説明

光モジュール

【課題】平板型の光導波路の導波路コアのそれぞれに、基板の一平面上に配列された複数の光半導体素子が、効果的に光結合された光モジュールを提供する。
【解決手段】平面型の光導波路11に形成された一列に並ぶ複数の導波路コア11aのそれぞれに、複数の光半導体素子13を光学的に結合させる光モジュールであって、導波路コア11aと光半導体素子13を光結合する複数の光ファイバ18が実装された光ファイバ保持台15を備え、光ファイバ18の一方の端部は、複数の光導波路コア11aの光軸に一致して対向する配列で保持され、反対側の他方の端部は少なくとも2列以上に配列され、アレイ基板12の同一面上に配列された複数の光半導体素子13の光軸のそれぞれに一致して対向する配列で保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面型の光導波路の導波路コアと光半導体素子とを光学的に結合した光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板上に石英ガラスからなる導波路コアとクラッドをクラッドで囲った平面型の光導波路を、基板等に実装した複数の光半導体素子に光学的に結合して、光信号を伝送することが知られている。例えば、特許文献1には、平面型の光導波路と複数の光半導体素子を高密度で実装したサブキャリアとをモジュール化して、光信号を伝送することが開示されている。
この他、平面型の光導波路からの光信号をコリメートレンズで平行光にして、ミラーで反射させた後に集光レンズを介して受光素子で受光させる構成のものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−177707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多数のチャンネル信号を送受信するのに、複数の光半導体素子を一列に並べると配列幅が大きくなることから、複数の光半導体素子を2列以上に配列し、高密度で集積化することで小型化が行われている。しかし、光半導体素子を高密度で配列すると、光半導体素子間の光信号および電気信号の漏れが生じる。特許文献1では、このため、光半導体素子をサブキャリアの上面と下面に実装し、反射面からの反射光を受光すると共にクロストーク防止用の各壁を備えるようにしているが、高周波の電気信号の配線も1枚の基板上に形成することが困難で、2つの異なる配線基板が必要となる。
【0005】
すなわち、上面側に実装された光半導体素子と、下面側に実装された光半導体素子の電気配線は、それぞれ別の基板に形成されるため、後段の増幅器等の電気信号を伝送する配線長が異なり、信号の伝搬にスキューが生じやすくなる。また、光半導体素子を上下の両面に配置するには、光反射面を形成するなどの特別な構造と作業等を必要とし、光半導体素子を実装後のサブキャリアの取り扱いに制約が多く、生産性が低いという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、平板型の光導波路の導波路コアのそれぞれに、基板の一平面上に配列された複数の光半導体素子が、効果的に光結合される光モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による光モジュールは、平面型の光導波路に形成された一列に並ぶ複数の導波路コアのそれぞれに、複数の光半導体素子を光学的に結合させる光モジュールであって、導波路コアと光半導体素子を光結合する複数の光ファイバが実装された光ファイバ保持台を備え、光ファイバの一方の端部は、複数の光導波路コアの光軸に一致して対向する配列で保持され、反対側の他方の端部は少なくとも2列以上に配列され、アレイ基板の同一面上に配列された複数の光半導体素子の光軸のそれぞれに一致して対向する配列で保持されていることを特徴とする。
【0008】
また、平面型の光導波路の側に配列される光ファイバの一方の端部と、光半導体素子の側に配列される光ファイバの他方の端部は、独立した光ファイバ保持台で保持されるように分離した構成としてもよい。また、アレイ基板の同一面に複数の光半導体素子が2列以上に配列され、一方の列に対して他方の列を半ピッチずらせた交互配列とするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光ファイバ保持台に実装された光ファイバを用いて平面型の光導波路と光半導体素子とを光結合することにより、複数の光半導体素子を基板の同一面に列幅を抑えて高密度で配列することができる。この結果、光半導体素子の電気信号に対する配線長を均一にすることが可能となる。さらに、基板の同一面に配置できることで、増幅回路モジュールあるいは半導体集積回路は複数信号の取扱いを一つのモジュールあるいはパッケージ内に集積化した様式のものを利用することができ、アレイ基板のサイズをより一層小型化することが可能となる。また、平面型の光導波路と光半導体素子との光結合が、容易でパッシブアライメントによる調芯が可能で、組み立ての作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による実施形態の一例を説明する図である。
【図2】本発明による実施形態の他の例を説明する図である。
【図3】本発明による光半導体素子の実装例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図により本発明の概略を説明する。図1(A)は、本発明による実施形態の一例を示し、図1(B)は本発明で用いられる光ファイバ保持台の一例を示す。図において、10は光ファイバ機構、11は平面型の光導波路、11aは導波路コア、12はアレイ基板、13は光半導体素子(受光素子)、14は増幅回路モジュール、15は光ファイバ保持台、15a,15bはファイバ固定ブロック、15cは連結部、16,17は押さえブロック、17aは中間ブロック、18は光ファイバ、19a,19bはV溝を示す。
【0012】
本発明による光モジュールは、図1(A)に示すように、平面型の光導波路11の複数の導波路コア11aとアレイ基板12上に配列された複数の光半導体素子13とを、光ファイバ機構10を用いて、光学的に結合するものである。平面型の光導波路11は、シリコン基板上に導波路コアとクラッドを、薄膜技術等を用いて作成したもので、種々の形態のものがある。通常、複数の導波路コア11aは、平面状に一列に並ぶように形成され、その端面で光ファイバや光素子等と光結合され、光信号の伝送が行われる。
【0013】
光半導体素子(例えば、フォトダイオード等の受光素子)13は、光信号を受光して電気的な電流信号に変換し、該受光素子13により変換された電流信号は、増幅回路により増幅されて情報信号として受信される。受光素子13は、増幅回路モジュール14と共に、アレイ基板12に実装されるが、光導波路11から多数のチャンネル信号を受信する場合、導波路コア11aに対応した数の受光素子と増幅回路モジュールが実装される。
【0014】
複数の受光素子13は、信号光のクロストークを回避するための所定間隔を開けて配列する必要がある。光導波路11との光結合を直接行う場合は、導波路コア11a間の間隔も受光素子13に合わせた間隔になる。したがって、受光素子13をアレイ基板12に一列に並べて実装することは、配列幅が大きく光モジュールの小型化が困難となり、現実的でない。一方、配列幅を2段にして光導波路11の一列に並ぶ導波路コア11aと直接光結合させるには、特許文献1に開示のように、信号光を反射させる機構が必要となり、アレイ基板の両面に配線導体を形成するなどの構成が必要となる。
【0015】
本発明においては、複数の導波路コア11aを有する平面型の光導波路11と、複数の光半導体素子(以下、受光素子)13を実装したアレイ基板12とを、光ファイバ機構10を用いることにより、効果的に光学的に結合することを特徴としている。
光ファイバ機構10は、例えば、図1(B)に示すように、第1のファイバ固定ブロック15aと第2のファイバ固定ブロック15bとを備えた光ファイバ保持台15に、複数本の短尺の光ファイバ18を保持固定して構成される。
【0016】
第1のファイバ固定ブロック15a上には、複数本の光ファイバ18の一方の端部を把持固定する押さえブロック16が配され、第2のファイバ固定ブロック15b上には、複数本の光ファイバ18の他方の端部を把持固定する押さえブロック17および中間ブロック17aが配される。なお、図1の例では、第1のファイバ固定ブロック15aと第2のファイバ固定ブロック15bとは連結部15cにより一体に形成されている。
これらの各ブロック等は、セラミック、樹脂、金属のいずれでも形成することができ、また、成形、機械加工等で形成することができる。
【0017】
第1のファイバ固定ブロック15aには、光ファイバ18の一方の端部を位置決めして、複数の導波路コアの光軸に一致して対向保持するためのV溝19aが形成される。第1のファイバ固定ブロック15aの高さおよびV溝19aの間隔は、光導波路11の複数の導波路コア11aに一致する間隔で一列で形成される。また、押さえブロック16の押さえ面側にも、同様なV溝を設けるようにしてもよい。
【0018】
第2のファイバ固定ブロック15bおよび中間ブロック17aには、光ファイバ18の他方の端部を位置決めして、複数の受光素子の光軸のそれぞれに一致して対向保持するためのV溝19bが形成される。第2のファイバ固定ブロック15bの高さおよびV溝19bの間隔は、アレイ基板12に実装された受光素子13の配列間隔と一致する間隔で形成される。図では受光素子13が2列で配列されているので、中間ブロック17aを用いて光ファイバも2列に保持固定するように構成される。なお、受光素子13が3列で配列される場合は、中間ブロック17aをさらに1つ追加すればよい。また、押さえブロック17および中間ブロック17aの押さえ面側にも、同様なV溝を設けるようにしてもよい。
【0019】
上記のように、光ファイバ保持台15の第1のファイバ固定ブロック15aで、光ファイバ18の一方の端部を光導波路11の複数の導波路コア11aに一致するように配列固定し、第2のファイバ固定ブロック15bで、光ファイバ18の他方の端部をアレイ基板12の複数の発光素子13に一致するように配列固定している。この結果、アレイ基板12上には、光導波路11の導波路コア11aの配列や間隔によって制限を受けることなく、複数の発光素子13をアレイ基板12の同一面に自由な形態で高密度に配列させることが可能となる。また、光導波路11と光ファイバ機構10及びアレイ基板12とは、パッシブアライメントにより、公差範囲内で機械的に組み付けることができ、生産性を向上させることが可能となる。
【0020】
図2は、本発明による実施形態の他の例を示し、図において、20は光ファイバ機構、25は光ファイバ保持台、25a,25bはファイバ固定ブロック、26,27は押さえブロック、27aは中間ブロック、28は光ファイバ、29a,29bはV溝を示す。その他の符号は、図1で用いたのと同じ符号を用いることにより説明を省略する。
【0021】
本例の光モジュールは、図1(A)の例と同様に複数の導波路コア11aを有する平面型の光導波路11と、複数の受光素子13を実装したアレイ基板12とを、光ファイバ機構20を用いることにより、効果的に光学的に結合するものである。光ファイバ機構20は、例えば、図2(B)に示すように、第1のファイバ固定ブロック25aと第2のファイバ固定ブロック25bとを備えた光ファイバ保持台25に、複数本の短尺の光ファイバ28を保持固定して構成される。
【0022】
第1のファイバ固定ブロック25a上には、光ファイバ28の一方の端部を把持固定する押さえブロック26が配され、第2のファイバ固定ブロック25b上には、光ファイバ28の他方の端部を把持固定する押さえブロック27および中間ブロック27aが配される。なお、本例では、第1のファイバ固定ブロック25aと第2のファイバ固定ブロック25bとは、別体に形成されている。
【0023】
第1のファイバ固定ブロック25aには、光ファイバ28の一方の端部の先端28aを位置決めして、複数の導波路コアの光軸に一致して対向保持するためのV溝29aが形成される。第1のファイバ固定ブロック25aの高さおよびV溝29aの間隔は、光導波路11の複数の導波路コア11aに一致する間隔で一列で形成される。また、押さえブロック26の押さえ面側にも、同様なV溝を設けるようにしてもよい。
【0024】
第2のファイバ固定ブロック25bおよび中間ブロック27aには、光ファイバ28の他方の端部の先端28bを位置決めして、複数の受光素子の光軸のそれぞれに一致して対向保持するためのV溝29bが形成される。第2のファイバ固定ブロック25bの高さおよびV溝29bの間隔は、アレイ基板12に実装された受光素子13の配列間隔と一致する間隔で形成される。本例では受光素子13が2列で配列されているので、中間ブロック27aを用いて光ファイバも2列に保持固定するように構成される。なお、受光素子13が3列で配列される場合は、中間ブロック27aをさらに1つ追加すればよい。また、押さえブロック27および中間ブロック27aの押さえ面側にも、同様なV溝を設けるようにしてもよい。
【0025】
本例のように、第1のファイバ固定ブロック25aと第2のファイバ固定ブロック25bとは、別体に形成することにより、図1の実施形態による作用効果に加えて、温度変化に伴うブロック材の収縮等で光結合状態が変動するのを抑制することが可能となる。また、光導波路11の導波路コア11aとアレイ基板12の受光素子13の配置関係に多少のずれがあっても、光ファイバの先端28aと光導波路11の位置合わせ、光ファイバの先端28bとアレイ基板12の位置合わせを独立して行うことが可能で、調芯が容易となる。
【0026】
図3は、アレイ基板12上に実装された受光素子13と増幅回路モジュール14の配列の一例を示す。受光素子13は、光導波路側の導波路コアの一列配列に制限されることなく、自由に配列することができる。例えば、図に示すように、2列で形成し、かつ一方の列に対して他方の列を半ピッチずらせた交互配列とすることができる。この結果、複数の光半導体素子(受光素子)13をアレイ基板1の同一面に高密度で実装することができ、電気回路の配線長も均一にすることが可能となる。また、増幅回路モジュールあるいは半導体集積回路は、複数信号を単一のモジュールあるいはパッケージで扱えるようにした集積度の高い、より小型のものを使用することができ、アレイ基板のサイズをさらに小型化することが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
10…光ファイバ機構、11…光導波路、11a…導波路コア、12…アレイ基板、13…光半導体素子(受光素子)、14…増幅回路モジュール、15,25…光ファイバ保持台、15a,15b,25a,25b…ファイバ固定ブロック、15c…連結部、16,17,26,27…押さえブロック、17a,27a…中間ブロック、18,28…光ファイバ、19a,19b,29a,29b…V溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面型の光導波路に形成された一列に並ぶ複数の導波路コアのそれぞれに、複数の光半導体素子を光学的に結合させる光モジュールであって、
前記導波路コアと前記光半導体素子を光結合する複数の光ファイバが実装された光ファイバ保持台を備え、前記光ファイバの一方の端部は、前記複数の導波路コアの光軸に一致して対向する配列で保持され、反対側の他方の端部は少なくとも2列以上に配列され、アレイ基板の同一面上に配列された前記複数の光半導体素子の光軸のそれぞれに一致して対向する配列で保持されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記平面型の光導波路の側に配列される前記光ファイバの一方の端部と、前記光半導体素子の側に配列される前記光ファイバの他方の端部は、独立した光ファイバ保持台で保持されることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記アレイ基板の同一面に前記複数の光半導体素子が2列以上に配列され、一方の列に対して他方の列を半ピッチずらせた交互配列とされていることを特徴とする請求項1または2記載の光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−247532(P2012−247532A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117753(P2011−117753)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】