排気管22は、ガスシールチャンバ20におけるガラスファイバの出口から出た排気ガスGを外部へ排気する。
【0018】
カーボンガス供給チャンバ40は、ガスシールチャンバ20の下方に設けられ、ガスシールチャンバ20を経たガラスファイバが上から下へ通過することが可能である。カーボンガス供給チャンバ40の側面の上部にガス供給管41が接続されていて、このガス供給管41からカーボンガス供給チャンバ40の内部へカーボンガスGが供給される。内部へ供給されたカーボンガスGは、ファイバ長軸に対して直角の方向へ環状流(環状オリフィス)または反応管周りの複数のジェット流(沢山の孔を通す)となって、カーボンコートとなるべき原料を供給する。
【0019】
カーボンガスGは、炭化水素系またはハロゲン化炭化水素系のガスである。炭化水素系ガスは、炭素数がなるべく少なく、不飽和結合が多い方が好ましく、具体例としては、アセチレン、メチルアセチレン、プロパジエン、エチレン、プロピレン、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどである。ハロゲン化炭化水素系ガスは、ガラス表面のシラノール基を減じることができる点で好ましく、具体例としては、三塩化炭素、四塩化炭素、塩化エタン、塩化プロパンなどである。炭化水素系ガスとハロゲン化炭化水素ガスとを組み合わせてもよい。
【0020】
カーボンガス供給チャンバ40の側面にはレーザ光導入窓が設けられていて、このレーザ光導入窓を経て外部からレーザ光Lが内部へ入射される。その内部へ入射されたレーザ光Lがガラスファイバに照射されて、ガラスファイバが加熱される。特に、この第1実施形態では、カーボンガス供給チャンバ40の側面の上部にレーザ光導入窓が設けられている。
【0021】
レーザ光Lは、ガラスを加熱し易い波長であるのが好ましく、例えば、炭酸ガスレーザ光源から出力される波長10.6μmのレーザ光が好適である。この場合、レーザ光導入窓の材料としては透過率が高いZnSe等が望ましい。
【0022】
ガラスファイバへのレーザ光Lの照射は、複数方向から同時に行われるのが好適であり、このようにすることにより、ガラスファイバの外周面を均等に且つ高速に加熱することができる。また、ガラスファイバへのレーザ光の照射は、長手方向に沿った複数の位置で同時に行われるのが好適であり、このようにすることにより、ガラスファイバの外周面を反応に充分な温度まで高速に加熱することができる。加熱温度の調整は、レーザのエネルギを大きくする(光束当たりのレーザのエネルギを大きくするおよびまたは照射するレーザの光束の数を増やす(照射箇所を増やす))、光束毎にレンズの焦点位置を調整するなどがある。
【0023】
カーボンガス供給チャンバ40は、加熱炉を有していてもよい。この場合、加熱炉による加熱により、カーボンガス供給チャンバ40の内部の温度は、カーボン膜を生成し得る温度より低い温度(例えば200℃〜700℃)に設定される。
【0024】
カーボンガス供給チャンバ40の側面の下部にガス排気管42が接続されていて、このガス排気管42から排気ガスGが外部へ排気される。
【0025】
このカーボンガス供給チャンバ40においてガラスファイバの外周面にカーボンコートが形成された光ファイバFとされて、この光ファイバFがカーボンガス供給チャンバ40の下方へ出される。
【0026】
ガスシールチャンバ50は、カーボンガス供給チャンバ40の下方に設けられ、カーボンガス供給チャンバ40を経たファイバFが上から下へ通過することが可能である。ガスシールチャンバ50の側面にガス供給管51が接続されていて、このガス供給管51からガスシールチャンバ50の内部へ不活性ガスGが供給される。この不活性ガスGの供給によりガスシールチャンバ50の内部が陽圧とされて、ガスシールチャンバ50におけるファイバFの出口から外気がガスシールチャンバ50の内部に入り込まないようにされる。
【0027】
第1実施形態に係る光ファイバ製造方法では、上記の光ファイバ製造装置1が用いられて、以下のようにして光ファイバFが製造される。線引炉10において、光ファイバ母材Pの下端部が加熱され軟化されて、その下端部が下方に引かれることでガラスファイバが作製される(線引工程)。この線引工程で作製されたガラスファイバは、ガスシールチャンバ20を経て、カーボンガス供給チャンバ40に導入される。
【0028】
カーボンガス供給チャンバ40内において、ガラスファイバはレーザ光Lの照射により加熱される。このとき、レーザ光Lの照射によるガラスファイバの外周面の加熱温度は、カーボンガス供給チャンバ40内においてガラスファイバの外周面上にカーボン膜を生成し得る温度(使用するカーボンガスによって異なる)に設定される。また、カーボンガス供給チャンバ40内の温度は、カーボン膜を生成し得る温度より低い温度に設定される。アセチレンガスをカーボンガスに使用する場合は、カーボンガス供給チャンバ40内においてガラスファイバの外周面の温度が700℃以上900℃以下となるように照射するレーザ光Lのエネルギを調整する。例えば、レーザー光のパワーを調整する、レンズ位置、つまり焦点位置を変えてパワーを調整するなどする。この時、温度をモニターしつつ温度管理を行う。また、アセチレンを使用する場合は、カーボンガス供給チャンバ40内の温度は700℃未満とする。
【0029】
このようにして、カーボンガス供給チャンバ40において、該ガラスファイバの外周面上にカーボンコートが形成される(カーボンコート形成工程)。このカーボンコート形成工程でカーボンコートが形成された光ファイバFは、ガスシールチャンバ50を経た後、更にポリイミド樹脂が形成される(樹脂被覆形成工程)。
【0030】
このように、本実施形態では、ガラスファイバがレーザ光Lの照射により加熱されるので、赤外線照射により加熱する特許文献1記載の発明と比較して、以下のような効果がある。すなわち、レーザ光のパワー密度が高いのでガラスファイバが高速に加熱され、照射強度が調整されることで加熱速度が調整され得るので、広範囲のガラスファイバの線速に対応することが可能である。低線速であってもガラスファイバの外周面にカーボンコートの形成が可能であるので、カーボンコート形成工程に続いて樹脂被覆形成工程が行われ得る。
【0031】
また、レーザ光をガラスファイバへ集光照射するための光学系の設計が容易であり、例えば、レーザ光源からの光路上にミラーおよびレンズが設けられればよい。さらに、加熱速度が速い上に光学系が簡易であるので、ガラスファイバの長手方向に沿った複数の位置で同時にレーザ光照射が行われるとしても、その照射位置の数は少なくてよいので、装置の小型化が可能である。
【0032】
特に、この第1実施形態では、ガラスファイバは、カーボンガス供給チャンバ40内においてレーザ光Lの照射により加熱されるので、所要の温度に達すると熱分解反応によりカーボンコードが形成される。したがって、カーボンコートの形成の制御が容易である。この第1実施形態では、レーザ光はカーボンガス供給チャンバ内であって加熱源43の直上でガラスファイバに照射される。レーザ光が照射される箇所ではガラスファイバの周囲にカーボンガスが供給されている。
【0033】
なお、ガラスファイバの外周面の温度をなるべく下げないように加熱源43で加熱しても良いが、温度によってカーボンコートの膜質が変わり、温度を上げすぎると気相反応により高分子量のカーボンができて品質が劣化する。カーボンガスがアセチレンであるの場合は、ガラスファイバの外周面の温度は700℃〜900℃であるのが好ましい。また、カーボンガスがエチレンである場合は、ガラスファイバの外周面の温度は1200℃〜1400℃であるのが好ましい。
【0034】
良質のカーボンコートは、アモルファスカーボンにグラファイト構造を多く含むものであり、不飽和結合が多く含まれ、ガラスとの密着性が良く、緻密である。また、低分子量のカーボンが蒸着したものも良質のカーボンコートである。これに対して、不適切なカーボンコートは、不飽和結合が少なく脆く、それ故、機械強度が劣る。高分子量のカーボン(スス)が蒸着したものも不適切なカーボンコートである。このススは、高温ガスの気相反応性で発生するものや、高温管壁での反応で付着したものである。本実施形態では、カーボンガス供給チャンバ40内の温度を下げて、ガラスファイバ外周面以外ではカーボンができないようにしている。
【0035】
(第2実施形態)
【0036】
図2は、第2実施形態に係る光ファイバ製造方法を説明する図である。第2実施形態に係る光ファイバ製造方法で用いられる光ファイバ製造装置2は、光ファイバ母材Pを線引して、外周面上にカーボンコードが形成された光ファイバFを製造するものである。光ファイバ製造装置2は、線引炉10,ガスシールチャンバ20,カーボンガス供給チャンバ40およびガスシールチャンバ50を備える。
【0037】
図1に示された光ファイバ製造装置1の構成と比較すると、この図2に示される光ファイバ製造装置2は、カーボンガス供給チャンバ40内でガラスファイバに対してレーザ光Lを照射する点では同じであるが、カーボンガス供給チャンバ40の側面の中央部付近であって加熱源43のある箇所にレーザ光導入窓が設けられている点で相違する。すなわち、カーボンガス供給チャンバ40が加熱源43を有する場合に、その加熱源43にレーザ光導入孔が設けられる。レーザ光Lは、レーザ光導入孔およびレーザ光導入窓を経て、カーボンガス供給チャンバ40の内部へ入射される。その内部へ入射されたレーザ光Lがガラスファイバに照射されて、ガラスファイバが加熱される。
【0038】
第2実施形態に係る光ファイバ製造方法は、第1実施形態に係る光ファイバ製造方法と同様の効果を奏することができる。特に、この第2実施形態では、ガラスファイバは、カーボンガス供給チャンバ40内においてレーザ光Lの照射により加熱されるので、所要の温度に達すると直ちに熱分解反応によりカーボンコードが形成される。したがって、カーボンコートの形成の制御が容易である。
【0039】
(第3実施形態)
【0040】
図3は、第3実施形態に係る光ファイバ製造方法を説明する図である。第3実施形態に係る光ファイバ製造方法で用いられる光ファイバ製造装置3は、光ファイバ母材Pを線引して、外周面上にカーボンコードが形成された光ファイバFを製造するものである。光ファイバ製造装置3は、線引炉10,ガスシールチャンバ20,レーザ光照射チャンバ30,カーボンガス供給チャンバ40およびガスシールチャンバ50を備える。
【0041】
図1に示された光ファイバ製造装置1の構成と比較すると、この図3に示される光ファイバ製造装置3は、ガスシールチャンバ20とカーボンガス供給チャンバ40との間にレーザ光照射チャンバ30が設けられる点で相違する。レーザ光照射チャンバ30は、ガスシールチャンバ20を経たガラスファイバが上から下へ通過することが可能である。このレーザ光照射チャンバ30の側面にはレーザ光導入窓が設けられていて、このレーザ光導入窓を経て外部からレーザ光Lが内部へ入射される。その内部へ入射されたレーザ光Lがガラスファイバに照射されて、ガラスファイバが加熱される。
【0042】
第3実施形態に係る光ファイバ製造方法では、上記の光ファイバ製造装置3が用いられて、以下のようにして光ファイバFが製造される。線引炉10において、光ファイバ母材Pの下端部が加熱され軟化されて、その下端部が下方に引かれることでガラスファイバが作製される(線引工程)。この線引工程で作製されたガラスファイバは、ガスシールチャンバ20を経て、レーザ光照射チャンバ30内を通過する際にレーザ光Lの照射により加熱され、さらに、カーボンガス供給チャンバ40に導入される。
【0043】
このとき、レーザ光Lの照射によるガラスファイバの外周面の加熱温度は、カーボンガス供給チャンバ40内においてガラスファイバの外周面上にカーボン膜を生成し得る温度に設定される。また、カーボンガス供給チャンバ40内の温度は、カーボン膜を生成し得る温度より低い温度に設定される。
【0044】
このようにして、カーボンガス供給チャンバ40において、該ガラスファイバの外周面上にカーボンコートが形成される(カーボンコート形成工程)。このカーボンコート形成工程でカーボンコートが形成された光ファイバFは、ガスシールチャンバ50を経た後、更にポリイミド樹脂が形成される(樹脂被覆形成工程)。
【0045】
(第4実施形態)
【0046】
図4は、第4実施形態に係る光ファイバ製造方法を説明する図である。第4実施形態に係る光ファイバ製造方法で用いられる光ファイバ製造装置4は、光ファイバ母材Pを線引して、外周面上にカーボンコードが形成された光ファイバFを製造するものである。光ファイバ製造装置4は、線引炉10,カーボンガス供給チャンバ40およびガスシールチャンバ50を備える。
【0047】
図1に示された光ファイバ製造装置1の構成と比較すると、この図4に示される光ファイバ製造装置4は、線引炉10とガスシールチャンバ20との間でガラスファイバに対してレーザ光Lを照射する点で相違する。
【0048】
第4実施形態に係る光ファイバ製造方法では、上記の光ファイバ製造装置4が用いられて、以下のようにして光ファイバFが製造される。線引炉10において、光ファイバ母材Pの下端部が加熱され軟化されて、その下端部が下方に引かれることでガラスファイバが作製される(線引工程)。この線引工程で作製されたガラスファイバは、レーザ光Lの照射により加熱され、ガスシールチャンバ20を経て、カーボンガス供給チャンバ40に導入される。
【0049】
このとき、レーザ光Lの照射によるガラスファイバの外周面の加熱温度は、カーボンガス供給チャンバ40内においてガラスファイバの外周面上にカーボン膜を生成し得る温度に設定される。また、カーボンガス供給チャンバ40内の温度は、カーボン膜を生成し得る温度より低い温度に設定される。
【0050】
このようにして、カーボンガス供給チャンバ40において、該ガラスファイバの外周面上にカーボンコートが形成される(カーボンコート形成工程)。このカーボンコート形成工程でカーボンコートが形成された光ファイバFは、ガスシールチャンバ50を経た後、更にポリイミド樹脂が形成される(樹脂被覆形成工程)。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1実施形態に係る光ファイバ製造方法を説明する図である。
【図2】第2実施形態に係る光ファイバ製造方法を説明する図である。
【図3】第3実施形態に係る光ファイバ製造方法を説明する図である。
【図4】第4実施形態に係る光ファイバ製造方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0052】
1〜4…光ファイバ製造装置、10…線引炉、20…ガスシールチャンバ、21…ガス供給管、22…ガス排気管、30…レーザ光照射チャンバ、40…カーボンガス供給チャンバ、41…ガス供給管、42…ガス排気管、43…加熱源、50…ガスシールチャンバ、51…ガス供給管、P…光ファイバ母材、F…光ファイバ、G…カーボンガス、G,G…不活性ガス、G,G…排気ガス、L…レーザ光。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスファイバの外周面上にカーボンコートが形成された光ファイバを製造する方法であって、
光ファイバ母材を線引きしてガラスファイバを作製する線引工程と、
この線引工程で作製されたガラスファイバにレーザ光を照射して該ガラスファイバを加熱し、カーボンガス供給チャンバ内において該ガラスファイバの外周面上にカーボンコートを形成するカーボンコート形成工程と、
を備え、
前記カーボンコート形成工程において、
レーザ光照射による前記ガラスファイバの外周面の加熱温度を、前記カーボンガス供給チャンバ内において前記ガラスファイバの外周面上にカーボン膜を生成し得る温度に設定し、
前記カーボンガス供給チャンバ内の温度を、カーボン膜を生成し得る温度より低い温度に設定する、
ことを特徴とする光ファイバ製造方法。
【請求項2】
前記カーボンコート形成工程の後に前記カーボンコートの外側にポリイミド樹脂被覆を形成する樹脂被覆形成工程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−37127(P2010−37127A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200817(P2008−200817)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】